千鳥・大悟のたばこ偏愛が思わぬ形で昇華! 『テレビ千鳥』アベマ企画は後世への貴重な資料映像になる!?

 AmazonプライムやNetflix、AbemaTVなどネット配信の番組が制作される際、「放送コードを気にしなくていい」と枷(かせ)を外すことで寄りがちになるのは、エロやグロ、もしくは過激で反社会的なテーマを主題に据えた振り切り方だ。

 それらとは一線を画し、なおかつ地上波でははばかられるであろう笑いに到達した貴重なバラエティを観た心境。テレビ朝日とAbemaの連動企画「テレビ朝日×アベマTV秋のリレーーーー→WEEK」にて『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)が10月22日よりAbemaで配信するのは「喫煙所探訪」なる企画である。

 なんてことのない趣旨だ。都内のさまざまな喫煙所を巡り、リポートするだけの内容。果たして、これだけで1時間持つのか?

大悟「全然、持ちます。いろんなアイドルが出てくると思ってください。喫煙所という名の」

 無茶な振り切り方だが、確かに地上波じゃ難しいかもしれない。嫌煙家からクレームが殺到する恐れがある。だから、Abemaでやるだけの理由はあるのだ。

大悟「緩いやん、Abemaは。たばこ8本、チンポ2本まで大丈夫やから。計10本までは。逆にたばこ1本のときはチンポ9本まで大丈夫」

女の内ももより灰皿の側面のほうがええわ

 はっきり言って、町の喫煙所にそんなに差異はないと思うのだ。

 例えば、荒川区町屋のたばこ店に隣接の喫煙所へ立ち寄った大悟は、シルバーで棒状の灰皿に注目した。どう見てもよくあるタイプだが、大悟は事細かにリポートしていく。灰皿の側面を手の甲でなでながら「どの女の内ももよりええわ」と恍惚の表情を浮かべる偏執的な愛。

 この喫煙所を離れると、荒川区にある別の喫煙所に向かう大悟。見たところ、さっきの喫煙所と違いがまったくわからないが、大悟は「全然違うやん」と言い張った。

大悟「さっきの喫煙所は角にあったけど、ここは道沿いにある。道が前にあるから、子どもらが歩いたり、町の流れが見えるよな。町をあてに吸うてる感じかな」

ノブ「一緒やって! さっきと何が違うん」

 違いは立地だけじゃない。大悟は灰皿の表面のタバコを入れる穴を指し「普通に穴開けりゃええだけやけど、全部穴の形変えたりしてるやん」と指摘するのだ。さらに、灰まみれのたばこ穴を指でなでて拭いてみせる。

ノブ「おいおいおい、そんなとこ触んなよ! 汚いやろ」

大悟「いや、見てあげて」

ノブ「嫁の死に顔か。“見てあげて”じゃないねん」

 最後は、虎ノ門のオフィス街へ足を運んだ千鳥。実はこの街にはJTのビルがあるのだ。

 ビルに足を踏み入れた大悟は「JTさんにはたばこで20年近くお世話になってるので、挨拶しとかないとと思って今日来ました。遅れました、ごめんなさい」と一礼。すごい腰の低さである。おなじみ「JT」のロゴマークが視界に入ると「あの刺青入れようかな」とうかつなことを言いだすし。きっと、深きたばこ愛ゆえだろう。まあ、大悟が吸っているのはアメリカンスピリットなのだが……。

 JTの喫煙所がまた広い。今、どの飲食店も職場も喫煙スペースを狭める傾向にあるのに、ここだけは違った。たばこに火をつけた大悟は感無量の表情だ。

大悟「あ~、なんかたばこも喜んでます。“ただいま~”って言ってるわ。親の元に帰ったような感じやろうな」

 JTの喫煙所は、窓から見る風景も違う。景色がすごくいいのだ。

大悟「(ビルの)1本1本がたばこみたいやね、こうやって見ると」

ノブ「どうかしとるんか」

 確かにどうかしてる企画だ。今回、同番組は、なぜこんな企画を決行したのだろう?  その理由は、時代の流れ。健康増進法の一部改正が2020年4月に全面施行となり、喫煙スペースの規制・分煙はより厳格化される。喫茶店や雀荘、パチンコ店までが禁煙になっていく流れがあるのだ。

