SNSの写真、広告に無断で使われた! 定期購入が解約できない! 誇大・不正・悪質広告でネットユーザーが気をつけるべきこと

 「たけし『天才だね!』」「マツコ驚愕」――動画サイト、SNS、各種ウェブサイトで芸能人の名前を用いた広告を見たことのある人も多いのではないだろうか。こういったウェブ広告は無断で芸能人の名前を使っているものがあるといい、その法的な問題点と対策の現状について、日本アフィリエイト協議会の代表理事・笠井北斗氏に前編で話を伺った。後編は、ネットを利用するユーザー側が気を付けることについて聞いた。

SNSに上げた写真、無断で不正広告に使われてしまったら?

――タレントの画像や名前を無断で使う不正広告について聞いてきましたが、タレントだけでなく一般人でも同様の被害に遭うことがあります。SNSやブログにアップした画像を、勝手に広告で使われた場合、どう対応したらいいですか?

笠井北斗氏(以下、笠井) まず、その広告記事の「広告主(健康食品なら、その健康食品の販売会社)」に「ネット広告で勝手に私の画像を使わないでくれ」と連絡しましょう。真っ当な事業者であればすぐに対応してくれるはずです。一方、無断で人の画像を使う事業者の中には、訴えたところで返信すらしないモラルの低い事業者もいます。

 そのため、「画像の利用を止めなければ景表法違反で消費者庁に連絡する」と書いておくこともオススメします。そうすれば、向こうも速やかに動くはずです。もちろん、消費者庁に直接「私の写真が勝手に捏造広告の素材として使われてしまっています。この業者を処分してください」と訴えることもできます。そうすると、悪質事業者そのものを潰すこともできます。

――前編では、健康食品やサプリメントを定期購入するサービスについて、「悪質なものも少なくない」とのことでした。契約方法が悪質か否か、消費者が見極めるポイントはありますか?

笠井 消費者庁では、定期購入事業者に向け、特商法に則ったガイドラインを制定しています。そこでは、定期購入における「回数の縛り」など重要な情報は、“消費者からわかりやすいように表示しないといけない”と定められています。

――わかりやすさ、というのは感覚的なものなので個々人で違いが生じそうです。例えば、規約部分に「6回縛り」「2回目からは料金が上がる」などが書いてはあるものの、小さな文字で注意しないと見つけられないケースはどうなりますか?

笠井 それがどこに、どう書いてあるかがポイントですね。「2回目から料金が上がる」「そう簡単に解約できない」など、事業者にとって知られたら都合が悪く、一方、消費者にとっては重要なことを、とても小さな文字でわかりづらい場所に書いているなら、「探しにくいよう操作している」として、事業者側にも問題はあります。

――となると、事業者が誰が見てもわかりやすいところに条件を書いていたのに、消費者が、規約を読み飛ばし契約し、あとから「聞いてない! 知らない!」というのは通用しない、ともいえますね。

笠井 消費者が全員善良な消費者ならば通用するでしょうが、残念ながら消費者の中には悪質な方も存在しています。嫌がらせ目的で購入したあと全部返品してやろうという人もいれば、転売目的で購入して落札されなかったから返品してやろうと人もいる。この消費者庁のガイドラインは、消費者を守るためだけでなく、悪質な消費者から事業者を守る目的もあるんです。

ネット広告界における「JARO」はあるのか?

――テレビCMにおいては「嘘、大げさ、紛らわしい」広告はJAROという窓口がありますが、ネット広告においてはそういった窓口はあるのでしょうか。

笠井 包括的な窓口はありません。というのも、ネット広告は運用型、予約型、成果報酬型(アフィリエイト)と3つのタイプがあり、消費者の方からすれば同じ広告に見えるのですが、ビジネスモデルはかなり異なっているんです。たとえるなら「野球」「サッカー」「テニス」に関わる協会を「球技だから一つにまとめれば」というくらい違うんです。なお、アフィリエイト広告に関しては日本アフィリエイト協議会(JAO)、運用型や予約型の広告に関しては日本インタラクティブ広告協会(JIAA)さんなど、そして広告会社や広告主が加盟している日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会さんなどの団体があります。

 消費者の方でウェブ広告がわかりにくく、どこに相談しようか迷われた場合や、ネットの広告で何かトラブルがあった場合は、日本アフィリエイト協議会に問い合わせていただいて大丈夫です。情報提供フォームも用意しています。アフィリエイト以外の相談であっても、こちらから消費者庁など関係各所に連絡する態勢も取れています。

 ただ、こちらとしてもトラブルの証拠がないと動けないので、お問い合わせの際は証拠をいただければと思います。疑ってるわけではないのですが、時々、「サポート担当が個人的に気に入らなかった」など嫌がらせ目的の通報もあったりします。ですので、証拠をセットでいただければと思います。

――最後に、新型コロナウイルスによって広告業界に変化は見られていますか?

笠井 アフィリエイト業界で見ると、通販会社の広告出稿量が増えています。広告主や広告予算が増えているため、副業や兼業でアフィリエイトを始めやすい環境になっているんです。ただ、「簡単に稼げる話」には気をつけてください。インスタグラムやLINEなどを見ると、個人に対し「副業で稼ぐ」「ネットビジネス、在宅で月○万円」「主婦でも簡単に稼げるんだけど、その方法を知りたくない?」といった広告をよく見ますよね。こうった言葉には決してなびかないでいただきたいです。

 日本アフィリエイト協議会(JAO)では、ネットを使った副業や兼業、在宅ワークに興味があり、これからアフィリエイト・プログラムの利用を始めてみようと検討されている方を主な対象とした『“超”初心者向け無料アフィリエイト基礎講座』を定期開催しておりますので、まずはこの講座を無料で受講いただければ幸いです。

笠井北斗(かさい・ほくと)
一般社団法人 日本アフィリエイト協議会の代表理事。クロスワーク株式会社 代表取締役。 アフィリエイトが世に出始めた1999年より、日本と米国でアフィリエイトビジネスに携わるアフィリエイトコンサルタントとして活躍。現在は、同協議会の代表理事として、アフィリエイト・プログラムに関する教育や啓蒙活動をはじめ、アフィリエイトセミナーや交流企画の開催、通販事業者のブラックリストとグレーリストの共有、アフィリエイト業界の相談&サポート窓口の設置といった取り組みを行っている。

「たけし『天才だね!』」「マツコ驚愕」タレント名を使った“怪しい広告”、最前線事情に迫る

 「たけし『天才だね!』」「マツコ驚愕」――これら言葉を使った広告を各種ウェブサイトで見たことのある人も多いのではないだろうか。2018年11月、朝日新聞が「勝手に芸能人名、広告掲載問題視」との見出しで、「たけし『天才だね!』」を筆頭とするネット広告について「実際にはテレビ番組で紹介されておらず、芸能人もまったく関わっていないものがあるとして、成功報酬型のネット広告の業界団体『日本アフィリエイト協議会』(JAO)が問題視」と報じた。しかし、それから2年近くたっても「たけし『天才だね!』」広告はいまだ目につく。

 こうしたウェブ広告にまつわる問題や対策の現状について、消費者庁をはじめとした官公庁と連携して情報交換を行い、アフィリエイト・ビジネスの健全な発展・普及を目指す活動を行う一般社団法人 日本アフィリエイト協議会の代表理事・笠井北斗氏に伺った。

「たけし『天才だね!』」「マツコ驚愕」広告は法律違反だらけ?

――「たけし『天才だね!』」「マツコ驚愕」といった広告の、法律的な問題点について教えてください。

笠井北斗氏(以下、笠井) 多くの法律に触れているといえます。まず「景表法(不当景品類及び不当表示防止法)」ですね。これは簡単に言えば、誇大広告を禁止する法律です。芸能人が使ってもいないのに使ったと、読み手が誤認しかねないように書くことは禁じられています。

――「たけし」「マツコ」とは書いているのですが、「ビートたけし」「マツコ・デラックス」とは書いていませんよね。これも「アウト」なんですか?

笠井 法的にアウトの可能性が高いです。「たけし」「マツコ」と広告で見たら、ほとんどの人はビートたけしさんと、マツコ・デラックスさんを想像するでしょうから、「消費者を誤認させようとしている」といえます。

 実際に「マツコ絶賛広告」が出ていた記事を見てみると、マツコ・デラックスさんではなく、辛口の管理栄養士・松尾和美さんという、一部の友人にあだ名で「マツコ」と呼ばれている、という方が登場する内容だったということもありました。ちなみに、この広告を出していた通販会社はその後、消費者庁に行政処分されています。

 また、「たけし天才」の広告主が販売しているダイエットサプリにも問題があります。サプリメント・健康食品は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、旧薬事法)において、医薬品のように効能、効果を記載することは禁じられています。サプリメントや健康食品なのに「飲むだけで脂肪が溶ける」「アレルギーが治る」と記載するのは、薬機法上、問題のある表現です。

――でも、このような表現は本当によく見かけますね。

笠井 そうなんです。さらに、このようなタレントの名前を使った広告では、芸能人の写真を許可なく使っているケースもありますが、これは「肖像権」上問題があります。ただ、最近は芸能人の写真をそのまま使う広告は、あまり見かけなくなりました。なお、アフィリエイト業界では著作権や肖像権の侵害行為を規約・ガイドラインで禁止しています。

――たしかに、「たけし」も「マツコ」も写真は出ていませんね。景表法、薬機法、肖像権とすでに多くの問題点が見えましたが、ほかにもありますか?

笠井 こうしたタレント名を掲げる広告は、「健康食品、サプリメントの定期購入」を事業としているケースが多く、その販売方法において「特商法(特定商取引に関する法律)」に違反している事例も少なくありません。

 例えば、広告では「500円で試せます」などと大きく記載されていて、さも手軽に試せるように見えるものの、実は定期購入で最低6回は購入しないといけないことが、消費者からは見えづらい場所に小さく書いてあるようなケースです。500円は初回だけで、以降は一気に高額になり、解約もできず……といったものですね。こういった広告主の購入システムは、悪質でわかりにくいものも少なくありません。

 この点について、特商法では、「通販事業者は顧客に対し契約の内容をわかりやすく伝えなくてはいけない」と定めていますし、平成28年には「定期購入契約」に関する表示義務の追加・明確化も改正によって加えられているんです。

 しかし、芸能人の名前を使って広告を出している定期購入の事業者の中には、消費者を騙す意図をもって販売ページを作っているとしか思えない事例も少なくありません。

パソコンでは普通なのに、スマホで見ると怪しい広告になるケースも

――こうした不正広告を行っている側の手口には、ほかにどういった方法があるんでしょうか?

笠井 基本的に不正広告の場合は、商品を作って売る事業者と、広告代理店、広告ページを作る制作会社がグルになっていることが多いです。そして、制作した不正な広告ページをGoogleなど検索サイト、YouTubeなどの動画サイト、FacebookなどのSNSに大量に出稿して流すわけです。また、ターゲットにするのはパソコンサイトより、スマホサイトのほうが多い。ひどいケースだと、パソコンから見たら普通の広告なのに、スマホから見た時だけ違法広告になっていたりするんです。

――それって、どういうことなのでしょうか?

笠井 ユーザーがスマホで見ているか、パソコンで見ているかで、広告の表示を切り分けているんです。さらに、スマホの特定のアプリ、例えばFacebookのアプリから見た時だけ違法な広告を表示させる、というケースもあります。

――なぜ、わざわざそのようなことを?

笠井 いくつかの理由が考えられます。まず、スマホは画面が小さいので、ついつい利用者が「読み飛ばして」しまいがちな傾向があり、騙しやすいということ。そして警察、消費者庁、消費者センター、消費者団体、マスコミなど、不適切な広告を出す事業者に対し目を光らせている方たちは、基本的に「パソコン」でサイトを見ていることが多いんですよね。そのため、パソコンではクリーンな表示を装っている、とも考えられます。

――こうした悪質な広告主に向けた対策は、現状どうなっているのでしょうか?

