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536曲ものAKB48関連楽曲(派生ユニット除く)からファンの投票によって、人気楽曲上位100曲を4日間で披露するコンサート『リクエストアワーセットリストベスト100』。2008年から毎年1月後半に開催され、次回は13年1月24~27日に東京ドームシティホールで開催される。その楽曲への投票は、シングル「UZA」封入の楽曲投票シリアルナンバーカードや、AKB48グループのモバイルサイトなどから可能で、11月30日午後3時まで受け付けている。
『リクエストアワー』は“楽曲の総選挙”であり、ファンの民意が反映される年に一度のAKB48楽曲の祭典。シングル曲が人気の傾向だが、主要メンバーの代表曲も上位に来るパターンが多く、“選抜総選挙の前哨戦”とも言える。実際前回は、指原莉乃参加のユニット「愛しきナターシャ」がユニット最高位の6位となり、総選挙で彼女が4位になる礎となった。また、このコンサートならではなのが、過去の楽曲もランクインすることから、普段の公演やコンサートでも見られない初代チーム編成での曲の披露もあり、さながらそれは7年の歴史のあるAKB48の同窓会のようでもある点だ。そんなAKB48ならではの“ファンが作るコンサート”の魅力と次回の予想を、評論家・本城零次氏に聞いた。
――今度の『リクエストアワー』のポイントは?
本城 まずはなんと言っても、卒業した前田敦子が来るのか否か。ほかの曲は継承できても、彼女の卒業のために書かれた「夢の河」「思い出のほとんど」は、彼女がいないと成立しないので、そこは最大の焦点です。
過去の曲は、卒業生が来て一緒に歌うのが恒例でしたが、今年は「全員に出演依頼をしたのだが、スケジュールが合わない人が多すぎた」(1月16日、秋元康氏Google+)ということで、卒業生の出演はナシに。それが来年はどうなるのかポイント。やっぱりチームKの「支え」(メンバーの出会いを歌ったバラード)、「16人姉妹の歌」(チームK自己紹介ソング)は、初代チームKだけのものなので、せめて大堀恵、野呂佳代は出てほしいというのがファンの総意でしょう。その2人も参加し、3月のコンサートで全員卒業となったSDN48も、楽曲はノミネートされているので、昨年、卒業を惜しむファンの熱意で実現した“「孤独なランナー」3位”というミラクルがもう一度起こるのかにも注目。また、恒例の「てもでもの涙」「First love」を誰が歌うのかも気になるところですね。
――「てもでもの涙」には、深いエピソードがあるようですね。
本城 過去5回の『リクエストアワー』で、唯一公演ユニット曲でベスト3に入ったのが、柏木由紀と佐伯美香(ひざのケガで09年卒業)の「てもでもの涙」。この楽曲の持つ切なさがそうさせるのか、ドラマティックな物語が紡がれています。09年は、ケガで佐伯はイスに座って、柏木と披露。10年も12位と高順位をキープするも、柏木と高城亜樹のペアで披露され、会場はなんともいえない雰囲気に。さらに、この年にはフレンチ・キスとしてこの曲をカバーし、今度はそのバージョンが初披露されるかも……と思いきや、11年は佐伯が、ケガを治して登場。佐伯は立って歌い、「(リクエストアワーで)初めて立って歌えた」と告白。この時、曲の間奏で一瞬だけ、柏木が佐伯の手を握るんですよ。そこで、もう大号泣(笑)。
そして、12年は卒業生が出ないということで誰が歌うのか注目される中、柏木と松井玲奈で披露。玲奈はこの曲の物語がわかっているので、プレッシャーを感じながら、誠実に曲と向き合ったことをブログに長文で綴っています。さらに、SKE48チームE公演では、金子栞と中村優花のペアが歌い、中村は今年2月に卒業。その中村と佐伯がこの曲が縁で、Twitterで交流するぐらい1曲を巡ってこんなに多くのドラマが生まれている稀有な曲。ほかにもコンサートでは大島優子と篠田麻里子、島崎遥香と大場美奈など、さまざまなペアで歌い継がれています。さて、来年は柏木と誰がこの曲を歌うのか? 再び玲奈なのか? チームEで柏木と同じくペアが卒業した金子なのか? あるいは柏木とチームが分かれてしまった渡辺麻友という可能性もあるかも。いずれにせよ、イントロだけで私が泣くのは確定です。
――1曲だけでそれだけ語るのには、もうドン引きですよ(笑)。早く予想に行きましょう。
※『リクエストアワーセットリストベスト100 2013』25位まで予想
1位 ファースト・ラビット 初登場
2位 ヘビーローテーション 12年1位
