──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回は続きを読む
メディアをも牛耳ったジャニー喜多川氏の性加害問題記事10選
現在、日本の男性アイドルシーンを牽引してきたジャニーズ事務所元代表の故・ジャニー喜多川氏による性的搾取問題が再燃し、大手マスメディアはこの問題をめぐり、その報道姿勢が問われている。
今年3月7日、イギリスの公共放送局BBCがジャニー氏の性的搾取をテーマにしたドキュメンタリー「Predator: The Secret Scandal of J-Pop」を公開。4月12日には、…
菊池風磨が「エロい」? ジャニーズ主演深夜恋愛ドラマ、TVerお気に入り数ランキング発表
ゴールデン・プライム帯をはじめ、ジャニーズタレントが多数出演している4月期の連続ドラマ。今回は、深夜帯に放送されている漫画原作の恋愛ドラマ3作品を、動画配信サービス「TVer」の“お気に入り数”順に、ネット上の反響と共に紹介していく。
1位:Sexy Zone・菊池風磨主演『隣の男はよく食べる』55.3万人
まずは、女優・倉科カナとSexy Zone・菊池風磨がダブル主演を務める『隣の男はよく食べる』(テレビ東京系、水曜深夜0時30分~)。原作は「月刊officeYOU」(集英社クリエイティブ)で連載中の美波はるこ氏による同名漫画。長年恋から遠ざかっていた料理上手な独身オトナ女子・大河内麻紀(倉科)と、隣の部屋に住む年下イケメン男子・本宮蒼太(菊池)の“ムズキュンラブストーリー”だ。
TVerのお気に入り数は55.3万人(5月4日時点、以下同)。4月期は同じくテレ東でジャニーズWEST・桐山照史主演のオリジナルドラマ『ゲキカラドウ2』(木曜深夜0時30分~)も放送中だが、こちらの登録者数は12.3万人のため、注目度は『隣の男はよく食べる』が上回っている。
ドラマの第1話(4月12日放送)では、ある出来事によって2人の交流が始まり、麻紀が作る料理をきっかけに距離が縮まっていく。終盤で蒼太が麻紀をバックハグし、「今すぐ食べたい」「大河内さんとしたい」と迫るという胸キュンシーンも話題を呼んだ。
同作は、現在第4話までオンエアされており、ネット上では「第1話、めっちゃくちゃキュンキュンした。手料理を食べて喜ぶ蒼太が可愛いし、1話からバックハグしたり、展開が早くてドキドキ」「原作のイメージが壊れるのが怖かったけど、序盤を見る限り、いい感じかも。料理シーンも丁寧でおいしそうに見える」「原作より蒼太が可愛らしくて、年下の男の子感が出ていて良い!」「原作の蒼太くんはクールでミステリアスなイメージがあったんだけど、ドラマは良い意味で人間味があって、可愛さが増していた」「菊池風磨、役にハマってるね。年下男子、エロくて良い」と好意的な声も多い。
ただ、中には「原作のほうが好き。ドラマはなんかイメージと違った」「原作の良さが今のところあまり出ていない。よくある深夜ドラマという印象」「ドラマ版の麻紀と蒼太は原作とキャラが全然違う……2人とももっとクールでいてほしかった。倉科カナと菊池風磨カップルのキラキラした日常を覗き見してると思うことにした」と手厳しい意見もあった。
2位:HiHi Jets・橋本涼主演『墜落JKと廃人教師』24.5万人
続いては、ジャニーズJr.内ユニット・HiHi Jetsの橋本涼が主演の『墜落JKと廃人教師』(MBS系、木曜深夜0時59分~)。「花とゆめ」(白泉社)にて連載中のsora氏による同名漫画が原作で、橋本はギャンブル好きで金欠のクズ教師・灰葉仁(通称・灰仁)を演じている。現在第5話まで放送されており、TVerのお気に入り数は24.5万人をマーク。