笠井 芸能人の顔写真や名前を使った悪質な広告は、アフィリエイト広告においては、今から2~3年前の最も多い時と比べて95%以上が削減されました。問題のある事業者を特定し、広告の出稿を禁止するなどの取り組みが進んでいます。

――でも、ネットではいまだにこの手の広告をよく見ます。

笠井 はい。95%以上削減できた、というのは、「アフィリエイト(成果報酬型)」において、なのです。私たちが見ているネット広告には、実は3種類あります。

■予約型
広告を出したい企業が、大手ポータルサイトなどの広告枠を購入し、掲載される広告。純広告やタイアップ広告という。

■運用型
SNS、動画サイト、アプリなどに設置された「ネット広告枠」に、プログラムが自動的に広告を配信する仕組み。そのため、SNS等運営側も自分のサイトに何の広告が掲載されているか把握できていないこともある。クリックや動画視聴の回数によって、報酬が発生する課金型の広告が主流。アドネットワークやレコメンドウィジェット広告等があり、ネットワーク広告会社が広告主を取り仕切る。YouTubeの動画広告、インスタグラムやLINEの広告なども含まれる。

■アフィリエイト
ブログやホームページ上に掲載されたアフィリエイトリンクをクリックした消費者が、広告主のページで購入や申し込みを行うことで報酬が発生する広告。広告主とアフィリエイターをASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)がつないでいる。

――予約型は、広告を受ける媒体側がチェックすることで不正案件ははじけそうです。となると、運用型での不正広告が残っているから、ユーザーには「減ってない」ように見えるのですね。アフィリエイト広告では、不正広告削減のために、どのような取り組みが行われたのですか?

笠井 日本アフィリエイト協議会が呼びかける形で、アフィリエイター、広告主、ASPが三者一丸となって取り組みました。ASP事業者は、常にアフィリエイターのサイトを監視し、違法な表現で商品を宣伝していないかチェックし、アフィリエイターの皆様には、悪質な広告主の商品を紹介しないようご協力いただきました。また、広告主の皆様にも、違法な表現で商品購入を煽るアフィリエイターに対して、自社の商品掲載を許可しないようご協力いただいたんです。

――一方で、いまだ野放し状態の運用型のネット広告の現状については、どう考えていますか?

笠井 アフィリエイト広告で削減できたので、運用型のネット広告においても、減らしていくことはできるでしょう。というのも、悪質な事業者というのは数が限られていて、悪質な通販会社、広告代理店、制作会社は、ネット広告業界内でもう特定されています。例えば、違法広告が100あるとして、仲介してる広告会社は大体5社、その資金源になっている商品の販売会社も5社くらい。その事業者5社を取り次がないよう止めればいいだけなんです。

――悪質広告の排除には、各方面からの対策が必要なのですね。

笠井 はい。第一に、消費者の方に問題を知っていただくこと。今回のようにマスコミを通して、知識をつけていただくことはとても大切です。第二に、悪質な通販事業者を潰していくことです。これは今、警察、消費者庁など関係各所がどんどん動いています。そして、3つ目は、いまお話したように、広告を仲介する広告会社や大手サイトが違法なものを取り次がないようにすること。まずは、影響力の大きいFacebookやインスタグラム、Google、YouTubeなどの大手プラットフォームが悪質広告主を突っぱねるようにしていただければ、消費者トラブルも激減させることができるはずです。

――警察、消費者庁の動きで摘発された事例は、どんなケースがありますか?

笠井 最近の事例では、「医者が『何コレ…!?』と絶句するほど”脂肪肝”だった私が、お酒も食事も我慢せずにわずか1か月で正常値まで下げた『最強健康法』とは!?」といった広告を出していた「ステラ漢方」の事例があります。

 7月に、ステラ漢方の広告担当者や担当広告代理店の社長ら計6名が大阪府警に薬機法違反で逮捕されました。ステラ漢方が販売するような「健康食品」が「医薬品」のように効能を説明することは、薬機法で禁じられています。

――関係者が行政処分された事例もあるんですね。

笠井 はい。ほかには、定期購入の契約をめぐり、今年8月に「麹まるごと贅沢青汁」の販売会社wonderに対して、消費者庁より6カ月間の業務停止命令、つまり「ビジネスをしてはいけない」という処分が下されています。消費者を誤認させるようなわかりにくい表記をしてはいけない、と定められている特商法に違反したケースです。

 ほかにも、3月に株式会社ニコリオが販売するダイエットサプリメントにおいて、景表法に違反していると、今後同様の表示を行わないよう埼玉県が措置命令を出しています。景表法は「誇大広告を禁ずる法律」です。

――警察や消費者庁が着々と動いていることがわかりますね。

笠井 はい。さらに行政だけでなく適格消費者団体も対策に動いています。二コリオの措置命令処分においては、埼玉の「埼玉消費者被害をなくす会」による尽力もあったようです。こうした消費者センター、消費者団体など関係各所による消費者を守るための適切な処分も、不正広告の抑止力になり、日々地道な活動が続けられています。

 我々アフィリエイト業界団体としても、消費者トラブルをなくすため『正しくアフィリエイトしよう!』という啓発・啓もう資料の無償公開や、「健康食品や化粧品の定期購入アフィリエイトの取り組み方指針」の公表等を行っておりますので、アフィリエイトやネット広告に関わる方にはぜひご覧いただければと思います。

――後編は9月22日公開

『ザ・ノンフィクション』上京ホームレス青年に疑われる「情報商材ビジネス」――大金を稼いだ元ネオヒルズ族の中には「後悔」する者も?

 9月13日に放送された、人気ドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)の「東京でビッグになりたい ~所持金10万円の上京ホームレス~」が、視聴者から大きな反響を呼んでいる。

 今年2月、所持金10万円で、地元・熊本から上京した22歳の青年・ケイタは、「ZOZO創業者・前澤友作を超える社長になる」という夢をかなえるため、都内の公園でホームレスをしながら、有名社長にアポなし訪問しようとするなど、突拍子もない行動ばかり繰り返していた。そんな中、ケイタは、2万円を元手にスマホでFX取引を始めるのだが、なんとこれが大当たり。最終的に700万円まで利益を伸ばすことに成功し、ケイタは高級焼き肉に舌鼓を打ち、ブランド物の洋服を身にまとうなど、豪勢な暮らしを始め、どんどんと“お金”の魔力に取りつかれていく……という様子が描かれた。

 この回は、放送直後から視聴者の間で「情報商材の宣伝につなげる気では?」といった疑問の声が飛び交うことに。というのも、ケイタが『ザ・ノンフィクション』出演を利用し、「FX必勝法」の情報商材ビジネスに乗り出しそう……といった疑惑の目を向ける者が続出したのだ。情報商材ビジネスとは、「○億円稼げる投資術」「1分の作業を1日10回するだけで月収○万円」などのようなお金儲けのノウハウを、主にインターネットで売るものだが、国民生活センターには「実際は儲からない」という苦情が殺到しており、違法性の高いいかがわしい商売として認識されているのだ。

 かつてその羽振りの良さで話題になった「ネオヒルズ族」の多くも、この情報商材ビジネスによって大金を稼いでいた。「ビッグになりたい」という夢を語り、金を手にした途端、人が変わったように散財し始めたケイタの姿は、ネオヒルズ族のイメージに重なるところがあるといえる。そんな彼だけに、情報商材ビジネスに手を染める可能性は限りなく高いような気もするが、元ネオヒルズ族の中には、過去のことを“後悔”する者もいるようだ。

 サイゾーウーマンではかつて、「【元ネオヒルズ族はいま】久積篤史が『奇抜さ演じた過去』『情報商材ビジネスへの後悔』を激白」というインタビュー記事を公開。“秒速で1億円を稼ぐ男”与沢翼氏に師事していた久積氏は、2013年12月に情報商材ビジネスを引退したというが、なぜその決断に至ったのか――。『ザ・ノンフィクション』により、情報商材ビジネスがにわかに注目を集める今、あらためて同記事を掲載する。
(編集部)


(初出:2018年1月13日)

【元ネオヒルズ族はいま】久積篤史が「奇抜さ演じた過去」「情報商材ビジネスへの後悔」を激白

motohiruzuzoku

 2013年頃、メディアで盛んに取り上げられ、一躍脚光を浴びた、六本木ヒルズに居を構える“ネオヒルズ族”を覚えているだろうか? その1人である久積篤史氏は、高校卒業後、アパレル、ホスト、キャバクラのボーイなどの仕事についた後、起業を志して11年に上京。一時は漫画喫茶で寝泊まりすることになるも、そのわずか1年後には、ネオヒルズ族のリーダーと称される“秒速で1億円を稼ぐ男”与沢翼氏に師事して、インターネットビジネスで成功を収める。しかし、13年12月に情報商材ビジネス業界から引退――若干28歳で成功をつかみ、誰もがうらやむ生活を各種メディアで報じられた元ネオヒルズ族・久積氏のその後をレポートする。

六本木ヒルズは撤退したが、今も六本木に暮らしている

――六本木ヒルズからはいつ頃退去されたのですか?

久積篤史氏(以下、久積) 13年には退去して港区タワーマンション最上階ペントハウスに引っ越しました。私はずっと六本木というわけではなく、虎ノ門ヒルズ(15年入居)などヒルズ系を転々としています。六本木ヒルズは、住むと人脈が広がりやすいという点で、非常に魅力的でしたし、ほかにも当時は、職場に近いという利点もありました。

――そして今はまた六本木に住まれていますが、暮らしやすいなど、メリットがあるということでしょうか?

久積 暮らしやすいかというと、ココ(某高層マンションの最上階ペントハウス)も見晴らしは確かにいいですが、騒音があるなど、生活するには適していないと思っています。オフィスとしても一部使用しているものの、社員は世界各地からのオンライン出社なので、基本的には私と彼女で使っています。こう話すと、なぜ今も六本木にある部屋を借りているのかと思われるでしょうが、実はここは私の先輩にあたる与沢翼さんが暮らしていた部屋なんです。思い出もありますからね。与沢さんが引き払った後に、手を尽くして物件を確保しました。

――与沢さんとは不仲説も流れていましたが、そういうわけでもないのですか?

久積 確かにネットでその説が流れたときには、喧嘩をしていた覚えがあります。私も当時はまだまだ子どもでした。ですが、いまでも与沢さんがいたから、今の久積篤史という存在があると思っていますし、連絡を取れる関係値にいますよ。いまはドバイにいますけど、やはり稼いでいますよね、翼会長。

――与沢さんといえば、豪快なお金の使い方が話題になりました。久積さんはどのような遊びをされていましたか? やはり当時と今では遊び方も違いますか?

久積 ネオヒルズ族と呼ばれていた頃は、クラブやキャバクラで遊んだり、パーティーを開いて騒いだりと、皆さまがイメージしているのと変わらない遊び方をしていたと思います。ここ最近でというと、遊んだ記憶はないです。ネオヒルズ族のイメージから、私が女の子をはべらせて高いシャンパンを飲んでいる、と想像されていると思うのですが、私はお酒が好きではないので、そういった遊びが特に好きということもないんです。実は私、結構オタクでして、SNSやサイトを弄ったりするのが好きなので、いまは1日中パソコンと向き合って仕事をしています。

――やはりメディアで見せる姿は違うのですね。

久積 メディアに出演する際は、特に言動には注意を払っていました。カメラを自分自身に向かせるような奇抜な言動をあえて取るようにしていたんです。それが求められていましたから。現代は企業や組織といった枠にとらわれず、スマートフォン1台さえあれば、個人が光り輝ける時代。芸能人やYouTuberやインスタグラマーも同じで、当時は「久積篤史を売る」ことが会社の繁栄につながっていたわけです。

――久積さんは、漫画『闇金ウシジマくん』(小学館)の「フリーエージェント編」にクレジットされたことがあります。ネオヒルズ族をモデルにしたマルチ商法詐欺の話で、無料セミナーに参加者を募り、その後高額の情報商材を販売するといった手法が紹介されました。久積さんも悪役のモデルにされるのはわかっていたと思うのですが、どうしてまた取材を受けられたのですか?

久積 あれも面白い経験でしたね。取材に来られた作者の真鍋昌平さんからも、「うちの漫画知ってる? 結構描いちゃうけど大丈夫?」と何度も念押しされました。いろいろと質問を受けましたが、真鍋さんはとても感じのよい方でした。描かれ方についても特に嫌だと思ったことはありません。実際、連載されたときには、うれしかったです。

――『ウシジマくん』で描かれた情報商材ビジネスと、実際に久積さんたちが扱われていた情報商材ビジネスの違いについてお教えいただけないでしょうか?

