「18禁」の定義って? 夜は寝床でフウフウフウ、R-18同人誌を頒布する!

 同人誌と縁のない人ほど、「同人誌=漫画/ゲーム/アニメに出てくる可愛い子ちゃんがあんなことも!こんなことも!」な世界を想像するのかもしれない。しかし、R-18ではない同人誌は多い。「非R-18」の、ほのぼのであったり、胸キュンストーリーが展開される同人誌は、同人誌の世界を初めて知った当時の気持ちまでもが思い出され、しみじみといいものだ。だが今回、オフライン同人活動3年目の著者はR-18同人誌を出そうと考えている。しかしそもそもR-18の定義がはっきりわからなかったので、あらためて調べてみることにした。

 

■自分の描いた同人誌がR-18であるかどうかを、どうやって判断する?

 「非R-18」の同人誌もたくさんあるが、「R-18」の同人誌は無敵艦隊でもある。同人誌販社『とらのあな』で2018年4月19日付けの同人誌人気ランキングTOP10を見てみたところ、男性向けでは9作品が、女性向けでは6作品がR-18指定だった。

 なお、それらの表紙を見る限り、R-18といっても「暴力的・残酷な描写」の方ではなく「おしべとめしべがくんずほぐれつ」な方だ。よって、当原稿でも以降の「R-18」という記載は、おしべ+めしべ(時として、おしべだけだったり、めしべだけだったりする)と思って読んでもらえれば幸いだ。

 同人誌において、作品がR-18かどうかは作者が判断し、R-18ならば「R-18」の表記を、表紙の分かりやすい場所に入れなくてはいけない。しかしここで、あらためて「R-18」の定義とは何だろう。

 コミックマーケット(コミケ)に次ぐ多くの大規模イベントを全国各都市で開催する赤ブーブー通信社では、参加サークル向けのパンフレットで「成人向表現の留意点」について説明している。同資料から一部をまとめ、抜粋する。

・法令において「わいせつ描写」には明確な基準は設けられていない。何が「わいせつ」にあたるのかは「その時代の」健全な社会通念に照らして判断する。
・「商業誌の描写レベル」に準じるのが、同人活動にあたって法令順守のひとつの目安になるのではないか。(→「成人向け」の商業誌の表現に準じる)

 そして以下が特に感動したので、こちらは全文を引用する。

『表現の自由とわいせつの論争はこれまでも長く続けられ、また非常に重要な問題です。この議論を簡単に放棄することはできません。
 しかしそれだけに一度法令違反として検挙されれば、全国報道とともに刑の確定を待たずして「法令順守を開催の必須条件」とする同人誌即売会は、全ての即売会を巻き込んで、存続の危機を迎えます。
 参加するみなさん一人ひとりが、同人誌表現の一翼を担っているのです。ぜひこの機会にご自身の作品とともにこの問題についてお考え下さい』

 R-18の定義が明確でないのは、「そこに隙間を持たせていることへの意味を各々が感じ取り、ふさわしい対応してほしい」というあらわれだろう。これは相手を信頼した極めて大人っぽい物事の考え方であり、やはりR-18は中坊には100億年早いのだ。

 

■獠さんの勃起は我が家ではNGだった~私ともっこりの歴史~

 R-18の定義は世界を見ても「曖昧」だ。
 以前、日本のオタクグッズを世界中に展開する販社「Tokyo Otaku Mode」を取材した際も、日本のゲームでは当たり前のようによく見かける「ビキニの水着のようなコスチュームの女性キャラクター」に難色を示されたケースもあるなど、世界各国のエロ定義に驚いたことがある(記事参照)。

 また、日本国内とて、時代により雰囲気などあっさり変わる。私が幼少のころ、「週刊少年ジャンプ」(集英社)に掲載されていた漫画『シティーハンター』では獠さんが「もっこり」していたが、今、ジャンプで「脇役ではなく、主役の高頻度のもっこり」はいけるだろうか。ちなみに『シティーハンター』は夕飯の時間帯にテレビアニメにもなっていたが、我が家ではR-18指定番組で最初のころは見させてもらえなかった。なお、掲載誌を読んでいたのでこの対応は無意味だった。

