2020年の大みそかをもって、嵐がついに活動休止を迎えた。トップグループを失ったジャニーズ事務所にとって、21年は変革の1年になるだろうが、同社副社長であり、子会社のジャニーズアイランド社長・滝沢秀明氏に対するファンの評価は、いまいち芳しくないようだ。
滝沢氏は昨年1月、SixTONESとSnow Manを合同シングル「Imitation Rain/D.D.」で同時デビューさせた。「ライバルがいるって最高だ」というキャッチコピーのもと、「SixTONES vs Snow Man」名義で公式ライバルの関係を強調し、双方ファンのCD購入を煽る作戦を展開したのだが、これが功を奏し、CDは初週売り上げ132.8万枚(オリコン調べ、以下同)という大記録を打ち立てた。しかし、この売り方はファンの間で物議を醸し、「心が疲れた」「相手のグループを敵視してしまう」「本人たちも望んでいないのでは」といった声が、ネット上で散見されるようになった。
また、最近では、滝沢氏のお気に入り「通称タキニ」の贔屓が目に余るという苦情も一部ジャニーズファンから相次いでいる。苦情の内容は、自身が名付け親であり、長年、舞台『滝沢歌舞伎』を作り上げてきたSnow Manに肩入れし、メディア露出をプッシュしているのではないかというもので、特にSixTONESファンや18年デビューのKing&Princeのファンが訴えているような状況。結果的に、SixTONESとSnow Manのファンの対立が激化、King&Princeファンもそこに参戦する構図が出来上がりつつある。
このような状況は、ジャニーズ事務所への不信感につながりかねないが、滝沢氏はファンとどう向き合っていくべきなのか――今回、企業コンサルタント・大関暁夫氏に企業マネジメントの観点から話を聞いた。
■「VS売り」は戦略的にアリ、しかしふさわしくない
――滝沢氏がジャニーズアイランドの社長に就任して、2年が経過しようとしています。19年9月からはジャニーズ事務所の副社長にも就任し、20年はジャニーズJr.やSixTONES、Snow Manの売り出しに尽力してきましたが、ファンの間ではCD購入を煽る「VS売り」が物議を醸しました。
大関暁夫氏(以下、大関) 戦略としてはアリだと思います。ただ、ビジネスは“お客様あって”のものですから、消費者側の不評を買っているのであれば、やはり「ふさわしくなかった」といえるでしょうね。
―― 一方で、滝沢氏は「お気に入りのSnow Manを贔屓しているのではないか」と、他グループのファンから指摘されています。ほかにも、地上波露出が増加傾向のA.B.C-Zの河合郁人、ジャニーズJr.ユニットのHiHi Jets、IMPACTorsの佐藤新などが贔屓され、推されているようだといわれているのです。これにより、ファン界隈に不穏な空気が漂っている印象もあるのですが……。
大関 ジャニー喜多川前社長の後を受けた滝沢さんは、現場を知るトップとして、彼なりに考えた戦略を展開していると思うのですが、ファンの支持が得られない最大の原因は、“まだ実績がないから”。ジャニーさんこそ、お気に入りのグループやタレントを贔屓していたでしょうが、それで大きな実績を残していたため、ファンの人たちにも「ジャニーさんが考えていることだから、それなりの理由があるのだろう」と納得感があった。しかし、滝沢さんはまだ実績がないだけに、戦略があったとしても、「好き嫌いで仕事している」「あり得ない」と見られてしまう。これは二代目の宿命でもあり、批判が集まるのはやむを得ないと思います。
――確かにジャニーさんは、個人的な“スペオキ”を売り出しているのではといわれていました。
大関 滝沢さんが、もし「好き嫌い」だけで推していたとしても、「近い将来、彼らは必ずスターになる」と自信を持っているのなら、このまま突き進むのも一つの手でしょう。しかし、少しでも不安があるのなら、ファンの間に不協和音を起こさないよう、個人の「好き嫌い」は抑えるべきだと思います。そして、まずは何かしらの実績を作ることに注力するのが大切。実績こそが、リーダーの求心力を強める最大の武器ですから。
■SixTONESとSnow Manの「ミリオン達成」は実績にはならない
――SixTONESとSnow Manは、合同デビューシングルで初週ミリオンを達成するという偉業を成し遂げました。Snow Manは2ndシングル「KISSIN'MY LIPS/Stories」で初週売り上げ91.8万枚、SixTONESも2ndシングル「NAVIGATOR」で初週62.2万枚を売り上げていますが、これは“実績”といえないのでしょうか。
大関 SixTONESとSnow Manですが、「グループ名は知っているけれど、メンバーの顔と名前が一致しない」という人も多いと思います。そうなるとまだ実績は“ない”。今の時代、ミリオンを達成したからといって、誰もが知っている曲というわけでもありません。ジャニーズの“目に見える実績”とは、CDの売り上げよりも、メディア露出なのではないでしょうか。SMAP、そして嵐がトップスターの地位を築いたのは、多くのテレビ番組に出演し、冠番組を持って、メンバー一人ひとりの個性が視聴者に伝わるような露出の仕方を仕掛けてきたからだと思います。