久積 身もふたもない言い方ですが、一言でいうなら同様のものです。『ウシジマくん』の「フリーエージェント編」で上手に描かれていますから、読んでいただくのが一番わかりやすいかもしれません(笑)。

――ネオヒルズ族と呼ばれていた当時、販売していた情報商材が詐欺だという声もありました。15年の「アサヒ芸能」(徳間書店)の記事で、被害者の会が立ち上がったとか。その後、何かあったのでしょうか?

久積 被害者の会は、私も「アサヒ芸能」の記事で知りました。弁護士を通じて編集部に確認したのですが、会自体は本当に存在してはいたそうです。裁判になるのかと思ったものの、その後、特に動きもなく、訴状や申し入れも届いていませんね。

 「ネオヒルズ族は何も作っていない」という批判がありますが、私が12年末に情報商材の販売を辞めた一因も、ノウハウや情報を扱うだけで、残るもの、形があるものを、「何も作っていない」ということが大きかったんです。もともと何がしたかったのか考え、「上場企業を創りたい」と思って上京した原点に立ち返り、13年からインフルエンサーとして活動を始めました。

――久積さんは、日本の元祖インフルエンサーと名乗られていますが、具体的にはどのような人のことを指すのでしょうか?

久積 インフルエンサーというのは、YouTuberやブロガー、インスタグラマーなどのSNS上で強い発言力を持つ人々のことです。私自身も13年から企業情報などを発信していくインフルエンサー(ジャンル:ビジネス)として活動していますが、SNSが発達していくにつれて益々活躍の場が増えています。

 私はAmeba、FacebookやTwitterのようなウェブサービスを見て、自分もこういったサービスを作り上げてみたいと思っていました。そこでまずインフルエンサーとして活動を始め、いまでは1,000名ほどのインフルエンサーさんたちと一緒に仕事をするようになっています。最近ではマーケティングを依頼したい企業や個人と、インフルエンサーたちをマッチングするシェアリングエコノミー「パトロン/Patron」を立ち上げるところなのですが、予想以上の反響があり、驚いているぐらいです。

――ネオヒルズ族としての活動経験は生きていますか?

久積 はい、私がソーシャルメディアを使って、さまざまな活動を行ってきたことには一貫性があります。それは、「SNS発の〇〇」といった、久積篤史個人としてインフルエンサーという名称や存在を広めるための活動です。

 私には「SNSを活用したビジネスを行う若手起業家」「ソーシャルメディアを使ってCD1万枚を売ると豪語したSNS発のメジャーデビュー歌手」「SNS発 EDMユニット“MicroCeleb”のDJ兼プロデューサー」という肩書があります。Facebookを用い、台湾・台北の会場へ現地人(台湾人)のみを送客し、久積篤史来台講演も行いました。

ホリエモンは今の若い子にまったく響いていない

――17年2月にアメリカに会社登記されていますが、なぜアメリカなのですか?

久積 アメリカのデラウェア州に会社を設立したのは、そこを足掛かりとしてシリコンバレーに進出したいと本気で考えているからです。まだ準備中なので具体的にはお伝えできないのですが、成功すれば18年には進出します。

――日本のヒルズから世界のシリコンバレーに進出すると。まさに成り上がり、ですね。

久積 私自身が掲げている、一番の大きな野望は、同年代であるFacebookのCEO・マーク・ザッカーバーグに、僕が作ったウェブサービスを買収してもらうこと。インスタグラムもたった8人で立ち上げたサービスが、800億円で買収されました。インターネットという、人が集まる世界に投じられるお金は無限大。私たちは次なるインスタグラムやSnapchat、Uber、Airbnbを目指さなければならないんです。

 やれ、メルカリがシリコンバレーにまで進出したとか、LINEの元社長がインフルエンサー関連の次世代メディアを創ったとか、ホリエモン(堀江貴文)さんや藤田(晋)社長がまた新しいことを始めた……など、よく耳にしますが、ハッキリ言って、彼らはもうおじさん世代。僕からしたらヒーローみたいな経営者であったとしても、今の20代の若い子たちにはまったく響いていませんよ。18年は、シリコンバレー進出です。見ててください。 私たちで、世界を圧倒してみせますから。

――ネオヒルズ族時代に感じた勢いはまったく衰えていないですね。久積さんは、大金を稼ぎ、世間的には成功を収めているとみられていますが、自分自身をどのように捉えていますか?

久積 私はネオヒルズ族が成功したとは思っていません。ネオヒルズ族はインターネットを使い、個人で稼ぐ力を一定レベルで手に入れただけなんです。お金を稼ぐことだけが目的であれば、それは事業だとは言えません。私たちはネオヒルズ時代に実体のないような副産物を産んでしまいました。その責任を取らなければならないとも思っています。今もいますが、アンチアフィリエイターや他者を貶めるサイトを故意に立ち上げては、さらに稼げる情報はこちらと誘導して小銭を稼ぐような人たちも多かったんですよ。

 そんな過去があるからこそ、世の中に必要なウェブサービスを構築して、広めていかなければならない。「ネオヒルズ=情報商材屋」ではなくて、ネオヒルズ族の中にも本物の起業家がいたんだってことを証明したい。私にとって結局はこれが全てなのでしょう。

久積篤史(ひさつみ・あつし)
12年にネオヒルズ族として“秒速で1億を稼ぐ男”与沢翼氏を師事し、インターネット業界で成功をおさめるも13年12月に情報商材業界から引退。以後、「元祖インフルエンサー」として国内のみならずアメリカ、台湾など諸外国と世界規模で活動を続ける。17年2月にアメリカのデラウェア州に会社EXTRAVAGANZA INTERNATIONAL, INC.を設立。

EXTRAVAGANZA INTERNATIONAL, INC.

BTS、こんまりも包容する『アメリカン・セレブリティーズ』――海外セレブウォッチャーが語る、“熱狂”の理由

 人気と実力を兼ね備えながらも、長らくオスカーに振られていたレオナルド・ディカプリオ、キャリア初期にはレコードレーベル幹部に見向きもされなかったものの、2019年には「最も裕福な女性アーティスト」となったリアーナ。

 20組のセレブリティのキャリアと、ショービズ界及びアメリカ社会の変遷を追った『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)。著者は、さまざまなカルチャー/音楽サイトでセレブの魅力を解説するライターの辰巳JUNK氏だ。アメリカでキャリア形成し始めたセレブだけでなく、BTSや近藤麻理恵(こんまり)らも取り上げ、多様性や社会正義を実現するために大きく変わりつつある今のアメリカを読み解くことができる。その鋭い分析を支えるのは、辰巳氏の圧倒的な知識量とリサーチ能力。彼女にとってセレブを追いかける魅力とはなにか? 今回、リモートで話を聞いた。

――辰巳さんには、サイゾーウーマンでもこれまでに米エンタメ対談で登場いただいていますが、会話の端々からすさまじい知識量を感じます。そもそも海外セレブを追いかけるきっかけはなんだったのでしょうか?

辰巳JUNK氏(以下、辰巳) ちょっと記憶があいまいで。というのも、2000年代の頃からインターネットが大好きだったので、ウェブニュースを見ているうちに自然とセレブリティの沼にはまっていった感じなんです。

 興味深かったのは、アメリカのメディアでセレブリティのゴシップや言動が「ポップカルチャー」として真剣に論じられていたことです。たとえば、2000年代には、人気セレブが出産した場合、大手娯楽誌「People」の表紙で写真を公開することが定番でした。しかし、2010年代に入ると、ビヨンセやカイリー・ジェンナーを筆頭に、スターが自身のインスタグラムで子どもを初公開する習慣が根づきました。

 この背景には、ソーシャルメディアの台頭と旧来メディアシステムの凋落、それに従ったビジネスモデルの変化が見て取れます。日々供給される「セレブニュース」は、ある種「無くてもいいもの」として生活者の日常に馴染んでいるからこそ、社会環境や世論の変化が即座に表出したりする面白さがあるかな、と。

――辰巳さんの執筆する記事は、ゴシップ要素や経済、社会背景にまで踏み込んだ多層的な記事が多いですね。読者の反応から、日本ではどういったセレブ、どういったニュースに興味を持たれていると感じますか?

辰巳 ウェブ媒体の場合はさまざまな要素が関連してくるので、固有の名前を挙げるのは難しいのです。体感的には、フォーカスするトピックも重要かもしれません。ほんの一例ですが、ダイバーシティや経済格差といったイシューは日本でも関心が持たれていますよね。最近好評をいただいた記事でいうと、たとえば「アメリカの女性ポップスターはフェミニスト宣言する人が多いように見えるけど、昔からそうだったのか?」と探る企画。(同記事中で触れる)ビヨンセやテイラー・スウィフトの新作には興味がないけれどフェミニズムや「芸能人の政治的発信」問題への関心は持っている方々……つまり「米国大衆娯楽のファン層から離れた読者層」に多少リーチできたのかなと。こうしたイシューを扱うバランスは常に悩むところですが、最終的には、「紹介される表現者やコンテンツへの興味が増す記事」というのが理想です。

――『アメリカン・セレブリティーズ』はまさにその視点から書かれているように感じます。セレブの言動やキャリア形成から、アメリカの時流を見るようになったきっかけはなんでしょう?

辰巳 もともと、ポップカルチャーと並行して社会経済のニュースが好きだったので、その2つがオフィシャルなかたちで絡み合ったコンテンツが多いアメリカの大衆娯楽に特に惹かれた流れです。

 特に09年のオバマ政権発足以降、政治や社会問題にまつわるエンターテイナーの発信が目立っていきました。その象徴が、本の第一章で紹介した歌手のレディー・ガガ。たとえば、日本でも話題になった「生肉ドレス(10年の「MTV ビデオ・ミュージック・アワード」にて着用された、すべて生肉でつくられたドレス)」は、実は米軍の同性愛差別的ルール撤廃運動の一貫でした。このように、米国で注目度が高い社会問題の存在を認知していないとポップカルチャーのコンセプトが掴みにくくなったので、より調べるようになった面もあるかもしれません。

――これまでにも過激なパフォーマンスでフェミニズム論争を起こしてきたマドンナ、ダンフール紛争解決を働きかけていたジョージ・クルーニーら、政治的発信を続けてきたセレブはいましたが、現在との違いは?

辰巳 いわゆるリベラルな政治観やプロテストを発信するスターは明らかに増えました。背景には、ソーシャルメディアが普及したことで、セレブ側がいろんな発信をしやすくなった環境変化が存在します。加えて、一般の人々もSNSによって発信力を持っていきました。もちろん、政局も深く関係してくる。こうしたものごとの相乗効果によって、セレブの政治的発信が増えたと同時に、そうした行動を求める消費者も増加しました。結果、「SNS更新頻度が高いセレブが注目度の高いソーシャルイシューについて発言していない」だけで叩かれたりする状況も生まれます。

 たとえば、16年、テイラー・スウィフトとカニエ・ウェストの対立が激化したころ「(そんなくだらないことより)もっと話すべき重要な問題がたくさんある」とツイートしたセレーナ・ゴメスが、「ブラック・ライブズ・マターについて何も語らないくせに」と批判される一悶着が起きたりしました。

 2000年代との違いを端的にまとめるなら、「2010年代のポップミュージックでは“リベラルな政治関与”が“選択肢”というより“必須条項”になった」旨をメディア「Pitchfork」が伝えたのですが、その表現が思い出されますね。

――アメリカ社会の変化のスピードはすさまじいですが、そんな中で初期のキャリア/キャラクターから辰巳さんの想像を超えて“変貌”したセレブはいますか?

