『渡鬼』女優・宇野なおみが“港区女子”に物申す! 自分の価値を「他人に委ねる」ことの怖さ

unonaomisan02

(前編はこちら)

■港区女子に告ぐ「ロシア赴任とかになったらどうするの?」

――最近は、オンナの色気をフル活用して戦略的に成り上がろうとする“港区女子”にも注目が集まっています。権力のある男性に見初められていい暮らしをしたり、仕事を与えてもらったりもする、港区界隈に出没する野心にあふれる女性のことを指します。

宇野なおみさん(以下、宇野) “港区女子”を知らなかったので、調べました。私が得意な英語を生かして通訳の仕事をしているように、自分の能力を仕事にするという面では、オンナの色気をスキルとして使うのも、正しいとは思います。ただ、それが自分の実力なのか、未来があるかというのは別物。自分の価値を他人に委ねてしまうのは怖いなぁと思いますね。

 だって、オンナの色気だけでステップアップして、ロシア語がわからないのにロシア赴任とかになったらどうするの? そこで「頑張ってロシア語学ぼう」ってなればまだいいけど、相手に称賛されてちやほやされることが自分を肯定できる理由になっていたら、「もしそこにお魚しかいなかったらどうするの?」「お魚に褒めてもらうのかな?」って思いますもん(笑)。

――ちなみに、宇野さんのまわりに“港区女子”のような女性はいますか?

宇野 いませんね。でも、古くは花魁とか、“オンナ”で稼いできた人たちもいるわけだし、港区女子も自分の意思で極めているならいいと思います。芸能界には、可愛さを武器にしている人もいっぱいいますし、彼女たちの努力はプロフェッショナルで、生活できるくらいお金を稼いでいるので、それはすごいことだと感じます。ただ、見た目を磨くことが仕事に直結するわけではない場合、やっぱり「仕事の評価は、見た目ではなく仕事ぶりで判断される」のではないでしょうか。

――華やかなところだけを拾って、勝ち組と認められたい港区女子ワナビーも増えているんです。

宇野 ワナビーなら好きにすればいいと思いますけど、時間だけはみんな有限なんですよ。夜遊びして、オーパスワン空けて、明け方タクシーで帰って~とか、それがいいならいいのですが、私は面倒だしイヤだから、その時間を使って勉強したり寝たりしたいです(笑)。興味あることに時間を使いたいですね。その結果、茶道の上級免状をいただいたり、TOEICで910点取れたりしたので、結局は時間の使い方に集約されると思います。「限られた時間」と言うと、みんな「若いうちに」って言いますけど、若さに限定する必要もないと思うんです。86歳ですからね、オンナの平均寿命。折り返し地点が40歳ですよ! そう思うと長いじゃないですか(笑)。

 私はフリーランスで、実家暮らしで、結婚もしていなければ子どももいないと、世間一般からみれば“負け犬役満”かもしれませんが、毎日楽しいし、ストレスも少ないし、なにより自分で納得できています。「人より良ければいい」という考えだと底なし沼に落ちるので、ポジティブな意味での自己満足ができる時間の使い方をすればいいと思います。

――宇野さんが時間の使い方で意識していることはありますか?

宇野 大事なことは後回しにしないこと。私の周りは年配の方が多いので、のんびりしていると置いて行かれちゃう(笑)。先日も、『渡鬼』でご一緒した大好きな俳優さんが60歳で亡くなられたんです。「一緒に舞台に立ちたい」と思っていたので、ものすごく悲しい思いをしました。女優業をもう一度本格的にやりたいと思ったのも、またチャンスを逃してしまうことがないようにとの思いからです。

――『渡鬼』で演じられた野々下加津ちゃんも、向上心あふれる女性だったと思うのですが、宇野さんから見て加津ちゃんはどんな女の子ですか?

宇野 加津ちゃんと私を同一視している方も結構いて、「東大生なのよね」とか「親いないのね」とか言われることもよくありますし、私自身も自分の一部みたいな感じなので、どう思うかと言われるとちょっと困るのですが(笑)、人としてすごい子だなっていう尊敬はずっとありましたね。ためらいない飛び込みで自分の才能を開花させていくところとか、「人と違っても何とかなる」という思いは、加津ちゃんから学んだと思います。

――演じたことで影響を受けたところなどはありましたか?

宇野 あります、あります! 加津ちゃんは私よりデキる子ですから(笑)。一番は、あきらめないことです。加津ちゃんの立場は非常に複雑で、コンプレックスもあったと思うのですが、彼女はそんなバックボーンを跳び箱の踏切板にしていたんですよね。私は高校を中退し、大検で早稲田大学に入りましたが、それは普通に生きていたら思いつかなかったルートだったので、「自分で切り開けば道は常にある」という加津ちゃんの考え方が強く影響していたんだと思います。

 あと、私は昔からゴールキーパーにはなれないタイプで、人と人を紹介したら自分が入り込めないほど2人が仲良くなってしまったり、自分が出会いを探しに行った場で、友達にだけ恋人ができたりと、「誰かの1番」にはなれないパサーであることがコンプレックスでした。でも、人の言葉を、自分を介して伝えていく通訳や役者は、パサーじゃないと務まらない。コンプレックスを強みに変えることができたからこそ就けた仕事だと感じています。

――ちなみに、加津ちゃんを演じてきた中で、一番印象に残っているシーンはどこですか?

宇野 1つは、一人芝居をしながら階段を下りていくシーン。「ごはんまだかなぁ。『腹減った、早くメシ!』なんて言える身分になってみたいよ」という一人芝居の様子に、いつもは強い女の子の本音が出ているような気がしました。もう1つは、母親との再会のシーンですね。決して恨み節を投げつけず、母親にも事情があったことを慮ったセリフしかないんですよ。でもそれは、先に泣き出した母を見て、「お母さんは強くない人だ」ということを受け入れられたから、手を差し伸べることができたんだろうなって。人より不幸値の最大値が大きいからこそ、懐が深いというか。加津ちゃんの強さと優しさを感じられたシーンでした。

――今後チャレンジしてみたいジャンルなどはありますか?

宇野 文章を書く仕事をしてみたいです。文章を書くのが好きというのも、橋田寿賀子先生や加津ちゃんから覚えたことですね。これまでも『渡鬼』のホームページで連載したり、ブログを続けたりしてきましたが、自分の不器用な生き方が誰かの役に立つようなことも書いてみたいです。私のように、ずっと人と違って生きてきて、それを「ま、いっか!」と思いながら過ごせている人は今の日本ではレアなので、「私みたいなのもいるんだよ!」というのを知ってもらえれば、自信を持ってもらえるんじゃないかなって。高校を中退した人とか、コンプレックスを抱えている人とか、同じような境遇の人の心に伝わったらいいなと思います。

――最後に、今後の目標を教えてください!

宇野 赤木春恵さんが88歳で認定されたギネス記録「世界最高齢での映画初主演女優」を目指したいと思っています。本当に素晴らしいことだと思うので、できることなら、私もそういう女優になりたいですね。
(取材・文=千葉こころ)

宇野なおみ(うの・なおみ)
1989年生まれ、早稲田大学文化構想学部卒業。96年、『マダム・バタフライ』で初舞台を踏み、98年から『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)に野々下加津役としてレギュラー出演。大学卒業後、カナダ・バンクーバーのカレッジに留学し、「TOEIC」のスコアは990点満点中、910点という語学力を得る。現在は女優以外にも、通訳として活躍している。

「壇蜜の宮城PR動画」「サントリー頂」他、“性差別”CMの問題は「演出ではなく構造」? 

