セックスワーカーを経験した中村うさぎに聞く、売春はなぜ“いけない”ことなの?

 世界最古の職業といわれる「売春」。現代の日本では売春防止法によって禁止されている行為だが、法的な規制を抜きにしても、多くの日本人が「売春はいけないこと」という意識を持っているのではないだろうか。

 2017年9月に『エッチなお仕事なぜいけないの?』(ポット出版プラス)を上梓した作家の中村うさぎさんは、恐らく世間一般では少数派であろう“売春賛成派”。同書には売春の是非について、中村さんと有識者たちによる対談が収められているが、実際のところ、売春がいけないといわれているのはなぜなのか? ご本人に聞いてみた。

■「不特定多数に性を売ること」への嫌悪感

 まず、売春が悪だという認識が浸透している背景には、「不特定多数に性を売る」という行為そのものが、嫌悪の対象になりやすいからだと中村さんは指摘する。

「そもそも、なぜ不特定多数に性を売ることが悪とされるのか? ひとつは、男性が生み出した“貞淑”という幻想によるものだと思います。それは、自分の子孫を確実に残したいという、男性たちによる本能レベルの欲求ではないでしょうか? なにしろ、女性のほうは、父親が誰であろうと自分が産んだ子どもは100%の自分の子であるという確信がありますが、男性は、女性の腹から出てくる赤子が自分の種じゃない可能性もあるわけです。そんな危機感が働いたからこそ、夫以外の男性と寝る女性を嫌悪し、“不貞”というレッテル貼りをしたのではないでしょうか」

 歴史を振り返ってみると、後家が権力を握っていた室町時代をはじめ、政治でも女性の影響力がある程度強かった14世紀ごろまでは、セックスを売り物にする女性も差別の対象にはならなかったという。

「たとえば平安時代から鎌倉時代にかけて『白拍子』と呼ばれる女性たちがいましたが、彼女らは歌舞を演じるだけでなく、男性の夜の相手もしていたことがわかっています。容姿端麗で芸に優れた白拍子は男性の憧れの的で、彼女たちをめとることは男性にとってもステータスでした。一方、武家時代に入って男性優位の社会になってくると、遊女などの地位が途端に低くなるのです」

 つまり、男性が権力を握り、彼らにとって都合のよい倫理観が出来上がった結果、性を売ることへの嫌悪感が浸透していったとも考えられるのだ。そうした中で、性を売る人はいやしいという差別感情が生まれ、「遊女という職業はけしからん」という暗黙の了解が出来上がって、売春への忌避感が生まれたのだという。

 一方、女性が売春をする女性に対して差別することも、世の中にはある。それはもちろん、男権的な価値観から生まれた“貞淑”という観念が世間一般に浸透した結果ともいえるが、それ以前の問題として、女性が売春をよしとしないのには「もっと感情的な理由がある」と中村さんは話す。

「売春が嫌われるのには、“女を売るのはズルい”という同性からの視点もあるのだと思います。キャバクラなんかでも枕営業するホステスは下に見られる傾向にあるようですが、要は性を使ってのし上がった同性に対して、イカサマをされたような理不尽な感情が湧くんですよね。それこそ、安い時給のアルバイトなんかでコツコツ稼いでいる女性が、売春で大金を稼いでいる人に対して“反則”だと感じることもあるでしょう」

 ほかにも、一部のフェミニストたちによる売春反対の声もある。売春を男性による「性の搾取」と見なし、倫理的に到底認められないという意見だ。

「売春は女性性の搾取であり、男性優位社会の産物だという考え方ですね。ただ、親に遊郭に売られたり、暴力による売春の強制があった昔ならいざ知らず、現代では自分の意志で性を売る仕事を選び取っている人も多いわけです。そうした女性の立場はどうなるのか? 男権的な価値観に洗脳されて、無自覚に性を売っているのだと話すフェミニストもいます。しかし、仮にそれが刷り込みであったとしても、刷り込まれた価値観を、そのまま肯定するか否定するかは、その人の自由でしょう」

 女性の売春や風俗ビジネス は、男性の性欲なしには成り立たないものであり、その性欲そのものを否定してしまえば、それはフェミニズムというより、もはやミサンドリー(男性嫌悪)ではないか、というのが中村さんの見方だ。

「結局のところ、風俗に対する過剰なバッシングを繰り返すフェミニストたちは、単に男性の性欲が嫌いなんだと思います。しかし、自らの意志でセックスワークを選んだ人たちまでも、『被害者』として一括りにすることは、彼女たちの自由意志を無視した差別といえるのではないでしょうか」

 女性の不貞に対する男性の嫌悪感にしろ、男性に対するフェミニストの憎しみにしろ、売春を否定する人の根底には「不快」という感情が存在しているのだと中村さんは言う。

「人間の快・不快というのは、感情の中でも根深いもの。そして、どんなに売春が不道徳であるかを理論武装しようとしたところで、感情的なものが根底にある限り、必ずほころびが出てくる。たとえば、売春は『性の搾取』だといわれていますが、そもそも売春以外でも、労働力や時間を搾取する企業なんて、ごまんとあるわけです。なぜ、性の搾取だけが特別視されるのか? また、『性は神聖なものだから、売り買いするのはタブーだ』と言う人もいますが、なぜセックスだけが神聖になるのか? どれも理論で突き詰めることができない。そうした意味でも『売春がいけない理由』については、明確な答えが、今のところ私の中に存在しません」

 ただし、冒頭でも少し触れたように、売春は売春防止法により、法的には違法と定められている。法律では売春をすることも、そして買春することも禁止されているのだ。では、女性を買う男性についても、「社会の風俗を乱すような」不道徳な輩といえるのか?

「先に話したミサンドリー的な考えだったら『男の性欲そのものが汚らわしい』ということになりかねませんから、それこそ金を払って性欲を発散する男性はアウトになる。そうでなくとも『買春は、性欲を持て余した気持ちの悪いオッサンがするもの』というイメージを抱いている女性は、一定数いるのではないでしょうか?  かつては、私も風俗を利用する男性に対して、偏見を持っていましたから」

 実は、中村さんは、デリヘルでセックスワーカーとして働いた経験がある。そしてセックスワークを体験する中で、風俗を利用する男性に対して、ある種の理解を抱くようになっていったのだという。

「実際デリヘルで働いてみると、客の大半が至って普通の人で、まったく暴力的でも居丈高でもなかった。そして、彼らは単に性欲の発散だけでなく、彼女や奥さんにさらけ出せない性的ファンタジーを満たしてくれる相手を求めて、風俗店にやってくることに気がつきました。セックスワーカーはお金をもらって、そのファンタジーを満たしてあげるわけです。少なくとも私は、一方的に男性に性を搾取されているという感覚はなかったですね」

 社会全般に浸透している偏見や差別意識から、なんとなく「いけないこと」だと思われている売春。しかし、売春の是非についてハッキリと答えられる人はいないのかもしれない。それならば、法的な規制はともかくとして、当事者以外の人たちが、セックスワークに関わる人たちを勝手に裁く権利もないのではないだろうか?
(松原麻依/清談社)

セックスワーカーを経験した中村うさぎに聞く、売春はなぜ“いけない”ことなの?

 世界最古の職業といわれる「売春」。現代の日本では売春防止法によって禁止されている行為だが、法的な規制を抜きにしても、多くの日本人が「売春はいけないこと」という意識を持っているのではないだろうか。

 2017年9月に『エッチなお仕事なぜいけないの?』(ポット出版プラス)を上梓した作家の中村うさぎさんは、恐らく世間一般では少数派であろう“売春賛成派”。同書には売春の是非について、中村さんと有識者たちによる対談が収められているが、実際のところ、売春がいけないといわれているのはなぜなのか? ご本人に聞いてみた。

■「不特定多数に性を売ること」への嫌悪感

 まず、売春が悪だという認識が浸透している背景には、「不特定多数に性を売る」という行為そのものが、嫌悪の対象になりやすいからだと中村さんは指摘する。

「そもそも、なぜ不特定多数に性を売ることが悪とされるのか? ひとつは、男性が生み出した“貞淑”という幻想によるものだと思います。それは、自分の子孫を確実に残したいという、男性たちによる本能レベルの欲求ではないでしょうか? なにしろ、女性のほうは、父親が誰であろうと自分が産んだ子どもは100%の自分の子であるという確信がありますが、男性は、女性の腹から出てくる赤子が自分の種じゃない可能性もあるわけです。そんな危機感が働いたからこそ、夫以外の男性と寝る女性を嫌悪し、“不貞”というレッテル貼りをしたのではないでしょうか」

 歴史を振り返ってみると、後家が権力を握っていた室町時代をはじめ、政治でも女性の影響力がある程度強かった14世紀ごろまでは、セックスを売り物にする女性も差別の対象にはならなかったという。

「たとえば平安時代から鎌倉時代にかけて『白拍子』と呼ばれる女性たちがいましたが、彼女らは歌舞を演じるだけでなく、男性の夜の相手もしていたことがわかっています。容姿端麗で芸に優れた白拍子は男性の憧れの的で、彼女たちをめとることは男性にとってもステータスでした。一方、武家時代に入って男性優位の社会になってくると、遊女などの地位が途端に低くなるのです」

 つまり、男性が権力を握り、彼らにとって都合のよい倫理観が出来上がった結果、性を売ることへの嫌悪感が浸透していったとも考えられるのだ。そうした中で、性を売る人はいやしいという差別感情が生まれ、「遊女という職業はけしからん」という暗黙の了解が出来上がって、売春への忌避感が生まれたのだという。

 一方、女性が売春をする女性に対して差別することも、世の中にはある。それはもちろん、男権的な価値観から生まれた“貞淑”という観念が世間一般に浸透した結果ともいえるが、それ以前の問題として、女性が売春をよしとしないのには「もっと感情的な理由がある」と中村さんは話す。

「売春が嫌われるのには、“女を売るのはズルい”という同性からの視点もあるのだと思います。キャバクラなんかでも枕営業するホステスは下に見られる傾向にあるようですが、要は性を使ってのし上がった同性に対して、イカサマをされたような理不尽な感情が湧くんですよね。それこそ、安い時給のアルバイトなんかでコツコツ稼いでいる女性が、売春で大金を稼いでいる人に対して“反則”だと感じることもあるでしょう」

 ほかにも、一部のフェミニストたちによる売春反対の声もある。売春を男性による「性の搾取」と見なし、倫理的に到底認められないという意見だ。

「売春は女性性の搾取であり、男性優位社会の産物だという考え方ですね。ただ、親に遊郭に売られたり、暴力による売春の強制があった昔ならいざ知らず、現代では自分の意志で性を売る仕事を選び取っている人も多いわけです。そうした女性の立場はどうなるのか? 男権的な価値観に洗脳されて、無自覚に性を売っているのだと話すフェミニストもいます。しかし、仮にそれが刷り込みであったとしても、刷り込まれた価値観を、そのまま肯定するか否定するかは、その人の自由でしょう」

 女性の売春や風俗ビジネス は、男性の性欲なしには成り立たないものであり、その性欲そのものを否定してしまえば、それはフェミニズムというより、もはやミサンドリー(男性嫌悪)ではないか、というのが中村さんの見方だ。

「結局のところ、風俗に対する過剰なバッシングを繰り返すフェミニストたちは、単に男性の性欲が嫌いなんだと思います。しかし、自らの意志でセックスワークを選んだ人たちまでも、『被害者』として一括りにすることは、彼女たちの自由意志を無視した差別といえるのではないでしょうか」

 女性の不貞に対する男性の嫌悪感にしろ、男性に対するフェミニストの憎しみにしろ、売春を否定する人の根底には「不快」という感情が存在しているのだと中村さんは言う。

「人間の快・不快というのは、感情の中でも根深いもの。そして、どんなに売春が不道徳であるかを理論武装しようとしたところで、感情的なものが根底にある限り、必ずほころびが出てくる。たとえば、売春は『性の搾取』だといわれていますが、そもそも売春以外でも、労働力や時間を搾取する企業なんて、ごまんとあるわけです。なぜ、性の搾取だけが特別視されるのか? また、『性は神聖なものだから、売り買いするのはタブーだ』と言う人もいますが、なぜセックスだけが神聖になるのか? どれも理論で突き詰めることができない。そうした意味でも『売春がいけない理由』については、明確な答えが、今のところ私の中に存在しません」

 ただし、冒頭でも少し触れたように、売春は売春防止法により、法的には違法と定められている。法律では売春をすることも、そして買春することも禁止されているのだ。では、女性を買う男性についても、「社会の風俗を乱すような」不道徳な輩といえるのか?