辰巳 衝撃度だと、キム・カーダシアンですね。リアリティショーで当たって、「下世話な話題ばかりの三流セレブ」ポジションで話題を連発した結果、世界随一のインフルエンサーとして億万長者になり、アメリカ合衆国大統領をも動かすパワープレイヤーになったという……。キムもトランプ大統領も、リアリティショーとソーシャルメディアの名声を駆使してパワーを強めた人なので、まさに2010年代セレブリティカルチャーの象徴かもしれません。

 あと、本を書いて気づかされたのは、ビヨンセがいかに革命家であるか。彼女は大々的にフェミニスト宣言を行ったり、国民的スポーツイベント「スーパーボウル」でブラック・ライブズ・マター的なパフォーマンスを行って強い反発を受けたりと、スーパースターとしてリスキーな表現を続けているんです。その結果、ショービズ全体でフェミニスト宣言が女性セレブのスタンダードになったし、ポップスターのプロテスト表現も増えていった。ビヨンセはリベラルなセレブリティとして「正解な選択」をとる優等生、みたいな風評もあるのですが、実のところ、その「正解な選択」自体、彼女自身が押し進めたもの……ビヨンセによって「新たなる業界スタンダード」として普及したものなのではないか、と。

 また今年、自身で監督した映画『ブラック・イズ・キング』も公開されたのですが、そこでは、スピリチュアルなかたちで、アフリカン・アメリカンという人種とルーツそれ自体を祝福する試みを行っていて。ソーシャルメディア普及以降、身近な存在のスターが増えたというのは本で書いたのですが、ビヨンセは今だ「ビッグな存在」のスーパースターとして大義を果たそうとしているように見えます。

――いまアメリカでは、コロナ禍で経済格差が今まで以上に露骨に表れ、BLM運動により人種差別に対しても具体的な解決を求める動きになり、それらをエンパワメントするセレブも多い。一方で、類似した問題を抱えているはずの日本では、それらの動きを「他人事」「理想論」として見る向きもあります。日本で生まれ育った人と米セレブの距離感をどう見ていますか?

辰巳 基本的な話として、日本とアメリカのショービズは簡単には比較できないと思います。契約体制から異なるでしょうし、エンターテイナーの政治的発信に対するネガティブな反応は米国でも珍しくない。ただ、日本の芸能界でもソーシャルメディアが普及してきていますし、社会問題にまつわる発信も増えていっているように感じます。

 距離感については、いろいろな「違い」を感じることは多くなりがちだと思います。言語自体がハードルになりやすいですしね。ただ、そうした現実のボーダーや距離を超えて心を突き動かされたり、共振を与えられたりすることがアートの美点だと思います。逆のパターンですが、日本のアニメ『ドラゴンボール』(原作:鳥山明)はアフリカン・アメリカンの男性にとても人気があるといわれています。よく語られるのは、ほかの惑星からやってきた主人公がときに憤怒しながら戦いを繰り広げていく構図が、不平等な環境で「強さ」を求められる黒人男性の境遇と似ている、という意見。たとえ作者自身がそう意識していなくても、受け手によってさまざまな感情や影響が生まれて、広まっていくわけです。

 正直、本で取り上げたようなトップスターは、大きな注目に晒されながら大金を稼いでいる人ばかりなので、世界中の多くの人々にとって「雲の上の存在」ではあるでしょう。でも、彼らの作品や発信、ふとしたとき漏らされるなにかに心動かされるファンは多い。『アメリカン・セレブリティーズ』は文体もトピックもかためにしてありますが、どこかで対象のセレブリティの軌跡や信念に心を動かしてもらえたらいいな、という想いで書きました。

辰巳JUNK(たつみ・じゃんく)
平成生まれのポップカルチャー・ウォッチャー。主にアメリカ周辺のセレブリティ、音楽、映画、ドラマに関する論考をウェブメディア中心に寄稿している。

マスクに皮脂・汗で毛穴パカーン! 夏に溜まった「角栓・皮脂」対策方法を皮膚科医・上原恵理が解説

 今年の夏はマスクの装着に加え、命を脅かすレベルの猛暑が続いた。ただでさえ、ベタつきやすい夏の肌にマスクが長時間接触するせいか、ネット上では「いつもより毛穴が目立つようになった。マスクのせい?」「毎日マスクをしてたから、小鼻の角栓が手強い気がする」といった、毛穴や角栓に悩まされている声が聞こえてくる。

 そこで、美容皮膚科医の上原恵理先生に、マスクが及ぼす角栓への影響と、医師から見た角栓対策方法を聞いてみた。

――今年の夏は例年より角栓がごわつく、毛穴が目立つという声がありますが、マスクと関係はありますか?

上原恵理医師(以下、上原) まず前提として、顔の肌は刺激を受けると、脂の膜で顔を守ろうとして自然と皮脂を分泌してしまうんですね。皮脂分泌が多くなれば、一定の方は毛穴の中に固まってしまい、角栓になってしまったり、ニキビが悪化してしまう。オイリー肌でなくても、マスクの装着が刺激となって、肌を守ろうとする機構が働いてしまい、通常より皮脂分泌が促されるんです。マスクがある程度の皮脂は吸い取りますが、そのまま毛穴に固まると、角栓になってしまうと考えられます。毛穴についても、角栓や脂が詰まってると開いて見えるので、マスクの影響は少なからずあると思います。

――マスクの接触が刺激になってるんですね。でも、しないわけにはいきませんし……。

上原 今の時代、マスクをしない生活は無理ですよね。肌に優しいガーゼのマスクなど、いろいろなメーカーから布マスクが出ていますが、医師としての立場で言うと、機能的には信頼できない。マスクの性能とはフィルター部分での微小粒子(PM2.5)、ウイルス、菌、花粉の遮断性能を指します。

 一般的に不織布のマスクには性能評価としてそれぞれPFE、VFE、BFE、花粉遮断率99%以上などの表示がされていますが、それに対して、布マスクは一般的にそうした表記がないものが多い。その理由としては、大半の布マスクは、ウイルスや細菌を透過させてしまう繊維密度のため、バリア性能を謳えない商品が多いためです。

 コロナウイルスの感染防止のためにマスクを着用している方が多い現時点では、マスクの機能を無視することはできません。おしゃれで肌に優しくても感染防止機能が不足していたら意味がないですよね。これから先、機能的にも優れたマスクが登場するとは思いますが、今この瞬間、感染予防の役割を果たすと医学的に担保されてるのは、不織布マスクだけです。ただ、肌への刺激を少しでも防ぐなら、シルクでできたシートがあります。マスクのインナーに使うものですね。しかし、今度は通気性が悪くなってしまいます。

――そうなると、スキンケアでの対策になりますか?

上原 そうですね。角栓ケアに必死になる方は、洗顔で落とそうとゴシゴシしたり、毛穴パックを使いがちなんですが、それよりは、皮膚が脂を作ろうとする働きを抑制することが大切です。そのためには、まずは水分系の保湿。肌に水分があると、刺激を受けても「守られてる」と感じるから、皮脂を出す働きが抑えられます。

 それ以外では、皮脂の分泌を抑制するような成分として、ビタミンCとかビタミンA。 ビタミンCのほうがみなさんよく聞くと思いますし、美容に詳しくない方でも、ドラッグストアのアイテムで手に入れられます。そうした製品を塗り薬の感覚で使うことにより、皮脂が出にくくなり、角栓も詰まりにくくなる。スキンケアの延長線上にある対策なので、とっかかりやすいですね。

 あとは、美容クリニックでの施術もあります。レーザー機器や、飲むお薬があるので、かなり皮脂分泌は抑えられると思いますよ。

――保湿が大事となると、日中にエアコンで乾燥を感じたときも化粧水をスプレーなどしたほうがいいんですか?

上原 そんなのは意味がありませんよ! 昼間に乾燥を感じるというのは、スキンケアがそもそも間違ってるんです。スプレーで化粧水をつけても、それが蒸発するとき、さらに水分が肌から奪われていくだけ。考えてみてください。スキンケアの最後には、クリームなどの油で肌に蓋をしますよね。その上に水をかけたところで、入っていきますか? 日中の化粧水スプレーは自己満です。

 水分系の保湿に必要なのは水だけではなく、それを肌にとどめてくれる作用のある、肌に水を抱え込むセラミドや、NNF(天然保湿因子)、ペプチドです。これで保湿したあとに油で蓋をしてあげる。それを朝やれば、大丈夫なはずです。それでも角栓がひどいのであれば、そもそものスキンケアを見直しましょう。

――自分のスキンケアのクセが、皮脂分泌をひどくしていることもあるんですか?

上原 すごくあります。顔を洗うときに、前髪を上で留めずに横に流しているとか、その人なりのクセ。それで洗顔の泡が残ったり、ちゃんと洗えていなかったりしますよね。ただ、クセは自分では気づけないものですよね。私に診せていただければ、画像解析ソフトの画像をもとにスキンケアのクセと問題点を言い当てられますよ(笑)。とにかく、角栓はゴシゴシ洗顔したり毛穴パックでどうにかしようとせず、水分系の保湿を試してみてくださいね。

「男性は性欲を制御できない」という認識が、あらゆる問題を煙に巻く――性教育、AV、戦隊モノが生む古い価値観

 刑務所に入れることで“罰”を与えても、更生につながっていない現状が見え隠れする、DVや性犯罪加害者たち。前回は、彼らの再犯を防ぐ更生プログラムのひとつ、「加害者臨床」の内容について話を聞いたが、この取り組みは、なかなか広がっていかないのが現実だ。その背景には、日本社会にはびこる男尊女卑の価値観や、裁判に漂うアップデートされない固定概念があるという。

 被害者を増やさないために加害者臨床に携わる、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏と「NPO法人 女性・人権支援センター ステップ」の代表である栗原加代美氏に、引き続き話を聞いた。

■第1回:30年間、電車で痴漢を繰り返してきた――性犯罪“加害者”が語る「逮捕されてもやめられない」理由
■第2回:「女性は痴漢で気持ち良くなる」と信じていた――性犯罪加害者の言葉から、“治療”の在り方を問う
■第3回:性犯罪者・DV加害者は「排除すればいい」のか? 「孤立が再犯率を上げる」現場の専門家が訴えること

「変わらなければいけないのは妻」だと信じるDV夫

――お二人の話を聞いて、日本には“加害者の受け皿”がほとんどないと実感しました。なぜ「加害者更生プログラム」は広がっていかないのでしょうか?

斉藤章佳氏(以下、斉藤) 一言でいうと、物理的に難しいんです。たとえば、私がいるクリニックは女性スタッフも多いですが、そこに痴漢や盗撮の常習者が来るとなると、過去に被害に遭ったスタッフがいた場合、定着率に影響します。もちろん、彼らがクリニック内で痴漢や盗撮行為をすることはありませんが、人として心情的に受け入れ難いという場合もあります。

 また、地域からクレームの電話が来ることもあります。「性犯罪者が集まっていたら、何か事件が起きるんじゃないか?」といった具合です。依存症には、ある特定の状況や条件下で衝動制御が困難になり、問題行動につながる“引き金”があります。例えば、「満員電車を見ると痴漢がしたくなる」「エスカレーターでスマホを出すと盗撮したくなる」といったことですが、逆にいえば、その引き金を引かない限り、条件反射のスイッチは作動せず、脳の誤作動も起こりにくいため、彼らが問題行動を起こす可能性は低いです。こうした正しい認識がないため、過剰な排除意識につながっているのだと思います。

栗原加代美氏(以下、栗原) 私も同じような経験をしたことがありますね。事務所を探しているとき、下階に学習塾がある物件を借りようと思っていたら、オーナーから「DV加害者が集まるんでしょう? 子どもたちが暴力を振るわれたら大変なので、貸すことはできません」と言われたんです。そういったことが続き、今の物件を見つけるのに1年もかかりました。DVは夫婦や恋人、親子の関係性の問題なので、見知らぬ人に暴力を振るう人はほとんどいませんが、世間にはそういう“イメージ”があるんですよね。

――支援者側ですらそうした目を向けられているとなると、加害者自ら自助グループに入ったり、プログラムを受けに行くこと自体、非常にハードルが高いように思えます。彼らは、どのようなきっかけでやって来るのでしょうか?

