寝る前に発泡酒ロングで10本やっつける――やさぐれキャラでブレイク直前・納言の“狙わない”戦略

「神田の女はすぐ金券ショップに入るなあ!」

――タバコ。ライダースジャケット。そして、東京への罵詈雑言。薄幸のやさぐれキャラが観る者の心をつかみ、数々のネタ番組で爪痕を残している納言。いかにして不思議なバランスの男女コンビが生まれたのか。「取材されるのは2回目ぐらい」と語る2人を直撃した。

――事務所の入り口に活躍しているタレントさんのパネルが貼られてますよね。さっき見たら、納言さんも飾られてました。

安部 本当ですか? 初めて聞きました。

薄 えー! 知らなかった。うれしい……。

――最近、事務所の待遇変わりました?

安部 挨拶してくれる人の数が増えましたね。

薄 あるある。急に喋りかけられますわな。ダメ出しとかアドバイスももらえるようになりました。

――最近、ネタ番組見ると、ほとんど納言さん出てますもんね。大体のバラエティ番組は制覇したんじゃないですか?

薄 それは言い過ぎだな、言い過ぎ。

安部 まだ全然です。

薄 でも『エンタの神様』(日本テレビ系)やゴールデン帯の番組は特にありがたかったですね。次は『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ系)にも出たいな~。『ツギクル芸人グランプリ』のとき、カメラが現れて「出演決まりました」って封筒渡されたんですよ。『ENGEI』に出演がきまったときの演出と一緒で、「来た!」と思って開けたから、「なんだ、『ENGEI』じゃねーのか」みたいな(笑)。

安部 いや、嬉しかったですけどね!

――振り返ると、去年の『M-1グランプリ』の予選の最中から「納言が面白い」って聞くようになったんですよ。でも「納言」を検索してもなかなか情報がないから、どんな漫才なのか、想像をかき立てられてました。

薄 「納言」ってエゴサしづらいんですよね。下ネタばっか書いてる○○納言とかいうアカウント出てくるんで、そいつとそこにからむ人は100人ぐらいブロックしてます。私、バカみたいにエゴサするんで。

――他人の評価を気にするんですか? イメージと違いますね……。

薄 ツイッターも、5ちゃんねるのスレも全部見ますもん。褒められたいし、一般の人がお笑い語ってたりするのも面白いんで。ただ『M-1』のスレって基本酷評なんですけど。納言だったら「いつまでタバコ吸ってるんだ」「東京から出てけ」(笑)。

安部 それはそれで褒められてるでしょ。僕はライブのアンケートも見たくないタイプなんで……。いいことを書かれても悪いこと書かれても、それ見た後に飲むお酒の味は変わらないじゃないですか。僕らはこれでいいと思ってやってるから、いいんじゃない? と。

薄 『アメト――ク!』(テレビ朝日系)出たとき、安部ちゃん、童貞って紹介されたんですよ。それで納言を検索したら、下品な女が「安部は童貞」の話題で盛り上がってるわけ。テンション上がるでしょ?

安部 何が喜ばれているのかわからない。

薄 変なファンの女につかまらないか、心配ですねえ。一回やっちゃったら、とんでもない性狂いになるかもしれねーし。

安部 そもそも俺にファンがいないんで大丈夫です!

――童貞捨てたい願望はあります?

薄 その努力はしてないわな。

安部 女の子とつきあいたいから何かする、ということはないです。

薄 童貞捨てたくもないし、守りたくもないんでしょ?

安部 そうですね。流れで何かあったらいいなと。

薄 なんでワンチャンなんだよ! 一発目が流れって。

――別に童貞をネタにしたいわけでもないんですね。

安部 そうなんですよ。童貞って生きてきてそうなっただけで、別に面白くないじゃないですか。以前、『冗談手帖』(BSフジ)見てたら、鈴木おさむさんがやさしいズの佐伯さんに「童貞って言わないほうがいい。捨てたとき、相手が誰とか言わなくちゃいけなくなるから」ってアドバイスしてたんですよ。本当にその通りだなと思ってたら、『アメト――ク!』に出たとき、VTRで童貞って紹介されちゃって、あれって?

薄 「やさぐれの相方は27歳童貞」。もう隠すのムリだね!

――まだ納言さんの情報が少なくて、お互いのプロフィールから聞きたかったんです。安部さんはどうやって芸人になったんですか?

安部 最初は芸人さんに対して、「楽して稼げていいな」というくらいの印象だったんですよね。それが2008年の『M-1』で、オードリーさんが敗者復活であがってきて、「お笑いがカッコいいな」と初めて思ったんです。それでちょっとやってみたいなと思い、高校卒業後、東京アナウンス学院に2年間通いました。ほかの養成所も考えたんですけど、1年じゃどうにもならないだろうということで。その後に太田プロ、ですね。

薄 私は高校中退して、地元のサイゼリアでむちゃくちゃバイトしてたんですよ。店長より働いて、1人で店回してました。時間と金がありあまっていたんで、養成所入ろうかなーと。お笑いは好きだったので。

――誰が好きでした?

薄 憧れていたのは、海原やすよともこさん。

――お~。関東で珍しいですね!

薄 修学旅行中にホテルで漫才観て、「これすげー面白え!」ってなって。家帰ってからYouTubeでずっと見て、こうなりたいと思いましたね。それでワタナベコメディスクールに入ったら、そこの先生がヤマザキモータースさんで、頼んだら太田プロに入れてくれました。完全なコネです(笑)。

――それぞれ、お互いに別のコンビ組んで活動してたんですよね。当時の調子はどうだったんですか?

薄 どっちもすごい悪かったよな。

安部 全然でしたね。

薄 すとろんぐカラ~(安部の前のコンビ)のネタ、一個も覚えてないです。どうという印象もない。

安部 前のコンビでは、相方はしゃべくり漫才でツッコミしていたんですよ。

――そうなんですか!

薄 口の悪いツッコミやってました。

安部 一方、僕はボケだったんです。で、前のコンビを解散する前に、組もうという話を何人かとしてたら、どれもナシになっちゃって。その時、ツッコミが面白かったなと思って、声かけました。

薄 えー!? 何人目の女だったのよ、私? 気になる!

安部 女としては一人目です。あと前のコンビが普通の男コンビだったので、ヘンな人と組まないと売れないなと。

薄 でも組むのをOKする前から、私との架空のネタを作ってきて……。LINEで5ネタぐらい送られてきたんですよ。「これは組まなきゃ殺される」という恐怖を感じて、とりあえず組みました。

――ネタに惹かれたとか。

薄 いや、書いたネタは見てもいないです!

――納言を組んで最初にやったネタ覚えてます?

安部 「私、ラップやってみたいんだよ」みたいなやつですね……。

薄 でも全然できないみたいな。“すごい面白くない三四郎”さんみたいな感じでした。

――今つかみでやっている、タバコ吸ってやさぐれたこと言うスタイルは、いつできたんですか。

安部 組んで半年ぐらいでできましたね。

薄 だから最初に受けた『M-1』予選では、今と同じようなネタをやってたんですよ。そうしたらバカウケして。

安部 確かに「こんなにウケるの?」ってぐらいウケました。

薄 1回戦はテレビ局をディスってたのかな。で、2回戦から街をディスって。でもそこで落ちちゃったな?

安部 設定が「相方が風俗のスカウトにめっちゃ声をかけられる」だったんですよ。去年の『M-1』では、それをキャバクラのスカウトに変えて、準々決勝までいきました。

――ネタはほぼ同じなのに、1年で何か変化があったんですかね。

安部 風俗のネタが1発目にできたやつだったんですよ。同じスタイルのを作っていって、だんだんやり方がわかってきた……というのはあるかもしれないです。

薄 (ニヤついて)何か言ってますね!

安部 いや、だってそういうことを聞きたいんでしょ。

薄 頭よさそうなこと言うから! ネタ合わせでも何言ってるのか本当わからなくて。

――注文細かいんですか?

安部 そんなことはないですね。

薄 いや、細かい。頭で考えてんだよ。私は細かいことは考えないです。これ言ったら面白い、ぐらいで。

――その『M-1』、今年はどうですか。これだけ露出あると、ネタバレ怖くありません?

安部 ひとつだけテレビでやってないやつがあって……。

――隠してる?

安部 隠してます。

薄 隠してるのお? やっちゃおうよ!

安部 いやいやいや……。

薄 テレビでやったやつ、勝手にやればいいじゃない。

安部 どういうこと? 「勝手に」って。

――それにしても東京をディスるくだりは、ネタ番組を見てると、芸人ウケがすごいですよね。みんな大声出して笑っていて。

薄 ありがてーっす。

――ストックはあるんですか?

薄 結構作ってるんですけど、偏っちゃいますね。実際に住んでる高円寺についてはいっぱい知ってるんで。あと池袋は20ぐらいあるし。ほかの土地はねえ……。たとえば阿佐ヶ谷歩いてたら、本当に膝小僧汚い女が前から歩いてきたので、「どっかで言ったろう」となるんですけど。

――ああ、面白いフレーズ考えて、むりやり地名をハメてるわけじゃないんですね。安部さんが作ってるわけでもない?

安部 あそこは関与してないです。

薄 あれは安部ちゃんにはできないです。一回「なんか作って」って頼んだら、「自由が丘はいい街だなー」だって(笑)。

安部 いいじゃないですか! いつも悪く言ってるから、いいこと言おうと思って。

薄 お笑いなめんじゃねーぞ!