第1話(4月6日放送)は、ネガティブ思考の女子高生・落合扇言(高石あかり)が失恋を苦に学校の屋上から飛び降り自殺を図ろうとするところから物語がスタート。そこへ物理教師の灰葉が現れ、「死ぬ前に俺と恋愛しない?」と告白する……という展開に。ドラマの公式サイトでは「クズ教師×ネガティブJKの吊り橋効果ラブコメディ」とPRしている。また、扇言に思いを寄せる後輩・高峰一馬役で、Jr.内ユニット・少年忍者の田村海琉も出演中だ。
教師役の橋本は現在22歳だが、今年3月にドラマ化が明らかになった際は、ネット上の原作ファンなどが「灰仁役の人、若すぎない?」「灰仁役、22歳じゃん。漫画原作を何でもかんでもジャニーズの人に回さないでほしい」「ジャニーズファン兼、灰仁大好きだから言わせてもらうと、橋本涼はまだ若すぎるし、この役はあまりにも違う」と否定的な反応が相次いでいた。
1話の放送後は「灰仁が若々しすぎて、扇言ちゃんとあまり年の差を感じなかった」「やっぱり灰仁が若すぎるし、身長が足りなさすぎ」とストレートな感想も見られものの、「ドラマの灰仁、意外としっくりきた」「今のところ原作に沿ってるし、はしもっちゃんの灰仁、適役すぎる」「灰仁役のジャニーズの子、声のトーンがカッコいいし、似合う」「原作が好きだから実写化は嫌だったけど、ドラマも面白かった。灰仁役の人の声が好きかも」と評判は上々だ。
3位:美 少年主演『春は短し恋せよ男子。』12.2万人
そして、この2作よりもさわやかな恋を描いているのが、Jr.内ユニット・美 少年の岩崎大昇、那須雄登、金指一世、藤井直樹が主演するドラマ『春は短し恋せよ男子。』(日本テレビ系、月曜深夜0時59分~)。原作は椎葉ナナ氏の同名漫画(集英社)で、男子高校生4人組の初恋が連鎖していく青春ラブコメディだ。
1話終了後、SNS上の書き込みを見てみると、「『春は短し恋せよ男子。』は原作既読しているけど、ドラマもまさに青春って感じで良い。キュンキュンするシーンがいっぱいありそうで楽しみ」「漫画は1巻だけ読んだけど、登場人物の感情はドラマのほうがわかりやすいと思った」「原作と美 少年のファンでもある自分からしたら1話は最高だった」と概ね好評。
なお、主題歌「奇跡が起きるとき」を美 少年が担当しており、ファンは「Jr.なのにドラマの主題歌も任せてもらえるのは本当にスゴい」「この曲でCDデビューしてほしい」と歓喜していた。しかし、前述の『隣の男はよく食べる』『墜落JKと廃人教師』と比べると、SNS上には感想が少なく、やや盛り上がりに欠けている印象。TVerのお気に入り数も12.2万人で、3作のうち最下位に。
同枠では前クールにKing&Prince・岸優太主演で、美 少年・浮所飛貴も出演した『すきすきワンワン!』が放送されていた。2話までの世帯平均視聴率は『すきすきワンワン!』が2.4%(1月23日放送)、2.3%(同30日放送)。一方、『春は短し恋せよ男子。』は2.0%(4月24日放送)、1.7%(5月1日)という結果(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)となっており、視聴率面でも好調とは言い難い状況だ。
原作者の椎葉氏は、漫画を購入したという美 少年ファンのツイートに対し、「読んでいただいてありがとうございます!原作とはまた違ったドラマはるだん、この先もとても楽しみですねー!」(4月29日付、原文ママ)と返信。2話終了後も、Twitterで「もしかして岩﨑さんてヘタレ男子の演技爆ウマなんでは?!イケメンなのにめっちゃちゃんとヘタレ!!!!」と、日高太陽役の岩崎をベタ褒め。「じわじわ原作に無いエピ入ってきててて楽しい!!!!」(2日付のツイート)とつづっていたため、今後の展開に注目が集まる。
サイゾーウーマン ジャニーズ情報専用Twitterアカウント「J担しぃちゃん」オープン
『THE SECOND』準決勝は異種格闘技戦が続出!激闘を制した8組