「ジャンプ」は当時『ジャングルの王者ターちゃん』も連載中で、私は幼少のころ、漫画から男性器を今の小学生よりもはるかに見ていたと思う。しかし家のテレビで『シティーハンター』を見られなかった経験から、「勃起」はセンシティブでありタブーなのだと少女心に刷り込まれたものだ。

 そのため、これはもう私が成人してからだが、「まりもっこり」のキーホルダーが女子中高生に大人気で鞄や携帯につけていると聞いたときは仰天した。そして今、週刊少年ジャンプの兄貴的雑誌である「週刊ヤングジャンプ」(集英社)の掲載漫画『ゴールデンカムイ』で勃起が決め台詞の脇役・二瓶鉄造を見るたびに大喜びしているのが「私と勃起の半生のあゆみ」だ。

 勃起一つとっても、秋の空のように移ろいやすいのが分かる。

 

■小説の「R-18」って何だろう?

 私の書いている同人誌に戻る。先述の赤ブーブー通信社の 「成人向表現の留意点」では実際に「性行為や性器の描写」についての具体的も記載がされている(※時代によって移ろうことを考え、こちらの記載は控えたい)。私の書いているのは漫画でなく小説だが、この「描写」における細かさは、絵でも文章でもやったらアウトだよ、ということなのだろう。

 なお、小説投稿サイト『小説家になろう』でも、R-18のガイドラインとして以下が提示されている。

■性的感情を刺激する行為の直接的描写
■性描写全般
■残酷な行為の描写
■反倫理的な描写
■R18扱いの画像が使われている
■大衆向け辞典(広辞苑等)に掲載されていないアダルト用語が使用された作品
 こちらを見ても、やはり「行為の詳細な描写になれば、R-18にしてね」ということだろう。

■朝チュンはR-18でない理由が堂々と説明できる!

 ここまでで、「朝チュン」はR-18ではないことが堂々と胸を張って説明できるはずだ。言うまでもないが「朝チュン」とは、女性向け漫画で使われがちな表現方法であり、夜、男と女が寝室になだれ込み、ベッドの上で固く握り合った二人の手や皺のよったシーツだけの描写があり、ページをめくると、もう東の空は明るくなっており、スズメがさえずっているというアレだ。よって、男と女は、ベッドの上で一晩中腕相撲に勤しんでいたのかもしれないのだ。

 ターちゃんと獠さんの男性器をほぼ毎週「ジャンプ」で見て育っていたが、一方私は小学~高校のころ購入していた少女漫画雑誌は「りぼん」→「別冊マーガレット(別マ)」という、「集英社・清純派コース」だった。今の別マはハードコアなのかもしれないが、20世紀の別マは最終回の一回前でヒロインがようやくキスする程度で、いくえみ稜先生が女性の登場人物が浮気する漫画を描いた際は「いくえみ先生、攻めすぎ~!」と思ったくらいだ。

 しかし少女漫画誌でも、『快感(ハートマーク)フレーズ』を擁した小学館「Sho-Comi(私が読んでいたころの名称は少女コミック)」は結構エロ描写も攻めていて、姉のいる友達の家で篠原千絵先生の色っぽい漫画をワクワクしながら読んだものだ。「Sho-Comi」では「朝チュン」や「口にキスした次に首筋にキスする」くらいまで描かれていたものもあり、女子小学生の私は「くゥ~!」となっていたものだ。

「首筋にキス」→「朝チュン」の間の、通勤快速で飛ばしてしまった「→」こそがR-18の天守閣だ。埼京線で例えるなら、赤羽と武蔵浦和の間の戸田あたりが超絶エロであり、ここをバシッと描いているのがコンビニの成人指定漫画雑誌といえる。

 しかしエロの空気は水物で移ろいやすい。「朝チュンとはおぞましい。こんんなものは有害図書だ、一体どんな心の闇が朝チュンなんぞを描かせるのか、親の顔が見てみたい」という時代が来ないとも限らないのだ。

 