――「売れてきたな~」と思うことあります?

薄 ちょっと前、2人で酒飲んでたんすよ。「てけてけ」(関東中心の居酒屋チェーン)で。

安部 事務所にギャラ取りに来て、そのあとライブだったんです。4~5時間ぐらい空いてたから、「どうします?」「じゃあ飲むか」で。

薄 飲んでたら男がトコトコ寄って来て、「納言さんですよね? おごらせてください」……遠慮なく飲みました。

――コンビでサシで飲むんですか?

薄 めったにないですけどね。

――というか、ライブ前に飲んでていいんですか?

薄 大丈夫。逆にノドの調子がよいよい。最近、漫才中に痰が絡んじゃって全然声が出ないんですよ。でもビール飲むと痰が流れますから。いいことしかない!

――幸さんは結構飲みそうですね。

薄 はい。家だと、10本やっつけてからじゃないと寝れないんで。

――10本? 缶ビールを?

薄 ロング缶を。ビールじゃなくて発泡酒ですけどね。飲み放題行ったらキリがない。たまにチェイサー感覚でレモンサワー飲んでます。

――そんなに飲んで、仕事とばしません?

薄 これがないんですよ。めちゃくちゃ朝強いし、二日酔いもたまにあるぐらいなんで。記憶は全然飛ぶし、痣は毎晩できますけどね。後輩が言うには、「電柱に勝てるんだー!」とキックしていたらしくて、それで足首骨折とかはあります。

安部 でも仕事の集合時間にはちゃんと来るんで。まあ大丈夫かなと。

――ちゃんとしてるのか、してないのか、よく分からないですね。

薄 一回ぐらい仕事飛ばさないかぎり、この酒をやめることはないでしょうね!

――最後に、今後の目標を聞かせてください。

安部 ラジオやりたいです。オードリーさんに憧れてラジオ聞いてたのもありますし、深夜にぬるっと喋る感じがいいなと思うんで。あとは、楽しかったらいいです。

薄 私もそんな感じでお願いします! あっ、『M-1』の敗者復活戦には出たいです。

――あえて敗者復活を? そこから勝ち抜きたいんですか。

薄 そういうのはいいです。さみーとこでやりたいんですよ。寒い中、ライダース着てれば、一番優位に立てますから!

撮影/石田寛

納言(なごん)
薄幸(すすき・みゆき/ボケ)と安部紀克(あべ・よしかつ/ツッコミ)による太田プロ所属のお笑いコンビ。それぞれ別のコンビでの活動を経て、2017年に結成。「M-1グランプリ2018」では準々決勝まで駒を進めお笑いファンの間で話題となり、今年に入ってから『ネタパレ』(フジテレビ系)『有田ジェネレーション』(TBS系)など有力な番組に次々と出演し、注目を集める。2019の予選でも1回戦を全会場TOP2で通過するなど、その存在感を発揮している。なお、薄幸の芸名は、ビートたけしの命名によるもの。

 

寝る前に発泡酒ロングで10本やっつける――やさぐれキャラでブレイク直前・納言の“狙わない”戦略

「神田の女はすぐ金券ショップに入るなあ!」

――タバコ。ライダースジャケット。そして、東京への罵詈雑言。薄幸のやさぐれキャラが観る者の心をつかみ、数々のネタ番組で爪痕を残している納言。いかにして不思議なバランスの男女コンビが生まれたのか。「取材されるのは2回目ぐらい」と語る2人を直撃した。

――事務所の入り口に活躍しているタレントさんのパネルが貼られてますよね。さっき見たら、納言さんも飾られてました。

安部 本当ですか? 初めて聞きました。

薄 えー! 知らなかった。うれしい……。

――最近、事務所の待遇変わりました?

安部 挨拶してくれる人の数が増えましたね。

薄 あるある。急に喋りかけられますわな。ダメ出しとかアドバイスももらえるようになりました。

――最近、ネタ番組見ると、ほとんど納言さん出てますもんね。大体のバラエティ番組は制覇したんじゃないですか?

薄 それは言い過ぎだな、言い過ぎ。

安部 まだ全然です。

薄 でも『エンタの神様』(日本テレビ系)やゴールデン帯の番組は特にありがたかったですね。次は『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ系)にも出たいな~。『ツギクル芸人グランプリ』のとき、カメラが現れて「出演決まりました」って封筒渡されたんですよ。『ENGEI』に出演がきまったときの演出と一緒で、「来た!」と思って開けたから、「なんだ、『ENGEI』じゃねーのか」みたいな(笑)。

安部 いや、嬉しかったですけどね!

――振り返ると、去年の『M-1グランプリ』の予選の最中から「納言が面白い」って聞くようになったんですよ。でも「納言」を検索してもなかなか情報がないから、どんな漫才なのか、想像をかき立てられてました。

薄 「納言」ってエゴサしづらいんですよね。下ネタばっか書いてる○○納言とかいうアカウント出てくるんで、そいつとそこにからむ人は100人ぐらいブロックしてます。私、バカみたいにエゴサするんで。

――他人の評価を気にするんですか? イメージと違いますね……。

薄 ツイッターも、5ちゃんねるのスレも全部見ますもん。褒められたいし、一般の人がお笑い語ってたりするのも面白いんで。ただ『M-1』のスレって基本酷評なんですけど。納言だったら「いつまでタバコ吸ってるんだ」「東京から出てけ」(笑)。

安部 それはそれで褒められてるでしょ。僕はライブのアンケートも見たくないタイプなんで……。いいことを書かれても悪いこと書かれても、それ見た後に飲むお酒の味は変わらないじゃないですか。僕らはこれでいいと思ってやってるから、いいんじゃない? と。

薄 『アメト――ク!』(テレビ朝日系)出たとき、安部ちゃん、童貞って紹介されたんですよ。それで納言を検索したら、下品な女が「安部は童貞」の話題で盛り上がってるわけ。テンション上がるでしょ?

安部 何が喜ばれているのかわからない。

薄 変なファンの女につかまらないか、心配ですねえ。一回やっちゃったら、とんでもない性狂いになるかもしれねーし。

安部 そもそも俺にファンがいないんで大丈夫です!

――童貞捨てたい願望はあります?

薄 その努力はしてないわな。

安部 女の子とつきあいたいから何かする、ということはないです。

薄 童貞捨てたくもないし、守りたくもないんでしょ?

安部 そうですね。流れで何かあったらいいなと。

薄 なんでワンチャンなんだよ! 一発目が流れって。

――別に童貞をネタにしたいわけでもないんですね。

安部 そうなんですよ。童貞って生きてきてそうなっただけで、別に面白くないじゃないですか。以前、『冗談手帖』(BSフジ)見てたら、鈴木おさむさんがやさしいズの佐伯さんに「童貞って言わないほうがいい。捨てたとき、相手が誰とか言わなくちゃいけなくなるから」ってアドバイスしてたんですよ。本当にその通りだなと思ってたら、『アメト――ク!』に出たとき、VTRで童貞って紹介されちゃって、あれって?

薄 「やさぐれの相方は27歳童貞」。もう隠すのムリだね!

――まだ納言さんの情報が少なくて、お互いのプロフィールから聞きたかったんです。安部さんはどうやって芸人になったんですか?

安部 最初は芸人さんに対して、「楽して稼げていいな」というくらいの印象だったんですよね。それが2008年の『M-1』で、オードリーさんが敗者復活であがってきて、「お笑いがカッコいいな」と初めて思ったんです。それでちょっとやってみたいなと思い、高校卒業後、東京アナウンス学院に2年間通いました。ほかの養成所も考えたんですけど、1年じゃどうにもならないだろうということで。その後に太田プロ、ですね。

薄 私は高校中退して、地元のサイゼリアでむちゃくちゃバイトしてたんですよ。店長より働いて、1人で店回してました。時間と金がありあまっていたんで、養成所入ろうかなーと。お笑いは好きだったので。

――誰が好きでした?

薄 憧れていたのは、海原やすよともこさん。

――お~。関東で珍しいですね!

薄 修学旅行中にホテルで漫才観て、「これすげー面白え!」ってなって。家帰ってからYouTubeでずっと見て、こうなりたいと思いましたね。それでワタナベコメディスクールに入ったら、そこの先生がヤマザキモータースさんで、頼んだら太田プロに入れてくれました。完全なコネです(笑)。

――それぞれ、お互いに別のコンビ組んで活動してたんですよね。当時の調子はどうだったんですか?

薄 どっちもすごい悪かったよな。

安部 全然でしたね。

薄 すとろんぐカラ~(安部の前のコンビ)のネタ、一個も覚えてないです。どうという印象もない。

安部 前のコンビでは、相方はしゃべくり漫才でツッコミしていたんですよ。

――そうなんですか!

薄 口の悪いツッコミやってました。

安部 一方、僕はボケだったんです。で、前のコンビを解散する前に、組もうという話を何人かとしてたら、どれもナシになっちゃって。その時、ツッコミが面白かったなと思って、声かけました。

薄 えー!? 何人目の女だったのよ、私? 気になる!

安部 女としては一人目です。あと前のコンビが普通の男コンビだったので、ヘンな人と組まないと売れないなと。

薄 でも組むのをOKする前から、私との架空のネタを作ってきて……。LINEで5ネタぐらい送られてきたんですよ。「これは組まなきゃ殺される」という恐怖を感じて、とりあえず組みました。

――ネタに惹かれたとか。

薄 いや、書いたネタは見てもいないです!

