「コスメ好きの客は独特」「新人BAは化粧が変」ーー現役BAの本音座談会

 都内の大型百貨店に勤めるBAさん3人に集まっていただき、座談会を開催。前編では、ストーカーやクレーマーなど、難しい客対応について聞きました。後編では、厳しい女社会についての本音が続々と飛び出します。

(前編はこちら)

■営業の男と付き合って、栄転し本社勤務に

――BAって、残業はあるんですか?

オン眉 あるある! 全然ありますよ! 日中はずーっと接客だから、そのほかの事務作業ができないんです。商品の補充とか発注とか、お客様への配送手続きとか。それらは全部、勤務時間が終わってからの残業になります。

――そうなんですか。結構やることが多いんですね。

ヤスコ でも、中には古株の先輩に気に入られるために、「進んで残業やります!」って人もいますよ。ファイトさんがいたときのうちの店舗は、本当に戦国時代みたいだった。古株先輩の言うことは絶対! みたいな感じで、みんな従ってましたよね。

オン眉 犠牲心の強い人が多かったですよね。上が言うことは絶対、みたいな。そういう人は、ずーっと残業してるから、店に住んでるのかな? って心配になりました。今は、上の人が一気に異動してくれたおかげで、緩やかになったけど、当時は大変でした。

――ブラック企業みたいですね。

ファイト 「帰っていいよ」と言われても帰らないのが基本スタンス。本当に帰るやつはいらない。帰らない子だけをかわいがる。

――たとえば古株の先輩に気に入られて、何かメリットがあるんですか?

ヤスコ うーん、お店の中で融通が利きやすくなる……くらいですかね? あと出世願望の強い人にとっては、メリットがあると思います。やっぱり先輩や上司に気に入られたほうが、何かとトクすることも多いですから。

――なるほど。

ヤスコ これは、別の店舗の子から聞いた話なんですが、本社営業の男と付き合って、本社勤務に栄転した人もいるらしいです。

――それって、いわゆる、“枕営業”ですよね? 

ヤスコ そうですね。あくまで聞いた話なので、真相は不明ですけど。

オン眉 そうでなくても、本社から来る営業の男の人って、モテるんですよ。BAは女だらけの職場なので、プライベートで男との関わりがない人は、営業が来るだけで舞い上がっちゃうんです。露骨に頬を赤らめてる人もいますよ。

ヤスコ 営業さんとの飲み会がある日に、わざわざ希望休(シフトの休み希望)出して、新しい洋服買ってから行くっていう人もいるくらいです。

――すごい。合コンみたいですね。

ファイト まさに、そんな感じですね。そして、そういう気合入った先輩に限って、徒党を組みたがる。お気に入りのメンバーを5人くらい囲って、味方につけるんです。それで自分の地位を確立して安心してるんですよ。

――皆さんは、お気に入りではないんですか?

ファイト 最初は飲み会とか誘われてたけど、こいつはダメだなって思われたのか、途中から何も言われなくなりました。

ヤスコ・オン眉 私も。

――まったく派閥に属さない人もいるんですね。

ファイト そういう派閥とか作っちゃう女にはなりたくない。なる前に辞めたい。

ヤスコ このまま働き続けると、ああなっちゃうって、成れの果てを見せられてる感じですよね。その前に絶対、寿退社したいなって思ってます。

――皆さん、長く続けられてますが、辞めない理由って何かあるんですか?

ファイト 理由なんかないですよ。辞められるなら、ただちに辞めたい。転職活動も何回かしてるけど、うまくいかないだけです。

オン眉 結局、人手不足だから、気軽に辞められないというのもあります。「辞めたい」って言っても、めちゃくちゃ止められますよね。

ファイト 私、「辞めたい」って言って、店長に泣かれたことがあります。「今あなたに辞められると、私が本当に困る」って。こっちも困ってるんですけど……って話。その人の涙に負けて、結局続けることになっちゃったけど。

――何が理由だったら辞められるんですかね?

3人 結婚。

ヤスコ ほとんどが寿退職です。結婚決まったら辞められるっていう、暗黙の了解みたいになってる。

ファイト 逆に言うと、結婚してまで続ける仕事じゃないってことなんですよね。家庭と両立させたい仕事と考えてる人は少ないと思う。実際に、うちの店舗は全員独身。

――そうなんですね!

ファイト 中には、熱意持って仕事してる子もいるにはいるけど。コスメが大好きだからという理由で入ってきた新人は、休みの日も「他店研究に行ってました〜」とか言ってるし。でも、そういう子は大抵おかしい。化粧も変だし。コスメ好きな子って、こだわりが強い。自分を信じすぎてるから、客観的に見ることが苦手なんだと思う。

ヤスコ お客さんでも、コスメ好きの人って独特ですよね。

――独特って、どんな感じなんですか?

ヤスコ 普通の人は、雑誌で見て気になった商品を買いに来るって感じなんですけど、コスメオタクは、コスメカウンターを物色するのが趣味。だから、こっちが声かけても無視。仲間と一緒にコスメカウンター回って、自分のお気に入りのアイテムを見つけたら「これいいの〜」って紹介が始まる。私たちは、そのプレゼンテーションを延々と見せられてます。

ファイト 「これ使ってる」って言うためだけに寄る人は多いです。逆にうちらがプレゼンされます。「これ、こんなに良くて、こんなふうに肌が変わった!」って。へ〜、よかったですね〜、みたいな……。

――想像以上に、BAの世界が面白いってことがわかりました。

ファイト でも、一口にBAと言っても、お店によってかなり毛色が違うと思います。国産か外資か、スキンケアラインかコスメラインか……とか、いろいろあるんですよ。国産のスキンケアブランドはマシって聞きます。ブランドにもよると思うけど、国産って厳格なノルマがないんです。インセンティブもないから、お客さんの奪い合いもない。でも、外資のブランドは本当に奪い合いみたいです。

――自分の売り上げを伸ばすためにですか?

ファイト そう。最初にお客さんに声かけた人の売り上げになるから、「お客さん取った!」ってなるんです。誰が一番に声かけられるかって競争。でも、ネイルを見てる客がいたら、下っ端に行かせるんだって。ネイルって単価が安いから、売り上げにならないって敬遠される。でも、高いスキンケア商品を見てる客には、先輩たちが自分で行く。単価が取れるから。

――そんな争いがあるんですね!

オン眉 同じフロアの外資ブランドの子は、「金持ちそうな客を見つけたら、自分で行く」って言ってましたよ。

ヤスコ あと、インバウンド(訪日旅行)の客に飛びつく美容スタッフもいますよね。中国人の爆買い目当てで。

――コスメも、そんなに爆買いしていくんですか?

ヤスコ 爆買いですよ! 2日間に分けて買いにきたりとか。中国人のバイヤーがまとめ買いして、現地で売ってるんですよ。

オン眉 商品券や株主優待券で買っていきますよね。

ファイト そう! できるだけ安く買ってく。それをいくらで転売してるのかは知らないけど。

ヤスコ あと、インバウンド専門みたいなBAもいますよ。インバウンドの客に寄ってきてもらうために、勝手にサンプルをたくさんつけて、顔を覚えてもらうんです。それで、次に来たときも、自分を目がけて来てもらえるようにしてる。セコいんですよ。

――なるほど。その人は今どうしてるんですか?

ヤスコ インバウンドが多く来る店に異動しました。

ファイト 今も、中国人にサンプルをたくさん配ってると思う。きっと元気でやってますよ。

「コスメ好きの客は独特」「新人BAは化粧が変」ーー現役BAの本音座談会

 都内の大型百貨店に勤めるBAさん3人に集まっていただき、座談会を開催。前編では、ストーカーやクレーマーなど、難しい客対応について聞きました。後編では、厳しい女社会についての本音が続々と飛び出します。

(前編はこちら)

■営業の男と付き合って、栄転し本社勤務に

――BAって、残業はあるんですか?