■結局私の同人誌はこうなった

 R-18について、上記の通り調べてきた。
「必要以上に及び腰にもならず、でも、同人文化の末端とはいえ当事者である以上、この愛すべき文化の妨げにならないよう忖度の上、エロ同人誌を作ろう」と青雲の志を抱きいざ鎌倉、とエロを書こうと思っていたのに、書いてみたらヤらずに終わった。「朝チュン」すら至らなかった。堂々と、胸を張って「非R-18」です! といえる仕上がりになった。

 ネット記事にありがちなタイトル詐欺かとご立腹の方にはおわび申し上げたいが、タイトルは「R-18同人誌を頒布する」で、「頒布した」ではないと言い訳したい。正しくは、「R-18同人誌を頒布する(つもりでいたけど、R-18じゃなくなった)!」だ。

 やはり「りぼん→別冊マーガレット」の清純派育ち。三つ子の魂百までだ。書かない方がかえってエロい、という戦略的撤退であったことも加えておきたい。

 

■妄想よりも、オフ同人誌にした方がいい理由

 最後に、5月に同人誌即売会イベントに出たので、毎回報告している同人誌頒布状況について報告したい(前回報告)。

【状況】
・2015年より同人誌A~Fを制作。全て二次創作の小説。「A」「B~D」「E,F」は原作が異なる
・ソロ活動(「同担」との交流はほぼない)
・オンラインはPixivのみ利用(個人サイトなし。TwitterもROMのみで利用)
・同人イベントは年に2回のペースで参加。イベント後通販も行う。
・A~Cは50部、Dは40部、E,Fは30部刷る(印刷所がくれる余部は含めない)

【前回、2018年2月の頒布冊数(同人誌A~Eまで)】
A 19冊
B 50冊(完売)
C 40冊
D 24冊
E 18冊
合計 151冊/220冊

【2018年5月の頒布冊数(同人誌A~Fまで)。イベント+通販分】
A 21冊(+2)
B 50冊(完売)
C 44冊(+4)
D 27冊(+3)
E 24冊(+6)
F  21冊(+21)
合計 186冊/250冊

 今回のR-18になり損ねた新刊Fは、今まで書いたどの同人誌よりも長期間妄想していた。毎晩妄想し、かなり妄想だけで仕上がっており、これなら数日でスラスラ書けるのではと思ったほどだ。

 しかし、実際書きだすといつも通り時間がかかった。妄想だと1→2→3→4→5となっていたはずの内容が、いざ書いてみると1→95→897くらいまで飛躍しているのだ。DVDで「次のチャプター」を3回押したくらい話が飛んでしまっている。「あれれ~、妄想のときはすごく完成されていたはずなのに、おかしいな~」と江戸川コナン君の口調になるのも「書いた時あるある」だ。

 これは、映画の予告編を見ると、どれも超絶名画に見えてしまうのと一緒だ。断片断片を出されると、勝手に脳内からゲル状の「すてき物質」が分泌され、断片の間を埋めてなんかいい感じに仕上げてくれるのだとしか思えない。しかし、妄想から実際形にしようとすると、「すてき物質」不在の戦いを強いられる。「えっ、あれもこれも自前で用意しないといけなかったのか!」と気づかされるのが、妄想を形にする苦しさであり楽しさでもある。

 もともと全ての同人作家が妄想出身であるはずだし、今も私にとって妄想は実家のような気楽な心のふるさとであることには変わりない。しかし今回、「長時間妄想しようがしまいが、同人誌を作る際は同じくらい時間がかかる」事実に愕然とし、妄想はほどほどにしようと思った次第だ。

 妄想は楽しいが、脳内の「すてき物質」不在で戦い抜いた成果である新刊は誇らしく愛しい。イベント当日、自スペースで印刷されたての新刊を「どれどれ」と開くときの充足感は、他の人生の局面ではなかなか得られないものだ。 今はオンラインで作品を発表する環境も充実しているが、やはりイベントで紙の同人誌を出すことが好きだと、出るたびにあらためて思う。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

★好評発売中!!
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』(CCCメディアハウス) 

「18禁」の定義って? 夜は寝床でフウフウフウ、R-18同人誌を頒布する!

