オンナを描く漫画家・鳥飼茜に聞いた、女社会の“本質”と母親という女について

 漫画家・鳥飼茜が止まらない。10月には最高傑作との呼び声も高い『先生の白い嘘』(講談社)の完結巻となる8巻、新作『ロマンス暴風域』(扶桑社)1巻、『地獄のガールフレンド』(祥伝社)のスピンオフ本『鳥飼茜の地獄でガールズトーク』(祥伝社)と、一挙に3冊をリリース。さらには「クイック・ジャパン」vol.134(太田出版)で大々的に特集されるなど、まさに大車輪の活躍だ。さまざまな角度から女を描き、そして女をエンパワメントしてきた鳥飼茜の、作家としての現在地を女子マンガ研究家・小田真琴が2回にわたって聞く。まずは前編、テーマは「嘘と女」について。

鳥飼茜(とりかい・あかね)
大阪府出身。2004年、「別冊少女フレンド DX ジュリエット」(講談社)でデビュー。2010年に「モーニング・ツー」(講談社)で連載を開始した『おはようおかえり』(講談社)が評判となって一躍人気作家となる。代表作に『先生の白い嘘』(講談社)、『地獄のガールフレンド』(祥伝社)など。女性の心の機微を描き出す力はマンガ界でも随一。現在は「SPA!」(扶桑社)、「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)、「Maybe!」(小学館)でマンガ作品を連載中。

――新作『ロマンス暴風域』は男性週刊誌「SPA!」での連載ということもあって、これまでとはまた違った毛色の作品です。ページの余白が黒く塗り潰されていて驚きでした。

鳥飼茜氏(以下、鳥飼) 初めてコピック(高品質のカラーマーカー。マンガのカラーページを描くのによく用いられる)でマンガを描いたんですけど、グレーの階調が多いんで、見た目が散らからないかなって不安があったんです。背景を締めればなんとかなるんじゃないかと考えて。あとは映画見てるみたいな感じになってくれたらいいな、って思ったんですね。なんか、夢みたいな話なんで。

――本のサイズも珍しく大きめのA5判ですね。

鳥飼 階調が多い絵なんで、大きい方がいいと思います。小さくすると鬱陶しいかもね。でも、私の経験上絶版になるというマイジンクスがありまして……やばいね(笑)。大丈夫ですか(笑)?

『ロマンス暴風域』は男の一人称で描く現代の「男のロマンス」だ。風俗店で出会ったせりかに運命の出会いを感じた高校の臨時教員サトミン。ところが次第にせりかは平気で嘘がつける人間だとわかっていく。なにが嘘で、なにが真実なのか。それでもサトミンの心に吹き荒れるロマンスの暴風はやむことがない。

――「夢みたいな話」とのことですが、『ロマンス暴風域』のせりかがつく嘘は、もはや幻想的ですらあります。

鳥飼 せりかは超嘘つきですけど、私自身からはかけ離れているから、ドラマチックだなあと思って、おもしろく思ったんです。絶対に自分がしないことだから。嘘をつく人のメカニズムが全然わからないんですよね。

――嘘かほんとかみたいなことに、あまり興味がない?

鳥飼 そうかもしれませんね。嘘でもいいんで。せりかは嘘をつくけど、どれも本当じゃなかったとしても、その瞬間、それを信用して、自分が気持ちよかったらそれでいいんじゃないかって。それが現実と違うからといって、じゃあ意味がないのかっていうと、そうとは限らなくて、その意味をいいものとして持ち替えるかどうかであって、それは対面した本人にしかわからないというか。

――マンガもある種の嘘です。

鳥飼 私のマンガはよく説教臭いと言われるんですが(笑)、その説教も嘘ですからね。なんにもないところから適当に説教を始めてるんです。真っ白な紙の上に説教を描いてるわけだから、見て来たようなことを。真実味があればいい、本気でつける嘘しかつかない、的な。かっこよく言うとね。

――鳥飼作品は嘘から立ち上がる物語が多いですよね。『おんなのいえ』の川谷の嘘とか、『先生の白い嘘』というタイトルとか……。

鳥飼 言われてみればそうですね(笑)。ずっと私の作品を読んでる人って、そういう謎の分析をしますよね! でも現実では、たぶん嘘つかれても気づかないくらい、嘘って意識したことないんですよ。前に飲み会の席で「鳥飼さんって浮気されたことないの?」って話になって、「ないですね」って答えたら、「それは騙されているか、世の中に存在するという浮気をしない2%の男とだけ付き合ってきてるかどっちかだな!」って言われたことがあります。

昨年全8巻で完結した『おんなのいえ』は、有香とすみ香、2人姉妹の恋模様を描いた女子マンガの傑作。あこがれの職業を諦め、結婚するつもりだった彼氏にもふられた有香は、バイト先のキャバクラで出会った川谷といい感じになるのだが、実は川谷は既婚者で……というのが1巻のあらすじ。

――信頼のようなもの、特に女性の共同体に対する無条件の信頼が、鳥飼作品のベースにはあるように感じます。『おんなのいえ』はまさにそうですし、現在「ダ・ヴィンチ」で連載中の『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』もそうですね。

鳥飼 親戚も家族も女ばっかりだから、それしか知らないんですよね。結婚生活とか同棲中とかは確かに男がいましたけど、その男って単体だからあまり参考にはなりません。単体の男ってとにかく甘え倒すっていうことしか、私は知らないから(笑)。

――その中で女という性に対する信頼感が生まれていった?

鳥飼 女の人だけの共同体が好きなわけじゃないんです。どちらかと言うと苦手ですね。女友達もあまりいないし、飲みにも行かない。でも信頼はしてるんです。

――例えば女同士が足を引っ張り合うような話を描かないのはなぜですか?

鳥飼 嫌なんです。見たくない。見たくないから描かない。だから私のマンガはそれこそファンタジーなのかもしれない。そういうのを取り沙汰しすぎちゃうと、本当にあるってことになっちゃうような気がするから。

――『先生の白い嘘』の美奈子は比較的、足を引っ張るような女にも見えます。

鳥飼 美奈子はマウンティングしてるんじゃないかって言われましたけど、あれは意図的に描いていて、でも実は……って気持ちもあったから、あのラストなんですよ。ママ友の会みたいなところではマウンティング的なものも見ますし、実際にあると思うんだけれど、私がその場で急病になったりするじゃないですか。そうしたら絶対みんな優しくしてくれる。もうマウントとか横において、実際的に助けてくれるんですよ、女は。だから、そういうところだけ見ていたいんです。

美奈子は主人公・原美鈴の親友。であると同時に、美鈴を強姦した早藤の婚約者でもある。早藤の行いに美奈子は薄々感づきながらも、それには見て見ぬふりをして、幸せな女であるよう周囲へ盛んにアピールする。そんな鬱陶しいキャラクターではあるが、最終巻では大化け。実は作品の大テーマを背負う存在だったことが判明するので、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

――そっちこそが女の本質であると。

鳥飼 マウントする部分は飾りだな、と思う。その人の本来じゃないなって思うし、その人の本来っていうのは、変な言い方すると、母性に似ているのかもしれない。私の考えはとても甘いかもしれないけど、女の人には、どっか期待してるんですよね。困っていたら助け合えると思ってるし、困っていなかったら助けないし、必要があれば介入するし、必要がなければ介入しない、というのが本来的だと思っている。だけどそれをどっかそれ以上にしたりしなかったりするのは飾りかなって思っていて、その飾りがどこでできたのかっていうと、親との関係とか、きょうだいとの関係とかなんだろうなって思う。

――それはこの男社会を一緒に乗り越えて行こうという同胞意識ですか?

鳥飼 そういう感じとはまた別で、個として、女の人というものに、絶対的な信頼がありますね。理屈じゃないんですよね、うまく言えないけど。男社会を通してのマウンティングみたいなものは、逆に私はうまく描けないかもしれない。

――鳥飼先生自身は親子関係の影響を感じることはありますか?

鳥飼 めちゃくちゃありますね。うちはお母さんもめちゃくちゃ働いていたから、あまり家にいなかったんですよね。でも1日2回とか掃除機かけるんですよ。ごはんも全部手作りして。完璧主義……というか、逆ギレでやってましたね。PTAとかには来たこともないし、授業参観にも来たことない。でも家帰ったらきれいに掃除して、晩ごはん作って。きっとお父さんが頼りなかったんでしょうね。お母さんはどこかでお父さんと手を切ったんだな、って感じてました、甘えるのやめたんだなーって。すっごい自立した人なんですよ、お母さん。

――作品にも影響が?

鳥飼 あると思います。うちの母親はドライで、子育ても手塩にかけて精一杯やりましたという感じでもないんですよ。やれることはやりました、みたいな。小学校低学年くらいのときかな。手をつなごうとして手を差し出したら、小指をつままれたんですよ。べたべたするのが嫌いな人でした。愛情がないわけではないんです。だけど褒められたこともないし、すごく愛されてきたという感じもないし、かといって無視された気もないし、ものすごく適切な距離感というか。だから女の人に対する信頼って、お母さんに対する信頼と似ていると思う。私にとっては唯一神みたいな人です。

――子どもだった鳥飼先生を1人の人間として扱っていたのかもしれませんね。

鳥飼 そう思いますね。うちの家族、全員そんな感じなんですよ。みんな思ってることが違うし、血液型も全部違うし、バラバラなんですよ。統一感がない。だから家族=他人みたいなところがちょっとあって。他人だけど嘘つかないし、気も使わないし、否定することも別にないし。

――寂しくはなかったですか?

