「Zipper」休刊、そして主婦の友社買収……動乱の2017年女性誌トピックスを徹底分析!

 雑誌不況時代の現在、2017年も休刊や廃刊となった女性誌が続出した出版界。しかし、市場が狭まる中、売上が好調な女性誌も存在しているのもまた事実。そんな今年の動向の総まとめを、女性ファッション誌の研究歴21年、『新社会学研究』(16年創刊、新曜社)の編集同人である甲南大学・栗田宣義教授にうかがった。

 

女性誌版元の雄・主婦の友社買収が象徴すること

――今年、最も印象的だった女性誌に関する出来事を教えてください。

栗田宣義氏(以下、栗田) なんといってもTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が出版社の主婦の友社を買収すると発表したこと。これはファッション誌業界において、すごく大きな意味を持っていると思います。

というのも、主婦の友社は女性向け雑誌を多く手掛ける老舗出版社で、「Ray」(88年創刊)や「mina」(01年創刊)や「S Cawaii!」(00年創刊)、その他にも主婦の友社の支援を経て復刊された「小悪魔ageha」「姉ageha」などがあります。日本の女性向け雑誌版元の良心ともいえる存在だったんですね。

――CCCの狙いはどういうところにあるのでしょうか。

栗田 CCCは動画配信サービスなどが流行している昨今、レンタル事業を中心に行うTSUTAYAの店舗が続々閉店に追い込まれるなど苦戦しています。しかし、新規展開の蔦屋書店に関しては、16年の販売額が約1308億円だったり、書籍を扱う店舗数が800軒を超えるなど書店としては急成長を遂げています。CCCは主婦の友社のほかにも、徳間書店や美術出版社を買収し、傘下に入れています。そういう意味で、CCCは今後の書店展開において、出版社買収によって足りない部分を充足させようという意欲的な行動なのでしょう。しかし、CCCも紙媒体での女性誌運営はまだまだ未知の領域でしょうから、そこが懸念する点ですよね。主婦の友社の編集権が今まで通りなのかも含め、持ち前の雑誌のカラーがきちんと今後出せるのかなど、動向を見守りたいと思います。

CCCは現在、ネットでの情報発信が中心です。主婦の友社の優秀な編集スタッフを、CCCのネットマガジンなどに投入して展開していくというのは予想できますが、果たしてそれが成功するのか。今まで休刊した雑誌の多くは「ネットに力を入れるから、紙媒体はお休み」というパターンが多いのですが、その後に成功しているかというと、必ずしもそうではありません。

――主婦の友社も、買収されるくらい厳しい状況だったと?

栗田 今年上半期のABC販売部数公査(以下、ABC公査)で数字を見てみると、なかなか厳しいんですよね。「Ray」「mina」ともに4万6,000部。「S Cawaii!」にいたっては3万4,000部なんです。ほかの赤文字系の数字を見てみますと、「CanCam」(81年創刊、小学館)は10万部、「JJ」(75年創刊、光文社)が6万3,000部、「ViVi」(83年創刊、講談社)は8万8,000部。赤文字系で唯一5万部を割っていたのが「Ray」ということになりますね。また、「mina」が競合する「non-no」(71年創刊、集英社)は12万6,000部ですから、その3分の1くらいの実売しかなかったということになります。これを見ると、「Ray」「mina」ともにかなり他誌に水をあけられていたことがわかります。ファッション誌は5万部を割ると厳しいといわれている中、主婦の友社の雑誌はすべてそうでした。そうするとやはり、相当の整理が生じてくる可能性があります。今もっとも苦しいのは、雑誌刊行を主体とした版元なのは間違いないですね。

――そんな中、好調な女性誌はあるのでしょうか。

栗田 やはり宝島社は強い。旗艦誌である「sweet」(99年創刊)が26万部。ボーイッシュファッションの先駆的存在「mini」(00年創刊)が14万部、「SPRiNG」(96年創刊)が12万部と圧倒的な部数を誇ります。「リンネル」(10年創刊)を含めた4誌がファッション誌ランキングのベスト4までを独占していますが、いずれも有名ブランドとコラボレーションした豪華付録付きの雑誌ばかりです。

しかし宝島社以外は弱いのかといえばそうでもなく、集英社はかつて20世紀には100万部を誇った「non-no」が13万部弱、「MORE」(77年創刊)が12万部、「Seventeen」(68年創刊)が14万部と好調で、“女性誌の集英社”のプライドにかけて部数を守っている印象です。ほかにも「MORE」のライバル誌である講談社の「with」(81年創刊)は10万部、「VERY」(95年創刊、光文社)は8万6,000部ですから、集英社や講談社、小学館に光文社といった大手老舗出版社はいずれも踏ん張っている印象です。なので残念ながら主婦の友社のひとり負けといった印象。他の老舗出版社はファッション誌以外に、漫画などの売れ線分野を持っています。主婦の友社は女性誌に特化した出版社でしたから、戦いに負けてしまった理由はそこにあるのかもしれません。

――ローティーン誌に関してはいかがでしょうか。

栗田 新潮社が強いですね。「nicola」(97年創刊)が15万部で、この数字は3年前と変わりません。子どもの数が減ってきている中、市場が小さくなっているのに数字が横ばいどころか上向きというのは驚異的なこと。ということは「nicola」を読む小学生の比率が増えているということになります。ほかにも姉妹誌である「ニコ☆プチ」(06年創刊・隔月刊)は7万部なので、足したら22万部。この数字は宝島社の旗艦誌「sweet」の26万部に近いですが、「sweet」は購買層が20〜30代と幅広いのに比べ、「nicola」は10代前半と狭いですからね。世代への浸透率がすさまじいのがよくわかります。

ここから読みとれるのは、「nicola」や「Seventeen」などのティーン誌は、ファッション系統が細分化されていないこと。赤文字系や青文字系やストリート系、すべて網羅しています。ですから、そういう意味でファッションの流行へ対応がしやすいのでしょう。

――ファッション系統が細分化しているほうが厳しいということでしょうか。

栗田 そうなります。4~5年前にギャル雑誌の休刊が相次いだわけですが、今年は、古着リメイクで一世を風靡し、月刊から季刊になっていた「Zipper」(93年創刊、祥伝社)が休刊を発表。またゴスロリファッションの代名詞だった「ケラ!(KERA)」(98年創刊、ジェイ・インターナショナル)が紙媒体での発行をやめ、デジタル版に移行しました。つまり今年はストリート系雑誌の休刊が相次いだといえます。同じくファッション専門誌である「装苑」(36年創刊、文化出版局)も部数が下火で隔月刊化しました。文化出版局は大学や専門学校を背景に持った大きな会社ですから、今後も旗艦誌として発行はしていくのでしょうけれど。隔月というのは、賢い選択ではあるんですよね。月刊ですと編集部も第一編集部、第二編集部というように複数並行体制が必要になってきますが、隔月なら1つで大丈夫ですし、色んなメリットはあると思います。

――ストリート系の雑誌が休刊になってしまったのは、そっち系のファッションが飽きられてきたからなのか、それとも違う何かを読んでいるのか、どっちなのでしょうか。

栗田 WEARやインスタグラムとか、アプリのほうに行ってるんでしょうね。雑誌を買わないからといって情報にお金を払わないのではなく、いままで雑誌代に支払ってきた分が通信料に代わってきたということが言えます。SNSの情報充実度はすごいものがあり、何人かのインフルエンサーをフォローしていれば情報は十分、というのが現在です。特にストリート系ファッションを好む女子は、情報収集が活発で上手な層なので、雑誌への見切りが早かったのでは。逆に「non-no」などを読む層は、保守的だから、一番最後まで雑誌を買い続ける客層がしっかりついているのではないでしょうか。ですので、集英社が「Seventeen」を読む層を囲い込み、そのまま「non-no」、さらに「MORE」へと移行させていくように、新潮社も「nicola」を読む層を囲い込んで、そのまま少女たちが大人になった際に読む雑誌を自社のファッション誌にスライドさせるべく新雑誌を創刊していけば安泰でしょう。

 

アイドルがファッションモデルに抜擢される動きは今後も続く?

――「MORE」といえば、いち早く元AKB48の篠田麻里子さんを専属モデルに抜擢し、成功した印象があります。現在ではAKB48や乃木坂46、欅坂46のメンバーたちが続々とファッション誌の専属モデルになっていますが、この動きは今後も続くのでしょうか。

栗田 女性アイドルが女性誌の専属モデルをすることは、女性票を獲得するのに有効なやり方です。実際「Ray」の専属モデルである乃木坂46の白石麻衣さんは、今年2月に出版した2nd写真集『パスポート』(講談社)が推定売り上げ23万部という莫大な数字を叩き出しましたが、同写真集は女性の購入者が多いことでも話題となっています。これはファッションモデルをやることによって、女性票を獲得した証しと言えると思います。雑誌の実売数に関して、現役女性アイドルの出演がどれだけ具体的に貢献しているのかの特定は難しいですが、どの雑誌に出るかによって影響力が違ってきます。ですので、そういった話があればどこでも出ますという時代では無いでしょうね。

栗田 2017年の総まとめとしては、ファッション系統ごとにカテゴライズされた雑誌を成立させるのが、難しくなってきた時代だということがいえるでしょう。これからは、ファッション総合誌が売れていた、90年代半ばの頃に回帰していくのではないでしょうか。総合誌が良かった時代といえば、「non-no」が100万部発行されていた95〜96年あたり。それが90年代終わりになると、ギャル系やストリート系など雑誌が細分化され、総合誌である「non-no」の部数が落ちてきたという流れがありました。しかし今はまた、「non-no」や「MORE」のように、総合的な側面を持つ女性誌が生き残るだろうということがいえます。

――ファッションだけでなく、情報も充実した、保守層に好まれる内容の誌面づくりということですね。

栗田 これまでは、出版社という枠組みを超えて、赤文字系雑誌、青文字系雑誌とカテゴライズすることが可能でした。一時の「cancam」など赤文字系雑誌は、4つ子かなというくらい内容が似ていたりもしましたが、今後はそういうこともないでしょう。現在、宝島社が他社の女性誌と一線を画しているように、出版社ごとの個性が際立ってくる流れになるのではないでしょうか。雑誌の作り手である編集者のアイデアやスキル、人脈が効いてくるようになり、そういう意味では出版の本来の紙という在り方が生きる時代になるのでは。“編集部がすばらしいから雑誌が売れる”を体現しているのが新潮社でして、ローティーン誌の市場が活況だというわけではないのに、売れているというのはすごいことですからね。

――出版社と編集の底力が試される市場になる、ということですね。

栗田 赤文字系、青文字系、ストリート系、ギャル系といったファッション系統の多様化バブルが、90年後半から10年後半の、ほぼ20年続いていたわけですが、今年はその終焉といえるのでは。00年代初頭から06年くらいまでは、ファッション誌バブルで各社が参入し、ファッション誌の数が一番多く、一番雑誌を買う層である10代後半から25歳の若年層向けの雑誌が35誌ほどありました。しかし現在では10誌ほどがなくなり、25誌くらい。ファッション誌を作れば売れるだろうという時代は終わり、弱い雑誌は淘汰され、現在は“本物”が残っているといえます。しかし、今後はさらに淘汰される可能性があり、将来的にはおそらく10数誌になるでしょう。そこに入れるか試されるのが2018年だと思うんですね。やはりそういった時にファッション誌以外にヒットジャンルを持つ集英社、小学館、講談社、光文社といった大手老舗出版社の底力は強いわけでして。そういう意味で女性誌に特化していた主婦の友社の買収は、時代を象徴する出来事だったのかなと思います。

(取材・文/犬塚左恵)

 

栗田 宣義(くりた・のぶよし)

1958年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業、社会学者、甲南大学教授。専門分野はファッションとメイクの社会学、ポップカルチャーの社会学など。女性ファッション誌の研究歴は21年、『新社会学研究』(16年創刊、新曜社)の編集同人。近著に『マンガでわかる社会学』(オーム社)がある。

妻への感謝をSNS投稿する夫が愛しているのは妻でなく自分自身!