大悟「最後に喫煙所を巡りたい。今年中にやらな、無理やったかもしれん」

 もちろん、来年に開催されるオリンピックも時代の流れと無関係ではない。

大悟 「わし、オリンピック会場でたばこ吸うて捕まっちゃろうかな、来年(笑)」

 図らずも、この企画は失われゆく風景を記録する機能を果たしている。再開発前の駅前写真のような、20年前に録画したVHSに残るCM映像のような。ある種、タイムカプセル的な役割を担っているのだ。

 喫煙者が自己主張しにくくなっている昨今。やはり、地上波で放送するのは難しい企画だったと思う。だからこそ、好事家の目を引いた。不毛な企画に見せかけて、一部の層にとっては決して不毛じゃなかった。

(文=寺西ジャジューカ)

石橋貴明『ねるとん紅鯨団』復活でクローズアップされる「芸の枯渇」と「偉大な功績」

 “伝説の番組”復活にネット上では賛否の声が飛び交っている。

 とんねるずの石橋貴明が出演するAbemaTVの特別番組『石橋貴明プレミアム第4弾 恋する沖縄48時間ムーンビーチでタカさんチェック!』が、11月9日に放送されることがわかった。
内容は、沖縄在住の男性10人と、沖縄に住みたいと願う美女6人が出会い、親交を深めながら運命の相手を見つけていく恋愛バラエティー。まさに80年代から90年代にかけて社会現象を巻き起こした『ねるとん紅鯨団』の復活といっていいだろう。

「司会進行は石橋が行い、“2ショットタイム”や“タカさんチェック!”など、中年世代には懐かしい限りフレーズもそのまま。石橋も『“大どんでん返し”はあるのか!?』とかつての名セリフで番組をPRしていました」(テレビ誌ライター)

 ネット上では「普通に見たい!」「35オーバーの中年は楽しみやろ」といったコメントがある一方、「過去で生きるのは、生き恥」「もう昔にすがるしかないのか」「オワコンでしかない」との呆れ声も聞かれる。

「『石橋貴明プレミアムシリーズ』は、石橋が“今インターネットテレビでやりたいこと”“地上波では許されないこと”への想いを壮大なスケールで実現させる企画のはず。ネットで何か新しいことをやるのかと思いきや、過去の焼き直しだったことで、ガッカリしたファンが多かったようです。石橋といえば、元『野猿』のメンバー2人とともに新ユニット『B Pressure』を結成することを発表したばかりですから、よけいに過去の栄光にしがみついているように見えたのでしょう」(スポーツ紙記者)

 しかし、過去ネタで商売ができるということは、それだけとんねるずが偉大だったとも言える。

「『ねるとん』といえば、今ではごく当たり前に使われている言葉がたくさん生み出されてきました。『元カレ』『元カノ』『元サヤ』はその筆頭ですが、ほかにも『2ショット』『~みたいな』『○○関係』『○○系』といった単語や言い回しも、とんねるずによる造語ですからね。その功績は偉大です」(前出・記者)

 はたして、マッチングアプリ世代に『ねるとん』はどう映るのだろうか。

田中みな実、「生パン」で撮影に臨む“謎の女優魂”に現場スタッフが唖然!

 本格女優への転身は成功するか?

 8月29日に配信されたドラマ『奪い愛、夏』(AbemaTV)第4話で田中みな実が見せた“狂気に満ちた表情”が話題を呼んでいる。

 第4話では広報部員・井川瞳役の田中が、同僚で親友の杏(松本まりか)に対して、「たまたま前を通りかかったら杏がいて。ふふふ…」とキュートな笑顔を見せた直後、低い声で「んなわけないでしょ? あなたを朝からずーっとつけていたのよ」と目を見開く顔芸を披露。

 さらに「これからだね。あなたが人生転がり落ちるの。ふはははは……」と不敵に笑い、スタンガン片手に「逃がさないよ~」と語るシーンには、ネット上では「田中みな実の演技怖すぎ」「田中みな実の狂気顔が最高すぎた」と称賛コメントが飛び交っている。

 田中は2月に『絶対正義』(フジテレビ系)で連ドラデビュー。10月には『モトカレマニア』(フジテレビ系)の出演も決まっており、フリーアナに留まらない活躍を見せている。

