テレビ界には「リポーター芸」というスキルが存在する。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)で毎回インパクトを残していた高田純次は第一人者だし、食リポ方面では彦摩呂や勝俣州和らが気を吐く。この系譜はいまだ連綿と受け継がれているのだ。
■第一声はいつも「イエイ、イエイ、DJ KOOです!」
現在、バラエティ界ではDJ KOOが重宝されている。当初は異質な空気を作り出すスパイス的な役割が主だったが、昨今はなぜかリポーターとして起用され始めている模様。このポジションが、どうして彼に巡ってきたのか? 特筆するようなスキルを持っているとも思えないが……。ではここで、DJ KOOのレポーターっぷりをあらためて振り返ってみたいと思う。
まずは、6月27日放送『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)から。京都の今出川通では15店舗以上のパン店が営業しており、この通りは通称「パンストリート」と呼ばれている。同ストリートの絶品パンを端から端まで食べ尽くすという企画のリポーターに、KOOが起用されたのだ。
「イエイ、イエイ、イエイ、イエイ、イエイ! DJ KOOです! 今日はバッチリ、京都のパンストリートをご紹介して回っていきたいと思います!」
高田純次の「こんにちは、アンジェリーナ・ジョリーです」を例に出すまでもなく、リポーター芸でつかみは重要。そういう意味で、KOOはずるい。京都というはんなりした土地に、蛍光色のロンTで現れた空気を読まない男。彼がカメラに映し出された瞬間、存在そのものでつかんでしまっているのだ。何しろ、「イエイ、イエイ、DJ KOOです!」という雄叫び自体は、ほぼテンプレである。彼がフレームに収まった瞬間に発する第一声は大抵コレ。
今回、このロケにKOOが起用されたのには理由がある。実は彼、好きなパンをたびたびブログにアップするほどのパン党なのだ。
「港区のおいしいパンは、ほとんど食べてます!」
と豪語するKOO。お手並み拝見だ。
「街は今出川通 ほぼ計算通り イエー! そして見つけるのはアンジュール桃の木! イエース、ここでーす」
ラップしながら老舗パン店「アンジュール桃の木」へ入っていくKOO。まるで、映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』の世界観だ。そして、同店人気ナンバー1の「小倉&ミルク」を頬張りにいく。感想は「うん、おいしい!」。パン通のKOOも納得のようだ。そして、テンションが上がった。
「小倉はみんな生きている イエイ! カモン! プップップ~! サイコーです」
童謡「手のひらを太陽に」に似た韻を踏みながら、店の入り口付近でカットがかかるまで踊り続けたKOO。VTRを見ていたマツコ・デラックスが思わず「けなげな人ね(笑)」とつぶやくほど、その姿は愚直だ。
愚直なKOOはまだ行く。今回の趣旨は「パンストリートの絶品パンを端から端まで食べ尽くす」なので、店から店へ移動しなければならない。その道中が妙に面白いのだ。ただ歩いているだけなのだが、何しろあの金髪にサングラスに派手なロンTである。浮き方が半端じゃなく、思わず有吉弘行が「歩かせるなよ(笑)」とつっこむほどだ。
そして、別のパン店へと到着。ここで売り切れ必至の食パンを運良くゲットできたKOOは、できたてを持ちながら「イエイ、イエイ、イエイ、パン買ってきました~!」と歓喜の表情。早速、細長い食パンを割ったら、切れ目から湯気が立ち上った。KOOは「湯気、湯気、湯気、湯気、湯気、湯気、湯気、湯気~」と、独特のリポートだ。そして、パンをちぎってパクッ。
「できたてのパンって、こんな感じなんだ~」
パン好きなのに、そんなのも知らないのか……。
その後もいくつかのパン屋を巡るが、次第に「(小声で)うん、おいしい」と凡庸なコメントをし始めたKOO。電池切れが早く、それを隠さないのは、どこか高田純次的でもある。
■絶対につかみをハズさないリポーター
7月1日放送『相席食堂』(ABCテレビ)にも、KOOはリポーターとして起用されている。番組レギュラー・千鳥の故郷をリポーターが訪問し、家族や地元民から幼少期の話を引き出すのが今回の趣旨である。
この番組は、リポーターとして誰が派遣されるのか、千鳥の2人には知らせないのがシステム。VTRが始まり、まず、ノブの実家でご両親と談笑していたのは、あの西川きよしであった。
そうなると、大悟の実家を訪れたリポーターの人選が気になる。ノブは「文枝師匠」と予想したが、カメラが捉えたのは、大悟家の台所にDJブースを設置してアゲアゲのKOOであった。
「イエー! DJ KOOでーす! 今日は大悟の家に! 大悟イン・ザ・ハーウス!」
「まさかこんな大悟の家で、キッチンで、DJやるとは思いませんでした。イエー! カモン! ハッピーだぜえ」
すでに人選の時点でつかんでいるし、よその家の台所に大仰なDJブースを持ち込むという手間も功を奏した。リポーター・DJ KOOは、つかみを絶対にハズさない。
KOOは、ご両親に普段の大悟について質問する。いわく「実家にはあまり帰ってこないです」だそうだ。しかし、素っ気ないわけじゃない。「父の日には電話をかけてきてくれる」と、お父さんがうれしそうに教えてくれた。
「大悟、やるな! 最高だぜ! イエー!」
もう、一貫してこんなノリなのだ。食事どころを探しに町へ出たKOOは偶然にも食堂を発見し、例によってノッた。
「営業中、イエス! 営業中だ、カモン!」
しまいには、リポーターとしてやって来ているのに、レンタサイクルで電動自転車を借りてしまうKOO。
「イエー! やっぱ電動は最高ですわ、イエー!」
町のリポートそっちのけで、電動の力を借りて田舎をかっ飛ばすKOO。大悟の故郷に漂うのどかないい雰囲気を、すべてかき消してしまっている。
結論として、KOOはリポーターとして不十分である。お届けするべき情報をまったく拾っていないし、そもそも拾おうという意識が希薄だからだ。しかし、なんだかんだ言って、出来上がる絵面は面白い。違う意味での結果は出している。しっかり段取りをこなすタイプのリポーターがいれば、一方でこんなタイプがいてもいいかもしれない。情報番組には向いていないだろうが、好事家の琴線には触れている。それが、DJ KOOがリポーターに起用される理由だ。
(文=寺西ジャジューカ)