今夜最終回!『コウノドリ』が描いた「新型出生前診断」の苦悩と“決断”の行方は……?

 周産期母子医療センター(出産の前後を通し、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や妊婦の喜びと悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。

 残すところあと2回となり、クライマックスを迎えた第10話は11.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、やや下落。しかし最終回に向かって細部までかなり濃い、見応えのある内容。振り返ります。

 

■新型出生前診断とは

 

 高山透子(初音映莉子)とその夫・光弘(石田卓也)は、親に言われてさほど考えず受けた新型出生前診断(NIPT)により、生まれてくる子に21トリソミー(いわゆるダウン症候群)の陽性反応が出ていることを知る。しかし、その診断を受けたクリニックに電話で問い合わせても、郵送で結果を送りつけた以上の説明は行っていないようで、親身になってくれない。慌てた2人は、ペルソナの周産期センターにやってくる。

 産科医の鴻鳥(綾野剛)は、確定のためには羊水検査が必要であることだけでなく、その結果を踏まえ、どう受け止めていくか考えてほしいと伝える。

 新型出生前診断とは、21トリソミーを含む3つの染色体の疾患を調べることができる検査で、採血だけで手軽なため広まってきているが、結果のみを突きつけられて親が不安になったり、その後ちゃんとした診断を受けず安易に中絶を希望するケースも増えるなど、賛否あるようだ。ちゃんとケアしているところもあるのだろうが、わずかな手間でそこそこの金額を取れるので、診断を行う側にうま味があるのだろう。

「きちんとした遺伝カウンセリングを行わず、出生前診断を行う医療機関があるのは問題」「出た結果だけを伝えて、あとの判断を患者の丸投げするなんて」と、産科医の四宮(星野源)もかなり否定的だ。

 医師の間でも意見は分かれるようで「たった10ccの血を採って検査すればいいって気楽さが、そういう親(すぐ中絶希望)を生んでる」という反対派の急先鋒・四宮に対し、「罪悪感・嫌悪感を抱く人が多いですけど、親になる前に我が子の情報を集めるのは悪いことなんでしょうか」「もっと生まれてくる我が子の情報を知る権利について理解してほしい」と産科医・倉崎(松本若菜)は疑問を呈する。

 四宮は、その権利は当然だとしながらも「だが、その情報を知った後でどうするかを決めずに、出生前診断を行うのは無責任だ」だと言う。

 この四宮論と倉崎論が、世の新型出生前診断に対する反対派と賛成派の意見なのだろう。ソーシャルワーカーの向井(江口のりこ)も「赤ちゃんが置いてけぼりにならないように、夫婦できちんと話し合ってほしい」と安易な決断に慎重な意見を述べる。

 鴻鳥は、検査結果を受けての中絶についても「ご家庭の事情もあると思います、お2人で現実に向き合って決めていくことになります」とし、「僕たちはどんな結論になっても高山さんの決断を支えていきます、これからのこと一緒に考えていきましょう」と不安がる夫妻に向き合おうとする。

 

■もう一組も21トリソミーが発覚

 

 そして今回もう一組、辻明代(りょう)、夫・信英(近藤公園)夫妻も、ペルソナでの羊水検査でお腹の子どもに21トリソミーが発覚。こちらは悩みつつも中絶を希望している。

 夫婦で小さな稼業(お弁当屋)を営んでいたり、手のかかる小さい長女がいたりして、疾患を持つ子どもを抱えきれないというのがその理由だ。

「疾患のあるお子さんを育てる自信が最初からあるご家族なんていないと思います」「人がそれぞれ違うように、ダウン症のあるお子さんも一人一人に個性があります。育ててらっしゃるご家族にも、それぞれの思いがあるでしょう」と、中絶だけでない道も示す新生児科医・今橋(大森南朋)。

 しかし、「私たちがいなくなったあと、あいり(長女)に全部任せるなんてできないよ」と苦渋の決断をする。

 おそらく辻夫妻が上げたこれらのいくつかの理由が、中絶を選んだ人々に多くある理由なのだろう。

 

■ここだけドキュメント

 

 そして妊婦ではないが、たまたま長男の風邪の診察でペルソナに来ていた木村弓枝(奥山佳恵)が、次男とともに登場。同じくダウン症候群の次男を育てている弓枝だが、いろいろな人やデイケアなどの力を借りて仕事復帰していると明るく語る。

 実は奥山自身が同じ症状を持つ子どもの母親である。その奥山が「(新型出生前診断では一部の染色体疾患だけしかわからないのに)なんでこの子たちだけが弾かれるの?」「このまま生まれる前に検査するのが当たり前になって、どんどんダウン症のある子いなくなっちゃうんじゃないかなって……」と語る様子は、リアルな気持ちがこもっており、このキャスティング自体、実生活を踏まえてのものだろうから、セリフ(言葉)にも本人の気持ちが強く反映されているのだろう。こういうある種「ドキュメント」のようなドラマの作り方には賛否あるだろうが、それだけリアリティを大事にしているのだろう。

 

■苦しむ母親たち

 

 高山透子の羊水検査の結果は、21トリソミー・ダウン症候群。どうしていいか、まだ頭がついていかない透子に、夫も、双方の親も、子どもを諦めるように勧める。みな、苦労させたくないからという意見だ。

 しかし、なかなか子どもができず不妊治療を受けていた透子は割り切れない。果たして自分に育てられるのか? という葛藤。

 そんな中、知的な発達の違いや心臓病、呼吸器疾患の可能性、生まれてからも数回手術が必要な可能性があることなどと共に、「ただ、ダウン症のある子どもたち自身は、悩まずに幸福を感じて生きていけることも多いというデータがあります」と伝えられた透子は、うれしそうに見えた。

「……そうなんですか?」と何気ない言葉の中に、希望が芽生える瞬間が見える、いい表情。やはり、産みたいという気持ちが滲み出ていた。だからこそ悩みが深い。

 一方の辻明代。

 中期の人工中絶は、身体だけでなく心にも負担がかかるという鴻鳥の言葉など、周囲の心配に対し「私のことはいいんです」「大丈夫です」「我慢できます」と、自らを罰するかのように、苦しさを受け入れようとするのが印象的だった。

 布団の中で「お腹、蹴ったの……」と夫に報告する姿からも、決して望んで中絶するわけではないからこその苦しさが溢れていた。

 次の日、誘発剤を使っての苦しそうな処置の最中、「最後、この子、抱いてもいいですか」と頼む明代。その気持ちを案じ「わかりました」と笑顔で答える鴻鳥。

 無言で何も言わない(言えない)夫・信英の顔が、複雑な気持ちをよく表していた。

 その日の夜、抱っこした時の感想を「すごく小さくて暖かかったと」と涙ながらに語る明代の体を、無言でさすり続ける小松(吉田羊)。7話で子宮腺筋症のため子宮を摘出してる小松はどんな気持ちだったのか。

「寄り添うの、大切なあたしら(助産師)の仕事だよ」と、友人でもある同期の助産師・武田(須藤理彩)が語っていたが、それをひたむきに実践しているようにも見えた。

 

■決断

 

 産みたい気持ちが日増しに大きくなってきている高山透子。

「父さんや母さんがこう言ったからじゃなくて、私たち夫婦で話し合って決めたいの。どんな結論になってもいいから2人で一緒に考えようよ」と夫・光弘に訴える。

 中絶の意思を伝えに来た際も、エコーを見たいと言い出し、光弘は困惑する。

「今回は諦めよう、次は……っていうけど、それはこの子には関係ないよ」

 検査や診察が進むたびに、夫婦間での認識の差が浮き彫りになってきて、透子の気持ちに改めて気付かされた光弘は「ごめんな、最初に出生前診断を受けた時、俺たちには関係ないって思っていた。だけど子どもを持つって決めた時から、本当は関係ある話だったんだよな」「2人で出した結論だから、お前だけが背負う問題じゃないから」と、透子の苦しみに理解を示すようになる。

 そして中絶手術の日、直前で透子は「産みたい……」との気持ちが溢れ出し、膝をつき泣き崩れる。

「でも、怖い。自信がない……でも……」どうしようもなくなった透子に、実母が声をかける。

「大丈夫。あんたがへばっても母さんが一緒に育てる」

 それを聞き、安心したように、さらに涙を流す透子。おそらく夫からその言葉を聞きたかったのだろうが、それを見て光弘は、初めて透子の産みたいという気持ちの大きさを見誤っていたことに気づく。

 透子の気持ちを理解したつもりが、まだ理解できていなかったという展開。

「昔だったら救えなかった命が、医学の進歩で救えるようになった。それは喜んでいいことかなと思う。だけど、命が救えるようになったからこそ、苦悩する家族だっている。命を救うって、どういうことなのかな」