 そんな田中の「女優魂」に、現場スタッフが唖然となる場面があったという。テレビ関係者が耳打ちする。

「8月8日に放送された深田恭子主演のドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ系)第5話でのことです。田中は世界各国の男にすり寄り、金品を奪う女泥棒・双葉美羽を演じました。美羽はターゲットの前でなまめかしく脚をさらけ出し、パンチラギリギリの行動で男を誘惑していくのですが、『集中できないから』との謎の理由で、スカートの下にスパッツや見せパンを履くことを拒否し、生パンのまま撮影に臨んだのだそうです。これには現場スタッフは心の中で『そこは頑張るところじゃないだろ』『パンツ見せるより台詞をちゃんと覚えて来てくれ』とツッコんでいたんだとか(笑)」

 本物の下着で撮影に臨むことが、田中にとっての「女優魂」だったようだが、それならいっそ、しっかり画面で拝ませてもらいたいものだ。

千鳥『チャンスの時間』が仕掛けた、女王様とM奴隷による恋愛リアリティショー

 

 千鳥司会のバラエティ番組『チャンスの時間』(AbemaTV)にて、8月7日、14日と2週にわたり新しい恋愛リアリティショーが放送された。

 そういえば、AbemaTVは『今日、好きになりました』や『恋する週末ホームステイ』など恋愛リアリティショーが十八番である。だからこそ、やらない手はない! と同番組が今回手掛けたのは、題して「DOREI HOUSE(奴隷ハウス)」。3人のM男と3人の女王様が集まり、マンションの一室で6人の男女が繰り広げる恋愛群像劇である。

 マンションに先に着いたのは男性陣のほうだった。「今日はどんな人が来るんだろう」と室内をキョロキョロし、当然のようにソファを無視して地べたに正座するM男。男性側が3人揃うと、後からボンテージに身を包んだ女王様が続々と姿を現し、こちらはソファに腰掛けた。当たり前である。

「DOREI HOUSE」は「M男たちは女王様の専属奴隷になれるのか?」がテーマだ。全員が揃うと自己紹介が始まった。

女王様「しょうがないから自己紹介をさせてあげましょう」

M男「ありがとうございます」

 こんな6人が顔を合わせたのだ。手始めに語るのは自身の性癖しかないだろう。

「お医者さんに注射をしてもらって、自分の血が抜けていくのを見て興奮しました」(はりお/29歳/製造業)

「圧迫系では顔騎とか。アナルも攻めていただくと、軽く失神してしまうということはあります。白目むきます」(ふぇありー/44歳/介護職)

 恋愛リアリティショーといえば、参加者の個別インタビューがおなじみ。初対面を終え、それぞれが心境を口にした。まずは、男性陣から。

「自分の好みがタトゥーやピアスが多い人なんですけど、(女王様の)Fana様がタトゥーが腕にびっしり入ってて、それが好印象でした」(はりお)

「僕の中では第一印象で確実に(女王様の)NEKOさんがいいなと思いました」(ふぇありー)

 続いて、女性陣。

「ふぇありーは年もいってる分、わがままなんですよ。もう、ぶん殴りたくなりましたね(笑)」(NEKO)

「はりおさんは痛いの大丈夫そうなんで、いいなと思いますけど」(Fana)

 おわかりだろうか? 「ふぇありー&NEKO」と「はりお&Fana」がこの時点では両想いである。

 出会いを祝し、6人はパーティをすることに。宴となれば料理が欲しい。NEKOは料理が得意らしく、彼女が料理担当を買って出た。すると、キッチンに向かう途中で「お前も来いよ」とNEKOがふぇありーの頭をむんずとつかんだ。もちろん、ふぇありーは「はい」と快諾だ。すでに恋の駆け引きは始まっている。

 NEKOはミートソースパスタを作りたいらしい。パスタを入れるお湯の具合が気になるNEKOはふぇありーの手を掴み、彼の指をお湯に入れようとした。

ふぇありー「アチッ!」

NEKO「いいリアクションするねえ~。かわいいねえ」

ふぇありー「ありがとうございます」

 さすが、料理上手。NEKOが作ったメニューは品数も多く、どれも完成度が高い。ただでさえ満足なのに、NEKOはふぇありーを特別扱いした。「君の餌はあっちだよ」とふぇありーの首輪を引っ張り部屋の隅に連れて行くと、そこには犬の餌みたいに盛り付けてあるミートソースパスタが床の上に置かれていた。

