「産まないという選択肢はなかった」W不倫12年、“彼”との子どもを育てる女の決意

 20年近く不倫の取材をしてきたが、このところ「長期不倫」の話を本当によく聞く。短くて8年、あとは12~15年くらいが多い。W不倫の女性にとっては、案外、合理的な関係ではないかと思う半面、独身の場合は「子どもがほしい」「結婚したい」気持ちにどうやって折り合いをつけているのかが気になる。長期不倫の女たちの声を全7回で聞いていく。

(第1回:「出産リミットが見えて焦りが」長期不倫8年目、結婚と出産願望で揺れる38歳の岐路
(第2回:「40歳を迎えてラクになった」19歳から10年不倫を繰り返した女の、結婚・出産願望

hurin-04

 既婚女性の中には不倫相手の子を産んでしまう女性が少なからずいると、産婦人科医から聞いたことがある。リカさん(46歳)もその1人だ。

 29歳のとき、社内恋愛で同い年の男性と結婚。すぐ一男に恵まれた。仕事を続けながら、32歳で女の子を出産。

「大変だったけど夫と協力しながら育ててきました。部署は違うけど夫と同じ会社だったからお互いにスケジュール管理しやすかったですね」

 ときには両方の両親やきょうだいまで動員しての子育てだった。みんなで賑やかに育てたいというのがリカさんの思いだったから、夫や自分の友だちもよく家にやってきて、知らない間に子どもたちと仲良くなっていることもあったという。

「下の子が2歳のときですね、彼と知り合ったのは」

 その“彼”、ダイキさんは夫の学生時代の後輩で、就職してからいろいろな地域に転勤、当時、本社に戻ってきていた。

「『先輩、お久しぶりです』ってやって来たダイキを見たとき、知らない人なのになんだか懐かしいような気持ちになったんですよね。ダイキは私たちの結婚式のときも仕事で来られなかったんですが、夫が学生時代にかわいがっていた後輩だということは聞いていました。それにしても、あの懐かしい気持ちはなんだったのか……」

 あとから聞けば、ダイキさんも似たような気分になっていたのだという。

 何度も顔を合わせるうちに

 それからダイキさんは、たびたびリカさん宅を訪れるようになった。当時、リカさんが34歳、ダイキさんは30歳で独身だった。

「しばらくして、ダイキが結婚することになって。これからは家族ぐるみで付き合えるねって話していたんですが、結婚直前、ダイキに呼び出されたんです。折り入って相談がある、先輩には内緒にしてほしいって。ただごとではない感じがしたので、ダイキに会いに行きました」

 指定されたのはシティホテルの部屋。誰にも聞かれたくないからという理由だった。

「部屋に入ったら、いきなりダイキが抱きついてきたんです。それでも私は姉のような感覚で、『どうしたの、何があったの』と彼の髪を撫でていました。そこで彼が言ったのは、ずっと私のことが好きだった、と。このままでは結婚できない、一度だけ思いを遂げさせてほしい、このことは墓場まで持っていくからって、号泣するんです。普段だったら、何言ってるのよってかわすところですが、あのときのダイキは見ていられなかった。つい、気が緩んだんですよね……」

 ダイキさんの全身全霊を込めた告白に、リカさんの心が揺れた。一度だけという約束で、2人は抱き合った。

「ダイキの情熱があまりにすごかったのと、その日はおそらく妊娠しづらいということもあったんです。でも帰り際、なんだか嫌な予感がしました」

 ダイキさんの結婚式は無事終わったが、リカさんは結局、その1回で妊娠してしまった。夫ともたまにはしていたので、確実にダイキさんの子とは言い切れなかったものの、帰り際のあの体の感覚からすれば、「おそらくダイキの子」だと思ったそうだ。

 「産まないという選択肢はなかった。ダイキの子であっても育てたい。そう思っていました。もちろんダイキに言うつもりはありませんでした」

 リカさんに迷いはなかった。授かった命を無事に世の中に出したいと心から思った。

「3人目ができたと言ったら、夫は大喜び。ますますみんなの手を煩わせるかもしれないけどって、親やきょうだいたちに連絡していました」

 産まれた瞬間、確信した

 リカさんが妊娠したという話はダイキさんにも伝わった。ダイキさんは結婚後も、時々妻を伴ってリカさん宅に来ていたが、2人の関係が怪しまれるような言動は一切とらなかった。

「ただ、私が6カ月目に入ったくらいかな。遊びに来たダイキが、キッチンで料理をしていた私を手伝おうとそばに来て、『リカさん……あの』と言ったんです。私はあえて『ダイキのところも早く子どもができるといいね』と大きな声で言いました。ダイキは私を気遣うような目で見たけど、それきり何も言えなくなって。ひょっとしたら自分の子かもしれないと思っていたのかもしれませんね」
 月満ち足りて、リカさんは出産。産まれてすぐ子どもの顔を見た瞬間、ダイキさんの子だと確信したという。

「女の子だったんですが、目鼻立ちがダイキに生き写しで。でも、周りはみんな『おとうさんにそっくり』って。夫もデレデレになっていました。そのとき初めて、私がしたことは正しかったのか、と疑問を抱きましたね」

 ただ、不思議と夫への罪悪感はあまりなかった。

「夫個人への罪悪感ではなく、なんというのか、お天道様に申し訳ないというか」

 そんな古臭い言い方をリカさんはした。もっと大きな「何か」、もし神がいるのなら「神様、ごめんなさい」というような感覚らしい。しかしリカさんの倫理観でいえば、あのとき堕胎していたら、罪の意識はもっと大きかっただろう。

「産むと決めたのは自分ですから、こうなったら、それこそ墓場までもっていくしかない。私の子として大事に育てようと覚悟しました」

 その後、ダイキさんにも子どもが産まれた。リカさんの末っ子が3歳になったとき、彼女はまたダイキさんに呼び出された。ダイキさんが転勤になったのだ。

「このときは喫茶店で会いました。ダイキ一家とうちは親戚といってもいいくらいの付き合いで、家も近かったしダイキの奥さんもかわいい人で。もう2人きりの関係はあり得ないと思っていた。ところがダイキは、『リカさんのことが忘れられない。つらい』って。奥さんもいい人だし、日常に不満はないんだけど、私を思うと胸が締めつけられるんだ、と。そんなこと言われても困りますよね。だけどそこが私のダメなところで……」

 押しに弱いのか、その日もまた、リカさんはダイキさんとホテルへ行ってしまう。2人の関係が復活してしまったのだ。一夜限りのはずだったのに……。実はリカさん自身、ダイキさんのことが忘れられなかったことに、ようやく気づいたのだった。

 ダイキさんが転勤する直前、2人は関係を復活させた。そしてそれ以来、年に数回、会っていた。

「3年前、ダイキがまた東京に戻ってきて……。ダイキにも2人の子がいます。お互い40代でいい大人なのに、思い切れないでいる。あのとき、私が自分の気持ちを見て見ぬ振りをしていれば、ダイキとの二度目はなかった。そうすれば今もなかったはず。だけど、私自身、ダイキのことが好きだったんですよね。そこには蓋ができなかった」

 フウッと大きなため息をついて、リカさんは「他人にウソはつけても、自分の気持ちにだけはウソをつけないですね。それが、私のいけないところなんでしょうけど」と自嘲気味に言った。

 あの日から数えて、断続的ではあるが2人の関係は12年になった。リカさんの次女、ダイキさんとの子ももうじき中学生だ。

「ダイキは、うちの子をまんべんなくかわいがっていますが、次女を見る目はちょっと違うのかなあ。それは私の偏見かもしれませんが。彼とは次女のことはまったく話していません。どんなに聞いても私が決して明かさないことを、彼もわかっているんだと思う」

 月に一度の頻度で、リカさんはダイキさんとゆっくりホテルで過ごす。ラブホテルではなく、ごく普通のホテルを使い、リカさんだけ泊まっていくこともあるという。

「まれにですけどね。私、もともとホテル好きなんですよ。それを知っている夫が、『ストレスたまったら、ホテル暮らししてきていいよ』と言ってくれて。1泊ですけど、ホテルに泊まるとリフレッシュできる。そのとき、ダイキに忍び込んできてもらうという感じですね。ダブルの部屋をとるからホテルに悪いことはしていませんよ」

 食事はルームサービス、ほとんど外に出ずに2人だけの時間を楽しむ。そして次の週末、ダイキ一家がリカさん宅に遊びにくることも。

「不思議なんですよね。ダイキと2人でいると、今も恋愛感情がいっぱいなのに、ダイキが家族連れでうちに来ると、私はダイキを弟みたいに扱ってる。その切り替えが難しいと思ったことがないんです。自然に切り替えられている。2人で会うときのダイキと、うちに遊びに来るダイキは別だと、頭が認識しているのかもしれません」