「いつも家族を支えてくれる妻、ありがとう。感謝してるよ」といった、妻への感謝をなぜかSNS投稿する夫を見ると、こう思わないだろうか。「本人に言え」と。家族や、または恋人や友人に恵まれて幸せ/仕事が充実/リッチな生活をしている……といった、言わなくてもいいことをあえて投稿するは、なぜ、うかつに、あえて投稿してしまうのか? 前回に引き続き(インタビュー[1])、『自分のすごさを匂わせてくる人』(サンマーク出版)著者であり心理学博士の榎本博明氏に聞いた。

 

■「承認欲求&自己愛」でおそろかにされる        「周りの人の気持ち」

――「ウザい匂わせ投稿」でよく見かけるのが、「配偶者への感謝SNS投稿」です。妻から夫に対する“ありがとう”だけでなく、夫から妻への感謝の言葉も最近見ます。「SNSに書かずに本人に言え」と思うのですが、こういう投稿をする人の背景には何があるのでしょうか。

榎本博明氏(以下、榎本) 承認欲求と自己愛ですね。自己愛は誰にでもあるものですが、それに溺れてしまっているのです。

 例えば「妻への感謝をSNS投稿する夫」の場合、男性の理想像はかつてのような「男らしい男、強い男」でなく「優しい男」になりつつありますよね。それをふまえ「自分はこんな風に家族に優しくしている」と人に見せつけて自己愛を満たしたい。

――時代の男性像の変遷はしっかり押さえる客観性があるわりに、読者がその投稿をどう思うかについては無自覚なんですね。

榎本 はい。そんなものはSNSで他人に見せつけるものではないし、相手にだけ分かればいいのです。相手が外に自慢しているのをどう思っているのか、というのを考えると、なんでそんなことができるのか不思議ですよね。

――投稿者は「SNSの読者」だけでなく、勝手に投稿のネタにした「自分の配偶者」の気持ちにも想像力が働かないとなると怖いですね。

榎本 アピールすればするほど自分が小さい人間であることがばれてしまう。自慢せざるを得ないというのは、それだけ自分に自信がないのでしょう。投稿した自分に酔っている。恥ずかしい人だと周囲から思われていることに想像力が働かない。

 学生に聞いてみても、「こういう匂わせ投稿をする人は異質の人間だ」と言っていましたね。自慢したら嫌がられる、というのは普通の感受性があればわかるはずです。

 それでも自慢が止められない人は、どこかが壊れている人です。

■匂わせな人ほど、SNSが大好き!

――匂わせやすさと性別・世代は関係ないのでしょうか?

榎本 関係ないですね。僕の同世代にもいますよ。性別や年齢によって変わる、というよりも「自己モニタリング」ができていない人ほど匂わせますね。「自分が発信したことにどんな反応が返ってくるか見て、表現を調整する」ことができないのです。

 日常生活でモニタリングができない人は、ネット上でもモニタリングができません。

――いわゆる、場の空気が読めない人ですね。

榎本 はい。周りの人がぎょっとするようなこと、その話題はその場にいるAさんにとって傷つくような内容だから触れてはいけない、ということも口にしてしまう。自分の発言で場が凍っていることにも気が付かない。

 そういう人ほどSNSが好きなんです。SNSは一方的ですから。

■匂わせに閉口する人は「文句をつける」のでなく「いなくなる」

――SNSで匂わせを見るのに慣れてきて、さらに、なぜか匂わせに「いいね!」がついている状況を見ると、「むしろこれが普通なのか? イラっときているこっちの心が狭いのでは?」と思えてくるんですよね。

榎本 匂わせる人は匂わせる人同士でやり取りしますからね。そういう人同士で「いいね!」しあったり、義務感でいいねする人もいますから。不快に思う人は反応しなくなります。匂わせに文句をつける人はいないでしょう?

――確かに。Twitterならともかく、本人との紐づけの強いFacebookではないでしょうね。

榎本 リアルの場で、ひどい匂わせでその場にいる誰かを傷つけるような発言をした場合、場が凍り付いたり、たしなめる人や、話を逸らす人も出てくるもしれません。しかしSNSでそれをしたら、引いた人は、こんな人にはもう関わりたくないとそのまま離れていきます。ですので当の本人は勘違いしたまま、気づけないままなんです。

――人が引いて、離れているのに気が付かない、というのはネットならではの怖さですね。

* * *

「SNSは一方的ですから」という榎本氏の発言は、思わず唸ってしまった。考えてみればSNSは双方向、と言われがちだが対面のコミュニケーションとはまったく別物だ。SNSは一方的に始め、終わらせられるし、誰に対しての発言かはぼやけがちだし、対面ではとても言えないような発言も見かける。

 リアルのコミュニケーションの方がよほど難しく面倒で、それゆえネットのコミュニケーションに流れる気持ちはよくわかるが、そこに頼ると衰えていくものもあるのだろう。次回も引き続き榎本氏に、アナウンサーの伊藤綾子氏をはじめとした、「交際匂わせ炎上」についても聞く。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

●榎本 博明(えのもと・ひろあき)氏
1955年、東京都生まれ。心理学博士。MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』(ともに日本経済新聞出版社)、『カイシャの3バカ』(朝日新聞出版)などがある。

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

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せめてネットくらいでは輝きたい! さえない日常が“匂わせ”に火をつける

 2017年の新語・流行語大賞にも選ばれた「インスタ映え」。インスタに限らず、SNSで家族、恋人、友人に恵まれて幸せ/仕事が充実している/リッチな生活をしている……といった知人の匂わせ投稿に血圧が上がったことが一度もない人など少ないはずだ。“匂わせ”とは何なのか? なぜ人は匂わせてしまうのか? 『自分のすごさを匂わせてくる人』(サンマーク出版)著者であり心理学博士の榎本博明氏に聞いた。

■匂わせは悪いことばかりではない!      ~人間関係を円滑にする匂わせ~

――“匂わせ”というとSNSの自慢投稿を想像してしまいますが、『自分のすごさを匂わせてくる人』では、匂わせを悪いことだけでとらえていないのが新鮮でした。

榎本博明氏(以下、榎本) 匂わせは悪いことばかりではありません。匂わせは“自分の印象をどういう風に相手に伝えるか”ですよね。「印象操作」と言ってしまうと悪い印象がありますが、匂わせとは自分がどういう印象を持たれたいかという情報の与え方なのです。

――セルフプロデュースは多かれ少なかれ全員がしていますもんね。

榎本 また、匂わせにより相手とのミスマッチを防げます。私自身も仕事の依頼を受けることがありますが、「こういうことが好きだ(できる)、逆にあれは嫌いだ(できない)」と匂わせていないと、仕事はうまく進みません。

 例えば、私はバラエティ番組には出たくないのですが、匂わせておけば、そういった依頼は来なくなります。ミスマッチのまま進んでしまった方がお互い時間も無駄にしてしまいますし、気まずくなってしまいますから。

 プライベートでも一緒で、価値観やどういう付き合いをしていきたいかとか、相手に望むものなどを匂わせておけば、あとからのミスマッチを防げます。

――スタンスを明確に表明するとちょっと角が立つようなことに匂わせをうまく使うのは、日本的な知恵とも言えますね。

■せめてネットでは輝きたい!~さえない日常が匂わせに火をつける~

――でも、匂わせは短所もありますよね。

榎本 はい。ついやりすぎてしまう。承認欲求が高まりすぎて、相手の反応について想像力を働かせられず、やりすぎて反発を食らってしまう。

――SNSが承認欲求を加速させているのではと思うこともあります。

榎本 そうですね。SNSで、人の目を無茶苦茶意識するようになってしまった。

 学生たちに心理学の講義で、承認欲求の話をすると反響が高いです。「SNSをしていたころは辛くて、やめたらありのままの自分でいられた」と言った学生もいました。それも友達には言いづらいようで、私に言うんですね。

――もともと日本人は人の目を気にする傾向が強いですが、SNSでますますそうなってしまったところはあるでしょうね。

榎本 SNSが流行る前は、職場や学校では人の目を気にして自分を抑えていても、職場や学校を出て、一人になれば自由になれた。でも今は歩いていても電車に乗っていてもスマホからSNSの通知が来ます。起きている間、ずっと人の目を気にしないといけない。

 人の目を意識しだせば「認められたい」「馬鹿にされたくない」「仲間外れにされたくない」という思いが出てきます。それでついつい匂わせをやりすぎてしまう。

■24時間、365日輝いていなくてはいけないという風潮

榎本 スマホが匂わせを加速させているところもありますね。パソコンの時代でも、むかついたり目立ちたいという思いから何か匂わせたいと思った人はいたでしょう。でもパソコンの前に座るまでの時間に「やっぱりやめとこう」と冷静になった人は多かったと思います。しかし今はスマホがあるから、衝動的にすぐ書き込めてしまう。

――「承認欲求」「衝動」が、「自分がすることが人からどう思われるかという想像力」を上回ってしまうんですね。匂わせやすい人はどのような特徴があるのでしょうか。

榎本 承認欲求が強く、かつ満たされていない人です。現状が満たされていないから承認欲求が強くなってしまうのですが。

 あと、最近の風潮も匂わせを加速させていますよね。政府も「全ての女性が輝く社会づくり」とか言っているじゃないですか。芸能人やスポーツ選手、政治家ならともかく、一般の人がいつも輝け、輝けと言われてもですよね。

――他人の匂わせを見ると、闘争心に火がついてしまうというのもありますよね。

榎本 でも、仕事でも、プライべートでも輝けるものがないという場合、じゃあ、何で輝けるか……? となると、ネットの世界で虚勢を張ることになってしまう。ネットで、現実離れした自分を匂わせてしまう。満たされない承認欲求が匂わせに走らせているのです。

■キラキラアカウントに夢中な人は、他人を見下したい?

――その最たるものが「キラキラアカウント」*だと思います。こういった鼻につくアカウントは、一方でフォロワーが数万人いるような人もいます。いやなもの見たさという娯楽もあるとは思うのですが。

榎本 キラキラアカウントのフォロワーも多分いろいろなタイプがいるでしょうね。純粋に自分の変身願望を満たしてくれる存在として、素直にあこがれている人もいるかもしれません。

 一方キラキラアカウントを「こんなバカがいるわ」という気持ちでフォローしている人もいるでしょう。最近のお笑いを見ていても思いますが「人を見下したい」気持ちを満たすものが流行っていますよね。心理学には「社会的比較」という言葉があります。他人と比較して「自分の方があいつよりましだ」という気持ちになると、自己肯定感が高まるのです。

*有名ホテルやブランド品の写真など、ラグジュアリーな生活の様子や、誰に向けているのかよくわからない恋愛指南を投稿するアカウントのこと

* * *

“匂わせ”な他人のSNSを「イラつくのに見るのがどうにもやめられない」状態になっている際は、「自分の自己肯定感が弱まっていているサインかもしれない」と気づくと、少し冷静になれるかもしれない。引き続き榎本氏に、たまに見かける「配偶者の感謝をなぜかSNS投稿する人」の匂わせなど、さらに聞いていく。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

●榎本 博明(えのもと・ひろあき)氏
1955年、東京都生まれ。心理学博士。MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』(ともに日本経済新聞出版社)、『カイシャの3バカ』(朝日新聞出版)などがある。

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女性を借りる「ウーマンレンタル」の実態ーー“出会い系”とは違う、利用者が抱く「寂しさ」とは?