 これは今橋が新生児科医・白川(坂口健太郎)に語っていた言葉だが、今回のテーマの難しさを表していると思う。

 まだ透子が(夫主導で)中絶で話を進めていた時、やはり辻と同じように最後に子どもを抱っこしてあげたいと言っていた。

 その感情が理解できない、と研修医の赤西(宮沢氷魚)は言う。今後、出生前診断がメジャーになり、中絶が当たり前になった時、医師としてどう向き合えばいいのかわからないと。この時、赤西に向かって(というか全員に向かって)鴻鳥が言っていた言葉を、少し長いが書き出してみる。

「その質問の答えは僕にはわからない。命は尊い、赤ちゃんが生まれてくることは奇跡だ。平等であるはずの命を選別してはいけない、その通りだ。けど、僕はずっと迷ってる。命を選別、その言葉にみんなが囚われてしまっていて、お母さん、お父さん、家族の事情に目が向けられていない。それぞれの事情の上に命は生まれてくる。育てていくのは家族なんだ。出生前診断を受けた結果、中絶を選択する家族もある。心が重くなる。いつまでも慣れることはない。けど悩みに悩んだ上で僕たちに助けを求めてる。その手を払いのけることはできない。中絶を決めたお母さんが赤ちゃんを最後に抱きたいと願う。確かに矛盾してるかもしれない。だけどその葛藤に僕らが寄り添わないで、誰が寄り添う。検査を受けた人、受けなかった人、赤ちゃんを産んだ人、産まなかった人、どの選択も間違っていない。いや、間違ってなかったと思えるように、産科医として家族と一緒に命と向き合っていく。それが僕に、僕たちにできることなんだと、そう信じて僕はここにいる」

 もう、ぐうの音も出ないほどの「正解」を語る鴻鳥。舞台なら長台詞で拍手が起こるシーンだ。産科医として日々「中絶」という難題と格闘しているのがよくわかる。

 

■白川問題

 

 自分の力不足を痛感し、ペルソナを出て小児循環器を学び直したいと決断した白川。

 その面接で「どうして小児循環器科医として学び直したいのか」と問われた白川は、「新生児科に尊敬する先生がいます。その先生のような新生児科になることが恩返しではない。別の知識、技術を身につけて一つでも多くの命を救えるようになりたいんです。そのためなら研修医からやり直したってかまいません」と語る。

 その際「尊敬する先生って今橋先生でしょ? ずいぶん大きな目標だ」と言われ、思わず嬉しそうに微笑む白川。

 前日「NICUを卒業することがゴールじゃない。そのあとに続く赤ちゃんとご家族の人生に寄り添いたい。それが俺たちの仕事の目標だって、今橋先生が教えてくれました」と今橋に直接語っていた。

 自身過剰で危なっかしい白川はすっかりなりを潜めたようで、それはそれで少し寂しいが、今橋という大きなお手本を持ったことで以前のように彼が自己顕示欲にとらわれ、道を踏み外すようなことは無さそうだ。

 

■父の死

 

 父親の今後の話をするために、四宮の妹・夏実(相楽樹)が能登からやってきた。ステージ4の肺がんである四宮の父から渡すように頼まれたという「ヘソの緒」を手渡す。

 それを聞いた小松は「昔は女の子はお守りお嫁に行く時に渡されたり、戦争に行く時に持たされたりしたんだよね。あとは亡くなった時に、棺桶に入れてもらうと天国で迷子にならずお母さんに会えるとかね。お父さんの気持ちだね、しのりん(四宮)を守ってくれますようにって」。

 死を覚悟した父親から息子への、もの言わぬ「土産」。四宮は特に言葉を語ることはなかったが、何度か容器に入ったそれを眺めながら物思いにふけっていた。容器はもちろん輪島塗だ。

 そんなある日の勤務中、妹からの電話で父の死を知る四宮。しかし直後に緊急搬送の手術が入る。感情を殺して手術を終えた後、三たび故郷へと立つ四宮。

 

■今週の四宮と鴻鳥

 

 四宮が訃報のため再々度帰郷することになり「迷惑かけるな。カルテは……」と言いかけた瞬間に「大丈夫だ」と、すぐ送り出そうとする鴻鳥と「そうか」と受ける四宮。

 励まそうとしたのか「四宮……」と言いかけた瞬間、今度は負けぬ速さで「大丈夫だ」と答える四宮。武道の達人のようなやり取り。

「ペルソナのこと、頼むぞ」と伝える四宮が、いかに鴻鳥を信頼しているかがわかる。

 辻夫妻の中絶手術を終えたあと、一人佇む鴻鳥に、そっと暖かい飲み物を供する四宮。

 カンファレンスにて、中絶に対する苦悩や思いを熱く語ったあと、多くのスタッフの前で我に返り「すみません関係ない話をして」と謝る鴻鳥に、「関係なくない。必要な話だろ」とすかさずフォローを入れる四宮。

 危機が多ければ多いほどお互いを理解し、支え合う姿が目立つ。

 次回、最終回。高山夫妻の出産や、今回も登場していた小松の友達であり同期の助産師・武田を襲う危機など、最後まで詰まった内容。能登へむかった四宮や、その四宮の父親の訃報で曖昧になってしまった、小松が鴻鳥に伝えようとしていた内容も気にかかる。心して待ちたい。
(文=柿田太郎)

“クドカン天才説”撤回! 『監獄のお姫さま』最終回は、やっつけ仕事で不満の残るラストに

“クドカン”の愛称で親しまれる脚本家・宮藤官九郎による復讐コメディードラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)の最終話が19日に放送され、平均視聴率7.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.1ポイントダウンとなりました。

 まずは、これまでのあらすじを少し。2017年のクリスマス・イブ、元囚人の馬場カヨ(小泉今日子)、大門洋子(坂井真紀)、足立明美(森下愛子)、勝田千夏(菅野美穂)と元刑務官の若井ふたば(満島ひかり)の5人は、EDOミルク社・社長の板橋吾郎(伊勢谷友介)を誘拐。その背景には、6年前に沖縄で起こった横田ユキ(雛形あきこ)殺害事件の罪を、当時婚約者だった“爆笑ヨーグルト姫”こと江戸川しのぶ(夏帆)に吾郎が押しつけたことを証言させ、再審請求しようという目的があったのです。

 その吾郎・監禁シーンと、カヨたちが出会い親密になっていく女子刑務所シーンとが行き交うカタチでドラマは展開したのですが、前回で回想シーンは終了。吾郎が監禁されている現場にカヨたちだけでなく、検察官検事の長谷川信彦(塚本高史)や吾郎の妻・晴海(乙葉)、ユキ殺害の実行犯でタイ人のプリンス(ナリット)らも集い、しのぶの再審請求に先立つプレ裁判が始まったのでした。

 その前回の終了間際、殺人事件当日の昼間に撮影された動画を見ていた長谷川が、パラセーリングを楽しむしのぶのヘルメットにカメラが設置されていることを発見。事件の手がかりになる映像が残っているのではないかと、沖縄へ足を運びます。

 運よく6年前の映像は残っていたものの手がかりは掴めず。落胆する長谷川ですが、吾郎のヘルメットにもカメラが設置されていることに気づきます。そして、その映像には吾郎の殺人教唆を裏づける証拠が残っていたのです。

 一方、カヨたちは正式な裁判を起こすため吾郎を一旦解放することに。しかし、拉致&監禁の被害届は出さないと約束した吾郎が、解放後すぐに裏切って被害届を出したため、全員が逮捕されてしまいます。

 その後、晴海の尽力によってカヨたちは不起訴処分になります。そして迎えた横田ユキ殺害事件の再審で長谷川が例の映像を提出。その映像には、プリンスにナイフを握らせて指紋を付着させ、しのぶが殺人を依頼しているように聞こえる会話を録音するようプリンスに指示を与える吾郎の様子がバッチリと収められているのです。

 追い詰められた吾郎は長谷川との問答の中で、「(ナイフの)鞘は海に捨てた」と失言。しかし、鞘にはわざわざプリンスの指紋を付着させたはずです。なぜ捨てる必要があったのか? となり、実際には自身がユキを殺害し、その際に鞘に指紋を付けてしまったため海に投げ捨てたことを告白。その瞬間、カヨたちの念願叶い、しのぶの無実が明らかになったのでした。

 その後、しのぶはひとり息子の勇介と再会を果たし、EDOミルク社の社長に就任。カヨは千夏の専属メイクになり、明美は死んだ夫が組長を務めていた指定暴力団の“姐御”に、洋子は女優に、ふたばは女子刑務所に再就職と、それぞれの道を歩み始めたところで終了となりました。

 前回、第1話の勇介&吾郎誘拐シーンの舞台裏を明かすことで見事な伏線回収をやってのけたクドカンですが、ドラマの盛り上がりはそこがピークだったようです。結局は吾郎が真犯人だったという、何のひねりもないラスト。前回のレビューで書いたクドカン天才説は撤回したいと思います。少なくとも、事件の真相究明の部分はやっつけ仕事にしか感じられませんでした。