「先に話したミサンドリー的な考えだったら『男の性欲そのものが汚らわしい』ということになりかねませんから、それこそ金を払って性欲を発散する男性はアウトになる。そうでなくとも『買春は、性欲を持て余した気持ちの悪いオッサンがするもの』というイメージを抱いている女性は、一定数いるのではないでしょうか?  かつては、私も風俗を利用する男性に対して、偏見を持っていましたから」

 実は、中村さんは、デリヘルでセックスワーカーとして働いた経験がある。そしてセックスワークを体験する中で、風俗を利用する男性に対して、ある種の理解を抱くようになっていったのだという。

「実際デリヘルで働いてみると、客の大半が至って普通の人で、まったく暴力的でも居丈高でもなかった。そして、彼らは単に性欲の発散だけでなく、彼女や奥さんにさらけ出せない性的ファンタジーを満たしてくれる相手を求めて、風俗店にやってくることに気がつきました。セックスワーカーはお金をもらって、そのファンタジーを満たしてあげるわけです。少なくとも私は、一方的に男性に性を搾取されているという感覚はなかったですね」

 社会全般に浸透している偏見や差別意識から、なんとなく「いけないこと」だと思われている売春。しかし、売春の是非についてハッキリと答えられる人はいないのかもしれない。それならば、法的な規制はともかくとして、当事者以外の人たちが、セックスワークに関わる人たちを勝手に裁く権利もないのではないだろうか?
(松原麻依/清談社)

メジャーシーンで結果を出した入江悠監督が語る埼玉ロケ作品『ビジランテ』で挑んだ新境地!!【前編】

 地方都市で過ごした青春時代の葛藤をラップに叩き付けた自主映画『SRサイタマノラッパー』(09)でブレイクを果たした入江悠監督。『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)以降はメジャーシーンでの挑戦が続いていたが、2017年はワーナー系で全国公開された『22年目の告白 私が殺人犯です』が3週連続で興収1位を飾るという躍進の年となった。最新作『ビジランテ』は『サイタマノラッパー』シリーズ以来となる久々のオリジナル劇場映画。地元・深谷市で撮影した『ビジランテ』に込めた想い、テレビ東京で深夜ドラマ化された『SRサイタマノラッパー マイクの細道』にまつわるエピソードなど、入江監督に2017年を振り返ってもらった。

──故郷や家族に対して複雑な感情を抱く3兄弟(大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太)を主人公にした『ビジランテ』の構想はいつ頃から考えていたんでしょうか?

入江悠(以下、入江) 『ロードサイドの逃亡者』の後、『日々ロック』(14)や『ジョーカー・ゲーム』(15)と商業映画をやり、その後に寒村を舞台にした『太陽』(16)という作品を撮ったんです。僕の中では『太陽』で描かれていたテーマや問いがすごくフィットしていた。その頃からですね。

──神木隆之介&門脇麦主演の『太陽』は文明の進化から置き去りにされた集落で暮らす若者たちの愛憎劇でした。

入江 SFという設定でしたけど、ひとつのコミュニティーの中には差別があり、コミュニティーを出ていくことに反発心を抱く者もいたりと、いろんな立場の人間がいるドラマだったんです。『太陽』は前川知大さんの舞台が原作だったのですが、その独創性と冷徹な観察眼に刺激を受けて、自分なりに地元の深谷市を舞台にして書いたのが『ビジランテ』です。オリジナルで脚本を書くのはすごく時間が掛かり、気が付いたらオリジナルでの劇場作品は『ロードサイドの逃亡者』以来になってしまいましたね。

──『サイタマノラッパー』劇場版三部作の舞台挨拶で、各地を回った体験も活かされている?

入江 それはあると思います。それまでの自分が知っていた世界は狭かったけれど、『サイタマノラッパー』シリーズで全国の地方都市を北は北海道から南は九州まで回って、各地の問題に触れる機会になったんです。原発問題もあれば、『ビジランテ』で描いたような郊外型ショッピングモールの建設をめぐる問題もある。でも社会と個人というテーマは、各地に共通する問題じゃないかと感じられたんです。そういった日本全体にかかわる問題を、地元の街に置き換えて描いた感じですね。

──『サイタマノラッパー』は半径1メートルの物語でしたが、今回は間口が広まった感じがします。半径500メートルぐらいの物語?

入江 もう少し広いかな。半径1キロメートルぐらいの物語ですかね。ショッピングモールは駐車場だけでもかなり広いですから。『サイタマノラッパー』シリーズは僕個人の悩みや不安、夢と現実などをドラマ化したものでしたが、2017年でちょうど撮影から10年経つんです。年齢を重ねていく中で、僕も少しずつですが社会との関係性を考えるようになった。技術的なことや僕自身の人間的な未熟さもあって、これまでは映画として描くことができなかったんですが、もう少し視野を広げて、そこで生きている人たちの人間模様を描いてみようという気になってきたんです。

──2017年4月~6月にオンエアされたTVドラマ『SRサイタマノラッパー マイクの細道』にも劇場版三部作では描かれなかったIKKUの家族が登場しました。

入江 僕の高校時代は男子校で、剣道部だったんですが、6人いる同期はみんな結婚して家庭を持っているんです。同期の結婚式に呼ばれて、久々に集まったら、「結婚してないのは、もう入江だけだぞ」と言われて(笑)。東京にいるとあまり独身であることを意識しないんですが、たまに田舎に帰省すると気づかされますね。同級生たちはちゃんと結婚して、子育てして、親の介護なども引き受けていたんだなぁと。自分は映画を撮ることしかやらず、家族に対する責任はいっさい引き受けてこなかった。そのことは『マイクの細道』にも入っていますね。

■入江作品の中における3人の男たち

──『サイタマノラッパー』と同じ埼玉県深谷市でロケ撮影されたこともあり、『ビジランテ』に映し出される世界も同じような風景ですが、そこで繰り広げられるのはまったく異なるハードボイルドなものになっています。

入江 『サイタマノラッパー』はシリーズ化されていくことで、主人公たちがどんどんアイコン化され、中でもIKKUとTOMはコミカルな存在になっていった。それもあり、『ビジランテ』では現実感のあるキャラクターとして一郎(大森南朋)、二郎(鈴木浩介)、三郎(桐谷健太)の3兄弟を考え出したんです。3兄弟の父親役には、映画『64 ロクヨン』(16)でのコワモテの警察署長役が印象的だった菅田俊さんにお願いしました。菅田さんには真冬の冷たい川の中に入って、熱演していただきました。

──菅田俊演じる武雄は、子どもたちを容赦なく折檻する“昭和の父親”。ちなみに入江家はどんな家庭だったんでしょうか?

入江 うちは全然違います。もっと、ダラッとしてました。父はフリーランスの物書きなんです。父の仕事がないときは、母が稼いでいました。菅田さんみたいな厳格な父親ではなかったんですが、それもあって昔ながらの家庭像への憧れがあったみたいです(笑)。

──大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太はどういう順番でキャスティングを?

入江 同じ空気を吸って育ったことを匂わせるような3人であることが必要でしたし、年齢差もそれぞれないといけないので、誰が最初ということはなく、バランスを考えて3人同時に決めていった感じですね。

──日刊サイゾーだからお聞きしますが、大森南朋と鈴木浩介はよく共演OKしたなと。

入江 大森さんと鈴木さんなら大丈夫だろうなと思ってオファーしました。僕はあまりテレビドラマは見ないんですが、鈴木さんが出演していたドラマを幾つか見たところ、すごくいい。もっと映画に出てほしい人だなと思いました。オファーすると、鈴木さんは映画出演をとても喜んでくれた。3人とも現場では仲良かったですよ。真冬の深谷はかなり寒く、カメラが回っていない間は3人ともヒーターの前に集まって、ずっと雑談していました。3人とも初共演だったんですが、昔からの顔なじみのようでした。

──大森南朋のふてぶてしい姿は、お父さん(舞踏家の麿赤兒)に似てきましたね。これまでは全然似てない親子だなぁと思っていたんですが、『ビジランテ』では受け継いでいる業みたいなものが全身から滲み出ています。

入江 あると思います、そういうのって。麿赤兒さん、高田馬場の喫茶ノワールでお見かけしたことがあったんですが、「昭和の怪人」がお店に現われたような怖さを感じました。麿さんからすごい殺気が漂っていたんです。大森南朋さんにもそれに近いものを感じました。本人はそのことを意識していたかどうかは分かりませんが、ちょっと近寄りがたい雰囲気がある。でも、逆にひょうきんな面も併せ持っている。顔のシワとかも年輪っぽい感じがして、大人の顔を見せていますよね。

──桐谷健太はCMですっかりメジャーになりましたが、撮影現場ではムードメーカー役も買って出る好人物。

入江 彼とは同い年なんです。井筒和幸監督の『ゲロッパ!』(03)や『パッチギ!』(05)に出ていたのを観て、「いい役者が出てきたなぁ」と思っていたんです。同世代の役者と一緒に仕事をする機会って、『サイタマノラッパー』シリーズ以外ではなかなかなくて、いつか自分の作品に出てほしいなと思っていました。脚本を渡したところ、「ぜひ、やりたい」と言ってもらえ、うれしかったですね。

──女優陣の脱ぎっぷりも素晴しい。入江作品で、ここまで本格的な濡れ場があるのは初めて。『ジョーカー・ゲーム』では深田恭子が荒縄で縛られて吊るされるシーンがありましたけど。

入江 ハハハ、「少年ジャンプ」に出てくるような緊縛シーンでしたね(笑)。濡れ場シーンは、仙台短編映画祭から“愛”をテーマにした作品を依頼されて、『サイタマノラッパー』のTOM役の水澤紳吾を主演にした短編映画『狂人日記』(14)を撮ったことがあるんです。誘拐した女性を監禁してしまうというハードな内容で、仙台で上映されて物議を呼び、門外不出になってしまった(苦笑)。本格的な濡れ場は、それ以来ですね。今回は前半ずっとバイオレンスシーンかSEXシーンばかり撮っていたので、感覚が麻痺していました。でも、女優陣は肝が据わっていて、やるとなるとバンッと脱ぎっぷりよくやってくれた。間宮夕貴さんは石井隆監督の『甘い鞭』(09)や塩田明彦監督の『風に濡れた女』(16)がとても良くて、僕から出演をお願いしました。間宮さんは脱ぎっぷりだけでなく、脱いだ上でしっかり演技ができる素晴しい女優です。

──物語を大きく左右するファムファタール役は元AKB48の篠田麻里子。カーセックスシーンや枕営業シーンにも挑んでみせた。

入江 30歳前後で、こういう悪女役をできる女優って意外といないんです。彼女は身長があるし、品のある顔立ちなので、悪い女を演じさせるとハマる。難しい役だから受けてくれるか心配だったんですが、「リハーサル、いっぱいやらせてください」「何かあったら、すぐ言ってください」と現場ではすごく謙虚でしたね。初日が鈴木浩介さんとのカーセックスシーンだったんですが、物怖じせずにやってくれました。最初にそういうシーンを演じ切ったことで、鈴木さんと距離感なく、うまく夫婦役になったように思います。

──『サイタマノラッパー』シリーズはIKKU、TOM、MIGHTYという3人の男たちの物語でしたが、今回の『ビジランテ』も3兄弟の物語。男3人というキャラクターでも共通していますね。

入江 自分自身の分身を3つに分けた感じですね。3人という人数が好きみたいです。地元を飛び出したい気持ちが今回は一郎になり、地元の街のメインストリームを歩きたいという想いが二郎になり、2人の間で揺れ動く感情が三郎になっている。矛盾を1人のキャラクターに抱え込ませると物語化しにくいけれど、3人に分散させてぶつかり合うことで物語が動いていく。あと数本オリジナル脚本を書いたら、いつも同じ内容なことがバレると思います(笑)。

──町の再開発が始まる前に不審火が起き、ショッピングモール建設の利権に裏社会が絡んだりと、地方都市の不穏なリアリティーを感じさせるドラマが展開されていく。

入江 『サイタマノラッパー』の舞台挨拶で、各地のいろんな話を聞いてきたことが役立ちました。『ビジランテ』の脚本を書いていた頃、深谷市でもショッピングモールの建設計画が進んでいたらしくて、「お前、よく知ってたな」と勘ぐられたんですが、まったくの偶然でした。深谷市でも実際にショッピングモールの建設に賛成か反対かの市民集会が開かれ、脚本を書きながらざわっとしました。