 同人誌と縁のない人ほど、「同人誌=漫画/ゲーム/アニメに出てくる可愛い子ちゃんがあんなことも!こんなことも!」な世界を想像するのかもしれない。しかし、R-18ではない同人誌は多い。「非R-18」の、ほのぼのであったり、胸キュンストーリーが展開される同人誌は、同人誌の世界を初めて知った当時の気持ちまでもが思い出され、しみじみといいものだ。だが今回、オフライン同人活動3年目の著者はR-18同人誌を出そうと考えている。しかしそもそもR-18の定義がはっきりわからなかったので、あらためて調べてみることにした。

 

■自分の描いた同人誌がR-18であるかどうかを、どうやって判断する?

 「非R-18」の同人誌もたくさんあるが、「R-18」の同人誌は無敵艦隊でもある。同人誌販社『とらのあな』で2018年4月19日付けの同人誌人気ランキングTOP10を見てみたところ、男性向けでは9作品が、女性向けでは6作品がR-18指定だった。

 なお、それらの表紙を見る限り、R-18といっても「暴力的・残酷な描写」の方ではなく「おしべとめしべがくんずほぐれつ」な方だ。よって、当原稿でも以降の「R-18」という記載は、おしべ+めしべ(時として、おしべだけだったり、めしべだけだったりする)と思って読んでもらえれば幸いだ。

 同人誌において、作品がR-18かどうかは作者が判断し、R-18ならば「R-18」の表記を、表紙の分かりやすい場所に入れなくてはいけない。しかしここで、あらためて「R-18」の定義とは何だろう。

 コミックマーケット(コミケ)に次ぐ多くの大規模イベントを全国各都市で開催する赤ブーブー通信社では、参加サークル向けのパンフレットで「成人向表現の留意点」について説明している。同資料から一部をまとめ、抜粋する。

・法令において「わいせつ描写」には明確な基準は設けられていない。何が「わいせつ」にあたるのかは「その時代の」健全な社会通念に照らして判断する。
・「商業誌の描写レベル」に準じるのが、同人活動にあたって法令順守のひとつの目安になるのではないか。(→「成人向け」の商業誌の表現に準じる)

 そして以下が特に感動したので、こちらは全文を引用する。

『表現の自由とわいせつの論争はこれまでも長く続けられ、また非常に重要な問題です。この議論を簡単に放棄することはできません。
 しかしそれだけに一度法令違反として検挙されれば、全国報道とともに刑の確定を待たずして「法令順守を開催の必須条件」とする同人誌即売会は、全ての即売会を巻き込んで、存続の危機を迎えます。
 参加するみなさん一人ひとりが、同人誌表現の一翼を担っているのです。ぜひこの機会にご自身の作品とともにこの問題についてお考え下さい』

 R-18の定義が明確でないのは、「そこに隙間を持たせていることへの意味を各々が感じ取り、ふさわしい対応してほしい」というあらわれだろう。これは相手を信頼した極めて大人っぽい物事の考え方であり、やはりR-18は中坊には100億年早いのだ。

 

■獠さんの勃起は我が家ではNGだった~私ともっこりの歴史~

 R-18の定義は世界を見ても「曖昧」だ。
 以前、日本のオタクグッズを世界中に展開する販社「Tokyo Otaku Mode」を取材した際も、日本のゲームでは当たり前のようによく見かける「ビキニの水着のようなコスチュームの女性キャラクター」に難色を示されたケースもあるなど、世界各国のエロ定義に驚いたことがある(記事参照)。

 また、日本国内とて、時代により雰囲気などあっさり変わる。私が幼少のころ、「週刊少年ジャンプ」(集英社)に掲載されていた漫画『シティーハンター』では獠さんが「もっこり」していたが、今、ジャンプで「脇役ではなく、主役の高頻度のもっこり」はいけるだろうか。ちなみに『シティーハンター』は夕飯の時間帯にテレビアニメにもなっていたが、我が家ではR-18指定番組で最初のころは見させてもらえなかった。なお、掲載誌を読んでいたのでこの対応は無意味だった。