――納言を組んで最初にやったネタ覚えてます?

安部 「私、ラップやってみたいんだよ」みたいなやつですね……。

薄 でも全然できないみたいな。“すごい面白くない三四郎”さんみたいな感じでした。

――今つかみでやっている、タバコ吸ってやさぐれたこと言うスタイルは、いつできたんですか。

安部 組んで半年ぐらいでできましたね。

薄 だから最初に受けた『M-1』予選では、今と同じようなネタをやってたんですよ。そうしたらバカウケして。

安部 確かに「こんなにウケるの?」ってぐらいウケました。

薄 1回戦はテレビ局をディスってたのかな。で、2回戦から街をディスって。でもそこで落ちちゃったな?

安部 設定が「相方が風俗のスカウトにめっちゃ声をかけられる」だったんですよ。去年の『M-1』では、それをキャバクラのスカウトに変えて、準々決勝までいきました。

――ネタはほぼ同じなのに、1年で何か変化があったんですかね。

安部 風俗のネタが1発目にできたやつだったんですよ。同じスタイルのを作っていって、だんだんやり方がわかってきた……というのはあるかもしれないです。

薄 (ニヤついて)何か言ってますね!

安部 いや、だってそういうことを聞きたいんでしょ。

薄 頭よさそうなこと言うから! ネタ合わせでも何言ってるのか本当わからなくて。

――注文細かいんですか?

安部 そんなことはないですね。

薄 いや、細かい。頭で考えてんだよ。私は細かいことは考えないです。これ言ったら面白い、ぐらいで。

――その『M-1』、今年はどうですか。これだけ露出あると、ネタバレ怖くありません?

安部 ひとつだけテレビでやってないやつがあって……。

――隠してる?

安部 隠してます。

薄 隠してるのお? やっちゃおうよ!

安部 いやいやいや……。

薄 テレビでやったやつ、勝手にやればいいじゃない。

安部 どういうこと? 「勝手に」って。

――それにしても東京をディスるくだりは、ネタ番組を見てると、芸人ウケがすごいですよね。みんな大声出して笑っていて。

薄 ありがてーっす。

――ストックはあるんですか?

薄 結構作ってるんですけど、偏っちゃいますね。実際に住んでる高円寺についてはいっぱい知ってるんで。あと池袋は20ぐらいあるし。ほかの土地はねえ……。たとえば阿佐ヶ谷歩いてたら、本当に膝小僧汚い女が前から歩いてきたので、「どっかで言ったろう」となるんですけど。

――ああ、面白いフレーズ考えて、むりやり地名をハメてるわけじゃないんですね。安部さんが作ってるわけでもない?

安部 あそこは関与してないです。

薄 あれは安部ちゃんにはできないです。一回「なんか作って」って頼んだら、「自由が丘はいい街だなー」だって(笑)。

安部 いいじゃないですか! いつも悪く言ってるから、いいこと言おうと思って。

薄 お笑いなめんじゃねーぞ!

――「売れてきたな~」と思うことあります?

薄 ちょっと前、2人で酒飲んでたんすよ。「てけてけ」(関東中心の居酒屋チェーン)で。

安部 事務所にギャラ取りに来て、そのあとライブだったんです。4~5時間ぐらい空いてたから、「どうします?」「じゃあ飲むか」で。

薄 飲んでたら男がトコトコ寄って来て、「納言さんですよね? おごらせてください」……遠慮なく飲みました。

――コンビでサシで飲むんですか?

薄 めったにないですけどね。

――というか、ライブ前に飲んでていいんですか?

薄 大丈夫。逆にノドの調子がよいよい。最近、漫才中に痰が絡んじゃって全然声が出ないんですよ。でもビール飲むと痰が流れますから。いいことしかない!

――幸さんは結構飲みそうですね。

薄 はい。家だと、10本やっつけてからじゃないと寝れないんで。

――10本? 缶ビールを?

薄 ロング缶を。ビールじゃなくて発泡酒ですけどね。飲み放題行ったらキリがない。たまにチェイサー感覚でレモンサワー飲んでます。

――そんなに飲んで、仕事とばしません?

薄 これがないんですよ。めちゃくちゃ朝強いし、二日酔いもたまにあるぐらいなんで。記憶は全然飛ぶし、痣は毎晩できますけどね。後輩が言うには、「電柱に勝てるんだー!」とキックしていたらしくて、それで足首骨折とかはあります。

安部 でも仕事の集合時間にはちゃんと来るんで。まあ大丈夫かなと。

――ちゃんとしてるのか、してないのか、よく分からないですね。

薄 一回ぐらい仕事飛ばさないかぎり、この酒をやめることはないでしょうね!

――最後に、今後の目標を聞かせてください。

安部 ラジオやりたいです。オードリーさんに憧れてラジオ聞いてたのもありますし、深夜にぬるっと喋る感じがいいなと思うんで。あとは、楽しかったらいいです。

薄 私もそんな感じでお願いします! あっ、『M-1』の敗者復活戦には出たいです。

――あえて敗者復活を? そこから勝ち抜きたいんですか。

薄 そういうのはいいです。さみーとこでやりたいんですよ。寒い中、ライダース着てれば、一番優位に立てますから!

撮影/石田寛

納言(なごん)
薄幸(すすき・みゆき/ボケ)と安部紀克(あべ・よしかつ/ツッコミ)による太田プロ所属のお笑いコンビ。それぞれ別のコンビでの活動を経て、2017年に結成。「M-1グランプリ2018」では準々決勝まで駒を進めお笑いファンの間で話題となり、今年に入ってから『ネタパレ』(フジテレビ系)『有田ジェネレーション』(TBS系)など有力な番組に次々と出演し、注目を集める。2019の予選でも1回戦を全会場TOP2で通過するなど、その存在感を発揮している。なお、薄幸の芸名は、ビートたけしの命名によるもの。

 

あのお笑い芸人に”黒い交際”疑惑! M−1決勝芸人や飲食系の中堅芸人らに証言

 吉本興業の芸人による闇営業騒動を発端に、今一度スポットがあたっている芸人と暴力団との関係。8月5日発売の「週刊ポスト」(小学館)では、2009年まで吉本興業に所属していた元コメディNo.1の前田五郎が、過去の闇営業について告白している。

「前田氏は1980年代には週に何度もヤクザからの仕事を受けていたと話しており、中には吉本公認の仕事もあったといいます。古くは吉本と山口組が密接な関係だった時期もあったわけで、当然といえば当然のことなのだと思います」(ベテラン芸能記者)

 吉本はここ数年、コンプライアンス講習を頻繁に開催するなど、芸人に対する教育に力を入れているが、以前はヤクザと交流を持つ芸人もいたという。

「副業で飲食店の経営や“雇われ店長”をしている中堅芸人などは、少なからず裏社会の人々と交流があるとも言われています。また、ちょっと前ならキャバクラや、風俗案内所なんかでバイトをする芸人もいて、そういった夜のお仕事方面から裏社会とつながるようになった芸人も多かったと聞きます」(お笑い業界関係者)

 テレビに出るような人気芸人が裏社会とつながっているケースもあるようだ。

「M−1決勝戦にも出ているとある芸人さんなんかは、最近でもヤクザにかわいがってもらっているようですよ。“半グレはすぐにいろいろバラしてしまうけど、ホンモノの人はそう簡単にべらべら喋ったりしない”とのことで、本人はむしろ安心しているなんて話も聞きます」(同)

 また、反社会的勢力のパーティーでの闇営業において仲介役となったカラテカ入江慎也はこんなことを話していたとの証言もある。

「入江さんはよく“仲良くしておくべきは警察とヤクザ”と話していたみたいですね。商売をやる人がよく口にする常套句ではありますが、人脈を武器にビジネスをしていた入江さんなので、良くも悪くも顔が広かったのでしょう」(同)

 表に出てこないだけで、芸人とヤクザとのつながりは決してなくならないものなのかもしれない。

あのお笑い芸人に”黒い交際”疑惑! M−1決勝芸人や飲食系の中堅芸人らに証言

 吉本興業の芸人による闇営業騒動を発端に、今一度スポットがあたっている芸人と暴力団との関係。8月5日発売の「週刊ポスト」(小学館)では、2009年まで吉本興業に所属していた元コメディNo.1の前田五郎が、過去の闇営業について告白している。

「前田氏は1980年代には週に何度もヤクザからの仕事を受けていたと話しており、中には吉本公認の仕事もあったといいます。古くは吉本と山口組が密接な関係だった時期もあったわけで、当然といえば当然のことなのだと思います」(ベテラン芸能記者)

 吉本はここ数年、コンプライアンス講習を頻繁に開催するなど、芸人に対する教育に力を入れているが、以前はヤクザと交流を持つ芸人もいたという。

「副業で飲食店の経営や“雇われ店長”をしている中堅芸人などは、少なからず裏社会の人々と交流があるとも言われています。また、ちょっと前ならキャバクラや、風俗案内所なんかでバイトをする芸人もいて、そういった夜のお仕事方面から裏社会とつながるようになった芸人も多かったと聞きます」(お笑い業界関係者)

 テレビに出るような人気芸人が裏社会とつながっているケースもあるようだ。

「M−1決勝戦にも出ているとある芸人さんなんかは、最近でもヤクザにかわいがってもらっているようですよ。“半グレはすぐにいろいろバラしてしまうけど、ホンモノの人はそう簡単にべらべら喋ったりしない”とのことで、本人はむしろ安心しているなんて話も聞きます」(同)

 また、反社会的勢力のパーティーでの闇営業において仲介役となったカラテカ入江慎也はこんなことを話していたとの証言もある。

「入江さんはよく“仲良くしておくべきは警察とヤクザ”と話していたみたいですね。商売をやる人がよく口にする常套句ではありますが、人脈を武器にビジネスをしていた入江さんなので、良くも悪くも顔が広かったのでしょう」(同)

 表に出てこないだけで、芸人とヤクザとのつながりは決してなくならないものなのかもしれない。

上沼恵美子、島田紳助への“復帰ラブコール”に業界騒然!「現場は頭を抱える……」

 昨年末の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)直後の動画配信番組で、後輩芸人から誹謗中傷を浴びたタレントの上沼恵美子が、2011年に芸能界を引退した島田紳助に芸能界復帰を促した。長年、テレビの世界から身を引いている紳助に、このタイミングで復帰を呼びかけたのはなぜか?