(前編はこちら)

■おっぱいを強調するCMはあっても股間を強調するCMはない

――「女性も男性を顔で選ぶようになった」というお話がありました。ジャニオタや腐女子などが、男性を消費していること自体に嫌悪感を示す男性もいますよね。

田中東子氏(以下、田中) これまで男性は女性を消費したり、商品化したり、性的アイコンにしてきたわけですが、ジャニオタや腐女子などは、まさにそれを男性に対して行っています。それがムカつくんでしょう。あと、対象になっているイケメンを、男性がバカにする風潮もあるように思います。男性も女性も、「消費の対象とみなされる」「もの扱いされる」というのは、共通して不快感を覚えるのでしょう。ただ、“個人向けの趣味のもの”と、“公共性のあるCM”とでは話が全然違います。CMで、水着の女の子を出す必然性はあるのか? おっぱいを強調する必然性はあるのか? 女子高生をやたら出す必然性はあるのか? どうしてCMを作るときにそれを問わないのかと感じますね。

――CMにおいて、女性を性的アイコンとして描くように、男性を性的アイコンとして描けば平等かという話でもないですよね。

田中 例えば、炎上したサントリー「頂」のCMは、男性が出張先で現地の女性たちと出会い、食事をともにする様子が描かれているのですが、その女性たちはおっぱいを強調してきます。もしこれが男女逆転していたとしたら、どうでしょう。女性が出張先で次々イケメンと出会い、その男性が股間を強調してくる……それって多くの女性が、怒るというより怖いと思うでしょうし、あり得ない内容ですよね。そもそも「セクシーな男性に女性がチヤホヤされるCM」ってあんまり想像できない。これまでの社会の中で、どういった立場に置かれていたかで、その人の怒りのポイントは違ってくるんです。先ほど指摘したように、男女でどういった差別表現に不快感を覚えるかは、共通点もある一方、異なる部分も多いのではないでしょうか。

――「女性差別」と声を上げる女性と、「男性差別」と声を上げる男性の間にも、溝を感じてしまいます。

田中 ネット上には、「男性も差別されているのに、フェミニストたちは自分たちのことばかり主張しやがって」といった論調の人がいますが、あれはあまりよろしくないですよね。差別されている女性と差別されている男性で手を取り合い「どこが嫌なの?」と、それぞれ理解を深め、対話の場が生まれればいいのに……と感じますね。

――女性差別だけでなく、男性差別CMの炎上が起こるようになったことで、「こうも炎上ばかりでは、表現の自由が侵害される」「なんでも取り締まるのはどうなのか?」といった指摘をする人も目につくようになりました。

田中 2017年9月、タレントの壇蜜さんが出演する「仙台・宮城観光キャンペーン推進協議会」制作の観光PR動画(浦島太郎をモチーフにしたストーリー仕立てで、壇蜜が、宮城のゆるキャラ「むすび丸」を「涼・宮城」に連れて行きもてなすという内容。壇蜜の唇のアップとともに「ぷっくり膨らんだ、ず・ん・だ」など性的と取れる台詞が随所に散りばめられたほか、亀の頭をなでると大きくなるといった演出も)が炎上しました。

 あの動画に対して、「壇蜜の唇のアップや、亀の頭が大きくなる演出をやめればいいのか」と言い出す人がいたのですが、そもそも「女性が男性をもてなすという構図」からして問題なんです。個別の表現を規制して解決する問題ではなく、CMの構造自体が差別的ではないか……ともっと深く考えるべきだと思います。

――この観光動画に関して、「別に全然気にならない」という女性もいましたよね。

田中 確かにいますよね。日本の広告業界はこれまで、女性を性的アイコンとして扱うCMを数多く作ってきただけに、それに慣れてしまったのかもしれません。学生の中には、「普段テレビや街中で見たときは何も思わなかったけど、あらためて授業で見て、おかしいと気づいた」という人もいましたよ。

――ちなみに17年は、CMだけでなく、書籍に対しても「男性差別だ」といった声が上がっていました。夫の死を願う妻たちの本音がつづられた投稿サイト「だんなデスノート」が『だんなデス・ノート ~夫の「死」を願う妻たちの叫び~』(宝島社)として書籍化されたのですが、妻たちが夫をボロクソに罵倒する内容が物議を醸しています。

田中 私としては、“日本の家庭内における男女間での権力格差”によって出てきてしまった本なのかなと思っています。なぜ『つまデス・ノート』ではないかというと、妻に抑圧されている夫より、夫に抑圧されている妻の方が圧倒的に多いからかなぁと。この妻たちは、好きこのんでこんなことを言うようになったわけではないと思うんですよ。夫にDVや不倫をされ、しかも表立って意見を言うこともできず、こういった表現でしか訴えられなかったのでは……と。

 『だんなデス・ノート』は、「ENEOSでんき」「保険のビュッフェ」のCMのように、あきらかに改善されるべき男性差別と同列で並べるのは違うと感じます。サイトの片隅に投稿された、夫に抑圧された妻たちの叫びが、書籍となったことで目をつけられたというか。仮に妻に抑圧された夫たちの叫びが出てきたとしても、女性差別には当たらないと思います。出版されたことによって、夫に抑圧されている妻がこんなにいっぱいいるんだ……という事実が目に見える形となり、では「何を変えていく必要があるのか?」を考える対話のきっかけになるのであれば、それは意味があるのではないかと感じますね。

■もはや日本社会は一色じゃない

――今後、性差別CMがなくなるためには、どうしたらいいのでしょうか?

田中 先ほども言ったように、社会やメディア環境の変化にもっと敏感になるべき。もちろんそれを察知して、いいCMを作っている人もいっぱいいますけどね。女性差別はダメだけど、男性差別はOKという安直な方向にも行かないようにしてもらいたいです。

 P&Gが「家事分担をJOBからJOYへプロジェクト」の特設サイトに公開した動画「ふたりでわけあうもの」は、妻ばかりに家事の負担をかけていた状況から、「2人で一緒に家事をしよう」と考え直す夫婦の様子が描かれている内容で、好評を博しました。しかし、これを見たLGBTの人や、シングルの人は、「ウッ」と思うかもしれないです。スウェーデンの自動車メーカーVolvoの CMには、男女カップルだけでなく、ゲイカップルも登場しているそうです。それくらい現実の社会は、多様化しているし、それを反映したCMも制作されているんです。もはや日本社会も一色じゃない、それを踏まえて広告を制作していくべきだと思っています。

『渡鬼』加津ちゃんこと宇野なおみ、人生初グラビアを経験した今“オンナの野心”を語る!!

 テレビドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で、1998~2011年にかけて、波乱に満ちた人生を歩む女の子・野々下加津ちゃん役を演じていた宇野なおみさん。2017年、「フラッシュ」(光文社)で人生初のグラビアに挑戦し、世間では「あの加津ちゃんが大人になった!!」「子どもの頃のイメージが強かったからビックリ!」などと大きな話題となった。

 現在、女優として活躍する傍ら通訳の仕事も行うなど、精力的にどんどん活動の場を広げている宇野さんに、今回は“オンナの野心”をテーマに取材を敢行。グラビアに挑戦した理由、安定志向といわれる若い女性に思うことなど、赤裸々に語っていただいた。

■石井ふく子さんからかけられた感動的な言葉

――宇野さんの人生初グラビア、拝見しました! 世間では「これまでのイメージとは、まったく違う挑戦!」といった声も多かったですが、撮影はいかがでしたか?

宇野なおみさん(以下、宇野) そうですね、ポージングで筋肉痛になりました(笑)。お話をいただいたときは「需要があるのか?」と思いましたけど、もともとグラビアが好きだったこともあり、特に何も考えず挑戦しました(笑)! ただ、「後がないから脱いだ」とか「調子に乗っている」といったバッシングは危惧していたので、たくさんのメディアで前向きに捉えてもらえ、特に女性から好評をいただけたのは、うれしかったです。

――ご両親やご友人の反応はどうでしたか?

宇野 父は「女優だから仕方がない」と言っていましたが、母には「まだスキャンダルもないのに!? 雑誌が出る前にねつ造してもらった方がいいんじゃない?」と爆笑されたんですよ。「それが母親の言うことか!」って返しました(笑)。友達の間では、意外と女性陣の方が好意的に受け取ってくれて、逆に男性は「袋とじ開けちゃったんだけど、よかったのかな……」とか、戸惑っている人が多かったですね。大学時代に所属していた茶道部の後輩から聞いた話では、部内のグループラインにも私の記事が上がっていたそうです(笑)。

――『渡る世間は鬼ばかり』のプロデューサー・石井ふく子さんには、報告されましたか?