――お笑い大好きプロデューサー・高橋雄作(TP)が見た、芸人たちの“実像”をつづる。
結成16年以上のコンビによるお笑い賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント~』の「ノックアウトステージ16→8」が、4月29日と30日に行われた。133組から勝ち上がってきた16組のうち、決勝戦「グランプリファイナル」に進出する8組を決める戦いであり、つまり「準決勝」という位置づ…
『なりゆき街道旅』MCハナコは力不足?弱点露呈でハライチ澤部との差が歴然
これを“成長するための痛み”と見るか、それとも限界と見るか……3月末からフジテレビ系の散歩番組『なりゆき街道旅』の新MCを務めているハナコの評判があまり良くないという。
「初代MCは2018年4月の番組スタート時から務めたハライチ・澤部佑でした。彼は台本に忠実ながら、状況に応じてゲストの旅人とうまく立ち回るなど、安定した仕切りを見せていました。ただ、今年から平日昼の帯バラエ…
田村真子アナが相席スタート・山添寛の行動を謝罪に「またか」の声
5日放送のTBS系『ラヴィット!』で田村真子アナウンサーが炎上中の相席スタート・山添寛の行動について謝罪した。
この日いつも通り出演者全員での「ラヴィットポーズ」で生放送が終わると、画面は田村アナ単独の映像に切り替わった。
田村アナは「ここで番組からお詫びがあります。5月2日に放送された韓国旅のVTRの中に、出演者がお店の商品に爪楊枝を直接刺して食べるという…
平野レミ【ふわふわ卵焼き】は5分で作れる! 「ポリ袋ではんぺんを潰す」斬新なレシピ
料理がまったくできない主婦の私。もう何年も夫が料理を担当していますが、子どもの成長とともに「いやでも作らなあかん時」に見舞われるように……。そこで「かんたん」「ラクチン」とTwitterで話題のレシピにチャレンジしていきます!
今日のレシピ:【ふわふわ卵焼き】平野レミ
2023年4月14日放送のNHK『きょうの料理』で紹介された平野レミさんの【ふわふわ卵焼き】。作り方は豪快なのに、食べてみると優しい味で、とてもほっこりするレシピでした。なお、三つ葉が苦手な人は入れなくても、十分においしくできますよ!
| 材料 | 分量 |
| (A)はんぺん | 50g |
| (A)卵 | 3個 |
| (A)三つ葉 | 20g |
| (A)釜揚げしらす | 大さじ2 |
| (A)塩 | 小さじ1/8 |
| しょうが(みじん切り) | 小さじ1/2 |
| サラダ油 | 大さじ2 |
(レシピは『きょうの料理』より)
先に溶き卵を作っておきます。
(1)ポリ袋に材料(A)をすべて入れて、袋の上からはんぺんをざっくり潰す
(2)フライパンにサラダ油を熱して、皮を剥いてみじん切りしたしょうがをサッと炒める
(3)はんぺんの入った袋の中身をフライパンに流し入れサッと炒めて完成
器に盛り付けたら、仕上げにお好みで三つ葉を添えます!
出来立ての熱々を食べてみます。
予想以上にはんぺんが柔らかい。味付けは塩とショウガのみですが、優しいお味がGOODです。「あと1品欲しい」という時に最適なレシピ!
細かくしたはんぺんを卵に加えるだけで、卵が硬くなったり縮んだりせずふんわり仕上げることができます。料理時間は5分弱と超簡単! レミさんいわく、シラスの代わりに明太子を加えてもOKなんだそう。アレンジの自由度も高いレシピ、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
【総評】
もう一度作りたい度:★★★★★(5分でできるのはありがたい)
ズボラ主婦でも再現可能度:★★★★☆(ポリ袋ではんぺんを潰す調理法は斬新)
子供ウケまたは夫ウケ:★★★★☆(誰でも食べれるシンプルな味)
ポスト小室圭さんとしてネットで重宝される大谷翔平は“長持ち”する?