──映画と現実は不思議とシンクロする。

入江 シンクロしちゃいますね。『22年目の告白』の製作を進めているときも、『絶歌 神戸連続殺傷事件』(太田出版)が出版されましたし。『22年目の告白』の脚本を書いたほうが早かったんですが、フィクションで書いていたことが現実化していくみたいな怖さを感じましたね。 
(インタビュー後編に続く/取材・文=長野辰次/撮影=長谷英史)

 

『ビジランテ』
脚本・監督/入江悠
出演/大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子、嶋田久作、間宮夕貴、吉村界人、菅田俊
配給/東京テアトル R15+ 12月9日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開
C)2017「ビジランテ」製作委員会
https://vigilante-movie.com/index.php

■『ビジランテ』の公開を記念して、テアトル新宿にてトークショーを開催

ヤクザday
12月10日(日)  14:00の回上映後
ゲスト/般若、坂田聡、山口航太、龍 坐、大宮将司、蔵原 健、三溝浩二、裵ジョンミョン

ヤングday
12月16日(土)3回目上映後
ゲスト/吉村界人、間宮夕貴、大津尋葵、入江悠監督

デリヘルday
12月23日(土)4回目上映後
ゲスト/岡村いずみ、浅田結梨、市山京香、入江悠監督

●入江悠(いりえ・ゆう)

1979年神奈川県生まれ、埼玉県深谷市出身。『JAPONICA VIRUS』(06)で長編監督デビュー。自伝的要素の強い青春映画『SRサイタマノラッパー』(09)が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」オフシアター・コンペティション部門でのグランプリ受賞を皮切りに、自主映画として異例のロングランヒットに。『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)、『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)と共に『SR』北関東三部作として熱烈な支持を集めた。『日々ロック』(14)、『ジョーカー・ゲーム』(15)でメジャーシーンに進出。『22年目の告白 私が殺人犯です』(17)は3週連続興収1位を記録するヒット作となった。その他の主な監督作に『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンローロは鳴り止まないっ』(11)、『太陽』(16)など。『SRサイタマノラッパー マイクの細道』『22年目の告白』が共に現在DVDが絶賛リリース中。

「冬コミなんで今月休会します!」オタク婚活・とら婚ならではのユニークな休会理由

 2017年2月に事業を開始した婚活事業「とら婚」。とら婚の企画責任者・野村晶二郎氏に前編(参照記事)からオタク婚活について話を伺っている。後編では男女間のギャップの違いや、結婚相談所が人気になる季節、とら婚ならではのユニークな休会理由など、オタク婚活について伺っていく。

■若い美人に惹かれてしまう男性、                     一方で女性の好みは「自分の年齢プラマイ3歳」という差

――前編では男性と女性とで、子どもが欲しいか、の価値観で若干差が出ると伺いました。男性、女性がそれぞれしがちな傾向といいますか、こうすると婚活は難しくなってしまう……、ということはありますか?

野村晶二郎氏(以下、野村) 女性は現実的な方が多いですね。「年収800万以上じゃないと無理」みたいな方はおられず、堅実です。一方男性では、どうしても年下の美人に惹かれてしまう、という方が多いですね。

――私は他の結婚相談所にも取材したことがありますが、「男性は若い美人が大好き」は本当によく聞きますね。女性側が思う「どうせ男は若くてきれいな女性が好きなんでしょ」みたいな感じよりもはるかに強固といいますか。

野村 若い美人の女性と、若くない男性でうまくいくケースもありますので、もちろん100%ダメ、というわけではありません。ただ、多くの女性は自分のご年齢よりプラスマイナス3歳くらいの、同世代の方を望まれますね。そうなると、アラフォーくらいの男性が、10歳以上年下の綺麗な女性を望まれたとしても、なかなか難しいというのが現状です。

――「若い美人」という相手の超最強カードと渡り合えるようなカードがこっちにもあるのか? という話ですよね。ただ、そのような「若い美人希望」な男性に、幅広く見てみよう、という声は届きにくいのではないかとも思いますが。

野村 理想全てをあきらめるのではなく、「理想」と「相手からアプローチが来たら会ってみる人」と「私どもアドバイザーから見て、実は相性のいい方」を組み合わせて提案しております。

 

■「子にオタクの英才教育を施す」or「子どもは子どもで好きに生きろ?」

――オタク婚活においては「同じ作品を一緒に楽しみたい」という人もいるでしょうが、「私のオタク趣味はそっとしておいてほしい」という人もいそうです。会員の方を見るとどのような傾向を感じますか?

野村 もちろん100%ではないですが、男性は「今好きなものを一緒に楽しんで欲しい、そうなると嬉しい」という方が多い傾向ですね。女性は切り離しているというか現実的で、「オタク関連であろうがなかろうが、夫婦で楽しめるものを新しく作れば良い」という方が多いです。

 また、そもそも「男女両方が好きなコンテンツ」ってあまり多くないですからね。「女性向け」「男性向け」が明確に分かれたコンテンツも多いため、一方が「趣味の詳細に渡るまでの共有」にこだわりすぎると、成功率が少し低くなってしまうと考えていて、「オタク婚活に対する理想」と「男女の考えを踏まえた現実」には差があるように感じます。

――男女両方に人気がある作品だけれど、男性はエロ、女性は腐女子目線で見てる、なんてこともありますしね。性的な目で見たくない「聖域」な作品やキャラクターもいるでしょうし、なまじ好きな作品が合うときほど、その見方が火種になりそうです。

野村 また、当社はオタク婚活ですが、いざ実際に結婚し、お相手の方と毎日生活をしていく、となれば自分の中の「オタクであること」以外の方に触れる時間の方が長いですから。ですので、同じ作品を楽しんでいることや、作品に対する価値観が一致、ということも大切だと思いますが、それと同じぐらいに感性や人間性の一致が大切だと感じます。

 

■オタク婚活だからってゴスロリで参加してはいけない

――とら婚さんのホームページでは、オタク婚活のパーティーだからといってアニメのTシャツなどを着て参加するのは避けたほうが良い、というコラム(参照記事「オタク婚活パーティで勝つコツについて」)がありましたね。実際そういう服装の方がいるのでしょうか?

野村 幸いといったら失礼かもしれませんが、とら婚の会員の方は常識的な服装をされています。ただ、他社さんのパーティーですと、アニメのキャラが大きく描かれたTシャツやゴスロリといった服装をされている方を実際見かけたことがありますし、やはりこういった服装をするのは「私は変わるつもりはない」というメッセージを暗に発してしまい、常識のない方と捉えられてしまう可能性があります。時と場合を考えることが大切だと思います。

――「私は変わらない! そんな私をあなたは受け入れてくれるよね?」というのは、相手に、自分の全てを受け入れてくれる「お母さん」のような包容力を求めていますよね。

 

■結婚相談所を12月に休会する理由

――とら婚さんでは結婚相談所以外にパーティーも開催されていますが、パーティーは非会員でも参加できるんですよね。

野村 はい。あまり大人数にせず、「少人数でじっくり話し、人となりが知れるようなパーティー」をモットーに開催しています。

 なお、現在サテライトオフィスは名古屋にありますが、パーティーは東京のみで開催しています。本来、コミケなどの大型イベントは地方在住の方も東京にいらっしゃるのでパーティー開催のチャンスでもあるのですが、コミケの日は疲れてしまってその後パーティーで頑張る気力がないだろう、ということで、今のところ開催には慎重になっています。

――イベントで燃え尽きた状態で当日夜、再度気合を入れなおす、というのはきつそうですね。

野村 ちなみに一般的な結婚相談所は10月以降会員が増え、入会のピークは1月と言われています。ボーナスが12月に入り、クリスマスのイベントなどもあり、そして年末で帰省し親にあれこれ言われ……、というのも大きいのでしょう。

――それでは、とら婚さんもこれからが忙しい時期でしょうか。

野村 ただ、当相談所の場合は11、12月はコミケ前の追い込みがあるから休会する、という会員さんもいらっしゃいますね(とら婚では1カ月単位の休会が可能)。クリスマスに向けて婚活に頑張って欲しい時期でもあるのですが、こればかりは仕方ないですね。

――11月から休むということは、描く側なんですね。

野村 はい。描かれる方も結構多いですよ。ちなみに男性の会員さんは冬コミ前に休会される方が多く、女性の会員さんはコミケなどの大型イベントよりも、ターゲットのジャンルの同人誌即売会が開催される時期に休会される方が多いです。

 また、オンラインゲームをされる方には、「今月は大型イベントを走る(※イベントに全力投球する、の意味)から休会する」という方もいらっしゃいますね。

* * *

 婚活に限らず、合コンなども含む出会いの場でしょっぱい結果に終わったときに、精神的に何が堪えるかと言えば、「しょっぱい結果に終わった」ということよりもむしろ「こんなしょっぱい結果に終わったのに張り切って参加した数時間前の自分への自己嫌悪」という第二の矢だ。しかし第二の矢は自分で自分自身にあえて刺しているのであり、前向きな未来のために頑張った行いは美しいものであり、責めるなんてもってのほかだ。

「コミケがあるから(ソシャゲの大型イベントがあるから)今月は休む」というのは、婚活とオタ活のメリハリが効いていて、婚活一本に情熱をかけすぎる→悲壮感が出てきて辛くなる→相手にもそれが伝わりますますうまくいかなくなる、という悪循環を避けられる冴えたやり方だ。とら婚からのさらなるカップル誕生を願いたい。
(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

■オタクに寄り添う結婚相談サービス『とら婚』
秋葉原オフィス所在地: 東京都千代田区外神田4-7-3 秋葉原虎ビル(旧若松通商ビル)8F
名古屋オフィス所在地: 名古屋市中村区竹橋町5-5 さかえビル 2F
営業時間:【平日】12:00~20:00 【休日】11:00~19:00 ※予約制
電話番号: 080-8760-3054
定休日: 無休
公式サイト: https://toracon.jp/
※詳しくは公式 WEB サイトまたはお電話でお問い合わせください。
『とら婚』店舗から遠隔地に住んでいてもご相談できるように、Skype や Google ハングアウトによる WEB 面談サービスを提供しています。

 ■石徹白未亜 著書
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』(CCCメディアハウス)

「冬コミなんで今月休会します!」オタク婚活・とら婚ならではのユニークな休会理由

 2017年2月に事業を開始した婚活事業「とら婚」。とら婚の企画責任者・野村晶二郎氏に前編(参照記事)からオタク婚活について話を伺っている。後編では男女間のギャップの違いや、結婚相談所が人気になる季節、とら婚ならではのユニークな休会理由など、オタク婚活について伺っていく。

■若い美人に惹かれてしまう男性、                     一方で女性の好みは「自分の年齢プラマイ3歳」という差

――前編では男性と女性とで、子どもが欲しいか、の価値観で若干差が出ると伺いました。男性、女性がそれぞれしがちな傾向といいますか、こうすると婚活は難しくなってしまう……、ということはありますか?

野村晶二郎氏(以下、野村) 女性は現実的な方が多いですね。「年収800万以上じゃないと無理」みたいな方はおられず、堅実です。一方男性では、どうしても年下の美人に惹かれてしまう、という方が多いですね。

――私は他の結婚相談所にも取材したことがありますが、「男性は若い美人が大好き」は本当によく聞きますね。女性側が思う「どうせ男は若くてきれいな女性が好きなんでしょ」みたいな感じよりもはるかに強固といいますか。

野村 若い美人の女性と、若くない男性でうまくいくケースもありますので、もちろん100%ダメ、というわけではありません。ただ、多くの女性は自分のご年齢よりプラスマイナス3歳くらいの、同世代の方を望まれますね。そうなると、アラフォーくらいの男性が、10歳以上年下の綺麗な女性を望まれたとしても、なかなか難しいというのが現状です。

――「若い美人」という相手の超最強カードと渡り合えるようなカードがこっちにもあるのか? という話ですよね。ただ、そのような「若い美人希望」な男性に、幅広く見てみよう、という声は届きにくいのではないかとも思いますが。

野村 理想全てをあきらめるのではなく、「理想」と「相手からアプローチが来たら会ってみる人」と「私どもアドバイザーから見て、実は相性のいい方」を組み合わせて提案しております。

 

■「子にオタクの英才教育を施す」or「子どもは子どもで好きに生きろ?」

――オタク婚活においては「同じ作品を一緒に楽しみたい」という人もいるでしょうが、「私のオタク趣味はそっとしておいてほしい」という人もいそうです。会員の方を見るとどのような傾向を感じますか?