宇野 はい、グラビアの話が来たとき許可を取りに伺いました。そのときは“フッ”と微笑まれていて、その後、仕上がりを見せに行ったときには「……大人になったわね」と言っていただけたんです。周囲も自分も“子役”という枠の中で私を見ていたので、石井先生の一言で子役から脱したような、感動的な瞬間でした。

――「グラビアが好き」とのことですが、どんなところに惹かれるんですか?

宇野 スタイルです。私はもともとバレリーナのような体形を目指していたのですが、第二次性徴期に太ってしまい、自分の体形にコンプレックスを持つようになっていました。けれど、グラビアを見たときに「このモデルさんたちみたいな体形になれれば、自分の体が好きになれるかもしれない」と思ったのがきっかけです。

――グラビアアイドルは、まさにあこがれれのボディライン?

宇野 そうですね。私は筋トレを黙々と頑張ってきたのですが、それは誰かに好かれるためじゃなく、自分自身のためなんです。今回のグラビアで、そこを評価していただけたのは、すごくうれしかったです。

――グラビアという新しいジャンルに飛び込んだ宇野さんに、今回は“オンナの野心”をテーマにお話をお聞きしたいです。宇野さんは、ご自身に“野心”があると思いますか?

宇野 私にとっては『渡鬼』の現場でご一緒した大女優さんたちがデフォルトなんです。日本で普通に成長する女の子に芽生えるであろう野心より、遥かにスケールが大きい環境で育ってきたこともあり、今回のような挑戦が“野心”と言われてもあまりピンとこないんですよね(笑)。ただ、女性としてのレベルが高い方々に囲まれ、そのすごさを肌で感じてきたので、常に自分はまだまだだと思っています。いずれは自分もあのくらいのレベルにならないといけないのではないかと感じてしまって……ゴールが遠いんですよ(笑)。

――日本を代表するような大女優さんばかりですもんね。

宇野 そんな方々とご一緒できたことは、私にとって一番の心の財産です。なので、それに対して恥ずかしくない自分でいたいと思いますし、お会いしたとき、胸を張って報告できる活動をしていきたいとも思います。

■そもそも能力を“比較する相手”がいなかった

――宇野さんのもともとの性格はどんな感じなのでしょうか?

宇野 負けず嫌いですね! シスターコンプレックスだったので、「お姉ちゃんと一緒がいい」「お姉ちゃんに負けたくない」との思いが働いて、姉への対抗意識が強かったです。ただ、敵意で張り合うのではなくて、スポーツマンガによくあるような良きライバルとしての感覚が大きいですね。友達に対しても同じで、女性に優しいと思います。

――女同士が対抗心を燃やすと、「相手を蹴落とそうとしている」という穿った見方をされたりもしますよね……。

宇野 そういう感覚はないですね。子役として小さいときから特殊な環境に身を置いていたせいで、そもそも“比較する相手”がいなかったんですよ。学校へ行けば自分だけ違うし、現場で一緒になる子役の方々もそれぞれ状況が違ったし。平たく言えば、“浮いていた”ってことなんでしょうけど(笑)、逆に、常に自分しか向きあう相手がいないことで、できない自分を受け入れられるようになったり、みんな違うということを理解できたりしたので、人と比べてどうこう考えることはなかったです。

――「周りから浮きたくない」という女性も多い中、そんな自分を受け入れられるのは、すごいことだと思います。

宇野 いや、私もネガティブなところがあるので、ナメクジみたいにズルズルしてばかりの時期もあったんですよ(笑)。比較対象がいない分「どうして私だけが」という感情を持ちやすかったんですね。でも、悲劇のヒロインでいても普通にしていても、周りの状況は変わらないことに気づいたんです。だったら好きなことをやった方がいいやって、ある意味開き直れたのが良かったんだと思います。

――そのような経験は、『渡鬼』の膨大なセリフを覚えるなどにも生かされたのでしょうか?

宇野 求められたらやるしかないですからね。「できません」って言ったら次はないっていうだけの話なので。先週の自分ができたことを今週の自分はできるのか? その繰り返しでした。

――最近、20代女性の間では、専業主婦願望を持つ人が少なくないようです。働くことで疲弊したり、他人と比べられたり、結果を求められるのが億劫だったりと、野心を持たなくてもいい安定感を求める気持ちもあるのかな……と。

宇野 まず専業主婦は技能職です。「たまごっち」すら上手に育てられなかった私にしたら、家事をして、旦那さんの世話もしながら子どもを育ててって、すごく大変だと思いますよ。それに、家族って守られているようでいつ何が起こるかわからないし、何があっても逃げられないんですよ! なりたいと思うのは構わないけれど、安定したいから専業主婦というのは、ちょっと違うかなと思います。

 右に倣えでしんどくないならいいんですけど、結局専業主婦でも、ママ友問題や旦那の浮気で悩むことはありますよね。そんなとき、外に世界がないと潰れてしまうと思うんですよ。私は1つのコミュニティにどっぷり浸かるタイプではなかったし、学校やドラマの現場、海外など、コミュニティがたくさんあったので、悩んだときも逃げ場があって救われました。なので、1つのところに留まることが安定とは言えないのかなって思います。その点、子どもの頃から浮いていると、筋斗雲をまとったみたいな余裕があっていいですよ(笑)。

――いくつものコミュニティを持ってよかったと感じたことは、ほかにもありますか?

宇野 広い価値観を持てるようになったことです。『渡鬼』の現場では、常に誰かが間違いを直してくれたり、日常では使わない古い日本語に触れられたりして、礼儀作法や正しい言葉遣いを学べました。そう、橋田壽賀子先生は「若い子にも正しい日本語を」という考えから、脚本に若者言葉を使わないんです。おかげで、敬語で苦労したことはありません(笑)。そうやって日本の良さが自然と理解できた中で留学したので、海外での経験もよりグローバルな視点を育めたと思います。

(後編はこちら)

 

『渡鬼』加津ちゃんこと宇野なおみ、人生初グラビアを経験した今“オンナの野心”を語る!!

 テレビドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で、1998~2011年にかけて、波乱に満ちた人生を歩む女の子・野々下加津ちゃん役を演じていた宇野なおみさん。2017年、「フラッシュ」(光文社)で人生初のグラビアに挑戦し、世間では「あの加津ちゃんが大人になった!!」「子どもの頃のイメージが強かったからビックリ!」などと大きな話題となった。

 現在、女優として活躍する傍ら通訳の仕事も行うなど、精力的にどんどん活動の場を広げている宇野さんに、今回は“オンナの野心”をテーマに取材を敢行。グラビアに挑戦した理由、安定志向といわれる若い女性に思うことなど、赤裸々に語っていただいた。

■石井ふく子さんからかけられた感動的な言葉

――宇野さんの人生初グラビア、拝見しました! 世間では「これまでのイメージとは、まったく違う挑戦!」といった声も多かったですが、撮影はいかがでしたか?

宇野なおみさん(以下、宇野) そうですね、ポージングで筋肉痛になりました(笑)。お話をいただいたときは「需要があるのか?」と思いましたけど、もともとグラビアが好きだったこともあり、特に何も考えず挑戦しました(笑)! ただ、「後がないから脱いだ」とか「調子に乗っている」といったバッシングは危惧していたので、たくさんのメディアで前向きに捉えてもらえ、特に女性から好評をいただけたのは、うれしかったです。

――ご両親やご友人の反応はどうでしたか?