現地時間5月3日に行われた米メジャーリーグのカージナルス戦に3番・投手で先発したエンゼルスの大谷翔平は、5回にメジャー通算500奪三振を記録。ベーブ・ルース以来となる「500奪三振&100本塁打」を達成した。大谷に勝ち負けはつかなかったが、試合は4対6でエンゼルスが勝利した。
WBCで、侍ジャパンとしてともに戦ったカージナルスのヌートバーとの初対決も話題になったこの試合。大…
山田涼介、『王様に捧ぐ薬指』の東郷役がハマるワケ――ジャニーズ俳優としての変遷を追う
――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当ててドラマをレビューする。
火曜ドラマ(TBS系火曜夜10時枠)で放送されている『王様に捧ぐ薬指』(以下、『王様』)は、ウェディングプランナーの羽田綾華(橋本環奈)が、新田ホールディングスの取締役で結婚式場ラ・ブランシュの社長・新田東郷(山田涼介)と偽りの夫婦を演じるラブコメディだ。
山田が演じる東郷は、完璧な容姿と家柄を持つドSの御曹司で、周りからは「キング」と呼ばれている。綾華と偽装結婚したのも、“美男美女のセレブカップル”を演じることで会社の広告塔になるためだったが、次第に2人は心を通わせるようになっていく。
本作が放送されている火曜ドラマは、女性視聴者の注目を集める人気枠で、ここに主要キャストとして出演することは若手俳優にとって大きなステータス。主演の橋本はもちろんのこと、相手役の山田にとっても『王様』に出演することが、俳優としての大きな転機となるに違いないだろう。
それにしても東郷の設定は華やかすぎる。漫画やアニメならともかく、実写で日本人が演じるとどこかで無理が生じるものなのだ。しかし、山田が演じる東郷には、まったく違和感がない。
東郷が面白いのは完璧な外見と肩書を持ちながらも、自分の境遇に対して、どこか不満を抱いていることが見え隠れするところだ。同時に傲慢で冷たい男に見えるが、節々で綾華を心配する姿も描かれている。
また、態度こそ横柄に映る時が多いのだが、自身の私利私欲のために権力を行使することはなく、むしろ会社を立て直そうと奮闘しており、隠そうとしても隠しきれない人の良さがわかる。
完璧な存在で悩みなどなさそうに見えるものの、複雑な内面を抱えている東郷のような男を山田が演じると妙な説得力が生まれる。それは、演じている役の向こう側にアイドル・山田涼介の姿が透けて見えるからだろう。
山田涼介は“可愛い”を通過して“キング”へと成長
山田は2004年、11歳の時にジャニーズ事務所に入所。07年にHey! Say! JUMPとしてCDデビュー。俳優としては06年のドラマ『探偵学園Q』(日本テレビ系)でデビューし、その後『左目探偵EYE』(同・10年)で連続ドラマ単独初主演を果たす。そして、KinKi Kids・堂本剛らジャニーズ事務所の先輩たちが主演を務めてきた『金田一少年の事件簿』(同)のリブート作『金田一少年の事件簿N(neo)』(同・14年)で主演を務めた。
俳優として評価されているジャニーズアイドルには、大きく分けて2つの傾向がある。1つはアイドルとしてのオーラを消して、等身大の男性を演じられるタイプで、堂本剛、嵐・二宮和也、生田斗真、風間俊介などがこのタイプだ。
もう1つは、アイドル性を生かして華やかな王子様を演じるタイプ。KinKi Kids・堂本光一、滝沢秀明(18年末にタレント業を引退)、嵐・松本潤などがこのタイプで、山田は言うまでもなく後者だ。だからこそ名家の御曹司のような、圧倒的な存在を演じるとハマる。
山田は『カインとアベル』(フジテレビ系・16年)や『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』(日本テレビ系・18年)といった作品で、育ちのいいエリートの王子様的な青年を演じてきた。美貌も財産も持っている恵まれた王子様は、そのまま人々に幸せを振りまくジャニーズアイドルに読み替えることができる。
そんな王子様として生きてきた山田の人生と重なる部分が多かったドラマが、昨年放送された『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』(テレビ朝日系、以下『俺かわ』)だ。
『俺かわ』で山田が演じたのは、自分が可愛いことに自覚的な29歳の青年・丸谷康介。本作は“可愛い”バイアスを武器にすることでビール会社の営業として高い評価を得てきた康介が、30年後の自分と名乗るおっさん(古田新太)から、もうすぐ「可愛い」の消費期限を迎えると言われて焦って足掻く姿を描いたコメディ。
30歳を前にして“可愛い”という魔法を自分は失うのではないかという康介の不安を、当時オンエア中に29歳になったアイドルの山田に演じさせる本作の設定を知った時は、随分、意地悪な作品だと感じた。だが、ドラマから受ける印象は、そんな単純なものではなかった。
康介は幼少期に、自分の成績が普通で突出した個性がないことに気づき、“可愛い”という外見を武器に生きていくしかないと悟る。逆に言うと、自分が“可愛い”だけの男であることに常に自覚的で、だからこそ“可愛い”だけだと思われないように、努力を重ね、対人スキルを磨いてきた姿が劇中では描かれている。
体裁こそラブコメだが、『俺かわ』は20代の山田の内的葛藤を描いた自己言及的なドラマであり、王子様(アイドル)を演じ続けてきた青年の心情を見事にすくい上げた作品だったと言えるだろう。
今年の5月9日で山田は康介と同じように30歳になる。しかし『俺かわ』で“可愛い”の終わりという通過儀礼を終えた彼は『王様』で新たなステージに挑んでいる。『王様』で山田のアイドル性はさらなる進化を遂げ、かわいい王子様からカッコいいキング(王様)へとバージョンアップさせていくに違いない。
昭和天皇は大量の整髪料を消費していた? 知られざる天皇家の“みだしなみ事情”
「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!