 上沼は13日放送の自身の冠番組『上沼・高田のクギズケ!』(読売テレビ)で、紳助と再三にわたって引退について話し合っていたことを告白。その上で、本格復帰はならずとも、自身の番組に対談形式での“復帰”を呼びかけて「よろしくお願いします」と頭を下げたのだ。

 2人は『M-1グランプリ』の創始者と審査員という間柄。10代から姉妹で漫才コンビを組んでいた上沼が当然、芸歴でも先輩にあたる。

「関西では“女帝”といわれる上沼さんが呼びかけた意味は大きい。これまで復帰を画策していた吉本の幹部以上のパワーがあるでしょうね」と分析するのは、お笑い関係者。

「もし、番組で対談が実現すれば話題にもなるし、当然『M-1』の話にもなる。そもそも、『M-1』の一件で上沼は被害者の立場ではあるが、良くも悪くも注目されたまま。紳助は週刊誌上で上沼へ直接謝罪する旨を表明していましたので、最終的にいい形で着地させるためには共演が必要だと考えたんでしょう」(同)

 一方で、中堅放送作家は「バラエティ番組において、我が強すぎる紳助を毛嫌いするスタッフや芸人が多かったのも、また事実。仮に今回の件で、再びテレビの世界に戻れば、頭を抱える者は多い」と危惧する。

 大御所タレントから投げられたボールに、紳助はどんな反応を示すのか?

上沼恵美子への暴言騒動で浮き彫りになった、芸人とマスコミにまかり通る「女性蔑視」

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 女性週刊誌の部数が堅調だ。中でも「女性セブン」(小学館)は時には「週刊文春」(文藝春秋)に次ぐ部数のときもあるらしい。確かにここ数年、一般週刊誌よりも真っ当な社会記事も多く、皇室スクープや芸能ネタも安定している。頑張れ! 女性週刊誌!

第440回(12/6〜12/11発売号より)
1位「上沼恵美子 『怒ってはいません…でも更年期おばはんは無礼やろ!』(「女性自身」12月25日号)
以下、アトランダムに
「赤川次郎 三毛猫ホームズが開く 明日への窓 第9回」(「女性自身」12月25日号)
「シリーズ人間 ロバート・キャンベル『20年間ずっと、彼は私の人生の杖でした』」(「女性自身」12月25日号)
「香取慎吾 4億! 稲垣吾郎も『不動産王になる!』(「女性セブン」12月20日号)
「米倉涼子 女王はスピーチで感涙…『チームの絆』に『自腹で合計100万円贈呈!』(「女性自身」12月25日号)

 大阪の女王・上沼恵美子をめぐり、とんでもない騒動が勃発している。12月2日放送の『M-1グランプリ2018』(テレビ朝日系)で審査員を務めた上沼に、とろサーモンの久保田かずのぶとスーパーマラドーナの武智正剛が「おばはんにはうんざり」「更年期障害かと思いますよね」といった暴言を放ったのだ。

 今週の「女性自身」はわざわざ大阪まで行って上沼本人を直撃しているのだから、この騒動の衝撃が窺い知れる。「自身」の直撃に上沼は応じて、こんなことを語っている。

「天下取ったらいいんですよ」「ダウンタウンのようになったら何言おうが失言になりませんからね」

 さすがの貫禄である。しかし、上沼もそして「自身」も触れていない本質がある。それが今回の発言は、決して上沼だけの問題ではなく、日本社会が持つ女性軽視、蔑視の表れではないかということだ。

 そもそも上沼も“ダウンタウンだったら許される“などと言っているが、いやいや、違うでしょ。しかも、そのダウンタウンの松本人志は今回の騒動を受け、『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、「彼らは勉強不足ですよね。上沼さんという人がどれだけの人か、本当にわかっていない」などと発言したが、これにも唖然。つまり、両者とも今回の問題が“下っ端”の人間が“大御所”に暴言を吐いたことを問題にしているだけだから。つまり久保田や武智がダウンタウンのような大物だったら問題なし、さらに下っ端でも暴言を向ける対象が大御所の上沼でなく、たとえば一般人だったらいいと言っているに等しい。

 今回の騒動を取り上げたワイドショーも同様だ。「上沼さんという大物に何を言う!」とか、「酒を飲んで愚痴を言うまではいいが、それをネットで晒すなんて非常識!」という論調ばかり。

 違うだろ。女性、特に更年期世代はもっと怒ったほうがいい。上沼じゃなくても、こんなことを言われたら(それが陰口でも)許せないでしょ。天下を取っても、こんな暴言を吐く男はダメ。大御所女性じゃなくて、女性全般に対しても、もちろんダメ。

 そもそも日本の芸人の世界は女性蔑視がまかり通っている世界でもある。今回、芸人たちも一斉に上沼に謝罪するような動きを見せているが、それは上沼が自分たちに直接影響を持つ大御所だから。なにしろ、上沼から名前の上がったダウンタウンの松本は女性蔑視発言の常連、最高峰だしね。

 しかし、今回の騒動を取り上げるメディアに、そうした視点はあまり見受けられない。今後、女性週刊誌におかれては、これを単なる芸能ネタではなく、日本社会の女性蔑視という視点でぜひ特集を組んでほしい。

 追記。「自身」の直撃に上沼は更年期について「私はもう63歳なので、ないです」などと答えてもいるのだが、いやいや、そういう問題でもないから(トホ)。

 今週の女性週刊誌はちょこちょこと面白い記事が多い(特に「自身」)。ということで2位以下、アトランダムに紹介したい。

 「自身」の赤川次郎による不定期連載「三毛猫ホームズが開く 明日への窓」。そのまっとうな目線、論考、フェミ的視線が素敵だと以前にも紹介したが、今回も素晴らしい。写真月刊誌「DAYS JAPAN」(デイズジャパン)の休刊を惜しみ、ジャーナリズムの必要性、大手メディアの問題に言及している。

「(戦争や企業の暴走の犠牲になっている人々の)悲惨な現実を見るのは私たちの子や孫の世代のためなのだ」と。

 赤川は、作家は政治的な発言をするべきではないとの考えを長らく持っていたが、しかし15年安保法制、安倍政権の暴走を見て、「あまりにも状況がひどすぎるので、黙っていられなくなった」(「すばる」15年8月号/集英社)として、政治的発言を積極的に行っている。もっと早くから赤川先生のこうした発言を聞きたかった。そして、この連載はぜひ書籍化してほしいと思う。

 もう1本、「自身」に骨太のルポが。「シリーズ人間」が取り上げたのが日本文学者でテレビコメンテーターのロバート・キャンベルだ。今年7月の自民党・杉田水脈議員のLGBT生産性発言を機に、20 年来の同性パートナーの存在を明かしたキャンベルだが、その生き様やLGBT、そして理解ある友人や家族について語っている。

「日本という社会は、LGBTをやんわり遠巻きに見ていて、表立っては公認しない」

 記事には「日本の社会全体が、キャンベルさんを取り巻く環境のようになれば、LGBTへの無知をさらす議員など、きっといなくなるだろう」と指摘もしている。必読のルポだと思う。

  「女性セブン」がジャニーズから独立した香取慎吾と稲垣吾郎が複数の不動産を所有していることを報じている。投資用らしく、なかなか優良物件揃いらしい。なにしろジャニーズ事務所も都内の超一等地不動産を買い漁っているから、古巣に学んだのか。「新しい地図」もなかなかしたたかである。

 米倉涼子主演『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日系)の打ち上げのビンゴ景品の豪華さを「自身」が報じている。出演者の提供した景品は小日向文世、叙々苑15万円分お食事券。高橋英樹、商品券30万円分。向井理、商品券15万円分プラス現金5万円。そして米倉は商品券25万円分を2つに、スタッフジャンバー代50万円で計100万円なり! 太っ腹とは思うが、筆者があるドラマの打ち上げに参加した際に、こんなことを耳打ちされた。打ち上げでは、下請けのADなどに商品が渡るようにするのが慣例だ、と。だから金持ちの俳優や幹部スタッフは当たっても名乗り出ないこともあるんだとか。今回の俳優陣の太っ腹エピソードをみて、ドラマの現場も、格差社会なんだとつくづく思った。

『M-1』翌日──“よしもと推されコンビ”ニューヨークの本音に迫る!