 例えば、今回のストーリーで大どんでん返しにもっていくとしたら、吾郎が犯人じゃないという展開が一番有力ですよね。しのぶが真犯人でカヨたちを騙していたかあるいは二重人格だった、晴海が真犯人、ユキの自殺……。いくらでも選択肢はあったと思います。

 吾郎が真犯人でもそれはそれで構わないのですが、問題なのはナイフにプリンスの指紋を付着させた証拠映像。6年前になぜ警察は気づかなかったのでしょうか。しのぶのヘルメットに設置されたカメラの映像はチェックしたのに、吾郎の方はスルーというのはおかしいですよね。タイ語で会話してるから気づかなかったとか、しのぶがすぐに自供したからよく調べなかったとか言い訳めいたことがカヨたちの会話の中にチラッと織り込まれていましたが、まったく説得力がありません。

 真相追及の部分がないがしろにされてしまったため、しのぶがカヨたちに感謝の気持ちを伝えたり勇介との再会を果たすなど、本来なら感動的なはずの場面も感情移入できず。前回から期待値が高まっていた分だけ落胆が大きくなってしまい、残念な幕引きとなってしまいました。ただ、おばちゃんたちの鈍くさくも愛らしいキャラやワチャワチャ感を描くクドカンの手腕は秀逸だっただけに、同じキャストでの再結集に期待したいです。
(文=大羽鴨乃)

“クドカン天才説”撤回! 『監獄のお姫さま』最終回は、やっつけ仕事で不満の残るラストに

“クドカン”の愛称で親しまれる脚本家・宮藤官九郎による復讐コメディードラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)の最終話が19日に放送され、平均視聴率7.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.1ポイントダウンとなりました。

 まずは、これまでのあらすじを少し。2017年のクリスマス・イブ、元囚人の馬場カヨ(小泉今日子)、大門洋子(坂井真紀)、足立明美(森下愛子)、勝田千夏(菅野美穂)と元刑務官の若井ふたば(満島ひかり)の5人は、EDOミルク社・社長の板橋吾郎(伊勢谷友介)を誘拐。その背景には、6年前に沖縄で起こった横田ユキ(雛形あきこ)殺害事件の罪を、当時婚約者だった“爆笑ヨーグルト姫”こと江戸川しのぶ(夏帆)に吾郎が押しつけたことを証言させ、再審請求しようという目的があったのです。

 その吾郎・監禁シーンと、カヨたちが出会い親密になっていく女子刑務所シーンとが行き交うカタチでドラマは展開したのですが、前回で回想シーンは終了。吾郎が監禁されている現場にカヨたちだけでなく、検察官検事の長谷川信彦(塚本高史)や吾郎の妻・晴海(乙葉)、ユキ殺害の実行犯でタイ人のプリンス(ナリット)らも集い、しのぶの再審請求に先立つプレ裁判が始まったのでした。

 その前回の終了間際、殺人事件当日の昼間に撮影された動画を見ていた長谷川が、パラセーリングを楽しむしのぶのヘルメットにカメラが設置されていることを発見。事件の手がかりになる映像が残っているのではないかと、沖縄へ足を運びます。

 運よく6年前の映像は残っていたものの手がかりは掴めず。落胆する長谷川ですが、吾郎のヘルメットにもカメラが設置されていることに気づきます。そして、その映像には吾郎の殺人教唆を裏づける証拠が残っていたのです。

 一方、カヨたちは正式な裁判を起こすため吾郎を一旦解放することに。しかし、拉致&監禁の被害届は出さないと約束した吾郎が、解放後すぐに裏切って被害届を出したため、全員が逮捕されてしまいます。

 その後、晴海の尽力によってカヨたちは不起訴処分になります。そして迎えた横田ユキ殺害事件の再審で長谷川が例の映像を提出。その映像には、プリンスにナイフを握らせて指紋を付着させ、しのぶが殺人を依頼しているように聞こえる会話を録音するようプリンスに指示を与える吾郎の様子がバッチリと収められているのです。

 追い詰められた吾郎は長谷川との問答の中で、「(ナイフの)鞘は海に捨てた」と失言。しかし、鞘にはわざわざプリンスの指紋を付着させたはずです。なぜ捨てる必要があったのか? となり、実際には自身がユキを殺害し、その際に鞘に指紋を付けてしまったため海に投げ捨てたことを告白。その瞬間、カヨたちの念願叶い、しのぶの無実が明らかになったのでした。

 その後、しのぶはひとり息子の勇介と再会を果たし、EDOミルク社の社長に就任。カヨは千夏の専属メイクになり、明美は死んだ夫が組長を務めていた指定暴力団の“姐御”に、洋子は女優に、ふたばは女子刑務所に再就職と、それぞれの道を歩み始めたところで終了となりました。

 前回、第1話の勇介&吾郎誘拐シーンの舞台裏を明かすことで見事な伏線回収をやってのけたクドカンですが、ドラマの盛り上がりはそこがピークだったようです。結局は吾郎が真犯人だったという、何のひねりもないラスト。前回のレビューで書いたクドカン天才説は撤回したいと思います。少なくとも、事件の真相究明の部分はやっつけ仕事にしか感じられませんでした。

 例えば、今回のストーリーで大どんでん返しにもっていくとしたら、吾郎が犯人じゃないという展開が一番有力ですよね。しのぶが真犯人でカヨたちを騙していたかあるいは二重人格だった、晴海が真犯人、ユキの自殺……。いくらでも選択肢はあったと思います。

 吾郎が真犯人でもそれはそれで構わないのですが、問題なのはナイフにプリンスの指紋を付着させた証拠映像。6年前になぜ警察は気づかなかったのでしょうか。しのぶのヘルメットに設置されたカメラの映像はチェックしたのに、吾郎の方はスルーというのはおかしいですよね。タイ語で会話してるから気づかなかったとか、しのぶがすぐに自供したからよく調べなかったとか言い訳めいたことがカヨたちの会話の中にチラッと織り込まれていましたが、まったく説得力がありません。

 真相追及の部分がないがしろにされてしまったため、しのぶがカヨたちに感謝の気持ちを伝えたり勇介との再会を果たすなど、本来なら感動的なはずの場面も感情移入できず。前回から期待値が高まっていた分だけ落胆が大きくなってしまい、残念な幕引きとなってしまいました。ただ、おばちゃんたちの鈍くさくも愛らしいキャラやワチャワチャ感を描くクドカンの手腕は秀逸だっただけに、同じキャストでの再結集に期待したいです。
(文=大羽鴨乃)

15.7%『陸王』ストーリー停滞、最終回直前で「こはぜ屋」の誰もが信用できなくなっていく……

 17日に放送された日曜劇場『陸王』(TBS系)最終回直前の第9話は25分の拡大版でした。視聴率は15.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調ではあるものの、ちょっと伸び悩みな感じです。

 そして視聴率以上に、お話は停滞しています。正直、第6話のニューイヤー駅伝のくだりから急激に進展しなくなった物語にイライラが募るばかりです。瞬間瞬間の画面の強さや俳優さんたちの芝居の良さはあるので、ドラマが出力を失ったわけではありません。だからこそ、フラフラしてる宮沢社長以下こはぜ屋の面々が信用できなくなっていくのがつらいところです。

 というわけで、振り返りましょう。

前回までのレビューはこちらから

 世界的スポーツメーカーFelixの御園社長(松岡修造)に買収話を持ちかけられ、「すぐにでも3億出資する」と言われてホイホイと固い握手をかわしてしまった宮沢社長(役所広司)でしたが、社内からは当然のように猛反発。さらに、銀行の融資担当・大橋さん(馬場徹)からも「(買収されれば)相手の思い通りにするしかなくなる」と諭され、再びフラフラと迷いだします。いわく「買収を受け入れて陸王を続けるか、足袋屋に戻るか」の選択肢しかないといい、「俺は陸王を続けたいんだ」と決意を述べます。

 もっとも強く反発しているのが、これまで宮沢社長に理解を示してきた縫製おばちゃん軍団のリーダー・あけみさん(阿川佐和子)でした。

「私が会社を売ることに賛成することは絶対にない、絶対にない」

 と、大切なことなので2回言ったりします。今回、こはぜ屋パートでは、このあけみさんを説得するだけで、フルに1時間半を使います。長いよ。

 そもそもこのドラマは、こはぜ屋という老舗足袋業者が「100年の暖簾」とやらを“もう守れない”という状況から始まっています。足袋の需要が減って、もうこのままでは先も長くない。だから新規事業を始めなければいけない。よし、「陸王」で頑張ろう。そういう話だったのに、最終回前の大詰めまで来て「足袋屋に戻る」ことへの逡巡が語られる。「足袋屋に戻る」ことは、ドラマの序盤で「イコール倒産」と、すでに定義されているはずなのに、社員がそれを求め、社長も迷う。そりゃ気持ちがわからないわけじゃないけど、3話も引っ張られたら、さすがに嫌気が差してしまいます。あんなにキュートだった阿川さんも、なんだか憎たらしく見えてくる始末です。「感情論じゃどうしようもない」ということを視聴者に一度飲み込ませておいて、今さらそこをグチグチ言われても、ねえ……。

