テレビ的にはほぼ無名の芸人4人が、YouTubeで人気を博している。9月中旬時点でチャンネル登録者数は60万人超。11月には日本青年館ホールでの単独イベントも控えている。
「ガーリィレコードチャンネル」のメンバーは、お笑いコンビ・ガーリィレコードの高井佳佑、フェニックス、そして同期芸人の秋山太郎と雨野宮将明の4人からなる。藤原竜也やMr.Children桜井和寿のモノマネ、アニメやゲームをネタにした動画などで注目されるようになり、現在は4人が食事をとったり、ウレタン棒を振って遊んでいるゲーム「気配斬り」など、ただ遊んでいるように見える、無邪気な「ホームビデオ」感のある動画が中心だ。高橋一生や松坂桃李らがファンを公言しており、先日は『しゃべくり007』や『嵐にしやがれ』(共に日テレ系)にも出演を果たした。
「第7世代」芸人が話題になる昨今だが、ライブシーンから賞レースを勝ち上がり、テレビで脚光を浴びるといった、従来のパターンとはまったく別の方法で知名度を獲得しているガーリィレコードチャンネルは、どのような発想の元で作られているのだろうか?
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――YouTubeチャンネル登録者数60万人突破、おめでとうございます(9月中旬取材時)。失礼ながら、それまで無名だった芸人さん のチャンネルが、短期間でこんな数字を出したというのは異例のケースだと思います。
フェニックス 去年の7月21日から、毎日動画を投稿し始めたんです。その前から、Twitterに上げていた動画(「対マスターハンド戦にて 全く意味のないフォックス下スマッシュ」)が無断転載されていたので、その対策として、ちょこちょこ自分たちで動画を上げてはいたんですが、本格的に始めたのはその頃ですね。
――YouTuberの世界では、子どもたちの夏休みが、1年で最もバズりやすい期間だといわれています。そこを意識して、自分たちの知名度を戦略的に上げようという意図があったのでしょうか?
フェニックス そうですね。「夏休みは(数字が)伸びる」と聞いていたので。でも、そこまで戦略的なことは考えていなくて、「ひとりでも多くの人に知ってもらえたら」くらいの気持ちでした。
太郎 もともとは、雨野宮がガーリィレコードの2人を誘って始めたんです。当初は雨野宮は裏方というか、作家的なポジションで、動画には出てなかったんですけど。俺が合流するようになったのは、フェニックスとルームシェアを始めたことがきっかけでしたね。それで、俺も暇だったので、動画に参加することになったんです(※現在、フェニックスと太郎は、友人2名と一軒家を借りてルームシェア中。「ガーリィレコードチャンネルハウス」と呼ばれ、主な撮影場所になっている。なお、今年6月には、高井と雨野宮もルームシェアを開始)。
――雨野宮さんは、どうして2人とYouTubeを始めようと考えたのでしょうか?
雨野宮 僕はもともと極楽とんぼさんが大好きで、お2人がAbemaTVで番組(『極楽とんぼKAKERUTV』)を始めたことをきっかけにして、ネット番組やYouTube動画をいろいろ見るようになったんです。そうするうちに、「YouTubeに芸人が出ていったら、絶対人気が出るのに」と思うようになりました。そんな頃、ガーリィレコードのモノマネ動画がTwitterでバズっているのを見て、「これはあるぞ……ガーリィレコード、YouTubeワンチャンあるぞ……」とひらめいたんです(笑)。
フェニックス 「YouTubeは稼げるぞ……」と、甘いささやきが……。
雨野宮 「思ってる以上に稼げるぞ……」「テレビも変わっていくぞ……」
高井 ずっと耳元でささやかれ続けました(笑)。
雨野宮 YouTubeって、(登録者数を)ゼロから100にする段階が大変で、そこから先は軌道に乗れば自然と伸びていくだろうと思っていたんです。ガーリィレコードのモノマネなら、その “100”になるという確信があったので、「YouTubeチャンネルをやらせてくれ」と頼んだんです。
――そこからガーリィレコードチャンネルがスタートしたと。当初から、今のような編集なしの「ホームビデオ」ノリだったんでしょうか?
