“一発屋”AMEMIYAの貴重な持ち駒がヒドイことに……『ゴッドタン』の斬新回 

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 10年ほど前、高橋ジョージが自身の唯一のヒット曲といっていい「ロード」(THE 虎舞竜)を、TOYOTAの純正カーナビCMで替え歌にして熱唱してる姿を見た時は、我が目を疑った。確か、「地デジの付いているナビは~幸せなんだと思う~」という歌詞だったと思う。  通常、パロディとは他者によって行われるもの。自らが作り、自らの存在を世に押し出した作品を、自らの手で茶化してみせる。あの時、高橋に対し「プライドはないのか!?」という声が市井からチラホラ上がったことを、私ははっきりと記憶している。  一方、芸人に関してはどうだろうか? 新陳代謝の早いお笑い界。「売れるよりも出続けるほうが難しい」とはよくいわれることだが、こうなると、打ち上げ花火のような押しの強いヒットギャグとともに売れては消える一発屋が量産される状況となってしまう。この現代に世知辛さを感じるのも事実だ。  そんな中、6月25日放送『ゴッドタン』(テレビ東京系)にて、画期的な企画が実施された。題して「ちょいエロ歌謡祭」。歌ネタやリズムネタを持つ芸人に持ちネタを“エロく”アレンジしてもらい、女性が引かない、ちょうどいいエロさの歌ネタを披露してもらうという趣旨である。  招集された芸人たちは、8.6秒バズーカー、ムーディ勝山、2700、AMEMIYAと、見事に一発屋ばかり。そう、彼らはまさに「一発」しか持っていない。その貴重な弾を、なんと自らの手で脚色してみせる。どのような改変が行われたのか? これが、どれもなかなかにひどかった。だからこそ、ある意味、見ものだった。  例えば、8.6秒バズーカーの「ラッスンゴレライ」。シチュエーションは「風俗の客とキャッチ」だ。はまやねん(太めのほう)が風俗店を探し、ある店の料金表を見て「ちょっと高いな」と帰りかける。その刹那、キャッチ役である相方の田中シングルが出てきて、アレンジ芸が始まった。 *** 田中「ちょっと待って、ちょっと待って、お兄さん。オプションいろいろ付けますよ! 生フェラ、ゴムなし、OKですよ。安くするから見てってよ!」 はまやねん「ラッスンゴレライ、ラッスンゴレライ。欲しいオプションはラッスンゴレライ」 はまやねん「ラッスンゴレライ、ラッスンゴレライ。最後はお口でラッスンゴレライ」 田中「ちょっと待って、ちょっと待って、お兄さん。ラッスンゴレライってもしかして、『最後はお口で」』っていうことは、ゴックンされたいちゃいますのん?」 ***  ……書いていて、不憫になってきた。あまりにもゲスすぎるじゃないか。でも、これがウケたのだ。筆者も今回、彼らの芸で初めて笑った。これは、ブラッシュアップされたということになるのか? コンセプトはアレだが、よく練り込んでいると察することができるし、意外な一面を見せてくれた彼らを見直している自分が確かにいる。 ■秀逸なネタを“名刺代わり”にし、トークで笑かしにかかるAMEMIYA  ただ、このようなエロネタで再び世に出ていくのは不可能だろう。だって、モラルがなさすぎるので。そんな中、新機軸を見せてくれたのは、AMEMIYAだ。彼が今回披露したネタのタイトルは「子作りはじめました」。子種を望む嫁と、長く連れ添った嫁相手にどうしても興奮できない夫の悲哀を表現した一曲である。 「嫁に似てる女優のAV見てイメトレもした ハードル下げるために逆に超熟女ものも見た それでも不甲斐ないわが息子 愛する嫁のためとうとう 環境チェンジはじめました!」 「ラブホ、公園、ビーチ、雑木林 コスプレもお願いした。ナース、CA、喪服、火星人 それでもうまくいかない 焦った俺、手足に手錠して よだれ玉くわえました!」  さすがのクオリティ。もともと、ネタの内容には定評のあった彼なので、期待通りの出来といえるだろう。  しかし。今回彼が爆笑をさらったのは、実はトーク部分なのだ。とにかく、テンションがおかしい。妙にゆったりしてる。例えば、司会者のおぎやはぎ・矢作兼や審査員・劇団ひとりとのやりとりが変であった。 *** 矢作「AMEMIYAは、あまり下ネタをやりたくなかったっていうことですけども?」 AMEMIYA「んー、……そうですねえ(無言)」 ひとり「なんなの、その間は?」 矢作「大衆演劇の人の間じゃねーかよ!」 AMEMIYA「(ほかの芸人を見て)既婚者の方、多いよね? やっぱりね、だんだん弱くなっていくんですね。やっぱり弱くなっている自分がいるけど、まぁ、奥さんを愛しているんだよな」 ひとり「うるせーよ(笑)」 ***  結果、この回はAMEMIYAが優勝者に輝いた。その勝因は、紛れもなくトーク部分。久しくテレビで見ていなかった彼は、いつの間にか素のトークでのテンションがおかしなことになっていたのだ。  ある放送作家が「ネタが面白いのは当たり前。ネタを名刺代わりにして、芸人は普段のバラエティ番組でテストされていく」と語っているのを聞いたことがあるが、やはり芸人の生命線は本人自身の魅力なのだろうか?  そう考えると、自身のヒットギャグを茶化す今回の企画はアリだったのかもしれない。ネット上では「近年まれに見るクズ回」と酷評の嵐であったが、賛否を巻き起こしてこその『ゴッドタン』という気がしないでもない。お笑い、芸人、テレビ、芸……。さまざまな角度から“本質”に迫ってみせた、近年まれに見るほどの有意義な回だったと断言したい。 (文=火の車)