 

■急にアッパー素材が手に入りました

 

 一方、宮沢社長以上に陸王をあきらめられないのが、社長の息子・大地(山崎賢人)です。織物業者・タチバナラッセルの不義理によってアッパー素材の供給が止まることになって以来、一人であちこちの繊維業者、織物業者へ折衝に訪れては、門前払いされる日々。それでも、大地は陸王を作りたくて仕方ありません。初めて自分の人生に意味を与えてくれたのが陸王だった、ということは、ここまで丁寧に描写されているので、よくわかります。この人の行動は、信用できるんです。

 でも、この人はいつも結果が信用できないんだ。この日、アポを取って訪れたタテヤマ織物という会社で、担当者にドタキャンされ、受付で夕方まで待ち続けた大地。その姿をチラ見していたおじさんに会議室に招かれると、いきなり「お手伝いさせていただきます」とアッパー素材の提供を申し出られました。こはぜ屋の財務状況も、現状ソール材であるシルクレイを作る算段がないことも、説明したのかどうか知りませんが、「ある意味ブレイクスルーだ」と、実に物わかりのいいおじさん。社内で検討する必要もないそうです。なぜなら社長だから。しかも、サンプル材を持って帰ってみたら、タチバナ以上の優秀な素材なんだとか。もう、おとぎ話の世界です。

 大地は、1足分だけ残っている茂木モデルの陸王を作りたいといいます。茂木(竹内涼真)といえば、そもそも陸王プロジェクトのきっかけになった実業団選手。ケガこそ克服したものの、記録的には伸び悩んでいる様子。しかも、一度は陸王でサポート契約をしたのに、こはぜ屋の都合でご破算にしてしまった過去もある。まだ応援している気持ちを伝えたいから、陸王を1足作って贈りたいと。そのために、アッパー素材を探してきたのだと。

 あれー? と思ったんですよ。タチバナは確か、こはぜ屋との契約を切るときに「3月までは納品する」と言ってなかったっけと。結果、シルクレイ製造機が火を噴いたことで陸王の製造はストップしましたが、その時点で大量生産をかけているということは、タチバナからの納入も止まってないはず。現時点で「タチバナの素材の在庫がない」という状況があるとすれば、宮沢社長が「製造機がブッ壊れたから、もう素材は買えない。今あるものも返品する」とタチバナに申し出た以外には、あり得ないケースです。あれほど「裏切り者!」と面罵したタチバナに対して、そういう仕打ちをしているわけで、やっぱり信用できない人だよなぁとなってしまう。些末なことではあるんですが、会社と会社との契約云々で散々引き延ばされている中での出来事なので、どうしても気になってしまいました。

■村野さんも坂本さんも信用できなくなった

 

 ただ1足の陸王を茂木くんに納入するため、こはぜ屋はシューフィッター・村野さん(市川右團次)を呼び戻すことに。最初は「茂木を迷わすだけだ」と協力を固辞していた村野さんでしたが、飯山ちゃん(寺尾聰)に何か言われたら、あっさり翻意。出来上がった陸王を見て「1mmカカトを深くして!」とか指示を出したり「完璧です!」と感動してみたり、こちらもブレブレです。

 さらに、買収話を持ってきたベンチャーキャピタルの坂本ちゃん(風間俊介)も手落ちがひどい。宮沢社長が買収ではなく業務提携を模索することにした段になって初めて、これまでFelixに買収された企業がどうなったかを調べる有様です。それまで「買収は有益」「これしかない」「こはぜ屋を守れる」と言い続けてきた坂本ちゃん、実は何も調べてなかったことが露呈しました。坂本ちゃんの提案通り買収されてたら、あっという間に、こはぜ屋はなくなっていたということです。

 こうしたブレを、このドラマでは、セリフの“振り返しの一撃”で逆転させようとしています。誰かのひと言で誰かの心変わりを促し、説得力を生もうとしている。まだ物語の全容が見えていなかった序盤は、それも効果的だったんです。大地が、大橋さんが、あけみさんが、ギュッと力を込めて発するセリフのひとつひとつが、ドラマに大きな展開を与えていたし、そこに爽快感があった。

 でも、ここまで状況が煮詰まっている終盤では、セリフひとつで状況を逆転させる手法に無理が生じているように感じます。物語が、どんどんほころんでいくように見えるのです。

 

■唯一信用できる男・松岡修造

 

 そんな中、Felixの御園社長だけはブレていません。威風堂々とした振る舞いは迫力がありますし、妻の命を奪ったハリケーンの名前を社名にしたというエピソードもサイコっぽくて素敵です。業務提携を持ちかけられたときに「買収の方が簡単」と繰り返す様も、信念が感じられて実に信用できる。なぜ御園社長が信用できるかといえば、まだ出てきたばっかりでよくわからない人だからというだけなんですが、ともあれ『陸王』の最終盤を下支えする見事な配置ですし、松岡さんの演技も要求に十分応えていると感じます。

 ともあれ、次回は最終回。いろんなモヤモヤは忘れて、ただ画面に身を委ねたいと思います。いろいろ書いたけど、楽しんで見ていることだけは間違いないのですよ。ホントに。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

15.7%『陸王』ストーリー停滞、最終回直前で「こはぜ屋」の誰もが信用できなくなっていく……

 17日に放送された日曜劇場『陸王』(TBS系)最終回直前の第9話は25分の拡大版でした。視聴率は15.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調ではあるものの、ちょっと伸び悩みな感じです。

 そして視聴率以上に、お話は停滞しています。正直、第6話のニューイヤー駅伝のくだりから急激に進展しなくなった物語にイライラが募るばかりです。瞬間瞬間の画面の強さや俳優さんたちの芝居の良さはあるので、ドラマが出力を失ったわけではありません。だからこそ、フラフラしてる宮沢社長以下こはぜ屋の面々が信用できなくなっていくのがつらいところです。

 というわけで、振り返りましょう。

前回までのレビューはこちらから

 世界的スポーツメーカーFelixの御園社長(松岡修造)に買収話を持ちかけられ、「すぐにでも3億出資する」と言われてホイホイと固い握手をかわしてしまった宮沢社長(役所広司)でしたが、社内からは当然のように猛反発。さらに、銀行の融資担当・大橋さん(馬場徹)からも「(買収されれば)相手の思い通りにするしかなくなる」と諭され、再びフラフラと迷いだします。いわく「買収を受け入れて陸王を続けるか、足袋屋に戻るか」の選択肢しかないといい、「俺は陸王を続けたいんだ」と決意を述べます。

 もっとも強く反発しているのが、これまで宮沢社長に理解を示してきた縫製おばちゃん軍団のリーダー・あけみさん(阿川佐和子)でした。

「私が会社を売ることに賛成することは絶対にない、絶対にない」

 と、大切なことなので2回言ったりします。今回、こはぜ屋パートでは、このあけみさんを説得するだけで、フルに1時間半を使います。長いよ。

 そもそもこのドラマは、こはぜ屋という老舗足袋業者が「100年の暖簾」とやらを“もう守れない”という状況から始まっています。足袋の需要が減って、もうこのままでは先も長くない。だから新規事業を始めなければいけない。よし、「陸王」で頑張ろう。そういう話だったのに、最終回前の大詰めまで来て「足袋屋に戻る」ことへの逡巡が語られる。「足袋屋に戻る」ことは、ドラマの序盤で「イコール倒産」と、すでに定義されているはずなのに、社員がそれを求め、社長も迷う。そりゃ気持ちがわからないわけじゃないけど、3話も引っ張られたら、さすがに嫌気が差してしまいます。あんなにキュートだった阿川さんも、なんだか憎たらしく見えてくる始末です。「感情論じゃどうしようもない」ということを視聴者に一度飲み込ませておいて、今さらそこをグチグチ言われても、ねえ……。

 

■急にアッパー素材が手に入りました

 

 一方、宮沢社長以上に陸王をあきらめられないのが、社長の息子・大地(山崎賢人)です。織物業者・タチバナラッセルの不義理によってアッパー素材の供給が止まることになって以来、一人であちこちの繊維業者、織物業者へ折衝に訪れては、門前払いされる日々。それでも、大地は陸王を作りたくて仕方ありません。初めて自分の人生に意味を与えてくれたのが陸王だった、ということは、ここまで丁寧に描写されているので、よくわかります。この人の行動は、信用できるんです。