栗原 我々のもとに来るDV加害者の場合は、周囲から「どうにかしたほうがいい」と言われても、すぐには動きません。妻が家から出て行って、初めて「まずい」と感じ、プログラムを受けに来るパターンが多いですね。あとは、妻に「おまえが行くなら俺も一緒に行ってやる」というDV加害者もいます。「変わるのは俺じゃなくて、おまえのほうじゃないか? なぜ俺だけ行かなきゃいけないんだ」という思考なんです。

斉藤 性犯罪の場合、「問題行為を始めてから治療につながるまでの期間」について、当院のデータがあります。痴漢の場合は8年、盗撮は7.2年、ペドフィリア(小児性犯罪者)が14年です。痴漢や盗撮の加害者は1週間で平均2〜3回の痴漢行為をするケースが多いですが、単純に計算すると、1人の痴漢や盗撮の加害者が専門治療につながるまで、平均で1,000人近くの被害者を出すことになります。

 私は初診時に必ず「逮捕されていなければ、ずっと問題行動を続けていましたか?」と質問するのですが、ほぼ100%が「はい」と答えます。加害者にとっては性欲だけではなく複合的な快楽を満たせる行為ですから、「バレない、逮捕されない限りは続ける」という思考パターンになってしまう。逮捕されてようやく自らの性嗜好に向き合わざるを得なくなり、「性依存症の専門治療」という選択が生まれるわけです。しかし、これも一つの選択肢にすぎないので、加害者本人が治療は必要ないと思えば、そのままになってしまいます。

栗原 私たちのプログラムを受けているDV加害者の場合、逮捕まではいかずとも、通報沙汰になった人は8割以上。それも、複数回です。DVの場合、被害者が通報したとしても、警察から「気をつけてくださいね。今夜はホテルに宿泊することをおすすめしますよ」なんて言われて終わってしまうことが大半です。警察の紹介を受けて加害者がうちに来ることもありますが、そうでなければ、自ら進んでプログラムを受けに来ることはほとんどありません。

 児童虐待の場合、児童相談所と警察が連携していますが、DVについても同じように、警察との連携をするべきでしょう。年間7万人のDV被害者がいますが、うちに来るのは約100人。単純に考えて、残りの6万9,900人は野放しになっているかもしれないわけです。まずは、この現状を知ってほしいですね。

――なぜ児童虐待と違って、DVに関する物事はなかなか進まないのでしょうか?

栗原 「夫婦げんか」という言葉が「DV」にアップデートされ、「DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)」が施行されてからまだ20年です。妻や夫に暴力を振るうことが“犯罪”だと認識されるには、もっと時間がかかるのかもしれません。

 DVには、身体的暴力以外に精神的暴力もありますが、「あなた、たたかれていないでしょ?」と、暴力を振るわれていないからと一蹴した弁護士を見たことがあります。通報を受けた警察官の中にも、妻に対して「あなたも悪いよね? じゃあ、お互いさまだ」などと言う人がいるようなんです。そうなると、DV加害者が、なかなか加害者意識を持ちにくい。自分が加害者だと気づき、「相手を傷つけてしまった」と反省することで、初めて「治そう」という意識が芽生えますが、周囲がこうした認識を持っているせいで、その段階にすら立てないわけです。

斉藤 日本で加害者更生プログラムが広がらない原因の一つとして、「マニフェストに掲げても票につながらない」という現実があると、政治家から聞いたことがあります。政治の世界に「加害者の更生は一般市民や地域社会の安全につながる」という理解が浸透すれば、もう少し状況はよくなるのではないでしょうか。今年2月、福岡県が全国に先駆けて「性犯罪加害者への治療費の公費助成」を始めると発表しました。これは、被害者の支援のほうが先ではないかなど賛否両論ありますが、画期的なことです。このような取り組みは、各都道府県に広がってほしいですね。

――お二人のお話を聞いていると、DVや性犯罪は「これをやればゼロになる」といった簡単な話ではないような気がします。もっと社会の根深いところに、問題があるというか。

斉藤 性犯罪はどうしても「性欲」の強さの問題に矮小化されがちですよね。だからSNSなどで「去勢しろ!」という意見が出るのでしょう。しかし、痴漢加害者200人に「痴漢行為時に勃起や射精を伴ったか」というヒアリングを行った当院の調査研究では、半数以上から「NO」という回答を得ています。

 私自身も加害者臨床に携わる前は、「性犯罪は性欲の強い人がやるんだろう」と思っていました。でも、現場で加害者たちに話を聞くようになると、「僕は性欲が強いからやったんです」という話はほとんど聞かなかった。4年制大学を卒業して、企業に勤めて、妻子がいて……という、我々とあまり変わらない人たちばかりなんですよ。では、なぜ痴漢を繰り返すのか? そう彼らに聞くと、支配欲や達成感、弱いものいじめの優越感、釣りに似たレジャー感覚、男性性の確認などが浮かび上がってきたのです。性暴力は、こうした複合的な“快楽”が凝縮した行為だからこそ、なかなかやめられないのだと確信しました。

栗原 私のプログラムに来た男性も、同じようなことを話していましたね。彼は電車の中で男性器を露出させたことがあると言い、その背景には、幼少期にネグレクト状態に置かれたことがあったと告白したんです。「自分の存在に気づいてほしい」という承認欲求が下地にあって、性欲が理由ではないんです。

――それなのにどうして、「性犯罪は性欲の問題」という認識が広がってしまうのでしょうか?

斉藤 性犯罪加害者に警察での取り調べについて聞くと、大抵計画的で「性欲の強さの問題」だというストーリーに誘導されているといいます。裁判でもよく、被告人側の証人として登場する妻に、検察官が「夫婦生活はどうでしたか?」と聞くシーンがあります。この質問の意図は「セックスレスが原因で事件を起こした」「妻が夫の性欲のケアをきちんとしていなかったから事件が起きた」という性欲原因論のバイアスがかかったものであると考えられます。法廷ではいまだに「性欲が背景にあり、それが抑制できず性犯罪が起きている」という認識が根強くあるため、裁判長の最後の訓示でも、「被告人は抑えきれない性欲が暴走し……」といったフレーズが使われることが度々あります。

 そういったことを含めて、世間には「男性は自分の性欲をコントロールできない」という価値観がありませんか? でも、友人の前でいきなりマスターベーションをしたり、交番の前で痴漢をする男性はいないですよね? なぜならば、「性欲をコントロールできている」からです。なのになぜ、男性は自分たちで「男は性欲をコントロールできない生き物だから」ということを否定しないのでしょうか? よく考えると、侮辱的な価値観ですよね。ということはつまり、この考え方で男性側が都合よく隠蔽できる事実があるからです。

 それなら一層、「性欲をなくせばOK」「去勢すれば再犯しない」ではないんです。これでは何も解決にならないことを、まずは知ってほしい。目の前にいる加害者は、日本社会の縮図です。社会に根強くある男尊女卑的な価値観を変えていく必要があります。そのうえで、無数にいる被害者と、その加害者がどう向き合っていくかが、とても大事なんです。

――政治や司法に影響するほど、世の中全体にはびこる根深くかたくなな価値観は、変わっていくものでしょうか?

斉藤 誰も小さい頃から「将来の夢は痴漢です」なんて思っていないですよね。生きていく中で、家庭や学校、メディア、そして社会を通して学習してしまった行動なんです。今の日本社会に前提としてある価値観を変えていかないと、加害者はどんどん再生産されていきます。

栗原 その通りです。たとえば幼少期に見る戦隊モノは、物事を暴力で解決しますが、これは社会全体に暴力容認意識、つまり「悪いことをしたら殴ってもいい」といった考えがあるからだと感じます。

――テレビのフィクションと自分の思考が一体化してしまう人がいるんですね。

斉藤 ある性暴力加害者は、毎回のマスターベーションの際、女性の顔に精液をかけて終わるAVを見ていたんです。中学生からそれを続けていた彼は、初めてできた彼女に同じ行為をしてひどく怒られ、傷ついている彼女を見てびっくりしたといいます。彼はそれが“常識”だと思い込んでいたから、傷つけるとは思わなかったんです。

 もちろん、新しい価値観を知り、インストールしてアップデートしていけるのが健全な大人なんでしょうけれど、そういった機会がなければ、刷り込まれたままの価値観で社会に出てしまいます。新しい価値観をインストールする力と、古い価値観をアンインストールする勇気を持ちたいですね。

栗原 「父親や教師も、怒ったときは暴力を振るった」と話すようなDV加害者も、ほかに怒りの表現の選択肢を持てない環境だった場合は多いですね。だから、健全な表現方法を伝えると、みるみる行動が改善していきます。

 「虐待は連鎖する」とよく言いますが、被虐者の半数は連鎖しないんです。そういう選択をした人たちが、子どもに手を出すようになるというだけ。だから私は、DV加害者にも「全員が連鎖するわけではない。あなたが選択した結果だ。だから、やめることもできる」と伝えています。

斉藤 それと、まず一次予防としては、性行為や出産のことだけではなく、性を通して人との関わり方や相手の立場を考えることを含めた「包括的性教育」が、最も重要ではないでしょうか。大人になっていくための価値観が育まれる最も敏感な小中高校時代に、性的同意などの話を含め、大人が正しく教育していくことが重要だと思いますし、まず大人たちがこのような価値観を積極的に学ぶ姿勢を示していかなければいけないと考えています。
(有山千春)

■斉藤章佳(さいとう・あきよし)
大船榎本クリニック精神保健福祉部長(精神保健福祉士/社会福祉士)。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」にソーシャルワーカーとして、約20年に渡りアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性犯罪・児童虐待・DV・クレプトマニアなど、さまざまなアディクション問題に携わる。その後、2020年4月から現職。専門は加害者臨床で、現在まで2,000名以上の性犯罪者の治療に関わる。また、都内更生保護施設では長年「酒害・薬害教育プログラム」の講師をつとめている。

■栗原加代美(くりはら・かよみ)
NPO法人女性・人権支援センターステップ理事長。同団体にて、 DV・ストーカー・虐待・加害者更生プログラムの講師を務めながら、被害者の回復プログラム・家族面談・ カップルカウンセリング・テレビ出演、DVやスト ーカー防止のセミナー講師として活動する。

「男性は性欲を制御できない」という認識が、あらゆる問題を煙に巻く――性教育、AV、戦隊モノが生む古い価値観

 刑務所に入れることで“罰”を与えても、更生につながっていない現状が見え隠れする、DVや性犯罪加害者たち。前回は、彼らの再犯を防ぐ更生プログラムのひとつ、「加害者臨床」の内容について話を聞いたが、この取り組みは、なかなか広がっていかないのが現実だ。その背景には、日本社会にはびこる男尊女卑の価値観や、裁判に漂うアップデートされない固定概念があるという。

 被害者を増やさないために加害者臨床に携わる、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏と「NPO法人 女性・人権支援センター ステップ」の代表である栗原加代美氏に、引き続き話を聞いた。

■第1回:30年間、電車で痴漢を繰り返してきた――性犯罪“加害者”が語る「逮捕されてもやめられない」理由
■第2回:「女性は痴漢で気持ち良くなる」と信じていた――性犯罪加害者の言葉から、“治療”の在り方を問う
■第3回:性犯罪者・DV加害者は「排除すればいい」のか? 「孤立が再犯率を上げる」現場の専門家が訴えること

「変わらなければいけないのは妻」だと信じるDV夫

――お二人の話を聞いて、日本には“加害者の受け皿”がほとんどないと実感しました。なぜ「加害者更生プログラム」は広がっていかないのでしょうか?

斉藤章佳氏(以下、斉藤) 一言でいうと、物理的に難しいんです。たとえば、私がいるクリニックは女性スタッフも多いですが、そこに痴漢や盗撮の常習者が来るとなると、過去に被害に遭ったスタッフがいた場合、定着率に影響します。もちろん、彼らがクリニック内で痴漢や盗撮行為をすることはありませんが、人として心情的に受け入れ難いという場合もあります。

 また、地域からクレームの電話が来ることもあります。「性犯罪者が集まっていたら、何か事件が起きるんじゃないか?」といった具合です。依存症には、ある特定の状況や条件下で衝動制御が困難になり、問題行動につながる“引き金”があります。例えば、「満員電車を見ると痴漢がしたくなる」「エスカレーターでスマホを出すと盗撮したくなる」といったことですが、逆にいえば、その引き金を引かない限り、条件反射のスイッチは作動せず、脳の誤作動も起こりにくいため、彼らが問題行動を起こす可能性は低いです。こうした正しい認識がないため、過剰な排除意識につながっているのだと思います。

栗原加代美氏(以下、栗原) 私も同じような経験をしたことがありますね。事務所を探しているとき、下階に学習塾がある物件を借りようと思っていたら、オーナーから「DV加害者が集まるんでしょう? 子どもたちが暴力を振るわれたら大変なので、貸すことはできません」と言われたんです。そういったことが続き、今の物件を見つけるのに1年もかかりました。DVは夫婦や恋人、親子の関係性の問題なので、見知らぬ人に暴力を振るう人はほとんどいませんが、世間にはそういう“イメージ”があるんですよね。

――支援者側ですらそうした目を向けられているとなると、加害者自ら自助グループに入ったり、プログラムを受けに行くこと自体、非常にハードルが高いように思えます。彼らは、どのようなきっかけでやって来るのでしょうか?

