
『ココロコネクト』公式サイトより
「ドッキリ」というと、古くから存在するバラエティ番組の演出の一つである。仕掛け人やスタッフが事情を知らないターゲットのタレントに対して、ウソの番組企画やいたずらを仕掛けて、そのリアクションを視聴者が楽しむという「ドッキリ」は、タレントの素の表情やリアクションが飛び出し、予測不能の笑いを生むことから、バラエティ番組の定番企画となっている。
しかし、ドッキリを仕掛けられることでタレントのイメージが崩れることや、ドッキリ企画を受けた事務所やテレビ局とタレントの関係が悪化することも少なくないことから、近年はイジられてナンボのお笑いタレントが、そのターゲットとなることが多い。つまり「ドッキリ」はリスキーな企画でもあるのだ。
そんな「ドッキリ」に安易に手を出してしまい、ファンのみならずアニメ業界を巻き込む大炎上を引き起こしてしまったのが、アニメ『ココロコネクト』(TOKYO MXほか)である。
7月からスタートした『ココロコネクト』は、人間関係に重大な影響を及ぼす超常現象に巻き込まれた高校生の男女5人の姿を描く、日常系SF。人気ライトノベルのアニメ化作品ということで放送前から注目を集めていた話題作であった。しかし、6月24日に開催された第1話先行上映会で番組スタッフが一丸となって用意したドッキリ企画が、今になって大きな問題を呼んでいる。
このイベントは出演声優のほかに、シークレットゲストとして声優・市来光弘が出演。「アニメのオリジナル企画がある」と聞かされていた彼は、てっきり「アニメのオリジナルキャラ」を演じることが発表されると思っていたのだが、事態は思わぬ方向に。突然「宣伝部長」に任命され、『ココロコネクト』公式Twitterアカウントのフォロワーを2万人以上にすること、そして、キャンペーンカーに乗って全国各地に赴き、プロモーション活動することを命じられたのだ(当然、アニメ本編への出演はない)。
実はこの企画、オーディション段階からの仕込みだったらしく、現場ではオーディション会場で必死に演技をする市来の姿も上映された。オーディションを受けた上でイベントに呼ばれた市来は本気で「アニメに出演できるもの」と信じていた模様で、ショックのあまりその場で崩れ落ちてしまうも、その姿に他の出演者やスタッフは爆笑。その意味では「ドッキリ大成功」だったといえるだろう。
しかし、その後、市来は周囲のスタッフや同業者に、ダマされた怒りと屈辱を何度も吐露。先輩声優・杉田智和や今井麻美のラジオ番組に出演した際には、彼らから同情とともに慰めの言葉をかけられ、特に杉田に関しては「俺がやられたら、その場の人間の顔全員覚えて帰る」と、『ココロコネクト』スタッフに対して怒りをあらわにする始末。そのほか、事態を知った業界関係者がこの「事件」について、Twitterで続々と発言。その大半が市来を擁護するものであったが、中には放送作家・稲葉央明氏のように「イジメやタチの悪いイジリやハラスメント以外の何ものでもないと思う」とスタッフを断罪するコメントも。現在この件に関して、関係者および発売元のキングレコードは一切の沈黙を貫いてはいるが、日増しに周囲の批判の声は大きくなるばかり。
今回の企画に関わった関係者は、この事態をどう沈静化させるつもりなのだろうか。なお、この炎上を受けて制作会社シルバーリンク代表取締役・金子逸人氏は「市来さんは14話から出演が決定しております」「これは企画当時より決定しておりました」とTwitter上で発言するも、直後に削除。現場の混乱具合がうかがえる。
ちなみにこの炎上事件の発端となったのが、主題歌を歌うユニットeufoniusのコンポーザー・菊地創氏がTwitter上で、歌手の桃井はるこに暴言を吐いたという事件だ。この一件をきっかけに、菊地氏の過去の問題発言がアニメファンによって発掘され、そこから今回のドッキリ企画についての発言も発見。そこから芋づる式に、関係者の発言や先述の市来のツイートも発掘されたというわけである。
くしくもアニメ本編のように、現実世界でも人間関係に大きな問題を発生させてしまった『ココロコネクト』。願わくば、物語のようにハッピーエンドになってほしいものである。
(文=龍崎珠樹)
■バックナンバー
【第20回】新ジャンル? 「不憫萌え」の女王・高垣彩陽の演技が光る話題作『ソードアート・オンライン』
【第19回】「売りスレ」では計測不能!? アニメDVDの売り上げを陰で支えるレンタル市場
【第18回】「求められるのは声優ソングばかり……」表舞台を追われたアニソン歌手の現在
【第17回】美少女たちが追いつめられる姿にゾクゾク!? リアル系ロボットアニメ『トータル・イクリプス』
【第16回】夏アニメの穴馬!? “いわく付き”SNSゲームアニメ『探検ドリランド』に熱視線
【第15回】 キーワードはホモソーシャルな描写!? 今夏は「乙女ゲーム原作アニメ」が熱い!
【第14回】「まるで90年代の夕方6時枠アニメ!?」『モーレツ宇宙海賊』の大器晩成ぶり
【第13回】もはや“声優アイドルフェス”!? アニソン重鎮不在の「アニサマ2012」に不安の声
【第12回】「期待外れ?」「これぞ京アニ?」 賛否両論『氷菓』の本当の見どころ
【第11回】「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』
【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号
【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは?
【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情
【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー
【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!?
【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』
【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』
【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』
【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』
【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!