 おっさんレンタルに始まり、レンタル彼女、レンタル彼氏。はたまたレンタル家族など、さまざまな「○○レンタル」が登場している今、2016年に始まった「Woman Rental(以下、ウーマンレンタル)」というサービスが注目を集めている。

■出会い系サービスとはまったく異なる

「ウーマンレンタルとは、サイトに登録をしている20〜50代のウーマンの中から、希望の女性を1時間からレンタルできるサービスです。話し相手や相談、買い物やイベント同行など用途はさまざまですが、性的サービスや犯罪・反社会的行為、公序良俗に反する目的のレンタルは一切お断りしています。サイトそのものとしては、ウーマン自身のプロフィールを掲載する『人間レンタル(時間貸し)ポータルサイト』に近い位置づけかと思います」

 そう話すのは、同サイトを運営する“表参道ノハゲ”こと、イケダシトムさん。レンタル料は、登録しているウーマンが自ら設定した1時間当たりの単価×時間を事前にクレジット決済。当日の移動交通費と飲食代はユーザーが負担するシステムだ。

「新種の出会い系サービスと間違われることがありますが、本質的にはまったく異なります。一般的なマッチングサービスは色恋目的やビジネス目的など、双方の目的が明確です。対してウーマンレンタルでは、利用者の目的は多種多様。基本のルールを守れば、目的は利用者の自由だし、その依頼を受けるかどうかもウーマンの自由。どんな依頼が来るのか、ウーマン側もワクワクしているそうです(笑)」

 このサイトは商取引上、ウーマンと依頼者それぞれ個人に取引の場を提供し、決済を代行するサービスなので、雇用関係や業務委託関係にはないという。時間当たりの価格設定も、ウーマン自身が決める……双方にとって、どうやら自由度の高いサービスのようだ。

■離婚の相談も……赤の他人でなければ聞けない話

 2017年12月の時点で、登録ウーマンの数は30名。人気ウーマンはプロフィールを随時非公開にすることもあるが、平均で20名前後のウーマンが名を連ねる。たびたびメディアでも取り上げられて知名度も上がり、今では月間100件のオーダーが届くという。

「ウーマンレンタル利用者の男女比は半々。年齢層も10〜60代と幅広く、職業も主婦、OL、学生や経営者などバラエティ豊かです。そのため、利用目的も多岐にわたります」

 老若男女問わずウーマンを借りており、利用者の数だけ目的があるが、なかでも、お茶や食事をしながら相談に乗ってもらう「相談相手」としてのレンタルが多いとか。

「相談案件におけるキーワードで女性に多いのが『人生・自立』、男性に多いのが『恋愛・結婚』です。あとは、それぞれのウーマンの個性によって得意分野があり、子育てを終えたアラフィフのウーマンには離婚の相談、ビジネスに強いウーマンには起業相談、美容やファッションに長けていれば買い物同行などのニーズもあります」

 既婚男性から“健全な非日常”として、食事しながら楽しくおしゃべりをしたい、というオーダーも。性的サービスや危険な要求などは、本当にないのだろうか?

「正直なところ、紳士的な男性利用者が多いことに驚いています。ただ、レンタルはカフェなどの公の場で行うことや、そのほかのリスク回避の方法を登録ウーマンにレクチャーして、安全なレンタルが実施されるように心がけています」

 利用者のモラルとウーマンの自衛策によって、健全なサービスが運営されているようだ。

 それにしても、相談に乗ってくれそうな20〜50代女性は巷にあふれているような気がするが、なぜ利用者はわざわざウーマンをレンタルするのだろうか?

「男女問わず、まったくしがらみがない赤の他人だからこそなんでも話せる、という人はとても多いと思います。親や先生には話せないことを相談したい、という学生からの依頼もありました。自分よりも多くの人生経験を積んでいる人に『話す』ことで、なんらかの『答え合わせ』をしている方が多いように感じます」

 明確なアドバイスを求める依頼者もいれば、すでに自分なりの答えが出ており「背中を押してほしい」という相談や、同じ境遇にあるウーマンに共感してほしいという内容も。女性のこまやかな洞察力や共感力が、ウーマンレンタルの肝となっているのだ。

 ウーマンレンタルを運営するイケダさんは、もともと「おっさんレンタル」で“表参道ノハゲ”という名で活動していた(現在は独立)。そんなイケダさんは、人と人がリアルに関わるレンタルサービスが注目を集める理由を、こう分析する。

「家族や仕事以外のリアルな『つながり』を面倒に感じて、心身ともに引きこもりがちな人が多いなか、それでもリアルに人と関わっていたいという人間の本能が、このようなサービスの需要につながっていると考えています。SNSが発達した今も、寂しさや孤独感はリアルなコミュニケーションでなければ、本質的には解消できない。そのつながりをレンタルとして割り切って利用できるおっさんレンタルやウーマンレンタルのようなサービスは、若者を中心に浸透していく可能性が高いですね」

 デジタルネイティブな若い世代ほど、効率的でリアルなコミュニケーションを求めているのかもしれない。今後の展開とは?

「個人の生活とはまったく関係がない赤の他人だからこそ、本音で話せることがありますよね。そのなかでも女性に特化したツールのひとつが、ウーマンレンタルであることを“ハゲしく”お伝えしていきたいです」

 ウーマンレンタルは、ただの箱。今後、コンテンツの力が上がるかどうかは、登録ウーマンの個性や活躍にかかっている、とイケダさん。

「この種のサービスは、まだまだ俗っぽく勘違いされやすいのですが、今後は在籍しているウーマンが周りの人に『ウーマンレンタルやってます』と胸を張り、利用者のみなさんが『この前ウーマンレンタルを利用したら……』と堂々と言えるようなコンテンツになることを目標にしています」

 レンタルウーマンになりたいと応募してくる女性も、増えてきているという。

「応募してきてくれるのは、30~40代の年齢層の女性が圧倒的に多いです。経営者や特殊スキルをお持ちの方など、自分に自信があって、強い向上心を持っているという傾向がありますね」

 明確な採用基準は設けていないが、「ウーマンレンタルのコンセプトを、しっかり理解・同意しているか」が重要だという。

「年齢に関係なく、お話をしていて『不快感』がないか、きちんと会話が噛み合うか、などを重要視しています。スキルや経歴、ビジュアルは付加価値程度ですね。幸いなことに、ほとんどの方がウーマンレンタルの趣旨をきちんと理解した上で応募していただいているようで、採用率は約80%ほどです。サイトの内容をまったく読まずに『いくら稼げますか?』というような人は、基本的にお断りしています」

 ウーマンレンタルは安定的に稼げる仕事ではないため、「バイト感覚では務まらない」とイケダさん。もともとつかみどころのないサービスだがらこそ、コンセプトの共有が大切なのだろう。とはいえ、人気が高く、オーダーが多いウーマンなら、それなりに稼げるのだろうか?

「売り上げベースでいえば、過去最高で月20万円を超える方もいます。オーダー件数が多く、月に10~20件の依頼が入る方もいますが、価格設定が個々に違うため、オーダー件数が多くても売り上げが低くなってしまうことはありますね。ひとりの人間として、真の市場価値を知ることができるのが、ウーマンレンタルの面白さだと思います」

 今後、大きなサービスになっていきそうなウーマンレンタル。誰にも言えないお悩みは、近くの親戚より他人のウーマンに相談してみると、解決の糸口が案外見つかるかもしれない。
(真島加代/清談社)

ウーマンレンタル

「女子中学生の性器がしゃべりだす」漫画が連載中止になったワケと、“2年生”に突入した狙い

 「あいこ」は、ちょっと天然な中学1年生の女の子。ある日、彼女の性器に突然顔が現れ、「げぼっ!」と吐血。あいこはしゃべりだした自分の性器に「まーちゃん」と名付け、楽しく会話をしながら学校生活を送っていく……。

 大胆な設定で、思春期女子の成長&性徴を描いたコミック『あいこのまーちゃん』。この作品は、もともとコアミックスが運営するWEB漫画サイト「ぜにょん」で連載され、その後に徳間書店から単行本として発売される予定だった。しかし、連載開始2日前に、徳間書店の担当者から「有害図書指定に当たる可能性があり、出版できない」との連絡があり、連載が中止となってしまう。

 作者のやまもとありさ氏は、掲載予定だった作品を別のWEB漫画サイトで発表。さらにクラウドファンディングにて制作資金を募って、単行本化にまでこぎ着けた。現在は、続編『あいこのまーちゃん2年生』をWEBコミック誌「comicエスタス」で連載している。読者の間でも、女性器の表現や出版業界の自主規制について議論されることとなった『あいこのまーちゃん』の変遷とWEB漫画の現状について、やまもと氏に伺った。

■萌え漫画に出てくる女性キャラは、あまり生きてる感じがしない

――そもそも「女性器を擬人化してしゃべらせる」というアイデアは、ふと降りてきたような感覚ということですが……。

やまもとありさ氏(以下、やまもと) そうなんですよ。でもやっぱり「降ってきた」というからには、頭の上に何かしらモヤモヤがたまっていて、それが満タンになってバサッと落ちてきたんじゃないかなって思います。もっと単純に、女性器について、楽しく読んで学べるみたいな漫画もいいんじゃないかなっていうことも考えていました。

――過激な表現と見なされて、規制を受けてしまうというような反響は予想してましたか?

やまもと 若干の危惧はありました。でも、なにか行きすぎた表現があれば、編集者さんが止めてくれるって思っていたんです。実際に「どうですかね? 大丈夫ですかね?」って見せたら、すごくウケてくださったんで、じゃあイケるんじゃないかなって思ってたんですけど、結局、ダメでしたね(笑)。

――性器の表現だけでなく、女子中学生という設定が引っかかったのかもしれないですね。でも、「初潮」というテーマを描くなら、思春期の女の子じゃないと成立しないですよね。

やまもと やっぱり年齢も低いところから描いていかないと面白くないな、とは思っていました。男性の読者に対しては、女の子は生き物というかナマモノっていうことを感じてもらえたらっていう……なんかちょっと偉そうなことも考えていたんですよ。いわゆる萌え漫画に出てくる女性キャラは、あまり生きてる感じがしないなと感じていて。女はもっと生々しいし、血が出るぞっていう部分を出したかったという思いがありました。

――男性は、そういう部分から目をそらしがちですね。

やまもと 毎月出てるものだし、本当に細かい悩みはめちゃくちゃあるんです。そういう女性の思春期の機微みたいなものを描きたかったっていうのが大きかったですね。でも、表現が過激っていうのもわかっていたので、賛否はあるだろうなとは思っていました。ただやっぱりインパクトが欲しかったというか、毒にも薬にもならない作品にはしたくなかったので……。

――否定の意見も届きましたか?