鳥飼 親に認められていなかったなあとは、ちょっと思いますよ。つい3年前くらいまで「マンガはいいけど、資格かなんか取っておけば?」って言われてましたし(笑)。最近やっと言われなくなったけど、もう娘が自慢で「こんなん描いてるから読んであげて!」みたいな感じはなくて、めちゃくちゃ照れ屋さんだから、こっそり買って読んでるみたいです。実家に行っても私の本は見えないところに置いてあるんですよ。たまに「あんたの漫画ちょっと冷たすぎるんちゃう。だから売れへんのじ ゃない?」とかって言われるんですけど、どの作品のこと言ってるんですかね(笑)。

――今はご自身が子どもを育てる立場でもあります。

鳥飼 まったく母親みたいには育てられていないです。私はすっごい介入しますね。最近やっと手を離すってことを少しずつ勉強しています。でも根本的には他人だなって感じはすごくありますね。性別も違うし。

――男だな! って思いますか?

鳥飼 男の子だなーって思いますね。先に子育てをやっておけば、もっと恋愛がうまくいっていたかもしれない(笑)。男の人を追い詰めちゃいけないとか、子育ても恋愛もいっしょだなって思います。

――どんな男性に育ってほしいですか?

鳥飼 どうなってほしいとかは特にないんですけど、もう手を離していかないとダメだなーって思いますね。マザコンではまったくなくて、あの人はたぶんちょっと女性恐怖症だと思う(笑)。どんな女と付き合うんだろうって思うし、もういっそ女じゃないかもと思うし、それはもしかしたら私のせいかもしれないけど、でもそれはそれでそういう人生もいいんじゃないですかと、どっかで思っていて。私なんかのもとで育っちゃったら、女の人にファンタジーなんて持ちようがないでしょうね。

――好きな子とかいたりするんですかね。

鳥飼 おもしろいですよ。息子のことを好きな女の子がいるらしいんですが、感慨深いですよね。自分が育てているこの子のことを思って、ちょっと胸を痛めてる女の子がいるのかと思うと、なんかとんでもないことをしてしまったような(笑)。とんでもないものをリリースしてしまったなと(笑)。小学生男子って「お前のこと好きって言ってるぜ」って聞いたら「俺は嫌いだぜ!」って、言うじゃないですか。「それ絶対傷つくから、嫌いだと思っても絶対に言うなよ!」って、そういう感じの演出を親が加えています(笑)。まあ勝手に楽しくなってって思いますけど。
****

 鳥飼作品に独特の女同士のバディ感は、物語全体に安定感と心地よさ、そして時にはスリルをもたらしている。『おはようおかえり』も『おんなのいえ』も、姉妹のやりとり、ケンカのシーンは大きな見どころの1つだった。後編では男について、そしてマンガについて聞いた。
(小田真琴)

『奥様は、取り扱い注意』よりひどい!? 夫のために風俗で働き、ホストにハマった妻の悲劇

 綾瀬はるか主演の連続ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)。特殊工作員という過去を持つ専業主婦の綾瀬演じる主人公・伊佐山菜美が、同じセレブ住宅街に暮らす、主婦友の大原優里(広末涼子)や佐藤京子(本田翼)と共に、主婦の間で起きるさまざまなトラブルを解決していくというストーリー。

 11月29日放送の第9話では、菜美(綾瀬)の住む街で、1人の主婦が自ら命を絶つ。横溝(玉山鉄二)に弱みを握られ、主婦売春を続ける日々に、耐えられなくなったのだ。菜美はこの事件に不吉な予感を抱くが、横溝の正体をつかむことはできず、真相は表沙汰にならないまま、闇に葬られてしまう。一方、菜美、優里、京子たち夫婦の間でも、さまざまな問題が発生。それぞれ夫婦の関係をやり直そうとするのだが、事態は彼女たちが思いもしない方向へと発展していく……という展開だ。

 主婦売春とまではいかないが、夫のために風俗で働き、泥沼の末に離婚したと話す朋美さん(仮名・29歳)。朋美さんが風俗で働くようになったきっかけとは、何だったのか?

「結婚前、パティシエをしていた私は勤務先のホテルで、シェフの見習いだった夫と出会いました。『イタリアに料理の修業に行きたい』というのが夫の口癖で、その夢をかなえてあげたいと思ったのがきっかけです」

 もともと、貢ぎ体質だったという朋美さん。結婚後、夫の留学費を工面するために、風俗店で働き始めたという。

「夫には『派遣会社とアルバイトを掛け持ちしている』と嘘をついて、風俗で働いていることは内緒にしていました。留学費用は約100万円、初めはトントン拍子でたまっていきました。でも、だんだん仕事のストレスが出てきたんです。仕事の帰りに街で声をかけられて、なんとなく飲みに行った店、それがホストクラブでした」

 夫のために頑張っても、誰からも褒められなかった朋美さんは、優しくしてくれたホストにすっかり心を許した。案の定、貢ぎ体質の朋美さんは、あっさりハマってしまったという。

「その日以来、夫の貯金のことなどすっかり忘れ、風俗で稼いだお金をホストクラブで使う日が続きました。毎日、店に通っていると、担当(指名ホスト)も色恋営業をかけてくるんです。ある日、酔っぱらった担当から『家に行きたい』と言われました。さすがに家はマズイな……と思いましたが、時計を見ると、まだ夫は帰っていない時間。この時間ならイイかな……と思い、家に連れて帰ったんです」

 それ以来、夫の不在中に、ホストを家に上げるようになったという。

「ある日、いつものように家でホストとイチャイチャしていると、玄関のドアが開く音がしたんです。そこには、その時間には絶対に帰ってこないはずの夫の姿が……。その頃、私の雰囲気が変わったことや金遣いが荒くなったことを不審に思っていたようです。夫は『離婚だ!』と激怒しましたが、平謝りして、二度とホストクラブには行かない約束と、慰謝料を払うことで許してもらいました」

 結局、浮気の慰謝料として、朋美さんは夫の留学費用を支払った。朋美さんが風俗勤務していたことは最後までバレなかったという。夫は1年の留学ののち帰国し、夫婦は再出発を切るかと思われたが……。

「留学中の夫の不倫が発覚したんです。相手は、イタリアにパティシエ留学していた女子大生。夫いわく、『どうしても私の浮気が許せなかった』そうです。不倫関係は夫の帰国後も続いていて、『彼女が帰国してくる前に離婚してくれ』と言われました。こっちは夫のために風俗で働いたのに! でも、それを言うと、私の方にも慰謝料の支払い義務が生じるらしく、どうしても言えませんでしたね……」

 その後、離婚が成立。現在は、夫からもらった慰謝料で、夢だったカフェを1人でオープンしたという。夫のために風俗で働き、浮気した妻と、浮気への当てつけで不倫した夫。どちらが悪いのか、なんとも言えない話である。
(カワノアユミ)

自称「半端な勘違い野郎」が雌伏2年──“元アウトローのカリスマ”瓜田純士、新作小説『熱帯夜』への思いを激白!

 2年間の沈黙を破り、入魂の新作をリリース!――“元アウトローのカリスマ”こと作家の瓜田純士(37)がこのほど、2015年以来となる新刊『熱帯夜』(Kindle版)を発表した。新宿署の刑事が、国際指名手配犯の潜伏先と目されるマニラへ飛び、魑魅魍魎をかき分けながら驚愕の真相を知るクライム・フィクションだ。未来に怯え、酒に溺れ、「俺は半端な勘違い野郎」と自覚した瓜田が、再起をかけて臨んだ一作。創作の苦労や、作品の見どころを著者に聞いた。

 

――『熱帯夜』を拝読しましたが、「“本気の瓜田”はこんなにもすごいのか!」と舌を巻きました。これは、新宿で生まれ育った元極道の瓜田さんだからこそ書けた生々しいフィクションと言えるでしょう。歌舞伎町、フィリピン、酒、タバコ、刑事、ヤクザ、犯罪組織……そういった言葉が好きな人であれば、必ずや引き込まれ、最後までワクワクドキドキが止まらない内容だと思います。

瓜田 ありがとうございます。これ、絶対の自信作なんですよ。警察が主人公ではあるけども、警察小説じゃない。「新宿発のエンターテインメント」だと思っています。

――事件や登場人物に、モチーフはありますよね?

瓜田 あったにせよ、明らかに変えています。一個一個、好きなようにアレンジして、別人格として描いている。北野武監督の『アウトレイジ』に対して、「花菱会のモデルは山口組だろ!」と突っ込むのは野暮ってもんでしょ。それと同じです。あくまでもフィクションのエンタメとして楽しんでほしいですね。

――刑事モノにした理由は?

瓜田 ストーリーの設定上、対立構図が必要だっただけで、特に刑事にこだわりがあったわけじゃない。それよりもむしろ、犯罪者にとっての「旬」をなるべく入れることにこだわりました。そのほうが読んでいる人がわかりやすいでしょう。でもそれは物語に引き込むための手法に過ぎない。結局どこが肝なのかというと、東南アジアと日本を股にかけた、追う側と逃げる側の執念のぶつかり合い。そして、ぶつかり合った末のドラマチックなケリの付け方ですね。

――謎解き要素や、掛け合いの妙も素晴らしかった。スタイリッシュなだけじゃなく、実はサービス精神旺盛で、ユーモラスな部分もある瓜田さんの持ち味が、いいバランスで出ていたと思います。

瓜田 ユーモアってことでいうと、俺ね、西村京太郎の十津川警部シリーズが好きなんですよ。十津川警部と亀さんみたいな、どこか息抜きになる会話っていうのかな。切れ者の刑事と、おっちょこちょいな奴のコンビものを書いてみたかったんです。同職同士だとそのままになっちゃうので、本作では刑事とフリーライターを組ませることにしました。

――一昨年の秋に『國殺』が刊行されてからしばらく経った頃、「今は書きたいことが何もない。書きたいことが現れるまで待つしかない」と語っていた瓜田さん。しかし、昨年の秋頃から執筆のために自宅へ篭り始めましたよね。それが今回の『熱帯夜』だったんですか?