 オンナは生まれついての女優である。状況に応じて自分を変え、ごく自然に振る舞うことができるのだ。

「この先? どうなるんでしょうね。よく“不倫”って、背徳感があるから余計に燃えるというでしょう? 私にはそういう感覚があまりないんです。ダイキのことが好き。だから会ってる。でも私の本分は、会社員であり子どもたちの母であり、夫にとっての妻である。それだけなんですよね。『本当はダイキと一緒になるのが運命だった』みたいなストーリーも私の中にはないし、もっとシンプルに捉えていますね。妙な“物語”を作ると、自分の中で処理しきれなくなると思っているのかもしれない。そもそも、これを“恋”と名づけていいかどうかもわからない。既婚者がそんなこと言うのはおこがましいんじゃないかという思いがあります」

 誰に対してもオープンで明るいリカさんだが、実は非常に冷静な目で自分を、周囲を、見つめているのだ。それでも「ダイキに会うことはやめられない。今は」と目力のこもった表情できっぱりと言った。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
1960年東京生まれ。明治大学文学部卒。不倫、結婚、離婚、性をテーマに取材を続けるフリーライター。「All About恋愛・結婚」にて専門家として恋愛コラムを連載中。近著に『アラフォーの傷跡 女40歳の迷い道』(鹿砦社)『人はなぜ不倫をするのか』(SBクリエティブ)ほか、多数。

なぜ女は「私はババア」と言いたがる? 自虐をせずにはいられない女たちの深いワケ

 「私、ババアだから」

 最近、自分のことを「ババア」と呼ぶ女性に会ったことはないだろうか。もしかすると、「私も言ってる」という人も少なくないのかもしれない。三省堂『デイリーコンサイス国語辞典』で、「ババア」は「女の老人 *多くののしって言う語」と説明されており、ババアを自称する女性は、自虐的にそう言っているのだろうが、着目したいのは、まったく“老人”には当たらない女性たちまでもがババアを名乗っている点である。中年とされる40代、青年・壮年期とされる20~30代、はたまた高校生の女子までもが「私はババア」と言うこの現象は、なぜ生まれたのだろうか。

自己防御とナルシシズムを感じる

 『オンナの値段』(講談社)などの著書で知られる社会学者・鈴木涼美氏は、「ババア」と自称する女性の心理について、次のような見解を述べる。

「人から言われて傷つくことを、最初から排除するために、批判の口封じをしているような気がしますね。例えばSNSで可愛く撮れた自撮りを載せるとき、『ババアの自撮りです』って言ったら、『ババアのくせに』という悪口は言えなくなる。たとえ言われても、『自分がババアなの知ってます』と反論できます。ある種、批判に対してすごく臆病で、最初から人の意見をシャットアウトしてる印象があります。コメンテーターが『こういう犯罪を起こす人は、こういう人が多いと思います』などと意見を述べるときに、『私見ですが』と前置きする場合がありますが、それは発言が元で裁判になったりした際に、釈明できるから。自称『ババア』はそれを応用していると思います。ただ、『ババア』うんぬんが、裁判に発展するなんてことはないので、その人の臆病さをより感じてしまうんですね」

 また、特に若い世代が「ババア」を自称するケースには、“上から目線”の要素も垣間見えるという。

「年下の子をけん制し、バカにするっていう気持ちも、ちょっとあるんではないかなと思っています。『私はもう大人だよ』『私のが上だよ』というのを、『ババア』という言葉で自虐交じりに言うことで、嫌みっぽく聞こえなくして、マウンティングしているというか。彼女たちが言う『ババア』って、単純に“年齢が上”のことを言っていると思います。『20代の子は肌がピチピチでいいわね、私なんて30代のババアだから』と言うとき、素直に羨ましいという気持ちもありつつ、私にはあなたにはない経験があると優越感に浸っているような。そうじゃないと、自ら『ババアババア』なんて言わないですよ」

 鈴木氏は、自称「ババア」女性のメンタリティに、「自己防御とナルシシズムのミックス」を感じるといい、そうした女性を「苦手」と語る。

「今の女性にとって、『痛い』って一番嫌がる事態。痛いとは、自分がどう見えてるかを自覚できていない状態を指すと思うんですが、その痛さを回避するために、『私は自分のことをちゃんと理解しています』とアピールしようとしているのかな、と。ただ私には、痛さを回避しすぎるがゆえに、相手とのコミュニケーションを断絶しているように見えてしまうんです」

 SNS、とりわけ今主流のインスタグラムは「痛くなりやすい場所」(鈴木氏)でもあるという。確かに、芸能人が自撮り写真やブランドものの写真を載せ、「なぜそれをアップしたのか?」「自慢?」などと批判的に見られてしまうことはよくある。そうした背景によって、女性が自分に対して“自覚的である”ことを、よりいっそうアピールする現象が起こっているのかもしれない。

 女性が「ババア」を自称する現象は、「これまでも波のように起こっていた」と指摘するのは、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)などの著者である社会学者の田中ひかる氏。

「確かに最近、『BBA(=ババア)』というネットスラングもよく目につきますが、実はわりといつの時代も、女性が自分の年齢を自虐的に語ることはあったと思います。私が大学生だったバブルの頃、『おばん』という言葉がはやっていたんです。今はもう死語だそうですけど(笑)、若い女性も『私、おばんだから』などと使っていましたね。年上の人を揶揄するときにも『おばん』と言っていました」

 鈴木氏と同様、田中氏も女性がババアを自称する行為は、「自分の年齢を意識した女性が、『ババア』という言葉を自虐として使い、『私は自分のことをわかっています』と予防線を張っていると思います」と語る。では、なぜ今、年齢を意識する女性が増えているのだろうか。

「今は、一時期より専業主婦を望む女性が増えています。そんな女性が結婚をしたいと思ったとき、男性は『生殖可能な年齢の若い女性を求めるもの』という現実に行き当たり、“若さに価値がある”と思いこむようになったのではないかと。特に最近では、“卵子の老化”という言葉が浸透して、年を取ると妊娠しづらくなるということが常識となっています。そういった背景もあって、生殖という点から、年齢を意識しやすくなっているのではないでしょうか」

 少子化問題が叫ばれている今、ひと頃に比べ、女性がより「結婚して子どもを産まなければ」といったプレッシャーにさらされていると、田中氏は言う。しかし、最近では、NHK『クローズアップ現代+』が、『男にもタイムリミットが!?~精子“老化”の新事実~』という特集を放送。この先、男性も年齢を意識するようになり、「“自称ジジイ男子”も出てくるかもしれません。ただ、やはり男性より女性の方が圧倒的に年齢を意識しているのも事実。年齢については性のダブルスタンダードが露骨に表れますから、無理もありません」。

 また一方で、田中氏は、自称「ババア」女性に、別の背景を見ることもできるという。

「“生殖”という点を起因として、『ババア』を自称するのは、子どもを産めるか産めないかと悩む世代だと思うのですが、18歳などで早くも自分を『ババア』と呼ぶ若い人には、また別の意味合いがあるのでは。昔はやっていたヤンキー漫画の世界では、16~17歳が青春で、特にみんな“17歳の夏”を意識していたんですよ。そうすると、18、19、20歳なんてもう大人。18歳頃の若い人には、いつまでもこの愛おしい世界に浸っていたいけれど現実を見なければという感覚が、今も昔もあるのかもしれません。そして、自分を規制するために、今の言葉で『ババア』を使っている気がします」

 世代によって、女性が「ババア」を口にする背景には違いがある。日本において、女性は10代後半から、常にエイジングを意識しなければいけない状況にあるようだ。

「今の年齢は、その人が生きてきた中で最も『ババア』なんですよね。でも、そう思っていたら、死ぬまでずっと『ババア』です。それよりも『残りの人生で、今が一番若い』という当たり前のことを意識した方がいいかもしれませんね」

 自称「ババア」女性から見えてきた、年齢を意識する日本女性たちの姿。「年齢にとらわれないで生きていければいいと思います」という田中氏の言葉が、今後どれだけ女性たちに根付くのか、期待していきたい。

なぜ女は「私はババア」と言いたがる? 自虐をせずにはいられない女たちの深いワケ

 「私、ババアだから」

 最近、自分のことを「ババア」と呼ぶ女性に会ったことはないだろうか。もしかすると、「私も言ってる」という人も少なくないのかもしれない。三省堂『デイリーコンサイス国語辞典』で、「ババア」は「女の老人 *多くののしって言う語」と説明されており、ババアを自称する女性は、自虐的にそう言っているのだろうが、着目したいのは、まったく“老人”には当たらない女性たちまでもがババアを名乗っている点である。中年とされる40代、青年・壮年期とされる20~30代、はたまた高校生の女子までもが「私はババア」と言うこの現象は、なぜ生まれたのだろうか。