3位 奇跡は間に合わない 12年24位
4位 狼とプライド 12年45位
5位 思い出のほとんど 初登場
6位 走れ!ペンギン 初登場
7位 チームB推し 12年5位
8位 君のことが好きだから 12年12位
9位 Everyday、カチューシャ 12年2位
10位 泣きながら微笑んで 12年9位
11位 真夏のSounds good! 初登場
12位 夜風の仕業 12年10位
13位 上からマリコ 初登場
14位 抱きしめちゃいけない 12年8位
15位 Bird 12年13位
16位 枯葉のステーション 12年17位
17位 思い出以上 12年49位
18位 ギンガムチェック 初登場
19位 UZA 初登場
20位 くるくるぱー 12年14位
21位 愛しきナターシャ 12年6位
22位 孤独なランナー 12年3位
23位 ハート型ウイルス 12年15位
24位 フライングゲット 12年4位
25位 風は吹いている 12年7位
本城 予想1位は、「ファースト・ラビット」。ドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』の主題歌で、一言で言えば“秋元康文学の真骨頂”。希望の象徴である洞穴に飛び込んだウサギが、傷つきながらも夢を追い求める姿をAKB48になぞらえた曲。秋元氏が「歌詞はAKB48の観察日記」と公言している通り、「初日」「支え」「Pioneer」「お待たせSet list」「僕は待ってる」に代表されるメンバー観察型自己言及ソングの頂点です。
AKB48の歌詞はメンバー、ファンが起こす“奇跡”の軌跡を、秋元氏が観察し、歌詞として提示。その言葉にメンバーが励まされ、支えられ、さらに成長していくという好循環が生まれている。私はこれを「共同幻想型歌詞」と呼んでいます。
危険を恐れず、夢に挑む“Pioneer”となった「ファースト・ラビット」は、卒業した前田敦子そのもの。曲ができたのが先ですが、その点には一種の必然すら感じてしまう。
一般的に、プロデューサーという肩書きの人は全部の事項を自分で決定したがるものだけど、秋元氏はそこをメンバー、ファン、そして時代の趨勢に委ねて、多少のハプニングも糧にして、“時代と合気道”しながら、作品に昇華させている。そこが、常に「最新のAKB48が最高のAKB48」でいられる理由。
――歌詞についてはどう捉えてますか?
本城 「ファースト・ラビット」は、キュートな曲でありながら、Cメロで「誰も赤い血を流して生きてることを実感するんだ 命を無駄にするな」と生々しいまでの言葉が出てくるところが文学的です。ファンタジックな世界の中に突然、“赤い血”が放り込まれることで、曲がよりヴィヴィッドになる。“赤い血”が象徴するのは痛みであり、それは今という時代へのメッセージ。現代は言うなれば、“無痛・無縁社会”ですよ。
ネット通販、ICカードがあれば、人と会話せずともモノは買えるし、電車も乗れる。職業によっては、仕事もメールで済んじゃう。1週間ぐらいなら、他人としゃべらずに生活することもできるかもしれない。そんなことを思っていた時、風呂場でスッ転んで、指から血がじゃんじゃん出た。でも、その時、久々に実感したんですよ……「俺って、生きてるんだ……」って。改めて、「痛みこそが生の証明」だと思った。痛みのない人生は、生きてないのと同義だと。幻冬舎・見城徹社長も「朝起きて憂鬱なことが3個ないと不安」って話だし。痛みや憂鬱がある生活のほうが、それが解消されたときの充足感、カタルシスも大きい。「傷つくたびに大人になるよ」って歌詞も今、再組閣で切磋琢磨し、変化の過程にあるAKB48にシリアスに響くね。
サウンド的には、オルゴールの音色から始まって、クリーンなギターも胸にぐっと来る。超絶王道ポップスだけど、こういうメッセージありきのような曲でも、この“曲先(曲に歌詞を付ける。反対に、詞に曲を付けるのは、“詞先”)”で、曲に合わせて、歌詞付ける秋元さんってすごいと改めて思うね。ポピュラリティーと明確なメッセージのバランス感覚の面でもAKB48の楽曲の中でもベストの仕上がり。
ちなみに、テーマがラビットなのは、2011年がウサギ年で、その時のAKB48の観察日記だからとも思うし、「因幡の白兎」や、老人を救うために自ら火に飛び込んだ「月の兎」の伝承すらも感じる。現在、3代目チーム公演でも、チームA・Kが歌っていて、メンバー人気も高い曲。2年連続1位の「ヘビーローテーション」の3連覇をこの曲が食い止めると予想します。
――2位が「ヘビロテ」で、3位は「奇跡は間に合わない」ですか?