オン眉 あるある! 全然ありますよ! 日中はずーっと接客だから、そのほかの事務作業ができないんです。商品の補充とか発注とか、お客様への配送手続きとか。それらは全部、勤務時間が終わってからの残業になります。

――そうなんですか。結構やることが多いんですね。

ヤスコ でも、中には古株の先輩に気に入られるために、「進んで残業やります!」って人もいますよ。ファイトさんがいたときのうちの店舗は、本当に戦国時代みたいだった。古株先輩の言うことは絶対! みたいな感じで、みんな従ってましたよね。

オン眉 犠牲心の強い人が多かったですよね。上が言うことは絶対、みたいな。そういう人は、ずーっと残業してるから、店に住んでるのかな? って心配になりました。今は、上の人が一気に異動してくれたおかげで、緩やかになったけど、当時は大変でした。

――ブラック企業みたいですね。

ファイト 「帰っていいよ」と言われても帰らないのが基本スタンス。本当に帰るやつはいらない。帰らない子だけをかわいがる。

――たとえば古株の先輩に気に入られて、何かメリットがあるんですか?

ヤスコ うーん、お店の中で融通が利きやすくなる……くらいですかね? あと出世願望の強い人にとっては、メリットがあると思います。やっぱり先輩や上司に気に入られたほうが、何かとトクすることも多いですから。

――なるほど。

ヤスコ これは、別の店舗の子から聞いた話なんですが、本社営業の男と付き合って、本社勤務に栄転した人もいるらしいです。

――それって、いわゆる、“枕営業”ですよね? 

ヤスコ そうですね。あくまで聞いた話なので、真相は不明ですけど。

オン眉 そうでなくても、本社から来る営業の男の人って、モテるんですよ。BAは女だらけの職場なので、プライベートで男との関わりがない人は、営業が来るだけで舞い上がっちゃうんです。露骨に頬を赤らめてる人もいますよ。

ヤスコ 営業さんとの飲み会がある日に、わざわざ希望休(シフトの休み希望)出して、新しい洋服買ってから行くっていう人もいるくらいです。

――すごい。合コンみたいですね。

ファイト まさに、そんな感じですね。そして、そういう気合入った先輩に限って、徒党を組みたがる。お気に入りのメンバーを5人くらい囲って、味方につけるんです。それで自分の地位を確立して安心してるんですよ。

――皆さんは、お気に入りではないんですか?

ファイト 最初は飲み会とか誘われてたけど、こいつはダメだなって思われたのか、途中から何も言われなくなりました。

ヤスコ・オン眉 私も。

――まったく派閥に属さない人もいるんですね。

ファイト そういう派閥とか作っちゃう女にはなりたくない。なる前に辞めたい。

ヤスコ このまま働き続けると、ああなっちゃうって、成れの果てを見せられてる感じですよね。その前に絶対、寿退社したいなって思ってます。

――皆さん、長く続けられてますが、辞めない理由って何かあるんですか?

ファイト 理由なんかないですよ。辞められるなら、ただちに辞めたい。転職活動も何回かしてるけど、うまくいかないだけです。

オン眉 結局、人手不足だから、気軽に辞められないというのもあります。「辞めたい」って言っても、めちゃくちゃ止められますよね。

ファイト 私、「辞めたい」って言って、店長に泣かれたことがあります。「今あなたに辞められると、私が本当に困る」って。こっちも困ってるんですけど……って話。その人の涙に負けて、結局続けることになっちゃったけど。

――何が理由だったら辞められるんですかね?

3人 結婚。

ヤスコ ほとんどが寿退職です。結婚決まったら辞められるっていう、暗黙の了解みたいになってる。

ファイト 逆に言うと、結婚してまで続ける仕事じゃないってことなんですよね。家庭と両立させたい仕事と考えてる人は少ないと思う。実際に、うちの店舗は全員独身。

――そうなんですね!

ファイト 中には、熱意持って仕事してる子もいるにはいるけど。コスメが大好きだからという理由で入ってきた新人は、休みの日も「他店研究に行ってました〜」とか言ってるし。でも、そういう子は大抵おかしい。化粧も変だし。コスメ好きな子って、こだわりが強い。自分を信じすぎてるから、客観的に見ることが苦手なんだと思う。

ヤスコ お客さんでも、コスメ好きの人って独特ですよね。

――独特って、どんな感じなんですか?

ヤスコ 普通の人は、雑誌で見て気になった商品を買いに来るって感じなんですけど、コスメオタクは、コスメカウンターを物色するのが趣味。だから、こっちが声かけても無視。仲間と一緒にコスメカウンター回って、自分のお気に入りのアイテムを見つけたら「これいいの〜」って紹介が始まる。私たちは、そのプレゼンテーションを延々と見せられてます。

ファイト 「これ使ってる」って言うためだけに寄る人は多いです。逆にうちらがプレゼンされます。「これ、こんなに良くて、こんなふうに肌が変わった!」って。へ〜、よかったですね〜、みたいな……。

――想像以上に、BAの世界が面白いってことがわかりました。

ファイト でも、一口にBAと言っても、お店によってかなり毛色が違うと思います。国産か外資か、スキンケアラインかコスメラインか……とか、いろいろあるんですよ。国産のスキンケアブランドはマシって聞きます。ブランドにもよると思うけど、国産って厳格なノルマがないんです。インセンティブもないから、お客さんの奪い合いもない。でも、外資のブランドは本当に奪い合いみたいです。

――自分の売り上げを伸ばすためにですか?

ファイト そう。最初にお客さんに声かけた人の売り上げになるから、「お客さん取った!」ってなるんです。誰が一番に声かけられるかって競争。でも、ネイルを見てる客がいたら、下っ端に行かせるんだって。ネイルって単価が安いから、売り上げにならないって敬遠される。でも、高いスキンケア商品を見てる客には、先輩たちが自分で行く。単価が取れるから。

――そんな争いがあるんですね!

オン眉 同じフロアの外資ブランドの子は、「金持ちそうな客を見つけたら、自分で行く」って言ってましたよ。

ヤスコ あと、インバウンド(訪日旅行)の客に飛びつく美容スタッフもいますよね。中国人の爆買い目当てで。

――コスメも、そんなに爆買いしていくんですか?

ヤスコ 爆買いですよ! 2日間に分けて買いにきたりとか。中国人のバイヤーがまとめ買いして、現地で売ってるんですよ。

オン眉 商品券や株主優待券で買っていきますよね。

ファイト そう! できるだけ安く買ってく。それをいくらで転売してるのかは知らないけど。

ヤスコ あと、インバウンド専門みたいなBAもいますよ。インバウンドの客に寄ってきてもらうために、勝手にサンプルをたくさんつけて、顔を覚えてもらうんです。それで、次に来たときも、自分を目がけて来てもらえるようにしてる。セコいんですよ。

――なるほど。その人は今どうしてるんですか?

ヤスコ インバウンドが多く来る店に異動しました。

ファイト 今も、中国人にサンプルをたくさん配ってると思う。きっと元気でやってますよ。

現役BAが暴露! クレーマー、常連太客……華やかな化粧品売り場の過酷な実情

 デパートの1階にあるコスメカウンター。そこに待ち構えるのは、キラキラしたビューティーアドバイザー(BA)たち。バッチリメイクで立ち仕事は、いかにも疲れそうで、加えて女の園ゆえ、人間関係も難しいのでは……? ということで、都内の百貨店に勤めるBAさん3人に集まっていただき、座談会を開催。華やかな化粧品売り場の裏側に迫った。

<参加者プロフィール>
ファイト:33歳、BA歴8年。都内大手百貨店A勤務。他2名の参加者とは、前の店舗で一緒だった。客を引き寄せるトーク力に定評あり。
ヤスコ:32歳、BA歴5年。都内老舗百貨店B勤務。嫌いな客のタイプは、せっかちな人。
オン眉:31歳、BA歴6年。都内老舗百貨店B勤務。彼氏いない歴も6年。

■BAに会いたい……恐怖のストーカー

――今日の座談会は、「知られざるBAの裏側」について語っていただければと思います。某ブランドのBAさん、3名にお集まりいただきました。皆さん、都内の百貨店に勤務してらっしゃるということで、かなりいろいろな経験をしてこられたのではないでしょうか?