 でも、この人はいつも結果が信用できないんだ。この日、アポを取って訪れたタテヤマ織物という会社で、担当者にドタキャンされ、受付で夕方まで待ち続けた大地。その姿をチラ見していたおじさんに会議室に招かれると、いきなり「お手伝いさせていただきます」とアッパー素材の提供を申し出られました。こはぜ屋の財務状況も、現状ソール材であるシルクレイを作る算段がないことも、説明したのかどうか知りませんが、「ある意味ブレイクスルーだ」と、実に物わかりのいいおじさん。社内で検討する必要もないそうです。なぜなら社長だから。しかも、サンプル材を持って帰ってみたら、タチバナ以上の優秀な素材なんだとか。もう、おとぎ話の世界です。

 大地は、1足分だけ残っている茂木モデルの陸王を作りたいといいます。茂木(竹内涼真)といえば、そもそも陸王プロジェクトのきっかけになった実業団選手。ケガこそ克服したものの、記録的には伸び悩んでいる様子。しかも、一度は陸王でサポート契約をしたのに、こはぜ屋の都合でご破算にしてしまった過去もある。まだ応援している気持ちを伝えたいから、陸王を1足作って贈りたいと。そのために、アッパー素材を探してきたのだと。

 あれー? と思ったんですよ。タチバナは確か、こはぜ屋との契約を切るときに「3月までは納品する」と言ってなかったっけと。結果、シルクレイ製造機が火を噴いたことで陸王の製造はストップしましたが、その時点で大量生産をかけているということは、タチバナからの納入も止まってないはず。現時点で「タチバナの素材の在庫がない」という状況があるとすれば、宮沢社長が「製造機がブッ壊れたから、もう素材は買えない。今あるものも返品する」とタチバナに申し出た以外には、あり得ないケースです。あれほど「裏切り者!」と面罵したタチバナに対して、そういう仕打ちをしているわけで、やっぱり信用できない人だよなぁとなってしまう。些末なことではあるんですが、会社と会社との契約云々で散々引き延ばされている中での出来事なので、どうしても気になってしまいました。

■村野さんも坂本さんも信用できなくなった

 

 ただ1足の陸王を茂木くんに納入するため、こはぜ屋はシューフィッター・村野さん(市川右團次)を呼び戻すことに。最初は「茂木を迷わすだけだ」と協力を固辞していた村野さんでしたが、飯山ちゃん(寺尾聰)に何か言われたら、あっさり翻意。出来上がった陸王を見て「1mmカカトを深くして!」とか指示を出したり「完璧です!」と感動してみたり、こちらもブレブレです。

 さらに、買収話を持ってきたベンチャーキャピタルの坂本ちゃん(風間俊介)も手落ちがひどい。宮沢社長が買収ではなく業務提携を模索することにした段になって初めて、これまでFelixに買収された企業がどうなったかを調べる有様です。それまで「買収は有益」「これしかない」「こはぜ屋を守れる」と言い続けてきた坂本ちゃん、実は何も調べてなかったことが露呈しました。坂本ちゃんの提案通り買収されてたら、あっという間に、こはぜ屋はなくなっていたということです。

 こうしたブレを、このドラマでは、セリフの“振り返しの一撃”で逆転させようとしています。誰かのひと言で誰かの心変わりを促し、説得力を生もうとしている。まだ物語の全容が見えていなかった序盤は、それも効果的だったんです。大地が、大橋さんが、あけみさんが、ギュッと力を込めて発するセリフのひとつひとつが、ドラマに大きな展開を与えていたし、そこに爽快感があった。

 でも、ここまで状況が煮詰まっている終盤では、セリフひとつで状況を逆転させる手法に無理が生じているように感じます。物語が、どんどんほころんでいくように見えるのです。

 

■唯一信用できる男・松岡修造

 

 そんな中、Felixの御園社長だけはブレていません。威風堂々とした振る舞いは迫力がありますし、妻の命を奪ったハリケーンの名前を社名にしたというエピソードもサイコっぽくて素敵です。業務提携を持ちかけられたときに「買収の方が簡単」と繰り返す様も、信念が感じられて実に信用できる。なぜ御園社長が信用できるかといえば、まだ出てきたばっかりでよくわからない人だからというだけなんですが、ともあれ『陸王』の最終盤を下支えする見事な配置ですし、松岡さんの演技も要求に十分応えていると感じます。

 ともあれ、次回は最終回。いろんなモヤモヤは忘れて、ただ画面に身を委ねたいと思います。いろいろ書いたけど、楽しんで見ていることだけは間違いないのですよ。ホントに。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

ちょっと仲よすぎ!? 綾野剛と星野源の“蜜月関係”が尊い『コウノドリ』に波乱はあるか

 周産期母子医療センター(出産の前後を通し、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や妊婦の喜びと悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。いつも以上にさまざまな人間模様が入り混じった第9話は視聴率12.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今回も見事に安定。振り返ります。

 

■3度目の流産

 

 今回の妊婦は、過去2回の流産を経験している篠原沙月(野原麻帆)。3回目の妊娠をしたものの、今回も検査で子どもの心拍を確認できず、担当の産科医・鴻鳥(綾野剛)から流産を告げられる。

 過去の経験を引きずっている沙月は、どこかで覚悟もしていたのだろう「……はい」と、力なく、それでいて自分を納得させるようにうなずく。うれしいはずの妊娠がわかるたび、流産に怯えながら過ごす毎日は想像できないほど不安だろう。

「3回も流産するのって、私のせいですか?」と自らを責めるように言う沙月に、鴻鳥は、初期の流産はほとんどが母親が原因でないこと、さまざまな偶然が重なり起きたのだという見解を伝える。

 助産師の小松(吉田羊)も、自分のせいにしてしまう母親が多いが、そんなことはないと声をかけるが、3回目の流産ということもあって、沙月は不育症の検査を希望する。

 不育症とは、妊娠はするが流産や死産を繰り返し、結果的に子どもに巡り会えない状態。しかし、検査を受けても原因がわからないことが多いので、余計にストレスを抱えてしまう患者が多いという。

 カンファレンスにて、意見交換を行う医師たち。

 産科医・四宮(星野源)は、流産が珍しいものではないと知ってもらうのが重要だと訴える。実際、妊娠女性の15%は流産になってしまうらしく、さらに沙月の年齢の35才だと、それは25%にもなるという。

 確かに、こういう前知識があることで沙月のような女性が過剰に自分を追い込み、精神的に苦しんでしまうことの予防にはなるのかもしれない。

 しかし小松(吉田羊)は「確率の話をしたところで、お母さんの悲しみは埋まらないよ」と反論する。

 人一倍患者に寄り添う小松は、数字やデータとはまた違う、人と人との関わりにおいての意見が多い。翌日の手術前に「またさよならしなきゃいけないんですね……」とお腹をさする沙月を見て、手術中にそっと沙月の手を握る小松。

 後日、不妊治療外来の岸田医師(高橋洋)に、「ストレスをためないことが一番の薬」だと言われたのも辛そうだ。

 もちろん岸田の言っていることは正論なのだろうが、沙月が「別にためたくてためてるわけじゃないんですけどね」と小松に漏らしたように、一歩間違うと「ストレスをためた」沙月を責めているようにも受け取れてしまうのかもしれない。

 沙月は3年前に初の妊娠が発覚した時の母子手帳も捨てられずにいる。当時、眩しかったその「思い出」が、今は重く沙月にのしかかる。しかし、うれしかったその手帳を捨てることができず、忘れられないと。

 小松は、その沙月の気持ちを肯定する。

「無理に忘れる必要ないよ、だって今まで宿った子、みんな篠原さんの子なんだから」

 沙月に響いたようだが、闇の中を一人歩くような沙月を完全に照らすことはできないようだ。

 

■夫も悩んでいる

 

 精神的にかなりかなり参っている沙月をなんとか励まそうと、夫の修一(高橋光臣)は「俺はさ、子どもがいない2人だけの人生もいいと思ってる。2人なら好きなことできるし……」と語りだすも、すぐさま「全然うれしくないよ、慰めになってない」と沙月に遮られ、どう接していいのかすらわからなくなってしまう。

 修一は悩んで鴻鳥を訪ねる。

「苦しんでる妻に何もしてやれないんです」

 そして「自分の役目は今までのことを忘れさせてあげることなんでしょうけど」と語る修一に「忘れなくていい、忘れる必要はないと思います」と語る鴻鳥。

「僕は、出産は奇跡だと思っています。こんなに医学が進歩したのに、いま篠原さんご夫婦が悩んでる問題は、未だに原因がはっきりしていません。医者の僕たちでさえ、できることが少ない……。でも修一さんが『奥さんに寄り添って笑顔にしてあげたい』『近くでなんとかしてあげたい』って必死に頑張ってる姿は、奥さんにとって一番の治療になるんだと思います。そしてその思いは、きっと明日につながります」

 鴻鳥の言葉に後押しされたのか、沙月の好きなBABYの曲をピアノで練習しだす修一。それを見た沙月は、どんな医師のアドバイスや検査よりも励まされたようで、自分の味方がすぐ近くにいたことを再確認し、心が軽くなって涙を流す。