やまもと 一番多いのが「気持ち悪い」。今でもグーグル検索で「あいこのまーちゃん」で検索すると「気持ち悪い」って出るんですよ(笑)。あと、「実際に血はこんなに出ない」とか、現実的なところで責めてくる人とかもいました。

――それを言ったら、エロ漫画だって、実際はあんなに液体は出ないぞっていう話ですよね(笑)。

やまもと そうですよね。ただ「まーちゃん」は、絵柄と内容のギャップに違和感を抱いた方が多かったと思うんですよ。私も意図的にやったんですけど、こんな可愛くてファンシーで無垢な女の子から血が出るっていうことを感じてもらいたかった。そのギャップ感で引っ張りつつ、心の機微のほうに入っていくみたいな構想だったんです。

――最後まで読むと、思春期特有の感覚というか、今振り返ると、あまり穏やかでない、ちょっと心がザラッとするようなことまで踏み込んでいるのを感じました。

やまもと 思春期に感じた、もう自分でも思い出したくないようなことを描くっていうのは、やりたかったことなんで。それが一巻で収まらなかったので、エスタスさんに「2年生」という形で続きを載せていただくことになって。これが終わっても、手が空いた時に、3年生、高校生って書いていこうかなって考えています。多分どこにも載せてもらえないかもしれないですけど、もう今は個人で電子書籍も出せますから。

――連載中止騒動について、いまはどう思われてますか?

やまもと 連載中止になったことで、インタビューはかなり受けましたね。私としては、ありのままの経緯をお話しさせていただくだけだったんですけど、表現規制についてどう思うかみたいなことを問われる機会が多くて。そういう問題に自分が直面するとは思わなかったので、考える良いきっかけになりましたね。おかげさまで注目されましたし、こんな無名で新人の漫画家なのに、クラウドファンディングでもお金が集まって単行本も出せたし、今までやったことない経験がたくさんできたので、今となっては「連載中止にしてくれてありがとう」って感じです(笑)。

――出版社から単行本が発売中止になっても、ネットを使えば自分らしい表現ができるというのは実感として得られましたか?

やまもと 騒動になる前は、やっぱり漫画は紙の雑誌に連載して単行本化――みたいな考えに縛られていたので、価値観が変わったというか、転機にはなりました。でも、ネットはネットで問題があるんですよね。最初は、だったらネットで発表しまくってやる! という気持ちになったんですけど、なんか手応えがなかった。お金もネットで稼ぐのってめちゃくちゃ大変で、ちゃんと収入になるかなんてイチかバチかなんですよ。

――ネットという発表の場があっても、お金にするには紙にして書店に並べるというのが、現状では一番わかりやすいシステムなんですね。

やまもと なんだかんだで、それには勝てないですよね。うまく宣伝すれば、ネット発でも導線が作れると思うんですけど、そのマーケティングを考えるのは難しく感じています。私もいろいろな経験から、いま『つればり』っていうWEB雑誌を自分で作ってるんですけど、それもひとつの挑戦ですね。

――雑誌という形式にこだわってらっしゃるんですか?

やまもと やっぱりネットで作品名で検索してると、読みたいものしか目に入らなくなっちゃうと思うんです。パラッと読んでて、「あ、これ面白い、知らなかった」っていう出会いが雑誌にはあると思うし、私の作品もそれに便乗したい。でも、紙の雑誌を作って即売会に出したりしてたんですけど、やっぱりぜんぜんもうからないんです。会場に払うお金とか、交通費とか飲み代とか、いろいろ考えたら、WEBで雑誌を作った方がいいと思ったんですよ。

■薄毛について突き詰めたら、他者との付き合い方に行き着いた

――やまもとさんが「wezzy」で連載されている『おんな薄毛道~生やしてみせます』も好評です。

やまもと 『あいこのまーちゃん』騒動が落ち着いて、仕事がないって時に、なにか自分のことで漫画にできないかなってたどり着いたのが「薄毛」でした(笑)。エッセイ漫画は全然書いたことがなかったので、売れてる作品を研究して、頑張って描いてます。

――実は『まーちゃん』とテーマが似てるといいますか、最終的に自身のコンプレックスを掘り下げる作業ですよね。

やまもと 漫画にするまで、薄毛について、ここまで考えたこともなかったんですけど、なんで気になるのかと突き詰めたら、やっぱり他者との付き合い方というか、この世界を生きるには、みたいなことになるんですよね。もともと私は共感することが苦手で、学生時代に女の子同士で「これ可愛いよね」「ねー」というようことを言えないタイプだったんです。まぁ、ひねくれてるだけなんですけど、でも、その群れにいた人たちの中にも、疎外感を抱いていた人が絶対にいるはず。共感を求めてるとか、すり寄って描いてるつもりはないんですけど、私と同じような生きづらさを感じたことがある人に届いてほしいという思いはありますね。矛盾してるような気がしますし、まだまだ技術的にも拙いですけど、これから磨いて、ちゃんと自分の表現として伝わればいいなと思っています。
(賀俵雄志/清談社)

yamamotoarisaやまもとありさ
2013年に「コミックゼノン」に読み切り作『路上の唄』が掲載されデビュー。現在は『あいこのまーちゃん 2年生』のほか、WEBサイト「wezzy」で『おんな薄毛道』などを連載中。電子雑誌「つればり」の編集も手がける。『あいこのまーちゃん2年生』は、WEBコミックレーベル「comicエスタス」にて連載中(月1回更新)。12月下旬より、分冊版第1巻がAmazon Kindlrストアほか、各電子書店にて発売予定。
「comicエスタス」ニコニコ静画版

『THE OUTSIDER』から『RIZIN』へ──“超新星”朝倉海が、あびる優の夫・才賀紀左衛門を挑発!「俺のほうが遥かに上」

「やっと俺の戦いを世の中に見せられるときが来た!」――不良の格闘技の世界で頭角を現した元アウトサイダーの朝倉海(24歳)が今月29日、いよいよ『RIZIN』のリングに初参戦する。大会直前に対戦相手が才賀紀左衛門(28歳)に変更となったが、動じる気配はまるでなく、「打撃も寝技も俺のほうが遥かに上。全局面で圧倒する」と豪語した。

――まずは、RIZINへの参戦が決まった経緯を教えてください。

朝倉海(以下朝倉) 決まったのは記者会見(11月29日)の前日ですね。前田(日明)さん主催のアウトサイダーとの契約が切れたのが11月8日で、そこからRIZINの人とやりとりを始めて、出られるか出られないかっていう状態が続いていたんですが、会見の前日に「正式に決まった」という連絡が来ました。

――RIZIN実行委員長の榊原信行さんからは、どのような言葉をかけられましたか?

朝倉 「全国の人が見るRIZINのリングに相応しい戦いを見せてほしい」と言われました。もちろん俺もそのつもりです。

――かねてからRIZINへの憧れを口にしていた朝倉選手ですが、実現が意外と早かったのでは?

朝倉 いや、今年の年末は絶対に出ると自分の中で決めていたので、その通りになったという感じです。RIZINに出るために東京にも出てきたので、やっとスタートラインに立った感じですね。

――アウトサイダーの前田さんからは何か言われましたか?

朝倉 先日、直接ご挨拶をさせてもらったんですが、「よかったな。頑張れよ」と言ってくれて、試合のアドバイスもいろいろといただきました。アウトサイダーがあったからこそ俺はここまで来られたので、前田さんには本当に感謝しています。

――上京したのはいつですか?

朝倉 今年の8月末ですね。兄貴(朝倉未来選手)と一緒に、「これからは格闘技で生きていく」という覚悟を決めて地元の愛知から出て来ました。今の所属ジム(トライフォース赤坂)のオーナーの堀鉄平さんとはアウトサイダー時代から仲良くさせてもらっていて、以前からいろいろと相談に乗ってもらっていたんですよ。「愛知の豊橋だと練習相手がなかなかいないし、仕事もフルでやっているから練習時間を確保できない」とか。そしたら堀さんが「東京に来なよ」と誘ってくれたんです。「ウチのジムで雇ってあげるよ」と。それで上京を決めました。

――ジムでの仕事内容は?

朝倉 キックボクシングとヒートジムのトレーナーをやっているんですが、働きながら自分もトレーニングに参加できるのがいいですね。空き時間にミット打ちやスパーリングもできるし、それとは別に、日本国内のトップ選手が集まるジムに出稽古に行ったり、週に1回このジムにアウトサイダー時代の仲間が集まって合同練習したり。愛知にいるときは1日2時間しか練習できなかったですが、今は1日4~5時間は格闘技やフィジカルのトレーニングに充てられるのがうれしいです。

――東京に来て感じることはありますか?

朝倉 地元の豊橋は海と山しかないようなところだったので、最初は東京の満員電車に乗るのが憂鬱でしたが、それも1カ月で慣れました。あとやっぱり、こっちは格闘家のレベルが高いです。本当に強い選手が集まっていると思います。以前の練習はお遊びだったんじゃないかと思えるくらい、今はいい練習ができています。上京してからの数カ月で、自分でも実感できるくらいメキメキ強くなっているので、それを早く試合で見せたいですね。

――今回、対戦予定だった伊藤盛一郎選手が大会直前になってケガで欠場。朝倉選手は急きょ、才賀紀左衛門選手と戦うことになったと、今月21日にRIZINから発表されました。

朝倉 なんせ直前ですから、ビザの関係で外国人選手を呼べないなどの事情もあり、RIZINも代役探しに苦労したみたいです。そんな中、紀左衛門選手が名乗りを上げてくれました。

――ズバリ、紀左衛門選手の印象は?

朝倉 このギリギリの段階で試合を受けてくれたことには感謝しますが、実力は全然違うな、と思います。

――全然違うとは?

朝倉 打撃においても寝技においても、俺のほうが遥かに上、という意味です。

――言いますね。

朝倉 そうでなきゃね。向こうはもともとキックボクシングの選手で打撃には相当自信があるみたいですけれど、その打撃でも俺のほうが上だと思うので、全局面で圧倒したい。判定はないと思います。兄貴からも「勝つのは当然。勝ち方にこだわれ」と言われています。RIZINは格闘技に詳しくない人も大勢見るから、わかりやすい勝ち方を目指したいと思います。

――紀左衛門選手との一戦はキャッチウェイト(正規の階級の規定体重ではなく、事前に両選手間の話し合いで決められた体重で試合を行うこと)になりましたが、結局、何キロで戦うのでしょう?

朝倉 俺は57キロに向けて減量中で、すでに61キロまで落としていたんですが、紀左衛門選手は約70キロあるとのことなので、たぶん63キロぐらいで戦うことになると思います。試合1週間前に契約体重が6キロ増えるなんてふざけた話だし、それでもやるっていう選手はまずいないと思うんですよね。でも誰もできないことをやったほうが面白いし、体重差があっても勝てる自信があるので受けました。減量中だったのが一転、今度は増量しないといけなくなりましたけどね。

――実はこのインタビューの直前、カレー屋から出てくる朝倉選手を目撃しました。

朝倉 ハハハ、見られちゃいましたか。俺、「インド人になるぞ」って言われるくらいカレーが大好きで、あの店には週に3、4回通っているんですが、年末に向けて通う回数がもっと増えるかもしれないですね。思いきり食べてパワー全開にしてぶっ倒します。

――「9戦8勝、6KO、2サブミッション」とプロデビュー後も高いフィニッシュ率を誇る朝倉選手ですが、今年6月のROAD FCで初黒星を喫しました。あの負けは自分の中で消化できましたか?