 今年も漫才の日本一を決める『M-1グランプリ2017』(ABC・テレビ朝日系列)が無事終了した。あまたの芸人が挑み、負けていく――この数年、「偏見」ネタで人気を博している若手・ニューヨークもその内の1組だ。

 東京国際フォーラムという破格の規模で開催される単独を控えた彼らへのインタビュー日は、なんと『M-1』の翌日。どうしても『M-1』の話をせざるを得ない。「俺たちみたいなタイプは、視聴者投票には向かない」と語る2人の大反省から始めよう。

――今日は単独ライブを控えてのインタビューなんですが、何しろ『M-1』が昨日でしたので(取材日は12月4日)、まずはその話から聞かせてください。ニューヨークは2年続けて準決勝敗退、敗者復活戦での順位が去年は12位(準決勝10位)、今年は8位(準決勝12位)でした。

屋敷 今年は去年よりは気負わずにやれたと思ったんですけど、やっぱり敗者復活から決勝上がるのはムズいっすね。ストレートに上がるより、もしかしたらムズいんじゃないかと。もう出たくないっす。しんどすぎる。

嶋佐 僕らみたいなタイプは、視聴者投票は難しいですね。

――ニューヨークは、コント「自衛隊なのにめっちゃ服好きな人」とか「売れてるバンドで作詞も作曲もしてないベーシストはただラッキーなだけ」とか、「偏見がスゴい」「悪意が強い」と言われるネタが特徴ですよね。やっぱりそれだと、お茶の間でウケるのは難しい、と?

屋敷 俺たちの中では、まだお茶の間でウケるほうのネタやったつもりやったんですけど、そんなこともなかったみたいで。でも去年より、知り合いの芸人から「敗者復活のネタ面白かったな」って言われるのは多かったです。決勝出てた、ゆにばーすの川瀬(名人)が「M-1の楽屋では、ニューヨークがダントツでウケてました」って、わざわざ連絡くれたりとか。僕らとしては正直そこまで手応えがなかったんで、「へー」って感じでした。

――川瀬名人は、『M-1』の公式サイトに掲載された決勝進出者のコメントで「吉本に激推しされているニューヨークはもういないので、マヂカルラブリーさんに勝てたらいい」と話してましたね。

屋敷 そうっすね。あいつソレ、ちょいちょい言うんですよ。俺らが推されてるって。

――推されてるんですか?

嶋佐 いや、別に……推されてるんですかね?

――知らないです(笑)。

嶋佐 なぜにあいつが、そこまで俺たちに楯突いてくるのか、わかんないんですよ(笑)。

屋敷 そもそも川瀬も、ほんまに俺たちが推されてるとは思ってないはずなんですよ。「ニューヨークばっか仕事もらってズルい」とか、別に思わんタイプだと思うんで。

――ニューヨークばっかり仕事もらってるんですか?

屋敷 売れてないのにルミネの出番入れてもらったり、知名度ある先輩と抱き合わせで営業行かせてもらってたりっていうのは、ほんまにありがたいですよ。僕らじゃなくてええ仕事をやらせてもらってるときは、すごい愛情を感じますけど、推されてる感じは別に……。

――推されてようが推されてなかろうが、賞レースは公平ですしね。今年は、苦節15年目のとろサーモンさんが優勝しました。決勝はご覧になりましたか?

嶋佐 僕は終わってすぐ飲み行っちゃって、まだ観れてないんです。天竺鼠の川原(克己)さんたちと、Twitterで「M-1グランプリ」で検索しながら飲んでました。

屋敷 いや、観ろや(笑)。

嶋佐 Twitterの声をめちゃめちゃ見てましたね。「あ、今ネタたぶん終わった!」「めっちゃ『つまんねぇ』って言われてる!」「点数発表された!」「◯◯が何点だって!」みたいな。逆に面白かったですよ。

――独特の楽しみ方ですね。

嶋佐 今日帰ったら、ちゃんと観ます。

――屋敷さんは?

屋敷 僕は、さらば青春の光の森田(哲矢)さんと、相席スタートの山添(寛)さんと観てました。とろサーモンさんの優勝が決まったときは、めちゃくちゃテンション上がりましたよ。3人で「うわー!」っていうてました。でも正直、マジで正直言うたら、俺らとしては和牛さんが優勝したほうが……。

――どういう意味ですか?

屋敷 完全に俺らの都合で言ったら、ですよ! 和牛さんが優勝してたら来年出ぇへん、とろサーモンさんは今年がラストイヤーだから出ぇへん、そしたら2枠空くじゃないですか。ツーアウト取れたのに、って思ってしまいました。でも久保田(かずのぶ)さんなんて特にめっちゃお世話になってるんで、普通にめちゃくちゃうれしかったです。

――ニューヨークは今8年目ですよね。結成15年以内という今のM-1の規定が続けば、あと7回は出られる計算になります。

屋敷 とろサーモンさんみたいに15年間ずっと準決勝止まりで、ギリギリいけへんのは、ほんまに地獄やと思うんで、初めて決勝行っていきなり優勝するのがいちばんいいんですけど、まぁ難しいですよね。

嶋佐 僕らは一昨年のメイプル超合金さんみたいに、出るだけでインパクト残すタイプじゃないんで、優勝しないと意味がない。

屋敷 和牛さんとか見とったら「どれだけ難しいねん!」って思います。あれでも優勝できんって、俺やったら気力が尽きて死んでまうな。

嶋佐 俺がマヂカルラブリーさんだったら、もう今日自殺してますよ。来年どんなにウケても、絶対決勝いくのしんどいでしょ。

――野田クリスタルさんは「ねえ大恥かいたんだけど」とツイートしてましたね……。

嶋佐 生放送中にツイートしてたのが、めっちゃ笑いましたね。

屋敷 でも、いいっすよね。マヂラブさんはおもろなると思うんですよ。ザ・パンチさんよりかは、おもろなると思う(笑)。「M-1でうまいこといかんのがおもろい」って、あの頃より視聴者も気づき始めてるじゃないですか。あそこまで言われたら、どんどんいじってもらえるでしょう。KOC最下位より全然いいと思います。

――そしてM-1終わってすぐですが、12月15日には単独ライブ『YASHIKIS’』が行われます。これまでの単独はルミネtheよしもとやなんばグランド花月だったのが、今回は国際フォーラムで、一気に会場の規模が大きくなりました。ニューヨークの単独はいつもチケットが売り切れますが、今回は売れ行きはどうですか?

屋敷 ルミネの満席よりもちょっと売れてるくらいの枚数なので、もっと売れてほしいですね。というか、「国際フォーラムで単独やる」って聞かされたのが、2カ月くらい前なんですよ。「急やな!」と。半年くらい前から決めときたいですよ、こんな規模。

嶋佐 「絶対埋まらないだろ」って思いましたね。

――自分たちが東京でどれくらい集客できるか、露呈することにもなりますね。内容はいつもの単独ライブ同様に、新ネタを下ろすものになるんですか?

嶋佐 ちょっと違って、最近全然やってない昔のネタとか、あんまり見せたことのないネタをいっぱいやろうと思ってます。今のところ「普通の単独です」みたいな雰囲気出してるんで、詐欺まがいみたいになっちゃってるんですけど。しょっちゅう見に来てくれたり、俺らのこと知ってくれてる人でも観たことないネタをやる予定です。

屋敷 あとは、これまではVTR(ネタの合間に挟まれる企画映像。これまでの単独では「逆ナン待ち」や「元カノに電話」といった企画を行なってきた)を俺らと作家さんとカメラ撮る人だけで作ってたのが、今回は『ゴッドタン』(テレビ東京系)や『水曜日のダウンタウン』(TBS系)を制作しているシオプロさんに作ってもらったんですよ。そういうガワをしっかりしました。ネタとVTR以外のところでも、お客さんに楽しんでもらえるような仕掛けを用意してます。

――ニューヨークは普段は年2回単独ライブをやってますが、単独は2人にとってはどういう意味がありますか?

嶋佐 本当に冷静に考えると、特にメリットはないんですよね……なんなんですかね。いくら単独やっても、別に売れないですし。

屋敷 まぁ、言ったらネタを作る場ですよね。結局単独とかがないと、ネタ作るのサボってまうんで。最近は特に「このネタ、単独でしかできひんやんけ」っていうのは、できるだけないようにしてます。8本ネタ作ったら、全部別のところでも使えるネタやったらええな、と。

――実際、敗者復活でやっていたネタは今年の単独ライブで披露したネタでしたね。実は何度か単独にも行っていて、『オールナイトニッポン0』(2016年4月~17年3月、毎週金曜パーソナリティを担当)も毎週聴いてたんです。なので普通にファンなんですけど、同時に「あっ、この人たち、女性をすごいバカにしてるな……」って思う時が、結構よくありまして(笑)。

屋敷 ほんまっすか! いや、全然そんなことない!