フェニックス 最初はモノマネ動画ばかり上げてました。でも、そればかりだとネタ切れになると気づき、ご飯食べるだけだったり、単に遊んでいるだけの動画を上げるようになりました。
雨野宮 毎日毎日、「今日は何をしよう?」と話してて、まんま夏休みのノリでしたね。
太郎 本当に友達の家に遊びに行くノリで、「何も決まってないけど、とりあえず集まろう!」みたいな(笑)。
雨野宮 何も起きなくて、「夕焼けを見た!」くらいの日もあるよね。
高井 あの部屋で、ただ何をするでもなく寝っ転がってて、夕方になって窓から日が入ってくると、なんだかエモいというか、すごくノスタルジックになるんですよね。
フェニックス あの部屋の雰囲気も相まってな。
――最初からガチガチに戦略を詰めて、ほかと差別化した動画を作ったというよりは、結果的にこうなったんですね。
高井 遊んでいるうちに、今の動画のベースが出来上がったのかな。
雨野宮 「動画の編集をしないのが、ほかと違ってカッコいい」と言われるけど、「やらない」じゃなくて「できない」だけなんです!
――そんな遊びの延長線から生まれた「深夜のテンションシリーズ」も好評ですが、中でも「気配斬り」動画は大人気ですね。一体どのような経緯で誕生したんでしょうか?
フェニックス それこそ遊びの中で生まれたというか、みんなで、よしもとの東京本社の中庭で走り回ってるときに……。
雨野宮 それもおかしいんですけどね。まず「本社で走り回る」って、なんなんだ(笑)。
フェニックス で、中庭のゴミ捨て場に、2本のウレタン棒が落ちていたんです。男としては、棒を見つけたら振らざるを得ないじゃないですか。そしたら、すごく気持ちのいい音がしたんですね。
高井 みんなで気に入って、通りすがりの社員さんに「これもらっていいですか?」「いいですよ、ゴミだし」みたいな感じでもらってきました。
雨野宮 もともと「気配玉」というゲームをやっていて、棒を使って「斬り」にしたら、もっと面白いんじゃないかと思って始めたのがきっかけですね。
――そんな経緯で生まれた「気配斬り」ですが、大変バズッた結果、皆さんも『しゃべくり007』や、『嵐にしやがれ』などの地上波テレビ番組に出演したりと、話題を呼んでいます。
高井 ゴールデン番組に、あのゴミが!
雨野宮 かっこいいタレントさんが、あのゴミを持って!
フェニックス あのゴミがきっかけで、『24時間テレビ』だぜ!
高井 でも、本当にありがたいですよね。
――何がチャンスになるか、本当にわかりませんね。そしてさまざまなYouTuberたちも、こぞって「気配斬り」動画を上げています。
高井 TikTokでも「#気配斬り」みたいなのが、めちゃめちゃありますよ。だいたいルールを間違えているんですけど。
――ガーリィレコードチャンネルの動画では、お互い一度しか振ってはいけないルールでやっているのに、当たるまで何度も振り続けている動画を見たことがありますね。
雨野宮 僕らの感覚としては、一度きりが面白いと思ったけれど、振り回しているのが面白いと感じる人もいるかもしれない。それは着眼点の違いですよね。広まってくれるなら全然アリです。
――とはいえ、元ネタに言及しない人もいるじゃないですか。
太郎 まいっちゃいますよね~~~!(※太郎の持ちギャグ)
――ちなみに、これを読んでいる方の中にも、「気配斬り」に挑戦してみたい人もいると思うんです。やるときの注意点を教えて下さい。
フェニックス まず、何もない6畳間がないと……。
――そこからですか。
高井 硬い棒では絶対やらないこと。ぜひウレタン棒を手に入れてほしいですね。
太郎 腕を大きく振ると相手の体や周囲の物に当たってけがをする可能性があるので、なるべく自分の体の近くで小さめに振ってください。安全面が大事ですね。
フェニックス それに、やってる様子を見る人や撮影する人がいないと、何も面白くないですよ。
雨野宮 「気配斬り」って、人柄が出ると思うんですよ。何も気にせず行くタイプなのか、周りに気を使うタイプなのかとか。だから、恋人同士が同棲を始める前なんかには、一度「気配斬り」をしてほしい。「ねえ、アタシと気配斬りしよ?」って。
フェニックス アレをやると、仲良くなるもんね。新入社員同士とかでもやってほしいですね。
――気配斬りで、わかることがあると(笑)。そして、カジサックさんや中田敦彦さんといった、これまでテレビで活躍していたよしもとの先輩芸人が、YouTubeの世界に進出しています。これは脅威に感じますか?