オン眉 確かに給料が安い割に、やることは多いし、人間関係も含めて、結構ハードかもしれない。私の後輩で、常に辞表を持ち歩いてる子がいますよ。

――えっ! いつでも辞められるようにということですか?

オン眉 そうそう。いつも愚痴ってる。でも、持ってるだけで、まだ辞めてないですけどね。

――やっぱり、ストレスのたまる仕事なんですね。 

ファイト たまるたまる。前にうちの百貨店に変質者が来て、大声で「死ぬ! オレはもう死ぬ!」って言いだしたんです。それ聞いた先輩が、「こっちが死にてぇよ!」ってつぶやいてるのが印象的だった。「叫んでる変質者がうらやましい」って……。その先輩はまだどこかの店で、ストレスと戦いながら続けてるはず。

――なんか、初っぱなからすごい話題ですね。具体的には、どんなことでストレスがたまるんですか?

ファイト 接客業だから、変な客は来ます。うちみたいに大型の店舗になると、それこそ平日でも100人くらいの客は来ますからね。私が今までで一番キモかった客は、ストーカー。週3回くらい来てました。

――ええ! そもそもストーカーって、どういうことですか?

ファイト 婚活パーティーで1回だけ会った人なんだけど、どういうわけか気に入られちゃって、連絡先も交換してないのに、仕事先を突き止められたんです。多分、SNSで名前検索されたんだと思う。ヤバイよね。電車の中で視線感じるなと思ったら、真後ろにいたことがありますよ。

――超怖いですね!

ファイト ストーカーネタもいろいろあるけど(笑)、とにかく、そいつが週に3回くらいお店に来るんです。「彼女に頼まれて買いに来ました」とか言うんだけど、嘘バレバレなのね。しかもそのストーカー、頭が回るので、製造中止になったネイルをわざわざ取り寄せするわけ。店まで来て、私が店頭に立ってるのを確認してから、電話してくるの。「頼んでたネイル届いてますか〜?」って。私が店にいるの知ってるから、担当させようとしてるんだよね。

ヤスコ あの時期、やばかったですよね。ファイトさん、めっちゃ狙われてた。

ファイト そうそう。でもヤスコが機転利かせてくれて、「ネイル届いてません」って言ってくれたから、難を逃れた。本当は届いてたんだけど。

オン眉 朝のミーティングのときに、共有事項として全員に周知されましたよね。「ファイトさんのストーカー来るから気をつけて」って。

――でも、お客さんとして来るから、難しいですよね。出入り禁止にできたらいいけど……。

ファイト 実害がないから、出禁は難しいんです。会社もSNSで悪口拡散されるのを恐れてるから、簡単には出禁にさせてくれないと思う。でも、スタッフが皆、優しくて、ストーカーから遠ざけてくれてた。でも結局、気持ち悪いのに耐えられなくて、店を異動させてもらった。だから今は平気。でも、また来るかもしれないって思うと、キモい。

――普通に通報していいくらいのレベルですよね。

ヤスコ ファイトさんのストーカーは、かなり特殊です。フツーにムカつく客もたくさんいますよ〜。今日も一番最後に接客した人は、すごく感じ悪かった。

――どんな人ですか? ここで吐き出して、成仏させましょう!

ヤスコ 常連さんの中には、「私のことわかってて当たり前だよね?」みたいな客が多いんですよ。そういう人には、名前を聞いちゃダメなんです。

――1回で覚えないといけないんですね。

ヤスコ そうそう。「お名前こちらでご登録ありますか?」って言うと、「当たり前でしょ!? あんた、あたしのこと知らないの!?」くらいの勢いで来る。いや、こっちは「知らないし……」って感じですよ。直接担当してない場合もあるから。これはBAの中でも“超あるある”です。

オン眉 うちらみたいに超大型店舗だと、年間30万円以上使う常連さんが何百人もいるから、いちいち覚えられないんです。

ヤスコ そうなんです! 今日来た客も、そういう感じ悪い常連で、雑誌に掲載されてた新製品があるか聞かれたから、「こちらですか?」って商品見せたら、「ハッ? 違うんだけど!」って。そんな感じ悪く言う必要ありますかね。70歳くらいのお婆さんですよ。

オン眉 私もこの前、オバサンのクレーマーに対応しました。閉店間際に走ってきて、「ファンデーション、返品したい!」って。もう、走ってきて突然そんなこと言うとか、絶対普通じゃないですよね。でも、よくよく話を聞いてると、うちのブランドの商品だけど、別の店舗で接客されて買ったものだったんです。「こっち悪くないよね……」って、心の中でひたすら思いました。

ファイト でも同じブランドだから、謝らなきゃいけないんですよね。「申し訳ありません」って。

ヤスコ 理不尽ですよね〜。殴り込みに来る店、間違えてるのに。

■即売してくれなかったら、自分に何か問題がある

――それで、どうなったんですか?

オン眉 違う店舗で買ったものなので、うちでは返品手続きできないんですよ。でも、相手は「今すぐ返品したい」と言って譲らない。仕方ないので、購入した店舗に電話して、後日返品処理するという話で、なんとか納得してもらいました。返品する際に、別のファンデを買いたいと言われたんですけど、それは丁重にお断りしました。これもBAあるあるで、クレームつけてきた客には基本的に売りません。またすぐ返品してきて面倒くさいからです。

――へえ、そうなんですね! 知りませんでした!

ファイト 「一日様子を見て、お考えください」って言って断ります。サンプルだけ渡して帰ってもらうとか。とにかく、買ってもらわないようにする。だから、お客さんたちは、BAが即売してくれなかったら、自分に何か問題があるって察してほしいですね。

――勉強になります。

(後編へ続く)

「愛人紹介」のラウンジオーナーと、“パパ活”女子大生の意外な本音【職業:愛人の女たち】

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 キラキラ女子というキーワードが世間を賑わすことは少なくなった。だが、若い女子の一部に上昇志向の強いコがいるのは、昭和の時代から変わらない。刻一刻と消えていく若さを知ってなのか、“人脈”と“金脈”を求め、夜の世界に繰り出す女子たち。

 「パパ活愛人」も、その上昇志向の表れなのか。若さを使って、同年代の女子たちが手にできない何かを掴もうとする娘たち、既得権益を利用して、若い女の体を弄ぼうと企む中年男たち……。そんな、飽くなき闘いの一端を覗いてみよう。

 ガールズバーで知り合った、オジサンたちの人生指導

ーーちょっと前、パパ活って言葉がはやったよね。実際してたコっている?

「いますよ。パパがほしいってコは、今もいます。っていうか、私もほしいかも(笑)」

 と話すのは、岩手から上京し、今年4月に都内お嬢様女子大に入学したアオイちゃん(仮名)。インスタグラムにはフォトジェニックな写真がズラリと並ぶ、イマドキのリア充な女子大生だ。現在は、大学の近くで一人暮らしをして、夜はガールズバーでバイトをしている。だが、このバイト、大学の友達には内緒にしているという。

「内部(註:付属学校)から進学してきたコとかは、みんな実家暮らしで、バイト代は全部お小遣いになるですよね。家も結構お金持ちっぽくて、普通にブランドのバッグとか財布とか持ってるんですよ。財布はヴィトン、バッグはケイト・スペードやフルラとかが人気あります。だから、それまでバッグなんてノーブランドの3,000円くらいのしか持っていなかったんですが、みんなについていかなきゃって気持ちになって、バイトしてシーバイクロエのバッグを買いました」

 長期の休みになると、旅行の機会もあり、とにかく内部進学生のライフスタイルについて行くのが大変なのだという。

ーーそういう友達とはサークルとかで出会うの?