NEKO「おいしかったらワンだよ」

ふぇありー「ワン、ワン!」

 早くもラブラブだ。

 続いての展開は2ショットトーク。男性陣がそれぞれの個室で待機し、女王様が気になるM男の部屋に訪れるというシステムである。

 2ショットということは、相手と急接近できる貴重なチャンス。M男はここで創意工夫した。例えば、はりおはトイレを待機部屋に指定。トイレタンクに繋いだ手錠を右手にはめ、「お好きにどうぞ」という体勢で待ち構えた。うんぴぃ(25歳/営業職)は頭から足の先まで全身を包むタイツを着て、ベッドの上で大の字になり女性陣の訪問を待つようだ。

 女王様の1人、ユンが訪れたのはふぇありーの部屋である。ユンの姿を見たふぇありーは固まったままだった。

ユン「リアクション、薄っ。来てあげたのに」

ふぇありー「ありがとうございます……」

 繰り返すが、今回は女王様が専属奴隷を探すための恋愛リアリティショーだ。ということは、M男も女王様に一途でなければならない。無言の間が数秒続いた後、ユンが口を開いた。

ユン「本当は誰がよかったの? ぶっちゃけ」

ふぇありー「NEKO様」

ユン「なりたいの?」

ふぇありー「犬に? なりたかったですけど……。恋愛で真面目になると、自分はいつまでたっても高校生レベルなんだなと」

ユン「好きってことね、あの子のことが?」

ふぇありー「はい。NEKOさんが好きです」

 M男にフラれる女王様! 見たこともない展開だ。料理中に熱湯をかけられたり、肛門を蹴られ続けているうちに、いつの間にかふぇありーはNEKOに恋に落ちていた。ほかのS嬢は目に入らない。女王様と奴隷という上下関係なのに、こういうことが起こるのが恋愛リアリティショーの醍醐味である。

 エンディングで行われるは、もちろん告白タイム。M男が女王様に愛を伝えるという大胆なシチュエーションだ。1番手のうんぴぃは、NEKOの前に立った。

「何よりもNEKO様の笑顔に惹かれました。これからNEKO様の専属奴隷として一緒に成長させていただければと思います」(うんぴぃ)

 思いの丈を伝えた後、うしろ向きになってお尻を突き出すうんぴぃ。女王様がM男のケツをムチで叩けば告白はOKというシステムだ。

「ちょっと待った!」

 NEKOの奴隷になりたい男はもう1人いる。やはり、ふぇありーだった。

「専属奴隷にしてください。お願いします」(ふぇありー)

 NEKOの前に差し出される2人のM男のケツ。「えぇ~……」と、NEKOは女王様らしくない困惑の表情を浮かべ、迷っている。その間、M男2人は「どうか叩かれますように」と真剣な顔つきでムチを待ち望んでいた。

“バシッ! バシッ!”、振りかぶったムチを2発お見舞いしたNEKO。ふぇありーに1発、うんぴぃに1発の計2発だ。「どういうこと?」と状況をつかめない2人に対し、NEKOは「2匹飼う」とキッパリ。M男2人は「ありがとうございます」とひざまずいて頭を下げた。その2人の頭をハイヒールで順番に踏んづけるNEKO。

NEKO「とりあえず、押し入れにでもぶち込んどこうかなと思います。なんか文句あんの?」

ふぇありー「ございません」

 NEKOの選択は「多頭飼い」だった。完全にルール無視である。今までの恋愛リアリティショーでこんな結末は見たことがない。NEKOがケツを2回叩いた場面は、本家恋愛リアリティショー『今日、好きになりました』を超えた瞬間ともいえよう。

 女王とM男が階級的に同じ目線に立つなんてありえなかったはずだ。M男が女王様をフるなんてもっとありえないし、2人に告白された女性が「2匹飼う」と答える展開は断じてありえない。しかし、恋愛リアリティショーのフォーマットを拝借することでありえない革命が何度も起きた。バラエティ番組が行うパロディの形として、これは圧倒的に正しい。「なぜ、今までこれを思い付かなかったのだろう?」とポジティブな驚きに襲われる、盲点の企画だった。

(文=寺西ジャジューカ)

地上波はもう無理?『アメトーーク!』名物企画「家電芸人」にも影響で”AbemaTV移籍”の現実味

 以前、深刻な状況は変わっていない。

 6月27日に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の視聴率が8.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だったことがわかった。闇営業問題でMCを務める『雨上がり決死隊』宮迫博之に謹慎処分がくだって初の放送とあって注目度も高く、前回から0.8ポイントアップとなった。