朝倉 あれは本当に収穫の多い試合でした。初めて試合で劣勢になったんですよ。自分が思っていたよりも相手の打撃とかに巧さがあって、初めて頭が真っ白になるという状況になった。そこで頭が回らずに同じパターンの攻撃しか出せなかったのが一番の敗因です。反省点が多かったので、そこをすべて修正しました。あのときよりも何倍も強くなった自信があります。

――アウトサイダーから地上波の大舞台への進出。今はどういう気分ですか?

朝倉 緊張はまったくなくて、本当に楽しみで仕方がない。あの目標にしていたリングでやっと戦えるときが来たな、やっと俺の戦いを世の中に見せられるときが来たな、という感じです。RIZINはやっぱり影響力がデカいですね。出ることが発表されただけで、SNSとかの反響がすごい。大会関係者が俺の試合は注目度が高いと言っていたんで、KOとかで勝てばダイジェストじゃなくフルで放映されると思います。

――勝って有名になれば、あのカレー屋さんもスポンサーになってくれるかもしれませんよ(笑)。では最後に改めて、試合に向けた抱負を語ってください。

朝倉 アウトサイダー出身ってことでレベルが低いとか批判されることもありますけど、強い奴は本当に強いってことを俺が今回、証明したいと思います。そして、今アウトサイダーにいる選手とかが、またこういうRIZINみたいな大舞台に出られるよう、そのきっかけを俺が作れたらいいなと思います

――ひとつ聞き忘れていたことがありました。RIZINには体重の近い那須川天心選手(19歳)がいますが、意識はしていますか?

朝倉 もちろん意識しています。俺はやりたいですけど、やっぱりキックルールじゃなく、MMA(総合格闘技)ルールでやりたいです。那須川選手は本当に強いし、天才だと思いますけど、まあMMAはそんな簡単には強くなれないし、MMAをやってきた選手と戦ったら手も足も出ないと思う。MMAの厳しさをいつか教えてあげたいと思います。

――俺が土をつけるまで負けないで待っていろ、って感じですか?

朝倉 そうですね。そのアピールをするためにも、年末は派手に勝ちますんで注目していてください。

(取材・文=岡林敬太/撮影=長谷英史)

【大会】
RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017

【会場】
さいたまスーパーアリーナ

【日時】
12月29日(金)※朝倉海の出場日
12月31日(日)

【放送予定】
12月31日(日)18時30分よりフジテレビ系列で全国放送

『THE OUTSIDER』から『RIZIN』へ──“超新星”朝倉海が、あびる優の夫・才賀紀左衛門を挑発!「俺のほうが遥かに上」

「やっと俺の戦いを世の中に見せられるときが来た!」――不良の格闘技の世界で頭角を現した元アウトサイダーの朝倉海(24歳)が今月29日、いよいよ『RIZIN』のリングに初参戦する。大会直前に対戦相手が才賀紀左衛門(28歳)に変更となったが、動じる気配はまるでなく、「打撃も寝技も俺のほうが遥かに上。全局面で圧倒する」と豪語した。

――まずは、RIZINへの参戦が決まった経緯を教えてください。

朝倉海(以下朝倉) 決まったのは記者会見(11月29日)の前日ですね。前田(日明)さん主催のアウトサイダーとの契約が切れたのが11月8日で、そこからRIZINの人とやりとりを始めて、出られるか出られないかっていう状態が続いていたんですが、会見の前日に「正式に決まった」という連絡が来ました。

――RIZIN実行委員長の榊原信行さんからは、どのような言葉をかけられましたか?

朝倉 「全国の人が見るRIZINのリングに相応しい戦いを見せてほしい」と言われました。もちろん俺もそのつもりです。

――かねてからRIZINへの憧れを口にしていた朝倉選手ですが、実現が意外と早かったのでは?

朝倉 いや、今年の年末は絶対に出ると自分の中で決めていたので、その通りになったという感じです。RIZINに出るために東京にも出てきたので、やっとスタートラインに立った感じですね。

――アウトサイダーの前田さんからは何か言われましたか?

朝倉 先日、直接ご挨拶をさせてもらったんですが、「よかったな。頑張れよ」と言ってくれて、試合のアドバイスもいろいろといただきました。アウトサイダーがあったからこそ俺はここまで来られたので、前田さんには本当に感謝しています。

――上京したのはいつですか?

朝倉 今年の8月末ですね。兄貴(朝倉未来選手)と一緒に、「これからは格闘技で生きていく」という覚悟を決めて地元の愛知から出て来ました。今の所属ジム(トライフォース赤坂)のオーナーの堀鉄平さんとはアウトサイダー時代から仲良くさせてもらっていて、以前からいろいろと相談に乗ってもらっていたんですよ。「愛知の豊橋だと練習相手がなかなかいないし、仕事もフルでやっているから練習時間を確保できない」とか。そしたら堀さんが「東京に来なよ」と誘ってくれたんです。「ウチのジムで雇ってあげるよ」と。それで上京を決めました。

――ジムでの仕事内容は?

朝倉 キックボクシングとヒートジムのトレーナーをやっているんですが、働きながら自分もトレーニングに参加できるのがいいですね。空き時間にミット打ちやスパーリングもできるし、それとは別に、日本国内のトップ選手が集まるジムに出稽古に行ったり、週に1回このジムにアウトサイダー時代の仲間が集まって合同練習したり。愛知にいるときは1日2時間しか練習できなかったですが、今は1日4~5時間は格闘技やフィジカルのトレーニングに充てられるのがうれしいです。

――東京に来て感じることはありますか?

朝倉 地元の豊橋は海と山しかないようなところだったので、最初は東京の満員電車に乗るのが憂鬱でしたが、それも1カ月で慣れました。あとやっぱり、こっちは格闘家のレベルが高いです。本当に強い選手が集まっていると思います。以前の練習はお遊びだったんじゃないかと思えるくらい、今はいい練習ができています。上京してからの数カ月で、自分でも実感できるくらいメキメキ強くなっているので、それを早く試合で見せたいですね。

――今回、対戦予定だった伊藤盛一郎選手が大会直前になってケガで欠場。朝倉選手は急きょ、才賀紀左衛門選手と戦うことになったと、今月21日にRIZINから発表されました。

朝倉 なんせ直前ですから、ビザの関係で外国人選手を呼べないなどの事情もあり、RIZINも代役探しに苦労したみたいです。そんな中、紀左衛門選手が名乗りを上げてくれました。

――ズバリ、紀左衛門選手の印象は?

朝倉 このギリギリの段階で試合を受けてくれたことには感謝しますが、実力は全然違うな、と思います。

――全然違うとは?

朝倉 打撃においても寝技においても、俺のほうが遥かに上、という意味です。

――言いますね。

朝倉 そうでなきゃね。向こうはもともとキックボクシングの選手で打撃には相当自信があるみたいですけれど、その打撃でも俺のほうが上だと思うので、全局面で圧倒したい。判定はないと思います。兄貴からも「勝つのは当然。勝ち方にこだわれ」と言われています。RIZINは格闘技に詳しくない人も大勢見るから、わかりやすい勝ち方を目指したいと思います。

――紀左衛門選手との一戦はキャッチウェイト(正規の階級の規定体重ではなく、事前に両選手間の話し合いで決められた体重で試合を行うこと)になりましたが、結局、何キロで戦うのでしょう?

朝倉 俺は57キロに向けて減量中で、すでに61キロまで落としていたんですが、紀左衛門選手は約70キロあるとのことなので、たぶん63キロぐらいで戦うことになると思います。試合1週間前に契約体重が6キロ増えるなんてふざけた話だし、それでもやるっていう選手はまずいないと思うんですよね。でも誰もできないことをやったほうが面白いし、体重差があっても勝てる自信があるので受けました。減量中だったのが一転、今度は増量しないといけなくなりましたけどね。

――実はこのインタビューの直前、カレー屋から出てくる朝倉選手を目撃しました。

朝倉 ハハハ、見られちゃいましたか。俺、「インド人になるぞ」って言われるくらいカレーが大好きで、あの店には週に3、4回通っているんですが、年末に向けて通う回数がもっと増えるかもしれないですね。思いきり食べてパワー全開にしてぶっ倒します。

――「9戦8勝、6KO、2サブミッション」とプロデビュー後も高いフィニッシュ率を誇る朝倉選手ですが、今年6月のROAD FCで初黒星を喫しました。あの負けは自分の中で消化できましたか?

朝倉 あれは本当に収穫の多い試合でした。初めて試合で劣勢になったんですよ。自分が思っていたよりも相手の打撃とかに巧さがあって、初めて頭が真っ白になるという状況になった。そこで頭が回らずに同じパターンの攻撃しか出せなかったのが一番の敗因です。反省点が多かったので、そこをすべて修正しました。あのときよりも何倍も強くなった自信があります。

――アウトサイダーから地上波の大舞台への進出。今はどういう気分ですか?

朝倉 緊張はまったくなくて、本当に楽しみで仕方がない。あの目標にしていたリングでやっと戦えるときが来たな、やっと俺の戦いを世の中に見せられるときが来たな、という感じです。RIZINはやっぱり影響力がデカいですね。出ることが発表されただけで、SNSとかの反響がすごい。大会関係者が俺の試合は注目度が高いと言っていたんで、KOとかで勝てばダイジェストじゃなくフルで放映されると思います。

――勝って有名になれば、あのカレー屋さんもスポンサーになってくれるかもしれませんよ(笑)。では最後に改めて、試合に向けた抱負を語ってください。

朝倉 アウトサイダー出身ってことでレベルが低いとか批判されることもありますけど、強い奴は本当に強いってことを俺が今回、証明したいと思います。そして、今アウトサイダーにいる選手とかが、またこういうRIZINみたいな大舞台に出られるよう、そのきっかけを俺が作れたらいいなと思います

――ひとつ聞き忘れていたことがありました。RIZINには体重の近い那須川天心選手(19歳)がいますが、意識はしていますか?

朝倉 もちろん意識しています。俺はやりたいですけど、やっぱりキックルールじゃなく、MMA(総合格闘技)ルールでやりたいです。那須川選手は本当に強いし、天才だと思いますけど、まあMMAはそんな簡単には強くなれないし、MMAをやってきた選手と戦ったら手も足も出ないと思う。MMAの厳しさをいつか教えてあげたいと思います。

――俺が土をつけるまで負けないで待っていろ、って感じですか?

朝倉 そうですね。そのアピールをするためにも、年末は派手に勝ちますんで注目していてください。

(取材・文=岡林敬太/撮影=長谷英史)

【大会】
RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017

【会場】
さいたまスーパーアリーナ

【日時】
12月29日(金)※朝倉海の出場日
12月31日(日)

【放送予定】
12月31日(日)18時30分よりフジテレビ系列で全国放送

妊娠したら仕事がなくなる!? テレビ業界で働く“女性放送作家”の悲喜こもごも座談会

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 前編では、業界人のセクハラ問題から始まって、枕営業、風俗、合コン、年収など下世話な話盛りだくさんでお送りしました! 後編では女性ならではの悩み、“妊娠・出産”を経てママ放送作家となる決意や、そのために苦労したことなど……よりリアルな女性放送作家の実情をお送りします。

<座談会出席者>
A:制作会社勤務ののち、独立してフリーランスに。30代、1児の母。
B:出席者の中で唯一の事務所所属作家。現在妊娠中の30代。
C:広告会社のライターを経て業界に入りまだ1年目。20代の新参者。

 妊娠したら……「番組にはもういらない」?