宇野 父は「女優だから仕方がない」と言っていましたが、母には「まだスキャンダルもないのに!? 雑誌が出る前にねつ造してもらった方がいいんじゃない?」と爆笑されたんですよ。「それが母親の言うことか!」って返しました(笑)。友達の間では、意外と女性陣の方が好意的に受け取ってくれて、逆に男性は「袋とじ開けちゃったんだけど、よかったのかな……」とか、戸惑っている人が多かったですね。大学時代に所属していた茶道部の後輩から聞いた話では、部内のグループラインにも私の記事が上がっていたそうです(笑)。

――『渡る世間は鬼ばかり』のプロデューサー・石井ふく子さんには、報告されましたか?

宇野 はい、グラビアの話が来たとき許可を取りに伺いました。そのときは“フッ”と微笑まれていて、その後、仕上がりを見せに行ったときには「……大人になったわね」と言っていただけたんです。周囲も自分も“子役”という枠の中で私を見ていたので、石井先生の一言で子役から脱したような、感動的な瞬間でした。

――「グラビアが好き」とのことですが、どんなところに惹かれるんですか?

宇野 スタイルです。私はもともとバレリーナのような体形を目指していたのですが、第二次性徴期に太ってしまい、自分の体形にコンプレックスを持つようになっていました。けれど、グラビアを見たときに「このモデルさんたちみたいな体形になれれば、自分の体が好きになれるかもしれない」と思ったのがきっかけです。

――グラビアアイドルは、まさにあこがれれのボディライン?

宇野 そうですね。私は筋トレを黙々と頑張ってきたのですが、それは誰かに好かれるためじゃなく、自分自身のためなんです。今回のグラビアで、そこを評価していただけたのは、すごくうれしかったです。

――グラビアという新しいジャンルに飛び込んだ宇野さんに、今回は“オンナの野心”をテーマにお話をお聞きしたいです。宇野さんは、ご自身に“野心”があると思いますか?

宇野 私にとっては『渡鬼』の現場でご一緒した大女優さんたちがデフォルトなんです。日本で普通に成長する女の子に芽生えるであろう野心より、遥かにスケールが大きい環境で育ってきたこともあり、今回のような挑戦が“野心”と言われてもあまりピンとこないんですよね(笑)。ただ、女性としてのレベルが高い方々に囲まれ、そのすごさを肌で感じてきたので、常に自分はまだまだだと思っています。いずれは自分もあのくらいのレベルにならないといけないのではないかと感じてしまって……ゴールが遠いんですよ(笑)。

――日本を代表するような大女優さんばかりですもんね。

宇野 そんな方々とご一緒できたことは、私にとって一番の心の財産です。なので、それに対して恥ずかしくない自分でいたいと思いますし、お会いしたとき、胸を張って報告できる活動をしていきたいとも思います。

■そもそも能力を“比較する相手”がいなかった

――宇野さんのもともとの性格はどんな感じなのでしょうか?

宇野 負けず嫌いですね! シスターコンプレックスだったので、「お姉ちゃんと一緒がいい」「お姉ちゃんに負けたくない」との思いが働いて、姉への対抗意識が強かったです。ただ、敵意で張り合うのではなくて、スポーツマンガによくあるような良きライバルとしての感覚が大きいですね。友達に対しても同じで、女性に優しいと思います。

――女同士が対抗心を燃やすと、「相手を蹴落とそうとしている」という穿った見方をされたりもしますよね……。

宇野 そういう感覚はないですね。子役として小さいときから特殊な環境に身を置いていたせいで、そもそも“比較する相手”がいなかったんですよ。学校へ行けば自分だけ違うし、現場で一緒になる子役の方々もそれぞれ状況が違ったし。平たく言えば、“浮いていた”ってことなんでしょうけど(笑)、逆に、常に自分しか向きあう相手がいないことで、できない自分を受け入れられるようになったり、みんな違うということを理解できたりしたので、人と比べてどうこう考えることはなかったです。

――「周りから浮きたくない」という女性も多い中、そんな自分を受け入れられるのは、すごいことだと思います。

宇野 いや、私もネガティブなところがあるので、ナメクジみたいにズルズルしてばかりの時期もあったんですよ(笑)。比較対象がいない分「どうして私だけが」という感情を持ちやすかったんですね。でも、悲劇のヒロインでいても普通にしていても、周りの状況は変わらないことに気づいたんです。だったら好きなことをやった方がいいやって、ある意味開き直れたのが良かったんだと思います。

――そのような経験は、『渡鬼』の膨大なセリフを覚えるなどにも生かされたのでしょうか?

宇野 求められたらやるしかないですからね。「できません」って言ったら次はないっていうだけの話なので。先週の自分ができたことを今週の自分はできるのか? その繰り返しでした。

――最近、20代女性の間では、専業主婦願望を持つ人が少なくないようです。働くことで疲弊したり、他人と比べられたり、結果を求められるのが億劫だったりと、野心を持たなくてもいい安定感を求める気持ちもあるのかな……と。

宇野 まず専業主婦は技能職です。「たまごっち」すら上手に育てられなかった私にしたら、家事をして、旦那さんの世話もしながら子どもを育ててって、すごく大変だと思いますよ。それに、家族って守られているようでいつ何が起こるかわからないし、何があっても逃げられないんですよ! なりたいと思うのは構わないけれど、安定したいから専業主婦というのは、ちょっと違うかなと思います。

 右に倣えでしんどくないならいいんですけど、結局専業主婦でも、ママ友問題や旦那の浮気で悩むことはありますよね。そんなとき、外に世界がないと潰れてしまうと思うんですよ。私は1つのコミュニティにどっぷり浸かるタイプではなかったし、学校やドラマの現場、海外など、コミュニティがたくさんあったので、悩んだときも逃げ場があって救われました。なので、1つのところに留まることが安定とは言えないのかなって思います。その点、子どもの頃から浮いていると、筋斗雲をまとったみたいな余裕があっていいですよ(笑)。

――いくつものコミュニティを持ってよかったと感じたことは、ほかにもありますか?

宇野 広い価値観を持てるようになったことです。『渡鬼』の現場では、常に誰かが間違いを直してくれたり、日常では使わない古い日本語に触れられたりして、礼儀作法や正しい言葉遣いを学べました。そう、橋田壽賀子先生は「若い子にも正しい日本語を」という考えから、脚本に若者言葉を使わないんです。おかげで、敬語で苦労したことはありません(笑)。そうやって日本の良さが自然と理解できた中で留学したので、海外での経験もよりグローバルな視点を育めたと思います。

(後編はこちら)

 

“男性差別CM”の炎上騒動はなぜ起こったのか? 「ALFACE」「保険のビュッフェ」の問題点

 「女性蔑視である」という理由から、テレビCMや広告が炎上するケースが増えている。2016年10月、資生堂の化粧品ブランド「インテグレート」のCMが物議を醸した。多忙により、疲れた様子で仕事をする女性社員に、男性上司が「(頑張っている様子が)顔に出ているうちは、プロじゃない」と指摘するといった内容に、ネット上を中心に「疲れていても女は綺麗でいろということ?」「セクハラ・パワハラに当たる」などと抗議の声が上がったのだ。

 ほかにも、鹿児島県志布志市が16年9月に公開した、ふるさと納税PR動画「うな子」は、うなぎをスクール水着姿の美少女に擬人化し、プールで育てていくといった内容で、「なぜ性的な内容でふるさと納税PRを?」「女性を貶めている」などと批判が噴出。また17年5月、ユニ・チャーム「ムーニー」のCMに関しては、母親が初めての育児に孤軍奮闘する様子が描かれ、最後に「その時間が、いつか宝物になる」との字幕が入るのだが、「ワンオペ育児を賛美しないで」と悲痛な叫びが上がった。

 女性を描いたこうしたCMの炎上事例は枚挙に暇がない状況だが、一方で17年、「男性に差別的」という理由で問題視されたCMも散見されるようになったのだ。この現象を、「メディア文化論」「ジェンダー論」を研究する、大妻女子大学准教授・田中東子先生に解説していただいた。

■性差別CMにはパターンがある

――近年、“女性蔑視”CMの炎上が多発しています。急にそういったCMが増えたということなのでしょうか。

田中東子氏(以下、田中) 昔から、女性蔑視に当たるCMは放送されています。今、ビデオリサーチ社の方と過去20年くらいのCMをピックアップして分析をしています。まだ結果は出ていないのですが、これまでにも女性蔑視に当たるCMはいくつもありました。

 CMにおける女性蔑視の中には、「女性を性役割分業のステレオタイプで描写する」「女性を性的なアイコンとして使う」「女性に脅しかけ(『○○を使わなければ可愛くなれない』など)をする内容」の3パターンがあると思います。

――では、なぜ今炎上が増えているのでしょうか?