「ジャンプ」は当時『ジャングルの王者ターちゃん』も連載中で、私は幼少のころ、漫画から男性器を今の小学生よりもはるかに見ていたと思う。しかし家のテレビで『シティーハンター』を見られなかった経験から、「勃起」はセンシティブでありタブーなのだと少女心に刷り込まれたものだ。

 そのため、これはもう私が成人してからだが、「まりもっこり」のキーホルダーが女子中高生に大人気で鞄や携帯につけていると聞いたときは仰天した。そして今、週刊少年ジャンプの兄貴的雑誌である「週刊ヤングジャンプ」(集英社)の掲載漫画『ゴールデンカムイ』で勃起が決め台詞の脇役・二瓶鉄造を見るたびに大喜びしているのが「私と勃起の半生のあゆみ」だ。

 勃起一つとっても、秋の空のように移ろいやすいのが分かる。

 

■小説の「R-18」って何だろう?

 私の書いている同人誌に戻る。先述の赤ブーブー通信社の 「成人向表現の留意点」では実際に「性行為や性器の描写」についての具体的も記載がされている(※時代によって移ろうことを考え、こちらの記載は控えたい)。私の書いているのは漫画でなく小説だが、この「描写」における細かさは、絵でも文章でもやったらアウトだよ、ということなのだろう。

 なお、小説投稿サイト『小説家になろう』でも、R-18のガイドラインとして以下が提示されている。

■性的感情を刺激する行為の直接的描写
■性描写全般
■残酷な行為の描写
■反倫理的な描写
■R18扱いの画像が使われている
■大衆向け辞典(広辞苑等)に掲載されていないアダルト用語が使用された作品
 こちらを見ても、やはり「行為の詳細な描写になれば、R-18にしてね」ということだろう。

■朝チュンはR-18でない理由が堂々と説明できる!

 ここまでで、「朝チュン」はR-18ではないことが堂々と胸を張って説明できるはずだ。言うまでもないが「朝チュン」とは、女性向け漫画で使われがちな表現方法であり、夜、男と女が寝室になだれ込み、ベッドの上で固く握り合った二人の手や皺のよったシーツだけの描写があり、ページをめくると、もう東の空は明るくなっており、スズメがさえずっているというアレだ。よって、男と女は、ベッドの上で一晩中腕相撲に勤しんでいたのかもしれないのだ。

 ターちゃんと獠さんの男性器をほぼ毎週「ジャンプ」で見て育っていたが、一方私は小学~高校のころ購入していた少女漫画雑誌は「りぼん」→「別冊マーガレット(別マ)」という、「集英社・清純派コース」だった。今の別マはハードコアなのかもしれないが、20世紀の別マは最終回の一回前でヒロインがようやくキスする程度で、いくえみ稜先生が女性の登場人物が浮気する漫画を描いた際は「いくえみ先生、攻めすぎ~!」と思ったくらいだ。

 しかし少女漫画誌でも、『快感(ハートマーク)フレーズ』を擁した小学館「Sho-Comi(私が読んでいたころの名称は少女コミック)」は結構エロ描写も攻めていて、姉のいる友達の家で篠原千絵先生の色っぽい漫画をワクワクしながら読んだものだ。「Sho-Comi」では「朝チュン」や「口にキスした次に首筋にキスする」くらいまで描かれていたものもあり、女子小学生の私は「くゥ~!」となっていたものだ。

「首筋にキス」→「朝チュン」の間の、通勤快速で飛ばしてしまった「→」こそがR-18の天守閣だ。埼京線で例えるなら、赤羽と武蔵浦和の間の戸田あたりが超絶エロであり、ここをバシッと描いているのがコンビニの成人指定漫画雑誌といえる。

 しかしエロの空気は水物で移ろいやすい。「朝チュンとはおぞましい。こんんなものは有害図書だ、一体どんな心の闇が朝チュンなんぞを描かせるのか、親の顔が見てみたい」という時代が来ないとも限らないのだ。

 