――たいへん失礼ながら、ホモソーシャルというか、「女ってこんなもんだろ」みたいな感じを受けることが……。もちろん、そういう「偏見」がニューヨークの持ち味なので面白いんですが、同時に「出るとこ出たら怒られそうだな」って勝手に心配してました。

屋敷 でも結局僕ら、いかつい怒られ方したことないんですよ。ほんまの炎上とかしたことないですし。僕らの知名度がまだまだなんで、「所詮俺らの言うことなんて誰も聞いてないやろ」みたいなところがあります。

嶋佐 確かに。テレビでネタやらせてもらうときにも、見ようによってはそういうふうに捉えられるネタとかもやってましたけど、別になんも怒られたことないから、そのままですね。

――もっと売れて知名度が上がったら、そういうネタはやりにくくなるってことはないですか?

嶋佐 なおさら、もっとやりたいっすね。

屋敷 そうなんすよ。それで売れて、そういうのをやるのが当たり前と思ってもらって、いっぱいできるようになったらいいですよね。あとそもそも、別に俺らが偏見めっちゃ言いたいとか、危険なこと言いたいわけじゃないんですよ。それが面白いと思ってるだけで、「世の中変えたい」とか思ってないんで。2人とも思ってないようなこと言ってたり、自分たちで言いながら「それは言いすぎやろ」って思ってる時もありますし。お客さんがツッコんでくれ、っていう。なんも悪口ないネタもありますしね。でも、敗者復活のネタも、そのつもりだったけど、あとでTwitterで「女性に暴力をふるう男が不快」とか「昔そういう男おったから、すごい嫌な気持ちになった」とか言ってる人がいて、「そんな角度から観てんねや」ってびっくりしました。

嶋佐 そういうのは正直めんどくさいっすけど、気にせずにやっていきたいですね。

屋敷 賞レースは、それをいかに“面白オブラート”で包むか、ですね。

嶋佐 オブラート仕様にしても、今回はダメでしたけどね。単独ライブは比較的いい意味でも悪い意味でも荒削りな、オブラートで包んでないネタを披露させてもらいますんで、それを見に来てほしいです。本当は今回の国際フォーラムは、M-1決勝上がってウケて、その流れで満席にできたらよかったんですけど。1,500人キャパなので、どうにか1,000人くらいは入ってほしいです。

屋敷 1,000人なー。1,000人入れたいなぁ……。

(取材・文=斎藤岬/撮影=尾藤能暢)

●ニューヨーク
嶋佐和也(1986年生まれ、山梨県出身)と屋敷裕政(1986年生まれ、三重県出身)のコンビ。2010年結成。THE MANZAI2014認定漫才師。『ラフターナイト』(TBSラジオ)第1回グランドチャンピオン。

●ライブ情報
ニューヨーク単独ライブ「YASHIKIS’」
日時:12月15日(金)18:15開場 19:00開演
会場:東京国際フォーラム ホールC
料金:前売3000円、当日3500円 
チケットよしもと、チケットぴあ、ローソンチケットにて発売中

 

『M-1』決勝最下位マヂカルラブリーのブレークを期待するバラエティー界 ゆにばーす川瀬の「痛さ」にも注目

 とろサーモンの優勝で幕を閉じた『M-1グランプリ2017』(テレビ朝日系)。とろサーモンには番組出演オファーが殺到しているというが、その一方で意外と業界内評価が高いのが、最下位となってしまったマヂカルラブリーだという。

「芸人仲間の間では、結成当時から才能があるコンビとして、一目置かれる存在でした。クレイジーな雰囲気の野田クリスタルは天才肌ではありますが、素顔は常識人。メディアへの出演が増えれば、フリートークもいけるオールマイティー型の芸人になるといわれています」(放送作家)

 そんなマヂカルラブリーを起用したいと考えていたバラエティー番組のスタッフは、少なくなかったようだ。

「面白さは申し分なくても、知名度とバラエティー経験値が足りないということで、出演機会を逃していたようですね。でも、今回のM-1で上沼恵美子さんに酷評され、最下位になったことは、むしろ好材料だと思いますよ。バラエティーで彼らをイジる口実ができたわけで、かなり使いやすくなった。来年はブレークするかもしれないですね。どうしてもネタではボケの野田クリスタルのインパクトが大きいですが、実はツッコミの村上のほうが“クズ芸人”としていろいろイジるポイントが多い。そのあたりをバラエティーでピックアップできれば、かなり強いはずです」(同)

 バラエティー番組の“イジられ要員”として期待されるのは、マヂカルラブリーだけではない。今回のM-1グランプリで8位だった「ゆにばーす」のツッコミ担当・川瀬名人もその1人だという。

「ゆにばーすは、ボケのはらのほうがルックス的にも印象に残りますが、実は川瀬名人のほうがイジりがいがあります。川瀬は、とにかく“痛い”んですよ。ものすごくとがっていて自意識過剰。イジられると露骨に嫌な顔をしたりもする。でも、そういう芸人こそ、痛さをイジってもらえれば、かなり面白くなる。たとえば、コロコロチキチキペッパーズのナダルも同じタイプで、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)でも思い切りイジられている。イジられ役としての川瀬はかなりのポテンシャルを秘めていると思います」(お笑い関係者)

 今年のM-1グランプリで、あまりインパクトを残すことができなかった「カミナリ」と「さや香」についてはどうだろうか?

「カミナリはすでに売れっ子ですし、このままいい感じでいくと思います。所属するグレープカンパニーも業界内では仕事がしやすい事務所として評判もいいですしね。さや香については、まだまだ未知数。しかも、現在は大阪に拠点を置いているので、すぐに売れるという感じでもないでしょう。大阪で売れる前に上京してしまったほうが、売れる可能性は高くなると思いますけどね」(同)

 勝者ばかりが賞レースではない。M-1グランプリ敗者たちの活躍に期待したい。

『M-1グランプリ』直後のGYAO!生配信が“神番組”すぎた! 漫才師たちの「敗者の弁」を振り返る

 芸人のカッコよさを、改めて思い知らされる今年の『M-1グランプリ』だった。最終決戦に残った3組は、いずれ劣らぬ戦いを見せてくれた。

 3回戦から最終決戦まで、すべて違うネタで挑んだ和牛には、あ然とさせられたし、2015年の敗者復活戦で、トレンディエンジェルに本選出場→優勝までかっさらわれたとろサーモンが、最終決戦で同じネタをブッコんできたのには底知れぬ執念を感じた。千鳥をして「天才」「吉本の屋台骨になる」といわしめる結成わずか5年のミキにとっても、これ以上なく鮮やかなメジャーデビューの舞台となった。

 最終決戦の結果については、さまざまな意見があると思う。筆者も、3組が終了した時点では和牛の優勝は固いと感じた。

 それでも、感極まる審査員の大御所たちの姿と、何よりとろサーモンの破顔した表情を見ていると、自然と「おめでとう、久保田……」と、思わず目頭が熱くなった。そしてなぜか、「ありがとう、村田……」と思った。久保田をここまで連れてきてくれてありがとう……どういう立場での感情なのかは、自分でもよくわからないが。

 本戦の詳細についてはネット上に山ほど記事が上がっているので、ここでは今回放送後にネットで生配信された特別番組について振り返ってみたい。これが、すこぶるよかったのだ。

 

■放送直後にGYAO!で1時間

 

 放送直後からGYAO!で始まったのが『世界最速ファイナリスト全員集合スペシャル賞金1000万円贈呈式もあるよ~』。

 昨年、一昨年の王者である銀シャリとトレンディエンジェルを招き、陣内智則の仕切りで“敗者の弁”を引き出すという企画だ。芸人たちにとっては酷な企画だが、さらに酷なことに、座る場所は「順位順」だという。

 これにすぐさま反応したのが、和牛・水田だった。

「しんどいしんどいしんどーい!」

 大きな身振り手振りで、笑いを取る。最終決戦の結果発表直後、世界が終わったかのような無表情で立ち尽くしていた水田が、芸人魂を振り絞っている。声が出ている。笑いながら、もう泣けてきてしまう。

「紹介しましょう! とろサーモンに負けて優勝を逃した人たちでーす」

 陣内の軽薄なMCが、逆に湿っぽさと緊張感を取り払ってくれる。一斉にツッコミが入る。楽しい。

 ゆにばーす・川瀬は「西に爆弾仕掛けたいです」と不機嫌な顔を作る。キャラクターをまっとうしているが、とろサーモンの優勝が決まった瞬間に、柄にもなく大喜びしていた姿がテレビカメラに抜かれていたことには、まだ気づいていないのだろう。

 この番組どこまで酷なのか、敗退した9組は「なぜ負けたのか」を漢字一文字で表すことを命じられる。1組ずつ、芸人たちは自ら本音を明かしていく。

 

■10位・マヂカルラブリー「全」

 

「すべて」。村上が、ドドン! と色紙をかざす。フリップではなく普通の色紙なのも、いかにもネット配信っぽい。

 マヂカルラブリーにとっては、つらい『M-1』になった。野田は「エゴサーチしたくない」と語り、村上も「(芸人を)辞めようと思った」と言う。準決勝ではドハマリした「野田ミュージカル」が本戦でハマらず、審査員の上沼恵美子から存外に厳しい言葉を投げかけられた。

 トレンディエンジェル・たかしはマヂカルラブリーの優勝を予想していたという。陣内が「野田は天才なんちゃうか、という空気だけは出ていた」とフォローすると、「空気だけ?」と絶妙な間と表情で返してみせた。

■9位・カミナリ「同」

 

「おなじ」。たくみが、「変えたつもりでいたけど、結果同じだった」と、これも上沼のダメ出しを受けての無難なコメントを出したが、これに納得がいかなかったのが、ほかならぬ相方のまなぶだった。