栗原 我々のもとに来るDV加害者の場合は、周囲から「どうにかしたほうがいい」と言われても、すぐには動きません。妻が家から出て行って、初めて「まずい」と感じ、プログラムを受けに来るパターンが多いですね。あとは、妻に「おまえが行くなら俺も一緒に行ってやる」というDV加害者もいます。「変わるのは俺じゃなくて、おまえのほうじゃないか? なぜ俺だけ行かなきゃいけないんだ」という思考なんです。

斉藤 性犯罪の場合、「問題行為を始めてから治療につながるまでの期間」について、当院のデータがあります。痴漢の場合は8年、盗撮は7.2年、ペドフィリア(小児性犯罪者)が14年です。痴漢や盗撮の加害者は1週間で平均2〜3回の痴漢行為をするケースが多いですが、単純に計算すると、1人の痴漢や盗撮の加害者が専門治療につながるまで、平均で1,000人近くの被害者を出すことになります。

 私は初診時に必ず「逮捕されていなければ、ずっと問題行動を続けていましたか?」と質問するのですが、ほぼ100%が「はい」と答えます。加害者にとっては性欲だけではなく複合的な快楽を満たせる行為ですから、「バレない、逮捕されない限りは続ける」という思考パターンになってしまう。逮捕されてようやく自らの性嗜好に向き合わざるを得なくなり、「性依存症の専門治療」という選択が生まれるわけです。しかし、これも一つの選択肢にすぎないので、加害者本人が治療は必要ないと思えば、そのままになってしまいます。

栗原 私たちのプログラムを受けているDV加害者の場合、逮捕まではいかずとも、通報沙汰になった人は8割以上。それも、複数回です。DVの場合、被害者が通報したとしても、警察から「気をつけてくださいね。今夜はホテルに宿泊することをおすすめしますよ」なんて言われて終わってしまうことが大半です。警察の紹介を受けて加害者がうちに来ることもありますが、そうでなければ、自ら進んでプログラムを受けに来ることはほとんどありません。

 児童虐待の場合、児童相談所と警察が連携していますが、DVについても同じように、警察との連携をするべきでしょう。年間7万人のDV被害者がいますが、うちに来るのは約100人。単純に考えて、残りの6万9,900人は野放しになっているかもしれないわけです。まずは、この現状を知ってほしいですね。

――なぜ児童虐待と違って、DVに関する物事はなかなか進まないのでしょうか?

栗原 「夫婦げんか」という言葉が「DV」にアップデートされ、「DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)」が施行されてからまだ20年です。妻や夫に暴力を振るうことが“犯罪”だと認識されるには、もっと時間がかかるのかもしれません。

 DVには、身体的暴力以外に精神的暴力もありますが、「あなた、たたかれていないでしょ?」と、暴力を振るわれていないからと一蹴した弁護士を見たことがあります。通報を受けた警察官の中にも、妻に対して「あなたも悪いよね? じゃあ、お互いさまだ」などと言う人がいるようなんです。そうなると、DV加害者が、なかなか加害者意識を持ちにくい。自分が加害者だと気づき、「相手を傷つけてしまった」と反省することで、初めて「治そう」という意識が芽生えますが、周囲がこうした認識を持っているせいで、その段階にすら立てないわけです。

斉藤 日本で加害者更生プログラムが広がらない原因の一つとして、「マニフェストに掲げても票につながらない」という現実があると、政治家から聞いたことがあります。政治の世界に「加害者の更生は一般市民や地域社会の安全につながる」という理解が浸透すれば、もう少し状況はよくなるのではないでしょうか。今年2月、福岡県が全国に先駆けて「性犯罪加害者への治療費の公費助成」を始めると発表しました。これは、被害者の支援のほうが先ではないかなど賛否両論ありますが、画期的なことです。このような取り組みは、各都道府県に広がってほしいですね。

――お二人のお話を聞いていると、DVや性犯罪は「これをやればゼロになる」といった簡単な話ではないような気がします。もっと社会の根深いところに、問題があるというか。

斉藤 性犯罪はどうしても「性欲」の強さの問題に矮小化されがちですよね。だからSNSなどで「去勢しろ!」という意見が出るのでしょう。しかし、痴漢加害者200人に「痴漢行為時に勃起や射精を伴ったか」というヒアリングを行った当院の調査研究では、半数以上から「NO」という回答を得ています。

 私自身も加害者臨床に携わる前は、「性犯罪は性欲の強い人がやるんだろう」と思っていました。でも、現場で加害者たちに話を聞くようになると、「僕は性欲が強いからやったんです」という話はほとんど聞かなかった。4年制大学を卒業して、企業に勤めて、妻子がいて……という、我々とあまり変わらない人たちばかりなんですよ。では、なぜ痴漢を繰り返すのか? そう彼らに聞くと、支配欲や達成感、弱いものいじめの優越感、釣りに似たレジャー感覚、男性性の確認などが浮かび上がってきたのです。性暴力は、こうした複合的な“快楽”が凝縮した行為だからこそ、なかなかやめられないのだと確信しました。

栗原 私のプログラムに来た男性も、同じようなことを話していましたね。彼は電車の中で男性器を露出させたことがあると言い、その背景には、幼少期にネグレクト状態に置かれたことがあったと告白したんです。「自分の存在に気づいてほしい」という承認欲求が下地にあって、性欲が理由ではないんです。

――それなのにどうして、「性犯罪は性欲の問題」という認識が広がってしまうのでしょうか?

斉藤 性犯罪加害者に警察での取り調べについて聞くと、大抵計画的で「性欲の強さの問題」だというストーリーに誘導されているといいます。裁判でもよく、被告人側の証人として登場する妻に、検察官が「夫婦生活はどうでしたか?」と聞くシーンがあります。この質問の意図は「セックスレスが原因で事件を起こした」「妻が夫の性欲のケアをきちんとしていなかったから事件が起きた」という性欲原因論のバイアスがかかったものであると考えられます。法廷ではいまだに「性欲が背景にあり、それが抑制できず性犯罪が起きている」という認識が根強くあるため、裁判長の最後の訓示でも、「被告人は抑えきれない性欲が暴走し……」といったフレーズが使われることが度々あります。

 そういったことを含めて、世間には「男性は自分の性欲をコントロールできない」という価値観がありませんか? でも、友人の前でいきなりマスターベーションをしたり、交番の前で痴漢をする男性はいないですよね? なぜならば、「性欲をコントロールできている」からです。なのになぜ、男性は自分たちで「男は性欲をコントロールできない生き物だから」ということを否定しないのでしょうか? よく考えると、侮辱的な価値観ですよね。ということはつまり、この考え方で男性側が都合よく隠蔽できる事実があるからです。

 それなら一層、「性欲をなくせばOK」「去勢すれば再犯しない」ではないんです。これでは何も解決にならないことを、まずは知ってほしい。目の前にいる加害者は、日本社会の縮図です。社会に根強くある男尊女卑的な価値観を変えていく必要があります。そのうえで、無数にいる被害者と、その加害者がどう向き合っていくかが、とても大事なんです。

――政治や司法に影響するほど、世の中全体にはびこる根深くかたくなな価値観は、変わっていくものでしょうか?

斉藤 誰も小さい頃から「将来の夢は痴漢です」なんて思っていないですよね。生きていく中で、家庭や学校、メディア、そして社会を通して学習してしまった行動なんです。今の日本社会に前提としてある価値観を変えていかないと、加害者はどんどん再生産されていきます。

栗原 その通りです。たとえば幼少期に見る戦隊モノは、物事を暴力で解決しますが、これは社会全体に暴力容認意識、つまり「悪いことをしたら殴ってもいい」といった考えがあるからだと感じます。

――テレビのフィクションと自分の思考が一体化してしまう人がいるんですね。

斉藤 ある性暴力加害者は、毎回のマスターベーションの際、女性の顔に精液をかけて終わるAVを見ていたんです。中学生からそれを続けていた彼は、初めてできた彼女に同じ行為をしてひどく怒られ、傷ついている彼女を見てびっくりしたといいます。彼はそれが“常識”だと思い込んでいたから、傷つけるとは思わなかったんです。

 もちろん、新しい価値観を知り、インストールしてアップデートしていけるのが健全な大人なんでしょうけれど、そういった機会がなければ、刷り込まれたままの価値観で社会に出てしまいます。新しい価値観をインストールする力と、古い価値観をアンインストールする勇気を持ちたいですね。

栗原 「父親や教師も、怒ったときは暴力を振るった」と話すようなDV加害者も、ほかに怒りの表現の選択肢を持てない環境だった場合は多いですね。だから、健全な表現方法を伝えると、みるみる行動が改善していきます。

 「虐待は連鎖する」とよく言いますが、被虐者の半数は連鎖しないんです。そういう選択をした人たちが、子どもに手を出すようになるというだけ。だから私は、DV加害者にも「全員が連鎖するわけではない。あなたが選択した結果だ。だから、やめることもできる」と伝えています。

斉藤 それと、まず一次予防としては、性行為や出産のことだけではなく、性を通して人との関わり方や相手の立場を考えることを含めた「包括的性教育」が、最も重要ではないでしょうか。大人になっていくための価値観が育まれる最も敏感な小中高校時代に、性的同意などの話を含め、大人が正しく教育していくことが重要だと思いますし、まず大人たちがこのような価値観を積極的に学ぶ姿勢を示していかなければいけないと考えています。
(有山千春)

■斉藤章佳(さいとう・あきよし)
大船榎本クリニック精神保健福祉部長(精神保健福祉士/社会福祉士)。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」にソーシャルワーカーとして、約20年に渡りアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性犯罪・児童虐待・DV・クレプトマニアなど、さまざまなアディクション問題に携わる。その後、2020年4月から現職。専門は加害者臨床で、現在まで2,000名以上の性犯罪者の治療に関わる。また、都内更生保護施設では長年「酒害・薬害教育プログラム」の講師をつとめている。

■栗原加代美(くりはら・かよみ)
NPO法人女性・人権支援センターステップ理事長。同団体にて、 DV・ストーカー・虐待・加害者更生プログラムの講師を務めながら、被害者の回復プログラム・家族面談・ カップルカウンセリング・テレビ出演、DVやスト ーカー防止のセミナー講師として活動する。

性犯罪者・DV加害者は「排除すればいい」のか? 「孤立が再犯率を上げる」現場の専門家が訴えること

 昨今、事件報道の多くを占める、性犯罪や家庭内DV。そのたびに世論は、「去勢をすればいい」「隔離しろ」などと、厳しい加害者排除へ向かうが、現実には難しい。しかし、性犯罪やDVの再犯率は高く、一向に被害者は減らない状況だ。被害者を“増やさないため”、本当に必要なことは、一体なんなのか? その答えの一つとして、加害行動を心理的なアプローチから防ぐ「加害者臨床」と呼ばれるものがある。性犯罪やDVだけでなく、非行やいじめ、児童虐待などの現場でも行われている更生プログラムだ。

 痴漢で二度服役したあと、自らクリニックに通い、現在は加害行為をやめられているという50代男性・Oさんに話を聞いた第1・2回に続き、第3・4回は、痴漢やペドフィリア(小児性愛)などの性犯罪加害者の更生・治療に取り組む精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏と、DV加害者更生プログラムや被害者支援を行う「NPO法人女性・人権支援センター ステップ」の代表である栗原加代美氏に、性犯罪・DVの現場における「加害者臨床」の意義を聞いた。

■第1回:30年間、電車で痴漢を繰り返してきた――性犯罪“加害者”が語る「逮捕されてもやめられない」理由
■第2回:「女性は痴漢で気持ち良くなる」と信じていた――性犯罪加害者の言葉から、“治療”の在り方を問う