田中 この20年間で、女性のライフスタイルは大きく変わりました。共稼ぎ夫婦の増加、それに伴って家事や子育てを夫婦で分業するような都市型の若い世代の夫婦も増えましたし、そして何より、結婚しない人も少なくありません。そういった人にとっては、ステレオタイプの“理想の家庭像”をグイグイ押し付けてくるようなCMに、嫌な感じを覚えると思うんです。

 それともう1つが、メディア環境の変化。これまでは、リビングルームや自分の部屋などで、それぞれがテレビを見て、心の中だけで「何かこのCM嫌だなぁ」と思っていて、それを後日、人に話そうにもタイムラグが生じていました。しかし、現在では、今見ているCMについて、「嫌だ」と思ったことを、すぐにSNSで発信でき、実は同じものを嫌だと思っていた人がたくさんいることがわかるようになったんです。それが目に見える“かたまり”として、出てきやすくなったのではないでしょうか。

――17年は、男性蔑視だと物議を醸したCMも目立ちました。自由に使えるお金が少ないと嘆く主婦が、夫に向かって「安い電気に替えるか、稼ぎのいい夫に替えるか」と脅す「ENEOSでんき」、ブサイクな男性に好意を持たれた美人の女性が嫌悪感を示す「ALFACE」、花嫁が二股をかけていた男に「俺は君の何だったんだ?」と問い詰められ、冷たく「保険」と言い放つ「保険のビュッフェ」などが挙げられます。

田中 男性蔑視といわれるCMにもパターンがあり、「イケメンかブサメンかという外見差別(ルッキズム)の描写」「男性をATMやお財布扱いする内容」「男性は臭いといった偏見」が多いのではないでしょうか。

 今まで、男性は社会的地位や経済力を独占できていた性別なので、“容姿”はそこまで気にならないような状態だったんです。しかし現在、社会的地位も経済力も、男性の独占物ではなくなり、ロスジェネ以降は特に、社会でのポジショニング取りがうまくいかず、経済力も持てなかったという男性が増加しています。男性も、地位や経済力ではなく、外見で選別されるようになり、「地位やお金はないが容姿はいい男性」を、「地位とお金を持った女性」が消費することも珍しくなくなりました。そういった背景から、CMにおける男性の容姿の描かれ方に、疑問を抱く男性が増えたというのはあるのではないでしょうか。かつて、男性は「社会的地位や経済力」、女性は「容姿・見た目」で生き延びていく――といった面があったものの、現在はそれが逆転しつつあるようにも思えます。

――「ALFACE」のCMは、まさに男性に対するルッキズムが問題視されました。

田中 あまりメジャーな企業ではないので、話題性を狙いすぎて炎上をしてしまった印象もありますが……男女逆だったら、こんなものでは済まないような大炎上になったと思います。

――「ALFACE」のCMにはもう1パターンあり、美人な女の子とそうではない女の子の2人が登場し、イケメンが美人に好意を寄せる……といった内容でした。

田中 その2人の女性の容姿は、あからさまに優劣がついているわけではありませんでしたよね。そうすることで、炎上を避けようとしたのでしょう。だからといって、男性が容姿で差別されるCMを作っていいかというと、それは絶対にあり得ません。ただ、このCMに関して、一部では問題になったものの、意外と男性が騒がない印象もありました。その背景には、「男はそもそも顔じゃない。社会的地位や経済力だ」といった価値観があるのでしょう。なので、それらを差別された表現の方が、男性は嫌なのかもしれません。それが「ENEOSでんき」「保険のビュッフェ」のCMでしたね。

(後編につづく)

“男性差別CM”の炎上騒動はなぜ起こったのか? 「ALFACE」「保険のビュッフェ」の問題点

 「女性蔑視である」という理由から、テレビCMや広告が炎上するケースが増えている。2016年10月、資生堂の化粧品ブランド「インテグレート」のCMが物議を醸した。多忙により、疲れた様子で仕事をする女性社員に、男性上司が「(頑張っている様子が)顔に出ているうちは、プロじゃない」と指摘するといった内容に、ネット上を中心に「疲れていても女は綺麗でいろということ?」「セクハラ・パワハラに当たる」などと抗議の声が上がったのだ。

 ほかにも、鹿児島県志布志市が16年9月に公開した、ふるさと納税PR動画「うな子」は、うなぎをスクール水着姿の美少女に擬人化し、プールで育てていくといった内容で、「なぜ性的な内容でふるさと納税PRを?」「女性を貶めている」などと批判が噴出。また17年5月、ユニ・チャーム「ムーニー」のCMに関しては、母親が初めての育児に孤軍奮闘する様子が描かれ、最後に「その時間が、いつか宝物になる」との字幕が入るのだが、「ワンオペ育児を賛美しないで」と悲痛な叫びが上がった。

 女性を描いたこうしたCMの炎上事例は枚挙に暇がない状況だが、一方で17年、「男性に差別的」という理由で問題視されたCMも散見されるようになったのだ。この現象を、「メディア文化論」「ジェンダー論」を研究する、大妻女子大学准教授・田中東子先生に解説していただいた。

■性差別CMにはパターンがある

――近年、“女性蔑視”CMの炎上が多発しています。急にそういったCMが増えたということなのでしょうか。

田中東子氏(以下、田中) 昔から、女性蔑視に当たるCMは放送されています。今、ビデオリサーチ社の方と過去20年くらいのCMをピックアップして分析をしています。まだ結果は出ていないのですが、これまでにも女性蔑視に当たるCMはいくつもありました。

 CMにおける女性蔑視の中には、「女性を性役割分業のステレオタイプで描写する」「女性を性的なアイコンとして使う」「女性に脅しかけ(『○○を使わなければ可愛くなれない』など)をする内容」の3パターンがあると思います。

――では、なぜ今炎上が増えているのでしょうか?

田中 この20年間で、女性のライフスタイルは大きく変わりました。共稼ぎ夫婦の増加、それに伴って家事や子育てを夫婦で分業するような都市型の若い世代の夫婦も増えましたし、そして何より、結婚しない人も少なくありません。そういった人にとっては、ステレオタイプの“理想の家庭像”をグイグイ押し付けてくるようなCMに、嫌な感じを覚えると思うんです。

 それともう1つが、メディア環境の変化。これまでは、リビングルームや自分の部屋などで、それぞれがテレビを見て、心の中だけで「何かこのCM嫌だなぁ」と思っていて、それを後日、人に話そうにもタイムラグが生じていました。しかし、現在では、今見ているCMについて、「嫌だ」と思ったことを、すぐにSNSで発信でき、実は同じものを嫌だと思っていた人がたくさんいることがわかるようになったんです。それが目に見える“かたまり”として、出てきやすくなったのではないでしょうか。

――17年は、男性蔑視だと物議を醸したCMも目立ちました。自由に使えるお金が少ないと嘆く主婦が、夫に向かって「安い電気に替えるか、稼ぎのいい夫に替えるか」と脅す「ENEOSでんき」、ブサイクな男性に好意を持たれた美人の女性が嫌悪感を示す「ALFACE」、花嫁が二股をかけていた男に「俺は君の何だったんだ?」と問い詰められ、冷たく「保険」と言い放つ「保険のビュッフェ」などが挙げられます。