「前はサークルも活発に顔出ししていたんですが、今はあんまり積極的な感じじゃないんです。っていうのも、新歓やるからおいでよって誘われて行ったら、先輩たちはヤりたいだけの人ばっか。飲み会の後は基本カップルになってて、誰かの家に行ってヤるみたいな空気で……。お互いに付き合うつもりはないのに」

ーーインカレのオールラウンドサークルとか?

「そうそう。ああいうサークルの中心の人たちって、基本ヤりたいだけ。男も女も利害が一致したWINーWINな関係なんですよ(笑)。でも、私は実害を感じたことがあって。A君って自他ともに認めるチャラ男なパリピがいるんです。クラブのVIP席でイチャついたりするような。その子が知り合いを妊娠させたっていう話を聞いて、自分を守りたいなら距離おくべきだなと」

ーー賢いね。で、サークルとは距離を置いたってわけだ。

「そう。でも、バイト先で、『慶應とか早稲田の男がいつも周りにいるような状況って今だけだよ。大学生のうちにちゃんと付き合って、そういう相手と結婚するんだよ』みたいなことをお客さんから言われるんですよ。だから今の時期を無駄にしちゃいけないなと思いまして……」

 夜のバイトで知り合った30代、40代の男性から”人生”について教えを受けるうちに”女子大生”に価値があることに気づいたのだ。そこでアオイちゃんは、“表向き”には上昇志向のある学生と付き合うことを目的に、せっせと同世代男子との出会いを探している一方、裏ではしたたかに「大人人脈」も築いている。

 つい先日、他大学の友達から誘われたパーティーに出かけてみたところ、そこはキャバ嬢やモデル、女子大生と付き合いたいリッチな男性が参加している場だったという。

「キャバ嬢とかは、本気で婚活モード入ってて、ああはなっちゃダメだなと思いましたね。私は、お金が欲しいっていうよりは、社会のことを色々教えてくれて、私のことを伸ばしてくれるような40歳くらいまでの男の人がいたら付き合いたいなと思って。その上で、ちょっとお小遣いもらえたらうれしいけど」

 結局、そのパーティーではなんとなく付き合った男性ができたそうだが、1カ月ほどで自然消滅してしまったという。その間、おいしいご飯を食べさせてもらい、洋服を買ってもらった程度で、現金をもらうような機会はなかったそうだ。ちなみにエッチは1回だけしたという……。

 しかも、こういったケースは一度ならず、何度も続いたのだった。

「六本木のあるお店で、愛人を探している人と出会えるって聞いたので、友達と出かけたんです。声をかけられて一緒に飲み、後日2人で食事でもということになりデートしました。その日は、普通にご飯を食べてサヨナラだったんですが、これが1カ月以上続いたんです。その間、ただ一緒にご飯食べるだけ。で、その人とはごはん食べるだけで関係は終了しました」

ーーお金もらったことってないの?

「友達から愛人のお見合いバンクみたいなところに誘われて登録したんですが、そこの男性と会った時にはもらえましたね。ご飯して、ホテルに行って、最後に3万みたいな」

ーー意外と少ないんですね。

「はい。しかも、デート全部で6時間くらいかかって。これが続くんだと、正直、つらいなって思いました。会ってくれるのは不定期だし、必ずこれだけもらえるっていう保証もないし。こういうのが続くと考えちゃいますよね……。6人と付き合いましたけど、お金くれたのは1人だけ」

ーー愛人って大変だね。

「そうそう、おいしい話はないってことですよね。普通にバイトしていた方が確実にお金が入るなって痛感しました」

 援交のようにカラダを売ることなく、デートするだけで数万円や高額プレゼントをもらえるパパ活という言葉が独り歩きしたが、実際はどうもなかなかオイシイ目にはあり付けないようだ。

「むしろガールズバーの常連のお客さんと食事したり、デートした方がいい思いができるのかも(苦笑)」

 一方、中年男サイドの思惑はいかがなものなのだろうか? アオイちゃんのようなキラキラ系の女子大生や、見た目のいいOLなどが働くラウンジを経営している加藤氏(仮名・43歳)に話を聞いた。

 加藤氏は、自身の店を経営する傍らで、高収入を稼ぎ出して夜遊びに繰り出す六本木の住民たちに、自身の店の女の子を愛人候補として紹介しているのだ。

「昔からの知り合いから、『誰かいいコいたら紹介してよ』ってよく言われるんだよね。みんな結婚しているから、つまり、お金は払うから愛人として付き合ってくれるコってことなんだけど」

ーー女の子は嫌がらないの?

「いや、女の子の方から『誰かいい人いたら紹介してください』とか『愛人って興味あるんですよね』みたいなことを言ってくるよ。無理やり誘ったことなんてない」

ーー良い出会いを供給する、世話焼きオジサンじゃないですか。

「それがそうでもないんだよね。結構トラブルがあるから。だから、裏でお金はもらってる」

 というのも、男性側がお断りするケースがあまりにも多いのだという。

「だいたい持って3カ月だね。短いと1回会っただけで終わる。半年、1年って交際が続くコなんて滅多にいないよ。男が飽きちゃうの。『あの子、もうつまんなくなっちゃった』『話してても面白くないし』って。だから、女の子からしたら、期待して付き合ってるのにあっという間に捨てられたってなるわけ。そもそも自分に魅力がないから男が逃げちゃってるのに、『ケチ』だとか『女の扱いを知らない』とか文句だらけ。それを慰める……つまり、後処理がオレのメインの仕事なんだよね」

 男女の欲が蠢く街で、欲望同士が見事マッチングし、WINーWINになるケースはどうやら少数派のようだ。

 だが、その裏にあるのは、若さを武器にオイシイ思いをしようと企む女性を、老獪な中年男が食い散らかす図だ。いずこの時代でも、「俺、結婚するならあんまり遊んでない子がいいな」とのたまう男がいるのは、「中年男に食い散らかされた女性は嫌だ」という本音があるからだろう。

「愛人紹介」のラウンジオーナーと、“パパ活”女子大生の意外な本音【職業:愛人の女たち】

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 キラキラ女子というキーワードが世間を賑わすことは少なくなった。だが、若い女子の一部に上昇志向の強いコがいるのは、昭和の時代から変わらない。刻一刻と消えていく若さを知ってなのか、“人脈”と“金脈”を求め、夜の世界に繰り出す女子たち。

 「パパ活愛人」も、その上昇志向の表れなのか。若さを使って、同年代の女子たちが手にできない何かを掴もうとする娘たち、既得権益を利用して、若い女の体を弄ぼうと企む中年男たち……。そんな、飽くなき闘いの一端を覗いてみよう。

 ガールズバーで知り合った、オジサンたちの人生指導

ーーちょっと前、パパ活って言葉がはやったよね。実際してたコっている?

「いますよ。パパがほしいってコは、今もいます。っていうか、私もほしいかも(笑)」

 と話すのは、岩手から上京し、今年4月に都内お嬢様女子大に入学したアオイちゃん(仮名)。インスタグラムにはフォトジェニックな写真がズラリと並ぶ、イマドキのリア充な女子大生だ。現在は、大学の近くで一人暮らしをして、夜はガールズバーでバイトをしている。だが、このバイト、大学の友達には内緒にしているという。

「内部(註:付属学校)から進学してきたコとかは、みんな実家暮らしで、バイト代は全部お小遣いになるですよね。家も結構お金持ちっぽくて、普通にブランドのバッグとか財布とか持ってるんですよ。財布はヴィトン、バッグはケイト・スペードやフルラとかが人気あります。だから、それまでバッグなんてノーブランドの3,000円くらいのしか持っていなかったんですが、みんなについていかなきゃって気持ちになって、バイトしてシーバイクロエのバッグを買いました」

 長期の休みになると、旅行の機会もあり、とにかく内部進学生のライフスタイルについて行くのが大変なのだという。

ーーそういう友達とはサークルとかで出会うの?