瓜田 そうです。江戸川乱歩賞にもともと興味あって、前回(2017年1月末日締め切り)の賞に応募してみよう、ここで一旗上げようと思い立って、去年の10月ぐらいから急ピッチで書き始めました。制作期間は、3カ月程度。物語の構想は以前からうっすらあったのですが、クライマックスを含め、書きながらどんどん軌道修正していった。慣れないパソコンを使って、締め切りから逆算した「1日何枚」というペースを死守しながら、早寝早起きで執筆しました。ちなみにこの作品には酒とタバコがよく出てくるんですが、自分は禁酒禁煙で制作に取り組んだ。俺は根が真面目なので、そういうストイックな生活にも順応できましたが、可哀想なのは急にそんな生活に巻き込まれることになった嫁ですね。去年のクリスマスは彼女のことを、近所のイトーヨーカドーにしか連れて行けなかったですから。

――執筆に取り掛かった直後、「ワープロソフトってなんだ?」とか「バックアップの取り方がわからないから、原稿を少し書き終える度にお袋のパソコンにメールで送っている」とかおっしゃっていたので、大丈夫かなぁ……と心配していたのですが、パソコンには慣れましたか?

瓜田 いや、最後までおっかなびっくりでした。実は「コピーペースト」という機能も最近知った(笑)。もっと早くに知っていれば、あんなに苦労することはなかったのに……。

――結局、江戸川乱歩賞の応募には間に合ったんですか?

瓜田 間に合いましたが、今年の受賞作は1作もありませんでした。自信作だったけど、何かが足りないんだろうと思い、そのあと何度も読み直してテコ入れをしてから、今回の出版にこぎつけました。

――Kindleからの発売となりましたが、電子書籍を選択した理由は?

瓜田 俺の作家活動を振り返ると、自叙伝的な『遺書』(太田出版)が売れて注目を集めて、世相を斬る『國殺』(竹書房)も出すことができた。でも本心を言えば、「30代のうちに作家としての名刺がわりになるようなちゃんとした小説を書きたい」という思いがかねてからあったんです。江戸川乱歩賞への応募は、そのいいきっかけになりましたね。受賞は逃したけど、せっかくなのでこれを友人の作家らの意見も聞きつつブラッシュアップしてから世に出したいと思った。でも、出版社との付き合いもないし、どこかに持って行ってどうこうするエネルギーもなくて。そんな折、Kindleを使えば、自分で書いたものを自分で売り出すことができると知ったんです。

――自力で書籍を出すことに不安はなかったですか?

瓜田 友人の作家に『熱帯夜』を見せたところ、出版社を紹介してくれるという話や、漫画の原作としてどうかとか、あるいは違う公募に出してみたらどうか、などの話が広がりかけたこともあった。だけど、俺の中で決めていたんです。よくわからない奴から「ここをこう直せ」と言われないで済む、登場人物のキャラクターを殺さないで済む方法で出したい、と。あのストーリー、あのキャラのままでいきたいという絶対的な自信がありましたから。

――編集者不在で書籍を出したかったんですか?

瓜田 格好よく聞こえちゃうかもしれないけど、そういうことです。だって、自分が間違いなく面白いと信じている作品を、頭をペコペコ下げながら売り込んだり、トンチンカンな奴に「ここをこう直せ」と言われて、泣く泣く言うことを聞いたり、さんざん文句を言われた末に「やっぱ出せない」と言われたりする悔しさを味わいながら何年も過ごすのなんて、俺には耐えられませんよ(笑)。

――瓜田さんは人一倍せっかちで、人一倍負けず嫌いですからね。

瓜田 それに、コンプライアンスにうるさい昨今、黙って待っていても、自分のような人間に出版の話なんか舞い込んでこない。一応、自分の身分をわかっているつもりなんで。さて、どうしたものかと悩みましたが、「自分が絶対に面白いと思うのなら、出版社を通す必要はなく、全部自分の責任でやればいいじゃないか。だったらKindleだな」という簡単なことに気付いて、気持ちがラクになりました。

――前作を出した直後の瓜田さんは、気性が荒くて危なっかしい印象でした。でも2年経った今は、お酒をやめたせいもあるでしょうが、だいぶ落ち着きましたね。内面の変化や成長が、『熱帯夜』の文体にも表れていたように感じます。

瓜田 あの頃は人間として落ちていた時期で、酒に溺れていましたね。自分が将来どうしていきたいのか、地に足を着けて考えることにビビっていたんですよ。理想ばかりが高くて、現実の自分を直視したくなくて、ずっと酒でごまかしていたんです。起きるトラブルはすべて自分のせいなのに、それを直視できずにヤケクソになっていた。たとえば酒の勢いでケンカになって死んだら、それはそれで構わないと思っていました。それぐらい当時は、生きることに必死じゃなかったんですよ。でも今はちゃんと生きていきたいと思う。ちゃんと生きていくためには、何事にも中途半端だった過去の自分を捨て去るしかない。そう気付かされたんです。

――何によって気付かされたんですか?

瓜田 嫁がじっくり時間をかけて教えてくれました。それまでの自分は、人生のすべてが半端だったし、そしてラッキーだった。ラッキーだったせいで、半端な気持ちのまま半端な少年が半端な青年になり、不良時代の威光で持ち上げられたりして、ある程度のことが通用しちゃっていたんです。だから、そのまま肩で風切って生きていけるんじゃないか、って勘違いしちゃった。人のことをしょっちゅう「この勘違い野郎!」と罵っていたけど、自分が一番の勘違い野郎だったという(笑)。

――(笑)。

瓜田 そうじゃないんだ。誰も彼もが石橋を叩いて一生懸命生きている。それってすごく格好いいな、自分はめちゃくちゃ格好悪いな、ってことに気付いてからは、自分を変えるために生活環境も生き方も改めました。酒とタバコをやめたのも、そういう理由からです。今は誰ともケンカなんかしたくないし、もし何かあっても嫁を守れるように数カ月前から格闘技の道場にも通い始めました。地下格闘技に出ていた時代に通っとけよ、って話ですが(笑)。

――再生の裏には、内助の功があったんですね。

瓜田 ドン底の状態で振り回したのに、振り回されながらついてきてくれた。その恩を返すためにも、半端なことはもうできないです。今回の執筆も、これをやり遂げなかったら、今後の人生、何もかもが中途半端に終わるという覚悟で臨みました。受かる受からない、売れる売れないはさておいて、絶対に最後までやり切ってやるという思いで書いた。正直、途中で何度も心が折れかかりましたよ。だって、掲載が約束されていない長文を書くのって、面倒っちゃ面倒ですもん(笑)。でもこの山を越えないと、今後も面倒から逃げるだろうし、そんな自分がどうしても許せなかったんですよ。

――ひと山越えた感想は?

瓜田 こういうことを死ぬまで続けたいですね。作家活動に限らず、練習中の格闘技や、今やっている石膏ボード運びのバイトも一緒です。誰かに何かを教わったら「ありがとうございます」と感謝しながら、ちゃんと覚えてやり遂げる。今までいろんなことを疎かにした分、何事も近道せずにコツコツと続けていきたい。今回の『熱帯夜』は生まれ変わるための挑戦の一つでしたから、すごくうれしいですよ。発売までたどり着けたのは。

――おめでとうございます。

瓜田 今回の作業を通じて、編集者を介さないメリットもデメリットもよくわかったので、今後の糧にしていきたいです。あと今回、改めて気付きましたが、やっぱ俺、書くのが好きみたいですね。何時間もかけて文章を考えたり直したりする作業が全然苦じゃない。寝るのがもったいないとすら感じちゃう。早く次の作品を書きたいですもん。

――すでに次回作の構想が?

瓜田 シリーズ化も視野に入れつつ、いろいろと構想を練っています。まぁ、楽しみにしていてください。
(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)

※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。
http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

※瓜田純士公式ブログ
http://junshiurita.com

※瓜田純士&麗子Instagram
https://www.instagram.com/junshi.reiko/

自称「半端な勘違い野郎」が雌伏2年──“元アウトローのカリスマ”瓜田純士、新作小説『熱帯夜』への思いを激白!

 2年間の沈黙を破り、入魂の新作をリリース!――“元アウトローのカリスマ”こと作家の瓜田純士(37)がこのほど、2015年以来となる新刊『熱帯夜』(Kindle版)を発表した。新宿署の刑事が、国際指名手配犯の潜伏先と目されるマニラへ飛び、魑魅魍魎をかき分けながら驚愕の真相を知るクライム・フィクションだ。未来に怯え、酒に溺れ、「俺は半端な勘違い野郎」と自覚した瓜田が、再起をかけて臨んだ一作。創作の苦労や、作品の見どころを著者に聞いた。

 

――『熱帯夜』を拝読しましたが、「“本気の瓜田”はこんなにもすごいのか!」と舌を巻きました。これは、新宿で生まれ育った元極道の瓜田さんだからこそ書けた生々しいフィクションと言えるでしょう。歌舞伎町、フィリピン、酒、タバコ、刑事、ヤクザ、犯罪組織……そういった言葉が好きな人であれば、必ずや引き込まれ、最後までワクワクドキドキが止まらない内容だと思います。

瓜田 ありがとうございます。これ、絶対の自信作なんですよ。警察が主人公ではあるけども、警察小説じゃない。「新宿発のエンターテインメント」だと思っています。

――事件や登場人物に、モチーフはありますよね?

瓜田 あったにせよ、明らかに変えています。一個一個、好きなようにアレンジして、別人格として描いている。北野武監督の『アウトレイジ』に対して、「花菱会のモデルは山口組だろ!」と突っ込むのは野暮ってもんでしょ。それと同じです。あくまでもフィクションのエンタメとして楽しんでほしいですね。

――刑事モノにした理由は?

