世にも濃密なショートショート『ひきだしにテラリウム』の傑出した表現力

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『ひきだしにテラリウム』(イースト
・プレス)

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

<今回紹介する女子まんが>
九井諒子
『ひきだしにテラリウム』全一巻
イースト・プレス 798円

 ショートショート……この懐かしくて甘美な響き。書店にずらりと並んだ星新一先生の作品集に、かつて心ときめかせた方も多いことでしょう。その短さゆえに高度な技巧を必要とするショートショートは、少女マンガにおいてはかつて倉多江美先生の『一万十秒物語』シリーズ(白泉社・絶版)という傑作が生まれ、また秋田書店の『コミック星新一』シリーズでは渡辺ペコ先生や鈴木志保先生、志村貴子先生などが星新一作品のコミカライズに挑んでいたりしますが、作品数としてはほんとうに数えるほどしかありません。そこへ果敢に挑んだのが九井諒子先生でした。

 2年前に『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』(イースト・プレス)で商業デビューした九井先生は、現在マンガ好きの間でも最も注目されている作家の1人です。昨年発売された『九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子』(エンターブレイン)も、「フリースタイル」(フリースタイル)の「このマンガを読め!2013」で8位にランクインするなど人気を集めました。満を持しての第3作が、このショートショート集『ひきだしにテラリウム』です。

3.11以降待たれていた最高のヒーローを描く、今注目すべき女子マンガ

 年末年始のマンガ界はランキング本や賞レースで賑わいます。先ごろ候補作が発表された「マンガ大賞」を筆頭に、玄人筋に人気の「文化庁メディア芸術祭マンガ部門」、そしておなじみ『このマンガがすごい!』(宝島社)と雑誌「フリースタイル」(フリースタイル)の「このマンガを読め!」の両ランキングは、あらゆる点においてマンガファンが注目するところでありましょう。今回はそれらにランクイン、または受賞した作品の中から、女子マンガファンが今年注目すべき作品・作者をご紹介いたします。

渡辺カナ『星屑クライベイビー』(全1巻/集英社/420円)
「このマンガがすごい!2013」オンナ編第18位

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 もしかしたら椎名軽穂先生、咲坂伊緒先生に続くヒットメーカーとなるやもしれない才能の誕生です。第2短編集が見事ランクインした渡辺カナ先生に、私は単なる「王道」以上の何かを見ました。

中村明日美子完全復活の予兆!?  今年完結した女子マンガ、注目作はコレ

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

 ある知人は「完結したマンガでないと心安らかに読めない」と言います。「続きが気になって仕方ないのに、今すぐ続きが読めないなんてとても耐えられない」のだそうです。なるほど、その気持ちもよくわかります。ということで今回は、この冬休みに大人買いしたい「今年完結した女子マンガ」の私的ベスト5をご紹介いたします。順不同です。

40代の心に潜む永遠の“少女性”に気付かせる『君の天井は僕の床』

『君の天井は僕の床』(集英社)

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

<今回紹介する女子まんが>
鴨居まさね
『君の天井は僕の床』1~3巻(以下続刊)
集英社クイーンズコミックス 各440円

 そもそもからして老眼鏡のお話からこの物語は始まります。デートで浅草寺に行っては常香爐の煙を浴びて「頭・目・肩・腕……いっそこの中で全身スモークされたいな」とつぶやき、夫に陰毛の白髪を発見された友人の話題で恐怖に打ち震え、結婚相手にするなら国民年金(フリーランス)がいいか厚生年金(会社員)がいいかで悩み、結婚を前にして自分たちが入る墓を想う……そんなOVER40の男女が、このマンガの主人公です。40代前半のエディトリアルデザイナー・鳥田まりさんと、1歳年下で近所のビルのオーナー・本間さん。ポール・サイモンの往年の名曲「One Man's Ceiling Is Another Man's Floor」からタイトルをとった鴨居まさね先生の最新シリーズ『君の天井は僕の床』は、大人ゆえにもどかしい、それゆえに傍から見るとすこぶる楽しい恋物語であります。