「前はサークルも活発に顔出ししていたんですが、今はあんまり積極的な感じじゃないんです。っていうのも、新歓やるからおいでよって誘われて行ったら、先輩たちはヤりたいだけの人ばっか。飲み会の後は基本カップルになってて、誰かの家に行ってヤるみたいな空気で……。お互いに付き合うつもりはないのに」

ーーインカレのオールラウンドサークルとか?

「そうそう。ああいうサークルの中心の人たちって、基本ヤりたいだけ。男も女も利害が一致したWINーWINな関係なんですよ(笑)。でも、私は実害を感じたことがあって。A君って自他ともに認めるチャラ男なパリピがいるんです。クラブのVIP席でイチャついたりするような。その子が知り合いを妊娠させたっていう話を聞いて、自分を守りたいなら距離おくべきだなと」

ーー賢いね。で、サークルとは距離を置いたってわけだ。

「そう。でも、バイト先で、『慶應とか早稲田の男がいつも周りにいるような状況って今だけだよ。大学生のうちにちゃんと付き合って、そういう相手と結婚するんだよ』みたいなことをお客さんから言われるんですよ。だから今の時期を無駄にしちゃいけないなと思いまして……」

 夜のバイトで知り合った30代、40代の男性から”人生”について教えを受けるうちに”女子大生”に価値があることに気づいたのだ。そこでアオイちゃんは、“表向き”には上昇志向のある学生と付き合うことを目的に、せっせと同世代男子との出会いを探している一方、裏ではしたたかに「大人人脈」も築いている。

 つい先日、他大学の友達から誘われたパーティーに出かけてみたところ、そこはキャバ嬢やモデル、女子大生と付き合いたいリッチな男性が参加している場だったという。

「キャバ嬢とかは、本気で婚活モード入ってて、ああはなっちゃダメだなと思いましたね。私は、お金が欲しいっていうよりは、社会のことを色々教えてくれて、私のことを伸ばしてくれるような40歳くらいまでの男の人がいたら付き合いたいなと思って。その上で、ちょっとお小遣いもらえたらうれしいけど」

 結局、そのパーティーではなんとなく付き合った男性ができたそうだが、1カ月ほどで自然消滅してしまったという。その間、おいしいご飯を食べさせてもらい、洋服を買ってもらった程度で、現金をもらうような機会はなかったそうだ。ちなみにエッチは1回だけしたという……。

 しかも、こういったケースは一度ならず、何度も続いたのだった。

「六本木のあるお店で、愛人を探している人と出会えるって聞いたので、友達と出かけたんです。声をかけられて一緒に飲み、後日2人で食事でもということになりデートしました。その日は、普通にご飯を食べてサヨナラだったんですが、これが1カ月以上続いたんです。その間、ただ一緒にご飯食べるだけ。で、その人とはごはん食べるだけで関係は終了しました」

ーーお金もらったことってないの?

「友達から愛人のお見合いバンクみたいなところに誘われて登録したんですが、そこの男性と会った時にはもらえましたね。ご飯して、ホテルに行って、最後に3万みたいな」

ーー意外と少ないんですね。

「はい。しかも、デート全部で6時間くらいかかって。これが続くんだと、正直、つらいなって思いました。会ってくれるのは不定期だし、必ずこれだけもらえるっていう保証もないし。こういうのが続くと考えちゃいますよね……。6人と付き合いましたけど、お金くれたのは1人だけ」

ーー愛人って大変だね。

「そうそう、おいしい話はないってことですよね。普通にバイトしていた方が確実にお金が入るなって痛感しました」

 援交のようにカラダを売ることなく、デートするだけで数万円や高額プレゼントをもらえるパパ活という言葉が独り歩きしたが、実際はどうもなかなかオイシイ目にはあり付けないようだ。

「むしろガールズバーの常連のお客さんと食事したり、デートした方がいい思いができるのかも(苦笑)」

 一方、中年男サイドの思惑はいかがなものなのだろうか? アオイちゃんのようなキラキラ系の女子大生や、見た目のいいOLなどが働くラウンジを経営している加藤氏(仮名・43歳)に話を聞いた。

 加藤氏は、自身の店を経営する傍らで、高収入を稼ぎ出して夜遊びに繰り出す六本木の住民たちに、自身の店の女の子を愛人候補として紹介しているのだ。

「昔からの知り合いから、『誰かいいコいたら紹介してよ』ってよく言われるんだよね。みんな結婚しているから、つまり、お金は払うから愛人として付き合ってくれるコってことなんだけど」

ーー女の子は嫌がらないの?

「いや、女の子の方から『誰かいい人いたら紹介してください』とか『愛人って興味あるんですよね』みたいなことを言ってくるよ。無理やり誘ったことなんてない」

ーー良い出会いを供給する、世話焼きオジサンじゃないですか。

「それがそうでもないんだよね。結構トラブルがあるから。だから、裏でお金はもらってる」

 というのも、男性側がお断りするケースがあまりにも多いのだという。

「だいたい持って3カ月だね。短いと1回会っただけで終わる。半年、1年って交際が続くコなんて滅多にいないよ。男が飽きちゃうの。『あの子、もうつまんなくなっちゃった』『話してても面白くないし』って。だから、女の子からしたら、期待して付き合ってるのにあっという間に捨てられたってなるわけ。そもそも自分に魅力がないから男が逃げちゃってるのに、『ケチ』だとか『女の扱いを知らない』とか文句だらけ。それを慰める……つまり、後処理がオレのメインの仕事なんだよね」

 男女の欲が蠢く街で、欲望同士が見事マッチングし、WINーWINになるケースはどうやら少数派のようだ。

 だが、その裏にあるのは、若さを武器にオイシイ思いをしようと企む女性を、老獪な中年男が食い散らかす図だ。いずこの時代でも、「俺、結婚するならあんまり遊んでない子がいいな」とのたまう男がいるのは、「中年男に食い散らかされた女性は嫌だ」という本音があるからだろう。

詩織さん、1,000万円の損害賠償請求――「準強姦容疑事件」民事で事実認定の可能性も

 tokyodistrictcourtフリージャーナリストの詩織さんが、元TBS記者でジャーナリストの山口敬之氏から性的暴行を受けたと訴えていた準強姦容疑事件で、東京地検の不起訴処分に対し、東京第6検察審査会(検察審)は9月21日付けで「不起訴相当」と議決した。これに対し、ネットでは疑問を持つ声が続出している。また28日には、詩織さん自身が真相究明などを求めて東京地裁に民事訴訟を起こしたことを明かした。

 刑事裁判で不起訴処分、つまり罪にならなかった事件について、民事裁判で慰謝料を請求することは認められるのだろうか? 刑事・民事ともに詳しい法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞いた。

「認められる『可能性』はあります。刑事裁判では被告人(この件では山口氏)を犯罪者として処罰するかどうかが判断されるので、裁判所に提出できる証拠が限られ、裁判所の事実認定も無実の者を絶対処罰すまいという思いから厳しくなります。

 これに対し、民事裁判では不法行為(強姦被害)を理由とした損害賠償請求を認めるべきかどうかが判断されるので、裁判所に提出できる証拠について原則として制限がなく、裁判所の事実の認定も、事実誤認はすまいという思いから厳しく行われますが、刑事裁判の場合よりは緩やかです。したがって、刑事裁判では強姦の事実を認めてもらえないが、民事裁判では強姦の事実を認めてもらえるという場合もあるわけです」

 つまり、裁判で強姦の事実を認められれば、慰謝料支払いの判決が出る可能性があるということだ。詩織さんは「精神的慰謝料などとして総額1,000万円の損害賠償」を求めるとしているが、実際に裁判で認められる現実的な金額はどのくらいなのだろうか?