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本城 「ヘビロテ」は“レペゼンAKB48(AKB48の代表)”なので、2位ぐらいに置いておいて、3位は宮澤佐江のユニット曲「奇跡は間に合わない」。改めて、AKB48において宮澤がもたらしてきた貢献っていうのは大きいなと思うわけです。キャッチフレーズである「陽気・無邪気・元気」そのままの優しさは、唯一無二の存在。チームKでも、強そうに見えて実は脆すぎるツインタワーの盟友・秋元才加を支え、人前では弱さを見せたがらない“心友”大島優子の味方をしてきたのも宮澤。柏木由紀には、彼女が公演デビュー前にチームKのツアーに出ることになって、その時にも手紙を送って励まし、それ以降、AKB歌劇団でペアを演じて、ファン公認のカップルになった。後輩にも優しくて、研究生の名前もすぐに覚えて、「仲間なんだよ」って居場所を作ってあげる人。もちろん、ファンにも優しくて、イケメンガールだから女の子のファンも多い。でも、時々優しすぎて誤解されて傷ついちゃう。そんな世界一性善説な人なんだろうね。彼女がSNH48に移籍する決断を下し、11月11日の西武ドームでの全国握手会で海外移籍する4人が最後にファンへの思いを語る時間があった。ほかの3人は言葉を選びながら話をする中、宮澤は覚悟が決まっているように「AKB48グループを世界で広めたい。一つ一つの壁を乗り越えて自信につなげて、進化してまたここに戻ってくる」って話すわけよ。古参のファンの人はわかると思うけど、宮澤って昔は公演でもカミカミだったの。そんな子がこんなにスラスラと熱いメッセージを語るんだと思って、泣けたね。
そんな彼女を応援するべく、「奇跡は間に合わない」は、今回の『リクエストアワー』でファンも上位にしようと「奇跡は間に合うプロジェクト」って画像を作って、拡散中。これは上位固いですね。
――4位は卒業するSKE48・矢神久美と、木崎ゆりあの「狼とプライド」。
本城 4位はまさかの矢神久美卒業で「狼とプライド」。SKE48のファンは結束力があるので、10月開催の『SKE48リクエストアワー 2012』で「ごめんね、SUMMER」のカップリング曲である「羽豆岬」を1位にして、卒業する“メアリーダー”平田璃香子に最後のプレゼントをあげられる。その統率力はすごい。矢神はアニメ『AKB0048』、ドラマ『マジすか学園3』(テレビ東京系)とメディア露出も増え、SKE48も新劇場が12月9日オープンで「ここから」という時に卒業はもったいないけど、決意は固いでしょうから、最後にドカンと、AKB48のファンにも名をとどろかせてほしい。楽曲的にも「狼とプライド」は“送られ狼”を描いたスウィートな曲です。
――5位はアルバム『1830m』収録の「思い出のほとんど」。

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本城 前田敦子と高橋みなみ“あつみな”の揺るぎない絆を描いた名バラード。友情、絆、縁、運命……どんな言葉を使っても、陳腐になるぐらい固く厚い信頼を寄せ合った同い年、同期の2人に贈られた珠玉の名曲。AKB48のシングル、チームAの曲のほとんどはこの2人の歌い出しで歌ってきたわけで、ハーモニーも安定。オケもシンプルでいながら、サビでせめぎあうストリングスの音も美しい。Bメロからサビの展開が卑怯すぎるぐらい泣ける。
