観葉植物。
置くと部屋がオシャレになるし、ストレス解消にもなるし、目にも優しいし、いいことばかり……と思ってるそこのアナタ!!!
そう、アナタアナタ。
そう、ほら、そこのメガネのアナタ。
そう、お前だよお前。
最初は俺もそう思っていたのですが、そんないいことばかりではなく、時に観葉植物は恐ろしい凶器になるということを今日はお教えしましょう。
あれは、俺が一人暮らしを始めた2003年の秋のこと。
必要最低限の生活調度品や家財道具すらろくに買い揃えていないのに、花屋で観葉植物を物色している俺がいた。
昔から、観葉植物に強い憧れを抱いており、一人暮らしを始めた際には絶対に観葉植物を置くぞと心に固く決意していたからだ。
何を隠そう、実家の部屋はとても狭い上に物も多かったので、観葉植物を置く余裕がなかったのだ。
どれにしようか迷った結果、「幸福の木」というのに俺の観葉植物童貞を捧げることにした。
何がイイって、そんなの名前がイイに決まっている。
購入し、早速部屋に飾ってみた。
それを部屋に置いただけで、運気が急にアップしたかのような、まるで俺の人生に幸福がやってきたかのような、そんな温かい気持ちになった。
恐るべし、観葉植物効果!!
しかし幸福の木は、2週間もしないうちに枯れてしまった……。
水をあげすぎたのだろうか?
太陽に当てなかったからだろうか?
観葉植物初心者の俺にはよくわからなかったけど、とにかく幸福の木は枯れた。
俺のすべての運気が「皆無」になってしまったかのような、まるで俺の人生を全否定されたかのような、そんな陰鬱な気持ちになった。
枯れた観葉植物ほど非オシャレでみすぼらしいものはないので、すぐに捨てた。
そして再び花屋に赴き、第二の観葉植物を物色。
花屋のおばさんに、幸福の木が早々に枯れて、軽いPTSDに陥ってしまった経緯などを説明すると、「ああ、それなら」と、店内からある観葉植物を持ってきてくれた。
それは、サンスベリアという観葉植物。
育てるのが楽な上にマイナスイオンまで出されたら、そんなのもう購入するしかない。
早速購入し、部屋に飾った。
おばちゃんの言うとおり、サンスベリアはろくに水も光も与えなくても枯れずにピンピンして、俺の部屋になじんでくれた。
マイナスイオン効果か、部屋の空気も若干まろやかになったような気がしたけど、それは多分絶対気のせいだ。
形もサボテンを彷彿させ、なんともオシャレで気に入ったので、もう2鉢追加購入し、玄関に1つ、部屋に2つ置いた。
そしてサンスベリアに囲まれた、幸せな日々を送った。
そんなある日。
観葉植物との関係が修復不可能となるほどの、おぞましい事件が起きる。
外出しようと玄関を出た時、忘れ物に気づいたので部屋に戻ろうとした時のこと。
靴ひもを結び直すのが面倒だったので、「靴を片方だけ脱いでケンケンの術」で部屋に戻った。
「ギャ、ギャーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
滑って転んだ先のサンスベリアに、顔面からダイブしてしまったのである……。
葉の先端が眼球に刺さる瞬間、反射的に目を閉じたので、眼球の損傷は免れた。
それでも目は真っ赤に充血し、洒落にならない雰囲気だったので、急いで眼科に行った。
ストレス解消にもなるし、目にもやさしいはずの観葉植物。
ストレス解消どころか、人生の4番目くらいの激しいストレスが俺を襲った。目にやさしいどころか、危うく失明するとこだったし。
今更マイナスイオン放出されたって、そんなのもう、ねえ……。
見るのも嫌になった俺は、その日のうちにすべてのサンスベリアを処分したのでありました。
以後、現在に至るまで俺の部屋に観葉植物は、ない。
ファック観葉植物。
(文・イラスト・写真=清野とおる)
●せいの・とおる
1980年生まれ。東京都板橋区出身。地元・赤羽に生息する奇妙な人々を生き生きと描いた漫画『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン )が大ヒット中。
Twitter <https://twitter.com/seeeeeeeeeeeeno>
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