表紙に写る2人の女性に惹かれるものを覚えて、その本を手に取った。目鼻立ちがそっくりで、一目で母娘とわかる。美人親子というにふさわしい、華やかなツーショットだ。その上に載せられたタイトルは『うちの娘はAV女優です』(幻冬舎)。この2人は、本書に登場する“親公認”AV女優のひとり、桜井あゆさん(2016年に引退)と、その母親なのだ。
著者のアケミンさんは表紙に改めて目をやり、
「桜井あゆさんがお母さんと並んでスマホで自撮りしたのを、送ってくれたんです。素敵ですよね。私は自分の母親と、こんなふうにツーショットで撮ったことないなぁ」
という。AVメーカーに広報として勤めた後、フリーライターに転身したアケミンさんだが、AVのレビューやAV女優へのインタビューを主なフィールドとする中で、「親も応援してくれています!」と話すAV女優が増えてきたことに気がついた。AV女優は親に内緒でする仕事ーーそう思っていたアケミンさんがこれまでに訪ね歩き、インタビューした“親公認”AV女優10人のエピソードが本書に収められている。
■親バレせずに売れたい、というのが難しい時代
「この仕事をする中で女性たちが恐れているのが、友だちバレ、彼氏バレ、熟女女優さんだと旦那バレや子バレ……数ある“バレ”の中でも“親”は最もハードルが高いもの、と私は思います。大多数の女優がバレてはいけないと思い、バレないように細心の注意を払っている親に、仕事を認めてもらう……AV女優にとってある意味、究極の環境を手にした女性たちについて知りたくて、取材を重ねました」
そもそも、親にバレるリスクは高いのだろうか?
「ネットで手軽にAVを視聴できるようになったり、アイドル的な活動をするAV女優が増えて、地上波に出る機会が増えたりといった具合に、活動の幅が広がるとそれだけ目にする人も増えるので、リスクは高まります。人気商売ですから、売れるためにはパブリシティ(広報活動)に力を入れ、多くの人に見てもらって知名度を高めないといけない……でも親だけには見てほしくない。これはそもそも矛盾していますよね。親バレせずに売れたい、というのが難しい時代になりました」
と同時に、バレるか否かは、その環境にもよるという。
「仕事のことを親には一言も告げず、ゆるっと引退して次の人生を歩んでいる女優さんも大勢いますよ。すごく売れっ子で長く活動している女優さんが、まったく親バレしていないという話も聞きます。親がネットと無縁だったり、周囲に書店やコンビニがない地域に暮らしていて、成人雑誌が目に入らなかったり、女性が多い職場だったりして、生活圏内にアダルトの要素がない環境だとバレにくい。反対に、男きょうだいなど日常的にAVを観る人が身近にいると、バレる可能性は高くなります」
親と同居していると、隠し通すのは難しい、とアケミンさんは付け加える。本書で紹介されている女性のほとんどは地方出身者で、親元を離れて暮らしている。しかし、熟女女優・一条綺美香さんのように、同居する父親が高齢でインターネットと縁がなく、隠そうと思えば隠せたのではないかと思えるケースもある。それでも自分から打ち明ける背景には、どんな想いがあるのだろう?
「みなさん『反対されたら辞めてもいい』と思っているわけではなく、多かれ少なかれ、AV女優という仕事への前向きな意志をもって親に打ち明けていると感じました。出演した作品の発売日が迫ってきて、『ここまできたら後に引けないし、言っちゃえ!』と腹を決める女性もいましたね。最初はなんとなく始めたけど、自分自身の中でAVをひとつの“仕事”として認識するようになったことで、『いくら親にダメと言われようと、私は続けよう』という意地が芽生えるようです」
■隠し事をしていないっていうのは、とても健全なこと
親から反対されても、周りになんと思われても、私はAV女優として売れたい、ナンバーワンになりたい。そうすることで、親にもこの仕事を認めてもらいたい……本書に出てくる女性たちからは、まっすぐなパワーを感じる。
「今回、登場してもらった女性たちの共通点を挙げるとしたら、プロ意識ですね。私が見てきた印象だと、最初は『なんとなく』AV女優になった女性のほうが、後々にプロ意識が芽生えて大成しています。『人気女優の●●さんみたいになりたいんです!』といって業界に入ってくる例も増えていますが、目標が明確すぎると、現実が少しでもそれとズレてしまったときに自分を全否定して、自滅する傾向にあると思います。いまはその気になれば誰でもAVに出演できる時代ですが、それだけでAV女優になれるわけではない。ひとつの仕事として続けていくのは、簡単なことではありません」
仕事であれ生き方であれ、「親に認めてもらう」がその人の中でひとつの支えとなることは少なくない。親公認が、AV女優としての活動に影響を与えることはあるのだろうか?
「心のバランスが保たれますね。いつバレるだろうとビクビクしながら仕事をしている女性は、その精神状態が作品にも表れます。不思議なもので、裸の肉体って、そうした心の状態が如実に映し出されるんですよ。隠し事をしていないっていうのは、とても健全なことなんだと、彼女たちを見て思いました」
親に認められながらAV女優を仕事とする10人の女性たちのエピソードを読むのは、「自分と親」の関係を見直すきっかけにもなる。たとえば筆者が育った家庭では、親の前ではセックスどころか、恋愛についての話題も一切NGだった。プライベートな行為や気持ちについて話す機会がない環境では、なかなか自分をさらけ出せず、また親の人間的な面に触れる機会もまれだった。
だからといって「恋愛でもセックスでも、なんでも親と話す」「AV女優の仕事を打ち明ける」が正解だというわけではない。それは家庭によって異なる。が、自分の意志でそれを実現している女性と、究極の部分を共有している両親たちのありようが、ひとつの理想的な家族のような気もしてくるのである。
(三浦ゆえ)