見る者と見られる者――眼差しの欲望と暴力を冷徹なまでに描く『ひばりの朝』

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『ひばりの朝』(祥伝社)

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

<今回紹介する女子まんが>
ヤマシタトモコ
『ひばりの朝』1巻(以下続刊)
祥伝社 680円

 ある少女に対して投げかけられる多くの人間の眼差し。ここで言う「眼差し」とは実際の視線以外にも、そこに込められた感情や意志、価値判断をも含むものとお考えください。その暴力性に、ある者は意識的ではありますが、しかし大半は無自覚的であります。主人公・手島日波里は14歳の中学生。人よりも早く身体的に成熟してしまったがために、さまざまな人の、さまざまな眼差しに晒され、そして絡め取られて行きます。『ひばりの朝』はそんな彼女を中心として繰り広げられる、欲望と暴力の群像劇です。

老いの先に訪れる矛盾の中の幸福……『ペコロスの母に会いに行く』の福音

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『ペコロスの母に会いに行く』(西日
本新聞社)

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

<今回紹介する女子まんが>
岡野雄一
『ペコロスの母に会いに行く』全1巻
西日本新聞社 1260円

 読む前からいい予感しかしない本っていう存在がごく稀にありまして、たとえば最近ではこの本がまさにそれでした。タイトルにある「ペコロス」とは著者・岡野雄一先生のペンネーム。本書は岡野先生が認知症の母の日常を、その半生を交えつつ描いたノンフィクション作品です。タウン誌などに断片的に描かれ続けたものが自費出版され、それが先生の地元・長崎市の書店で話題となり、このたび遂に商業出版されました。

『最果てアーケード』が描き出す、絶望でも無でもない「死」そして「幸せ」

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『最果てアーケード』(講談社)

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

<今回紹介する女子まんが>
小川洋子・有永イネ
『最果てアーケード』全2巻
講談社 各620円

女子におけるファッションとは? 快楽と義務を描く『神は細部に宿るのよ』

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『神は細部に宿るのよ』(講談社)

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

<今回紹介する女子まんが>
久世番子
『神は細部に宿るのよ』1~2巻
講談社 各700円


 以下の項目に1つでも当てはまるものがあれば、あなたはこのマンガを読んだほうがよいでしょう。

□ 試着室で服が脱げなくなったことがある。
□ なんとなくグレーの服が多い。
□ とりあえずデニム。
□ コートのベルトはすべて撤去。
□ 洗濯機で洗える服が好き。
□ ワンピースは楽だから好き。
□ クローゼットの中でいちばん高価な服は喪服。
□ パジャマじゃないのにパジャマに見える服を買ってしまったことがある。
□ ダウンベストの意味がわからない。
□ 夏こそ重ね着。Tシャツ1枚はもう無理。

解決できない感情が赦されていくカタルシス『つなぐと星座になるように』

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『つなぐと星座になるように』(講
談社)

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

<今回紹介する女子まんが>
雁須磨子
『つなぐと星座になるように』1〜2巻
講談社 各620円

 喜怒哀楽で言い表すことのできる感情はまだ良いのです。これは怒りなのか? はたまた哀しみなのか? 生きているとそうした「名づけようのない感情」に直面することが多々あります。感じているのはほかならぬ自分なのに、その自分ですら捕捉しきれず、もちろん他者に分かってもらうこともできないモヤモヤとした思い。雁須磨子先生はそうした言語化し得ないモヤモヤを確かに描き出すことのできる稀有なタレントであるのです。

 本作『つなぐと星座になるように』は、『幾百星霜』に続く雁先生の本格長編作品です。借金を踏み倒して東京へと去っていた彼氏を追い、なりゆきと勢いで上京した主人公・瑠加。とりあえず制作会社に勤める姉の部屋へと転がり込むのですが、姉は彼氏と同棲しており、なにかと気を遣う日々......。

ラブコメの名手が描く、男女のズレと人間賛歌! 「うどんの女」の妙味

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『うどんの女』(祥伝社)

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

<今回紹介する女子まんが>
えすとえむ
『うどんの女(ひと)』全1巻
祥伝社 定価680円