雨野宮 僕たち、全員27歳で同い年なんです。みんなで「観てたテレビが全部終わっちゃったな」って話をよくしていて。『みなおか』『めちゃイケ』『はねトび』(フジテレビ系)、全部終わってしまった。でも、そこで活躍されていた人で、今YouTubeの世界に来られている人もいるじゃないですか。あの頃、僕たちが好きだった人たちと共演する夢がかなうというか。
フェニックス 正直、上の人たちがYouTubeをやってくれればくれるほど、ウチらもやりやすくなるし。
高井 今後もYouTubeに参入する芸人は増えてほしいですね。
――逆に皆さんは、劇場で評価を高めて賞レースを勝ち上がり、テレビでブレイクという芸人の売れ方の王道を目指したことはあったのでしょうか?
フェニックス ウチらは、コンビを組んで8年目なんですけど、もう1年目の終わりくらいから、漫才で賞レースを目指すのは無理だからやめました。
――早くないですか?
高井 早めにあきらめました! 上京したばかりの頃は、しゃべくり漫才をしたいと思ってました 。
フェニックス 「無理」ってなりましたね。それに、無限大ホールに出ている同期も先輩も、めちゃくちゃ面白いんですよ。同期は、ラフレクラン、空気階段ですし。
高井 正攻法じゃ勝てないから、僕らの強みを生かそうと思ったんです。
フェニックス 何かのジャンルで一番だったら食えるという目算があって、僕らは2人ともアニメやマンガが大好きだから、秋葉原で一番になろうと思ったんです。オタク文化は強いし、この国では絶対なくならないと確信して、2年目から『DEATH NOTE』ネタをやり始めました。
――一般的に、登録者数が数十万人を超えたYouTuberは、着ている服や住んでいる部屋が豪華になっていき、端的にいえば羽振りがよくなってくるじゃないですか。ガーリィレコードチャンネルは、収入に関しては、ぶっちゃけどうなんでしょうか?
高井 まあまあ、そこはよしもとさんですよね(笑)。
太郎 でも、カジサックさんが割合を変えてくれたりして、僕らも変わってきてはいます。
――それはよかったです。今後の野望はありますか? たとえば、ほかのYouTuberのような豪華な部屋に住みたいとか……。
フェニックス その欲は、あんまりないですね~。
高井 だったら、もっとおいしいものを食べたい。
――では、今後はどうなっていきたいですか?
雨野宮 結婚して子どもをつくって……。
太郎 幸せになりたいのが一番ですかね!
高井 息子とサイクリングしたいですね。そして海沿いに家を……。
――ちょっと地に足が着きすぎているので、もう少し芸人としての大きな目標もお願いします!
フェニックス 大きな目標、そうっすね。まあ、このYouTubeをきっかけに、いろんなことができたらなぁって思います。
(取材=藤谷千明/構成=斎藤岬/撮影=尾藤能暢)

●ガーリィレコードチャンネル
写真左から、雨野宮将明、フェニックス(ガーリィレコード)、高井佳佑(同)、秋山太郎。東京NSC17期の同期4人組。「本物の米津玄師」としてガチャピンちゃんねるにも登場している。
https://www.youtube.com/channel/UC6VjNLslXbb6Stl0I2MkQWA