瓜田 ストーリーの設定上、対立構図が必要だっただけで、特に刑事にこだわりがあったわけじゃない。それよりもむしろ、犯罪者にとっての「旬」をなるべく入れることにこだわりました。そのほうが読んでいる人がわかりやすいでしょう。でもそれは物語に引き込むための手法に過ぎない。結局どこが肝なのかというと、東南アジアと日本を股にかけた、追う側と逃げる側の執念のぶつかり合い。そして、ぶつかり合った末のドラマチックなケリの付け方ですね。

――謎解き要素や、掛け合いの妙も素晴らしかった。スタイリッシュなだけじゃなく、実はサービス精神旺盛で、ユーモラスな部分もある瓜田さんの持ち味が、いいバランスで出ていたと思います。

瓜田 ユーモアってことでいうと、俺ね、西村京太郎の十津川警部シリーズが好きなんですよ。十津川警部と亀さんみたいな、どこか息抜きになる会話っていうのかな。切れ者の刑事と、おっちょこちょいな奴のコンビものを書いてみたかったんです。同職同士だとそのままになっちゃうので、本作では刑事とフリーライターを組ませることにしました。

――一昨年の秋に『國殺』が刊行されてからしばらく経った頃、「今は書きたいことが何もない。書きたいことが現れるまで待つしかない」と語っていた瓜田さん。しかし、昨年の秋頃から執筆のために自宅へ篭り始めましたよね。それが今回の『熱帯夜』だったんですか?

瓜田 そうです。江戸川乱歩賞にもともと興味あって、前回(2017年1月末日締め切り)の賞に応募してみよう、ここで一旗上げようと思い立って、去年の10月ぐらいから急ピッチで書き始めました。制作期間は、3カ月程度。物語の構想は以前からうっすらあったのですが、クライマックスを含め、書きながらどんどん軌道修正していった。慣れないパソコンを使って、締め切りから逆算した「1日何枚」というペースを死守しながら、早寝早起きで執筆しました。ちなみにこの作品には酒とタバコがよく出てくるんですが、自分は禁酒禁煙で制作に取り組んだ。俺は根が真面目なので、そういうストイックな生活にも順応できましたが、可哀想なのは急にそんな生活に巻き込まれることになった嫁ですね。去年のクリスマスは彼女のことを、近所のイトーヨーカドーにしか連れて行けなかったですから。

――執筆に取り掛かった直後、「ワープロソフトってなんだ?」とか「バックアップの取り方がわからないから、原稿を少し書き終える度にお袋のパソコンにメールで送っている」とかおっしゃっていたので、大丈夫かなぁ……と心配していたのですが、パソコンには慣れましたか?

瓜田 いや、最後までおっかなびっくりでした。実は「コピーペースト」という機能も最近知った(笑)。もっと早くに知っていれば、あんなに苦労することはなかったのに……。

――結局、江戸川乱歩賞の応募には間に合ったんですか?

瓜田 間に合いましたが、今年の受賞作は1作もありませんでした。自信作だったけど、何かが足りないんだろうと思い、そのあと何度も読み直してテコ入れをしてから、今回の出版にこぎつけました。

――Kindleからの発売となりましたが、電子書籍を選択した理由は?

瓜田 俺の作家活動を振り返ると、自叙伝的な『遺書』(太田出版)が売れて注目を集めて、世相を斬る『國殺』(竹書房)も出すことができた。でも本心を言えば、「30代のうちに作家としての名刺がわりになるようなちゃんとした小説を書きたい」という思いがかねてからあったんです。江戸川乱歩賞への応募は、そのいいきっかけになりましたね。受賞は逃したけど、せっかくなのでこれを友人の作家らの意見も聞きつつブラッシュアップしてから世に出したいと思った。でも、出版社との付き合いもないし、どこかに持って行ってどうこうするエネルギーもなくて。そんな折、Kindleを使えば、自分で書いたものを自分で売り出すことができると知ったんです。

――自力で書籍を出すことに不安はなかったですか?

瓜田 友人の作家に『熱帯夜』を見せたところ、出版社を紹介してくれるという話や、漫画の原作としてどうかとか、あるいは違う公募に出してみたらどうか、などの話が広がりかけたこともあった。だけど、俺の中で決めていたんです。よくわからない奴から「ここをこう直せ」と言われないで済む、登場人物のキャラクターを殺さないで済む方法で出したい、と。あのストーリー、あのキャラのままでいきたいという絶対的な自信がありましたから。

――編集者不在で書籍を出したかったんですか?

瓜田 格好よく聞こえちゃうかもしれないけど、そういうことです。だって、自分が間違いなく面白いと信じている作品を、頭をペコペコ下げながら売り込んだり、トンチンカンな奴に「ここをこう直せ」と言われて、泣く泣く言うことを聞いたり、さんざん文句を言われた末に「やっぱ出せない」と言われたりする悔しさを味わいながら何年も過ごすのなんて、俺には耐えられませんよ(笑)。

――瓜田さんは人一倍せっかちで、人一倍負けず嫌いですからね。

瓜田 それに、コンプライアンスにうるさい昨今、黙って待っていても、自分のような人間に出版の話なんか舞い込んでこない。一応、自分の身分をわかっているつもりなんで。さて、どうしたものかと悩みましたが、「自分が絶対に面白いと思うのなら、出版社を通す必要はなく、全部自分の責任でやればいいじゃないか。だったらKindleだな」という簡単なことに気付いて、気持ちがラクになりました。

――前作を出した直後の瓜田さんは、気性が荒くて危なっかしい印象でした。でも2年経った今は、お酒をやめたせいもあるでしょうが、だいぶ落ち着きましたね。内面の変化や成長が、『熱帯夜』の文体にも表れていたように感じます。

瓜田 あの頃は人間として落ちていた時期で、酒に溺れていましたね。自分が将来どうしていきたいのか、地に足を着けて考えることにビビっていたんですよ。理想ばかりが高くて、現実の自分を直視したくなくて、ずっと酒でごまかしていたんです。起きるトラブルはすべて自分のせいなのに、それを直視できずにヤケクソになっていた。たとえば酒の勢いでケンカになって死んだら、それはそれで構わないと思っていました。それぐらい当時は、生きることに必死じゃなかったんですよ。でも今はちゃんと生きていきたいと思う。ちゃんと生きていくためには、何事にも中途半端だった過去の自分を捨て去るしかない。そう気付かされたんです。

――何によって気付かされたんですか?

瓜田 嫁がじっくり時間をかけて教えてくれました。それまでの自分は、人生のすべてが半端だったし、そしてラッキーだった。ラッキーだったせいで、半端な気持ちのまま半端な少年が半端な青年になり、不良時代の威光で持ち上げられたりして、ある程度のことが通用しちゃっていたんです。だから、そのまま肩で風切って生きていけるんじゃないか、って勘違いしちゃった。人のことをしょっちゅう「この勘違い野郎!」と罵っていたけど、自分が一番の勘違い野郎だったという(笑)。

――(笑)。

瓜田 そうじゃないんだ。誰も彼もが石橋を叩いて一生懸命生きている。それってすごく格好いいな、自分はめちゃくちゃ格好悪いな、ってことに気付いてからは、自分を変えるために生活環境も生き方も改めました。酒とタバコをやめたのも、そういう理由からです。今は誰ともケンカなんかしたくないし、もし何かあっても嫁を守れるように数カ月前から格闘技の道場にも通い始めました。地下格闘技に出ていた時代に通っとけよ、って話ですが(笑)。

――再生の裏には、内助の功があったんですね。

瓜田 ドン底の状態で振り回したのに、振り回されながらついてきてくれた。その恩を返すためにも、半端なことはもうできないです。今回の執筆も、これをやり遂げなかったら、今後の人生、何もかもが中途半端に終わるという覚悟で臨みました。受かる受からない、売れる売れないはさておいて、絶対に最後までやり切ってやるという思いで書いた。正直、途中で何度も心が折れかかりましたよ。だって、掲載が約束されていない長文を書くのって、面倒っちゃ面倒ですもん(笑)。でもこの山を越えないと、今後も面倒から逃げるだろうし、そんな自分がどうしても許せなかったんですよ。

――ひと山越えた感想は?

瓜田 こういうことを死ぬまで続けたいですね。作家活動に限らず、練習中の格闘技や、今やっている石膏ボード運びのバイトも一緒です。誰かに何かを教わったら「ありがとうございます」と感謝しながら、ちゃんと覚えてやり遂げる。今までいろんなことを疎かにした分、何事も近道せずにコツコツと続けていきたい。今回の『熱帯夜』は生まれ変わるための挑戦の一つでしたから、すごくうれしいですよ。発売までたどり着けたのは。

――おめでとうございます。

瓜田 今回の作業を通じて、編集者を介さないメリットもデメリットもよくわかったので、今後の糧にしていきたいです。あと今回、改めて気付きましたが、やっぱ俺、書くのが好きみたいですね。何時間もかけて文章を考えたり直したりする作業が全然苦じゃない。寝るのがもったいないとすら感じちゃう。早く次の作品を書きたいですもん。

――すでに次回作の構想が?

