オードリー若林まさかの号泣!『日曜×芸人』で何が起きたのか?

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テレビ朝日『日曜×芸人』
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。  オードリー若林正恭が号泣した。それも、周囲の共演者が「なんなの、これ?」と戸惑うような、唇を震わせながらのマジ泣きだった。若林といえば、感情を表に出すことが少ない、ひねくれた性格の持ち主として知られている。感動的なVTRを見ても薄笑いを浮かべてしまうような、そんなタイプの芸人だ。その若林がテレビで泣く、というのはなかなか想像ができない光景だ。  その“事件”は『日曜×芸人』(テレビ朝日系)で起こった。この日の企画は「だんだん減らそう 5連続チャレンジ! カロリーバイキング」。高級ホテルのビュッフェで一人ずつ料理の種類と量を選び、上限1000キロカロリー、下限100キロカロリーの範囲でだんだんカロリーを減らしていくゲーム。レギュラーの若林、バカリズム、山崎弘也とゲストのSHELLY、モデルの有村実樹の5人が連続で成功すれば、選んだ高級料理を全員で食べられるというルールだ。「前菜」「メイン」「デザート」の3回のチャンスが与えられ、そのすべてに失敗すると食べられない上に、食事代を自腹で支払わなければならない。  けれど、普通に考えて泣く要素はゼロである。  まず「前菜」。最初に挑戦したのが若林だった。1000キロカロリーを超えてはならず、できるだけ1000キロカロリーに近づけたほうが、2人目以降が有利になるという条件の中、若林は1690キロカロリーを出してしまう。いきなりの大失態。共演者に「ええー! ウソ!?」と軽く非難されながらも、もともとゲーム自体を楽しむ番組ではなく、出演者のやりとりを楽しむこの番組。いつものにこやかでユルい雰囲気そのままだった。オープニングの予告で泣いている姿が映されていたから、“ああ、ここからだんだんと追い詰められていったのかな”と想像できるが、そうと知らずに見れば、なんということない、ごく当たり前の見慣れたシーン。泣きだす雰囲気はみじんもなかった。  出題は「メイン」に移る。最初に選んだのはSHELLY。1000キロカロリーに近づけなければならないのに、出した数値は439。残り4人で439~100キロカロリーのわずかな間に収めなければならないという、成功には絶望的な状況になった。しかしこの後、山崎、有村、バカリズムは神がかった予想で次々とクリア。成否は、最後の若林の選択にかかることになってしまった。  そのプレッシャーに、若林は押しつぶされそうになっていた。  伏線はあった。まず、いきなり「前菜」で失敗したこと。そして、この同じ企画を行った前回の放送でも、若林は同じ状況で外しているのだ。その時の恐怖が蘇ってくる。 「テレ朝でこんな緊張するの『M-1(グランプリ)』以来だよぉ~」  224~100キロカロリーを選べば成功という状況の中、なかなか決められず行ったり来たりを繰り返す若林。そしてたっぷり時間をかけて決めた料理の結果は、無情にも75キロカロリー。失格だった。  「ウソ!?」「ここまでいい流れで来てたのに!」と責められる若林は、絶句して固まっている。失敗したため食べられず、それを代わりに彦摩呂が食べるというルール。その試食中もショックでリアクションができず、苦笑いを浮かべるだけの若林。それに気づき「リアクションまでが僕らの仕事よ」とイジり、笑いに変えるバカリズム。何も言い返せず、目に涙をためる若林は「すいやせん……」と声を振り絞った。そんな若林に共演者たちは戸惑っていた。  カメラのテープチェンジで収録が中断している間も、ショックの色を隠せない若林にバカリズムは「バラエティ番組!」と大笑い。もちろん、この番組はゲームで成功することが目的ではない。面白い番組にすることが目的だ。ゲームに失敗しても面白くなればいい。しかし、挑戦する前にバカリズムが言った「テレビ的にも、お願いしますよ」という言葉も、若林の頭に残っていたのだろう。ここで失敗しては、テレビ的な盛り上がりも損なわれてしまう。にもかかわらず失敗してしまった、と。