野村 もちろん100%ではないですが、男性は「今好きなものを一緒に楽しんで欲しい、そうなると嬉しい」という方が多い傾向ですね。女性は切り離しているというか現実的で、「オタク関連であろうがなかろうが、夫婦で楽しめるものを新しく作れば良い」という方が多いです。

 また、そもそも「男女両方が好きなコンテンツ」ってあまり多くないですからね。「女性向け」「男性向け」が明確に分かれたコンテンツも多いため、一方が「趣味の詳細に渡るまでの共有」にこだわりすぎると、成功率が少し低くなってしまうと考えていて、「オタク婚活に対する理想」と「男女の考えを踏まえた現実」には差があるように感じます。

――男女両方に人気がある作品だけれど、男性はエロ、女性は腐女子目線で見てる、なんてこともありますしね。性的な目で見たくない「聖域」な作品やキャラクターもいるでしょうし、なまじ好きな作品が合うときほど、その見方が火種になりそうです。

野村 また、当社はオタク婚活ですが、いざ実際に結婚し、お相手の方と毎日生活をしていく、となれば自分の中の「オタクであること」以外の方に触れる時間の方が長いですから。ですので、同じ作品を楽しんでいることや、作品に対する価値観が一致、ということも大切だと思いますが、それと同じぐらいに感性や人間性の一致が大切だと感じます。

 

■オタク婚活だからってゴスロリで参加してはいけない

――とら婚さんのホームページでは、オタク婚活のパーティーだからといってアニメのTシャツなどを着て参加するのは避けたほうが良い、というコラム(参照記事「オタク婚活パーティで勝つコツについて」)がありましたね。実際そういう服装の方がいるのでしょうか?

野村 幸いといったら失礼かもしれませんが、とら婚の会員の方は常識的な服装をされています。ただ、他社さんのパーティーですと、アニメのキャラが大きく描かれたTシャツやゴスロリといった服装をされている方を実際見かけたことがありますし、やはりこういった服装をするのは「私は変わるつもりはない」というメッセージを暗に発してしまい、常識のない方と捉えられてしまう可能性があります。時と場合を考えることが大切だと思います。

――「私は変わらない! そんな私をあなたは受け入れてくれるよね?」というのは、相手に、自分の全てを受け入れてくれる「お母さん」のような包容力を求めていますよね。

 

■結婚相談所を12月に休会する理由

――とら婚さんでは結婚相談所以外にパーティーも開催されていますが、パーティーは非会員でも参加できるんですよね。

野村 はい。あまり大人数にせず、「少人数でじっくり話し、人となりが知れるようなパーティー」をモットーに開催しています。

 なお、現在サテライトオフィスは名古屋にありますが、パーティーは東京のみで開催しています。本来、コミケなどの大型イベントは地方在住の方も東京にいらっしゃるのでパーティー開催のチャンスでもあるのですが、コミケの日は疲れてしまってその後パーティーで頑張る気力がないだろう、ということで、今のところ開催には慎重になっています。

――イベントで燃え尽きた状態で当日夜、再度気合を入れなおす、というのはきつそうですね。

野村 ちなみに一般的な結婚相談所は10月以降会員が増え、入会のピークは1月と言われています。ボーナスが12月に入り、クリスマスのイベントなどもあり、そして年末で帰省し親にあれこれ言われ……、というのも大きいのでしょう。

――それでは、とら婚さんもこれからが忙しい時期でしょうか。

野村 ただ、当相談所の場合は11、12月はコミケ前の追い込みがあるから休会する、という会員さんもいらっしゃいますね(とら婚では1カ月単位の休会が可能)。クリスマスに向けて婚活に頑張って欲しい時期でもあるのですが、こればかりは仕方ないですね。

――11月から休むということは、描く側なんですね。

野村 はい。描かれる方も結構多いですよ。ちなみに男性の会員さんは冬コミ前に休会される方が多く、女性の会員さんはコミケなどの大型イベントよりも、ターゲットのジャンルの同人誌即売会が開催される時期に休会される方が多いです。

 また、オンラインゲームをされる方には、「今月は大型イベントを走る(※イベントに全力投球する、の意味)から休会する」という方もいらっしゃいますね。

* * *

 婚活に限らず、合コンなども含む出会いの場でしょっぱい結果に終わったときに、精神的に何が堪えるかと言えば、「しょっぱい結果に終わった」ということよりもむしろ「こんなしょっぱい結果に終わったのに張り切って参加した数時間前の自分への自己嫌悪」という第二の矢だ。しかし第二の矢は自分で自分自身にあえて刺しているのであり、前向きな未来のために頑張った行いは美しいものであり、責めるなんてもってのほかだ。

「コミケがあるから(ソシャゲの大型イベントがあるから)今月は休む」というのは、婚活とオタ活のメリハリが効いていて、婚活一本に情熱をかけすぎる→悲壮感が出てきて辛くなる→相手にもそれが伝わりますますうまくいかなくなる、という悪循環を避けられる冴えたやり方だ。とら婚からのさらなるカップル誕生を願いたい。
(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

■オタクに寄り添う結婚相談サービス『とら婚』
秋葉原オフィス所在地: 東京都千代田区外神田4-7-3 秋葉原虎ビル(旧若松通商ビル)8F
名古屋オフィス所在地: 名古屋市中村区竹橋町5-5 さかえビル 2F
営業時間:【平日】12:00~20:00 【休日】11:00~19:00 ※予約制
電話番号: 080-8760-3054
定休日: 無休
公式サイト: https://toracon.jp/
※詳しくは公式 WEB サイトまたはお電話でお問い合わせください。
『とら婚』店舗から遠隔地に住んでいてもご相談できるように、Skype や Google ハングアウトによる WEB 面談サービスを提供しています。

 ■石徹白未亜 著書
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』(CCCメディアハウス)

「男はもう救いようがないと思ってる」漫画家・鳥飼茜に聞いた、“女と男”を描くワケ

 女を描きながらも、やはり避けては通れないのは男の存在だ。世界の半分を占めるこの「他者」を、漫画家・鳥飼茜はどう描いているのだろう。後編では「男と女」に関して、そして愛するマンガに関して、女子マンガ研究家・小田真琴が話を聞いた。

前編はこちら:女社会の“本質”と母親という女について

鳥飼茜(とりかい・あかね)
大阪府出身。2004年、「別冊少女フレンド DX ジュリエット」(講談社)でデビュー。2010年に「モーニング・ツー」(講談社)で連載を開始した『おはようおかえり』(講談社)が評判となって一躍人気作家となる。代表作に『先生の白い嘘』(講談社)、『地獄のガールフレンド』(祥伝社)など。女性の心の機微を描き出す力はマンガ界でも随一。現在は「SPA!」(扶桑社)、「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)、「Maybe!」(小学館)でマンガ作品を連載中。

 かの萩尾望都にも激賞され、各所で話題となり、今や鳥飼茜の代表作となった『先生の白い嘘』。性の暴力性や愛することの困難を描き、最後はレイプ加害者である早藤を単純に罰することなく、被害者の感動的な演説でもって見事にまとめあげた。掛け値なしの大傑作だ。

――『先生の白い嘘』が完結しました。最後は早藤を罰するような展開にもできたはずですが、そうしなかったのはなぜですか?

鳥飼茜氏(以下、鳥飼) 賛否両論でしたね。当初は早藤を“阿部定”的な感じにして、びしゃーって血が出て終わり、っていうラストを考えていたんです。そういうノワールっぽいものをやりたかったし、偽善的になるのだけはイヤだなと思っていたけど、結局は偽善的になってしまったという(笑)。どうですかね?

――いや、これは偽善ではないですよ! 最終盤の演説は感動的でした。

鳥飼 それは私を贔屓目で見てくれているから(笑)。エゴサーチしてますけど、だいたい4割はがっかりしてます。

――男を赦したように見える展開にでしょうか?

鳥飼 そういう意図はないんです。「クイック・ジャパン」の特集の中でマンガ家の入江喜和さんが「鳥飼作品の魅力は、怖いぐらいダメな男性陣と、美しくて女くさい女性陣。『先生の白い嘘』の早藤や、『おんなのいえ』の川谷さんは、一見真逆に見えるけど、ふたりとも女性に甘えているという根っこは一緒」ってコメントをくださって、私はそれに衝撃を受けたんですね。私は「男はひたすら甘え倒す生き物である」というところから離脱しきれないんです。なんかもう救いようがないって思ってるんです。

――逆に、女には救いがある?

鳥飼 女の人は自分で立ち直れる力があるんで。パートナーがいなきゃだめ、とか、スペックのいい人と結婚しなきゃだめ、とか、そういうのは飽くまでも外部の声で、攪乱されがちではあるんですけど、ほかの女の人と比べたりとか、本当は別にしたくもないんですよ。本来的には、女の人は強いって思っていて。「強い」って言うと陳腐だな……ハードボイルドなんですよ。男の人に対してそれは感じない。「お前らいつもいいとこで逃げやがって」っていう。

――早藤を赦したわけでも罰したわけでもない?

鳥飼 早藤があそこでチンコ切られたからって、それは絵的にはスカッとするでしょうけど、例えば極悪人が死刑になればスカッとするんですかね。物理的な罰がもたらすスッキリは一瞬のことで、本質的な解決ではないと私は思うんです。死刑にしたいって気持ちはわかりますけどね。「最悪のまま生き抜く」っていう方が、罰としては意味があるのではと。

torikaakane-02main

――女性にとって男は敵なんでしょうか。

鳥飼 私の場合恋愛って、いつも最終的には、勝手に女軍vs男軍みたいになるんですよ。家庭や育ってきた環境の中とかで男と折り合いをつけてきた経験がないと、いつも「なぜだ?」ってなっちゃうんですよね。理屈じゃない部分がどうしてもわからなくなる。そういうときに、女が身を引いた方がトクだと経験則から気づいても納得できず 、自分の体の中に「なんで私が引かなきゃいけないの?」とか、「なんでそういうところに薄着で行った女が悪いって言われなきゃいけないの?」とか、そういう「なんで?」に、いつまでも折り合いがつけられなくなる。そうすると男の人が生まれ育った文化とか、家族とか、全部ひっくるめて否定するようになっていくから、「だって俺はこういうふうに生きてきたんだもん」という相手男性に対して、女軍vs男軍って構図になっちゃうんですよね。どうやったら戦争じゃなくなるんだろうっていうのは、いつも思います。

――休戦状態を続けること、ですかねえ……。

鳥飼 その休戦状態を続けるために、男の人をどうやってそこに持ち込むかっていうと、お互いに満足している状態というか、ストレスのない状態を続けることに尽きるんですよね。ほんとにそれしか答えがなくて、どんなに満たされた人にも、やっぱり男女間の歪みってあるから、絶対戦争になるんですよ。どうしても、そういう消極的な方法になっちゃうのかなあ。終戦はしないですよね。

――私の場合は子どもができて休戦状態が安定しました。

鳥飼 子どもができて、より戦争が悪化する場合もありますからね。私がそうでしたけど。なぜ女ばかりがこんな仕事しなければならないのか、って気持ちに簡単になりますから。特に子どもを持つ女の人は、「お前は女である」ってことを世の中から強いられまくるんですよ。性に縛られず、自由に生きてきたつもりだったけど、自分はまったく女性なんだって。そういうときにお互いが休戦するしかないっていうのは、処方箋としてはもうそれしかない。

 Twitterでも情報を発信している鳥飼だが( @torikaiakane )、エゴサーチで自著の感想を拾い読んだりすることも多いそうだ。しかし曖昧模糊とした「感想」に振り回されるのではなく、本質的なところでなにが原因だったのかを探る。

――先ほどちょっとお話がありましたが、エゴサーチ、けっこうなさるんですね。

鳥飼 いまだにします……。こうやって本が出たらなおのことです。仕事の手は止めませんよ(笑)。凹んだりすることもありますけど、凹むまで叩かれるほどは売れてもいないですから。嫌な気分にはなりますね。「自分的にはわからなかった」とか、それはそうでしょうね、別のものを期待していたならそうでしょうね、っていう。

――創作に反映したりしますか?