自己防御とナルシシズムを感じる

 『オンナの値段』(講談社)などの著書で知られる社会学者・鈴木涼美氏は、「ババア」と自称する女性の心理について、次のような見解を述べる。

「人から言われて傷つくことを、最初から排除するために、批判の口封じをしているような気がしますね。例えばSNSで可愛く撮れた自撮りを載せるとき、『ババアの自撮りです』って言ったら、『ババアのくせに』という悪口は言えなくなる。たとえ言われても、『自分がババアなの知ってます』と反論できます。ある種、批判に対してすごく臆病で、最初から人の意見をシャットアウトしてる印象があります。コメンテーターが『こういう犯罪を起こす人は、こういう人が多いと思います』などと意見を述べるときに、『私見ですが』と前置きする場合がありますが、それは発言が元で裁判になったりした際に、釈明できるから。自称『ババア』はそれを応用していると思います。ただ、『ババア』うんぬんが、裁判に発展するなんてことはないので、その人の臆病さをより感じてしまうんですね」

 また、特に若い世代が「ババア」を自称するケースには、“上から目線”の要素も垣間見えるという。

「年下の子をけん制し、バカにするっていう気持ちも、ちょっとあるんではないかなと思っています。『私はもう大人だよ』『私のが上だよ』というのを、『ババア』という言葉で自虐交じりに言うことで、嫌みっぽく聞こえなくして、マウンティングしているというか。彼女たちが言う『ババア』って、単純に“年齢が上”のことを言っていると思います。『20代の子は肌がピチピチでいいわね、私なんて30代のババアだから』と言うとき、素直に羨ましいという気持ちもありつつ、私にはあなたにはない経験があると優越感に浸っているような。そうじゃないと、自ら『ババアババア』なんて言わないですよ」

 鈴木氏は、自称「ババア」女性のメンタリティに、「自己防御とナルシシズムのミックス」を感じるといい、そうした女性を「苦手」と語る。

「今の女性にとって、『痛い』って一番嫌がる事態。痛いとは、自分がどう見えてるかを自覚できていない状態を指すと思うんですが、その痛さを回避するために、『私は自分のことをちゃんと理解しています』とアピールしようとしているのかな、と。ただ私には、痛さを回避しすぎるがゆえに、相手とのコミュニケーションを断絶しているように見えてしまうんです」

 SNS、とりわけ今主流のインスタグラムは「痛くなりやすい場所」(鈴木氏)でもあるという。確かに、芸能人が自撮り写真やブランドものの写真を載せ、「なぜそれをアップしたのか?」「自慢?」などと批判的に見られてしまうことはよくある。そうした背景によって、女性が自分に対して“自覚的である”ことを、よりいっそうアピールする現象が起こっているのかもしれない。

 女性が「ババア」を自称する現象は、「これまでも波のように起こっていた」と指摘するのは、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)などの著者である社会学者の田中ひかる氏。

「確かに最近、『BBA(=ババア)』というネットスラングもよく目につきますが、実はわりといつの時代も、女性が自分の年齢を自虐的に語ることはあったと思います。私が大学生だったバブルの頃、『おばん』という言葉がはやっていたんです。今はもう死語だそうですけど(笑)、若い女性も『私、おばんだから』などと使っていましたね。年上の人を揶揄するときにも『おばん』と言っていました」

 鈴木氏と同様、田中氏も女性がババアを自称する行為は、「自分の年齢を意識した女性が、『ババア』という言葉を自虐として使い、『私は自分のことをわかっています』と予防線を張っていると思います」と語る。では、なぜ今、年齢を意識する女性が増えているのだろうか。

「今は、一時期より専業主婦を望む女性が増えています。そんな女性が結婚をしたいと思ったとき、男性は『生殖可能な年齢の若い女性を求めるもの』という現実に行き当たり、“若さに価値がある”と思いこむようになったのではないかと。特に最近では、“卵子の老化”という言葉が浸透して、年を取ると妊娠しづらくなるということが常識となっています。そういった背景もあって、生殖という点から、年齢を意識しやすくなっているのではないでしょうか」

 少子化問題が叫ばれている今、ひと頃に比べ、女性がより「結婚して子どもを産まなければ」といったプレッシャーにさらされていると、田中氏は言う。しかし、最近では、NHK『クローズアップ現代+』が、『男にもタイムリミットが!?~精子“老化”の新事実~』という特集を放送。この先、男性も年齢を意識するようになり、「“自称ジジイ男子”も出てくるかもしれません。ただ、やはり男性より女性の方が圧倒的に年齢を意識しているのも事実。年齢については性のダブルスタンダードが露骨に表れますから、無理もありません」。

 また一方で、田中氏は、自称「ババア」女性に、別の背景を見ることもできるという。

「“生殖”という点を起因として、『ババア』を自称するのは、子どもを産めるか産めないかと悩む世代だと思うのですが、18歳などで早くも自分を『ババア』と呼ぶ若い人には、また別の意味合いがあるのでは。昔はやっていたヤンキー漫画の世界では、16~17歳が青春で、特にみんな“17歳の夏”を意識していたんですよ。そうすると、18、19、20歳なんてもう大人。18歳頃の若い人には、いつまでもこの愛おしい世界に浸っていたいけれど現実を見なければという感覚が、今も昔もあるのかもしれません。そして、自分を規制するために、今の言葉で『ババア』を使っている気がします」

 世代によって、女性が「ババア」を口にする背景には違いがある。日本において、女性は10代後半から、常にエイジングを意識しなければいけない状況にあるようだ。

「今の年齢は、その人が生きてきた中で最も『ババア』なんですよね。でも、そう思っていたら、死ぬまでずっと『ババア』です。それよりも『残りの人生で、今が一番若い』という当たり前のことを意識した方がいいかもしれませんね」

 自称「ババア」女性から見えてきた、年齢を意識する日本女性たちの姿。「年齢にとらわれないで生きていければいいと思います」という田中氏の言葉が、今後どれだけ女性たちに根付くのか、期待していきたい。

「非難されるべきは元婚約者A」眞子さま結婚延期騒動、弁護士が語る“母・小室佳代さん”の正当性

 2月上旬、宮内庁から発表された、秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんの結婚延期。皇族では前代未聞の事態だけに、各マスコミが日々取材合戦を繰り広げているが、延期の背景には、小室さんの母・佳代さんの“金銭トラブル”があるようだ。

 佳代さんは、2010年から2年間にわたり婚約状態にあった“元婚約者A氏”に、約400万円の借金があるとのこと。A氏は週刊誌にたびたび登場し、借用書はないものの、佳代さんがお金を返してくれないこと、また「貸し付けではなく贈与」と主張していると告白。その中で浮上したのが、佳代さんがA氏に突きつけたという「A4コピー用紙」の存在だ。

 これは、A氏が佳代さんに送った「貸したおカネを返してください」といった旨の手紙への“返信”として送られたもので、原文には<409万3000円は小室佳代が貴殿から贈与を受けたものであって貸し付けを受けたものではありません><一方的(婚約)破棄により精神的に傷を負っております。それに対し謝罪もそれに対する保証も無い>などと記されており、重要な文書であるにもかかわらず、A氏の名前が間違っており、また誤字も多く、ワープロ打ちで、さらには「小室」のサインも簡略なものだったという。

 A氏いわく、佳代さんはこの文書を「弁護士と相談して書いた」というが、いささか稚拙さのにじむ文書と受け取る人も少なくないのではないか。そこで今回は、弁護士法人 ALG&Associatesに、この文書の正当性について見解を聞くことに。世間では、佳代さんへのバッシングが巻き起こっているが、その回答は実に意外なものだった。

「正直なところ、A氏としては、『婚約が解消となった』から、金を返せと言いだしたのでしょう。結婚していたら、『金を返せ』などと、まず言いません。この手の話は、婚約の解消時によくある話で、お金を渡した/もらった際には『貸した』『借りた』という認識はどちらも持っていなかったケースがほとんど。貸手が『貸した』ことを証明するためは、『このお金は、あなたから借りたものです』という借り手の書類なり何なりがない限り、『貸した』ことにはなりません。他方で、『贈与』という主張ですが、『このお金は、あなたからもらったものです』という書類なりがなくても、当時の状況からして、一般の感覚を持った人であれば、『まぁ、往々にしてもらったものだろうな』と理解することが十分にできます。したがって、『贈与』という主張は、とてもすんなりと受け入れることができるものです」

 弁護士の見解では、A氏より佳代さんの主張の方が“受け入れられる”とのこと。この文書が弁護士に相談したという割には、ほころびだらけのように感じる点に関しても、「文書を作成したのが御本人なのであれば、弁護士に相談した、しないは関係ありません」と語る。

 また、ネット上では、佳代さんに対して「贈与されたものならば、贈与税はちゃんと納めているのか?」といった指摘も多い。A氏は、婚約していた2年間で約400万円を渡しているため、「毎年、200万円ずつ贈与を受けていた場合には、毎年9万円程度の贈与税が発生します」という。「しかし、他人からお金を贈与してもらって、しっかり贈与税を申告して支払っている人なんているのでしょうか」という見方もできるそうで、ALG&Associatesの見解では、佳代さんよりもA氏の方が不利の模様。

「『貸した』ことは、A氏が立証しなければなりません。佳代さんとしては、当時の状況からして『贈与である』と主張すれば十分なのです。私はA氏のように、匿名で週刊誌にこのようなタレコミをすることは、極めて卑怯であると考えております。また、本人の名前がない限り、信憑性のかけらもありません。物陰に隠れ、安全なところから他人を誹謗するのは、5ちゃんねるなどのインターネット掲示板の落書きレベル。また、真実『貸した』のであれば、返してもらう方法は週刊誌にタレコむのではなく、司法判断をもらうことです。この点においても、このA氏は非難されるべきです」

 世間では、佳代さん、ならびに圭さんまでもが、贈与で押し通そうとしてい点に、批判が出ている。しかし実際のところ、このA氏にも怪しい部分が見え隠れしているのも確か。果たして皇室を巻き込んだ金銭トラブルは、今後どう展開していくのか。注視していきたい。

木村拓哉の舌ペロ、浜崎あゆみのアヒル口――自撮りの“表情”から、タレントの深層心理を読む!!