「怒鳴る」「殴る」でしか怒りを表現できないDV加害者

――お二人が、それぞれの分野で「加害者臨床」に携わることになったきっかけを教えてください。

栗原加代美氏(以下、栗原) 私は50代のとき、友人から「DV被害女性たちのシェルターを始めるから助けてほしい」と声をかけられ、この世界に飛び込みました。全国のDVホットラインに被害者から相談が来るのですが、「逃げてください」と伝えても、9割はその場から逃げられません。経済的理由や子どもの存在、夫からの仕返しへの恐怖などで、被害女性たちは我慢してしまうんです。

 本当の解決は「加害者に変わってもらうこと」であり、どんなに被害者を守っても、被害者は一生檻の中にいる感覚を持っています。ある更生プログラム参加者は、「加害者はサファリパークを自由に動き回る肉食動物で、被害者はバスに乗ってビクビクしながら身を寄せる客」だと言っていました。加害者の更生プログラムというのは、肉食動物を草食動物にして、被害者が安全に暮らせる環境を作る、というのが一つの考え方なんです。

 DV加害者のほとんどは、かつて暴力を振るわれてきた人間です。だからこそ、怒鳴るか殴るしか、怒りの表現方法を知らないんですよね。両親や先生、社会からも「問題があったら力を使えばいい」と教えられてきています。そうした歪んだ考え方が、DVや性犯罪に波及していくのではないかと考え、DV加害者臨床に取り組むことにしました。

斉藤章佳氏(以下、斉藤) 私は、約20年前にアジア最大規模の依存症診療施設である「榎本クリニック」でアルコール依存症の臨床に携わったのが始まりです。彼らと関わると、そこにあらゆる問題が集約されていることがわかりました。それは、多量飲酒で体を壊す健康問題、飲酒運転などの事故、DVや児童虐待、離婚や自殺に発展する家族問題。また、こうしたアルコール関連問題で転職を繰り返す職業問題。そして、飲酒酩酊中に重大な刑事事件に発展する犯罪です。

 アルコール関連問題と犯罪の研究では、殺人、強制性交、強制わいせつ、放火、傷害、強盗のいわゆる“六罪種”といわれる犯罪の加害者を対象に「対象行為時、飲酒していたか」を調査したデータがあるのですが、半数以上が飲酒酩酊中だったとのことです。

 その後、日本で初めてDV加害者の更生プログラムを始めた「メンタルサービスセンター」の代表・草柳和之さんと出会ったのが16年前、その2年後の2004年に「奈良小1女児殺害事件」(※)が起きました。これをきっかけに、DV加害者臨床をモデルにして、性犯罪の再犯防止プログラムを日本で初めて社会内で行える治療プログラムを立ち上げました。

※2004年11月、奈良県奈良市の小学1年生女子児童が誘拐され、その後、遺体となって見つかった殺人事件。犯人の自宅からは、幼児ポルノビデオが100本近く見つかるなどし、のちに行われた精神鑑定では「小児性愛障害」だと診断されている。裁判では、犯人が幼少期に父親から暴力を受けていたとの証言もあった。

――アルコール依存症と性犯罪とDVの根底は、通じるものがあるということですか?

斉藤 性犯罪加害者の背景には、男尊女卑や女性蔑視、アルコールを含む依存症など、さまざまな問題が複合的に絡み合っています。従って、プログラムの中では「再犯しない」のはもちろんのこと、根強くある「認知の歪み」に焦点を当て、行動変容を根気よくサポートしていくことになります。なお、「認知の歪み」とは、本人にとって都合のいい認知の枠組みのことで、例えば「被害者側に隙があったのが悪い」「相手もそれを望んでいた」といった考え方がこれに当たります。

――具体的に、どのような方法で更生プログラムを行っているのか教えてください。

栗原 私たちは「選択理論」を用いて、加害者更生プログラムを実施しています。端的に説明すると、「すべての行動は自らの選択である」と考える心理学です。アメリカの女子刑務所でも更生プログラムとして実施されており、3年間これを学ぶと、再犯率がゼロになると聞いています。男性の犯罪者も同様に、再犯率56%だったのが、選択理論を学ぶと再犯率2.9%になる、という統計もあるようです。

 DV加害者と向き合うときに徹底しているのは、「DV加害者を見下げない」ということ。「彼らの中にある“認知の歪み”だけが問題であり、本来持つ人格や生き方は素晴らしい」と、尊敬の念を持って接します。こうするだけで、彼らは「信頼されている」と思い、プログラムも全過程通えるんです。スタッフは女性が多いので、「女からバカにされた」と思った瞬間、通わなくなってしまいますからね。

 プログラムに通う人の中には、「来るのが楽しい」と話す人もいます。「こんな話を他人にしたら嫌われるだろうし、仕事だってなくなる。だから話せる場所はどこにもないけれど、ここでだけは話せる」と言うんです。

斉藤 誰かに正直に話せる場所は必要ですね。依存症の世界には、“自助グループ”というものがあります。性依存症にも専門のグループがあり、当事者が集まって自分の正直な話を打ち明け、参加者同士で「今日1日、問題行動をしなかった」と体験談を分かち合い、支え合っていくのです。

 一方で、榎本クリニックの場合、犯罪傾向が進んでいて、刑務所に10回以上入っていたり、まったく身寄りがなく、刑務所に入ることをなんとも思わなかったりして、再犯率が特に高い人たちも来院することがあります。こうしたハイリスクな人に対しては、認知の歪みを直していく「認知行動療法」と並行して、「薬物療法」などを実施することもあります。

警察は「悪党」と決めつけ、刑務所では「男らしくない」と言われる

――「自助グループ」では、同じ経験をした加害者同士で傷のなめ合いのようになってしまったり、“武勇伝自慢”になることはないのでしょうか?

栗原 それはないですね。うちの場合、人の話を聞いたら聞きっぱなしではなく、ほかの参加者やスタッフが第三者的なアドバイスを出し合っています。以前、DVから逃げた妻に対してストーカー行為をするようになった夫がいました。警察に行けば、自分は「悪党」呼ばわりだし、探偵も彼がDV加害者だとわかると、調査の依頼を受けてくれない。追い詰められた彼は、「妻と子どもを殺し、自分も死ぬ」と言ってヤクザに殺人依頼をし、数百万円の契約をしたそうです。この時点で、うちのプログラムに来たんです。

 そのとき彼は大泣きしながら、自身の両親から虐待を受けていた過去を私の前で語り、「条件抜きで、これだけ受け止めてくれる人は初めてです。みんなに否定され続けてきたから」と言っていました。社会には、彼らを受け止めてくれる場所がなく、誰も話を聞いてくれない。排除は問題解決に結びつかないのです。

斉藤 彼らは排除されればされるほど、孤立化すればするほど、再犯リスクが高まります。私は、刑務所内で行われる再犯防止教育にも講師として参加していますが、性犯罪加害者は、“刑務所のヒエラルキー”の中でも最底辺。その理由は、「性犯罪は一番男らしくなく女々しい」からです。さらに、性犯罪者の中にも実は隠れたヒエラルキーがあって、「痴漢」と「盗撮」が頂点にいて、最下層は「ペドフィリア(小児性犯罪者)」。受刑者同士でも、こうした排除の構造を如実に感じています。

 長年、加害者臨床に携わっていると、世間から「社会の中に、性犯罪者たちの居場所を作るなんて!」と批判を浴びがちですが、排除するだけでは問題解決にはならず、被害者は量産されるばかりです。必要なのは刑罰だけでなく、再教育するための専門治療であると考えています。

 一方、自助グループで人の温かさやつながり、いい仲間意識によって安心感を得るだけでは客観的視点やエビデンスが抜けてしまうので、足りない部分をクリニックで補完する、というイメージです。私は「衝動性」と「言語化」は対極にあると思っています。自分の感情や考えをきちんと言語化することで、衝動性を抑えられます。だから、社会の中につながりの再構築ができる居場所を作り、互いに体験談を分かち合う場所が存在することは、非常に重要だと思っています。

――そうしたプログラムは、何をもって「終了」と考えるのでしょうか?

栗原 私がやっている加害者臨床の落としどころは、「自立」です。加害者たちは、自分をわかってほしい一心で暴力を振るい、承認欲求を満たそうとします。ならば、相手から認めてもらうことを願うよりも、自分が相手を認めることで承認欲求を満たしていくのだと伝え、自立へつなげるんです。これが先ほど言った「選択理論」の考え方ですね。その後、相手の支援を考えられるようになると暴力がなくなっていくので、そこが第二の落としどころです。

斉藤 私は「プログラムは生きている限り死ぬまで続く」という考えで、「これができたら終了」という落としどころはありません。加害者臨床の中には「依存症は治る」という考え方で行うプログラムもありますが、私は「依存症は、回復はあっても完治は困難だ」という考え方がベースになっています。

 私の元には、12年間クリニックに通い続けている痴漢加害者がいますが、「病院に来ないとプログラムでやったことを忘れてしまう」と言います。12年間通っていても、「今日は疲れたな。こんな日は痴漢でもするとスッキリするんだよなぁ」と、自然に“認知の歪み”が出てしまうんですよね。そこで、プログラムを続けている人ならば「いや、これは警告のサインだ。こういう日こそ、病院に行かなきゃ」という思考回路になります。しかし、プログラムから離れて半年~1年ほどたってしまうと、「今までずっと痴漢してないし、たまにならバレないんじゃないか」と考えてしまい、問題行動をとることがあります。

 要するに、認知の歪みはその人の脳内にしっかり刷り込まれてしまっているので、消し去るのは難しい。でも、プログラムを受け続けていれば、認知の歪みに対する反応の仕方を主体的に選択できるようになるんです。

第4回へつづく
(有山千春)

■斉藤章佳(さいとう・あきよし)
大船榎本クリニック精神保健福祉部長(精神保健福祉士/社会福祉士)。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」にソーシャルワーカーとして、約20年に渡りアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性犯罪・児童虐待・DV・クレプトマニアなど、さまざまなアディクション問題に携わる。その後、2020年4月から現職。専門は加害者臨床で、現在まで2,000名以上の性犯罪者の治療に関わる。また、都内更生保護施設では長年「酒害・薬害教育プログラム」の講師をつとめている。

■栗原加代美(くりはら・かよみ)
NPO法人女性・人権支援センターステップ理事長。同団体にて、 DV・ストーカー・虐待・加害者更生プログラムの講師を務めながら、被害者の回復プログラム・家族面談・ カップルカウンセリング・テレビ出演、DVやスト ーカー防止のセミナー講師として活動する。

「女性は痴漢で気持ち良くなる」と信じていた――性犯罪加害者の言葉から、“治療”の在り方を問う

 性犯罪は、“再犯率”が高いことが明らかになっている。なかでも痴漢の再犯率は突出しており、刑務所で“罰”を受けるだけでは、再犯は防げない。これは、各種データからも、約30年にわたって痴漢行為を続けてきた50代男性・Oさんの体験からも明白だ。

 第2回は、2度目の服役から出所して10年間、再犯をしていないというOさんに、なぜ痴漢行為をやめられたのかを聞く。再犯防止のためにどのような行動をとったのか、刑務所内で受刑者に実施されている「性犯罪再犯防止指導(通称:R3)」の問題点についても語ってもらった。

■第1回:30年間、電車で痴漢を繰り返してきた――性犯罪“加害者”が語る「逮捕されてもやめられない」理由

治療機関で“痴漢”を隠し続け、そして再犯……

 刑務所内の再犯防止対策だけでは不十分だという、専門家の声も耳にする。その最大のポイントは、刑務所内に女性や子どもなど、彼らの“対象”となる人物がいない中で指導を行うからだ。Oさんも受刑中のことを振り返って、「女性がいないから、痴漢をしたいという思いにとらわれずに済むので、楽だった」と話している。しかし、出所して社会の中で生きていると、そうはいかない。

 Oさんは41歳のとき痴漢で起訴され、執行猶予判決が出た。このとき、担当の弁護士から、病院を受診するように言われたという。

「まず精神科へ行ったのですが、痴漢をやめられないという問題は、性嗜好障害やアディクション(依存症)の側面があるということで、別のクリニックを紹介され、そこに通い始めました」