鳥飼 生かしますね。『おはようおかえり』(講談社)のときも、最後に主人公の一保がいきなり違う女と一緒になっていたことに対して、散々言われましたよ。私はめっちゃくちゃいいと思っていたのに。古谷実先生の『シガテラ』(同)の終わり方がすごい好きで、あれに完全にかぶらせたんですけど。こんなにも思いを込めて付き合った人と、どこかで別れが来て、同じくらい好きな人がいきなり現れる、っていうのが、それこそが人間の姿だと思ったから。でも、やっぱりそれに納得いかない人がいて、そういう人もいるんだな、とそのときは思ったけど、だけどずっと気にしてきて、そしたら納得いかないというのは、もしかしたらキャラクターの気持ちの変遷を見たかったのかもしれないな、って気づいて。心変わりは基本的に許せないんでしょうけど、でもそれより前に、なにがあったのかっていうのをもっと見せなきゃいけなかったんだな、とか、思うところはあります。

――『おんなのいえ』もそうでしたが、鳥飼作品の「そして人生はつづく」的な終わり方がとても好きです。

鳥飼 マンガが終わっても人生は終わらないから。でも、マンガが終わったときの感じって寂しいじゃないですか。もう一個の世界が終わっちゃった。それはどこか現実と同列で描いてるような気があるので、スムーズにランディングさせたいというのはありますかね。

 鳥飼作品においては例えば両思いになってめでてたしめでたし、といったわかりやすい結末はない。かといって後味の悪いバッドエンドでもない。ただ淡々と続く日常を、これからもその中を過ごしていく人間の姿を、もう大丈夫だろうというところまで描いたら、そっと手を放すのだ。

――少なくとも少女マンガ的なセオリーからは外れていますよね。

鳥飼 少女マンガである、という感覚が、私にはないんですよね。でも女性のマンガ家で、女性を描くと、少女マンガ家ってつけられるのね。「少女マンガ家が初の青年誌連載!」とか、いまだにキャッチで書かれるのは、そもそも「初」ではないし(笑)、そこで「少女マンガ」っていうものに期待されているものっていうか、なんで人は「少女マンガ」って名前つけたがるんだろう、って、不思議に思います。女の生き方を描いてるのであって、少女の生き方は描いてないんですよ。

――センセーショナルな効果があるんですかね?

鳥飼 惰性でつけているだけでしょうけど、「ふんっ」て思うときがあるんですよ。最初は「別冊フレンド」でデビューしたから、そのときは仕方ないとしても、いま少女マンガ描いてるなって思うのは「Maybe!」(小学館)の『前略、前身の君』くらい。世の中の「少女マンガ」の定義ってどういうことなんですかね?

――さまざまな定義がありますが、例えば初恋の物語ですね。初恋が成就してめでたしめでたしとなるまでの物語。

鳥飼 実際はそんなことなくて、その後、何ターンもやりますよね(笑)。今の王道の少女マンガも昔と大して変わっていないんですか? 基本的に少女マンガの女の子って受け身のイメージですけど、そこはあんまり変わらない?

――いや、変わってます。能動的な女性像も数多く描かれています。

鳥飼 だったら描けるかもしれない(笑)。どうだろう、描いてみようかな(笑)。担当編集陣が「また鳥飼さんが無謀な仕事を! こっちにしわ寄せが!」みたいなこと言いそう。

――以前に「なかよし」(講談社)で安野モヨコ先生も描いていらっしゃったこともあるのでぜひ!

鳥飼 『シュガシュガルーン』(講談社)! あれはよかったですよね。ああいうところであれをやったのは意味がある。

――やはり安野先生はお好きですか?

鳥飼 好きでしたし、最近『ハッピー・マニア』(祥伝社)の続編(『後ハッピーマニア』)が始まって、これはやばいと思って、読む前に全巻揃え直したんですよ。私、あの本自体が大好きなんです。カバーの背景に強い色がバシッとあって、扉には鉛筆描きの絵があって。ほんと好き。読み直したらむちゃくちゃおもしろかったです。

 『ハッピー・マニア』の続編となる『後ハッピーマニア』は「フィール・ヤング」2017年8月号(祥伝社)に掲載され、あまりの反響に翌月の9月号にも再掲載された。公式のアナウンスでは来年にもつづきが描かれる予定だ。45歳になった主人公・シゲタが、5年間絶交していたという親友・フクちゃんのもとを訪れ、唐突に夫婦の危機を告白し始めるというストーリー。全員が順調に加齢していて感慨深い。

――具体的にはどういうところがお好きなんですか。

鳥飼 言葉のバリエーションがすごいですよね。あと安野先生は、逆に少年マンガみたいなところがあるんですよ。恋愛マンガなのにプロレスみたいなんです。構図がこう、下からのアングルになっ てて、タカハシにシゲタがワザを決めてドーン! みたいな(笑)。いま見てもむちゃくちゃかっこいい。

――新作、すごいおもしろかったですよね。

鳥飼 『後ハッピーマニア』がものすごくスムーズにランディングっていうか、シゲタそのままか! フクちゃんもそのままか! っていう、あの時のテンションですぐにすっと描けるっていうのは、なんだろうかと思いますね。私はその前に、『東京ラブストーリー』(小学館)の続編(『東京ラブストーリー After 25 years』小学館)を読んで、実はちょっと物足りなかったんですよ。元の作品がめちゃくちゃおもしろかったから。ちょっとファンタジーだなって思っちゃった。なんかいい感じにしてんな~って。もっと本物の中年ください! って(笑)。

――『後ハッピーマニア』は、しわしわ感がすごかったですよね。

鳥飼 中年感がすげえなと。ヒデキが超しわしわになったり。タカハシが浮気したら本気なんだなーとか。この女にはかなわない! シゲタには絶対勝てない人! 『ハッピー・マニア』の話が止まらない(笑)。しかも続きが来年! 安野先生、ちっとも丸くなってないんだな。作家としての地面が固い! 地盤がいい! 土地が高い(笑)!

――鳥飼先生も地盤は固いですよ!

鳥飼 脆弱ですよ……地滑り起こしますよ……。『先生の白い嘘』が終わったころ、けっこう鬱になっちゃったんですよね。なんでかなあって振り返ると、『先生の白い嘘』が終わったのがデカかったのに、それに気づかなかったんですよね。自分の幹みたいなものがなくなったんじゃないかと怖くなったのに、それを「怖い」って自覚する前に、体と心に出たんじゃないですかね。そのときは理由はわからなかったけど、たぶんいま思うとそうなんです。

――作品ごとに絵がけっこう変わりますよね。

鳥飼 いいんですかね? 追っかけてる方からするとがっかりみたいなのがあるのかなって思いますけど。

――たとえば、くらもちふさこ先生もころころ絵が変わりますけど、「絵柄を変えるっていうより、毎回どうしたらうまくなるんだろうっていつもいじってて、そうしたら気づくと変わってるんです。現状に満足してないんですよ」とインタビューでおっしゃっていました。

鳥飼 すっげーわかる! くらもち先生の絵は本当に変わるし、私はくらもちさんがああやってるからいいんだ、みたいなところがあります。『先生の白い嘘』では最後の方まで絵が、ほんとイヤだったんです。なんでこんなにデッサンに囚われなきゃいけないんだって。学校でやってきちゃってるから、そこまでデッサンからはずれたものは描けないんですよ。呪いみたいなものがあって、そこからどれだけ自由になれるかって考えたときに、くらもち先生がクロッキーみたいな絵を描くじゃないですか。ああ、これでいいんだ、って。あれは手の可動域が広いんですよ。だからどこまでが正解の線か、って範囲が広いんです。たぶん描いてて気持ちいいんじゃないかなって。ああいうふうになりたいんです。

――『鳥飼茜の地獄でガールズトーク』(祥伝社)では文章もお書きになっていますが、マンガに限らず表現していきたいという欲望はありますか?

鳥飼 曖昧にしておきます(笑)。書けたらいいなって思いますけどね。私は絵もすぐに変えるたちだし、なんでも変えたがるから、それが吉と出るか凶と出るかはわからないんですけど、マンガに限るとも思っていないし、具体的にあれしたいこれしたいってのはないんですが、言いたいことはあるでしょうから、それに見合った形をどんどん新しい作品でできたらいいなって思います。もちろんマンガも描きますので読んでください(笑)。

*******

 「SPA!」に連載中の『ロマンス暴風域』は次巻で完結予定。「ダ・ヴィンチ」で不定期連載中の『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』は、女だけの架空の国を描いたファンタジー作品。未踏の領域を見つけては、躊躇なく踏み込んでいくその姿は、まさに現代を代表する作家にふさわしい。描きながら考え、考えながら描く。その作品にどうか注目してほしい。
(小田真琴)

「男はもう救いようがないと思ってる」漫画家・鳥飼茜に聞いた、“女と男”を描くワケ

 女を描きながらも、やはり避けては通れないのは男の存在だ。世界の半分を占めるこの「他者」を、漫画家・鳥飼茜はどう描いているのだろう。後編では「男と女」に関して、そして愛するマンガに関して、女子マンガ研究家・小田真琴が話を聞いた。

前編はこちら:女社会の“本質”と母親という女について

鳥飼茜(とりかい・あかね)
大阪府出身。2004年、「別冊少女フレンド DX ジュリエット」(講談社)でデビュー。2010年に「モーニング・ツー」(講談社)で連載を開始した『おはようおかえり』(講談社)が評判となって一躍人気作家となる。代表作に『先生の白い嘘』(講談社)、『地獄のガールフレンド』(祥伝社)など。女性の心の機微を描き出す力はマンガ界でも随一。現在は「SPA!」(扶桑社)、「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)、「Maybe!」(小学館)でマンガ作品を連載中。

 かの萩尾望都にも激賞され、各所で話題となり、今や鳥飼茜の代表作となった『先生の白い嘘』。性の暴力性や愛することの困難を描き、最後はレイプ加害者である早藤を単純に罰することなく、被害者の感動的な演説でもって見事にまとめあげた。掛け値なしの大傑作だ。

――『先生の白い嘘』が完結しました。最後は早藤を罰するような展開にもできたはずですが、そうしなかったのはなぜですか?

鳥飼茜氏(以下、鳥飼) 賛否両論でしたね。当初は早藤を“阿部定”的な感じにして、びしゃーって血が出て終わり、っていうラストを考えていたんです。そういうノワールっぽいものをやりたかったし、偽善的になるのだけはイヤだなと思っていたけど、結局は偽善的になってしまったという(笑)。どうですかね?

――いや、これは偽善ではないですよ! 最終盤の演説は感動的でした。

鳥飼 それは私を贔屓目で見てくれているから(笑)。エゴサーチしてますけど、だいたい4割はがっかりしてます。

――男を赦したように見える展開にでしょうか?

鳥飼 そういう意図はないんです。「クイック・ジャパン」の特集の中でマンガ家の入江喜和さんが「鳥飼作品の魅力は、怖いぐらいダメな男性陣と、美しくて女くさい女性陣。『先生の白い嘘』の早藤や、『おんなのいえ』の川谷さんは、一見真逆に見えるけど、ふたりとも女性に甘えているという根っこは一緒」ってコメントをくださって、私はそれに衝撃を受けたんですね。私は「男はひたすら甘え倒す生き物である」というところから離脱しきれないんです。なんかもう救いようがないって思ってるんです。

――逆に、女には救いがある?

鳥飼 女の人は自分で立ち直れる力があるんで。パートナーがいなきゃだめ、とか、スペックのいい人と結婚しなきゃだめ、とか、そういうのは飽くまでも外部の声で、攪乱されがちではあるんですけど、ほかの女の人と比べたりとか、本当は別にしたくもないんですよ。本来的には、女の人は強いって思っていて。「強い」って言うと陳腐だな……ハードボイルドなんですよ。男の人に対してそれは感じない。「お前らいつもいいとこで逃げやがって」っていう。

――早藤を赦したわけでも罰したわけでもない?