 SNSの普及とともに、芸能界でも一般的となった自撮り写真の投稿。プライベートの素顔でファンを喜ばせる一方、「なんだか痛い」「自分に酔ってない?」などと批判めいた声が出てしまうこともある。

 しかし、なぜ我々はタレントの自撮りに、良くも悪くもざわつくのだろう。そこには何かしらの理由があるはずだ。今回は、表情、微表情分析を中心とした非言語コミュニケーションの知見・トレーニングを通じて、対話能力の向上をサポートする人材育成・コンサルティング会社「空気を読むを科学する研究所」の代表取締役・清水建二さんに取材を行った。表情に隠された心理を読み解くことで、タレントの知られざる魅力が発見できることもあるようだ。

■木村拓哉の舌ペロは「放っておいてくれ」!?

 現在出演中のドラマ『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)の公式LINEで、舌を出した“舌ペロ”写真を連投した木村。ネット上で「若ぶっている」といったコメントが相次いだためか、本人は「アインシュタインの影響」とラジオ番組で説明した。そんな“舌を出すポーズ”について、清水さんは、「舌を出す動きは、もともとイヤなものを吐き出すときに行われる顔の動きです。心理的には、『関わらないで』『放っておいてくれ』という意味合いがあります」と解説。SMAP解散にまつわる一連の騒動などから、無意識に「放っておいてほしい」という気持ちが、写真を撮るときの心地よいポーズとして生じたのではと、思わず深読みしてしまう。

 だが、「他人に見られることを意識した上であれば、照れていたり、感情を誤魔化そうとしたり、相手を侮辱したいときなどにも行われます。木村さんがこの写真を撮影した状況から察すると、そのような心理が働いた可能性の方が高い」。

 確かに、SNSの使用を禁じられているジャニーズ所属の木村だけに、撮られることには慣れていても、自撮り慣れはしていない可能性も捨て置けない。そのため、「普通の表情だと不安が出てしまうかもしれないから、あえていたずらっぽく舌を出して、感情を誤魔化そうとしたのかもしれませんね」と、清水さん。その根拠として、「上の写真は右眉が上がっていますよね。表情を意図的に作ろうとすると左右非対称に動くので、この右眉の動きから意識して舌を出していることが窺え、『これでうまく顔が作れているかな?』という感情が読み取れます」という。

 なお、ネット上で「若ぶって見える」という反応が相次いだのは、「若ければ若いほど、感情がストレートに顔に出ます。本来なら表情をコントロールして感情を表さない年齢の木村さんが、嫌悪感の現れである“舌を出すポーズ”をしていることで、若ぶっているような印象を与えたのでは」とのこと。木村のアイドルらしいヤンチャさは、まだまだ健在――ファンにはうれしいことなのかもしれない。

■浜崎あゆみのアヒル口は「いつも愛されていたい」願望

 SNSに投稿する動画で、頻繁に“アヒル口”をしている浜崎。世間では「ぶりっ子している」とイタい人扱いだが、清水さんは、「唇が突き出される動きは、不満、キスへの願望、女性性の醸成などの意味があります。撮影されている状況や、映像内にネガティブな感情を表す表情がないことから不満は感じられないので、キスへの願望や女性性の醸成の可能性が高いでしょう。なお、男性は厚い唇に性的魅力や女性性を強く感じる傾向があるので、もし浜崎さんが意図せずにアヒル口を行っているのであれば、自然に周りの男性を魅了する才能があるのだと思います」と、浜崎の“才能”に着目。

 また、目が大きいと、顔の比率に対して目の大きい子どものような印象を与える“ベビーフェイス”になって、可愛く見えるとのこと。アヒル口と同時に目を大きく見せようとする仕種も見られる浜崎は、「“いつも愛されていたい”という願望が心の奥にある可能性が考えられます」。ベビーフェイスにアヒル口は、可愛さと性的魅力を兼ね備えた男性ウケ間違いなしの表情といえそうだ。

 では、浜崎がさらに男性を魅了するにはどうすればいいのか? 清水さんによると、「舌で唇をなぞる仕草をプラスすれば、男性はより魅了されるでしょう。ただ、やりすぎるのはよくないので、“取り入れる頻度”が大切です」だそうだ。可愛さをグッと抑えることも、魅力的に見せるためには大事なのかもしれない。

■竹内涼真のハの字眉は「普通はできない悲しみの表現」

 上目遣いの自撮り写真が、ファンの間で「あざとかわいい」といわれている竹内。清水さんが一番に注目したのは、困り顔に見える“ハの字眉”だ。

「表情を作る筋肉の中には、自分の意思でコントロールできない部分もあります。眉はその代表格で、悲しみや困惑を表現する“ハの字眉”は、トレーニングでもしない限り意図的にできるものではありません。それができる竹内さんはすごい!!」と、大絶賛。

 海外の犯罪捜査では、行方不明になった我が子の情報提供を呼び掛ける両親の“眉の動き”を見て、親が子を殺害した可能性を読み取るケースもあるという。それくらい、人は感情が伴わないと“ハの字眉”にはならないそうだ。

 さらに、竹内が得意とする上目遣いは、「自分より体の大きい相手の顔を見上げるときに自然と生じる仕種で、子どもが大人に対して、あるいは、女性が男性に対してすることが多くなる表情です。そのため、された側は相手を自分より小さく弱い存在と認識します」。悲しみを表すハの字眉と、弱々しい印象を与える上目遣いが合わさった竹内の表情は、相手に「助けたい!」「守ってあげたい!」との思いを抱かせて、母性本能をくすぐるそうだ。「この表情に、唇を尖らせる仕種を合わせると、いたずらっ子のような印象も加わって、さらに女性を虜にできるでしょう」とのアドバイスまでいただいた。

 なお、このような表情をSNSで発信する男性タレントの心理としては、「普段の役柄とのギャップ萌えを狙っているか、役柄やイメージから、自分の演じるべきキャラクターをわきまえて演出していることも考えられます。ただ、本当に素の自分を表現している人もいるでしょうけどね(笑)」と言うから、見る側の妄想は広がるばかりだ。

■石田ゆり子の無表情は「油断」を演出

 笑顔の自撮りにときおり混ざる“無表情”が、オトナの女の色気を感じさせるとして注目されている石田。リラックスしたように見える彼女の顔も美しいが、「油断した表情は、気の抜けたブサイクな顔になりやすいので、綺麗に撮るのは意外に難しい」と清水さんは語る。石田が綺麗に自撮りできているのは、元がいいことも然ることながら、「綺麗に見える“油断した表情”を知っているからだと思います」と言う。

 本当に油断していると、口が開いてぽかんとした表情になりやすいが、石田はそっと唇を閉じている。さらに、左の眉頭が少し引き上げられているようにも見えることから、木村同様、表情のコントロールで左右非対称の動きが生じている可能性を指摘。「眉頭はメイクやライトの加減でそう見えるだけかもしれない」と前置きしながらも、「本当に油断していると、目自体も力なくとろんとしますが、石田さんの目元は少し力が入っているように見えます。“口を閉じる”、“目元の緊張”から、綺麗な油断した表情を演出していることが読み取れます」と、清水さんは分析する。

 ただ、通常、表情を作ると顔に力が入ってリラックスしているように見えないが、石田は綺麗な表情を作りながらも自然体を体現している。「これはすごいこと。この表情をどのくらい意図的に行っているかはわかりませんが、長年の女優経験から綺麗な自分の見せ方を体得し、いついかなるときでも、無意識に表現できるのかもしれません」。

 表情豊かな中で見せる油断した表情はギャップとなり、変化がより効果的に映るため、このようなプライベート感のある表情が女優の顔とのギャップを生んで、石田の魅力をさらに増す要因になっていると考えられるそうだ。

 なお、一般人が石田を真似て油断した表情を作るのは、「笑顔を真似るよりは簡単」なのだそう。ただ、表情で誤魔化せない分、綺麗に見えるかどうかで造形の美しさが試されるようだ。自信のある方は、ぜひトライしてみてもらいたい。
(千葉こころ)

清水建二(しみず・けんじ)
「空気を読むを科学する研究所」代表取締役。1982年、東京生まれ。防衛省講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本顔学会会員。ニュースやバラエティ番組で、政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(テレビ朝日系『科捜研の女 シーズン16』)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数。

【著書紹介】
『ビジネスに効く 表情のつくり方(顔は口ほどにモノを言う!)』(イースト・プレス)
コミュニケーションの肝は、話す内容でも、言葉遣いでもなく、「表情」と「しぐさ」のスキルにある!? コミュニケーション上達のための「表情」と「しぐさ」のポイントを科学的に解説。商談、営業、面接、接客、社交……さまざまな場で使える1冊。

『微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)
Google、マイクロソフト、Twitter、FBI……世界的企業で使われている、無意識の感情の表われ「微表情」読み取る技術を解説。一瞬で、確実に相手のホンネがわかる、最強の心理術を教えます。

オタクはなぜ上ずった早口で喋る? ボイストレーナーに聴いた結果、その秘密は「体内」にあった!

