『水曜日のダウンタウン』(TBS系)内でだけ、異様なブレイクを見せるクロちゃん(安田大サーカス)の新企画「モンスターハウス」。
いわゆる『テラスハウス』のパロディで、本家に出ていそうなキラキラした男女の中にクロちゃんが1匹混じるという恋愛リアリティショー風なこの企画、主演であるクロちゃんは大方の予想を裏切り、先月14日に放送された第3話では、同居する女子の1人と濃厚なキスに至るという確変を見せ、ネットを騒然とさせた。
もはや単なるパロディでは説明がつかないこの企画の妙な面白さにハマる人が急増している。
■どこでも口説きにかかるクロちゃんのたくましさ
第1話の放送は、カメラワークや選曲、ロケーションなど、本家(テラスハウス)と見紛うほど洒落た雰囲気にこだわっているものの、正直まだ何がしたいのかよくわからず、『水曜日~』のほかの企画と比べると、長い尺の割にダレた印象を受けた。
同じ日の直前に放送されたクロちゃん企画(クロちゃんのベッドの下、ギリ人も住める説)が安定の面白さだっただけに、余計にそう感じたのかもしれない。
もちろんクロちゃんらしさ溢れる見せ場はあった。
目隠しにヘッドホンで知覚を奪われたまま、なんの説明もなくドッキリ的に連れてこられ、そこで見知らぬ男女5人と共同生活をしろとの無茶振りに怯え戸惑ったのも束の間、女子の自己紹介にはしっかり相槌を打ち、自分の良さも何気にアピール、そして男子の自己紹介には、あからさまに無言を貫くという「らしさ」。
さらに全員の自己紹介が済んだ直後「彼氏彼女いるか、はっきり確認しといていいですか?」と、いの一番に身辺調査を開始する「らしさ」。
目隠しを外され、異様な企画に放り込まれたことがわかってから、わずか5分足らずで、目の前に居合わせた女性を落とすための行動を開始できるクロちゃんの環境適応力は尋常でなく、まるでマタギのよう。
その勢いのままにその週(第1話)の放送内で2人に好きだと告白する(そのうち1人は第3話目でキスした蘭ちゃん)。
よく、鳥の雛は卵から孵った時、目の前にいる生き物を親だと認識するというが、クロちゃんの場は、目隠しを外した時、目の前にいた人物(異性)を恋愛対象と認識するのだろう。
このようなクロちゃんの細かいゲスさで楽しませてくれはしたものの、前振りが大きなわりに大きな山場はなく、特にクロちゃん以外の住人同士での恋愛トークやデートシーンなどは『テラスハウス』をなぞるだけの無駄な時間に思えた。
■クロちゃんがうまくいってる居心地の悪さ
第2話も、しばらくは「ただの」テラスハウスのような時間が続いた。勢いに乗るクロちゃんはグラビアなどで活躍する女子を狙っており、ある日普通にデートをする。
クロちゃんが普通にデートをする、もはやパラレルワールドのような世界がそこに広がる。
その女子、莉音は他の2人の女性に比べ唯一クロちゃんを受け入れてくれているように感じられる。
夜景が見えるレストランでの食事中。
「いつさ、(私を)いいって思ってくれたの?」
「初めに会ったとき、かわいいなって思った」
「えーうれしい!」
2人のやりとりを見ていると、莉音がまんざらでもない感じに見えてくる。恥ずかしながら、実際の女性の心理的にこれがどうなのかはわからないが、少なくとも表面上は嫌そうではなく、前向きに楽しんでいるように見えた。
その後も、
「俺もっとデート誘ってく気だからね」
「莉音にはもっと喜んでもらわないといけないからさ」
「クロちゃんなんか、すごい響くこと言う」
「ほんとに莉音のこと守るね」
「ありがとう」「本当優しい!」
出会ったばかりで初デートで、なおかつ片方がクロちゃんとは思えない会話が垂れ流される。
莉音はそもそも、
「思ってたよりもそんな変な人じゃなかった」