瓜田 シリーズ化も視野に入れつつ、いろいろと構想を練っています。まぁ、楽しみにしていてください。
(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)

※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。
http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

※瓜田純士公式ブログ
http://junshiurita.com

※瓜田純士&麗子Instagram
https://www.instagram.com/junshi.reiko/

「大人のいじめ」は子どもよりも深刻!?  脳科学者・中野信子氏に聞く、上手な回避法

 いじめといえば、学校など子どもの世界で起こる問題と思われがちだ。しかし、当然のように大人の社会でも存在している。むしろ、簡単に職場や環境を変えることが難しい大人社会のほうが、いじめの被害は深刻になりやすい。

 教育委員会などの学校関係者や教育評論家が、子どものいじめをゼロにするために試行錯誤するなかで、大人のいじめは特に対策もされずに放置されており、深刻な問題となっているケースが後を絶たない。いじめはなぜ起こるのか? 回避するにはどうしたらよいのか? 『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)の著者であり、脳科学者の中野信子氏に話を聞いた。

■いじめには、「オキシトシン」が関わっている

 そもそも、人をいじめることは、人類が種を残すために脳に組み込まれている機能であると、中野氏は語る。

「“いじめ”は集団になれば、ほぼ必ず生じるといっても過言ではありません。人間は、ほかの動物とは異なり、他人のために役に立とうとする『向社会性』という性質があります。しかし、それがあまりに高まりすぎてしまうと、共同体の中で社会に対する自己犠牲を過剰に求めてしまい、周囲に比べて何もしていないように見える人を排除する行動をしてしまうのです」

 集団を構成する上で、なくてはならない向社会性といじめの関係には、“愛情ホルモン”とも呼ばれる、脳から分泌されるホルモン「オキシトシン」が大きく関わっているという。

「『オキシトシン』は、(集団を構成する人との)愛情や親近感を深める働きがあり、会話やスキンシップを取るだけでなく、同じ空間にいるだけでも分泌されることがわかっています。しかし、仲間意識が過剰に高まった結果、妬みや排外感情を生み出すという負の側面があることも明らかになっています」

 同調意識が高まった結果、そこから外れてしまう人を排除するというのが、いじめの正体だ。例えば、ファッションなどの見た目や、太っている、痩せているなどの身体的特徴がその集団から逸脱していたり、空気が読めずに場の雰囲気を悪くする発言を繰り返す人などが、いじめのターゲットになりやすいという。なかでも、大人社会でもっともいじめられやすいタイプは、一見周囲の人と似通った類似性を持ちながらも「1人だけ得をしているように見える人」だという。

「年齢や性別、職種、学歴などの類似性が高く、能力に差がないと感じられる集団の中で、なぜか上司に気に入られていたり、金銭的に恵まれているなど、1人だけ得をしているように見える人がいれば、妬みを買って、いじめに発展してしまう可能性が高いといえます」

 例えば、子どもがまだ小さいからという理由で、ほかの人よりも仕事を早く切り上げて先に帰るような人は、周囲よりも楽をして報酬や待遇を得ていると思われて妬みを買い、いじめに遭いやすいという。逆に、子育てしながら仕事をしている人が多い集団ならば、家庭のことを考えずに悠々と働いている独身の人を「楽でいいわよね」といじめるケースもある。

「いじめの対象は、その集団内の力関係や雰囲気によって流動的に変化する、複雑なもの。なので、本人が気づかないうちに、いつの間にか集団から逸脱して、いじめに遭うことも多いのです」

 さらに、実際に恩恵を受けていなくても「この人は将来ズルするかもしれない」と決めつけ、逸脱者を検知する脳の思考プロセスがあるという。

「とても嫌な呼び方ですが、『裏切り者検出モジュール』といって、集団内における将来的リスクを感知する能力が人間にはあります。特に日本人は、海外の人よりもその能力が高く、グループからはみ出しそうな人に対して、敏感に反応する国民性を備えているともいえるのです」

 同調圧力が強い日本社会では、ちょっとでも浮いた存在には、敏感に反応し、排除行動を仕掛けてしまう。また、その妬みの対象に不幸なことがあると、脳内で快感をつかさどる“線条体”と呼ばれる部分が活発化し、喜びを感じることもわかっているという。脳科学的にも「他人の不幸は蜜の味」なのだ。

 複雑な社会性を伴うため、解決が難しい大人のいじめに対して、どのような対策が望ましいのだろうか。まず、なるべくいじめのターゲットにならないように、日頃から周囲とのコミュニケーションに気を使うことを中野氏は勧める。

「仕事場でのいじめを避けるには、親密な関係になりすぎないことが重要です。例えば、『◯◯さんって本当ムカつくよね~』と同調を求められたときに、『うんうん』と返すのではなく、『そうかな~』とか『よくわかんない』など、曖昧に濁す感じに答えておくのが無難でしょう。難しいかもしれませんが、適度に嘘をついて、その集団内で目立たないようにすることがいじめを回避する秘訣です」

 かなり消極的な対処法だが、トラブルを避けるには、このぐらいしか方法がないのかもしれない。しかし、どれだけ気を使っていても、何の前触れもなくいじめを受けてしまうこともある。そのような場合は、目立ち切るのも一つの方法だという。

「特に女性の場合、誰がいじめの原因をつくりだした中心人物なのかわからないケースが多く、一度標的にされてしまった場合は、なかなか解決方法が見いだせません。となれば、簡単なことではないのは百も承知ですが、仕事を一生懸命頑張って社内で評判になるとか、友達内でも、何かしら別のことをして、その集団以外から評価を得るなど、目立ち切ってしまうというのも手です」

 「同じ能力なのに得しているように見える人」はいじめの対象になりがちだが、いくら努力しても追いつけないほど能力に差を感じる人に対しては、嫉妬の感情は湧き起こりにくいという。大人いじめにあったらその集団内で悩み続けるのではなく、視点を変えて能力を発揮する場を探すというのが得策のようだ。
(福田晃広/清談社)

「大人のいじめ」は子どもよりも深刻!?  脳科学者・中野信子氏に聞く、上手な回避法

 いじめといえば、学校など子どもの世界で起こる問題と思われがちだ。しかし、当然のように大人の社会でも存在している。むしろ、簡単に職場や環境を変えることが難しい大人社会のほうが、いじめの被害は深刻になりやすい。

 教育委員会などの学校関係者や教育評論家が、子どものいじめをゼロにするために試行錯誤するなかで、大人のいじめは特に対策もされずに放置されており、深刻な問題となっているケースが後を絶たない。いじめはなぜ起こるのか? 回避するにはどうしたらよいのか? 『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)の著者であり、脳科学者の中野信子氏に話を聞いた。

■いじめには、「オキシトシン」が関わっている

 そもそも、人をいじめることは、人類が種を残すために脳に組み込まれている機能であると、中野氏は語る。

「“いじめ”は集団になれば、ほぼ必ず生じるといっても過言ではありません。人間は、ほかの動物とは異なり、他人のために役に立とうとする『向社会性』という性質があります。しかし、それがあまりに高まりすぎてしまうと、共同体の中で社会に対する自己犠牲を過剰に求めてしまい、周囲に比べて何もしていないように見える人を排除する行動をしてしまうのです」

 集団を構成する上で、なくてはならない向社会性といじめの関係には、“愛情ホルモン”とも呼ばれる、脳から分泌されるホルモン「オキシトシン」が大きく関わっているという。

「『オキシトシン』は、(集団を構成する人との)愛情や親近感を深める働きがあり、会話やスキンシップを取るだけでなく、同じ空間にいるだけでも分泌されることがわかっています。しかし、仲間意識が過剰に高まった結果、妬みや排外感情を生み出すという負の側面があることも明らかになっています」

 同調意識が高まった結果、そこから外れてしまう人を排除するというのが、いじめの正体だ。例えば、ファッションなどの見た目や、太っている、痩せているなどの身体的特徴がその集団から逸脱していたり、空気が読めずに場の雰囲気を悪くする発言を繰り返す人などが、いじめのターゲットになりやすいという。なかでも、大人社会でもっともいじめられやすいタイプは、一見周囲の人と似通った類似性を持ちながらも「1人だけ得をしているように見える人」だという。

「年齢や性別、職種、学歴などの類似性が高く、能力に差がないと感じられる集団の中で、なぜか上司に気に入られていたり、金銭的に恵まれているなど、1人だけ得をしているように見える人がいれば、妬みを買って、いじめに発展してしまう可能性が高いといえます」

 例えば、子どもがまだ小さいからという理由で、ほかの人よりも仕事を早く切り上げて先に帰るような人は、周囲よりも楽をして報酬や待遇を得ていると思われて妬みを買い、いじめに遭いやすいという。逆に、子育てしながら仕事をしている人が多い集団ならば、家庭のことを考えずに悠々と働いている独身の人を「楽でいいわよね」といじめるケースもある。

「いじめの対象は、その集団内の力関係や雰囲気によって流動的に変化する、複雑なもの。なので、本人が気づかないうちに、いつの間にか集団から逸脱して、いじめに遭うことも多いのです」

 さらに、実際に恩恵を受けていなくても「この人は将来ズルするかもしれない」と決めつけ、逸脱者を検知する脳の思考プロセスがあるという。

「とても嫌な呼び方ですが、『裏切り者検出モジュール』といって、集団内における将来的リスクを感知する能力が人間にはあります。特に日本人は、海外の人よりもその能力が高く、グループからはみ出しそうな人に対して、敏感に反応する国民性を備えているともいえるのです」

 同調圧力が強い日本社会では、ちょっとでも浮いた存在には、敏感に反応し、排除行動を仕掛けてしまう。また、その妬みの対象に不幸なことがあると、脳内で快感をつかさどる“線条体”と呼ばれる部分が活発化し、喜びを感じることもわかっているという。脳科学的にも「他人の不幸は蜜の味」なのだ。

 複雑な社会性を伴うため、解決が難しい大人のいじめに対して、どのような対策が望ましいのだろうか。まず、なるべくいじめのターゲットにならないように、日頃から周囲とのコミュニケーションに気を使うことを中野氏は勧める。

「仕事場でのいじめを避けるには、親密な関係になりすぎないことが重要です。例えば、『◯◯さんって本当ムカつくよね~』と同調を求められたときに、『うんうん』と返すのではなく、『そうかな~』とか『よくわかんない』など、曖昧に濁す感じに答えておくのが無難でしょう。難しいかもしれませんが、適度に嘘をついて、その集団内で目立たないようにすることがいじめを回避する秘訣です」

 かなり消極的な対処法だが、トラブルを避けるには、このぐらいしか方法がないのかもしれない。しかし、どれだけ気を使っていても、何の前触れもなくいじめを受けてしまうこともある。そのような場合は、目立ち切るのも一つの方法だという。