 オタクの喋り方は、なぜか「似ている」と同人誌即売会に行くと感じる。中川翔子(しょこたん)の喋り方は典型だ。「しょこたんの場合、ネットスラングなどのオタク用語を駆使するからオタクっぽいのでは?」という声もあるだろうが、特殊用語を抜いても、「上ずった超早口」が残り、これは多くのオタクに共通する。「マンガやゲームが好きなだけでオタクではない人」と「オタク」を分けるのは口調と言ってもいいのではないだろうか。

 今回も、ボイストレーニングスクール『アマートムジカ』を運営する堀澤麻衣子氏、司拓也氏に、オタク話法の謎について聞いた。

 

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]居酒屋で声を張り上げているのに店員が振り向かない人は何がいけない? ボイストレーナーに聞く!
[2]声がでかい人必見! もう傷つかずに済む声の調整法をボイストレーナーに聞いてみた
[3]ボイストレーナーが考える「イケボ俳優」とは? 今から間に合う“モテ声”入門

 

■オタクは「伝わりやすい喋り方」から真逆のことをしている

 

――オタクの喋り方も様々な流派がありますが、中川翔子さんのような上ずった早口で話す人はよく見かけます。私自身もその傾向はあるのですが、なぜ、そうなってしまうのでしょうか?

司拓也氏(以下、司) 中川さんなのですが、状況、場によって「声の使い分け」ができる、とても知性のある方だと感じています。東京五輪関連のお仕事をされている際のインタビューでは、落ち着いた低めの声でゆっくり話されていました。

 一方、話題がオタク的な内容になった際の中川さんのお話している映像を見て感じたのは、

・上ずった高い声
・早口に加えて「一文が長い」(「。」をつけずに話し続けていますね。)
・間がない
・息継ぎが少ない
・相手の反応を考慮しないで、頭の中の映像を描写したまま口にする

 などが特徴ですね。

――挙げていただいた点、心当たりがありすぎるオタクは多いと思います。

 「高い声」ではないですが、宅八郎さんもこんな感じでしたね。

――宅八郎から中川翔子へと、オタクの喋り方には伝統の「型」を感じさせますね。

 一般的なビジネスパーソンへの話し方のレッスンでは、これらとは真逆のことを教えています。まず「速度」ですが、本来理想とされるスピードは一分間に300文字です。

――原稿用紙なら3/4、Twitterならフルで書いて大体二つ分のツイートが300字です。

 また、一つの文は句読点を除き50~60文字以内にとどめ、強調したい語句の前には「間」をあけるよう指導しています。

――今の司さんの「また、一つの~始動しています」までが句読点を抜いて49文字です。なお、中川さんの話し方を見ると「。(読点)」で終わらせず「●●で、●●で、●●で………」と、「、(句点)」でひたすらつないでいくので、どうしても一文が長くなってしまいますね。

■オタクの声が上ずるのは、オタトークができる喜びからだった

 

――速度や文の長さについて伺ってきましたが、声が上ずってしまうのはなぜなのでしょうか?

堀澤麻衣子氏(以下、堀澤) 気持ちの問題ですね。感情が普段の平常心の状態から上がる、例えば「調子に乗っているとき」や「緊張しているとき」などもそうですが、体の中心である「丹田」の位置が上がってしまうんです。

 人が緊張したときに、よく、「あがった」といいますが、あれは「丹田」が上がるということなんです。丹田が上がると、肺が圧迫されて息が吸いづらくなります。なおかつ、心も落ち着かないから、どうしても声はふわふわと、上ずった感じになってしまうんです。

――オタクの声が上ずりがちなのは「オタトークができて超うれしい」という感情が根底にあるのですね。

堀澤 はい。ですので、「嬉しさのあまり思わず声が上ずってしまうような状況でも、落ち着いて話したいかどうか」というご本人の気持ちもまずありますよね。嬉しい感情を無理して止める必要はないと思います。

 なお、嬉しさや緊張で丹田が上がると喉が締まります。そうなると、空気がうまく吸えず酸欠状態になります。自分の首を絞めたまましゃべるようなものです。少ない空気でなんとか情報量を伝えようとすると、早口になってしまうんですね。

――嬉しい→丹田上がる→上ずる&早口と、オタクの喋り方が似るのは、体中に理由があったんですね。

堀澤 繰り返しになりますが、嬉しい感情を無理に止める必要はないと思います。ですが、自分がいくら好きな話題でも、相手の興味度数はどれくらいなのか、は意識してみるといいかもしれません。相手の興味度数は「3」くらいしかないのに、本人がひたすら「10」でしゃべっていて、相手がつまらなそうにしているのも感じない、となるとコミュニケーションは一方通行になりがちなので、それはお互いにとってよくないですよね。

 興味度数がずれているなと気づき、一旦冷静に自分を感じることは大切です。そうすれば適量な長さや声でしゃべれるようになります。

* * *

 ひたすらに推しへの想いや、地雷に対する悪口などを黒部ダムの放水のように語るときの得難い気持ちよさというのは、オタクとしてよくわかる。オタクのトークは激しいギターソロ(最後にギターを燃やしたり壊したりするタイプ)なのだ。

 しかし、これに「分かって欲しい」「これをきっかけに聞いている人ともっと親睦を深めたい」などの野望が加わった場合は、このギターソロを「弾き語り」くらいにする工夫があるといいのだろう。それにおいて、声や喋り方の工夫は、大きな助けになるはずだ。

(文/石徹白未亜[http://itoshiromia.com/])

 

「アマートムジカ」ホームページ:http://amatomusica.com/

■絶賛発売中!
『人前であがらず話せる「1分声トレ」』(世界文化社)

 

 

“アラフォー独身女性”は、なぜ生きづらいのか? アラフィフの亀山早苗さんに聞く

 筆者がアラサーだった頃、40歳の誕生日を迎えた職場の先輩が「私わかったの、不惑ってワクワクせずって意味なのよ」と憂い顔で言うのを聞き、少なからず驚いた。その人は十分、成熟して自分の人生を楽しんでいるように見えたから。一方、時を経てアラフォーとなった自分は、成熟とはほど遠い状態にあり、でも同じくワクワクしていない。

 40歳前後とは、屈託を抱えてしまう時期なのかもしれない。今冬発売された書籍『アラフォーの傷跡』(鹿砦社)を読み、ますますその思いが強くなった。本書には、ウェブサイトでの連載をもとに構成された、15人のアラフォー独身女性たちへのインタビューが収められている。

■40歳になったとき、解放感があった

 著者の亀山早苗さんはこれまで恋愛関係、特に不倫関係にある男女にインタビューし、その機微をつづり、それを通して時代を切り取ってきた。いま、なぜアラフォーに着目したのか?