鳥飼 早藤があそこでチンコ切られたからって、それは絵的にはスカッとするでしょうけど、例えば極悪人が死刑になればスカッとするんですかね。物理的な罰がもたらすスッキリは一瞬のことで、本質的な解決ではないと私は思うんです。死刑にしたいって気持ちはわかりますけどね。「最悪のまま生き抜く」っていう方が、罰としては意味があるのではと。

torikaakane-02main

――女性にとって男は敵なんでしょうか。

鳥飼 私の場合恋愛って、いつも最終的には、勝手に女軍vs男軍みたいになるんですよ。家庭や育ってきた環境の中とかで男と折り合いをつけてきた経験がないと、いつも「なぜだ?」ってなっちゃうんですよね。理屈じゃない部分がどうしてもわからなくなる。そういうときに、女が身を引いた方がトクだと経験則から気づいても納得できず 、自分の体の中に「なんで私が引かなきゃいけないの?」とか、「なんでそういうところに薄着で行った女が悪いって言われなきゃいけないの?」とか、そういう「なんで?」に、いつまでも折り合いがつけられなくなる。そうすると男の人が生まれ育った文化とか、家族とか、全部ひっくるめて否定するようになっていくから、「だって俺はこういうふうに生きてきたんだもん」という相手男性に対して、女軍vs男軍って構図になっちゃうんですよね。どうやったら戦争じゃなくなるんだろうっていうのは、いつも思います。

――休戦状態を続けること、ですかねえ……。

鳥飼 その休戦状態を続けるために、男の人をどうやってそこに持ち込むかっていうと、お互いに満足している状態というか、ストレスのない状態を続けることに尽きるんですよね。ほんとにそれしか答えがなくて、どんなに満たされた人にも、やっぱり男女間の歪みってあるから、絶対戦争になるんですよ。どうしても、そういう消極的な方法になっちゃうのかなあ。終戦はしないですよね。

――私の場合は子どもができて休戦状態が安定しました。

鳥飼 子どもができて、より戦争が悪化する場合もありますからね。私がそうでしたけど。なぜ女ばかりがこんな仕事しなければならないのか、って気持ちに簡単になりますから。特に子どもを持つ女の人は、「お前は女である」ってことを世の中から強いられまくるんですよ。性に縛られず、自由に生きてきたつもりだったけど、自分はまったく女性なんだって。そういうときにお互いが休戦するしかないっていうのは、処方箋としてはもうそれしかない。

 Twitterでも情報を発信している鳥飼だが( @torikaiakane )、エゴサーチで自著の感想を拾い読んだりすることも多いそうだ。しかし曖昧模糊とした「感想」に振り回されるのではなく、本質的なところでなにが原因だったのかを探る。

――先ほどちょっとお話がありましたが、エゴサーチ、けっこうなさるんですね。

鳥飼 いまだにします……。こうやって本が出たらなおのことです。仕事の手は止めませんよ(笑)。凹んだりすることもありますけど、凹むまで叩かれるほどは売れてもいないですから。嫌な気分にはなりますね。「自分的にはわからなかった」とか、それはそうでしょうね、別のものを期待していたならそうでしょうね、っていう。

――創作に反映したりしますか?

鳥飼 生かしますね。『おはようおかえり』(講談社)のときも、最後に主人公の一保がいきなり違う女と一緒になっていたことに対して、散々言われましたよ。私はめっちゃくちゃいいと思っていたのに。古谷実先生の『シガテラ』(同)の終わり方がすごい好きで、あれに完全にかぶらせたんですけど。こんなにも思いを込めて付き合った人と、どこかで別れが来て、同じくらい好きな人がいきなり現れる、っていうのが、それこそが人間の姿だと思ったから。でも、やっぱりそれに納得いかない人がいて、そういう人もいるんだな、とそのときは思ったけど、だけどずっと気にしてきて、そしたら納得いかないというのは、もしかしたらキャラクターの気持ちの変遷を見たかったのかもしれないな、って気づいて。心変わりは基本的に許せないんでしょうけど、でもそれより前に、なにがあったのかっていうのをもっと見せなきゃいけなかったんだな、とか、思うところはあります。

――『おんなのいえ』もそうでしたが、鳥飼作品の「そして人生はつづく」的な終わり方がとても好きです。

鳥飼 マンガが終わっても人生は終わらないから。でも、マンガが終わったときの感じって寂しいじゃないですか。もう一個の世界が終わっちゃった。それはどこか現実と同列で描いてるような気があるので、スムーズにランディングさせたいというのはありますかね。

 鳥飼作品においては例えば両思いになってめでてたしめでたし、といったわかりやすい結末はない。かといって後味の悪いバッドエンドでもない。ただ淡々と続く日常を、これからもその中を過ごしていく人間の姿を、もう大丈夫だろうというところまで描いたら、そっと手を放すのだ。

――少なくとも少女マンガ的なセオリーからは外れていますよね。

鳥飼 少女マンガである、という感覚が、私にはないんですよね。でも女性のマンガ家で、女性を描くと、少女マンガ家ってつけられるのね。「少女マンガ家が初の青年誌連載!」とか、いまだにキャッチで書かれるのは、そもそも「初」ではないし(笑)、そこで「少女マンガ」っていうものに期待されているものっていうか、なんで人は「少女マンガ」って名前つけたがるんだろう、って、不思議に思います。女の生き方を描いてるのであって、少女の生き方は描いてないんですよ。

――センセーショナルな効果があるんですかね?

鳥飼 惰性でつけているだけでしょうけど、「ふんっ」て思うときがあるんですよ。最初は「別冊フレンド」でデビューしたから、そのときは仕方ないとしても、いま少女マンガ描いてるなって思うのは「Maybe!」(小学館)の『前略、前身の君』くらい。世の中の「少女マンガ」の定義ってどういうことなんですかね?

――さまざまな定義がありますが、例えば初恋の物語ですね。初恋が成就してめでたしめでたしとなるまでの物語。

鳥飼 実際はそんなことなくて、その後、何ターンもやりますよね(笑)。今の王道の少女マンガも昔と大して変わっていないんですか? 基本的に少女マンガの女の子って受け身のイメージですけど、そこはあんまり変わらない?

――いや、変わってます。能動的な女性像も数多く描かれています。

鳥飼 だったら描けるかもしれない(笑)。どうだろう、描いてみようかな(笑)。担当編集陣が「また鳥飼さんが無謀な仕事を! こっちにしわ寄せが!」みたいなこと言いそう。

――以前に「なかよし」(講談社)で安野モヨコ先生も描いていらっしゃったこともあるのでぜひ!

鳥飼 『シュガシュガルーン』(講談社)! あれはよかったですよね。ああいうところであれをやったのは意味がある。

――やはり安野先生はお好きですか?

鳥飼 好きでしたし、最近『ハッピー・マニア』(祥伝社)の続編(『後ハッピーマニア』)が始まって、これはやばいと思って、読む前に全巻揃え直したんですよ。私、あの本自体が大好きなんです。カバーの背景に強い色がバシッとあって、扉には鉛筆描きの絵があって。ほんと好き。読み直したらむちゃくちゃおもしろかったです。

 『ハッピー・マニア』の続編となる『後ハッピーマニア』は「フィール・ヤング」2017年8月号(祥伝社)に掲載され、あまりの反響に翌月の9月号にも再掲載された。公式のアナウンスでは来年にもつづきが描かれる予定だ。45歳になった主人公・シゲタが、5年間絶交していたという親友・フクちゃんのもとを訪れ、唐突に夫婦の危機を告白し始めるというストーリー。全員が順調に加齢していて感慨深い。

――具体的にはどういうところがお好きなんですか。

鳥飼 言葉のバリエーションがすごいですよね。あと安野先生は、逆に少年マンガみたいなところがあるんですよ。恋愛マンガなのにプロレスみたいなんです。構図がこう、下からのアングルになっ てて、タカハシにシゲタがワザを決めてドーン! みたいな(笑)。いま見てもむちゃくちゃかっこいい。

――新作、すごいおもしろかったですよね。

鳥飼 『後ハッピーマニア』がものすごくスムーズにランディングっていうか、シゲタそのままか! フクちゃんもそのままか! っていう、あの時のテンションですぐにすっと描けるっていうのは、なんだろうかと思いますね。私はその前に、『東京ラブストーリー』(小学館)の続編(『東京ラブストーリー After 25 years』小学館)を読んで、実はちょっと物足りなかったんですよ。元の作品がめちゃくちゃおもしろかったから。ちょっとファンタジーだなって思っちゃった。なんかいい感じにしてんな~って。もっと本物の中年ください! って(笑)。

――『後ハッピーマニア』は、しわしわ感がすごかったですよね。

鳥飼 中年感がすげえなと。ヒデキが超しわしわになったり。タカハシが浮気したら本気なんだなーとか。この女にはかなわない! シゲタには絶対勝てない人! 『ハッピー・マニア』の話が止まらない(笑)。しかも続きが来年! 安野先生、ちっとも丸くなってないんだな。作家としての地面が固い! 地盤がいい! 土地が高い(笑)!

――鳥飼先生も地盤は固いですよ!

鳥飼 脆弱ですよ……地滑り起こしますよ……。『先生の白い嘘』が終わったころ、けっこう鬱になっちゃったんですよね。なんでかなあって振り返ると、『先生の白い嘘』が終わったのがデカかったのに、それに気づかなかったんですよね。自分の幹みたいなものがなくなったんじゃないかと怖くなったのに、それを「怖い」って自覚する前に、体と心に出たんじゃないですかね。そのときは理由はわからなかったけど、たぶんいま思うとそうなんです。

――作品ごとに絵がけっこう変わりますよね。

鳥飼 いいんですかね? 追っかけてる方からするとがっかりみたいなのがあるのかなって思いますけど。

――たとえば、くらもちふさこ先生もころころ絵が変わりますけど、「絵柄を変えるっていうより、毎回どうしたらうまくなるんだろうっていつもいじってて、そうしたら気づくと変わってるんです。現状に満足してないんですよ」とインタビューでおっしゃっていました。

鳥飼 すっげーわかる! くらもち先生の絵は本当に変わるし、私はくらもちさんがああやってるからいいんだ、みたいなところがあります。『先生の白い嘘』では最後の方まで絵が、ほんとイヤだったんです。なんでこんなにデッサンに囚われなきゃいけないんだって。学校でやってきちゃってるから、そこまでデッサンからはずれたものは描けないんですよ。呪いみたいなものがあって、そこからどれだけ自由になれるかって考えたときに、くらもち先生がクロッキーみたいな絵を描くじゃないですか。ああ、これでいいんだ、って。あれは手の可動域が広いんですよ。だからどこまでが正解の線か、って範囲が広いんです。たぶん描いてて気持ちいいんじゃないかなって。ああいうふうになりたいんです。

――『鳥飼茜の地獄でガールズトーク』(祥伝社)では文章もお書きになっていますが、マンガに限らず表現していきたいという欲望はありますか?

鳥飼 曖昧にしておきます(笑)。書けたらいいなって思いますけどね。私は絵もすぐに変えるたちだし、なんでも変えたがるから、それが吉と出るか凶と出るかはわからないんですけど、マンガに限るとも思っていないし、具体的にあれしたいこれしたいってのはないんですが、言いたいことはあるでしょうから、それに見合った形をどんどん新しい作品でできたらいいなって思います。もちろんマンガも描きますので読んでください(笑)。

*******

 「SPA!」に連載中の『ロマンス暴風域』は次巻で完結予定。「ダ・ヴィンチ」で不定期連載中の『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』は、女だけの架空の国を描いたファンタジー作品。未踏の領域を見つけては、躊躇なく踏み込んでいくその姿は、まさに現代を代表する作家にふさわしい。描きながら考え、考えながら描く。その作品にどうか注目してほしい。
(小田真琴)

とら婚炎上Twitter、「中の人」が語る!伝えたい、結婚にかける熱き想い

 2017年2月に事業を開始した婚活事業「とら婚」。事業開始から9ヵ月、成婚カップルは見込みも含め10名を達成している。とら婚Twitter公式アカウントのつぶやきは、時に炎上気味にまとめサイトやネットニュースに掲載されていたりもするが、つぶやきそのものはいたって正論だ。とら婚の企画責任者・野村晶二郎氏に、とら婚9ヵ月の歩みをはじめ、炎上についてもあれこれ聞いてみた。

■他の結婚相談所の「隠れオタク」を探せ!

――現在の「とら婚」の会員数を教えて下さい。

野村晶二郎氏(以下、野村) 会員数は全体で170名で、男女比は男性の方がやや多く、男性が110名ほどです。

 また、とら婚は日本最大級の結婚相談所ネットワークであるIBJ日本結婚相談所連盟に加盟しておりますので、他の結婚相談所に登録されている方のご紹介もできます。ですので、「とら婚の会員さん同士」のカップルも多くいらっしゃいますし、「とら婚の会員さん」と「他の結婚相談所に入っていて、オタク趣味のある方」との成婚事例もあるんですよ。(IBJ日本結婚相談所連盟の登録会員数は2017年10月時点で58,839名)

――「とら婚」に登録すると、IBJ日本結婚相談所連盟に加盟している他の結婚相談所に登録した方からも相手を探すことができるんですね。

野村 はい。IBJ日本結婚相談所連盟では定型のプロフィール記入フォームがあり、私たちのような加盟している結婚相談所の職員は、すべての登録者の方のプロフィールを見ることができます。

――「とら婚の会員さん」と「他の結婚相談所に入っていて、オタク趣味のある方」との成婚事例についてですが、その場合、他の結婚相談所に登録していた相手の方は、趣味欄に「オタク趣味があります」といったことを書いていたのでしょうか?