「慰謝料額は、強姦行為の内容、被害の内容・程度、加害者と被害者の関係、加害者の支払能力、被害感情の大きさ等を元に裁判所が決めます。裁判で1,000万円の請求が、まるまる認められたという例は聞きません。原告(詩織さん)は『総額1,000万円の損害賠償』を求められているようですが、実際に認められる額は200万~500万円くらいではないかと思います」

 詩織さんは、「私が受けた行為は28年間生きてきたなかで最も醜い人権侵害」と主張しており、詩織さんの弁護士も「(山口氏の行為は)民法上の不法行為にあたる」としている。民事裁判によって、真相が明らかになることが期待される。

冨本和男(とみもと・かずお)
弁護士。債務整理のほか債権回収等の一般民事事件の弁護、刑事弁護、離婚・相続等の家事事件の弁護など、さまざまな事件を担当。
法律事務所あすか

詩織さん、1,000万円の損害賠償請求――「準強姦容疑事件」民事で事実認定の可能性も

 tokyodistrictcourtフリージャーナリストの詩織さんが、元TBS記者でジャーナリストの山口敬之氏から性的暴行を受けたと訴えていた準強姦容疑事件で、東京地検の不起訴処分に対し、東京第6検察審査会(検察審)は9月21日付けで「不起訴相当」と議決した。これに対し、ネットでは疑問を持つ声が続出している。また28日には、詩織さん自身が真相究明などを求めて東京地裁に民事訴訟を起こしたことを明かした。

 刑事裁判で不起訴処分、つまり罪にならなかった事件について、民事裁判で慰謝料を請求することは認められるのだろうか? 刑事・民事ともに詳しい法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞いた。

「認められる『可能性』はあります。刑事裁判では被告人(この件では山口氏)を犯罪者として処罰するかどうかが判断されるので、裁判所に提出できる証拠が限られ、裁判所の事実認定も無実の者を絶対処罰すまいという思いから厳しくなります。

 これに対し、民事裁判では不法行為(強姦被害)を理由とした損害賠償請求を認めるべきかどうかが判断されるので、裁判所に提出できる証拠について原則として制限がなく、裁判所の事実の認定も、事実誤認はすまいという思いから厳しく行われますが、刑事裁判の場合よりは緩やかです。したがって、刑事裁判では強姦の事実を認めてもらえないが、民事裁判では強姦の事実を認めてもらえるという場合もあるわけです」

 つまり、裁判で強姦の事実を認められれば、慰謝料支払いの判決が出る可能性があるということだ。詩織さんは「精神的慰謝料などとして総額1,000万円の損害賠償」を求めるとしているが、実際に裁判で認められる現実的な金額はどのくらいなのだろうか?

「慰謝料額は、強姦行為の内容、被害の内容・程度、加害者と被害者の関係、加害者の支払能力、被害感情の大きさ等を元に裁判所が決めます。裁判で1,000万円の請求が、まるまる認められたという例は聞きません。原告(詩織さん)は『総額1,000万円の損害賠償』を求められているようですが、実際に認められる額は200万~500万円くらいではないかと思います」

 詩織さんは、「私が受けた行為は28年間生きてきたなかで最も醜い人権侵害」と主張しており、詩織さんの弁護士も「(山口氏の行為は)民法上の不法行為にあたる」としている。民事裁判によって、真相が明らかになることが期待される。

冨本和男(とみもと・かずお)
弁護士。債務整理のほか債権回収等の一般民事事件の弁護、刑事弁護、離婚・相続等の家事事件の弁護など、さまざまな事件を担当。
法律事務所あすか

「女性なら子どもが好き」という“刷り込み”から自由になるには?

 女友達数人といたら、あどけない子どもが登場。「かわいい~!」と声を上げ、あれやこれやとあやして遊ぶ女性がいる一方、子どもの扱いが苦手、あるいは子ども自体が苦手という女性はどう振る舞えばいいのかわからず、その場の空気に落ち着かなさを感じてしまう。自身も子どもが苦手だというライターの吉田潮さん。8月26日に上梓した『産まないことは「逃げ」ですか?』(KKベストセラーズ)では、女性が抱える子どもを持つこと・持たないことの葛藤や、自身の不妊治療の体験を綴っている。吉田さんに、子どもを持たない女性は世間とどう付き合えばいいのかを聞いた。

■産まないことは自分の人生の決意の表れ

――最近は、「女性なら結婚したら仕事を辞めるべきだ」とか「女性の幸せは専業主婦」といった考え方はだいぶ薄れてきていると思うのですが、著書に書かれていたように、「女性ならば子どもが好き」という世間の刷り込みは、まだ根強く残っている気がします。

吉田潮さん(以下、吉田) これはずっと続くんでしょうね。女性は「産む性」だから「子どもが好き」と思われてしまうのでしょうけど、産んで育てて働けって言われると疲れちゃいますよね。子どもを産むつもりがない人にとって、「子どもが好きじゃない」とは言い出しにくいし、言ってもいいけど、言ったら言ったで説教を食らうこともある。

――自分の中で子どもはいらないと思っている分にはいいけれど、口に出してはいけないような雰囲気がありますね。

吉田 仕方がないと思いつつも、「母性よりもまず先に人権でしょ?」と思っちゃいますよね。少子化なので、産めるのに産まないのはけしからんとか、みんなすぐに主語を国家にしがちです。少子化は深刻な問題なので、言わんとしていることはわかりますが、そうなると殖産興業のような話になってしまいます。人それぞれ事情があるし、産まない決意をしたということは、逃げているわけではなく、自分は自分の人生をこういうふうに生きると決めた決意の表れです。

 男性は「結婚すれば?」とか「子どもを持てば?」とかは言われますが、「子どもは好きじゃないし欲しくない」と言っても、そこまで非難されない。子どもが欲しくない女性はその思いを内に秘めて、子どもの話になるとスーッとフェードアウトする、という癖がついてしまっているのだと思います。「私は産みません、子どもはいりません」とはっきりと言えると、ちょっと気が楽になるんでしょうけど。また、「子どもがいらない」という人同士で結婚することもあります。

――確かにそうですね。

吉田 結局、行き着くところは家族になっても一人ひとりがきちんと自立しているのか、というところだと思うんです。海外だと、パートナーにしなだれかかるようなことはせず、もう少しピンで立っていると思います。でも、日本だと「旦那の稼ぎが少なくてさ……」と文句を言いつつ、夫の収入に依存する人がたくさんいます。病気などで働けない場合は別として、そうやって自分の足で立てないのって不安じゃないのかな? と思います。助け合いは絶対に必要ですが、共依存のような状況は少し違うのではないかなと。

――子どもを産まない人生を満喫する人と、子育てで苦しいこともあるけれど、それ以上に楽しいと思う家族もいます。そのように、「みんな違ってみんな良い」というふうになればいいと思うのですが、子どもを持たない人を責める風潮もありますよね。

吉田 そうですね。それこそお父さんが2人いてもいいとか、お母さんが2人いてもいいとか、いろんな家族の形態のサンプルが出てくれば変わってくると思います。テレビドラマで言うと、2011年に放送された『マルモのおきて』(フジテレビ系)がまさにそれで、亡くなった親友の2人の子どもを、阿部サダヲさん演じる高木護が育てるストーリーです。ドラマはしょせん、絵空事ではありますが、そのような面でも刷り込みは大きいと思います。