「特に女性の場合、誰がいじめの原因をつくりだした中心人物なのかわからないケースが多く、一度標的にされてしまった場合は、なかなか解決方法が見いだせません。となれば、簡単なことではないのは百も承知ですが、仕事を一生懸命頑張って社内で評判になるとか、友達内でも、何かしら別のことをして、その集団以外から評価を得るなど、目立ち切ってしまうというのも手です」

 「同じ能力なのに得しているように見える人」はいじめの対象になりがちだが、いくら努力しても追いつけないほど能力に差を感じる人に対しては、嫉妬の感情は湧き起こりにくいという。大人いじめにあったらその集団内で悩み続けるのではなく、視点を変えて能力を発揮する場を探すというのが得策のようだ。
(福田晃広/清談社)

脱げる女優・佐々木心音×AV女優・紗倉まな「女の子たちが、絶対通る道」を語る──

 AV女優・紗倉まなの小説家としての処女作『最低。』(KADOKAWA)が映画化され、今月25日に公開される。メガホンを採ったのは、ピンク映画出身で、最近では東宝で『64-ロクヨン- 前編/後編』、松竹で『8年越しの花嫁 奇跡の実話』を手がけるなどメジャー進出にも積極的な瀬々敬久。同作は先月末から開かれた「東京国際映画祭(TIFF)」のコンペティション部門に選出されるなど、各界から高い評価を受けている。

 今週末の公開に先立ち、原作者の紗倉まなと、紗倉が「自らを投影した」と語る主人公のひとり・彩乃を演じた女優・佐々木心音に話を聞いた。

 実際に「AV女優」という仕事に携わる作家と、当代きっての“脱げる女優”として「AV女優」を演じきった佐々木。2人の対談から、「AV女優」という職業の実像が浮かび上がってきたような、まだまだ奥が深いような……。

■佐々木「AV女優さんが書いたとは思えない」

──佐々木さんは、この企画に入る前に紗倉さんのことを、どれくらいご存じだったのでしょうか?

佐々木心音(以下、佐々木) 『最低。』の本は読んでいたので、どちらかと言うと、この本の作者の方というイメージでしかなくて。最初に読んだときは、ホントにこれAV女優さんが書いたのかな? って思うくらい文章がキレイで、私はすごい好きになりました!

紗倉まな(以下、紗倉) えー、優しい……!

佐々木 いやいやいや、私けっこう本は読むんですけど、紗倉さんの独特な言葉の言い回しとか比喩みたいなものがキレイな人が好きなんです。後から文庫本に掲載されている後書きを拝見したときに、自分のことについて話していて、そういう(AV女優なんだという)印象が強くなりました。

紗倉 とってもうれしいです。ありがとうございます。

──映画なるというのは、読者から評価されることとはまた別の評価軸で価値を認められたということだと思うんですが、紗倉さんの中で受け取り方の違いってありますか?

紗倉 受け取り方、うーん……。

──たぶん、ごほうび的な感じかなと想像するんですが。

紗倉 あ、そうですね! ホントにそんな感じです。映画にしようと思って書いたものでもなかったし、逆に、映画にしにくいものだって思ってたんですね。エンタメ性とかに長けているわけでもないし……。ホントにびっくり。ごほうびみたいな、サプライズみたいな印象の方が強かったです。

──与えてくれた一派のひとりが、ここにいる佐々木さんなわけですが。

佐々木 一派です。あはははは。

紗倉 ねえー、ホントに! すっごいうれしい。

──佐々木さんは、瀬々監督とは『マリアの乳房』(2014)以来。

佐々木 そうですね、共通の友人がいて何度かお会いさせていただいていますが、作品自体は2回目です。

──瀬々監督と『最低。』という取り合わせって、ピンとくる感じってありましたか?

佐々木 はい、とっても。あ、瀬々さん! これ絶対ぴったりだ! って。

紗倉 へえー! ホントですか! すごい!

■紗倉「こういう仕事をしている女の子たちが、絶対通る道なので」

──彩乃という人物を演じることになったとき、佐々木さんはどんなイメージを抱きましたか?

佐々木 私は、本の中に出てくる女の子の中で一番、彩乃に共感できたので、うれしかったです。私自身も、どちらかというと男性から見られる仕事なので、そういう意味ではかぶる部分もあるので、私なりに出して(表現して)いきたいと思いましたね。

紗倉 私やっぱり、彩乃のシーンって、すごく泣いちゃったんですよ。親にバレることって、私は母親とはモメなかったですけど、学校でモメて、それはいまだに解決していなくって。すごく投影する部分があったし、本の中では描かなかった母親とのシーンで、彩乃が叫んで、結局お母さんが……っていう、あそこのシーンは、もう何物にも代えがたい思いというか。(初版の)本の帯に書いてあった「そこに落ちたら、もう戻れない」っていう言葉を、あのシーンですべて物語ってくださっていると感じました。こういう仕事をしている女の子たちが、絶対通る道なので……。

佐々木 私もグラビアをやっていたころ、母親じゃないんですけど、お爺ちゃんにけっこう似たようなことを言われて。あそこまでガーッとはやり合わなかったですけど、周りの環境も変わりましたし、見られ方も変わったっていう意味では、やっぱり、なんにもなかったころには戻れないよねっていう気持ちは、絶対的にありますよね。

紗倉 それを、あの性描写の部分とか、すごいがっつり身体を張ってくださってて、それがすごくキレイで、あれがなければこの話って物語れない部分だと思うんです。それを、あんなふうに受け入れて演じてくださっているなんてもう、こんなにうれしいことはないですよ、ホントに。

──それに、AVの中のセックスとプライベートのセックスを演じ分けている作品って、けっこう珍しいかもしれないですね。

佐々木 そっか、ひとつの作品の中に入っているのって、ないかも。

──女優ってすごいなって思いますよね。

紗倉 ホントに! 思いました。めちゃくちゃ思いました。

佐々木 いやいやいやいや。でも、このお話をいただきたときに「私がやっていいんだ」って思えた作品なんです。いろんな映画でも脱いでいるし、グラビアも、AVとはまた別だけども、同じような目線で見られる仕事をやっている中で、私はここにいていいんだなって、この役に言ってもらえた感じはあります。

──では、この役をもらうことで、佐々木さんも紗倉さんから贈り物をいただいたという感覚があると。

佐々木 そうですね、はい。すごく、居心地よかったです。

■佐々木「みんな普通に生きてる子たちじゃないですか」

──今回、AV女優を演じてみて、今後の女優としてのキャリアに何か収穫があったり、影響が出そうだったりすることってありますか?

佐々木 そうですね、あんまり肩書を意識しすぎないようにやろうと思ってたんですけど、そうじゃなくて、確かにAV女優なんだけど、でも普通に生きてる、誰だってみんな普通に生きてる子たちじゃないですか。それでも、周りから見られる目っていうのは意識しなくちゃいけなくて。私今回、いちばん現場で苦しくて、気持ち的にずっとモヤモヤして、モヤモヤモヤモヤモヤモヤして終えた彩乃だったんです。でも、その彩乃がすごくいい言葉(高い評価)をいただいたりして、あ、現場中にモヤモヤしてていいんだって気づいて。それが収穫でしたね。

──今までは、モヤモヤしなかった?

佐々木 わりと、「ああーやり切ったイエーイ!」みたいな感じだったんで、この感じのモヤモヤは、これでいいんだとわかりましたね。

紗倉 私の勝手なイメージで、心音さんって毎回、憑依型みたいな感じで、すごい没入して演じてらっしゃるような気がしていて、だから、どこでスイッチのオンオフを切り替えているんだろうとか、ずっと(自分と役の境界が)ぼやけているのかなとか、すごい気になっていたんですう。役によって、やっぱり違うんですか?

佐々木 どうなんだろう、あんまり「役になる」っていうよりは、自分と役が似ているところを探すっていう方法でやるようにはしているんですけど、親とかに聞くと、家に帰ってもその役を引きずっていたりとか、口が悪い役だったら悪いまんまになっちゃってたりするみたいです。だから今回の撮影中も、あんまり母親と楽しく会話した記憶はないですね。意識は特にしていないんですが……。

──今回の彩乃とは、似すぎていたのかも?

佐々木 そうかもしれないです、はい。

──ところで紗倉さん、今日(取材日は10月中旬)は「TIFF」でレッドカーペットを歩くための衣装合わせだったそうですね。このたびは、本当におめでとうございます。

紗倉 ありがとうございます。

──「TIFF」のコンペには日本から2つ作品が選出されましたが、もう1本は綿谷りささん原作の『勝手にふるえてろ』です。この2作品が並び立つということは、紗倉さんももう芥川賞を獲ったようなものなのでは……?