田中 男性蔑視といわれるCMにもパターンがあり、「イケメンかブサメンかという外見差別(ルッキズム)の描写」「男性をATMやお財布扱いする内容」「男性は臭いといった偏見」が多いのではないでしょうか。

 今まで、男性は社会的地位や経済力を独占できていた性別なので、“容姿”はそこまで気にならないような状態だったんです。しかし現在、社会的地位も経済力も、男性の独占物ではなくなり、ロスジェネ以降は特に、社会でのポジショニング取りがうまくいかず、経済力も持てなかったという男性が増加しています。男性も、地位や経済力ではなく、外見で選別されるようになり、「地位やお金はないが容姿はいい男性」を、「地位とお金を持った女性」が消費することも珍しくなくなりました。そういった背景から、CMにおける男性の容姿の描かれ方に、疑問を抱く男性が増えたというのはあるのではないでしょうか。かつて、男性は「社会的地位や経済力」、女性は「容姿・見た目」で生き延びていく――といった面があったものの、現在はそれが逆転しつつあるようにも思えます。

――「ALFACE」のCMは、まさに男性に対するルッキズムが問題視されました。

田中 あまりメジャーな企業ではないので、話題性を狙いすぎて炎上をしてしまった印象もありますが……男女逆だったら、こんなものでは済まないような大炎上になったと思います。

――「ALFACE」のCMにはもう1パターンあり、美人な女の子とそうではない女の子の2人が登場し、イケメンが美人に好意を寄せる……といった内容でした。

田中 その2人の女性の容姿は、あからさまに優劣がついているわけではありませんでしたよね。そうすることで、炎上を避けようとしたのでしょう。だからといって、男性が容姿で差別されるCMを作っていいかというと、それは絶対にあり得ません。ただ、このCMに関して、一部では問題になったものの、意外と男性が騒がない印象もありました。その背景には、「男はそもそも顔じゃない。社会的地位や経済力だ」といった価値観があるのでしょう。なので、それらを差別された表現の方が、男性は嫌なのかもしれません。それが「ENEOSでんき」「保険のビュッフェ」のCMでしたね。

(後編につづく)

“ラスボス”小林幸子が振り返る、2017年「最もインパクトの大きかった仕事」ベスト3 

――芸能界、政界、スポーツ界の個性豊かな著名人の方々に2017年の秘蔵ネタを語ってもらう「あの人が2017年を振り返る」。近年は、コミックマーケットへの参加やニコニコ動画でのライブ放送、幅広い世代とのコラボレーションも話題で、派手なコスプレや “ラスボス”の愛称もすっかり浸透している小林幸子さん。今年11月に開設したインスタグラムも、“インスタ映え”がハイレベルと注目されています。そんな幸子さんが、2017年の「インパクト大なお仕事エピソードベスト3」を披露!
kobayashisachiko 
■2017年インパクトの大きかったお仕事エピソード
【第1位】
新曲「存在証明」のMV撮影
 
1年半ぶりの新曲「存在証明」でのMV撮影は、これまでに体験したことのない大規模なものでした。さまざまな分野で活躍されているアーティストの特別参加や、50人を超えるダンサーの見事な表現、CGを駆使した映像演出等、53年の芸能生活で最も刺激的でした。「存在証明」は、壮大なメロディと、温かく包み込んでくれるような素敵な歌詞をどう表現するか、とても唄い甲斐のある作品です。今を生きるすべての人に贈るメッセージソングなので、本当に多くの人に感じてもらいたいです。
 
【第2位】
梅沢富美男と「愛の歌」をデュエット
 
auのCMで「愛の歌」というデュエットソングを歌いましたが、お相手の梅沢富美男さんが、デュエットソングを歌うのは初めて、ということに驚きました。
 
【第3位】
ケンタッキーのCMでのコスプレ
 
ケンタッキーフライドチキンのCMで女子高生と唐辛子の格好をした(結構似合ってたと自分でも思う)。
 
■今年の個人的ベストニュース
今年5月に主人がウィーン市から「金の功労勲章」を叙勲されたことです。(夫の林明男氏は、再生医療などを事業とするTESホールディングスを経営する一方、世界音楽合唱チャリティー協会会長として、14年からウィーン市で東日本大震災復興支援プロジェクト「UTAU DAIKU in ウィーン」を主催。両国の文化交流へ貢献したとして受勲した)
 
小林幸子(こばやし・さちこ)
12月6日に、世代を超えて心に響く、珠玉のメッセージソング「存在証明」が発売。2018年6月1日〜28日、三宅裕司率いる演劇ユニット「熱海五郎一座」の新橋演舞場での公演にゲストヒロインとして参加。
インスタグラム

現実生活でうまくいっていない人ほど、他人のコンプレックスを刺激する!

『自分のすごさを匂わせてくる人』(サンマーク出版)著者であり心理学博士の榎本博明氏に、匂わせについて3回にわたり話を聞いてきた。最終回となる今回は、匂わせの正しい使い方、絶対してはいけないポイント、そして、こじらせた匂わせの行き着く先と、その予防法について伺う。

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]せめてネットくらいでは輝きたい! さえない日常が“匂わせ”に火をつける
[2]妻への感謝をSNS投稿する夫が愛しているのは妻でなく自分自身!
[3]伊藤綾子アナは嵐・二宮和也との交際匂わせをなぜ我慢できなかった?

■SNSでしていい話題は天気の話題くらい?

――匂わせは悪いことばかりではないと初回(記事参照)でもお話伺いましたが、あらためて、匂わせのポイントについて教えてください。

榎本博明氏(以下、榎本) 自分たちの関わり、仕事でもプライベートでも、ここを先に知っておくとお互いに楽だ、ということを匂わせておけば、いい関係を築くために役に立ちますよね。付き合いの最初では背伸びしてしまうものです。有能そうに、寛大そうについ見せてしまう。でも、仕事でもプライベートでもある程度一緒にやっていくのなら、現実の自分を知ってもらった方がいいですよね。

 また、リアルではなくネットの場合「特定の一人に対して」、「特定のグループに対して」、「不特定多数に対して」と発信先の対象が変わってきますよね。

――人数が増えるほど、話題への配慮がより複雑化していきますね。

榎本 はい。一番してはいけないのは、他人のコンプレックスを刺激することです。コンプレックスを刺激したらものすごい攻撃性が向いてきますから。

「結婚を絶対したくない」考えを持つ人の前で「家庭はいい」「子供はいい」という話はするべきではないですよね。失業中の人に「大規模プロジェクトを終えてすがすがしい気持ちだ」と話すのも同じです。相手によって出せる話題は違います。不特定多数が見るネットで、全員が無難な、全員が安全なことを選ばないといけない。

――天気の話くらいしか手札が残らなそうです。

榎本 そうですね。誰の心にも刺さらないといいますか。傷にならない限り、無難な……、スポーツや芸能の、それも差しさわりのない話とか。 

――つくづく、「SNSをしない」で解決しますよね。

榎本 書かずにはいられない承認欲求がありますから、難しいんですよね。

 

■現実生活でうまくいったことのない人ほど他人のコンプレックスに配慮できない

榎本 これは反発されるかもしれませんが、現実生活でうまくいったことのない人ほど、他人のコンプレックスに配慮できないのです。人のコンプレックスを配慮できるまでの心の余裕がない。

 モテたり、勉強や仕事ができたり、現実でうまくいったことのある人や能力を発揮したことのある人は、人からねたまれたり、足を引っ張られたり、悪口や嫌味を言われたりなど他人から攻撃をされる経験があり、他人のコンプレックスに配慮する心の構えが自然とできるようになっています。

――難しい質問だと思いますが、一筋縄ではいかない承認欲求を抱え、それをSNSを通じに強化してしまった人が少しでも楽になるにはどうしたらいいのでしょうか?