「そんなことない。同じって言いましたけど、ネタの構成は進化していました。後半畳みかけて叩くところとか、リズム感がよくて、すごくよかったと思うんで、全然同じではないです。本当に」

 昨年のセンセーショナルな登場以降、お茶の間にもすっかり浸透したカミナリだが、まなぶが見たこともない表情でネタについて語る姿は、いかにも新鮮だ。

 まなぶは「同」ではなく「謎」だと言うが、これが和牛とかぶってしまうハプニングが発覚するころには、すっかりいつものまなぶに戻っていた。

 

■8位・さや香「噛」

 

「かむ」。ネタの序盤、ツッコミの新山が甘噛みしたことで、確かにリズムが狂ったのだろう。本戦でもウケはよかったが、さや香のこのネタの爆発力はこんなものではなかったはずだ。ある意味で、今回の直前のクジ引きでネタ順を決める「笑神籤(えみくじ)」システムは、結成3年で場数の少ないさや香にとって、もっとも不利に働いたかもしれない。

 29歳のボケの石井は「僕のプレイは100点でした。こいつ(新山)は62点でした。敗因はそれです」ときっぱり。憮然とした表情で「仲良くやっていこうと思ってたのに」と声を絞り出す新山の姿に、ほんの一瞬だけ会場の空気が凍る。本戦直後、感情が高ぶる中でのスリリングなシーンだった。

 

■7位・ゆにばーす「死」

 

 ゆにばーすは、ネタ順的に不利といわれる1番手を引いた。それに関して、川瀬は「それはいいですわ」と潔い。それよりも、敗者コメントのシーンで「はらさん殺してまで滑らしてしまったのが」と相方を思いやった。

 去年、今年と、この敗者コメントで輝いたカミナリ・たくみが口を挟む。

「あそこでウケねえと、TVスターにはなれねえから!」

 説得力のある言葉に、川瀬は「やっぱり漫才師として生きていかなあかんなと」と持ち味を見せた。

 

■6位・ジャルジャル「浜」

 

 この配信のハイライトとなったのが、ジャルジャルだった。「浜」が意味するのは、2日前にダウンタウン・浜田とロケをし、ネクタイとシャツとベルトを浜田に選んでもらったのだという。だから、敗因は浜田だと。

 浜田とロケをしていることからもわかるように、ジャルジャルは今や、正真正銘のTVスターだ。そんな忙しいタレント活動の合間を縫って、ジャルジャルは『M-1』に懸けてきた。誰も見たことのない、もはや漫才なのか何なのかもわからない、ただ楽しくて、抜群に笑える4分間を作り、松本人志は自身最高の「95点」を与えた。

 総合得点が出た瞬間、ジャルジャルの敗退が決まった。福徳はまるでKO勝ち寸前でカウンターパンチをもらったボクサーのようにうなだれ、悔しさを隠そうとしなかった。審査員を相手にボケた後藤に「ようボケれんなこの状況で、お前……」と、テレビカメラの前に立つ芸人とは思えない本音を生放送に乗せた。

「悔しかったんです……」

 福徳は、泣き出してしまう。涙が止まらなくなってしまう。もう、声にならない。銀シャリ・橋本の「それ準優勝の泣き方やん! 6位やん!」というツッコミが冴えた。

 

■同率4位・スーパーマラドーナ「改」

 

「なんで今年から、敗者復活が最後ちゃうねんっていう……」

 武智のこの言葉も、また本音だろう。今年から採用された「笑御籤」によって、前回まではトリだった敗者復活枠が、ランダムになってしまった。勢い、風、そういったものを味方につけて優勝をさらったのが、目の前にいるトレンディエンジェルだろう。

 2位に10万票の差をつける圧倒的な強さで敗者復活を勝ち抜いたスーパーマラドーナ。武智は「入れてくれた人に申し訳ない」と語る。

「俺が一番M-1のこと思ってるからな!」

 本戦中、何度も繰り返した武智の叫び。ジャルジャルとともに、スーパーマラドーナは来年、15年目のラストイヤーを迎える。田中もなんか言ってた。

 

■同率4位・かまいたち「小」

 

「小朝師匠が厳しすぎた」

『キングオブコント』との2冠が期待されたかまいたち。オール巨人と中川家・礼二が最高得点を付けるなど本領を発揮した一方で、春風亭小朝からは「勝ちきるネタではない」とバッサリ。

「審査員が小朝師匠じゃなかったら?」と水を向けて煽る陣内に、「なんか思ってるわけじゃないですよ」と慌てる濱家。「M-1と対を成すキングオブコントのチャンピオンから言わせてもらうと、非常にいい大会だった。バッチリです」と、山内がオチを付ける。

 この“上から目線”に加え、本戦中にはにゃんこスターいじりもあり、大会を盛り上げた立役者のひとりに違いない。

 

■3位・ミキ「白」

 

 ネタ中の昴生の唇が白すぎた、と亜生。伝統的なしゃべくり漫才を繰り出す兄弟コンビは関西での評価は高いが、一方でこうした平場では、まだまだ弱さを見せる。

 本戦の審査でも「もう少し大きな展開もほしい」(礼二)、「全然おもしろくないネタもある」(松本)、「もうちょっと弟さんのボケが、シャープなのが入ってたら」(博多大吉)と、言葉だけで見れば苦言が続いた。それでも、本戦2位の650点を叩き出す圧倒的なテンポ、テンション、技術。審査員たちの苦言は、逆を返せばこのコンビの“ノビシロ”の大きさを示している。

 そして何より、彼らのラストイヤーまで『M-1』が続くとするなら、この先10年にわたって出場権利があるのだ。末恐ろしい限りである。

 

■2位・和牛「鮭」

 

 カミナリとの「謎」かぶりで「鮭」と書き直した和牛。そのまま、とろサーモンの意味である。

「なんで負けたんか、わかんないすもん」

 和牛の頭脳・水田は戸惑いを隠さない。

「とろサーモンさんさえいなかったら優勝やったなと。去年は銀シャリさんさえいなかったら優勝やったし」

 2年連続で準優勝となった和牛は、今大会も、もちろん来年も大本命として4,000組の漫才師からターゲットにされる立場だ。

 昨年、キャラと動きで凄味を見せつけた和牛は、今年は目いっぱい頭を使って構成を練り上げ、新たな地表に立った。

 最終決戦の審査、とろサーモンのパネルがめくられていくのを見ながら、水田は一枚ずつ「く・そ・が」と思ったと闘志を隠さない。来年は、いったいどんな進化を見せてくれるのだろうか。

 その後、優勝会見を終えたとろサーモンも現れ、優勝賞金の授与式などが行われた。500万円ずつの生々しい札束を手にする2人を見ながら、やっぱり「久保田、おめでとう。そして村田、ありがとう」と思った。

 

■その後、SUNTORY提供で1時間

 

 この生配信のあと、10組は千鳥が待つ居酒屋に場所を移して、SUNTORYが提供する“公開打ち上げ”も行われ、この様子も生配信された。

『M-1』2年連続最下位という苦杯を舐めた千鳥が後輩たちに向ける目線の温かさ、そして、base時代の盟友・とろサーモンと共に「W(「女芸人No.1決定戦 THE W」)にはアジアンも残ってる、中山功太も引き上げたい」と話し合う姿に、また涙腺が緩んだ。

(文=新越谷ノリヲ)

『M-1グランプリ』直後のGYAO!生配信が“神番組”すぎた! 漫才師たちの「敗者の弁」を振り返る

 芸人のカッコよさを、改めて思い知らされる今年の『M-1グランプリ』だった。最終決戦に残った3組は、いずれ劣らぬ戦いを見せてくれた。

 3回戦から最終決戦まで、すべて違うネタで挑んだ和牛には、あ然とさせられたし、2015年の敗者復活戦で、トレンディエンジェルに本選出場→優勝までかっさらわれたとろサーモンが、最終決戦で同じネタをブッコんできたのには底知れぬ執念を感じた。千鳥をして「天才」「吉本の屋台骨になる」といわしめる結成わずか5年のミキにとっても、これ以上なく鮮やかなメジャーデビューの舞台となった。

 最終決戦の結果については、さまざまな意見があると思う。筆者も、3組が終了した時点では和牛の優勝は固いと感じた。

 それでも、感極まる審査員の大御所たちの姿と、何よりとろサーモンの破顔した表情を見ていると、自然と「おめでとう、久保田……」と、思わず目頭が熱くなった。そしてなぜか、「ありがとう、村田……」と思った。久保田をここまで連れてきてくれてありがとう……どういう立場での感情なのかは、自分でもよくわからないが。

 本戦の詳細についてはネット上に山ほど記事が上がっているので、ここでは今回放送後にネットで生配信された特別番組について振り返ってみたい。これが、すこぶるよかったのだ。

 

■放送直後にGYAO!で1時間

 

 放送直後からGYAO!で始まったのが『世界最速ファイナリスト全員集合スペシャル賞金1000万円贈呈式もあるよ~』。

 昨年、一昨年の王者である銀シャリとトレンディエンジェルを招き、陣内智則の仕切りで“敗者の弁”を引き出すという企画だ。芸人たちにとっては酷な企画だが、さらに酷なことに、座る場所は「順位順」だという。