野村 他の相談所さんですと、残念ながら“オタク趣味を書くとマイナスになる!”と思われているところもまだ多いようです。中にはご本人が書いていても、アドバイザーによって止められ、修正させられるケースもあるようですね。ですので、「書いていなかった」方も含まれています。

――そうなると、他の結婚相談所の会員さんにオタク趣味があるかどうかをどうやって見極めるのでしょうか。

野村 何かしらのメッセージを残していただける方はそれでもいらっしゃいます。「年末は有明に行く」とかですね。

――分からない人には何が何やらでしょうね。分かる人に分かればいい、という潔さを感じます。

野村 ノウハウなので出せないのですが、実は「隠れオタ」のキーワードがいくつもあり、実際聞いてみると、オタクか、もしくはご理解ある方であることが多いですね。何より、とら婚の会員の方に向けアプローチを2回以上されている方がいたら、「この方はそうなのだろうな」と。そういう方のデータベースを独自に作っています。

 

■コミックエッセイ漫画が婚活の敷居を低くした

野村 最近は「オタクの婚活」「オタクの恋愛や結婚生活」をテーマにしたコミックエッセイ漫画が多くありますよね。そういった作品を読まれて、自分もそんな楽しい生活がしたい、と申し込まれる方も増えています。

――とら婚の登録者の年齢層はどのような感じでしょうか。

野村 男性は平均35.6歳、女性は平均すると31.2歳ほどですね。

――会員さんの結婚したい動機は何が多いのでしょうか。

野村 動機として挙げられることが多いのは「子どもが欲しい」ですが、「パートナーが欲しい」という方もいらっしゃいますね。男性で「子どもが欲しい」を挙げる方は女性より多い印象を受けますが、ただ、男性でも女性でも「子どもはどっちでもいい」という方もいらっしゃいます。しかし、周りの方に趣味をカミングアウトしていなかったり、そもそも職場等に異性がいなかったりして、出会いの機会が少ないことが共通しています。

■とら婚公式Twitter、「中の人」、語る

――御社のTwitterはたまに炎上されていますが、どなたが書かれているのでしょうか。

野村 「中の人」は変わることも多いので、「誰」と一概には言えません。Twitterは上限が140文字なので、伝えたいことをできるだけシンプルに呟いていくと、前後のつぶやきを省かれたり、伝えたかったことの一部だけが切り取られて、意図とは違うニュアンスでまとめサイトなどに掲載されてしまうために、きつく見えてしまったり意図をうまく伝えられなかったりするんですよね。

――一番燃えたのはどのつぶやきでしょうか。

野村 

は、ずいぶん賛否両論いただきましたね。

――でも、いたって正論ですよね。

野村 自分でも「これは耳が痛い人もいるかな」と思うときもありますが、それでもつぶやくのは次の3つの思いからです。

 まず一点目が「とら婚の会員の方や、今婚活をしている方の結婚できる可能性を上げたい」、二点目が「一人で婚活をされると視野が狭まりがちなので、視野を広げてよりよい婚活をしていただきたい」、三点目が「結婚したあとも不幸になって欲しくない」という思いがあります。

 当社は結婚相談所で、結婚はとても夢のあることだと思っていますが、「結婚=ゴール」ではないと考え、お相手の人生を背負う重いものでもあると捉えています。「オタクグッズを奥さんに捨てられた」「結婚前は自分のイラストを描く趣味に対し奥さんは理解を示していたものの、いざ結婚し旦那さんの描く“萌え絵”を実際に見てショックを受け離婚した」など、結婚したあとにオタク趣味によって夫婦間ギャップが生じ、望まれない結果になってしまうケースを減らすことや、結婚生活を構成する趣味以外のことの重要性を伝え、幸せな生活を送るためのお役に立てればと思います。

 また、誤解されることもあるのでこの機会に申し上げると、決して会員様を事例として呟いているわけではなく、オタク婚活パーティー参加者や、他社さんの事例、またネット婚活等の事例から、オタク婚活をしている男女の価値観の違いを分析したうえで発信しております。

――オタク趣味は性的嗜好と絡むケースも多いですから、相手のその性癖がどうしても自分には受け入れがたいとなってしまうと、生活は難しいでしょうね。

* * *

 引き続き後編では、男女間のギャップの違いや、結婚相談所が人気になる季節、とら婚ならではのユニークな事例など、オタク婚活について野村氏に伺っていく。

 後編では引き続き野村氏に、男女間のギャップの違いや、結婚相談所が人気になる季節、とら婚ならではのユニークな事例など、オタク婚活について伺っていく。
(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

■オタクに寄り添う結婚相談サービス『とら婚』
秋葉原オフィス所在地: 東京都千代田区外神田4-7-3 秋葉原虎ビル(旧若松通商ビル)8F
名古屋オフィス所在地: 名古屋市中村区竹橋町5-5 さかえビル 2F
営業時間:【平日】12:00~20:00 【休日】11:00~19:00 ※予約制
電話番号: 080-8760-3054
定休日: 無休
公式サイト: https://toracon.jp/
※詳しくは公式 WEB サイトまたはお電話でお問い合わせください。
『とら婚』店舗から遠隔地に住んでいてもご相談できるように、Skype や Google ハングアウトによる WEB 面談サービスを提供しています。

 ■石徹白未亜 著書
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』(CCCメディアハウス)

とら婚炎上Twitter、「中の人」が語る!伝えたい、結婚にかける熱き想い

 2017年2月に事業を開始した婚活事業「とら婚」。事業開始から9ヵ月、成婚カップルは見込みも含め10名を達成している。とら婚Twitter公式アカウントのつぶやきは、時に炎上気味にまとめサイトやネットニュースに掲載されていたりもするが、つぶやきそのものはいたって正論だ。とら婚の企画責任者・野村晶二郎氏に、とら婚9ヵ月の歩みをはじめ、炎上についてもあれこれ聞いてみた。

■他の結婚相談所の「隠れオタク」を探せ!

――現在の「とら婚」の会員数を教えて下さい。

野村晶二郎氏(以下、野村) 会員数は全体で170名で、男女比は男性の方がやや多く、男性が110名ほどです。

 また、とら婚は日本最大級の結婚相談所ネットワークであるIBJ日本結婚相談所連盟に加盟しておりますので、他の結婚相談所に登録されている方のご紹介もできます。ですので、「とら婚の会員さん同士」のカップルも多くいらっしゃいますし、「とら婚の会員さん」と「他の結婚相談所に入っていて、オタク趣味のある方」との成婚事例もあるんですよ。(IBJ日本結婚相談所連盟の登録会員数は2017年10月時点で58,839名)

――「とら婚」に登録すると、IBJ日本結婚相談所連盟に加盟している他の結婚相談所に登録した方からも相手を探すことができるんですね。

野村 はい。IBJ日本結婚相談所連盟では定型のプロフィール記入フォームがあり、私たちのような加盟している結婚相談所の職員は、すべての登録者の方のプロフィールを見ることができます。

――「とら婚の会員さん」と「他の結婚相談所に入っていて、オタク趣味のある方」との成婚事例についてですが、その場合、他の結婚相談所に登録していた相手の方は、趣味欄に「オタク趣味があります」といったことを書いていたのでしょうか?

野村 他の相談所さんですと、残念ながら“オタク趣味を書くとマイナスになる!”と思われているところもまだ多いようです。中にはご本人が書いていても、アドバイザーによって止められ、修正させられるケースもあるようですね。ですので、「書いていなかった」方も含まれています。

――そうなると、他の結婚相談所の会員さんにオタク趣味があるかどうかをどうやって見極めるのでしょうか。

野村 何かしらのメッセージを残していただける方はそれでもいらっしゃいます。「年末は有明に行く」とかですね。

――分からない人には何が何やらでしょうね。分かる人に分かればいい、という潔さを感じます。

野村 ノウハウなので出せないのですが、実は「隠れオタ」のキーワードがいくつもあり、実際聞いてみると、オタクか、もしくはご理解ある方であることが多いですね。何より、とら婚の会員の方に向けアプローチを2回以上されている方がいたら、「この方はそうなのだろうな」と。そういう方のデータベースを独自に作っています。

 

■コミックエッセイ漫画が婚活の敷居を低くした

野村 最近は「オタクの婚活」「オタクの恋愛や結婚生活」をテーマにしたコミックエッセイ漫画が多くありますよね。そういった作品を読まれて、自分もそんな楽しい生活がしたい、と申し込まれる方も増えています。

――とら婚の登録者の年齢層はどのような感じでしょうか。

野村 男性は平均35.6歳、女性は平均すると31.2歳ほどですね。

――会員さんの結婚したい動機は何が多いのでしょうか。

野村 動機として挙げられることが多いのは「子どもが欲しい」ですが、「パートナーが欲しい」という方もいらっしゃいますね。男性で「子どもが欲しい」を挙げる方は女性より多い印象を受けますが、ただ、男性でも女性でも「子どもはどっちでもいい」という方もいらっしゃいます。しかし、周りの方に趣味をカミングアウトしていなかったり、そもそも職場等に異性がいなかったりして、出会いの機会が少ないことが共通しています。

■とら婚公式Twitter、「中の人」、語る

――御社のTwitterはたまに炎上されていますが、どなたが書かれているのでしょうか。

野村 「中の人」は変わることも多いので、「誰」と一概には言えません。Twitterは上限が140文字なので、伝えたいことをできるだけシンプルに呟いていくと、前後のつぶやきを省かれたり、伝えたかったことの一部だけが切り取られて、意図とは違うニュアンスでまとめサイトなどに掲載されてしまうために、きつく見えてしまったり意図をうまく伝えられなかったりするんですよね。

――一番燃えたのはどのつぶやきでしょうか。

野村 

は、ずいぶん賛否両論いただきましたね。

――でも、いたって正論ですよね。

野村 自分でも「これは耳が痛い人もいるかな」と思うときもありますが、それでもつぶやくのは次の3つの思いからです。

 まず一点目が「とら婚の会員の方や、今婚活をしている方の結婚できる可能性を上げたい」、二点目が「一人で婚活をされると視野が狭まりがちなので、視野を広げてよりよい婚活をしていただきたい」、三点目が「結婚したあとも不幸になって欲しくない」という思いがあります。

 当社は結婚相談所で、結婚はとても夢のあることだと思っていますが、「結婚=ゴール」ではないと考え、お相手の人生を背負う重いものでもあると捉えています。「オタクグッズを奥さんに捨てられた」「結婚前は自分のイラストを描く趣味に対し奥さんは理解を示していたものの、いざ結婚し旦那さんの描く“萌え絵”を実際に見てショックを受け離婚した」など、結婚したあとにオタク趣味によって夫婦間ギャップが生じ、望まれない結果になってしまうケースを減らすことや、結婚生活を構成する趣味以外のことの重要性を伝え、幸せな生活を送るためのお役に立てればと思います。

 また、誤解されることもあるのでこの機会に申し上げると、決して会員様を事例として呟いているわけではなく、オタク婚活パーティー参加者や、他社さんの事例、またネット婚活等の事例から、オタク婚活をしている男女の価値観の違いを分析したうえで発信しております。

――オタク趣味は性的嗜好と絡むケースも多いですから、相手のその性癖がどうしても自分には受け入れがたいとなってしまうと、生活は難しいでしょうね。

* * *

 引き続き後編では、男女間のギャップの違いや、結婚相談所が人気になる季節、とら婚ならではのユニークな事例など、オタク婚活について野村氏に伺っていく。

 後編では引き続き野村氏に、男女間のギャップの違いや、結婚相談所が人気になる季節、とら婚ならではのユニークな事例など、オタク婚活について伺っていく。
(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

■オタクに寄り添う結婚相談サービス『とら婚』
秋葉原オフィス所在地: 東京都千代田区外神田4-7-3 秋葉原虎ビル(旧若松通商ビル)8F
名古屋オフィス所在地: 名古屋市中村区竹橋町5-5 さかえビル 2F
営業時間:【平日】12:00~20:00 【休日】11:00~19:00 ※予約制
電話番号: 080-8760-3054
定休日: 無休
公式サイト: https://toracon.jp/
※詳しくは公式 WEB サイトまたはお電話でお問い合わせください。
『とら婚』店舗から遠隔地に住んでいてもご相談できるように、Skype や Google ハングアウトによる WEB 面談サービスを提供しています。