「ちょうど体も心も曲がり角というか、なんらかの危機に瀕する人が多いのがこの年代。アラサーもひとつの節目ではありますが、アラフォーになったときのほうが、ずっと大きく揺れます。昔は結婚する年齢も子どもを産む年齢も、平均がいまよりずっと若かったから、40歳になれば人生ひと区切りついていたのかもしれないけど、いまのアラフォーは揺れ動いている真っ最中です」

 恋愛をしているのなら、いまのパートナーとこのまま交際を続けるのか結婚するのか? 不倫の恋なら、いつ終わらせて新たな相手を探すのか。仕事面でも転職するならこれが最後のチャンスと思う人が少なくなく、家族に目を向ければ、ほどなくして親の介護が始まりそう。そして、そろそろ更年期の足音が聞こえてくる……。

「女の人生が激変するかもしれない第一歩」を踏み出すのが、この年代なのだと見ている亀山さんに、自身のアラフォー時代を振り返ってもらった。当時、身体面では重度の腰椎椎間板ヘルニアや3カ月にわたる悲惨な不正出血など、相次いでトラブルに見舞われたが、精神面でも大きな変化があったという。

「40歳になったとき、『あ、これで子ども産まなくていいんだ。ラッキー』って思ったんです。私はバツイチで今後結婚する気もなく、子どもを欲しいと思ったこともないのですが、これで周囲からも何も言われなくなるんだ、という解放感がありましたね。一般的に女性・男性のほかに“産む性”というものがあると思っていて、望んだわけでもないのに、私の肩にも女性と産む性の両方が乗っかっていました。そのうちのひとつをやっと下ろせた、という感じでした」

 そんな亀山さんがインタビューしたアラフォー女性15人は、例外なく揺れ動いている。不倫の恋に惑い、あるいは母との関係に悩み、あるいは借金や親の介護といった重いものを背負い続けることに疲れ果てている。程度の差こそあれ、誰もが自分の人生に納得していない。

 同世代の女性なら、そんな彼女らに多かれ少なかれ共感するのではないか。筆者自身、仕事もプライベートもそれなりに充実していると思いながらも、油断すると「世間並みの幸せから外れている」という思いが心の隙に入り込む。正社員として働き、結婚していて子どもにも恵まれ、なんならマンションぐらい購入している……そうでない人生を選んできたのは自分であるにもかかわらず。

「15人の女性たちは、“はみ出てしまった自分”に納得していないですよね。そんな人生を生きていくすべを身につけるよりも、“世間並み“になることを望んでしまう。見ていて、歯がゆく感じてしまうこともありました」

 世間並みの幸せを得られる一歩手前までいくと怖くなってしまうのか、3人の男性と婚約しては破棄することを繰り返した女性。正義感が強いあまり小さな不正も許すことができず、融通が利かない自分ではなく世間のほうがおかしいのだと、かたくなに信じ続ける女性。悪いことや間違ったことをしたわけでもないのに、なんとなく生きづらい、そんな状況に彼女らを追い込んでいるものは何なのか?

「成功体験が少ないのかもしれませんね。それが皆無だったわけではなく、ささやかなことでは満足できないから、成功を成功と感じられない。誰から見ても『すごい』『すてき』と思われる“きちんとした幸せ“じゃないと自分に納得できない、という傾向を現在のアラフォー女性に感じました。だから、自分に自信がない。私はバブル世代なんですけど、同世代の女性たちはだいたい心のどこかで『何かあっても、なんとかなる』『生きていける!』と思っています。その自信は根拠がないものですが、そのぐらい開き直ったほうが、『今日はおいしいお肉を食べれられたから幸せ』と日々のささやかなことに満足できるんですよ」

 15人の女性たちは、見えない将来に不安を感じている。そんな彼女たちに亀山さんは「40過ぎなんてまだ若いんだから」と声をかけるが、一様に「そんなことない」「もう40代」といったリアクションが返ってきた。ネガティブなようにも聞こえるが、たしかにアラフォーとなれば若くはない。けれど同時に「成熟していない」という実感もある。

「成熟なんて、一生できないんじゃないかな(笑)。私も50歳を過ぎて、そう感じるようになりました。だから私より年長の人からすれば『アラフィフなんてまだまだ若い』『いろんなことができる』と思うのでしょう。いくつになっても目の前にはいろんな波が来ますから、“いまだ!”と思ったら、年齢を足かせにせず、とりあえず乗ってみたほうがいいですよ。そのほうが、これからの人生楽しいはず。すごい成功や、うらやまれる生活じゃなくてもいいじゃないですか。アラフォーは、自分がその気になれば、まだまだ変われる年代だと思います」

 それぞれのインタビュー記事がネット上で掲載されてから本の刊行までは時間があったため、亀山さんは再び彼女たちに連絡して“その後”について聞き、本書に収録した。その中には、“波に乗った”女性もいた。鮮やかな転身ではなくとも、一歩を踏み出した彼女らにはきっとこの先、ワクワクできることが待っているに違いない。
(三浦ゆえ)

ボイストレーナーが考える「イケボ俳優」とは? 今から間に合う“モテ声”入門

「声が好き」は時として超強力な「顔が好き」をも凌ぐ吸引力を発揮する。いわゆるイケボ(イケてるボイス)とは何なのか? そして、自らをイケボにするには何が必要なのか?

 東京品川にあるボイス&メンタルトレーニングスクール『アマートムジカ』を運営する堀澤麻衣子氏、司拓也氏に、イケボで歌うコツ、イケボで話すコツについて聞いた。

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]居酒屋で声を張り上げているのに店員が振り向かない人は何がいけない? ボイストレーナーに聞く!
[2]声がでかい人必見! もう傷つかずに済む声の調整法をボイストレーナーに聞いてみた

 

■テクニシャンは「地声」と「エアー」を使い分ける

 

――今の流行りの歌を聞いても「声を張って歌う」というよりも、「空気に音を乗せる」ようなものが目立ちます。昨年公開されたアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の主題歌であり、YouTube再生回数が1億回を超えた『打上花火』はDAOKO さん、米津玄師さんの男女のデュエット曲ですが、どちらも空気に声を乗せるような、張らない、叫ばない、「エアー」な歌い方ですよね。

司拓也氏(以下、司) 最近はエアー系が確かに多いですね。ただ、すべてがエアーばかりでなく、地声も載せてバランスを取りつつ歌っている人が多いと思います。

 地声ばかりだと聴き手は疲れてしまって、エアーばかりだと迫力がなくなってしまうんです。

堀澤麻衣子氏(以下、堀澤) 玉置浩二さんは、エアーなところはエアーですが、張るところは張っている。そのグラデーションを使って歌える人は歌が格段にうまいと思われますし、聞いている人が飽きないんですよね。

 例えば、DREAMS COME TRUEの吉田美和さんは声が出ているし、すごく歌が上手いのですが、基本的にはとても喉が強くてずっと張っていますよね。

――バラードや静かな曲でもクリアな歌声で、エアー感が確かにないですね。

堀澤 ただ、地声だけが続くと、一曲ならいいのですが、アルバム一枚聞くとちょっとおなか一杯になってしまうんですね。これはエアー系でも同じで、ずっとエアー系だと、ちょっとぼんやりしてしまう。どちらかだけだと飽きてきてしまいがちです。

 地声とエアーのグラデーションが上手いのはMisiaさんですね。

 なお、歌声のボイストレーニングは、まず「エアー」な声を出す指導をします。そうすると喉が開くので、そこから「芯を作る」練習をして地声も鍛えます。

 芯を細くすればするほど、地声になります。芯は麺の太さによく例えますね。エアー系はきしめん、地声は素麺というような。芯がくっきり細くない状態であればあるほど、空気交じりの、エアーな声になります。

 ちなみにエアーの強い声はジャズ、シャンソン、フレンチポップスに向いています。

――吐息を感じさせるから、大人っぽさや色気が必要な曲に合うのでしょうね。

堀澤 はい。もっとこれに芯を作ると、ポップスにも合うクリアな声になります。ポップスにエアーすぎる声だと「聞こえない、聞き取りにくい」となるので、声に芯があることが大切なんです。

■ボイストレーナーの考えるイケボ俳優、イケボ女優

――歌声について聞いてきましたが、話し声や演技での声が上手い俳優ですと、どなたになるでしょうか。

 堺雅人さんですね。先ほどの玉置さんなどのケースと同じで、エアーと地声の使い分けがうまいです。

堀澤 役所浩司さんも使い分けがうまいですよね。優しさを出したいときはエアー系でしゃべりますし、強さを出したいときは地声と、一辺倒じゃないです。

 あと、玉木宏さんは本当にいい声ですね。

――1回目の原稿で「声が大きすぎると、場合によっては嫌悪感を持たれますが、声が通るということで嫌悪感を抱かれることはまずありません」と伺いましたが、しっかりとクリアに通る玉木さんの声はまさにそうですね。「声が通る」の見本のような声ですね。

堀澤 以前、カフェで偶然隣の席に玉木さんが座られていたことがあったんです。顔は帽子をかぶっていたのでわからなかったのですが、声ですぐわかりました。玉木さんは完全に喉が開いている声です。骨伝導の、聞いていて気持ちのいい声ですね。

――女性だとどなたでしょうか?