紗倉 そんなことないですよ! とんでもないですよ! 綿谷さんと並べられて、もう勝手にふるえてますよ……。
(取材・文=編集部/撮影=関戸康平)

●『最低。』
原作/紗倉まな 脚本/小川智子、瀬々敬久 監督/瀬々敬久
出演/森口彩乃、佐々木心音、山田愛奈、忍成修吾、森岡龍、斉藤陽一郎、江口のりこ、渡辺真起子、根岸季衣、高岡早紀
配給/KADOKAWA 11月25日(土)より角川シネマ新宿ほか全国公開
C)2017 KADOKAWA
http://saitei-movie.jp/

●紗倉まな
1993年生まれ、千葉県出身。工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。15年にはスカパー!アダルト放送大賞で史上初の三冠を達成する。テレビ出演や雑誌グラビアでも活躍し、「週刊プレイボーイ」(集英社)、「messy」(サイゾー)でコラム連載。著書に『最低。』『凹凸』(KADOKAWA)、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの転職』(宝島社)、スタイルブック『MANA』(サイゾー)がある。

金属系女子・紗倉まなの「愛ってなんですか?」(messy)
http://mess-y.com/archives/category/column/sakuramana/

●佐々木心音
1990年生まれ、東京都出身。10代から舞台女優として活動し、2011年に発売したファーストDVDがAmazonで売り上げ1位を記録。その後に発売したDVDでもヒットを連発。“芸能界で一番エロい体”とされる。主な出演作に『フィギュアなあなた』(13)、『パズル』(14)、『マリアの乳房』(14)、『TOKYO TRIBE』(14)、ドラマ『闇金ウシジマくん Season3』(16/TBS系)など。

脱げる女優・佐々木心音×AV女優・紗倉まな「女の子たちが、絶対通る道」を語る──

 AV女優・紗倉まなの小説家としての処女作『最低。』(KADOKAWA)が映画化され、今月25日に公開される。メガホンを採ったのは、ピンク映画出身で、最近では東宝で『64-ロクヨン- 前編/後編』、松竹で『8年越しの花嫁 奇跡の実話』を手がけるなどメジャー進出にも積極的な瀬々敬久。同作は先月末から開かれた「東京国際映画祭(TIFF)」のコンペティション部門に選出されるなど、各界から高い評価を受けている。

 今週末の公開に先立ち、原作者の紗倉まなと、紗倉が「自らを投影した」と語る主人公のひとり・彩乃を演じた女優・佐々木心音に話を聞いた。

 実際に「AV女優」という仕事に携わる作家と、当代きっての“脱げる女優”として「AV女優」を演じきった佐々木。2人の対談から、「AV女優」という職業の実像が浮かび上がってきたような、まだまだ奥が深いような……。

■佐々木「AV女優さんが書いたとは思えない」

──佐々木さんは、この企画に入る前に紗倉さんのことを、どれくらいご存じだったのでしょうか?

佐々木心音(以下、佐々木) 『最低。』の本は読んでいたので、どちらかと言うと、この本の作者の方というイメージでしかなくて。最初に読んだときは、ホントにこれAV女優さんが書いたのかな? って思うくらい文章がキレイで、私はすごい好きになりました!

紗倉まな(以下、紗倉) えー、優しい……!

佐々木 いやいやいや、私けっこう本は読むんですけど、紗倉さんの独特な言葉の言い回しとか比喩みたいなものがキレイな人が好きなんです。後から文庫本に掲載されている後書きを拝見したときに、自分のことについて話していて、そういう(AV女優なんだという)印象が強くなりました。

紗倉 とってもうれしいです。ありがとうございます。

──映画なるというのは、読者から評価されることとはまた別の評価軸で価値を認められたということだと思うんですが、紗倉さんの中で受け取り方の違いってありますか?

紗倉 受け取り方、うーん……。

──たぶん、ごほうび的な感じかなと想像するんですが。

紗倉 あ、そうですね! ホントにそんな感じです。映画にしようと思って書いたものでもなかったし、逆に、映画にしにくいものだって思ってたんですね。エンタメ性とかに長けているわけでもないし……。ホントにびっくり。ごほうびみたいな、サプライズみたいな印象の方が強かったです。

──与えてくれた一派のひとりが、ここにいる佐々木さんなわけですが。

佐々木 一派です。あはははは。

紗倉 ねえー、ホントに! すっごいうれしい。

──佐々木さんは、瀬々監督とは『マリアの乳房』(2014)以来。

佐々木 そうですね、共通の友人がいて何度かお会いさせていただいていますが、作品自体は2回目です。

──瀬々監督と『最低。』という取り合わせって、ピンとくる感じってありましたか?

佐々木 はい、とっても。あ、瀬々さん! これ絶対ぴったりだ! って。

紗倉 へえー! ホントですか! すごい!

■紗倉「こういう仕事をしている女の子たちが、絶対通る道なので」

──彩乃という人物を演じることになったとき、佐々木さんはどんなイメージを抱きましたか?

佐々木 私は、本の中に出てくる女の子の中で一番、彩乃に共感できたので、うれしかったです。私自身も、どちらかというと男性から見られる仕事なので、そういう意味ではかぶる部分もあるので、私なりに出して(表現して)いきたいと思いましたね。

紗倉 私やっぱり、彩乃のシーンって、すごく泣いちゃったんですよ。親にバレることって、私は母親とはモメなかったですけど、学校でモメて、それはいまだに解決していなくって。すごく投影する部分があったし、本の中では描かなかった母親とのシーンで、彩乃が叫んで、結局お母さんが……っていう、あそこのシーンは、もう何物にも代えがたい思いというか。(初版の)本の帯に書いてあった「そこに落ちたら、もう戻れない」っていう言葉を、あのシーンですべて物語ってくださっていると感じました。こういう仕事をしている女の子たちが、絶対通る道なので……。

佐々木 私もグラビアをやっていたころ、母親じゃないんですけど、お爺ちゃんにけっこう似たようなことを言われて。あそこまでガーッとはやり合わなかったですけど、周りの環境も変わりましたし、見られ方も変わったっていう意味では、やっぱり、なんにもなかったころには戻れないよねっていう気持ちは、絶対的にありますよね。

紗倉 それを、あの性描写の部分とか、すごいがっつり身体を張ってくださってて、それがすごくキレイで、あれがなければこの話って物語れない部分だと思うんです。それを、あんなふうに受け入れて演じてくださっているなんてもう、こんなにうれしいことはないですよ、ホントに。

──それに、AVの中のセックスとプライベートのセックスを演じ分けている作品って、けっこう珍しいかもしれないですね。

佐々木 そっか、ひとつの作品の中に入っているのって、ないかも。

──女優ってすごいなって思いますよね。

紗倉 ホントに! 思いました。めちゃくちゃ思いました。

佐々木 いやいやいやいや。でも、このお話をいただきたときに「私がやっていいんだ」って思えた作品なんです。いろんな映画でも脱いでいるし、グラビアも、AVとはまた別だけども、同じような目線で見られる仕事をやっている中で、私はここにいていいんだなって、この役に言ってもらえた感じはあります。

──では、この役をもらうことで、佐々木さんも紗倉さんから贈り物をいただいたという感覚があると。

佐々木 そうですね、はい。すごく、居心地よかったです。

■佐々木「みんな普通に生きてる子たちじゃないですか」

──今回、AV女優を演じてみて、今後の女優としてのキャリアに何か収穫があったり、影響が出そうだったりすることってありますか?

佐々木 そうですね、あんまり肩書を意識しすぎないようにやろうと思ってたんですけど、そうじゃなくて、確かにAV女優なんだけど、でも普通に生きてる、誰だってみんな普通に生きてる子たちじゃないですか。それでも、周りから見られる目っていうのは意識しなくちゃいけなくて。私今回、いちばん現場で苦しくて、気持ち的にずっとモヤモヤして、モヤモヤモヤモヤモヤモヤして終えた彩乃だったんです。でも、その彩乃がすごくいい言葉(高い評価)をいただいたりして、あ、現場中にモヤモヤしてていいんだって気づいて。それが収穫でしたね。

──今までは、モヤモヤしなかった?

佐々木 わりと、「ああーやり切ったイエーイ!」みたいな感じだったんで、この感じのモヤモヤは、これでいいんだとわかりましたね。

紗倉 私の勝手なイメージで、心音さんって毎回、憑依型みたいな感じで、すごい没入して演じてらっしゃるような気がしていて、だから、どこでスイッチのオンオフを切り替えているんだろうとか、ずっと(自分と役の境界が)ぼやけているのかなとか、すごい気になっていたんですう。役によって、やっぱり違うんですか?

佐々木 どうなんだろう、あんまり「役になる」っていうよりは、自分と役が似ているところを探すっていう方法でやるようにはしているんですけど、親とかに聞くと、家に帰ってもその役を引きずっていたりとか、口が悪い役だったら悪いまんまになっちゃってたりするみたいです。だから今回の撮影中も、あんまり母親と楽しく会話した記憶はないですね。意識は特にしていないんですが……。

──今回の彩乃とは、似すぎていたのかも?

佐々木 そうかもしれないです、はい。

──ところで紗倉さん、今日(取材日は10月中旬)は「TIFF」でレッドカーペットを歩くための衣装合わせだったそうですね。このたびは、本当におめでとうございます。

紗倉 ありがとうございます。

──「TIFF」のコンペには日本から2つ作品が選出されましたが、もう1本は綿谷りささん原作の『勝手にふるえてろ』です。この2作品が並び立つということは、紗倉さんももう芥川賞を獲ったようなものなのでは……?

紗倉 そんなことないですよ! とんでもないですよ! 綿谷さんと並べられて、もう勝手にふるえてますよ……。
(取材・文=編集部/撮影=関戸康平)

●『最低。』
原作/紗倉まな 脚本/小川智子、瀬々敬久 監督/瀬々敬久
出演/森口彩乃、佐々木心音、山田愛奈、忍成修吾、森岡龍、斉藤陽一郎、江口のりこ、渡辺真起子、根岸季衣、高岡早紀
配給/KADOKAWA 11月25日(土)より角川シネマ新宿ほか全国公開
C)2017 KADOKAWA
http://saitei-movie.jp/

●紗倉まな
1993年生まれ、千葉県出身。工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。15年にはスカパー!アダルト放送大賞で史上初の三冠を達成する。テレビ出演や雑誌グラビアでも活躍し、「週刊プレイボーイ」(集英社)、「messy」(サイゾー)でコラム連載。著書に『最低。』『凹凸』(KADOKAWA)、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの転職』(宝島社)、スタイルブック『MANA』(サイゾー)がある。

金属系女子・紗倉まなの「愛ってなんですか?」(messy)
http://mess-y.com/archives/category/column/sakuramana/

●佐々木心音
1990年生まれ、東京都出身。10代から舞台女優として活動し、2011年に発売したファーストDVDがAmazonで売り上げ1位を記録。その後に発売したDVDでもヒットを連発。“芸能界で一番エロい体”とされる。主な出演作に『フィギュアなあなた』(13)、『パズル』(14)、『マリアの乳房』(14)、『TOKYO TRIBE』(14)、ドラマ『闇金ウシジマくん Season3』(16/TBS系)など。

タトゥーを入れた9割が後悔、皮膚移植は30万円……医師に聞く「タトゥー除去手術」の最前線

 反社会的なイメージが強かった“入れ墨”や“タトゥー”。しかし、海外セレブやアスリートがファッション感覚で入れていたり、アートメイクが流行した今では、街中でもよく見かけるようになった。最近では、外国人観光客の増加とともにタトゥーのある客の入浴を受け入れる温浴施設も増えている。一方で、入れ墨を彫るのは医療行為だとして、医師法違反で彫り師が逮捕され、9月末、大阪地裁が罰金15万円の有罪判決を言い渡した。タトゥーをめぐる環境は変化している中、タトゥーを入れた人たちは、みんな大満足の日々を送っているのかと思いきや、実はそうでもないらしい。

■タトゥーを入れた人の9割が後悔!