――刷り込みに関してですが、「子どもが嫌いな女性はダメだ」と言われているような感覚があります。

吉田 子どもが苦手な女性って、ドラマであまり描かれていないんですよね。一生懸命頑張るお母さんを礼賛しているものが多くて。先日放送が終了した『カンナさ〜ん!』(TBS系)もそうで、渡辺直美さん演じるカンナさんが明るくて、すごく頑張り屋さんなんです。その姿を見ていると、もう少し甘えてもいいんじゃない? って思います。忙しいのに子どものキャラ弁を作ったり、デザイナーの役なので夜中に子どものためにファッションショーをしたり。みんな、母ちゃんへ負担をかけるのが大好きで、母は聖母でなければならないといったイメージがあります。

 こういうドラマを見たら、子育てで大変な思いをしているお母さんたちは「何? 疲れている私に保育園で使う手提げ袋にアップリケを縫えって言うわけ?」って思っちゃう。その負担が積もりに積もっていくと、「子どもがいない人にはわからないわよ」という発言につながってしまうだろうし、「子どもを産まずに自由に生きている人には税金をかければいい」という思考に流れてしまうのも、少しわかる気がします。子育てで報われていない人って多いのでしょうね。

――今後、子どもを持たない女性や子どもが苦手な女性が、世間の刷り込みと付き合っていくためにはどうすればいいと思いますか?

吉田 生きづらさの原因の一つになっているのは主語が「世間」になっているからです。その主語のスイッチを「自分」に取り戻す必要があります。「結婚しなきゃダメ」「子どもを持たないとダメ」と言っているのは、自分ではなく世間や自分の親、義理の親、友達などです。

 もしかしたらワガママと言われるかもしれませんが、それは自分の権利です。私もときどき、自分の無意識な刷り込みにハッと気づくことがあります。私はメス猫を飼っているのですが、ブラッシング中に「もう、目ヤニなんかつけて、女の子なんだからきれいにしなきゃ」とポロッと言ってしまったことがあったんです。でも、「えっ、女の子だから? いや関係ない。うちの飼い猫だからきちんときれいにして目ヤニを取った方がいい」と自分の中で訂正をしました。

 このように、無意識に「男だから・女だからこうあるべき」と思って、その主語が“自分”でない場合が意外と多くあります。ほかにも、結婚をして主語が夫になっている人はたくさんいます。食事や旅行に誘った際、「ちょっと夫に聞いてみるね」と答える人がいますが、「いやいや、夫じゃなくてあなたの気持ちは?」と思うわけです。子どもの世話をどうするかを夫と考えなければならないというのもありますが、それならば「私は行きたいけど、ちょっと予定を調整してみるね」と言えばいい。「夫に聞いてみないと」となったとき、この人は主語が夫なんだなと思ってしまうのはよくありますよね。自分の主語はどこにあるんだろうと考えたとき、「ああ、私は子どもいらなかったわ」と思ったら、その主語を自分に変えればいいだけです。そうすると少し楽になるのではないかと思います。
(姫野ケイ)

吉田潮(よしだ・うしお)
ライター・コラムニスト、イラストレーター。「週刊新潮」(新潮社)で「TVふうーん録」連載中。著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)、『産まないことは「逃げ」ですか?』(KKベストセラーズ)など。

水原希子が“炎上”するワケ――批判する人が持つ「複雑な悪意」の正体

 水原希子をCMキャラクターに起用したサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」の公式Twitterアカウントに、「エセ日本人」「反日モデル」など、“人種差別”ともとれるような、ヘイトに満ちた返信が相次ぎ、ネットを中心に大きな騒ぎとなった。

 その後も出演したテレビ番組での発言が批判されたり、映画の評価が低いことを彼女の演技力のせいと報じられるなど、たびたび騒動の中心となっている。そんな水原へ向けた攻撃は、なぜこんなにも激化するのだろうか? いったいどんな人が批判的なコメントを綴っているのか? 『悪意の心理学 悪口、嘘、ヘイト・スピーチ』(中公新書)の著者であり、社会心理学的な見地から“ことばとコミュニケーション”に関する研究を進めている、愛知学院大学心身科学部心理学科の岡本真一郎教授に聞いた。

■差別や偏見だけでなく、嫉妬も炎上の引き金に

 サントリーのTwitterアカウントに向けては、アメリカ人の父と韓国人の母の間に生まれたハーフで、国籍はアメリカという彼女の出自に絡めた非難の言葉が目立った。しかし、「今回の騒動で書き込みをしている人の心理は、外国人に対する排斥意識がすべてではない」と岡本教授は語る。

「インスタグラムを中心にした、水原さんのさまざまなSNSでの言動についての反発心が、今回の騒動の引き金となった可能性は十分にあるでしょう」

 もともと水原のSNSには、“中国を侮辱した”と指摘されて世界各国を巻き込むこととなったツイートや、“FUCK YOU”と大胆にロゴが入ったTシャツを着た写真、トップス1枚でトイレの便座にまたがる写真など、賛否両論を招くことを想像しやすい、挑発的な投稿も少なくない。今回、水原へ罵詈雑言の数々を発したのは、ネット上で右翼的な立場をとる、いわゆる“ネトウヨ”が多いのではないかと岡本教授は分析する。

「投稿の内容から見ると、おそらく右翼でも、街宣活動に参加する人ではなく“ネトウヨ”ではないでしょうか。前者ならば、水原さんのような“いちタレント”の騒動に、いちいち頭を突っ込んだりしないように思います。遊び半分のような、気楽な気持ちで書き込んでいるのかもしれません」

 岡本教授の著書によれば、不快感を表したり相手を攻撃するときには、卑罵語や差別語、ヘイト・スピーチなど、あらゆる種類の言葉が用いられるという。ちなみに卑罵語とは“ガリガリ”“アホ”などの表面的なののしり言葉に加えて、「消えうせろ」「汚らわしい」などの具体的な内容を伝える言葉も含む。そして、どんな文脈で言葉が発せられるかによって、同じ単語でも意味合いは変化する。

「ネットという手軽なツールを選んで、非難の言葉を発するという点でも、熟慮せず安易な気持ちで書き込んでいるのが想像できます。そのため、根深い悪意から書き込むというよりは、水原さんをからかって動揺するのを楽しんでいる、そんな“表面的な悪意”があるかと思います」

 一方で、彼女に向けられた批判的な言葉は、単純な悪意から発されているものばかりではないと、岡本教授は説く。

「モデルとして活躍する並外れた容姿をお持ちの水原さんに対して、嫉妬・羨望の裏返しで攻撃している人も、きっといるはずです。有名人でもある程度目立つ人は、注目を集める分だけ、やはり炎上のリスクも高まってしまいがちです」

■批判対象のリアクションを見て、よりエスカレートすることも

 どんな意図があるにせよ、批判的な言葉が集まれば、人気商売の有名人は、なにかしらの反応を示すことが多い。水原の場合は騒動の数日後、「LOVE & PEACE」と、自身の思いをツイートした。

「人間というのは自分がやることに対するリアクションを見て、相手の動揺が感じられれば、よりエスカレートします。中には、批判派の似通った意見を参照して、同調している人もいるものです」

 そこで岡本教授が懸念するのは、この騒動を受けて発された、あるタレントのツイートだ。

「“本名での活動”を提言した、タレントのフィフィさんのツイートは気になっています。もともと水原さんに批判的な感情を持つ人の中には、この提言を攻撃材料として利用する人が現れることが、十分に考えられます。フィフィさんはご自身もタレント活動をされているので、そのように利用される可能性を想定できたはず。親切心からであっても、慎重に発言すべきだったのではないでしょうか。