しかも、失敗した時に面白いリアクションを返せなかったという思いもあっただろう。ついに若林の涙腺は決壊し、唇を震わせ号泣してしまったのだ。「テレビで初めて泣きました……」と。  「それが、ココ?」「今じゃないだろ!」と、共演者たちは驚愕と困惑の入り混じった爆笑。『M-1』でも泣かなかった若林は何かの感動VTRでもなんでもなく、バラエティ番組のお遊びのゲームでマジ泣きをしてしまったのだ。 「スタッフさんの思いとか考えたら……申し訳なくて……」 と涙ながらに語る若林に「こいつ、なんなんだよぉ!」とザキヤマは呆れていた。  YouTubeで配信された未公開映像の中で、泣いてしまった決定打について若林は「マジでSHELLYの顔が怖くて……」と明かした。確かに失敗した若林にSHELLYは鬼の形相で迫っていた。だが、ここからは完全に推測の域を出ないが、この証言はこの“事件”を笑いの範疇に収めるための半分は真実を含んだ“ウソ”ではないだろうか。もちろん、そうやって女性に責められたのも、若林にとっては大きな傷だっただろう。だが、それ以上に、それに対してうまく笑いで返せなかった自分に情けなさを感じていただろう。そして最後に決定的だったのは、おそらく、みんなに責められている状況でモデルの有村がつぶやいた「かわいそう」の一言ではないか。芸人がイジられるのはあくまでも笑いのためだ。当然、この時も若林はショックで的確な返しができない代わりに「ただただ絶句する」という受けのリアクションを消去法の中で選択し、精一杯笑いに変えようとしていたはずだ。しかし、それを「かわいそう」に見られてしまった。それは芸人として最大の屈辱だ。  そんなさまざまな思いが交錯し、正面衝突した結果、彼の涙腺は決壊してしまったのではないだろうか。テレビで芸人が涙を見せるなんて、芸人失格なのかもしれない。けれど、その涙は芸人としての忸怩あふれる涙だったように見えた。  最後は「デザート」に挑戦。若林もなんとか成功し、4人目のバカリズムが失敗。SHELLYや山崎に責められるバカリズムは、番組の流れをくみ、若林の涙にカブせようと、泣く準備に入る。  しかし、それよりも早く、まったく関係のない若林がまた泣きだしてしまった。「本はといえば……僕が……」と。もはやどんな涙なのか、さっぱり理解不能だ。バカリズムは身をくねらせて爆笑しつつ、号泣する若林にツッコんだ。 「俺の(見せ場の)シーン、取るなよ! 俺の場面だろうが!」 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

人見知り芸人の処世術が爆発!? 『日曜×芸人』が生み出す「ポジティブ」の正体

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テレビ朝日『日曜×芸人』
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。  『日曜×芸人』(テレビ朝日系)は、日曜の夜の憂鬱な気分を吹き飛ばすべく、ゲストおすすめの「ポジティブになれるもの」を体験するというコンセプトの番組である。が、そんなことより、バカリズム、オードリーの若林正恭、ザキヤマこと山崎弘也のひたすらムダなやり取りを眺めるのが何よりこの番組の魅力であり、日曜の夜っぽい。ゲストだってないがしろだ。その理由は「単にそのほうが面白いから」「3人が自分たちのムダなやり取りの応酬に夢中」というのもあるが、3人のレギュラー陣が全員「人見知り」である、ということも大きな理由のひとつではないだろうか。  バカリズムや若林が「人見知り」であることは『アメトーーク!』(同)の「人見知り芸人」の回などでよく知られているが、ザキヤマは一般的にその対極にいると思われている。事実、「人見知り芸人」では、エンディングの「人見知り克服講座」の講師として登場している。ザキヤマは人見知り芸人たちを前にして「人見知りの皆さんは、嫌われちゃうって思ってるんでしょ? 嫌われちゃうってことは、嫌われてないと思ってるんですよ。もうすでに、嫌われてるんですよ?(人見知りの人はまだ)嫌われてないと思ってるという傲慢さがあるんです」と言い放った。そして「深い話をしようとするから面倒くさい。