――前回までは、昭和天皇のプライベートマネーの使い方を探ってきました。中でも元・皇女の方々に対する、金銭支援には驚きました。
堀江宏樹氏(以下、堀江) 今回の一連のお話で参考にさせていただいている奥野修司さんの著書『極秘資料は語る 皇室財産』(文藝春秋、以下『皇室財産』)によると、それは京都の伝統文化ではないかとのことでしたが、長年、京都在住だった故・瀬戸内寂聴さんが、祇園などの花街には愛情や好意といった目に見えないものを、お金という目に見える形で贈ることが文化として確立されているとお話になっていたのを思い出してしまいました。
高級な旅館に泊まるときは「心付け」と称したお金を、仲居さんにお渡しする習慣は、現在でも比較的多くの層に残っているとは思いますね。
――ただ、元・皇女の方々への昭和天皇の金銭支援は、庶民には異次元の規模でしたね。
堀江 あれらの出費が天皇家のプライベートマネーである「内廷費」の中から行われていたのは興味深いです。戦後は、宮内庁OBの方が私的に筆写したリストが流出するようなことがない限り、われわれはその使い道について知る術がなかったので……。
――戦後とおっしゃいましたが、戦前は公開されていたのですか? 意外です。
堀江 そうですね、少しずつ公開されていたようです。ただ、戦前の天皇家は、宮内庁の職員に委託する形ですが、株式や証券などに賢く投資し、現在のお金で何千億円の規模の年収が毎年ありました。
たしかに元本は公金といえるお金ですが、自分で稼いでいるので、他人から使い道をとやかくいわれる筋合いがないといえます。だから、堂々と公開できたのでしょうね。他にも昭和天皇が何を必要とされていたかを、内廷費のリストからは知ることができます。
――謎に包まれた皇族の私生活に触れることができますね。
堀江 はい。お金の使い道ほどその人らしさを雄弁に語るものはありません。今回はより生活に密着した出費についてお話しましょう。
前回は昭和天皇ご夫妻の「御服費」について触れましたが、これはスーツやアウター、儀式で着用なさる御装束など高額の品が中心でした。
昭和天皇の侍従だった、戸原辰治さんの遺品にあった資料「内廷会計歳出予算概算要求書」(昭和44-45年度)によると、それ以外の衣服についての記録もあります。ワイシャツ、ネクタイ、靴下、帽子、靴などは「御服費」とは別に「御身廻品」として分類されているのが興味深いですね。興味深いのは1年分としてスリッパが12足計上されていること。
――1カ月に1足ですか?