「嫁が久々に笑ってくれて……」“調子に乗れない芸人”AMEMIYAインタビュー

 7月25日、ピン芸人のAMEMIYAが『日本の歴史はじめました』(双葉社)を出版した。「冷やし中華はじめました」という歌ネタで一世を風靡した彼が、日本の歴史を歌にするという大胆な試みに挑戦。付属のDVDにはAMEMIYAが熱唱する映像も収録されていて、一石二鳥の内容となっている。この本が完成するまでの知られざる苦労について聞いてみた。 ――この本では50個のテーマごとに歴史的事実をもとにした歌が載っていますね。これは受験勉強などの役に立つと思いますか? AMEMIYA まあ、覚えておくと多少は役に立つのかなと思うんですけど、史実が入ってるのは歌の中の前半だけですからね。後半はAMEMIYAの妄想です。豆知識とかではないので、えっ、大丈夫かな、という不安はこの仕事のお話を頂いたときからありましたし、今もありますね。 ――ある意味では、AMEMIYAさんの歌ネタが50本入っている「ネタ本」という感じですよね。 AMEMIYA そういうことになりますね。 ――ということは、ネタを作る苦労は相当あったんじゃないですか? AMEMIYA はい、非常に苦労しました。これをやるというお話を頂いたとき、結構忙しい時期だったというのもあって、50曲作るのに時間が3日ぐらいしかなくて。非常に苦労したんですけど、何とか作って収録に臨んだんですね。そうしたら、最初の10曲ぐらいを録ったときに監督さんに「AMEMIYAさん、このネタってこれでいいですか? もうちょっといけるんじゃないですか?」って言われたんですよ。それで僕も「その言葉を待っていた」って思ったんですよ。やっぱり妥協するわけにはいきませんから。そこからは直しながらやっていったので、朝から始まって夜の9時ぐらいまでに終わる予定だったのが、結局は次の日の朝までかかりましたね。だから、DVDを見ていただくとわかるんですけど、曲によって元気良く声が出ているのもあれば、声がかすれてるところもあるんですよね。そこも楽しんで見ていただければいいかなと。 ――完成したDVDはご自分でもご覧になったんですか? AMEMIYA 久々に僕の部屋に嫁を入れて、一緒に見ましたね。それまであんまり口をきいてくれなかったんですけど、このDVDを見て久々に笑ってくれたので良かったです。これを出すときは本当に不安だったんですよ。「大丈夫かな?」って。自分で一生懸命考えて出してるわけですけど「面白いのかな?」みたいな。 ――他の人がどう思うかわからない、ということですか? AMEMIYA 自分ではそのときは面白いと思って出してるんですけど、その後に「これ、面白いのかな?」みたいな気持ちになりますね。「冷やし中華はじめました」も、最初は面白いかどうかわからなくて。 amemiya002.jpg ――最初から自信があったわけじゃない、と。 AMEMIYA そうですね。『あらびき団』で最初にやらせていただいて、反応を見て、ああ、これは面白いんだなって気付きましたね。ボケもツッコミもないし、そんなにわかりやすい笑いじゃないと思うんですよ。はじめは自分でツッコんでたんです。「12月20日 うちのラーメン屋でもとうとう 冷やし中華はじめました」「いや、遅いわ!」って(笑)。でも、『あらびき団』でやるときにああいう形になって。最初は大丈夫かなあって思ってました。そしたらすごくウケて。そこから徐々に自信をつけていった気がします。 ――それ以降は一気にテレビに出る機会も増えて、最近は充実していたんじゃないですか? AMEMIYA でも、危機感はすごい持ってますね。普通の芸人じゃないって思ってるところがあるんで、あんまり調子に乗れないんですよ。トークも苦手だし、そういうことで笑いを取ってきたタイプじゃないですから。やっぱり自分しかできない何かを作って、自分なりの生き方を確立しないといけないと思うんです。だからとにかく、お仕事をやらせていただくときは全力でやってます。なんか、みんなにもっと安心してAMEMIYAで笑ってほしいんですよ。でも、なかなか笑ってくれないなあ、って思ってますね。 ――まだ試行錯誤している? AMEMIYA そうですね。とにかく一個一個全力でがんばって、この道を極めたいと思ってます。……こんな真面目なこと言ってていいのかな?(笑) (取材・文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●AMEMIYA(あめみや) 1978年、千葉県生まれ。高校卒業後、東京NSCを経てワタナベエンターテインメントに所属。03年からミュージシャンとして活動し、10年にふたたびお笑い活動を再開する。『R-1ぐらんぷり2011』準優勝。