ただ単にホメときゃいい」「自分がしゃべろうと思うからしんどい。どれだけ相手にしゃべらせるかが問題。あとはただ聞くだけ」などと具体的に指南。この講座でよく分かるのは人見知りの克服方法というよりも、ザキヤマが実は極度の人見知りであり、それをかなりの荒療治で克服したであろうことだ。何かをあきらめることによって得た、ガサツというキャラの鎧で守られた先天的な人見知りだ。実は3人の中で最も根深い人見知りは、彼なのではないだろうか。  若林は「面倒くさい」タイプの人見知りだ。彼は自分が「誤解」されてしまうのが許せない。格好つけていたり、気取っていたりするような「ぶってる」奴に見られるのも嫌だし、何も考えていないような薄っぺらい奴に見られるのも嫌だ。強い自我が許さない。だけど、自分のそういう複雑な心理が分かりづらいのも分っている。だから、心を閉ざしてしまう。面倒くさい。いわば若林は(自分のことを)「分かってちゃん」なのだ。だから、自分のことを分かってくれている人たちの中では、彼は人見知りなど感じさせない傍若無人っぷりを発揮する。昔からよく知る仲間たちを集めた『おどおどオードリー』(CSフジテレビONE)やラジオ『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)などでの彼は、地上波のテレビで見る若林とは別人のようだ。つまり、彼の人見知りは限定的なものなのだ。  バカリズムの場合は、結果的に人見知りのポジションに収まってしまったのではないだろうか。実際に気にし過ぎでやや内向きな性格ではあるが、もともとはみんなでワイワイやるのが好きなタイプであることは本人も語っている。しかし、その飛び抜けた想像力と発想力がそれを邪魔する。コンビを解消してピン芸人となると、「孤高の天才」というイメージが定着。バカリズムはそのイメージを引き受ける形で、自ら内向的で「気難しい」「とっつきにくい」「何を考えているか分からない」人見知りなキャラに収まった。いわば、ポジショニングとしての後天的な人見知りだ。事実、「コメ旬(Vol.4)」(キネマ旬報社)のインタビューで「僕はいまだに誰からも正解の扱い方が提示されてない芸人」だと語っている。  しかし、その突破口となる兆しはある。それが『ウレロ』シリーズ(テレビ東京系)によるバカリズムの「かわいさの発見」である。本人にとって意外だったようだが、『ウレロ』シーズン1では、バカリズムが「かわいい」という視聴者の反響が大きかった。バカリズムはこのイメージも引き受けた。「やっぱ、愛されることはすごい大事だなって思ったんです。あざといと思われようがどうしようが……むしろあざといと思われたうえで、さらにそれでもかわいいと思われてやろうと」(「ピクトアップ」[2012年8月号/ピクトアップ]より)。その「かわいい」イメージは、『日曜×芸人』でも随所に引き継がれている。  『日曜×芸人』で彼らが作り出す「ポジティブ」とは、まさに3人の芸人としての処世術そのものだ。若林がザキヤマにイジられまくるという構図を軸に、バカリズムがそれに追随したり、スカしたり、自らもイジられ役に回ったりしてその都度バランスを保ち、3人の関係性はポジティブな多幸感にあふれている。  しかし、徐々にではあるが、そのバランスが微妙に変わりつつある。若林が本性を時折見せ始めているのだ。いつか若林のお山の大将的な毒と暴力性が、バカリズムの「正解の扱い方」を導き出し、ポジティブという分厚い壁に隠されたザキヤマの素の部分を暴くかもしれない。そんな不意のカタルシスを、ほのかに期待してしまう。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ●【テレビ裏ガイド】INDEX 【第4回】大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り 【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』 【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義 【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意