 性暴力加害者は「病気」を抱えているととらえ、専門的な治療を行うことによって再犯防止を目指す治療機関が、国内に数は少ないながら存在する。Oさんは、そのひとつとつながることができた。

「でもそのときは、『弁護士に言われたから行く』ぐらいの気持ちでした。デイナイトケアという、毎日朝から夜までつづくプログラムを受けたのですが、そこではほかの精神疾患を持つ人たちとのミーティングがあるんです。自分の問題をみんなの前で開示して、そのリアクションから、自身の考えを見直すというプログラムなんですが、私はそこで、自分が痴漢の問題で通っているということを、なかなか話せず隠していたんです。もちろん、それではまったくと言っていいほど参加する意味がない。そんなある日、主治医が『あなたはちゃんと“痴漢の問題”を話しなさい』と、みんなの前で言ってしまったのです」

 動揺したOさんは、クリニック内で問題行動を起こすようになり、しまいには主治医から治療の中断を言い渡される。通院していた3カ月間はピタリと止まっていた痴漢行為が、治療をやめた途端、気づけば再開していた。執行猶予期間中にもかかわらず、Oさんは頻繁に痴漢行為をくり返し、またも逮捕。そしてついに、初めての実刑判決(5カ月)が下る。

 刑期を終え満期で出所するも、43歳のときOさんはまた再犯し、今度は11カ月間服役した。もうこれ以上は痴漢を繰り返せないと、今度は自らクリニックを訪れた。

「私はずっと、自分を隠しながら生きてきました。痴漢って、自分のことを知られていない相手だから触れるんです。知っている人だと、『Oさんに触られた!』とすぐ事件になりますよね。私からすると、痴漢は“お互い知らない相手”だから成立する犯罪。そんなふうに生きてきたから、周囲の人ともうわべだけの人間関係になるし、ミーティングでも自分を出せなかったんだと思います。当然、孤立していました。でも二度目の通院では、もう痴漢の問題で通っているというのが周囲に知られていたので、隠す必要がなくなりました」

 自分のことを知られたくなくて、「鎧を着たまま人と話していたようなものだった」とOさんはふり返る。

「41歳で執行猶予判決が出たあとも、一度目の服役のあとも、痴漢をするための環境を自らつくろうとしていたところがあります。私の場合、最も痴漢のリスクが高まるのは“電車に乗るとき”なのですが、『早い時間なら空いているから、電車に乗っても大丈夫』『今日は天気が悪いから、電車に乗るのもしょうがない』と、なんとか理由を見つけて電車に乗ろうとしていたんです。だから、二度目の出所のあとから現在までは、どこへ行くにも必ず車で移動するようにしたんです。刑務所は“絶対に痴漢できない環境”でしたが、それと同じように、“したくてもできない環境”を、自分でつくらなければなりません。ここ数年は、もし電車に乗ったとしても、『痴漢をしたくならないかもしれない』という気もしています」

 それは、クリニックに通ううちに生じてきた、ある変化に影響されたからだという。

「自分が痴漢をしたと周囲にバレたら、否定され、除外されるだけだと思っていました。でもいざ開示してみたら、『あなたが更生しようとしているのなら、私が話を聞く』と言ってくれる人がいて、驚きました。とはいえ、今まで私がしてきたことをそのまま開示すると、セカンドレイプになる可能性もありますから、慎重に話すようにしています。もし、私がまた痴漢をすれば、これまで話を聞いてくれた人たちにとっては、『知らない人が痴漢をした』ではなく、『Oさんが痴漢した』となります。そんな状況にはしたくない。だからもう、自分は痴漢をしたくならないだろうと思っているんです。もちろん、それでも『絶対にやらない』とはいえない状況です。だから、これからも電車には乗りません」

 性犯罪の再犯リスクは、孤立やそれによるフラストレーションによって高まることがわかっている。Oさんは2回目の通院で、やっと孤立状態を回避できた。変化は、ほかにもあったという。

「クリニックに通い始めたばかりのとき、主治医から『女性が痴漢されたがっているとか、触られて気持ちよくなるとかは、ファンタジーでしかない』といった話をたくさんされました。表向きはうなずいて聞いていましたが、それを認めることは、自分が今まで“現実”だと思い込んできたことへの否認になるので、なかなか受け入れることができなかった。でも、自分が痴漢をしたと開示して以来、性犯罪について議論する学会や、トークイベントに足を運ぶようになりました。そこでは、『女性は痴漢被害で苦しんでいる』という前提で話がされていて、それを聞いてやっと少しずつ理解ができるようになったんです」

 Oさんの人生において、痴漢をしない日々よりも、痴漢をしていた日々のほうがまだ長い。それでも、今日「痴漢しなかった日」を送り、明日も、明後日もそうしていくしか、痴漢をやめる道はない。

 最後にOさんへ、刑務所内で受刑者に実施されている「性犯罪再犯防止指導(R3)」について聞いてみた。刑期が短いなどの理由で、彼は一度もその対象となっていないが、指導を受けたい気持ちはあったのだろうか。

「私が思う再犯防止とは、『痴漢をしたい』という気持ちにならないようにすること。R3で行われているのは、自分が加害行動をしたくなる動機を洗い出して、それが発生しない環境を自分で作ったり、発生しても制御できるようにしていく“認知行動療法”だと聞いています。それはそれで必要だと思いますが、根本的に『痴漢したい』という欲求をなくすには、人間関係を変えていくしかない、というのが私の実感です。そしてそれは、刑務所の中ではできないことだと思います」

 現在Oさんは、痴漢の“加害”に悩む人を対象に、「再犯防止」を支援する側に回っている。

「自身が30年間にわたって痴漢加害をしてきて、再犯防止に関する成功や失敗の体験をもとに、加害行為がやめられずに困っている当事者、または家族や支援者への『再犯防止』に関するサポートを行っています。主なサポートは男性限定のミーティング開催で、痴漢に限らず、一般的な性の話題も含めて、異性に言いにくい話も打ち明けられる場をつくっています。2~3人の少人数で行っていますので、このようなミーティングが初めての方も、安心してご参加ください」

男性および男性の性自認の方限定ミーティング「ダンクロ」

 第3回、第4回では、性犯罪加害者の更生・治療に取り組む精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏と、DV加害者更生プログラムや被害者支援を行う「NPO法人女性・人権支援センター ステップ」の代表である栗原加代美氏に、心理的なアプローチから再犯を防ぐ「加害者臨床」の意義を聞いた。
(三浦ゆえ)

泰葉、イラン人に続きパキスタン人男性と婚約……「一度イスラム教に改宗したら戻れない」国際結婚の難しさ

 泰葉が9月6日、自身のブログでパキスタン人男性と結婚を前提に交際していることを明かした。男性は日本でもビジネスを展開する、田村正和似の実業家で、4年前にSNSでのやりとりを始め、親交を深めていったとのこと。10月末頃には、男性が来日して正式に結婚する予定だといい、泰葉は「みなさま、どうか暖かく見守ってください」と述べている。

 泰葉と言えば、2017年9月、初対面からわずか7日という20歳年下のイラン人男性と婚約を発表。その後、婚約を解消したものの、1カ月弱でスピード復縁し、結局、イスラム教徒である男性との宗教観の違いによって、破局に至った過去がある。当時、サイゾーウーマンでは、そんな泰葉に婚約について、トルコ人男性と結婚した作詞家の及川眠子氏にインタビューを行っていた。

 旅行先のイスタンブールで出会った18歳年下のトルコ人男性と結婚し、3億円ものお金を失った及川氏は、イスラム教への改宗問題を説明するともに、泰葉へアドバイスを送ってくれていた。

 今回、再びイスラム教徒であるパキスタン人男性と婚約し、すでに改宗したとも報告している泰葉。今後無事結婚できるかが注目を浴びる今、あらためてこのインタビューを掲載する。
(編集部)


(初出:2017年9月28日)

泰葉の“超スピード婚約”を、18歳年下のトルコ人男性に3億円貢いだ及川眠子が斬る!

 シンガー・ソングライターの泰葉が、フェイスブックで知り合ったイラン人男性との婚約を発表した。9月14日に男性を日本へ呼び寄せて、初めて会ったという泰葉は、20日の婚約会見で「2019年をもって芸能界を引退する」と発言。入籍や挙式などの予定は未定だというが、アメリカへ移住するとも報じられている。この“超スピード婚約”に対して、ネットでは「騙されてるんじゃないの?」といった声も多い。また、40歳の時に旅行先のイスタンブールで知り合った18歳年下のトルコ人男性と結婚し、3億円ものお金を失った作詞家の及川眠子さんを引き合いに出して、「及川さんみたいにならないか?」「大丈夫なのか?」などと心配する声も上がっている。そこで及川さんに、泰葉の婚約について率直な意見を聞いた。

「私が結婚したときも、『男に騙されているんじゃないか?』とか『お金を取られるんじゃないか?』と言われましたが、私は望んでお金を払ったんです。『あなたのキャリアがダメになる』とも言われましたが、それで失う程度ならキャリアじゃないと思いましたね。自分の意思ですべてやりましたから、楽しかった。面白かったですよ」

 泰葉の婚約者は、20歳下のイラン人会社経営者のメィヒディ・カーゼンプールさん。かなりの年の差と、イスラム教という宗教が関係する国際結婚であることも、周囲から心配される要因になっている。イスラム教徒は、結婚相手もイスラム教徒でなければならないからだ。つまり、メィヒディさんと結婚するためには、彼と同じイスラム教に改宗する必要がある。

「国際結婚ということでは、イスラム教への改宗が大きな問題だと思います。私の場合は、結婚まで4年、イスラム教について勉強して、改宗しない結論に至りました。イスラムというのは彼らのアイデンティティですから、一般的な日本人の宗教の捉え方と全然違うんです。ただ豚肉を食べないとか、そんなことではありませんし、きちんと理解していない神様に対して1日5回お祈りができるのでしょうか? そして、一度イスラムに改宗したら戻れないのです」

 及川さんはトルコに住むつもりがなかったため、婚姻ビザが必要なかったという。また、トルコの場合は、どちらかの国で婚姻届を出せばいいので、日本だけで提出した。

「イランはトルコとは違うと思いますが、イラン人が日本に滞在する場合はビザが必要でしょう。泰葉さんは、そういうことを理解しているのでしょうか? 計画性があるのかも疑問ですね。ただ注目されたいだけに見えます。マスコミも放っておけばいいのに」

 メィヒディさんは20歳下ということだが、年の差について及川さんは、それほど問題ではないと話す。

「私の場合は相手が18歳下でしたが、トルコでは私のほうが年下だと思われましたよ。彼は若いときから働いているから、精神的に大人でした。外国の人が相手だと、見ていたテレビ番組が違うといったジェネレーションギャップがあまりない。そもそもの文化が違いますから。そうなると、相手のものの考え方や性格を受け入れられるかどうかになってきます」

 なお及川さんは、泰葉の音楽の才能については評価しており、彼女自身もこだわっているはずの音楽活動を続けないことに対しては疑問を感じているという。

「彼女のデモテープを聞いたことがあるのですが、アーティストとして才能ある人なのに、前の結婚を機に音楽をやめてしまった。その後、また『音楽をやりたい』といって離婚までしたのに、なんでそれを突き詰めないんだろうと思いますね。今回のCD(今年2月ごろから制作を進めていたが、資金不足で頓挫したといわれる)はどういうものを作ったのかわからないけど、自分で作ったのなら、ライブハウスなどを回って、これからも音楽活動を地道にやっていくのかなと思っていました。だから、今回の結婚も“逃げ”でしょう。安室奈美恵の極めた感のある引退宣言とは違う」

 最後に、今後の泰葉に対して、次のようにアドバイスする。

「泰葉さんは(落語の名門である)林家一門のお嬢さんで、世間にもまれていないし、まっすぐな性格だと思うんです。いつまでも世間にとっては海老名家の娘で、アーティストとして認識されてないということに気づくべきですね。自分のことを客観的に見られていない。一番いいのは、芸能人でもなんでもなく、一個人としてイランで幸せに暮らすことじゃないでしょうか。でも、また何年かして独身になって、『音楽をやりたい』と言って、記者会見するかもしれませんね(笑)」