■結局私の同人誌はこうなった

 R-18について、上記の通り調べてきた。
「必要以上に及び腰にもならず、でも、同人文化の末端とはいえ当事者である以上、この愛すべき文化の妨げにならないよう忖度の上、エロ同人誌を作ろう」と青雲の志を抱きいざ鎌倉、とエロを書こうと思っていたのに、書いてみたらヤらずに終わった。「朝チュン」すら至らなかった。堂々と、胸を張って「非R-18」です! といえる仕上がりになった。

 ネット記事にありがちなタイトル詐欺かとご立腹の方にはおわび申し上げたいが、タイトルは「R-18同人誌を頒布する」で、「頒布した」ではないと言い訳したい。正しくは、「R-18同人誌を頒布する(つもりでいたけど、R-18じゃなくなった)!」だ。

 やはり「りぼん→別冊マーガレット」の清純派育ち。三つ子の魂百までだ。書かない方がかえってエロい、という戦略的撤退であったことも加えておきたい。

 

■妄想よりも、オフ同人誌にした方がいい理由

 最後に、5月に同人誌即売会イベントに出たので、毎回報告している同人誌頒布状況について報告したい(前回報告)。

【状況】
・2015年より同人誌A~Fを制作。全て二次創作の小説。「A」「B~D」「E,F」は原作が異なる
・ソロ活動(「同担」との交流はほぼない)
・オンラインはPixivのみ利用(個人サイトなし。TwitterもROMのみで利用)
・同人イベントは年に2回のペースで参加。イベント後通販も行う。
・A~Cは50部、Dは40部、E,Fは30部刷る(印刷所がくれる余部は含めない)

【前回、2018年2月の頒布冊数(同人誌A~Eまで)】
A 19冊
B 50冊(完売)
C 40冊
D 24冊
E 18冊
合計 151冊/220冊

【2018年5月の頒布冊数(同人誌A~Fまで)。イベント+通販分】
A 21冊(+2)
B 50冊(完売)
C 44冊(+4)
D 27冊(+3)
E 24冊(+6)
F  21冊(+21)
合計 186冊/250冊

 今回のR-18になり損ねた新刊Fは、今まで書いたどの同人誌よりも長期間妄想していた。毎晩妄想し、かなり妄想だけで仕上がっており、これなら数日でスラスラ書けるのではと思ったほどだ。

 しかし、実際書きだすといつも通り時間がかかった。妄想だと1→2→3→4→5となっていたはずの内容が、いざ書いてみると1→95→897くらいまで飛躍しているのだ。DVDで「次のチャプター」を3回押したくらい話が飛んでしまっている。「あれれ~、妄想のときはすごく完成されていたはずなのに、おかしいな~」と江戸川コナン君の口調になるのも「書いた時あるある」だ。

 これは、映画の予告編を見ると、どれも超絶名画に見えてしまうのと一緒だ。断片断片を出されると、勝手に脳内からゲル状の「すてき物質」が分泌され、断片の間を埋めてなんかいい感じに仕上げてくれるのだとしか思えない。しかし、妄想から実際形にしようとすると、「すてき物質」不在の戦いを強いられる。「えっ、あれもこれも自前で用意しないといけなかったのか!」と気づかされるのが、妄想を形にする苦しさであり楽しさでもある。

 もともと全ての同人作家が妄想出身であるはずだし、今も私にとって妄想は実家のような気楽な心のふるさとであることには変わりない。しかし今回、「長時間妄想しようがしまいが、同人誌を作る際は同じくらい時間がかかる」事実に愕然とし、妄想はほどほどにしようと思った次第だ。

 妄想は楽しいが、脳内の「すてき物質」不在で戦い抜いた成果である新刊は誇らしく愛しい。イベント当日、自スペースで印刷されたての新刊を「どれどれ」と開くときの充足感は、他の人生の局面ではなかなか得られないものだ。 今はオンラインで作品を発表する環境も充実しているが、やはりイベントで紙の同人誌を出すことが好きだと、出るたびにあらためて思う。

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

◆石徹白未亜の過去記事はこちらから◆

★好評発売中!!
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』(CCCメディアハウス)