 後日、不育症の検査結果は異常なし。つまり原因はわからない。戸惑う篠原夫妻に、鴻鳥は言う。

「不育症の原因がわかって治療した女性が出産できる確率は85%です。原因がわからなくて治療した女性が出産できる確率は85%です」

「つまり、篠原さんは次の赤ちゃんを妊娠して出産に臨めるということがわかったんです。……でも不安ですよね、怖いですよね……」

 これを聞いた沙月は泣きながら気持ちを吐き出す。

「妊娠してないってことがわかると、少しホッとする自分がいて、一瞬でもお腹の中に赤ちゃんが宿ることが怖くて、こんなんじゃ母親になる資格ないですよね」

 子ども好きな夫に、子どもを産んであげられないのが一番つらいと謝る。修一も何もしてやれないことを詫びる。どちらも、もちろん悪くないのだが、お互いフタをしていた気持ちをさらけ出せたようだ。

「次はきっと大丈夫! 本当につらい経験をしたふたりだからこそ大丈夫。だって篠原さんには、こんな近くに世界一の味方がいるじゃないですか?」

 安易な励ましにも聞こえるが、しかし、底なしの不安に溺れる沙月のような症状の女性にとって、どんな専門家より、味方がそばにいることの心強さは勝るものなのだろう。

 ナレーションで鴻鳥が言う。

「人は必ず、誰かがそばにいて、誰かのそばにいる」

 結局、沙月はめでたく再度妊娠をし、子どもの心拍も確認、ここからまだわからないながらも、明るい未来につなげる結末を見せてくれた。

 

■下屋の成長

 

 産科、新生児科と研修をしてきた新人研修医・赤西(宮沢氷魚)は今週から救命科で研修を受けるようで、下屋(松岡茉優)と再度仕事をすることに。

 産科医師としてステップアップするために救命科に飛び込んだ下屋だが(第5話)、今でも加瀬(平山祐介)にどやしつけられている毎日。ついこの前まで産科医として指導してきた後輩・赤西の前でどやされ、使いものになっていない姿をさらすのはどれだけきついだろうか。

 そんなある日、妊娠高血圧症候群で倒れた妊婦が搬送されてくる。妊婦ということで、やや勝手の違いに戸惑う加瀬や救命部長の仙道(古舘寛治)を前に、下屋は緊急帝王切開を提案する。

「確かに血圧を下げることが母体には必要ですが、そうすると胎盤の血流も減少して赤ちゃんが低酸素になるリスクがあります」

 この時の下屋の気迫に押される加瀬や仙道。鴻鳥も四宮も来られない状況の中、元・産科、現・救命の落ちこぼれチームが緊急カイザーに挑む。この時の赤西が下屋を見る目が「尊敬」と「好意」が入り混じって、実によかった。

「加瀬先生、私はまだ救命医として使いものにならないこと、よくわかってます。でも赤ちゃんのことは任せてください! だから母体のことはよろしくお願いします」

 下屋の思いを「わかってるよ」と笑いながら受け止める加瀬。

 白川も小松も、いつもきつく当たってくる救命部長も見守る中、下屋の手術を行う。さながら「下屋の逆襲」だ。

 無事手術の終わった後、心配して駆けつけた鴻鳥に仙道が笑顔で言う。

「下屋先生がいてくれて、今回は助かった。言っとくけど『今回は』だからね」

仙道「彼女は救命医になれるかな?」

鴻鳥「どうですかね、ただ下屋は打たれ強くて図々しいです。それと、よく食べます(笑)」

 実際、「手術後なのによく食えますね?」と赤西に呆れられながら弁当を幸せそうに食べるシーンが、今回あった。

「ははは、じゃ、ここで使える駒になるかもな」と笑って立ち去る仙道に、きっちり頭を下げる鴻鳥。元・上司として、これほどうれしいことはないだろう。

 しかし、さんざん産科にきついことを言った仙道だが、急に優しくされると必要以上にキュンとしてしまう。DVの男がたまに優しさを見せる手口に通じるものがある。

 

■能登、ふたたび

 

 ステージ4の肺がんである四宮の父・晃志郎(塩見三省)が再度倒れたため、再び故郷の能登へ飛んだ四宮。ベッドで苦しそうにしている自分を心配する四宮(息子)に対し「俺は大丈夫だ。お前こそ自分の患者を放り投げて来たんだろ? すぐに帰れ」と強がる晃志郎。

 しかも、担当している妊婦の手術をすると言いだす始末。今の状態でできるわけがないと妹の夏実(相楽樹)が止めるが「できる! できるに決まってる!」と頑なに譲らない。

 しかも、そのタイミングで妊婦に早期胎盤剥離の疑いが発覚、緊急帝王切開手術の必要性が。あくまで自ら手術をしようとする父親の本気の姿を見て、四宮は決断する。

「わかった、俺がやる」「医院長に許可とってくれ」

 病をおしてまで現場に立とうとし、その町の出産を守ろうとする、父であり先輩医師である晃志郎の姿が、かつて患者を亡くして(前シーズン・9話)以来、塞ぎ込みがちだった四宮の心を溶かしていくようだ。

 だが、妊婦の夫は、急に現れた「東京の医師(四宮)」を受け入れられない。そこへ、夏実に支えられて現れた晃志郎が言う。

「うちの息子、信じてやってください。東京で立派に産婦人科の医者やってます、だから大丈夫です」

 表情は特に変わりはしなかったし、何も言わなかったが、四宮は、とてもうれしかったはずだ。

「春樹、頼むな」

『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989)でショーン・コネリー演じる父親が、宝に目が眩んだ息子の目をさますために、ずっと「ジュニア」と呼んでいたのに「インディアナ」と呼ぶシーンを思い出した。

 四宮が勤めるペルソナに比べ、はるかに設備の足りない病院で行う手術。助手も専門の医師ではなく、慣れない整形外科医の年配の医師が担当。しかし四宮は、いつになく熱く燃えていたように見える。

 無事手術が終わったあと、晃志郎の病室で四宮が素直に言う。

四宮「父さん、よくここで医者続けてきたな」

晃志郎「ここが、好きだからな」

 この時、四宮は、自分が現場を離れ、大学で研究に専念すべきかどうかというということに答えを出したのではないか。

 帰ろうとする四宮に「春樹、まだまだ、お前には負けんぞ」。

 父の一言一句が四宮に響く。

「何言ってんだよ」、そう言い返すのが精一杯の四宮。

「ありがとな」と震える手を差し出し、握手をする親子。こんな時間が持てる親子は幸せだろう。

 

■白川へ送る言葉

 

 短いシーンだが、小児循環器科での研修のため、研修先が決まり次第出ていくことが決まっている白川(坂口健太郎)に、上司の今橋(大森南朋)が語った言葉が良かった。

 わがままを謝る白川に、「正直、羨ましいと思ってる。僕はずっとここ(ペルソナ)から出たことがないから、ここを出て勉強したいと思ったことはあるけど、白川先生みたいに行動に移せなかった。だから白川先生の考えはすごい勇気だと思っている。その勇気がきっと成長させてくれるはずです。……僕もわがまま言っていいかな? またここに戻ってきてほしい、その時は今みたいな先輩と後輩の関係じゃなく、同じ立場で小さな命を一緒に救いたい」

 この言葉で、自らの失敗をきっかけに出ていく後ろめたさを持つ白川の心がどれだけ軽くなっただろうか。原作ではもっとクセの強い今橋だが、今回は患者に寄り添いすぎる小松をさりげなく心配し飯に誘うなど、絵に描いたような「頼れる上司」だ。今回、特にそれが目立った回だった。

 

■今週の四宮と鴻鳥

 

 四宮は忙しい中、帰郷するその罪悪感からか、引き継ぎ事項を事細かく伝えようとするが、鴻鳥は、「僕は四宮ほど、患者のカルテを丁寧に書いてる産科医を他に知らない。だから心配するな」と送り出す。

 そう言われて「ありがとう」でも「すまん」でもなく、「わかった」と答える四宮。

 他にも、帰って来た四宮の報告に「うらやましいな」と寂しく言った鴻鳥を見つめる四宮もよかった。鴻鳥は父親も母親も知らずに育ったからだ。もう2人が対立することも、今シーズンは特になさそうだ。

 今回の最後、下屋が「私は絶対、2人を超えますから!」と宣言したのを受けて、

「下屋のくせに100年早い」

「でも楽しみだね」

 と、2人で肩を並べて去って行く姿は、まるでコンビで活躍する藤子不二雄やゆでたまごのようでした。

 また今回、四宮の同期である倉崎医師(松本若菜)の回想シーンにおいて、新人時代のあどけない2人も登場した。まだ四宮が心を閉ざす前で、仲が良かった頃だ。しかし、最近はその頃に近づいてきている、いやむしろそれ以上の蜜月関係にも見える。ちょっと仲よすぎな気もするので、もうひと波乱期待したい。