 美容外科・東京イセアクリニックが行ったアンケート(※)では、タトゥーを入れた人の90.9%が「後悔している」と回答したというのだ。(※)「<男女世代別>タトゥー・入れ墨への認識・イメージに関するアンケート」(2017年9月12日~13日、国内在住の20~40代の男女350名を対象に実施)

「タトゥーの除去を目的に、当院を訪れる患者さんは少なくないです。問い合わせが、多いときで100件以上寄せられる月もあります。相談に来る女性は、就職や結婚、出産などのライフイベントをきっかけに除去を決心する、という方がほとんどですね」

 そう語るのは、東京イセアクリニック総院長の吉種克之医師。吉種医師によれば、「ウエディングドレスを着るとタトゥーが見えるので除去したい」「ママ友との付き合いを続ける上で、タトゥーがあると困る」など、人生の転換期にタトゥーの除去に踏み切るケースが多いという。

 ファッションとしてのタトゥーへの認識が広がりつつある一方で、「反社会的組織の象徴」というイメージが強いのも事実。結婚や出産のタイミングで、ひとつのハードルになることは、タトゥーを入れる前に気づきそうなものだが……?

「実際にタトゥーを入れた人に聞くと、『海外旅行でテンションが上がって入れた』『海外で“消えるタトゥーだ”と言われたのに、消えないものだった』なんて方もいます。気軽な気持ちでタトゥーを入れた人ほど、後悔する傾向が強いですね」

 “後悔先に立たず”とは、まさにこのこと。そのほか「入れ墨客お断りの銭湯で入浴をしていたら、タトゥーが見つかって、店員に髪の毛を引っ張られて放り出された」という理由で来院した女性もいたとか。いまだに生活のさまざまな場面で支障の出るケースが少なくないのだ。

 タトゥーを入れて生活しづらくなることを考えると、今すぐにでも消したい気持ちもうなずける。実際、どのような方法で、タトゥー除去は行われるのだろうか? 代表的な方法を聞いた。

「ひとつ目は『レーザー除去法』です。タトゥーにレーザーを照射して、高熱で染料を燃焼させます」

 手術ではないため傷痕は残らないが、染料を完全に消すことができないのもレーザー除去の特徴。そのため、染料の深さによっては「ボールペンで描いたものを、消しゴムで無理やり消したような痕」が残ることもあるという。

「2つ目は『切除縫合術(以下、切除法)』です。切除法は、タトゥーが入っている皮膚に部分麻酔をかけて、中心部分の皮膚を切り取り、その周辺を縫い合わせる方法。部位やタトゥーの大きさによって、手術の回数は異なります」

 小さいものであれば、1回で切除から縫合まで可能だが、大きなタトゥーであれば、手術を数回に分けて切除と縫合を繰り返す。一度の手術後、縫合部の皮膚が伸びるまでに3カ月~半年かかり、皮膚がつっぱらなくなったら、再度タトゥーを切除して縫い合わせる……。長い戦いが待っているのだ。

「切除法の難点は、傷痕が残ること。そのため、切除法はタトゥーを入れる前の状態に戻すのではなく、事故やケガの痕のように見せかけて、タトゥーをごまかすための手術と捉えたほうがいいと思います」

 傷痕を残すことで“タトゥーを入れた過去”をなかったことにする、いわば裏ワザ的な手術といえる。

 そのほかにも、タトゥー部分の皮膚を削ぎ落とす「削皮術」。大きなタトゥーを切除して、太ももなどの健康な皮膚を移植する「植皮術」があるが、どの方法も痛みや傷痕を伴うことは間違いない。

 タトゥーを入れるのは、もちろん個人の自由。当然ながら、除去手術も自由診療のため、施術費用はまちまちだ。そのため、「費用については、特に注意しなければならない」と吉種医師は語る。

「医療機関の中には、患者さんがタトゥーに対して抱いている後ろめたさを逆手に取って、高額な施術費用を提示する病院があるのも事実です。除去手術を受ける際は、慎重に病院を選んでください」

 ちなみに、東京イセアクリニックでは、切除法8万円~、植皮法30万円~(10×10cm当たり)だが、タトゥーの大きさによって、費用や期間にも差が出るとのこと。病院選びから治療期間、施術費用など、もろもろ考えてもかなりの負担になる。

「独身時代にタトゥーを入れたときは、満足感もあると思います。ただ、結婚したり、お子さんができたり、家族が増えると自分一人の体ではなくなり、周りに迷惑がかかる可能性があります。今タトゥーを入れようと思っている人は、少し先の未来を想像してみる必要があるのかもしれません」

 若気の至りというには、支払う代償が大きいタトゥー。ぜひ後悔しない選択をしてほしい。

吉種克之(よしたね・かつゆき)
美容外科「東京イセアクリニック」総院長兼銀座院院長を兼任。東京医科大学卒業後、昭和大学形成外科で研修、専門医を取得。大手美容外科クリニックの理事を経て、2010年に東京イセアクリニック診療部長に就任、15年より総院長。
東京イセアクリニック

『奥様は、取り扱い注意』より気味が悪い!? 空き巣に「歯ブラシ」だけ盗まれたバツイチ女性

 綾瀬はるか主演の連続ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)。特殊工作員という過去を持つ専業主婦の綾瀬演じる主人公・伊佐山菜美が、同じセレブ住宅街に暮らす、主婦友の大原優里(広末涼子)や佐藤京子(本田翼)と共に、主婦の間で起きるさまざまなトラブルを解決していくというストーリー。

 11月22日放送の第8話では、菜美たちが近所に住む主婦・妙子主催のホームパーティに出席する。妙子の夫は、1年前に収賄疑惑で世間を騒がせた大物政治家で、そのイメージ回復のために時折パーティが開かれるという。数日後、街では立て続けに空き巣事件が発生。菜美の家にも空き巣が入り、偶然居合わせた勇輝(西島秀俊)が犯人に殴られて負傷する。空き巣の犯人が金目の物を奪っていないこと、妙子のホームパーティに出席していた家ばかりが狙われていることに気付いた菜美は、夫のために“真犯人”への復讐を決意する……という展開だ。

 現実で、ドラマさながらの空き巣被害に遭った人がいる。カナコさん(仮名・29歳)は、夫と離婚後、息子と2人暮らしをしているマンションで発生した集団空き巣について話してくれた。

「離婚して、今のマンションに引っ越してきました。周りは大きな公園がある閑静な住宅街。夜になると明かりや人通りはほとんどありません。マンションの住民は、私のような母子家庭や単身赴任の人が多く、夜は夜勤で家を空けている人も多いです。それで、建物自体空き巣に狙われやすかったのかもしれませんが……」

 しかし、空き巣に入られる理由はそれだけではない。それは、どのマンションにも起こり得る「あること」がきっかけだったという。

「入居してしばらくした頃、マンションの外壁工事があったんです。建物は古かったし、きれいになるのは良いことだと思いました。外壁工事が始まり、マンションの壁周りは工事の足場だらけになったのですが、まさか、この足場から空き巣被害に遭うとは思いもしませんでした。マンションはオートロックでしたし、防犯対策も特に気にしていませんでしたね」

 看護師の仕事をしているカナコさんは夜勤の時だけ、子どもを実家に預けていた。その日も夜勤を終え、いつも通り家に帰ると、窓ガラスが割られて部屋が荒らされていたのだった。

「部屋に入った瞬間、工事の足場から空き巣に入られたのだとわかりました。通帳はインターネットバンキングで管理しているのでもともとなく、金目のものを取られた形跡はありませんでした。しいて言えば、私の歯ブラシがなくなっていたくらいです」

 警察を呼んだが、被害も少なかったため、周辺のパトロールをして終わったという。窓ガラス代は保険が下りたため、頑丈な防犯ガラスに換えて、カナコさん自身も空き巣のことは早く忘れようとした。しかし数日後、さらなる被害が……。

「同じマンションの別の部屋でも数件の空き巣被害があったのです。盗まれた物は、またもや金目のものでなく、写真、下着などです。私と同じように歯ブラシを盗まれたという人もいました。被害者が皆、女性の住む部屋だったため、変質者の仕業だと思われました。結局、犯人が捕まらないまま外壁工事が終わったので、真相は今も闇のままです。マンションの中では外壁工事の人が怪しいのではウワサされてますけど……」

 実は、このように金目の物以外の空き巣被害は意外と多いという。特に多いのは下着で、ほかにはパソコンなどの電子機器を狙う手口もあるようだ。現在行っている空き巣対策について、カナコさんはこう語る。

「なるべく子どもを1人で家にいさせないようにしています。あと、警備保障会社のシールを貼るのも効果的。ほかには下着を外に干したらカーテンを開けて見えるようにしておき、乾いたらすぐに取り込むようにしています。金目のものを家に置かないのが一番ですけどね」

 思わぬところから起きた空き巣被害。オートロック付きのマンションだろうと油断は禁物だ。
(カワノアユミ)