滝沢さんにとっての実績とは、売り出すグループに対し、「嵐を継ぐのは彼らだ」という世間の“納得感”を、戦略的に作っていくこと。現状、テレビで活躍していた嵐は活動休止、TOKIOも長瀬智也さんが今年3月に脱退し、これまでの形ではなくなるわけですが、「じゃあ次のグループは?」というのが見えてこない。ファンの人にとっては、「こんなにたくさんCDを買って、一生懸命応援しているのに、いまひとつ世の中的に盛り上がっていない」という状況が、ジャニーズ事務所や滝沢さんに不満を抱く大きな要因になっている気もします。
――現在、ジャニーズ事務所は藤島ジュリー景子社長と滝沢氏の2トップ体制で、それぞれが担当グループを見ているような状況です。次なるトップグループはどこか、2人が共通認識を持っているかは定かではありません。
大関 ジャニーさんというカリスマトップの後を1人で担うのは大変なので、2人が協力して、全体的な戦略をつかむことが大事。例えば近年デビューしたグループは、SixTONES、Snow Man、そしてKing&Princeですが、事務所の2トップが各グループのポジショニングを、ファンに見える形で示していくべきでしょう。具体的には、嵐の抜けた穴をどのグループが埋めるか、TOKIOの後を継がせるグループは……という戦略をしっかり見せていく。必ずしも、前のグループを踏襲する必要はありませんが、嵐やTOKIOがメディアで築いた地位をあっさり手放すのは得策ではないと感じます。
――事務所全体の戦略として、次のトップグループをどこに見据えているかがわからないから、滝沢氏が個人の感情でお気に入りのグループを贔屓していると思われるのかもしれません。
大関 次のトップグループが見えてこないのは、事務所の意思表示が弱いからだけでなく、メディア側にSixTONES、Snow Man、King&Princeの魅力が乏しいと思われているからなのかもしれません。その原因は、しっかり究明していくべき。例えば、社内的に「キンプリを推す!」とコンセンサスが取れたら、どうやって魅力的に見せるのか、メンバー一人ひとりの個性をどう立たせていくのか、戦略を立てながらメディアに売り込んでいく。そのためには、やはりジュリーさんと滝沢さんの戦略的コミュニケーションが必要ですが、もしかしたら今は、それが不足しているのではないでしょうか。かつてのジャニーズは、ジュリーさんとSMAPの元チーフマネジャー・飯島三智氏が、各々のグループだけをマネジメントするという体制だったわけですが、今は滝沢さんと協力して戦略を練るべき時だと思います。
■滝沢副社長は、タレント管理の徹底より「ファンの声」を聞くべき
――今後、滝沢氏の課題は何になると思いますか?
大関 先ほども少し触れましたが、ファンの声を聞くことではないでしょうか。ジャニーさんは、ジャニーズの一番のファンで、それこそが彼の強みだったと思います。「自分=ファン」が喜ぶことは何かを、確信をもって進めることができるからです。滝沢さんの場合は、演じ手から転身したこともあって、いまいちファンの立場から、その気持ちをつかみきれていないのかもしれません。「VS売り」が批判されたのも、「贔屓しているのでは」と物議を醸すのも、アイドルをビジネスとして考えすぎていて、ファンの気持ちを理解していないからではないかと思うのです。滝沢さんはジャニーさんの後継者ですから、“ジャニーズの一番のファンであること”を心掛けることが、何より大切なのではないでしょうか。逆にタレントを“管理”するのはジュリーさんに任せるなど、役割分担をしたほうがいいと思います。
――滝沢氏は確かに、タレント管理に力を入れている印象があります。ジャニーズでは昨今、未成年者との飲酒同席、プライベート写真のネット流出など、トラブルを起こしたタレントに必ず相応の制裁を科すようになりましたが、これは滝沢氏の意向が強いと伝えられています。
大関 やはり滝沢さんが管理者に徹しすぎている感もあり、そこはジュリーさんに任せていいのでは。当然、タレントの素行を良くすることは大事である一方、杓子定規に管理するのではなく、ファンは何を望んでいるのかを踏まえながら、組織内の風紀が乱れない程度の素行は目をつぶるなど、柔軟な対応が必要かもしれませんね。
――ジャニー氏の死後、タレント流出が止まらない状況だけに、滝沢氏の心労も大きかろうと思います。
大関 この現状は滝沢さんだけのせいではありません。SMAP、TOKIO、V6、嵐、関ジャニ∞と、一度売れたアイドルを長く使いすぎ、新人を育てられなかったしわ寄せが今来ているのです。新しいグループを仕掛けていっても、“金のなる木”に育つまでは時間がかかる。だから今はのんびり構えていてはダメなんです。「5年くらいで、ある程度のポジションを作ろう」なんてのは通用せず、他社のグループに取って代わられてしまいます。厳しい状況は続くとは思いますが、滝沢さんの奮闘に期待したいですね。
取材協力:大関暁夫(おおぜき・あけお)
All About「組織マネジメント」(https://allabout.co.jp/gm/gp/1179/)ガイド。東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。