 今回は、不育症の話を軸に、今までの展開のその後を見せたり、四宮の決断への道筋を丁寧に見せたり、患者、医師、家族のそれぞれのドラマを描くなかなか入り組んだ脚本で、見ごたえのある回でした。ラストスパートに期待しましょう。
(文=柿田太郎)

『クイズダービー』故・篠沢秀夫教授の“形見分け”テレビマンたちの心を揺るがす「名文」とは

 TBSの人気番組『クイズダービー』で活躍した元学習院大名誉教授の故・篠沢秀夫さんの残した「直筆メッセージ」が、テレビ関係者の間で「名言」として“形見分け”されている。

 2009年に発症したALS(筋萎縮性側索硬化症)で体を自由に動かせなくなった中でも、必死に書いた文章が、取材したテレビ記者らを感動させ、それぞれ額に入れるなどして複数の関係者により丁重に保管されているのだ。

「つらいと思ったら すべてつらくなる。タンがからんでつらくとも、とってもらってサッパリするとうれしい。大切なこと」(原文ママ)

 紙に書かれた直筆のメッセージは、篠沢さんがALS発症後、テレビ番組の取材を受けたときに筆談で書いたもの。これを取材したテレビディレクターが許可を得て局に持ち帰ったが、感動のあまり、関係者間で「宝物にしよう」と分けられたという。

「日々の放送で残される“使用アイテム”って、通常は放送後にずさんな扱いを受けやすく、ゴミ箱行きも多いんですけど、篠沢さんのは違ったんです」と番組の元スタッフ。

 10月に肺炎で亡くなった篠沢さんは、詩人・ランボーなど、フランス文学に傾倒したパリ留学後、明治大学法学部教授を経て、学習院大のフランス文学科教授になり、定年退職した2004年に名誉教授にもなった。『日本国家論』(文藝春秋)などの名著を持つが、世間的には「篠沢教授」の愛称で親しまれ『クイズダービー』への出演が印象強い。

 番組では、クイズの迷回答が多かったことから、当初は「大学教授にもわからないのか」とも言われたが、「当人は、苦手なものはできなくてもいいということを世間に伝えたい思いがあったそうです」と元スタッフ。11年間の番組出演で「愉快、愉快」と笑う篠沢さんは人気者となったが、その人生は愉快なことばかりではなく、最初の妻を交通事故で亡くし、長男も海で溺死。椎間板ヘルニア、大腸がんでの闘病生活もあり、09年のALS発症で最後まで苦難があった。

 このALSは、全身の筋肉が次第に衰え、呼吸もできなくなっていくという難病。篠沢さんはダイエット中に歯の噛み合わせがおかしいことに気付き、検査したところ筋肉の異変が見つかったが、当初は「誤診だろう」と疑ったという。

 しかし、次第に病の進行が訪れ、10年1月、テレビ取材を受けたときはすでに人工呼吸器を付け、会話ができない状態だった。そのため、わずかに動く腕で筆談となった。

「正直、感動する話を見慣れている取材班でも勇気づけられる経験でした。何しろ教授はずっと明るかったんです。悲観的な話がまったくなくて、ジョークまで言う。こんなに強い人がいるんだと驚かされました」

 執筆活動は闘病中も続いた。パソコンを使う習慣はなかったが、入院中に文書作成だけ覚えて使うようになったという。

「その話をするときも『妻がワープロは重くて持ってきたくないというのでパソコンを覚えた』なんて笑わせていました。本当に“愉快”な方でしたね」(同)

 取材時に書いた篠沢さんのメッセージは「今ある姿を楽しむ古代の心に達しました。かくすことはない」「実務時代にはコツコツと毎日というやりかたはできませんでした。今は毎日同じ仕事を少しずつ」など含蓄あるもので、「まるで格言の色紙のよう」と元スタッフ。

 文字を書くスピードが日々衰える中でも、発症後、5冊もの本を書いた篠沢さん。それらが遺作となったわけだが、直筆メッセージの方も貴重な“遺言”として受け継がれた。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

『クイズダービー』故・篠沢秀夫教授の“形見分け”テレビマンたちの心を揺るがす「名文」とは

 TBSの人気番組『クイズダービー』で活躍した元学習院大名誉教授の故・篠沢秀夫さんの残した「直筆メッセージ」が、テレビ関係者の間で「名言」として“形見分け”されている。

 2009年に発症したALS(筋萎縮性側索硬化症)で体を自由に動かせなくなった中でも、必死に書いた文章が、取材したテレビ記者らを感動させ、それぞれ額に入れるなどして複数の関係者により丁重に保管されているのだ。

「つらいと思ったら すべてつらくなる。タンがからんでつらくとも、とってもらってサッパリするとうれしい。大切なこと」(原文ママ)

 紙に書かれた直筆のメッセージは、篠沢さんがALS発症後、テレビ番組の取材を受けたときに筆談で書いたもの。これを取材したテレビディレクターが許可を得て局に持ち帰ったが、感動のあまり、関係者間で「宝物にしよう」と分けられたという。

「日々の放送で残される“使用アイテム”って、通常は放送後にずさんな扱いを受けやすく、ゴミ箱行きも多いんですけど、篠沢さんのは違ったんです」と番組の元スタッフ。

 10月に肺炎で亡くなった篠沢さんは、詩人・ランボーなど、フランス文学に傾倒したパリ留学後、明治大学法学部教授を経て、学習院大のフランス文学科教授になり、定年退職した2004年に名誉教授にもなった。『日本国家論』(文藝春秋)などの名著を持つが、世間的には「篠沢教授」の愛称で親しまれ『クイズダービー』への出演が印象強い。

 番組では、クイズの迷回答が多かったことから、当初は「大学教授にもわからないのか」とも言われたが、「当人は、苦手なものはできなくてもいいということを世間に伝えたい思いがあったそうです」と元スタッフ。11年間の番組出演で「愉快、愉快」と笑う篠沢さんは人気者となったが、その人生は愉快なことばかりではなく、最初の妻を交通事故で亡くし、長男も海で溺死。椎間板ヘルニア、大腸がんでの闘病生活もあり、09年のALS発症で最後まで苦難があった。

 このALSは、全身の筋肉が次第に衰え、呼吸もできなくなっていくという難病。篠沢さんはダイエット中に歯の噛み合わせがおかしいことに気付き、検査したところ筋肉の異変が見つかったが、当初は「誤診だろう」と疑ったという。

 しかし、次第に病の進行が訪れ、10年1月、テレビ取材を受けたときはすでに人工呼吸器を付け、会話ができない状態だった。そのため、わずかに動く腕で筆談となった。

「正直、感動する話を見慣れている取材班でも勇気づけられる経験でした。何しろ教授はずっと明るかったんです。悲観的な話がまったくなくて、ジョークまで言う。こんなに強い人がいるんだと驚かされました」

 執筆活動は闘病中も続いた。パソコンを使う習慣はなかったが、入院中に文書作成だけ覚えて使うようになったという。

「その話をするときも『妻がワープロは重くて持ってきたくないというのでパソコンを覚えた』なんて笑わせていました。本当に“愉快”な方でしたね」(同)

 取材時に書いた篠沢さんのメッセージは「今ある姿を楽しむ古代の心に達しました。かくすことはない」「実務時代にはコツコツと毎日というやりかたはできませんでした。今は毎日同じ仕事を少しずつ」など含蓄あるもので、「まるで格言の色紙のよう」と元スタッフ。

 文字を書くスピードが日々衰える中でも、発症後、5冊もの本を書いた篠沢さん。それらが遺作となったわけだが、直筆メッセージの方も貴重な“遺言”として受け継がれた。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

やはりクドカンは天才?『監獄のお姫さま』見事な伏線回収で、退屈だった第1話の輝きが増す!