番組はメインMCである宮迫を強引にカットして放送したため、不自然な場面が目立ち、視聴者からは「面白さが半減した」との声も。さらに、この一件で同番組の人気企画が放送できなくなる可能性が出てきているという。

「6月28日の『東スポweb』によると、反社会勢力は詐欺だけでなく甲子園での野球賭博も資金源にいていた可能性があり、毎年夏に放送されていた『高校野球大大大好き芸人』が放送中止になったようです。また、家電製品を熱く語る人気企画『家電芸人』も、番組で自社製品を紹介されることはマイナスイメージに繋がるため、企業から許可を得られない状況が予想されます。今後は名物企画にもかなり制限されていくのではないでしょうか」(テレビ誌ライター)

 スポンサー撤退の流れから、番組打ち切りも検討されているようだが、一方で、MC交代などでの存続を望む声も多い。そんななか、テレビ関係者はこんな打開策を提示する。

「AbemaTVが開局3周年を迎えたことを記念して、今年5月にてテレビ朝日の看板バラエティー4番組が放送されました。その中で、『アメトーーク!』はケンドーコバヤシらAV好きが結集して『AVサミット2019』という地上波ではできないオリジナル企画を実施。『俺だけの最優秀作品賞』やAVにまつわる熱い思いをたっぷりと熱弁しています。結果、5月の人気番組ランキングで『アメトーーク!』は7位にランクイン。それより上は2位の『那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円』を除くと藤井聡太らの将棋生中継が独占していますから、異例の人気だったとx言っていい。ネット番組であれば、スポンサーも気にせず、今まで以上に攻めた企画ができる。こちらに移籍させて番組を存続させるのはあり得る話です」

 確かに、落としどころといては最適な気もするが、さてどうなる?

天涯孤独の人生を前フリに、風俗キャッチの1人コント……『日村がゆく!』が表現した”お笑いのセオリー”

桂枝雀(2代目)は、笑いの構造として「緊張の緩和」を唱えていた。簡単に説明すると「最初に緊張があり、それが緩和されると笑いが生じる」という考え方である。ならば、人間をシリアスな状況に置く“フリ”を用意し、それを緩和させてあげたら笑いは起こりやすくなるということだ。

 

父と母から見放された芸人が披露した「風俗キャッチ」の1人コント

 6月5日放送『日村がゆく!』(AbemaTV)が行ったのは、その名も「苦労芸人ネタGP」なる企画。芸人の苦労エピソードをまとめたVTRを流し、直後にその芸人のネタを見るという趣旨である。

 具体的に各芸人はどんな苦労を持ち、その半生を踏まえてどんなネタが生まれたのかをご紹介したい。

 鳥谷尾(とやお) だいきというピン芸人の人生は、苦労の連続である。ヤンキーの父親と箱入り娘だった母親の間に生まれた鳥谷尾。母が彼を身ごもったのは結婚前だった。母の妊娠を知った父は出産に反対した。

「経済的な問題だったのか……。(僕が生まれるのが)嫌だったんですかね?(笑) 」

 本来なら祝福されるべき新しい命の誕生を否定した父。しかし、母はこの小さな命を守った。

「母親が“この子だけは絶対に産みたい”と父親に強く言ってくれたので僕が生まれてきたって聞いてます」 

 父は荒くれ者である。家の畳や天井が壊れるほど暴れ、母には手を上げる危険人物。母は離婚を決意し、鳥谷尾を引き取った。その後、母は再婚する。

「(自立してから)毎年、僕が実家に帰ろうとするんですけど、やんわり断られるんですね 。おそらく、再婚相手の方に気を使ってるんじゃないかなと思います。たぶん、あんまり僕のこと良く思ってないんじゃないかな」

 両親に見放され、天涯孤独の身となった鳥谷尾。「親からは望まれなかったが、お笑い界で望まれる人になりたい」と大志を抱く彼のネタが楽しみだ。エピソードVTRの内容があまりに重かったため、司会のバナナマン・日村勇紀は「このままネタに行くの? マジか!?」と困惑している。

 幕が開くと、少年漫画の主人公のような顔をした鳥谷尾が派手な色のハッピを着てポーズを決めていた。どうやら、彼は1人コントを行うよう。

「俺は風俗キャッチマスター・シンヤ! 日本一の風俗キャッチマスターに、俺はなる!」

「なんですか、お兄さん。えっ、“今すぐイケる子、誰いるの”って? 風俗キャッチバトル、スタートだ! まずは俺のカード、今すぐイケる子! 高速手コキ&乳首攻めクイーン、ユミカ! ランキングは常に上位で、出勤は月2回のレアカード!」