――先ほどAさん、Bさんから子どもに関するお話が出ましたが、“ママタレント”“ママモデル”などと違って“ママ放送作家”さんは、業界内でかなり少ないのでは?

A そうかもしれないですね。正直、この業界って結婚している女性自体少ないので、結婚報告も妊娠報告もすごくしづらかったです。妊娠報告はギリギリまでしなかったな。変に気を使われるのも嫌でしたし。

B わかります! いまだに妊娠報告をできてない方が、私も多いです。だって今後、しばらくは遅い時間の会議や急な仕事なんかには対応できなくなるかもしれない。それで「じゃあもう君はいらない」って言われるのが怖いんです。

A フリーランスは一般企業と違って産休の制度なんてもちろんないですしね。覚悟を決めて一度仕事をリセットだ! ってくらいの気持ちがないと産めないかもしれません。

――妊娠・出産によって自分の積み上げてきたキャリアが0になってしまうかもしれないという不安がありながらも、ママになろうと決意したんですね。やはり産む前に不安はありましたか?

A 私の場合は、うれしさと同時にやっぱり「仕事どうしよう……なくなっちゃうかも」って、最初はそればっかり考えていました。「この子のせいで仕事がなくなった、なんて思って愛せなかったら……」ってところまで悩んで。でも、産んでみたらもう本当に本当に可愛いです。そんな感情は吹き飛びましたね。

B 私は、年齢的にそろそろ産んでおかないとまずい……となってから、妊活してできた子なので、待望でした。不安はまだまだたくさんありますけど、それこそAさんがおっしゃったように「一度仕事をリセット」でも構わない! また一からがんばっていこう! っていう気持ちでいます。

C はぁ……そうなんですね。恥ずかしながら、まだまだ先のことだなってのんきに考えていて、そこまで考えたことなかったです。こういうお話、すごく勉強になります。

――妊娠(出産)して、実際にお仕事は減りましたか?

A いくつかは「お疲れさまでした」って言われちゃいましたね。

C えっ。そんな感じでやんわり言ってくるんですか……?

A そうなんですよ! 「番組降りてください」とは言われなくて、「妊娠おめでとうございます~。しばらくゆっくりしてくださいね~」みたいな感じ(笑)。

B ハッキリ言われないのがむしろ怖いっ! まぁ、毎回取材に行って走り回らなきゃいけないようなお仕事は、どっちにしろ続けられないし、しょうがないですよね。台本だけ書けばOKみたいなのなら続けられるけど。

A そうですね。だから、せめて残ってる仕事は最後までやらなきゃって、ギリギリまで仕事してました。

C どのくらいギリギリまでしてらしたんですか?

A えーっと、私は里帰り出産だったんです。帰省の飛行機に乗るために、病院の診断書をもらいに行ったらお医者さんにメチャメチャ怒られたくらいまで、仕事してました。「いつまで仕事する気なの! 早く帰りなさい!」って(笑)。それでも仕事の都合上どうしても帰省が1日遅くなってしまって、航空会社に連絡したら「もう一度診断書を取り直してください」って言われて。もうお医者さんに怒られたくなくて、あきらめて新幹線で帰りましたよ(笑)。おなかの子にとって、いいママではなかったなって、今になって反省中です。ほんと、無事に産まれたからよかったですけどね。本来は無理をしちゃいけない時期だし。

B 私はいつまでできるんだろうな~。なんとなく予想で、出産後も続けさせてもらえるんだろうなってお仕事はいくつかありますけど、それ以外は厳しいかも。復帰だって、すぐにとはいかなそう。

A 私は「出産したらすぐに復帰します!」って触れ回っていましたけど、現実はそうはいかなくて、やっぱりかなりしんどかったですね。体調的な面もそうですけど、子どもがあまりに可愛いから、離れたくなくて大変(笑)。

――ここからはテレビ番組についていくつかお聞きしたいと思います。皆さんはテレビ番組を“作る側”ですが、“見る側”として好きな番組はありますか?

B たくさんありますよ~。マツコ・デラックスさんの番組は面白くてついつい見ちゃいますね。あとは『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)みたいな、密着取材型は知らない職業のお話が知れて興味深いです。

C わかります! 『ガイアの夜明け』『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)『情熱大陸』(TBS系)……あとは『和風総本家』(テレビ東京系)だとか『SWITCHインタビュー 達人達』(NHK Eテレ)だとか、プロのお仕事が見られる番組、私も大好きです。「プロでもこんなに努力してるんだから、私はもっと頑張らなきゃ」って意識を高くもてます。その時だけ……(笑)。

A 私もいっぱいあって言い切れない! 自分の携わった番組はもちろんですけど、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)や『さんま御殿』(日本テレビ系)のようなトーク番組は、芸人さんの話術がすごくて感心しちゃいますね。『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)によくある壮大なドッキリ企画もニヤニヤしながら見てしまいます。

――世間的に人気な番組は、放送作家さん側にも人気なんですね。では、逆に嫌いな番組はありますか?

C 個人的に、「芸能人のうわさ話」で盛り上がるワイドショーはあまり見ないです。誰が不倫したって誰が問題起こしたって、知り合いじゃないので興味がなくて……。あとは後付けされた笑い声や感嘆の声がたくさん入ってるお笑い番組も、ちょっと冷めちゃいますね。

B 今はもう当たり前ですもんね、笑い声の付け足し。

C 適度なら必要なものかもしれないですけど、ちょっとした情報でも「ええ~~!?」とか「へぇ~~!!」とかかぶされていて、あまりに多いのでそっちが気になってきちゃうんです。“薄っぺらい感じ”がするのかもしれません。

A そういうのって本当にウソくさいですよね。ドッキリ系にもよくありがちですけど、「絶対そんな反応しないでしょ」ってくらい大袈裟だったり露骨だったり。その時点で急に見るモチベーションがなくなります。

B 私は、そうですね……。ものまねグランプリみたいなやつ、嫌いです。ものまね芸人じゃない芸人さんが格好だけものまねして、コントはそのまま普段のもので。本来の土俵じゃないところに無理やり引っ張り出されている感じが、半端に見えるんですよね。きっと彼らも望んでやってるわけじゃないんだろうなって思っちゃいます。もともとモノマネ番組が大好きで学生時代に観覧に行ったくらいなんですが、最近は、実力派の方をもっと見たいのに、旬の芸人さんで引っ張る演出も多くて……。

C 無理してる感じとか、痛々しい感じが伝わっちゃったら、もうだめですよね。

――当たり前かもしれませんが、皆さんたくさんテレビ番組を見られるんですね。

B う~ん。それが、今はそうでもないかも。できるだけ見るようにはしていますけど、正直なかなか時間がとれないですね。

A ですよね。私も最近はあまり見てないです。中には「全てのテレビ番組を倍速で見て網羅してる」っていう、すごい作家さんもいるみたいだけど……。

B いるいる! 昔まさに倍速で見てる先輩がいて、「俺はこんなにも見てるんだ!」ってドヤ顔されてたっけ。ファイリングとかもしていてすごかったです。ただ、その先輩は今、どこにいるのか……それ以来、一度も見かけていません。

C 私の知っている先輩作家さんも、まさにそんな感じで、「過去のも含めて、とにかくテレビ番組をいっぱい見ろ!」って口を酸っぱくして言っていましたね。でも、ほかの作家さんにその話をしたら「つまらない番組ばっかりだから見なくていいよ! 今はネットで調べたら番組内容なんてすぐわかるんだし。自分が面白いと思えるものだけ見れば十分だよ」なんて真逆のことを言われて……どちらが正しいのかわからず、混乱しました(笑)。

A それ、ちなみにどちらの作家さんの方が売れてるか聞いてもいいですか?

C とんでもない差で、後者の作家さんです!

B (笑)。放送作家としてどっちが正しいっていうのはなくて、自分に合っている方でいいんだと思います。

――なるほど。では、復帰してから作りたい番組はありますか?

B そうですね、私は音楽が大好きなので、もっと音楽にかかわりたいです。まだあまりテレビには露出していないけど面白いバンド、かっこいいバンド、世の中にはいっぱいいるんです。そういう埋もれているアーティストさんたちが活躍できるようなものを作りたいですね。

A 私は女の人が見てためになる番組かな。男性が不快にならない程度に女性寄りにして、リアルな女性の本音だとか、情報を伝えたいですね。結婚、妊娠、出産だってテレビではあまりやらないから情報が少ないですし。「この情報、早く知ってたら……」って何度も思うことがありましたから。

B それはたっくさんありますね!

A 男性はちゃんとした性の知識を持ってる人が意外に少ないから、そういう人にも教えられるような番組になれば理想的です。

B そうそう。子どもを作ることだって「常にできる」「ヤレばできる」と思ってる人がいっぱいいますもん。出産が大変っていうのは認識してるかもしれないけど、その前の妊活も、実際に妊娠してからもどれだけ大変か、もっと世に広まればいいですね。

C 私は復帰ではなく、まさにこれから頑張らなきゃいけない立場ですが、Eテレのような、クリエイティブでためになる番組に携わりたいです。ぼーっと見てられる番組じゃなく、脳が揺り動かされるような! 自分の脳でしっかりと考えなきゃいけないものを作りたいです。

A いいですね! 子どもに安心して見せられる、むしろ見せたい番組をぜひ作ってほしいです。

――テレビ業界は昔から人気の職業ですが、業界や放送作家を志す女性に伝えたいことはありますか?

A まだまだ男性社会ですから、Cさんが受けたようなセクハラだとかモラハラだとかは、正直どうしてもあると思います。でも、最初にも少し言いましたが、30を超えると言われなくなりますよ! あと、業界にもちゃんとしていらっしゃる男性はたくさんいるので、あまり幻滅しないでくださいね(笑)。

C ちゃんとした男性、いるんですね。その言葉で少し安心しました。

B いますいます! 人間的に尊敬できる方、たっくさんいます。Cさんもこれから作家を続けていけば出会うと思いますよ。

C そう信じたいです(笑)。えっと、私はアドバイスなんて言える立場ではないのですが……。どんなハラスメントでも、耐えるだけが道じゃないはずだ、と思っています。作家に限らずどの職業でも、「この一本道しかない」ってことは少なくて、遠回りでも裏道でも、探せば道はそこだけじゃないはずです。放送作家になる道は本当に人それぞれなので、自分に合った道を見つけて頑張ってほしいです。

B 私のアドバイスは放送作家を目指す女性だけにじゃなく、出産を考える全ての女性に、という勢いなんですが、産みたいと思うときのために婦人科の検診など、今からできることは是非とも受けてください。私がそうだったのですが、「まだ若いし35歳くらいになったら考えればいいいや」なんて思っているうちに歳をとって、必死に妊活するようになってから初めて「早く行動していれば……」と後悔しました。。この仕事はいろいろな人と出会えて、毎日が新鮮で刺激的です。だからこそあっという間に時間が過ぎるので、プライベートをおろそかにするとどんどんツケが回ってきますよ。気を付けてくださいね!

――ありがとうございました!