 今の時代、批判の標的とされるのは、もちろん水原さんだけではありません。また炎上を引き起こす人の数は、ネットユーザー全体から見ればごく少数だと先日も報じられていました。しかし、攻撃を仕掛けてくる側がどんな心理であろうとも、実際に言われた側はたまったものではないと私は思います。何度も何度も、同じような言葉でけなされるわけですから」

 とはいえ、いかなるウワサや非難も、一定の時間がたてば、いつしか沈静化する。

「同じ話題に対して、盛り上がれる期間は限られています。現にそうであるように、新しい“なにか”が起こらない以上は話も進展しないため、別の標的に移っていくもの。しかしネット上のデータは記録として残りますし、いざとなれば引き出して、また拡散されていくことでしょう」

 また水原が次になにかアクションを起こせば、批判が集まる可能性は高い。そして、それが収まると、別のターゲットが攻撃されるのだろう。人に悪意がある限り、炎上は繰り返し、永遠に終わらないのかもしれない。
(門上奈央)

岡本真一郎(オカモト・シンイチロウ)
京都大学大学院文学研究科博士過程(心理学専攻)満期退学。愛知学院大学文学部講師、助教授、教授を経て、現在は心身科学部心理学科教授として教鞭に立つ。『悪意の心理学 悪口、嘘、ヘイト・スピーチ』(中公新書)ほか著書を多数手がける。

“ネットで金集め”が炎上する理由――真木よう子と山田孝之の違いをITジャーナリストに聞く

 女優の真木よう子が、自身の写真集を作り、コミケで「1冊ずつ手売り」したいとの意向を表明し、そのための資金をクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で募ったものの大炎上してしまい、プロジェクトは中止になった。また、YouTuber・ヒカルは個人の価値を仮想株式にして売買するサービス「VALU」で、“詐欺”まがいの騒動を起こして批判が集まり、活動中止に。なぜ、有名人がネットでお金を集めると、「炎上」しやすいのだろうか? ITジャーナリストの三上洋氏に聞いた。

■真木よう子と山田孝之から知る、有名人のクラウドファンディングの明暗

 真木の騒動について、“コミケへの理解の浅さ”が炎上の決定打となったと三上氏は指摘する。

「クラウドファンディング以前の話で、コミケについて真木さんが理解不足だったことが2点あります。まずは“企業や有名人がプロとして参加する場ではない”という点。一個人が身銭を切り、同人誌を作るのがコミケですが、真木さんは800万円もの予算をかけて各分野のプロを呼び、クオリティの高い写真集を作ろうとした。それは、例えばフリーマーケットに大手スーパーが出店するようなレベルの、とんだ“勘違い”です。

 もう1つは、コンテンツを作って売る場であるコミケを“ファンとの出会いの場”と考えた点。毎年多くの人が訪れるコミケで参加者は、いかに人をさばくかということに腐心しています。そこへ真木さんのファンが集まるとなると、多くの参加者にとってハッキリ言って迷惑。真木さんの想像はそこにも及んでいませんでした」

 ただ「真木さんご本人が自腹を切っていれば、話はまた違ったのかもしれません」と三上氏は推測する。

 一方、同じクラウドファンディングでも、その本質を理解して運営していると三上氏が評する有名人がいる。新ブランド「FORIEDGE(フォリエッジ)」を山口友敬とともに立ち上げた、俳優の山田孝之だ。

「Twitterや2ちゃんねるなどでも、山田さんの炎上はほとんど見られません。『芸能人が何でお金を募るんだ』と、クラウドファンディングの仕組みを全く理解していない一部のメディアが騒ぎ立てているだけ。クラウドファンディングは“資金を集める場”と考えるのが、悪口の根本にある大きな誤りです」

 お金を集めた後で、投資分だけの見返りを出す。つまり“資金を運用する”ことがクラウドファンディングである。それを踏まえて、山田は「自身のブランドを立ち上げて、資金を集めて商品を作って売ります」と言っているだけ。一部の人が、目標額を数日で達成しそうになったのに対して「金儲けしやがって」と悪口を垂れているにすぎないのだ。

「残念ながら、イメージ商売である芸能人に、このような批判が出るのは仕方がないのかもしれません。日本人はお金儲けに対してやはり否定的です。いわば“有名税”と捉えるべきでしょうか」

 クラウドファンディングで覚えておきたいことは、資金を集めた後に、目標達成に向けたプロジェクトが始動するという流れだ。その点で、資金を払う側にとっては、一般人より有名人のプロジェクトの方が“お買い得”といえる。

「山田さんの場合、もしも劣悪な品物が完成したり、最悪のケースで『品物ができませんでした』となれば、“山田孝之”の評価までガクンと下がります。それもあって、自分の名前でやっている以上は絶対に失敗できません。身元のはっきりしない一般人のプロジェクトより、実行可能性が高くて信用できる点では、かえってお手頃なのです」

 もともとYouTuberの代名詞的存在であったヒカル。過去に悪徳商法に手を染めていたという説もあるが、VALU騒動の引き金となった最大の原因とは何だったのか?

「『全くVALUの仕組みを理解していなかった』と、騒動後にヒカルさんは話していますが、同じ理解不足といっても、真木さんとは事情が全く異なります。ヒカルさんは仕組みを理解しないまま、動画のネタにしようと参加し、結果的に売買するほかのVALUユーザーを小馬鹿にするような手法を取りました」

 “小馬鹿にするような手法”とは、具体的にどんなものなのだろうか?

「VALUは、まさしくクラウドファンディングです。芸能人を含む有名人などの“価値(社会的評価)”の浮き沈みを逆手にとり、そこに値をつけて売買するという仕組みです。ヒカルがそうであったように、VALUで売り手になる人は、価値をどんどん高値に上げなくてはいけません」

 たとえば株式市場では、株が上がることで企業と株主の双方がハッピーになる。VALUでも同じで「今後も成長し、お金を出してくれた人にとっても、価値のある活動をします」と売り手は買い手に示す。そして高値になり、買い手も自身が手にする“仮想株式(VALU)”の価値が上がることを望んでいる。

「しかし、ヒカルが取った行動は買い手を裏切るものでした。“どういう意図で買い手が資金を出しているか”を考えもせず、いきなり全株を売却したのです。仮想株式が大量に供給されたために、需要と供給のバランスが崩れ、ヒカルの値段がガクンと下がった。つまり買い手にとっては、すでに投資して手にしたヒカルの仮想株式の価値が下がったということです。株市場でいう“ジャブジャブ”状態ですね」

 たとえヒカル自身の無知には悪気がなかったとしても、すでにヒカルに価値を見いだしてお金を投資していた人にとっては、たまったものではないだろう。

「VALUと同じ評価経済のサービスとして『Timebank』が始まりました。こちらは著名人や専門家の“時間”を10秒単位で買うという仕組みですが、たとえばブロガーのはあちゅうさんなどは、なんと20分で6万6,720円が付けられた。その値に対して『高すぎて気持ち悪い』との声もネットで出ています」

 クラウドファンディングやVALUなど、ネットがお金をやりとりできる場としても機能し始めてから日はまだ浅い。しかし有名人を中心とするネットでのお金集めは、今後も増え続けるに違いない。買い手側としては、仕組みを正しく知る必要があるだろう。

「真木さんやヒカルさんの騒動からも言えることですが、売り手側もきちんと理解しなければなりません。『とりあえずお金を集めて、何かすればいいんでしょう?』という姿勢では、必ず炎上します」

 お金でしくじれば、ネットどころか芸能界からも即追放となりかねない。コミケでいえば、叶姉妹や小林幸子をロールモデルとするべきか。いずれにせよ、ネットでのお金の取引が浸透するまでには、まだ時間がかかりそうだ。
(門上奈央)

三上洋(ミカミ・ヨウ)
ITジャーナリスト。専門とするジャンルはネット事件や詐欺対策などのセキュリティ分野、スマートフォン分野の業界動向や有害サイト対策、電子マネーなど。
公式サイト