「やばそうな人だって勝手に思ってたけど、会ってしゃべってみたら、全然優しい」
「ギャップ萌えかも、意外に普通の人なんだって」
と、デート前からすでにクロちゃんに肯定的だった。
その後もクロちゃんは、恋人がよくやる手のつなぎ方をしたり、ふいに莉音の頭をポンポンしたり、キス寸前まで顔を近づけたりと、フルスロットル。
しかも決して無理矢理ではなく、ペースは早いもののイケメンがやっていたら違和感ない程度にコトを進めていく。
VTRの途中、松本がワイプの中で「見方がわからん」と笑いながらも困っていたのが印象的だ。
クロちゃんの恋愛的なやりとりが成り立ってしまってるから、居心地が悪いのだろう。
単にキモがりつつ悲鳴を上げるだけの観覧客(ほぼ若い女性)に比べ、芸人的にどう面白がったらいいのかという気持ち悪さもあるだろう。だってやってることはある意味普通だし、いつまでも「気持ち悪い」だけでは引っ張らない。
そんな中、第2話で一番笑ったのは、そのクロちゃんがいない場面での会話だった。
■本家テラスハウスでは絶対に出てこない一言
後日、莉音は他の男性同居人との雑談の中で、クロちゃんとのデートについて聞かれ「なんか守るとか言ってくれて、心強いなって思った」と肯定しつつも、いつもと変わらぬ無邪気な笑顔で続けた。
「私の思い過ごしかも知れないんだけど、キスされそうになって、めっちゃ言いにくいんだけど、言っていいのかな……? なんか、口が臭くて」
爆笑するワイプの芸人たち。テーブルを叩きながら大喜びする浜田、天を仰ぐように仰け反る陣内智則。
この瞬間、この企画が初めて「始まった」気がした。
莉音の口は止まらない。
「なんか独特な、この世のものとは思えない……卵腐って放置したみたいな……」
世界に数多ある恋愛リアリティショーで、初めて出たであろう「口が臭い」というデートの感想。しかも腐敗臭。
このときの、得も言われぬ面白さはなんなのだろうか。
監視カメラのような世間の目に見張られ、鎖のような人間関係に縛られた我々が持て余す、どうしようもない欲。それを一切隠すことなくさらけ出し、欲望の海をザブザブと単身泳ぎまくる自由なクロちゃん。
罵詈雑言を一身に引き受け、その身を切り刻まれながらも血まみれで道を行く醜きダークヒーローを、いつのまにか羨んでいる自分に気づかされる。
しかし、どんなにがんばっても「見た目がおじさん」「口が臭い」で切り捨てられる悲しき面白さ。
「それでこそクロちゃん!」「クロちゃんここにあり!」的な奇妙なカタルシスを感じてしまう。
だから第3話の衝撃のキスシーン(相手は莉音ではなく蘭だが)も見ていて、変な感情になりつつも、クロちゃんがキス事後に1人になってからうわ言のように呟いた「忘れんなよ、忘れんなよ俺、キスしたよ、忘れんなよ」という言葉は、気持ち悪くも胸に響いてしまったし、どこか他人事として切り捨てられない妙な強さがあった。
例えその後に、女の子のグラスを舐め回していたとしても。
そしていよいよ今夜第4話のオンエア。
今やプレゼンテーターのたむらけんじが「モンスターハウス」と告げるだけで観客席がキャー! と湧くほど人気コーナーになっている。
人によりこの企画の味わい方は違うであろうが、何にせよ変な部分を刺激する企画であることには違いない。
今後、気になるのは、まだクロちゃんとしっかり絡んでいない奈良歩美というレースクイーンの女性。彼氏がいたことがないというわりに、性交渉的なことにハマっていた時期があるとか、不意に出会い系の男性と会ってきたと告白したりとか、底が深そう。
そして本日放送の4週目となる回では、いよいよ『水曜日の~』での地上波オンエア自体をモンスターハウスの住人全員で視聴したらしい。
果たしてクロちゃんの数々の「悪事」はどう受け止められるのか。放送を待ちたい。
(文=柿田太郎)