“クドカン”こと人気脚本家・宮藤官九郎による復讐コメディードラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)の第9話が12日に放送され、平均視聴率8.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.6ポイントアップとなりました。

 まずは、これまでのあらすじを少し。2017年のクリスマス・イブ、元囚人の馬場カヨ(小泉今日子)、大門洋子(坂井真紀)、足立明美(森下愛子)、勝田千夏(菅野美穂)と元刑務官の若井ふたば(満島ひかり)の5人は、EDOミルク社・社長の板橋吾郎(伊勢谷友介)を誘拐。その背景には、6年前に起こった横田ユキ(雛形あきこ)殺害事件の罪を、当時婚約者だった“爆笑ヨーグルト姫”こと江戸川しのぶ(夏帆)に吾郎が押しつけたことを証言させ、再審請求しようという目的があったのです。

 その吾郎・監禁シーンと、カヨたちが出会い親密になっていく女子刑務所シーンとが行き交うカタチでドラマは展開。前回は、カヨたちが吾郎への復讐計画を着々と練るものの、犯行プランを記したノートがふたばに見つかり没収されてしまうアクシデントが発生しました。また、仲間たちの仮出所が続々と決まり、遂にはカヨも刑務所を去る時がきたところで終了となったのです。

 今回は、カヨが仮出所する15年11月時点からスタート。誰の迎えもなく、カヨは寂しさを抱えながら街へ行きます。そして、その足でスマホを購入。出所前に仲間たちに教えておいたアドレスbabakayo~を設定して連絡を待ちつつ、新しい生活を始めます。

 一方、刑務所では、しのぶに対して同情心が湧いたふたばが、しのぶの息子・勇介(前田虎徹)を面会に連れて来て欲しいとしのぶの母・民世(筒井真理子)に手紙を書きます。しかし、これを民世から聞きつけた吾郎が面会に訪れ、しのぶの罪を咎めて精神的に大きなショックを与えてしまうのです。

 やがて月日が流れ17年4月。カヨは刑務所で知り合った“小しゃぶ”こと小島悠里(猫背椿)が店長を務める美容室で働き、波風の立たない平穏な日々を送っています。つまり、吾郎・復讐計画のメンバーたちからは一向にメールがこないのです。そのためカヨは、復讐ノートを没収された際にふたばから言われた、「シャバに戻ったら(復讐なんて)みんな忘れるよ」という言葉を思い出し、寂しい気持ちを抱いてしまいます。

 そんなある日、店の前でチラシ配りをしていたカヨの前に、全身黒ずくめの女が登場。よく見るとそれはふたばなのですが、ふたばは一切口を利かず、髪の毛のカットが終わると嵐のように去って行ってしまいます。しかし、ふたばが座っていた椅子には、カヨたちの犯行プランを綿密なものに修正した復讐ノートと折り紙でつくった手裏剣が残されているのです。

 その手裏剣には住所が記されており、恐る恐るカヨが向かうと、そこには吾郎・復讐計画のメンバーの姿が。そして実は、カヨが間違えてbakakayo~とアドレス設定したためにメールが届かなかっただけで、出所後も皆、復讐プランを忘れてなかったことが発覚。カヨは涙を流してよろこびます。

 再会をよろこぶ一同の前にふたばが現れたところで復讐計画がスタート。準備段階や第1話で放送された勇介&吾郎の誘拐シーンがジャンプカットで流れ、現在のシーンに辿り着きます。

 その現在である17年12月25日のシーンでは、ふたばが裁判官役になり、爆笑ヨーグルト姫事件の再審請求に先立つプレ裁判を開始。殺人事件の真相を暴く大詰めを迎えたところで今回は終了となりました。

 さて感想ですが、今回は第1話の伏線回収、というよりも時系列的にはタネ明かしといった方が正しいのかもしれませんが、犯行に至った経緯やその経過などのディテールが一気に明かされた回となりました。そして、内幕がわかったことやこれまでの放送によって、退屈に思えた初回の印象が大きく変わりました。

 第1話のレビューでは、「誘拐時のカヨたちのドタバタ劇も見ていられませんでした。ターゲットを間違える、車のエンジンがかからなくてピンチになるなど、素人でも考えられるようなどうしようもないトラブル続き」と酷評してしまいましたが、それぞれのキャラがわかった今では、初回の面白さが数倍増しに思えたのです。特にカヨと洋子のオッチョコチョイぶりは、第一印象では“テンポが悪い”でしたが、改めて見直すととてもユーモラスに感じられました。

 また、巧妙に散りばめられた細かなネタを挙げたらキリがなく、やはりクドカンは天才なのかなと。序盤レビューではサブカルネタのキレの悪さも指摘しましたが、それらすべてをひっくるめ、思いっきり手のひらを返して称賛したいと思います。

 次回でラストというのは寂しい限りですが、爆笑ヨーグルト姫事件の真相も気になるところ。果たしてどう決着がつくのか、放送が楽しみです。
(文=大羽鴨乃)

やはりクドカンは天才?『監獄のお姫さま』見事な伏線回収で、退屈だった第1話の輝きが増す!

“クドカン”こと人気脚本家・宮藤官九郎による復讐コメディードラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)の第9話が12日に放送され、平均視聴率8.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.6ポイントアップとなりました。

 まずは、これまでのあらすじを少し。2017年のクリスマス・イブ、元囚人の馬場カヨ(小泉今日子)、大門洋子(坂井真紀)、足立明美(森下愛子)、勝田千夏(菅野美穂)と元刑務官の若井ふたば(満島ひかり)の5人は、EDOミルク社・社長の板橋吾郎(伊勢谷友介)を誘拐。その背景には、6年前に起こった横田ユキ(雛形あきこ)殺害事件の罪を、当時婚約者だった“爆笑ヨーグルト姫”こと江戸川しのぶ(夏帆)に吾郎が押しつけたことを証言させ、再審請求しようという目的があったのです。

 その吾郎・監禁シーンと、カヨたちが出会い親密になっていく女子刑務所シーンとが行き交うカタチでドラマは展開。前回は、カヨたちが吾郎への復讐計画を着々と練るものの、犯行プランを記したノートがふたばに見つかり没収されてしまうアクシデントが発生しました。また、仲間たちの仮出所が続々と決まり、遂にはカヨも刑務所を去る時がきたところで終了となったのです。

 今回は、カヨが仮出所する15年11月時点からスタート。誰の迎えもなく、カヨは寂しさを抱えながら街へ行きます。そして、その足でスマホを購入。出所前に仲間たちに教えておいたアドレスbabakayo~を設定して連絡を待ちつつ、新しい生活を始めます。

 一方、刑務所では、しのぶに対して同情心が湧いたふたばが、しのぶの息子・勇介(前田虎徹)を面会に連れて来て欲しいとしのぶの母・民世(筒井真理子)に手紙を書きます。しかし、これを民世から聞きつけた吾郎が面会に訪れ、しのぶの罪を咎めて精神的に大きなショックを与えてしまうのです。

 やがて月日が流れ17年4月。カヨは刑務所で知り合った“小しゃぶ”こと小島悠里(猫背椿)が店長を務める美容室で働き、波風の立たない平穏な日々を送っています。つまり、吾郎・復讐計画のメンバーたちからは一向にメールがこないのです。そのためカヨは、復讐ノートを没収された際にふたばから言われた、「シャバに戻ったら(復讐なんて)みんな忘れるよ」という言葉を思い出し、寂しい気持ちを抱いてしまいます。

 そんなある日、店の前でチラシ配りをしていたカヨの前に、全身黒ずくめの女が登場。よく見るとそれはふたばなのですが、ふたばは一切口を利かず、髪の毛のカットが終わると嵐のように去って行ってしまいます。しかし、ふたばが座っていた椅子には、カヨたちの犯行プランを綿密なものに修正した復讐ノートと折り紙でつくった手裏剣が残されているのです。

 その手裏剣には住所が記されており、恐る恐るカヨが向かうと、そこには吾郎・復讐計画のメンバーの姿が。そして実は、カヨが間違えてbakakayo~とアドレス設定したためにメールが届かなかっただけで、出所後も皆、復讐プランを忘れてなかったことが発覚。カヨは涙を流してよろこびます。

 再会をよろこぶ一同の前にふたばが現れたところで復讐計画がスタート。準備段階や第1話で放送された勇介&吾郎の誘拐シーンがジャンプカットで流れ、現在のシーンに辿り着きます。

 その現在である17年12月25日のシーンでは、ふたばが裁判官役になり、爆笑ヨーグルト姫事件の再審請求に先立つプレ裁判を開始。殺人事件の真相を暴く大詰めを迎えたところで今回は終了となりました。

 さて感想ですが、今回は第1話の伏線回収、というよりも時系列的にはタネ明かしといった方が正しいのかもしれませんが、犯行に至った経緯やその経過などのディテールが一気に明かされた回となりました。そして、内幕がわかったことやこれまでの放送によって、退屈に思えた初回の印象が大きく変わりました。

 第1話のレビューでは、「誘拐時のカヨたちのドタバタ劇も見ていられませんでした。ターゲットを間違える、車のエンジンがかからなくてピンチになるなど、素人でも考えられるようなどうしようもないトラブル続き」と酷評してしまいましたが、それぞれのキャラがわかった今では、初回の面白さが数倍増しに思えたのです。特にカヨと洋子のオッチョコチョイぶりは、第一印象では“テンポが悪い”でしたが、改めて見直すととてもユーモラスに感じられました。

 また、巧妙に散りばめられた細かなネタを挙げたらキリがなく、やはりクドカンは天才なのかなと。序盤レビューではサブカルネタのキレの悪さも指摘しましたが、それらすべてをひっくるめ、思いっきり手のひらを返して称賛したいと思います。

 次回でラストというのは寂しい限りですが、爆笑ヨーグルト姫事件の真相も気になるところ。果たしてどう決着がつくのか、放送が楽しみです。
(文=大羽鴨乃)