堀澤 「エアー」な声が本人のキャラクターと一致しているという点で、鈴木京香さんもとてもいいですね。雰囲気と声が連動しているので、差異を感じさせません。

 中谷美紀さんも、芯のある声と、息の声を役によって上手に使い分けられています。内面の心の強さとしなやかさを感じます。

 最近では日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞された広瀬すずさん。芯のある声、間の作り方が天才的ですね。

* * *

 こうしてみると、「イケボ」の作り方にもいくつかの流派があることが分かる。

①エアと地声を状況に応じ効果的に使い分ける(玉置、役所型)
②通る声(聞いていて超気持ちのいい声)を極める(玉木型)
③キャラクターと声を一致させる(鈴木型)

 ファッションや体型維持、髪型など見た目に関する努力の一部を声に振り分けてみると、やっている人が少ないだけに差を出せるかもしれない。

 次回は最終回、オタクの喋り方はなぜ似るのか、について堀澤氏、司氏について伺う。

(文/石徹白未亜[http://itoshiromia.com/])

 

「アマートムジカ」ホームページ:http://amatomusica.com/

■絶賛発売中!
『1日で感動的に声がよくなる!歌もうまくなる!! 』(すばる舎)

 

 

マンガの効果で売り上げ4倍! レズ風俗経営者が語る、“女性だけの世界”が必要なワケ

 2年前、漫画家・永田カビさんがレズ風俗に行った経験をつづったマンガ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)が話題になった。そのマンガに登場したレズ風俗店「レズっ娘クラブ」の代表・御坊(おぼう)さんが、このたびレズ風俗を始めたきっかけから10年間の店舗経営の経験をまとめた著書『すべての女性にはレズ風俗が必要なのかもしれない。』(WAVE出版)を上梓した。そこで、御坊さんに、女性が女性に癒やしを求める心理やレズ風俗の魅力について話を伺った。

■体重や容姿を気にすることなく、誰でも利用してほしい

――永田カビさんのレズ風俗レポのマンガを読んだとき、どういう感想を持たれましたか?

御坊さん(以下、御坊) 最初、レズ風俗のマンガがピクシブにアップされていると聞いて読んだときは、東京の店かと思っていました。でも読んでみたら「大阪弁やんなあ」って(笑)。それでカビ先生のTwitterアカウントを見つけて「うちかな?」と聞いたら「そうです。そちらです」「こんなレポ公開して、だめだったら消そうと思っていた」というようなことを言われたので、「いやいや! うちも宣伝させてもらいます!」って話を交わしたんです。カビ先生の本のおかげで、お店の売り上げは4倍にもなりました。

――今回、御坊さんが本書を書くことになったきっかけを教えてください。

御坊 最初は編集者の方に声をかけていただいたのですが、当時は「風俗店の経営者の本=成功者の本」だと思っていて、ウチのお店はまだそんなに成功していないし……と思って一度はお断りしたんです。でも、2017年にお店の10周年のトークイベントをロフトプラスワン WESTでやらせていただいた際、10年間の歴史を箇条書きにしたら、ものすごい量になってしまいました。トークイベントではしゃべり足りなかったんです。この10年間、もっと大変なことがあったと思い、再度編集者の方に電話して、今回本を出すに至りました。

――お店には「体重が重い」とか「容姿がよくない」「年齢的にオバサンだから」と気にして、利用を躊躇されている女性からの問い合わせが多いそうですね。男性キャストが相手をする女性向け風俗店の中には、体重が重い人の利用を断る店もあるので、気にしているのでしょうか?

御坊 本当にその問い合わせは、僕も不思議です。「体重が重いので心配です」っていうテンプレートがネット上のどこかに落ちているのではないかと思うほど、自分の体重や容姿、年齢を気にする問い合わせが多いです。体重が重いから店を利用できないって、まず女性に対して失礼ですよね。お店のルールさえ守ってくれたら、誰でも来てほしいと思っています。

 また、「私、キャストさんにエッチだと思われませんか?」と不安な気持ちを問い合わせてこられる方もいますが、「いやいや、そういうことをするお店だから、だいたいのことは大丈夫ですよ!」って(笑)。でも、その一言で安心して、予約を入れてくれたりします。利用したいと思っていても、もうひと押し欲しい方が多いようです。

――永田カビさんも、実際にお店に行くまで、ものすごく悩んでらっしゃいましたよね。

御坊 初めての方が利用するハードルは高いと思うので、そこは下げないといけませんよね。「行かない理由」ではなく「行く理由」をたくさん作りたいです。2月中限定で、本書を買ってくれた方には書籍購入割引も実施しました。この割引を使って予約をしてくれた方もいますし、こういうきっかけや理由を、こちらから作ってあげたいです。

――レズっ娘クラブはレズビアンではない女性も利用するとのことですが、女性同士だからこそ安心できるという点もありそうですね。

御坊 そうだと思います。でも、癒やしだけでなく、やはり快感抜きには語れないようですね。おそらく、ウチのキャストは男性よりもテクはあります。レビューに「彼氏とではイケなかったのに初めてイッた」とか「初めて潮を吹いた」といった記述があると、“おめでとう”って思います(笑)。女性同士だからこそ、やってもらってうれしいことがわかるんでしょうね。お店を利用して「扉が開いた」というお客さまもいます。

――ここ最近、セクハラに声を上げる「MeToo運動」や女性専用車両にわざと男性が乗り込む嫌がらせ行為など、女性をめぐる社会問題に関する議論が盛んになっています。また、Twitter上では「女性だけの街があれば安心して暮らせる」という話題が上がったりするような状況の中、女性だけの世界であるレズ風俗は、女性にとって安心できる場所のひとつになっているのではないかと思うのですが、御坊さんはどうお考えですか?

御坊 僕自身は、社会について何も口を挟む必要はないと思っています。そのような思想はなく、完全に店至上主義です。すべてはお店のためです。とはいえ、女性にとっての「安心」「安全」は常に考えているので、女性のみなさんがそう思ってくれる分には、うれしいですね。

――御坊さんがオススメするレズ風俗の楽しみ方は、どういうコースですか?

御坊 レズプレイを楽しめる「ビアンコース」は必須ですが、その前に60分間のデートをオプションでつけられるので、まずはデートをしてから、ホテルに入って90分のビアンコースに移るのがいいと思います。デート中、キャストが緊張をほぐしてくれたり、プレイでどんなことをしたいか、どんなことをされたくないかなど、希望を聞き出してくれます。そうやって話していくうちに、お客さまもリラックスできるので。デートをしてビアンコースに臨むのと、せずに臨むのとでは、全然違うと思います。

――でも、キャストさんからエッチだと思われることを心配するお客さんがいるように、デート中にヒアリングされても、恥ずかしくて答えられないお客さんもいますよね?

御坊 それを聞き出すのがキャストの仕事です。答えにくかったら予約フォームに「キャストへの伝言」という欄があるので、そこに書いていただけるとうれしいです。でも、ベテランのキャストは本当に自然に聞き出すので、さすがだなと思います。

――人気の出るキャストは、どんな素質の方ですか?

御坊 それは働いてみないとわからないです。でも、意識が高い人でないと難しいと思います。うちはHP上のプロフィール写真でキャストの顔出しをしていないし、お客さまとキャストが直接連絡を取り合うこともないので、それぞれが発信しているブログが唯一の営業ツール。お客さまが喜ぶような内容のブログを更新したり、お店全体のことを考えてくれたりするキャストのほうが指名率は高いです。自分のことばかりでなく、ほかのキャストのことも考えてくれるような人。そういうキャストは、「自分が何をしてもらったらうれしいか」と考えるところから入るのだと思います。些細なことでも、やってあげたほうがいいと思ったらやるとか。

――御坊さんがお店を始めた10年前は、まだLGBTという言葉も浸透していない時代です。10年前と比べて、お店を利用する人やキャストの傾向は変わりましたか?

御坊 変わったと思います。昔はレズビアンの人たちの居場所がなかったので、出会い目的の方が多かったです。でも、今はLGBTのイベントも増えましたし、SNSも普及し、同性愛者向けの出会い系サイトもあります。そういうツールが増えたにもかかわらず、うちを利用してくれるお客さまがいるのは、本当にありがたいです。「恋愛ごっこ」という言葉を使うと語解を招くかもしれませんが、そういう利用の仕方もいいと思います。

――同じキャストさんを指名し続ける方が多いんですか?