そして最後に「あなたの顔や声が地図になる」で、涙腺の堤防完全決壊。音楽の教科書に載せていいレベル。あつみなだけの曲であり、捉え方によっては、長年連れ添った恋人同士がなんらかの事情で別れなければならなくなった時の曲にも聞こえる……という普遍的な曲でもある。
前田敦子関連曲で上位に1曲は来ると予想。シングル「永遠プレッシャー」収録の「Music Video Request 2012」で3位なのは、「桜の花びら~前田敦子 solo ver.~」だけど、迷った果てに、こっちかなと。結局ファンは、メンバー個人を応援しつつも、そのメンバーがどのメンバーと仲が良いのか、脳内で相関図を作るのが楽しいんですよ。このペアは仲がいいとか、非公式ユニットを作ってるのを見て、AKB48という箱庭を観察して、一喜一憂するのも醍醐味。大島優子と渡辺麻友の“お尻シスターズ”とか、北原里英と指原莉乃の“りのりえ”とか、SKE48の2次元同好会とか、NMB48のWINGとか、いっぱいあるわけですよ。で、中には梅田彩佳、大島優子、松原夏海、野呂佳代の“梅島夏代”の「エンドロール」のように、曲にまでなったりする。そのひとつの頂点が、この「思い出のほとんど」。東京ドームの2日目で歌われて、直後にたかみなのソロデビューが発表されたのも、この曲に新たな意味をもたらした。もう歌うことはないんじゃ? と思ったけど、毎年『リクエストアワー』で歌う曲であってほしい。
――6位は「走れ!ペンギン」。

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本城 チームが消滅してしまったチーム4の曲。当初は昨年のじゃんけん選抜の曲だったが、篠田麻里子優勝で「上からマリコ」になり、こちらがチーム4に贈られた。ラブソングなんだけど、意中の彼の“センター”を目指すという設定で、まさにチーム4のために書かれた曲。「チーム4はこの16人だけです」の言葉を残してチームが消滅してしまった彼女たちのためにファンが投票しており、Twitterには「#ペンギンプロジェクト」のハッシュタグも作られている。イントロでセンターに呆然と立ち尽くす(という振りの)島崎遥香は、“ぽんこつ”そのもので、2コーラス目は「飛べよ! ペンギン」になるのもポイント。
作曲は、ZARD「負けないで」、WANDS「世界が終るまでは…」などで知られる、日本の作曲家別シングル売り上げ第3位の織田哲郎。実は、FIELD OF VIEWのキーボードだった安部潤が渡り廊下走り隊「ギュッ」「アッカンベー橋」を編曲をしていたり、最近では、PAMELAのギタリストだった小澤正澄がSKE48「アイシテラブル!」、AKB48・スペシャルガールズ「3つの涙」などを提供していたり、元ビーイングの人がAKB48に曲を書いているのも、個人的には興味深いところ。本当にAKB48は多ジャンルの作家さんが曲を書いているので、新曲が出るたびに作曲・編曲クレジットも要チェックです。
――そのほか、今回の『リクエストアワー』の注目ポイントは?
本城 やっぱり、4日目はシングルと、人気メンバーのソロ曲でしょうね。総選挙の結果を反映したアンダーガールズ「なんてボヘミアン」、ネクストガールズ「ドレミファ音痴」、フューチャーガールズ「Show fight!」も上位に入りそう。ファンが積極的に投票を呼びかけているSKE48チームE「みつばちガール」、NMB48「三日月の背中」、HKT48唯一のノミネート曲「HKT48」も入るでしょうね。予定調和をぶち破るすごいサプライズだらけの展開を期待します。