堀江 御所は建物が半端なく広く、お部屋からお部屋に移動といっても、庶民の家の比にならないくらいの距離をウォーキングなさるからだと思いますよ。ただ、昭和天皇はきわめて節約意識の高い方で、ボロボロになったスリッパを周囲が「交換なさったら」というと、「まだ履ける」とお怒りだったとか……。だから、12足というのは周囲がそれくらいに一度はお替えいただきたいという周囲の願いにすぎないのかもしれません。
他にも「いかにも御所らしい出費」と思われたのは、やや大量だと思われる蚊取り線香です。1年で5箱くらい。昭和43年までは蚊取り線香で、それ以降はベープマットになっているのですが、それでも1年で3箱くらいの消費量だったそうです。
――蚊取り線香ですか。御所の周辺は自然豊かですからね……。
堀江 今でも皇居では蛍が見られるといわれ、そういう風流な側面だけ強調されているけれど、蛍がいれば当然のように蚊もすごいでしょうし[F1] 、宮内庁の方によると、クモやヤスデもすごく多いのだとか。夏に外を散策すると、天皇といえども蚊の猛襲を受けてしまうそうで、宮内庁のお役人が見ているだけでも、蚊が、傍目にもハッキリと見えるほど、陛下にたかっているのがわかったそうです。
――逆に言うと、江戸時代の徳川将軍家の人々も同じように蚊には悩まされていたということでしょうね。
堀江 そうですね。いわゆる江戸城(江戸時代には、江城、千代田城と呼ばれていました)の跡地に現在の皇居がありますから、その手の虫に悩まされる生活事情は同じでしょう。江戸時代では夏になると、大奥の部屋に巨大な蚊帳が吊るされ、その中で生活していたようなものだという話を聞いたことがありますよ。
お話を戻して、いかにも皇族らしい出費として興味深かったのは、大量の整髪料を昭和天皇が使っておられたということです。それも、「チック」という種類の整髪料をご愛用でした。
――チックですか! 女性の間ではタイトなお団子ヘアにするとき、一糸乱れぬように髪の毛をピシッと整えるのにうってつけだと評判になり、リバイバルブームが最近は起きているようですが……。
堀江 昭和天皇は、そのチックを年間10本も消費なさったそうです。僕はこの整髪料について知りませんでしたが、ポマードよりも強い整髪力がある一方、普通にシャンプーしただけでは落ちにくいそうですね。そのせいか、昭和天皇がご愛用だったシャンプーは「オイルシャンプー」だったので、みなさんが化粧落としをする感覚で、頭髪を洗っていたのでしょう。
――なぜ昭和天皇は、チックをそこまでしてご愛用だったのでしょうか?
堀江 その疑問への回答として、『皇室財産』には、平成29年まで上皇さまの理髪師を、10年間勤めた大場隆吉さんの談話の情報が引用されています。
いわく「どんなに御髪が乱れても、人前で触って直されることは(マナーの観点から)絶対にありません」とのこと。上皇さまご愛用の整髪料は資生堂の「ブラバス」というヘアリキッドで、「髪がベタベタになるほどおつけになります」とのこと。4回、つけては乾かし、つけては乾かしをして整えておられたようですね。
昭和後期、秋篠宮さま(当時、礼宮さま)の乱れた髪を紀子さまが直してあげている写真が話題になったので、皇族たる者、髪の毛はピシッと固めねばならないというルールは若い世代には引き継がれていないのかもしれません。
――廃れる習慣というものも、伝統重視の皇族の生活にもやはりあるということでしょうね。皇后さまはどんな化粧品などをお使いだったのか、記録はありますか?
堀江 はい。しかし、皇后さまという高い地位の方にしては、ずいぶんと質素でびっくりしたのです。経費でいうと「クリーム5種12個(単価1800円)」というのが基礎化粧品を指しているらしくて、おそらく朝用・夜用の美容液の類も含まれているのだろうと推察します。
――それにしても、ひとつあたり2000円前後の基礎化粧品や口紅ですか。当時、私の祖母や母でもそれくらいは使っていた気がしますよ。
堀江 口紅は1本当時の価格で1500円。これを1年で3本。ほかには整髪料として、「加美の素(※正確な製品名は加美乃素)」など。加美乃素シリーズは、皇后さまのお気に入りだったようです。昭和後期になると、ハイクラスな化粧品がどんどん登場しましたが、そういうものはお使いにならなかったようです。
対照的な話になりますが、19世紀末のオーストリアのエリザベート皇后は美容に命をかけていたこともあって、化粧品などはほぼすべてが特注品でした。具体的な金額はわかりませんが、それと比べると驚くほど堅実でいらっしゃいますね。
化粧品というものは、化学の研究の進歩とともに、20世紀後半になって飛躍的に品質向上し、値段も一気に下がったのです。エリザベートやマリー・アントワネットは、現代日本のコンビニ化粧品の足元にも及ばないレベルの化粧品しか使えなかったという話があるのですが、エリザベートがウィーン宮廷薬局に特注した基礎化粧品のクリームも、レシピを見ると、バラ水にラノリンや無塩バターをくわえて撹拌(かくはん)したものにすぎず、昭和の皇后さまは値段はリーズナブルでも、確実にそれ以上のクオリティの美容ライフを送っておられたのではないかと思うんですけれどね……。
今回は昭和天皇ご一家の身の回り品について、内廷費のリストから振り返りました。