御坊 そういう方もいらっしゃいますし、いろんなキャストを指名される方もいます。お客さまが「この前、あのキャストさんを指名したよ」と言ってヤキモチを焼かそうとしたり、キャストもヤキモチを焼くフリをするとか(笑)。「今日で会うのは終わり!」って言いながら、次回の予約を取る方もいます。そういう恋愛の駆け引きごっこを楽しんでいるお客さまは昔から結構いますね。

――今後の目標を教えてください。

御坊 東京進出も視野に入れ、お店を大きくしたいです。また次の企画として、自費出版で、永田先生にカバーイラストをお願いした『初めてのレズ風俗』というご利用ガイドの制作も進めています。もっと、いろんなお客さまに来ていただけたらと思います。
(姫野ケイ)

御坊(おぼう)
1981年、大阪生まれ、大阪育ち。大学卒業後、WEB制作会社に就職するも、24歳で独立。当時取引先に多かった性風俗産業に魅力を感じ、2007年に共同経営者2名とともにレズ風俗「レズっ娘クラブ」を立ち上げる。09年以降は単独で経営。10年にはレズ鑑賞サービスも提供する姉妹店「ティアラ」をオープンさせる。同店の宣伝も兼ね、関西におけるトークイベントの殿堂たる「ロフトプラスワン WEST」「なんば紅鶴」などへの出演多数。珍スポット旅好きユニット「MOB」にも所属。本人はノンケ男子。

マンガの効果で売り上げ4倍! レズ風俗経営者が語る、“女性だけの世界”が必要なワケ

 2年前、漫画家・永田カビさんがレズ風俗に行った経験をつづったマンガ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)が話題になった。そのマンガに登場したレズ風俗店「レズっ娘クラブ」の代表・御坊(おぼう)さんが、このたびレズ風俗を始めたきっかけから10年間の店舗経営の経験をまとめた著書『すべての女性にはレズ風俗が必要なのかもしれない。』(WAVE出版)を上梓した。そこで、御坊さんに、女性が女性に癒やしを求める心理やレズ風俗の魅力について話を伺った。

■体重や容姿を気にすることなく、誰でも利用してほしい

――永田カビさんのレズ風俗レポのマンガを読んだとき、どういう感想を持たれましたか?

御坊さん(以下、御坊) 最初、レズ風俗のマンガがピクシブにアップされていると聞いて読んだときは、東京の店かと思っていました。でも読んでみたら「大阪弁やんなあ」って(笑)。それでカビ先生のTwitterアカウントを見つけて「うちかな?」と聞いたら「そうです。そちらです」「こんなレポ公開して、だめだったら消そうと思っていた」というようなことを言われたので、「いやいや! うちも宣伝させてもらいます!」って話を交わしたんです。カビ先生の本のおかげで、お店の売り上げは4倍にもなりました。

――今回、御坊さんが本書を書くことになったきっかけを教えてください。

御坊 最初は編集者の方に声をかけていただいたのですが、当時は「風俗店の経営者の本=成功者の本」だと思っていて、ウチのお店はまだそんなに成功していないし……と思って一度はお断りしたんです。でも、2017年にお店の10周年のトークイベントをロフトプラスワン WESTでやらせていただいた際、10年間の歴史を箇条書きにしたら、ものすごい量になってしまいました。トークイベントではしゃべり足りなかったんです。この10年間、もっと大変なことがあったと思い、再度編集者の方に電話して、今回本を出すに至りました。

――お店には「体重が重い」とか「容姿がよくない」「年齢的にオバサンだから」と気にして、利用を躊躇されている女性からの問い合わせが多いそうですね。男性キャストが相手をする女性向け風俗店の中には、体重が重い人の利用を断る店もあるので、気にしているのでしょうか?

御坊 本当にその問い合わせは、僕も不思議です。「体重が重いので心配です」っていうテンプレートがネット上のどこかに落ちているのではないかと思うほど、自分の体重や容姿、年齢を気にする問い合わせが多いです。体重が重いから店を利用できないって、まず女性に対して失礼ですよね。お店のルールさえ守ってくれたら、誰でも来てほしいと思っています。

 また、「私、キャストさんにエッチだと思われませんか?」と不安な気持ちを問い合わせてこられる方もいますが、「いやいや、そういうことをするお店だから、だいたいのことは大丈夫ですよ!」って(笑)。でも、その一言で安心して、予約を入れてくれたりします。利用したいと思っていても、もうひと押し欲しい方が多いようです。

――永田カビさんも、実際にお店に行くまで、ものすごく悩んでらっしゃいましたよね。

御坊 初めての方が利用するハードルは高いと思うので、そこは下げないといけませんよね。「行かない理由」ではなく「行く理由」をたくさん作りたいです。2月中限定で、本書を買ってくれた方には書籍購入割引も実施しました。この割引を使って予約をしてくれた方もいますし、こういうきっかけや理由を、こちらから作ってあげたいです。

――レズっ娘クラブはレズビアンではない女性も利用するとのことですが、女性同士だからこそ安心できるという点もありそうですね。

御坊 そうだと思います。でも、癒やしだけでなく、やはり快感抜きには語れないようですね。おそらく、ウチのキャストは男性よりもテクはあります。レビューに「彼氏とではイケなかったのに初めてイッた」とか「初めて潮を吹いた」といった記述があると、“おめでとう”って思います(笑)。女性同士だからこそ、やってもらってうれしいことがわかるんでしょうね。お店を利用して「扉が開いた」というお客さまもいます。

――ここ最近、セクハラに声を上げる「MeToo運動」や女性専用車両にわざと男性が乗り込む嫌がらせ行為など、女性をめぐる社会問題に関する議論が盛んになっています。また、Twitter上では「女性だけの街があれば安心して暮らせる」という話題が上がったりするような状況の中、女性だけの世界であるレズ風俗は、女性にとって安心できる場所のひとつになっているのではないかと思うのですが、御坊さんはどうお考えですか?

御坊 僕自身は、社会について何も口を挟む必要はないと思っています。そのような思想はなく、完全に店至上主義です。すべてはお店のためです。とはいえ、女性にとっての「安心」「安全」は常に考えているので、女性のみなさんがそう思ってくれる分には、うれしいですね。

――御坊さんがオススメするレズ風俗の楽しみ方は、どういうコースですか?

御坊 レズプレイを楽しめる「ビアンコース」は必須ですが、その前に60分間のデートをオプションでつけられるので、まずはデートをしてから、ホテルに入って90分のビアンコースに移るのがいいと思います。デート中、キャストが緊張をほぐしてくれたり、プレイでどんなことをしたいか、どんなことをされたくないかなど、希望を聞き出してくれます。そうやって話していくうちに、お客さまもリラックスできるので。デートをしてビアンコースに臨むのと、せずに臨むのとでは、全然違うと思います。

――でも、キャストさんからエッチだと思われることを心配するお客さんがいるように、デート中にヒアリングされても、恥ずかしくて答えられないお客さんもいますよね?

御坊 それを聞き出すのがキャストの仕事です。答えにくかったら予約フォームに「キャストへの伝言」という欄があるので、そこに書いていただけるとうれしいです。でも、ベテランのキャストは本当に自然に聞き出すので、さすがだなと思います。

――人気の出るキャストは、どんな素質の方ですか?

御坊 それは働いてみないとわからないです。でも、意識が高い人でないと難しいと思います。うちはHP上のプロフィール写真でキャストの顔出しをしていないし、お客さまとキャストが直接連絡を取り合うこともないので、それぞれが発信しているブログが唯一の営業ツール。お客さまが喜ぶような内容のブログを更新したり、お店全体のことを考えてくれたりするキャストのほうが指名率は高いです。自分のことばかりでなく、ほかのキャストのことも考えてくれるような人。そういうキャストは、「自分が何をしてもらったらうれしいか」と考えるところから入るのだと思います。些細なことでも、やってあげたほうがいいと思ったらやるとか。

――御坊さんがお店を始めた10年前は、まだLGBTという言葉も浸透していない時代です。10年前と比べて、お店を利用する人やキャストの傾向は変わりましたか?

御坊 変わったと思います。昔はレズビアンの人たちの居場所がなかったので、出会い目的の方が多かったです。でも、今はLGBTのイベントも増えましたし、SNSも普及し、同性愛者向けの出会い系サイトもあります。そういうツールが増えたにもかかわらず、うちを利用してくれるお客さまがいるのは、本当にありがたいです。「恋愛ごっこ」という言葉を使うと語解を招くかもしれませんが、そういう利用の仕方もいいと思います。

――同じキャストさんを指名し続ける方が多いんですか?

御坊 そういう方もいらっしゃいますし、いろんなキャストを指名される方もいます。お客さまが「この前、あのキャストさんを指名したよ」と言ってヤキモチを焼かそうとしたり、キャストもヤキモチを焼くフリをするとか(笑)。「今日で会うのは終わり!」って言いながら、次回の予約を取る方もいます。そういう恋愛の駆け引きごっこを楽しんでいるお客さまは昔から結構いますね。

――今後の目標を教えてください。

御坊 東京進出も視野に入れ、お店を大きくしたいです。また次の企画として、自費出版で、永田先生にカバーイラストをお願いした『初めてのレズ風俗』というご利用ガイドの制作も進めています。もっと、いろんなお客さまに来ていただけたらと思います。
(姫野ケイ)

御坊(おぼう)
1981年、大阪生まれ、大阪育ち。大学卒業後、WEB制作会社に就職するも、24歳で独立。当時取引先に多かった性風俗産業に魅力を感じ、2007年に共同経営者2名とともにレズ風俗「レズっ娘クラブ」を立ち上げる。09年以降は単独で経営。10年にはレズ鑑賞サービスも提供する姉妹店「ティアラ」をオープンさせる。同店の宣伝も兼ね、関西におけるトークイベントの殿堂たる「ロフトプラスワン WEST」「なんば紅鶴」などへの出演多数。珍スポット旅好きユニット「MOB」にも所属。本人はノンケ男子。