(文:ヨコシマリンコ)

妊娠したら仕事がなくなる!? テレビ業界で働く“女性放送作家”の悲喜こもごも座談会

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 前編では、業界人のセクハラ問題から始まって、枕営業、風俗、合コン、年収など下世話な話盛りだくさんでお送りしました! 後編では女性ならではの悩み、“妊娠・出産”を経てママ放送作家となる決意や、そのために苦労したことなど……よりリアルな女性放送作家の実情をお送りします。

<座談会出席者>
A:制作会社勤務ののち、独立してフリーランスに。30代、1児の母。
B:出席者の中で唯一の事務所所属作家。現在妊娠中の30代。
C:広告会社のライターを経て業界に入りまだ1年目。20代の新参者。

 妊娠したら……「番組にはもういらない」?

――先ほどAさん、Bさんから子どもに関するお話が出ましたが、“ママタレント”“ママモデル”などと違って“ママ放送作家”さんは、業界内でかなり少ないのでは?

A そうかもしれないですね。正直、この業界って結婚している女性自体少ないので、結婚報告も妊娠報告もすごくしづらかったです。妊娠報告はギリギリまでしなかったな。変に気を使われるのも嫌でしたし。

B わかります! いまだに妊娠報告をできてない方が、私も多いです。だって今後、しばらくは遅い時間の会議や急な仕事なんかには対応できなくなるかもしれない。それで「じゃあもう君はいらない」って言われるのが怖いんです。

A フリーランスは一般企業と違って産休の制度なんてもちろんないですしね。覚悟を決めて一度仕事をリセットだ! ってくらいの気持ちがないと産めないかもしれません。

――妊娠・出産によって自分の積み上げてきたキャリアが0になってしまうかもしれないという不安がありながらも、ママになろうと決意したんですね。やはり産む前に不安はありましたか?

A 私の場合は、うれしさと同時にやっぱり「仕事どうしよう……なくなっちゃうかも」って、最初はそればっかり考えていました。「この子のせいで仕事がなくなった、なんて思って愛せなかったら……」ってところまで悩んで。でも、産んでみたらもう本当に本当に可愛いです。そんな感情は吹き飛びましたね。

B 私は、年齢的にそろそろ産んでおかないとまずい……となってから、妊活してできた子なので、待望でした。不安はまだまだたくさんありますけど、それこそAさんがおっしゃったように「一度仕事をリセット」でも構わない! また一からがんばっていこう! っていう気持ちでいます。

C はぁ……そうなんですね。恥ずかしながら、まだまだ先のことだなってのんきに考えていて、そこまで考えたことなかったです。こういうお話、すごく勉強になります。

――妊娠(出産)して、実際にお仕事は減りましたか?

A いくつかは「お疲れさまでした」って言われちゃいましたね。

C えっ。そんな感じでやんわり言ってくるんですか……?

A そうなんですよ! 「番組降りてください」とは言われなくて、「妊娠おめでとうございます~。しばらくゆっくりしてくださいね~」みたいな感じ(笑)。

B ハッキリ言われないのがむしろ怖いっ! まぁ、毎回取材に行って走り回らなきゃいけないようなお仕事は、どっちにしろ続けられないし、しょうがないですよね。台本だけ書けばOKみたいなのなら続けられるけど。

A そうですね。だから、せめて残ってる仕事は最後までやらなきゃって、ギリギリまで仕事してました。

C どのくらいギリギリまでしてらしたんですか?

A えーっと、私は里帰り出産だったんです。帰省の飛行機に乗るために、病院の診断書をもらいに行ったらお医者さんにメチャメチャ怒られたくらいまで、仕事してました。「いつまで仕事する気なの! 早く帰りなさい!」って(笑)。それでも仕事の都合上どうしても帰省が1日遅くなってしまって、航空会社に連絡したら「もう一度診断書を取り直してください」って言われて。もうお医者さんに怒られたくなくて、あきらめて新幹線で帰りましたよ(笑)。おなかの子にとって、いいママではなかったなって、今になって反省中です。ほんと、無事に産まれたからよかったですけどね。本来は無理をしちゃいけない時期だし。

B 私はいつまでできるんだろうな~。なんとなく予想で、出産後も続けさせてもらえるんだろうなってお仕事はいくつかありますけど、それ以外は厳しいかも。復帰だって、すぐにとはいかなそう。

A 私は「出産したらすぐに復帰します!」って触れ回っていましたけど、現実はそうはいかなくて、やっぱりかなりしんどかったですね。体調的な面もそうですけど、子どもがあまりに可愛いから、離れたくなくて大変(笑)。

――ここからはテレビ番組についていくつかお聞きしたいと思います。皆さんはテレビ番組を“作る側”ですが、“見る側”として好きな番組はありますか?

B たくさんありますよ~。マツコ・デラックスさんの番組は面白くてついつい見ちゃいますね。あとは『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)みたいな、密着取材型は知らない職業のお話が知れて興味深いです。

C わかります! 『ガイアの夜明け』『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)『情熱大陸』(TBS系)……あとは『和風総本家』(テレビ東京系)だとか『SWITCHインタビュー 達人達』(NHK Eテレ)だとか、プロのお仕事が見られる番組、私も大好きです。「プロでもこんなに努力してるんだから、私はもっと頑張らなきゃ」って意識を高くもてます。その時だけ……(笑)。

A 私もいっぱいあって言い切れない! 自分の携わった番組はもちろんですけど、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)や『さんま御殿』(日本テレビ系)のようなトーク番組は、芸人さんの話術がすごくて感心しちゃいますね。『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)によくある壮大なドッキリ企画もニヤニヤしながら見てしまいます。

――世間的に人気な番組は、放送作家さん側にも人気なんですね。では、逆に嫌いな番組はありますか?

C 個人的に、「芸能人のうわさ話」で盛り上がるワイドショーはあまり見ないです。誰が不倫したって誰が問題起こしたって、知り合いじゃないので興味がなくて……。あとは後付けされた笑い声や感嘆の声がたくさん入ってるお笑い番組も、ちょっと冷めちゃいますね。

B 今はもう当たり前ですもんね、笑い声の付け足し。

C 適度なら必要なものかもしれないですけど、ちょっとした情報でも「ええ~~!?」とか「へぇ~~!!」とかかぶされていて、あまりに多いのでそっちが気になってきちゃうんです。“薄っぺらい感じ”がするのかもしれません。

A そういうのって本当にウソくさいですよね。ドッキリ系にもよくありがちですけど、「絶対そんな反応しないでしょ」ってくらい大袈裟だったり露骨だったり。その時点で急に見るモチベーションがなくなります。

B 私は、そうですね……。ものまねグランプリみたいなやつ、嫌いです。ものまね芸人じゃない芸人さんが格好だけものまねして、コントはそのまま普段のもので。本来の土俵じゃないところに無理やり引っ張り出されている感じが、半端に見えるんですよね。きっと彼らも望んでやってるわけじゃないんだろうなって思っちゃいます。もともとモノマネ番組が大好きで学生時代に観覧に行ったくらいなんですが、最近は、実力派の方をもっと見たいのに、旬の芸人さんで引っ張る演出も多くて……。

C 無理してる感じとか、痛々しい感じが伝わっちゃったら、もうだめですよね。

――当たり前かもしれませんが、皆さんたくさんテレビ番組を見られるんですね。

B う~ん。それが、今はそうでもないかも。できるだけ見るようにはしていますけど、正直なかなか時間がとれないですね。

A ですよね。私も最近はあまり見てないです。中には「全てのテレビ番組を倍速で見て網羅してる」っていう、すごい作家さんもいるみたいだけど……。

B いるいる! 昔まさに倍速で見てる先輩がいて、「俺はこんなにも見てるんだ!」ってドヤ顔されてたっけ。ファイリングとかもしていてすごかったです。ただ、その先輩は今、どこにいるのか……それ以来、一度も見かけていません。

C 私の知っている先輩作家さんも、まさにそんな感じで、「過去のも含めて、とにかくテレビ番組をいっぱい見ろ!」って口を酸っぱくして言っていましたね。でも、ほかの作家さんにその話をしたら「つまらない番組ばっかりだから見なくていいよ! 今はネットで調べたら番組内容なんてすぐわかるんだし。自分が面白いと思えるものだけ見れば十分だよ」なんて真逆のことを言われて……どちらが正しいのかわからず、混乱しました(笑)。

A それ、ちなみにどちらの作家さんの方が売れてるか聞いてもいいですか?

C とんでもない差で、後者の作家さんです!

B (笑)。放送作家としてどっちが正しいっていうのはなくて、自分に合っている方でいいんだと思います。

――なるほど。では、復帰してから作りたい番組はありますか?

B そうですね、私は音楽が大好きなので、もっと音楽にかかわりたいです。まだあまりテレビには露出していないけど面白いバンド、かっこいいバンド、世の中にはいっぱいいるんです。そういう埋もれているアーティストさんたちが活躍できるようなものを作りたいですね。

A 私は女の人が見てためになる番組かな。男性が不快にならない程度に女性寄りにして、リアルな女性の本音だとか、情報を伝えたいですね。結婚、妊娠、出産だってテレビではあまりやらないから情報が少ないですし。「この情報、早く知ってたら……」って何度も思うことがありましたから。

B それはたっくさんありますね!

A 男性はちゃんとした性の知識を持ってる人が意外に少ないから、そういう人にも教えられるような番組になれば理想的です。

B そうそう。子どもを作ることだって「常にできる」「ヤレばできる」と思ってる人がいっぱいいますもん。出産が大変っていうのは認識してるかもしれないけど、その前の妊活も、実際に妊娠してからもどれだけ大変か、もっと世に広まればいいですね。

C 私は復帰ではなく、まさにこれから頑張らなきゃいけない立場ですが、Eテレのような、クリエイティブでためになる番組に携わりたいです。ぼーっと見てられる番組じゃなく、脳が揺り動かされるような! 自分の脳でしっかりと考えなきゃいけないものを作りたいです。

A いいですね! 子どもに安心して見せられる、むしろ見せたい番組をぜひ作ってほしいです。

――テレビ業界は昔から人気の職業ですが、業界や放送作家を志す女性に伝えたいことはありますか?

A まだまだ男性社会ですから、Cさんが受けたようなセクハラだとかモラハラだとかは、正直どうしてもあると思います。でも、最初にも少し言いましたが、30を超えると言われなくなりますよ! あと、業界にもちゃんとしていらっしゃる男性はたくさんいるので、あまり幻滅しないでくださいね(笑)。

C ちゃんとした男性、いるんですね。その言葉で少し安心しました。

B いますいます! 人間的に尊敬できる方、たっくさんいます。Cさんもこれから作家を続けていけば出会うと思いますよ。

C そう信じたいです(笑)。えっと、私はアドバイスなんて言える立場ではないのですが……。どんなハラスメントでも、耐えるだけが道じゃないはずだ、と思っています。作家に限らずどの職業でも、「この一本道しかない」ってことは少なくて、遠回りでも裏道でも、探せば道はそこだけじゃないはずです。放送作家になる道は本当に人それぞれなので、自分に合った道を見つけて頑張ってほしいです。

B 私のアドバイスは放送作家を目指す女性だけにじゃなく、出産を考える全ての女性に、という勢いなんですが、産みたいと思うときのために婦人科の検診など、今からできることは是非とも受けてください。私がそうだったのですが、「まだ若いし35歳くらいになったら考えればいいいや」なんて思っているうちに歳をとって、必死に妊活するようになってから初めて「早く行動していれば……」と後悔しました。。この仕事はいろいろな人と出会えて、毎日が新鮮で刺激的です。だからこそあっという間に時間が過ぎるので、プライベートをおろそかにするとどんどんツケが回ってきますよ。気を付けてくださいね!