 あまりにも低俗なネタすぎて、「ふざけんなよ(笑)」とあきれ顔の日村。ネタそのものではなく、人生がまったく反映されていない芸風を目の当たりにして吹いてしまっている。

 日村「それで行くのかい、君は。いいのか? 天涯孤独だなんて言って、いろんなライブで先にあんなVTR流してネタをやることなんかないんだぞ(笑)。お前はこの先、そのネタだけを背負って芸能界を戦っていくのか?」

 視聴者の意見を、日村が濁りなく代弁してくれた。バカ負けして生まれる種類の笑い。まさに、「緊張(苦労エピソード)」の「緩和(ネタ)」である。先人の理論にのっとって生まれた笑いだったと思う。

 兄と妹で結成されたコンビ「本田兄妹」の過去も悲しかった。中学時代のいじめを苦に、妹・あやのは引きこもりになった。7歳年上の兄・ひでゆきは妹の学校へ乗り込み、校長に詰め寄ったという。その行動に背中を押されたあやのは、中学の卒業式に出席することができた。

あやの「前日にお兄ちゃんが校長室に乗り込んでくれたので、勇気が出たというか」

ひでゆき「卒業したことによって、高校生活を新しく迎えていけるひとつのきっかけになれたんじゃないかなっていう気分でしたね、その時は」

 高校に進学したあやのは、入学2日目に友達をつくることができた。でも、ある日、その友達から「あなた、明日から万引の見張り役ね」と言われてしまう。翌日から、あやのはまた学校に行かなくなった。高校で人生をやり直すつもりだったのに……。

ひでゆき「言ったら、最初の友達じゃないですか。なのに、なんで犯罪の片棒担ぐようなことさせるんだろうって。本当、腹立ちますね。できることなら、ちゃんと言ってやりたかった。悔しいですね」

「いつか芸人として、そいつらを見返してやる」と誓い、2人は舞台に立ち続ける。本田兄妹が披露したのはコントである。自宅が火事で燃えたあやのが「誰かー!」と周囲に助けを求めると、「どうした!」とやって来たのはバスローブ姿の男だった。

あやの「誰!?」

ひでゆき「セクシー男優だ」

 業火に燃える自宅には、あやのが必死に貯めた30万円が残っている。それを、代わりに男優が取りに行くという設定である。しかし、「ア~チャチャチャ!」と熱がってすぐに戻ってくるひでゆき。身に着けたブレスレットやネックレス等の貴金属に熱が移り、どうしても彼は炎に耐え切れない。

ひでゆき「男優のブレスレットは、火事場には不向きだ……!」

 そして、あやのの自宅は全焼した。

あやの「あ~、燃えちゃった」

ひでゆき「間に合わなかった! 気持ちよくさせてやることしかできねえけど……」

あやの「どっか行って」

 かつて、日本テレビで放送されていた『ルックルックこんにちは』に「ドキュメント女ののど自慢」というコーナーがあった。一般参加者の波瀾万丈話をまとめたVTRの後にカラオケをするという内容で、今回の企画はあれをちょっと彷彿とさせる。しかし、「女の~」は「不幸→幸せ」というベクトルだが、こっちは「不幸→笑い」というベクトルだ。笑いをやっている現状は、決して幸せとは限らない。鳥谷尾のように道に迷える芸人も出場している。「ハッピーエンドばかりが是ではない」という笑いの奥深さを、今回の企画は表現していたと思う。

 また、不幸話そのもので笑いを取りに行かないところも好感が持てる。不幸話を前フリに、生きざまとまったく親和性のないネタに続く流れ。このあたり、『やりすぎコージー』(テレビ東京系)の「ビンボー烈伝」よりもすごくドライな印象を受ける。芸人の境遇と笑いが地続きなのではなく、境遇とネタの食い合わせが悪いほど笑える。食い合わせの悪さは、「緊張」と「緩和」の深度をそのまま表している。だから、笑いの返りも大きくなる。

「ドーランの下に涙の喜劇人」とはポール牧の座右の銘だが、まさにブルースのようなお笑いだった。

(文=寺西ジャジューカ)