榎本 難しいですね。特にネット上で間違った方向に「自己効力(自分の力)」感を持ってしまった人は相当難しいです。極端な例としては、自分の発言でネットが炎上したり、大企業やお店なりを自分の投稿ひとつで困らせたといったものです。

 私も自著を根拠のない内容で中傷されたことがあり、どうしてそんなことを書くのかと相手にメールをしたことがあったんです。そこまで悪意のある人ではなかったようで、ちゃんと返事が来ました。でも、タイトルだけ見て反応して、中身は読んでいなかったのです。なぜそんなことになるのか。自分の発信が自己効力感の源泉になっているからでしょう。その人は、フォロワーがとても多いんです。ネットで活躍している。

――中身も読まずに中傷する人に多くのフォロワーがついているところが一番怖いですね。

榎本 それでモノが売れなかったり、最悪、お店や会社がつぶれたりしますからね。先ほどお話しした個人的な例では、その人は現実でも実績を持っていました。一方で、現実で思うように輝けない、でも輝きたいという人の場合は、冷静に自己モニタリングする心の余裕がない。いい加減な情報を流しまわりに損害を与えることよりも、自分が影響力を持てたという自己効力に重みを置いてしまう。倫理的に考えてどうか、ということがブレーキにならない。

――何かいいブレーキはないものでしょうか。

榎本 ブレーキとなるのは「自分がダメージを被る人の存在」でしょうね。変な目で見られる、ぎこちない態度を取られる、どうも避けられている気がする、と、やはりそれに気づくことなんですよね。

――「変な目/ぎこちない/避けられている」これらすべてはリアルじゃないとなかなか気付けないですね。ネットばかりにいると気づくことも遅れてしまうか、もしくは気づかないままも十分ありうるでしょうね。

榎本 そのためにも、自分の発信に対しどのような反応が起こっているのか自己モニタリングを行うことですね。ネットもリアルも「モニタリングして修正」の繰り返しです。 

■ネット上で匂わせだしたら黄信号

――間違った方向の自己効力が倫理観を超えてしまうと、状況としてはかなり進んでしまったように思えます。それよりも前の「ここから先はまずい(このままでは間違った方向の自己効力に頼り出し、次第に倫理観も失う)」といった黄色信号はあるでしょうか。

榎本 立場によっていろいろですが、でも、自慢はやはりよくないですよね。ネット上の不特定の相手に匂わせをするのは危険なことだと思います。匂わせの時点で、すでに自分を見る目を失いかけているのです。

 知り合いが「高級ホテルの最上階のレストランで食事をしています」と投稿したら見苦しい、イライラする、と思う人が、自分も自慢げな投稿をしてしまう。自分のことだと気が付きにくいので人の姿から自分を顧みることですね。自慢するということは、①自慢したらイラっとする人がいるだけでなく、②自分で自慢しないといけないくらいちっぽけな人間であることをさらけ出しているのです。

 SNSへの不特定多数に向けた匂わせはとても難しいです。ですが、1:1の関係で、自慢ではなく仕事や交際のスタンスを表明する意味での匂わせはむしろ有効に使えばコミュニケーションを円滑に進められます。匂わせを上手に活用してもらえればと思います。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

●榎本 博明(えのもと・ひろあき)氏
1955年、東京都生まれ。心理学博士。MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』(ともに日本経済新聞出版社)、『カイシャの3バカ』(朝日新聞出版)などがある。

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

★好評発売中!!
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』(CCCメディアハウス) 

現実生活でうまくいっていない人ほど、他人のコンプレックスを刺激する!

『自分のすごさを匂わせてくる人』(サンマーク出版)著者であり心理学博士の榎本博明氏に、匂わせについて3回にわたり話を聞いてきた。最終回となる今回は、匂わせの正しい使い方、絶対してはいけないポイント、そして、こじらせた匂わせの行き着く先と、その予防法について伺う。

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]せめてネットくらいでは輝きたい! さえない日常が“匂わせ”に火をつける
[2]妻への感謝をSNS投稿する夫が愛しているのは妻でなく自分自身!
[3]伊藤綾子アナは嵐・二宮和也との交際匂わせをなぜ我慢できなかった?

■SNSでしていい話題は天気の話題くらい?

――匂わせは悪いことばかりではないと初回(記事参照)でもお話伺いましたが、あらためて、匂わせのポイントについて教えてください。

榎本博明氏(以下、榎本) 自分たちの関わり、仕事でもプライベートでも、ここを先に知っておくとお互いに楽だ、ということを匂わせておけば、いい関係を築くために役に立ちますよね。付き合いの最初では背伸びしてしまうものです。有能そうに、寛大そうについ見せてしまう。でも、仕事でもプライベートでもある程度一緒にやっていくのなら、現実の自分を知ってもらった方がいいですよね。

 また、リアルではなくネットの場合「特定の一人に対して」、「特定のグループに対して」、「不特定多数に対して」と発信先の対象が変わってきますよね。

――人数が増えるほど、話題への配慮がより複雑化していきますね。

榎本 はい。一番してはいけないのは、他人のコンプレックスを刺激することです。コンプレックスを刺激したらものすごい攻撃性が向いてきますから。

「結婚を絶対したくない」考えを持つ人の前で「家庭はいい」「子供はいい」という話はするべきではないですよね。失業中の人に「大規模プロジェクトを終えてすがすがしい気持ちだ」と話すのも同じです。相手によって出せる話題は違います。不特定多数が見るネットで、全員が無難な、全員が安全なことを選ばないといけない。

――天気の話くらいしか手札が残らなそうです。

榎本 そうですね。誰の心にも刺さらないといいますか。傷にならない限り、無難な……、スポーツや芸能の、それも差しさわりのない話とか。 

――つくづく、「SNSをしない」で解決しますよね。

榎本 書かずにはいられない承認欲求がありますから、難しいんですよね。

 

■現実生活でうまくいったことのない人ほど他人のコンプレックスに配慮できない

榎本 これは反発されるかもしれませんが、現実生活でうまくいったことのない人ほど、他人のコンプレックスに配慮できないのです。人のコンプレックスを配慮できるまでの心の余裕がない。

 モテたり、勉強や仕事ができたり、現実でうまくいったことのある人や能力を発揮したことのある人は、人からねたまれたり、足を引っ張られたり、悪口や嫌味を言われたりなど他人から攻撃をされる経験があり、他人のコンプレックスに配慮する心の構えが自然とできるようになっています。

――難しい質問だと思いますが、一筋縄ではいかない承認欲求を抱え、それをSNSを通じに強化してしまった人が少しでも楽になるにはどうしたらいいのでしょうか?

榎本 難しいですね。特にネット上で間違った方向に「自己効力(自分の力)」感を持ってしまった人は相当難しいです。極端な例としては、自分の発言でネットが炎上したり、大企業やお店なりを自分の投稿ひとつで困らせたといったものです。

 私も自著を根拠のない内容で中傷されたことがあり、どうしてそんなことを書くのかと相手にメールをしたことがあったんです。そこまで悪意のある人ではなかったようで、ちゃんと返事が来ました。でも、タイトルだけ見て反応して、中身は読んでいなかったのです。なぜそんなことになるのか。自分の発信が自己効力感の源泉になっているからでしょう。その人は、フォロワーがとても多いんです。ネットで活躍している。

――中身も読まずに中傷する人に多くのフォロワーがついているところが一番怖いですね。

榎本 それでモノが売れなかったり、最悪、お店や会社がつぶれたりしますからね。先ほどお話しした個人的な例では、その人は現実でも実績を持っていました。一方で、現実で思うように輝けない、でも輝きたいという人の場合は、冷静に自己モニタリングする心の余裕がない。いい加減な情報を流しまわりに損害を与えることよりも、自分が影響力を持てたという自己効力に重みを置いてしまう。倫理的に考えてどうか、ということがブレーキにならない。

――何かいいブレーキはないものでしょうか。

榎本 ブレーキとなるのは「自分がダメージを被る人の存在」でしょうね。変な目で見られる、ぎこちない態度を取られる、どうも避けられている気がする、と、やはりそれに気づくことなんですよね。