 ■石徹白未亜 著書
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』(CCCメディアハウス)

オンナを描く漫画家・鳥飼茜に聞いた、女社会の“本質”と母親という女について

 漫画家・鳥飼茜が止まらない。10月には最高傑作との呼び声も高い『先生の白い嘘』(講談社)の完結巻となる8巻、新作『ロマンス暴風域』(扶桑社)1巻、『地獄のガールフレンド』(祥伝社)のスピンオフ本『鳥飼茜の地獄でガールズトーク』(祥伝社)と、一挙に3冊をリリース。さらには「クイック・ジャパン」vol.134(太田出版)で大々的に特集されるなど、まさに大車輪の活躍だ。さまざまな角度から女を描き、そして女をエンパワメントしてきた鳥飼茜の、作家としての現在地を女子マンガ研究家・小田真琴が2回にわたって聞く。まずは前編、テーマは「嘘と女」について。

鳥飼茜(とりかい・あかね)
大阪府出身。2004年、「別冊少女フレンド DX ジュリエット」(講談社)でデビュー。2010年に「モーニング・ツー」(講談社)で連載を開始した『おはようおかえり』(講談社)が評判となって一躍人気作家となる。代表作に『先生の白い嘘』(講談社)、『地獄のガールフレンド』(祥伝社)など。女性の心の機微を描き出す力はマンガ界でも随一。現在は「SPA!」(扶桑社)、「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)、「Maybe!」(小学館)でマンガ作品を連載中。

――新作『ロマンス暴風域』は男性週刊誌「SPA!」での連載ということもあって、これまでとはまた違った毛色の作品です。ページの余白が黒く塗り潰されていて驚きでした。

鳥飼茜氏(以下、鳥飼) 初めてコピック(高品質のカラーマーカー。マンガのカラーページを描くのによく用いられる)でマンガを描いたんですけど、グレーの階調が多いんで、見た目が散らからないかなって不安があったんです。背景を締めればなんとかなるんじゃないかと考えて。あとは映画見てるみたいな感じになってくれたらいいな、って思ったんですね。なんか、夢みたいな話なんで。

――本のサイズも珍しく大きめのA5判ですね。

鳥飼 階調が多い絵なんで、大きい方がいいと思います。小さくすると鬱陶しいかもね。でも、私の経験上絶版になるというマイジンクスがありまして……やばいね(笑)。大丈夫ですか(笑)?

『ロマンス暴風域』は男の一人称で描く現代の「男のロマンス」だ。風俗店で出会ったせりかに運命の出会いを感じた高校の臨時教員サトミン。ところが次第にせりかは平気で嘘がつける人間だとわかっていく。なにが嘘で、なにが真実なのか。それでもサトミンの心に吹き荒れるロマンスの暴風はやむことがない。

――「夢みたいな話」とのことですが、『ロマンス暴風域』のせりかがつく嘘は、もはや幻想的ですらあります。

鳥飼 せりかは超嘘つきですけど、私自身からはかけ離れているから、ドラマチックだなあと思って、おもしろく思ったんです。絶対に自分がしないことだから。嘘をつく人のメカニズムが全然わからないんですよね。

――嘘かほんとかみたいなことに、あまり興味がない?

鳥飼 そうかもしれませんね。嘘でもいいんで。せりかは嘘をつくけど、どれも本当じゃなかったとしても、その瞬間、それを信用して、自分が気持ちよかったらそれでいいんじゃないかって。それが現実と違うからといって、じゃあ意味がないのかっていうと、そうとは限らなくて、その意味をいいものとして持ち替えるかどうかであって、それは対面した本人にしかわからないというか。

――マンガもある種の嘘です。

鳥飼 私のマンガはよく説教臭いと言われるんですが(笑)、その説教も嘘ですからね。なんにもないところから適当に説教を始めてるんです。真っ白な紙の上に説教を描いてるわけだから、見て来たようなことを。真実味があればいい、本気でつける嘘しかつかない、的な。かっこよく言うとね。

――鳥飼作品は嘘から立ち上がる物語が多いですよね。『おんなのいえ』の川谷の嘘とか、『先生の白い嘘』というタイトルとか……。

鳥飼 言われてみればそうですね(笑)。ずっと私の作品を読んでる人って、そういう謎の分析をしますよね! でも現実では、たぶん嘘つかれても気づかないくらい、嘘って意識したことないんですよ。前に飲み会の席で「鳥飼さんって浮気されたことないの?」って話になって、「ないですね」って答えたら、「それは騙されているか、世の中に存在するという浮気をしない2%の男とだけ付き合ってきてるかどっちかだな!」って言われたことがあります。

昨年全8巻で完結した『おんなのいえ』は、有香とすみ香、2人姉妹の恋模様を描いた女子マンガの傑作。あこがれの職業を諦め、結婚するつもりだった彼氏にもふられた有香は、バイト先のキャバクラで出会った川谷といい感じになるのだが、実は川谷は既婚者で……というのが1巻のあらすじ。

――信頼のようなもの、特に女性の共同体に対する無条件の信頼が、鳥飼作品のベースにはあるように感じます。『おんなのいえ』はまさにそうですし、現在「ダ・ヴィンチ」で連載中の『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』もそうですね。

鳥飼 親戚も家族も女ばっかりだから、それしか知らないんですよね。結婚生活とか同棲中とかは確かに男がいましたけど、その男って単体だからあまり参考にはなりません。単体の男ってとにかく甘え倒すっていうことしか、私は知らないから(笑)。

――その中で女という性に対する信頼感が生まれていった?

鳥飼 女の人だけの共同体が好きなわけじゃないんです。どちらかと言うと苦手ですね。女友達もあまりいないし、飲みにも行かない。でも信頼はしてるんです。

――例えば女同士が足を引っ張り合うような話を描かないのはなぜですか?

鳥飼 嫌なんです。見たくない。見たくないから描かない。だから私のマンガはそれこそファンタジーなのかもしれない。そういうのを取り沙汰しすぎちゃうと、本当にあるってことになっちゃうような気がするから。

――『先生の白い嘘』の美奈子は比較的、足を引っ張るような女にも見えます。

鳥飼 美奈子はマウンティングしてるんじゃないかって言われましたけど、あれは意図的に描いていて、でも実は……って気持ちもあったから、あのラストなんですよ。ママ友の会みたいなところではマウンティング的なものも見ますし、実際にあると思うんだけれど、私がその場で急病になったりするじゃないですか。そうしたら絶対みんな優しくしてくれる。もうマウントとか横において、実際的に助けてくれるんですよ、女は。だから、そういうところだけ見ていたいんです。

美奈子は主人公・原美鈴の親友。であると同時に、美鈴を強姦した早藤の婚約者でもある。早藤の行いに美奈子は薄々感づきながらも、それには見て見ぬふりをして、幸せな女であるよう周囲へ盛んにアピールする。そんな鬱陶しいキャラクターではあるが、最終巻では大化け。実は作品の大テーマを背負う存在だったことが判明するので、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

――そっちこそが女の本質であると。

鳥飼 マウントする部分は飾りだな、と思う。その人の本来じゃないなって思うし、その人の本来っていうのは、変な言い方すると、母性に似ているのかもしれない。私の考えはとても甘いかもしれないけど、女の人には、どっか期待してるんですよね。困っていたら助け合えると思ってるし、困っていなかったら助けないし、必要があれば介入するし、必要がなければ介入しない、というのが本来的だと思っている。だけどそれをどっかそれ以上にしたりしなかったりするのは飾りかなって思っていて、その飾りがどこでできたのかっていうと、親との関係とか、きょうだいとの関係とかなんだろうなって思う。

――それはこの男社会を一緒に乗り越えて行こうという同胞意識ですか?

鳥飼 そういう感じとはまた別で、個として、女の人というものに、絶対的な信頼がありますね。理屈じゃないんですよね、うまく言えないけど。男社会を通してのマウンティングみたいなものは、逆に私はうまく描けないかもしれない。

――鳥飼先生自身は親子関係の影響を感じることはありますか?

鳥飼 めちゃくちゃありますね。うちはお母さんもめちゃくちゃ働いていたから、あまり家にいなかったんですよね。でも1日2回とか掃除機かけるんですよ。ごはんも全部手作りして。完璧主義……というか、逆ギレでやってましたね。PTAとかには来たこともないし、授業参観にも来たことない。でも家帰ったらきれいに掃除して、晩ごはん作って。きっとお父さんが頼りなかったんでしょうね。お母さんはどこかでお父さんと手を切ったんだな、って感じてました、甘えるのやめたんだなーって。すっごい自立した人なんですよ、お母さん。

――作品にも影響が?

鳥飼 あると思います。うちの母親はドライで、子育ても手塩にかけて精一杯やりましたという感じでもないんですよ。やれることはやりました、みたいな。小学校低学年くらいのときかな。手をつなごうとして手を差し出したら、小指をつままれたんですよ。べたべたするのが嫌いな人でした。愛情がないわけではないんです。だけど褒められたこともないし、すごく愛されてきたという感じもないし、かといって無視された気もないし、ものすごく適切な距離感というか。だから女の人に対する信頼って、お母さんに対する信頼と似ていると思う。私にとっては唯一神みたいな人です。

――子どもだった鳥飼先生を1人の人間として扱っていたのかもしれませんね。

鳥飼 そう思いますね。うちの家族、全員そんな感じなんですよ。みんな思ってることが違うし、血液型も全部違うし、バラバラなんですよ。統一感がない。だから家族=他人みたいなところがちょっとあって。他人だけど嘘つかないし、気も使わないし、否定することも別にないし。

――寂しくはなかったですか?

鳥飼 親に認められていなかったなあとは、ちょっと思いますよ。つい3年前くらいまで「マンガはいいけど、資格かなんか取っておけば?」って言われてましたし(笑)。最近やっと言われなくなったけど、もう娘が自慢で「こんなん描いてるから読んであげて!」みたいな感じはなくて、めちゃくちゃ照れ屋さんだから、こっそり買って読んでるみたいです。実家に行っても私の本は見えないところに置いてあるんですよ。たまに「あんたの漫画ちょっと冷たすぎるんちゃう。だから売れへんのじ ゃない?」とかって言われるんですけど、どの作品のこと言ってるんですかね(笑)。

――今はご自身が子どもを育てる立場でもあります。

鳥飼 まったく母親みたいには育てられていないです。私はすっごい介入しますね。最近やっと手を離すってことを少しずつ勉強しています。でも根本的には他人だなって感じはすごくありますね。性別も違うし。

――男だな! って思いますか?

鳥飼 男の子だなーって思いますね。先に子育てをやっておけば、もっと恋愛がうまくいっていたかもしれない(笑)。男の人を追い詰めちゃいけないとか、子育ても恋愛もいっしょだなって思います。

――どんな男性に育ってほしいですか?

鳥飼 どうなってほしいとかは特にないんですけど、もう手を離していかないとダメだなーって思いますね。マザコンではまったくなくて、あの人はたぶんちょっと女性恐怖症だと思う(笑)。どんな女と付き合うんだろうって思うし、もういっそ女じゃないかもと思うし、それはもしかしたら私のせいかもしれないけど、でもそれはそれでそういう人生もいいんじゃないですかと、どっかで思っていて。私なんかのもとで育っちゃったら、女の人にファンタジーなんて持ちようがないでしょうね。

――好きな子とかいたりするんですかね。

鳥飼 おもしろいですよ。息子のことを好きな女の子がいるらしいんですが、感慨深いですよね。自分が育てているこの子のことを思って、ちょっと胸を痛めてる女の子がいるのかと思うと、なんかとんでもないことをしてしまったような(笑)。とんでもないものをリリースしてしまったなと(笑)。小学生男子って「お前のこと好きって言ってるぜ」って聞いたら「俺は嫌いだぜ!」って、言うじゃないですか。「それ絶対傷つくから、嫌いだと思っても絶対に言うなよ!」って、そういう感じの演出を親が加えています(笑)。まあ勝手に楽しくなってって思いますけど。
****

 鳥飼作品に独特の女同士のバディ感は、物語全体に安定感と心地よさ、そして時にはスリルをもたらしている。『おはようおかえり』も『おんなのいえ』も、姉妹のやりとり、ケンカのシーンは大きな見どころの1つだった。後編では男について、そしてマンガについて聞いた。
(小田真琴)