――ありがとうございました!

(文:ヨコシマリンコ)

テレビ業界の異常なセクハラ、年収1000万円作家のウラ側……「女性放送作家」座談会

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 「放送作家」――耳にしたことはあるけれど、具体的に何をしているかわからないという人は多いのではないでしょうか? 簡単に言ってしまうと、放送作家とはテレビやラジオなどの番組制作における「企画」や「構成」を考える人々のこと。今回は、まだまだ男性社会であるテレビ業界の中でしっかりと生き抜く“女性放送作家”にスポットをあて、業界でのやりがいや苦労、結婚・妊娠・出産まで、女性だからこそ抱える問題に迫りました!

<座談会出席者>
A:制作会社勤務ののち、独立してフリーランスに。30代、1児の母。
B:出席者の中で唯一の事務所所属作家。現在妊娠中の30代。
C:広告会社のライターを経て業界に入りまだ1年目。20代の新参者。

 「いつセックスさせてくれるの?」業界で飛び交うセクハラ発言

――今日の座談会は、「テレビ業界でのセクハラ」をメインに語っていただければと思います。さまざまな立場の女性放送作家さん3名にお集まりいただきました。女性の作家さんは、業界でどのくらいいますか?

B 少ないと思います。作家に限らず、業界自体まだまだ女性人口は少ないですね。

C 私はまだ1年目で作家の知り合い自体そう多くはないんですが、女性作家さんの知り合いは0人です。なので作家の男性に、おかしなことを言われても、セクハラなのかどうかも相談できる人がいなくて……。

――どんな発言なんですか?

C 日常会話の中で、「俺って男としてセーフ?」のような感じで話が始まります。私にとってその方は大先輩なので「いえ、アウトです」なんて口が裂けても言えず、同調していると「で、いつセックスさせてくれるの?」とか、「プレイ中はMでしょ?」とかどんどん進んで。彼としては冗談のつもりで悪意もなく、セクハラだなんて露ほども思ってないんでしょうけど、一般企業で働いていた経験のある私としては衝撃でしたね。会社だったら即異動か解雇レベルですもん。

B あ~そういう人、いますね。フリーの場合なら会社って枠組みがない分言い放題だし、ある程度年齢を重ねてたら注意する人もいなくなるから、恥をまき散らしてることに気が付かないんですよね。ある意味かわいそう。

C 些細なことだって受け流せばそれまでなんですが、お会いするとずーっとそんな調子なので、毎回気力をすり減らされていました。セクハラというより、モラハラですかね。

A すごい方ですね……。女性側が30歳を超えるとハラスメント系はかなり減るから、今は辛抱しかないかもしれないですね。

――辛抱しかないんですか? Aさん、Bさんもそのような経験が?

B ありますね~。まだ業界に入ったばかりの頃……それこそCさんと同い年くらいの若さで。右も左もわからず企画会議に参加して、そこで初めて出された宿題が「下ネタで替え歌を作ってこい」で。

A・C エッ! いやだ~!

B ですよね。当時は訳もわからず必死に考えました。でも全然できなくて……。下ネタって言ってもどの程度なのかもわからないし、考えあぐねた末に先輩に相談したら「あ~それね。ただのセクハラ」って言われたんです。企画は関係なく、私が考えた替え歌を発表させることを楽しもうとしてたんでしょうね。その日はさすがに泣いて帰りました。

A それが最初の宿題ってキツイですね……。

――企画の会議中はどんな雰囲気なんでしょうか?

A もはや社内の男たちの性癖や性事情を全て把握できちゃうくらい、会議ではそういう話題が出ますよ。20~30人いる会議室で大学時代のセックス事情を話し出すD(ディレクター)とか、風俗の話で延々盛り上がったりだとか。感覚的に、午後10時を回ると下ネタ解禁って感じです。

B 会議前の雑談でもよく風俗の話はしていますね~。前に一度「お気に入りの女の子とのプレイを盗聴してきたんですよ~! Bさんもぜひ聞いてください!」と若いADに振られて、もうビックリしましたね。さすがにドン引きしたので断りましたけど。

C 断れたんですね……よかったです。私は振られた下ネタを一度嫌がったことがあるんですが、「若い女ぶりやがって。この程度でダメだったら業界じゃやってけねーよ」なんて言われてしまって、「そんな業界なんだ……」って嫌になりました。それはバラエティの会議だったので、余計ひどかったのかもしれません。

B バラエティはどうしても下ネタが多くなるかも。冷静に考えたらそんな業界おかしいのに、もう慣れちゃってオカシイって思わなくなってきちゃってるのかもしれないです。危ない慣れですね。 個人的には、朝の情報番組だとかNHKだとかの会議はまともで、セクハラや下ネタは少ないイメージです。

――業界といえばP(プロデューサー)とアイドルなんかの枕話はよくウワサされますが、女性作家さんたちにも、そういうウワサはあるんでしょうか?

B 私の知り合いが実際に誘われたって話は聞きました。とある番組に携わっていた子なんですが、「視聴率が良かったから」とPから10万円余計に振り込まれていて、おかしいな……と思いながらも打ち上げに行ったら、なぜかPしかいなかったらしくて。2人でご飯の後、案の定ラブホテルに無理やり連れてかれそうになったって言っていました。通りがかった人に助けられて無事だったらしいですが、怖いですよね。

C アイドルやタレントならそういう話ありそうですけど、制作側でもあるんですね……。恐ろしい……。

――逆に、それを逆手にとって女を武器にしている女性作家さんはいないんでしょうか?

A いるのかもしれないけど、わからないなあ。

B いたとしても、正直それだけじゃ長くは続かないよね。女を武器にして番組に入れてもらっても、何もできないんじゃ次は呼ばれないだろうし、結局、実力がないと残っていけない世界な気がします。

A そうやって思われていたことはあったかも。企画会議中、私にだけすごく態度が悪い男性作家がいて、「なんで私にだけそんな態度なの?」って、こっちも嫌いだったんですけど、酒の席で話す機会ができたときに思い切って聞いてみたんです。そうしたら「女っていうだけで急に番組に呼ばれたりするし、どうせ業界の女は誰か偉いやつらと寝てるんだろって思ってた」って言われたんですよ。

C 「ハァ? 何言ってるの?」って感じですね!

A そうそう、まさにそう言いました。その男性とは今でこそ仲良しになったけど、「女性ってだけで、そんなふうに思われることもあるんだな」って勉強になりました。

――最初から偏見の目で見られると、ちゃんとしている部分は見てもらえないことが多いですよね。

B ですね。私は20代の頃、演出の男性にとても好かれてしまったことがあって。その方の企画に再度呼んでもらえたとき、女スタッフから「やっぱりいるんだ。お気に入りは楽でいいよね~」と嫌味を言われましたよ。正直、その頃は必死で頑張ってネタをたくさん通していたので、次も呼ばれたのはその成果だと思うのですが、傍から見たら“お気に入りの女だから”って感じだったんでしょうね。

C 少し見ていたら、まじめにやってることくらいわかるはずなのに、そもそも“女だから”ってだけで舐められている感じがたまらなく嫌ですね。

――一方で、女性放送作家だからこその仕事もあるんですよね?

A それももちろんあります。「女性目線」が欲しい、というところで呼んでもらったりしますね。「女性目線」と言われると、ものすごくハードルが上がりますが! どっぷりテレビの業界に染まり、下ネタも全然OKに染まってるといわれる私が、普通の女性目線を語って良いものかと。でも、求められることはすごくありがたいし、一般的な女性目線を忘れないようには心がけています。

B あとは、企業の取材に行ったときに、こちら側に女性がいた方が打ち解けて話してもらえたりして、意外に重宝されますね。女の子の家で取材だったりするときも、女性スタッフがいた方が女の子も安心してしゃべれるみたいで。こういうのは女性ならではですよね。

――なるほど。「女性目線」のほかに、よく言われる言葉ってありますか?

A うーん。会議が行き詰まった頃に必ず「女性としてはどう?」って振られるの。あれは本当に困る!

B ありますね! 行き詰まっている状況を打破してほしいのはわかりますけど、煮詰まってるもんは煮詰まってますから。女性関係なくどうしようもないのに、そんな状況のときだけ振らないでって感じ。

C 私は企画会議もまだまだあまり参加できないので、そういう経験は少ないですが、「合コンセッティングして!」はよく言われます。女性作家というより、まだ若い女としてしか見られてないからかもしれないですね。言ってこられた男性作家さんは、年収が1000万円を超えている方だったので、合コンなんかしなくても女性が寄ってきそうなんですけどね。

――年収1000万超え! すごいですね。放送作家さんって実は稼げる職業なんですか?

B どうでしょう、ピンキリだと思います。上はそれこそ億プレイヤーですけど、数えられるくらいじゃないでしょうか。下はどうなんだろう、よくて月4万円とか。

A 放送作家は、直接ディレクターさんと作業することが多いので、そこで認められたり、「この人やりやすい」と思ってもらえたら、どんどん仕事に呼んでもらえたりします。あとは、何だかんだ人と人の相性も大事な仕事なので「ディレクターと仲良し」というのも大事なポイント!

B いますね! そういう人。「会議での発言も企画も面白くないのに、なんでずっと残れてるんだろう」って人は、大体Dとプライベートでも仲が良くて、そのディレクターがいる番組は大体呼んでもらえるんですよね。

C へぇ~! 男性同士でのえこひいきみたいなのも、やっぱりあるんですね!

――そういう放送作家さんも含め、稼いでる人はやはり激務なんでしょうか?

A たいていの方は「ほとんど寝てない」ってレベルで毎日を過ごされているみたいです。

C あ、そういえば年収1000万超えの男性作家さんも「1月1日と2日以外、丸一日の休みは取ってない」って言っていました。睡眠時間も「5時間眠れたらいい方」だとか。

B 全て自分でやってらっしゃる方はそういう方も多いみたいですけど、大御所さんの中には、弟子や後輩に台本を書かせて、自分はそれを確認するだけって人もいますよ。いくら台本を肩代わりしたって、番組のエンドロールで名前が流れるのはその大御所さんだけなんですけどね。

A 「使い勝手がいい」ってウラでディレクターや大御所に言われているのにも気づかず、はした金で使われる若手作家の多いこと多いこと……。

C 私のような若手にとっては、先輩作家さんから頼まれたら“断る”っていう選択肢が基本的にないので、足元を見られているのがわかっていてもやっちゃうでしょうね。そもそもその“はした金”すら出ないお手伝いもいっぱいしますし……。

――だんだん夢のない話になってきましたね(苦笑)。

B 稼げる金額的には夢のある職業だとは思います。けど、やっぱりそこまで達するのは相当大変ですね。当たり前ですが。

A 私は子どもがまだ小さいからそっちに割かなきゃいけない時間も多いし、現状は難しいかな。

B そうですね。私も独身時代のようにがむしゃらに、っていうのは正直体的にも厳しいです。たくさんお仕事をしたい! っていう気持ちはありますけど、宿題を抱えれば抱えるほどなぜか“つわり”がひどくなるので、今は無理しないようセーブしています(笑)。

C えっ! 宿題というストレスが“つわり”となって出てきちゃうんですか!?

――Aさん、Bさんはママということもあり、今後は“仕事と子育ての両立”が求められますが、後編では結婚から妊活、出産まで、“ママ放送作家”としてのお話を詳しくお伺いします!

(文:ヨコシマリンコ)