 これにすぐさま反応したのが、和牛・水田だった。

「しんどいしんどいしんどーい!」

 大きな身振り手振りで、笑いを取る。最終決戦の結果発表直後、世界が終わったかのような無表情で立ち尽くしていた水田が、芸人魂を振り絞っている。声が出ている。笑いながら、もう泣けてきてしまう。

「紹介しましょう! とろサーモンに負けて優勝を逃した人たちでーす」

 陣内の軽薄なMCが、逆に湿っぽさと緊張感を取り払ってくれる。一斉にツッコミが入る。楽しい。

 ゆにばーす・川瀬は「西に爆弾仕掛けたいです」と不機嫌な顔を作る。キャラクターをまっとうしているが、とろサーモンの優勝が決まった瞬間に、柄にもなく大喜びしていた姿がテレビカメラに抜かれていたことには、まだ気づいていないのだろう。

 この番組どこまで酷なのか、敗退した9組は「なぜ負けたのか」を漢字一文字で表すことを命じられる。1組ずつ、芸人たちは自ら本音を明かしていく。

 

■10位・マヂカルラブリー「全」

 

「すべて」。村上が、ドドン! と色紙をかざす。フリップではなく普通の色紙なのも、いかにもネット配信っぽい。

 マヂカルラブリーにとっては、つらい『M-1』になった。野田は「エゴサーチしたくない」と語り、村上も「(芸人を)辞めようと思った」と言う。準決勝ではドハマリした「野田ミュージカル」が本戦でハマらず、審査員の上沼恵美子から存外に厳しい言葉を投げかけられた。

 トレンディエンジェル・たかしはマヂカルラブリーの優勝を予想していたという。陣内が「野田は天才なんちゃうか、という空気だけは出ていた」とフォローすると、「空気だけ?」と絶妙な間と表情で返してみせた。

■9位・カミナリ「同」

 

「おなじ」。たくみが、「変えたつもりでいたけど、結果同じだった」と、これも上沼のダメ出しを受けての無難なコメントを出したが、これに納得がいかなかったのが、ほかならぬ相方のまなぶだった。

「そんなことない。同じって言いましたけど、ネタの構成は進化していました。後半畳みかけて叩くところとか、リズム感がよくて、すごくよかったと思うんで、全然同じではないです。本当に」

 昨年のセンセーショナルな登場以降、お茶の間にもすっかり浸透したカミナリだが、まなぶが見たこともない表情でネタについて語る姿は、いかにも新鮮だ。

 まなぶは「同」ではなく「謎」だと言うが、これが和牛とかぶってしまうハプニングが発覚するころには、すっかりいつものまなぶに戻っていた。

 

■8位・さや香「噛」

 

「かむ」。ネタの序盤、ツッコミの新山が甘噛みしたことで、確かにリズムが狂ったのだろう。本戦でもウケはよかったが、さや香のこのネタの爆発力はこんなものではなかったはずだ。ある意味で、今回の直前のクジ引きでネタ順を決める「笑神籤(えみくじ)」システムは、結成3年で場数の少ないさや香にとって、もっとも不利に働いたかもしれない。

 29歳のボケの石井は「僕のプレイは100点でした。こいつ(新山)は62点でした。敗因はそれです」ときっぱり。憮然とした表情で「仲良くやっていこうと思ってたのに」と声を絞り出す新山の姿に、ほんの一瞬だけ会場の空気が凍る。本戦直後、感情が高ぶる中でのスリリングなシーンだった。

 

■7位・ゆにばーす「死」

 

 ゆにばーすは、ネタ順的に不利といわれる1番手を引いた。それに関して、川瀬は「それはいいですわ」と潔い。それよりも、敗者コメントのシーンで「はらさん殺してまで滑らしてしまったのが」と相方を思いやった。

 去年、今年と、この敗者コメントで輝いたカミナリ・たくみが口を挟む。

「あそこでウケねえと、TVスターにはなれねえから!」

 説得力のある言葉に、川瀬は「やっぱり漫才師として生きていかなあかんなと」と持ち味を見せた。

 

■6位・ジャルジャル「浜」

 

 この配信のハイライトとなったのが、ジャルジャルだった。「浜」が意味するのは、2日前にダウンタウン・浜田とロケをし、ネクタイとシャツとベルトを浜田に選んでもらったのだという。だから、敗因は浜田だと。

 浜田とロケをしていることからもわかるように、ジャルジャルは今や、正真正銘のTVスターだ。そんな忙しいタレント活動の合間を縫って、ジャルジャルは『M-1』に懸けてきた。誰も見たことのない、もはや漫才なのか何なのかもわからない、ただ楽しくて、抜群に笑える4分間を作り、松本人志は自身最高の「95点」を与えた。

 総合得点が出た瞬間、ジャルジャルの敗退が決まった。福徳はまるでKO勝ち寸前でカウンターパンチをもらったボクサーのようにうなだれ、悔しさを隠そうとしなかった。審査員を相手にボケた後藤に「ようボケれんなこの状況で、お前……」と、テレビカメラの前に立つ芸人とは思えない本音を生放送に乗せた。

「悔しかったんです……」

 福徳は、泣き出してしまう。涙が止まらなくなってしまう。もう、声にならない。銀シャリ・橋本の「それ準優勝の泣き方やん! 6位やん!」というツッコミが冴えた。

 

■同率4位・スーパーマラドーナ「改」

 

「なんで今年から、敗者復活が最後ちゃうねんっていう……」

 武智のこの言葉も、また本音だろう。今年から採用された「笑御籤」によって、前回まではトリだった敗者復活枠が、ランダムになってしまった。勢い、風、そういったものを味方につけて優勝をさらったのが、目の前にいるトレンディエンジェルだろう。

 2位に10万票の差をつける圧倒的な強さで敗者復活を勝ち抜いたスーパーマラドーナ。武智は「入れてくれた人に申し訳ない」と語る。

「俺が一番M-1のこと思ってるからな!」

 本戦中、何度も繰り返した武智の叫び。ジャルジャルとともに、スーパーマラドーナは来年、15年目のラストイヤーを迎える。田中もなんか言ってた。

 

■同率4位・かまいたち「小」

 

「小朝師匠が厳しすぎた」

『キングオブコント』との2冠が期待されたかまいたち。オール巨人と中川家・礼二が最高得点を付けるなど本領を発揮した一方で、春風亭小朝からは「勝ちきるネタではない」とバッサリ。

「審査員が小朝師匠じゃなかったら?」と水を向けて煽る陣内に、「なんか思ってるわけじゃないですよ」と慌てる濱家。「M-1と対を成すキングオブコントのチャンピオンから言わせてもらうと、非常にいい大会だった。バッチリです」と、山内がオチを付ける。

 この“上から目線”に加え、本戦中にはにゃんこスターいじりもあり、大会を盛り上げた立役者のひとりに違いない。

 

■3位・ミキ「白」

 

 ネタ中の昴生の唇が白すぎた、と亜生。伝統的なしゃべくり漫才を繰り出す兄弟コンビは関西での評価は高いが、一方でこうした平場では、まだまだ弱さを見せる。

 本戦の審査でも「もう少し大きな展開もほしい」(礼二)、「全然おもしろくないネタもある」(松本)、「もうちょっと弟さんのボケが、シャープなのが入ってたら」(博多大吉)と、言葉だけで見れば苦言が続いた。それでも、本戦2位の650点を叩き出す圧倒的なテンポ、テンション、技術。審査員たちの苦言は、逆を返せばこのコンビの“ノビシロ”の大きさを示している。

 そして何より、彼らのラストイヤーまで『M-1』が続くとするなら、この先10年にわたって出場権利があるのだ。末恐ろしい限りである。

 

■2位・和牛「鮭」

 

 カミナリとの「謎」かぶりで「鮭」と書き直した和牛。そのまま、とろサーモンの意味である。

「なんで負けたんか、わかんないすもん」

 和牛の頭脳・水田は戸惑いを隠さない。

「とろサーモンさんさえいなかったら優勝やったなと。去年は銀シャリさんさえいなかったら優勝やったし」

 2年連続で準優勝となった和牛は、今大会も、もちろん来年も大本命として4,000組の漫才師からターゲットにされる立場だ。

 昨年、キャラと動きで凄味を見せつけた和牛は、今年は目いっぱい頭を使って構成を練り上げ、新たな地表に立った。

 最終決戦の審査、とろサーモンのパネルがめくられていくのを見ながら、水田は一枚ずつ「く・そ・が」と思ったと闘志を隠さない。来年は、いったいどんな進化を見せてくれるのだろうか。

 その後、優勝会見を終えたとろサーモンも現れ、優勝賞金の授与式などが行われた。500万円ずつの生々しい札束を手にする2人を見ながら、やっぱり「久保田、おめでとう。そして村田、ありがとう」と思った。

 

■その後、SUNTORY提供で1時間

 

 この生配信のあと、10組は千鳥が待つ居酒屋に場所を移して、SUNTORYが提供する“公開打ち上げ”も行われ、この様子も生配信された。

『M-1』2年連続最下位という苦杯を舐めた千鳥が後輩たちに向ける目線の温かさ、そして、base時代の盟友・とろサーモンと共に「W(「女芸人No.1決定戦 THE W」)にはアジアンも残ってる、中山功太も引き上げたい」と話し合う姿に、また涙腺が緩んだ。

(文=新越谷ノリヲ)