――「変な目/ぎこちない/避けられている」これらすべてはリアルじゃないとなかなか気付けないですね。ネットばかりにいると気づくことも遅れてしまうか、もしくは気づかないままも十分ありうるでしょうね。

榎本 そのためにも、自分の発信に対しどのような反応が起こっているのか自己モニタリングを行うことですね。ネットもリアルも「モニタリングして修正」の繰り返しです。 

■ネット上で匂わせだしたら黄信号

――間違った方向の自己効力が倫理観を超えてしまうと、状況としてはかなり進んでしまったように思えます。それよりも前の「ここから先はまずい(このままでは間違った方向の自己効力に頼り出し、次第に倫理観も失う)」といった黄色信号はあるでしょうか。

榎本 立場によっていろいろですが、でも、自慢はやはりよくないですよね。ネット上の不特定の相手に匂わせをするのは危険なことだと思います。匂わせの時点で、すでに自分を見る目を失いかけているのです。

 知り合いが「高級ホテルの最上階のレストランで食事をしています」と投稿したら見苦しい、イライラする、と思う人が、自分も自慢げな投稿をしてしまう。自分のことだと気が付きにくいので人の姿から自分を顧みることですね。自慢するということは、①自慢したらイラっとする人がいるだけでなく、②自分で自慢しないといけないくらいちっぽけな人間であることをさらけ出しているのです。

 SNSへの不特定多数に向けた匂わせはとても難しいです。ですが、1:1の関係で、自慢ではなく仕事や交際のスタンスを表明する意味での匂わせはむしろ有効に使えばコミュニケーションを円滑に進められます。匂わせを上手に活用してもらえればと思います。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

●榎本 博明(えのもと・ひろあき)氏
1955年、東京都生まれ。心理学博士。MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』(ともに日本経済新聞出版社)、『カイシャの3バカ』(朝日新聞出版)などがある。

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

★好評発売中!!
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』(CCCメディアハウス) 

伊藤綾子アナは嵐・二宮和也との交際匂わせをなぜ我慢できなかった?

 嵐・二宮和也との交際を匂わせたアナウンサーの伊藤綾子、竹内涼真との交際を匂わせたアイドル「恥じらいレスキューJPN」里々佳……、ジャニーズアイドルや人気若手俳優との交際をSNSで匂わせ炎上した女性芸能人は後を絶たない。自身の芸能生命を絶たれるかもしれないリスキーな行為をなぜ彼女たちは我慢できなかったのか?『自分のすごさを匂わせてくる人』(サンマーク出版)著者であり心理学博士の榎本博明氏に聞いた。

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]せめてネットくらいでは輝きたい! さえない日常が“匂わせ”に火をつける
[2]妻への感謝をSNS投稿する夫が愛しているのは妻でなく自分自身!

■相手の立場より「自分が輝きたい!」が勝ってしまう

――アナウンサーの伊藤綾子さんは嵐・二宮和也さんとの交際匂わせをして大炎上しました。因果関係は不明ですが、担当していたニュース番組も降板になっています。ジャニーズやジャニーズファンを怒らせたらまずいのは明らかで、一般人の女性が「一般人の彼氏いる匂わせ」をSNS投稿するのとはレベルが違います。なぜこんなことをしてしまったのでしょうか。

榎本博明氏(以下、榎本) 伊藤さんがどういうつもりで行動されたかはわかりませんが、やはりこれも「想像力」が働かなかったのでしょう。「こんなことをしたらどうなるのか」という想像力よりも自慢したい気持ちが勝ってしまったのでしょう。

 また、芸能人になりたいという人は目立ちたいという気持ち、承認欲求が強いでしょうから、その衝動に負けてしまうのもあるでしょうね。さらに芸能人の場合、叩かれようがが目立った方がいいという価値観もありますから。それをチャンスに這い上がっていった紗栄子さんのような方もいますし。

――伊藤綾子さんにかぎらず芸能人と交際匂わせをして炎上する女性芸能人は後を絶ちませんが、共通点はありますか?

榎本  やはり承認欲求と自己愛ですね。芸能人同士なら、相手を思えば本来交際は隠すはずです。それを隠すどころか匂わすというのは、相手のことを考えていないんです。自分が目立てばいい。恋愛感情じゃなく、自己愛なんです。

――交際匂わせは女性が多いですよね。

榎本 男性は自分を輝かせるのは仕事、能力で輝かせるのが一般的で「こんないい女とつきあっている」で自分を輝かせるのはあまり手段として取られないですよね。

――むしろ引いてしまいますね。

榎本 女性の場合仕事、能力以外に「こんな活躍している男とつきあっている」というPRもありますからね。ネットとリアルも同じで、匂わすジャンルが男女で違うんですね。

――「このジャンルでやっても匂わせとして効果がない」ということには鼻が利くのに、一方で、投稿した内容が人からどう思われるかについて想像力が働かないというのは不思議ですね。

■リアルよりもネットがメインになっている人ほど日常生活をさらす

――匂わせとは違いますが、SNSで日常生活を高頻度で投稿する人がいますよね。

榎本 寂しさなんでしょう。誰かと一緒に飢えている。この人と密に生きているという人がいないと、ネットのつながりで「一緒」を感じたがる。

 寂しさが基本的にあり、あと「日常生活」をさらす人は2タイプに分けられます。

 まず、リアルなところで深くかかわるのが苦手で、単独行動が好きで集団が嫌いな人です。「距離を置いてネット上でつながっているくらいがちょうどいい」のでしょう。でも人は何かの瞬間に寂しくなります。そんなときはSNSでつながっている仲間と共有したい。

――その気持ちはとてもよく分かりますし、こういう人は多いでしょうね。SNSが寂しい時に誰かしらかまってくれる、スナック的な場所になっている。居心地がよくて離れられないでしょうね。

榎本 もう一つ考えられる「日常を高頻度で報告する」タイプは、現実がうまくいっていない人ですね。ネットの世界では人とうまくいっている自分を保ちたい。それで孤独を癒しているのです。

■匂わせる人はニュータイプ? 日本人のスタンダードはむしろ「対人不安」

――インタビュー1回目(リンク)で、学生に承認欲求の話をすると反響が大きかった、とお話しがありました。ほか、学生はどのようなことで悩んでいるのでしょうか。

榎本 対人不安ですね。人とうまく関わっていけるかです。

 日本人はもともと対人不安の強い人が多いんです。「嫌われると思って何も言えない」「断りたいのに断れない」「もう帰りたいのに帰りたいといえない」「相手が自分のせいで退屈しているのではないか?」「自分は集団から浮いているのではないか」ですね。

――これらの感覚に、身に覚えがまったくない人の方が少ないのではないかと思います。

榎本 対人不安は日本人に多い、と学校で話すと「自分だけじゃなかった、安心した」と学生からの反響がとても強いんです。普段あまり授業に熱心ではない学生もこの時はとても真剣に話を聞いています。SNSは監視社会ですから、余計人の目が気になって対人不安が強くなってしまうのでしょう。

――学生は世間が大人よりは狭くて少ないですから、そこで居場所を失う恐怖は大人よりずっと強いでしょうし、さらにその中でSNSの監視があるのですから、今の学生は気の毒ですね。

* * *

 対人不安の強い人が本来日本は多いはずなのに、「ニュータイプ」である匂わせな人たちを見て、対人不安の強い人はますます「みんなきらきらしているのに、自分だけがどこかおかしいのではないか」とさらに不安を強めていく構図はあるだろう。一方で匂わせの人が幸福かと言えばそうではなく、承認欲求の虜なのだ。次回、最終回では改めて匂わせとどう付き合っていけばいいか、引き続き榎本氏に聞く。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

●榎本 博明(えのもと・ひろあき)氏
1955年、東京都生まれ。心理学博士。MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』(ともに日本経済新聞出版社)、『カイシャの3バカ』(朝日新聞出版)などがある。

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

★好評発売中!!
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』(CCCメディアハウス)