なぜ、美しく改良すると"叩かれる"のか? 芸能人と美容整形 美の追求の倫理学

――「サイゾーpremium」内で、今もっともバズっている記事をお届け!!  発売中のサイゾー12月号の第二特集記事は『芸能人と整形の倫理学』。整形をカミングアウトする芸能人なども増えていますが、まだまだ芸能界のブラックボックスとして扱われている美容整形の賛否や正当性を考察しつつ、倫理学、社会学、歴史学的な見地で「整形」のタブーに挑みます! ■今回のピックアップ記事 『なぜ、美しく改良すると"叩かれる"のか? 芸能人と美容整形 美の追求の倫理学』(2013年12月号特集『芸能人と整形の倫理学』より) ――芸能人の告白や疑惑、大手美容外科の宣伝を通して、我々の日常でもその存在を認識する機会が増えてきた"美容整形"。それを「外見を改良し、美しくする手術」ととらえる向きもいるだろうが、その裏側には、生命倫理や人種差別に関わる問題などもはらんでいる。本特集では、「なぜ芸能人の美容整形が"叩かれる"のか」「美を追求するために、親から授かった身体にメスを入れることは罪なのか」ということを根底に、美容整形を倫理的にとらえ、整形大国韓国の実情、芸能プロ関係者の本音を浮き彫りにしたい。
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バラエティ番組で整形を告白した森下悠里。
 少しでも顔が変わった芸能人は"整形か!? "とネットで騒がれる昨今。こうした”疑惑”が囁かれる芸能人は沈黙を貫くことがほとんどだが、一方で、「メスを使わない手術はしたことがある」(グラビアアイドル・森下悠里)、「(鼻を指さして)イジりました」(モデル・小森純)など、ごく一部、その事実を認める発言をする芸能人もいるにはいる。また、新旧問わずメディアでは、大手美容外科の広告が増加。いつからか「プチ整形」という言葉が社会に広まり、美容整形は一般の人にも身近な話題となりつつある。  しかし、今現在も「芸能人と整形」をはじめとした美容整形の話題は、基本的にタブー視されることが多い。また、美容整形という文化の背後には、カネと権力といった芸能界ではおなじみの話題のほか、一般には報じられない業界団体の対立や、生命倫理、人種差別に関わる問題までもが横たわっているのだ。  まず本稿では、美容整形の歴史を遡りながら、それらの問題について考察してみよう。  美容整形の起源については諸説あるが、『美容整形と〈普通のわたし〉』(青弓社)の著者であり、松蔭大学の川添裕子教授によると、「外見への医療的介入は、紀元前1500年前のインドではすでに行われていた」という。 「その頃のインドでは、切断された鼻を再建する手術が行われていたようです。その背景として、鼻をそぎ落とす刑罰の存在が指摘されています。このインド式の造鼻術は、形を変えながら現代に伝わっていると考えられています」(川添氏)  なおその刑罰は、姦通の罪を犯した女性などを対象に行われていた。アメリカ美容整形ビジネスの光と影を追った書籍『ビューティ・ジャンキー』(アレックス・クチンスキー著・バジリコ)でも「顔を傷つけるのは明らかに社会による拷問だ。罪人に、ひと目見ただけでその人の罪がわかるような顔で生涯を送らせたのである」(同書P92)との言及がある。  そして美容整形という概念が明確になったのは15~16世紀のヨーロッパで、鼻の再建手術などが行われていたが、その当時のヨーロッパでは、不完全な鼻は特別な意味を持っていた。先の『ビューティ・ジャンキー』によると、欠損した鼻や病気などで変形した鼻は、売春婦や敗者の印であるとされ、当時の戦中、戦死した兵士は死してなお、鼻を切り落とされ屈辱を与えられたという。また、「鼻柱が陥没した鞍鼻といわれる鼻は、梅毒によって軟骨が侵された結果であり、こういう鼻は不健康で堕落した、社会の嫌われ者という立場にあることを示していた」(同書P93~94)のだ。  逆にいえば、整形で鼻の再建手術を行うことは、その人の社会性を取り戻す意味合いもあった整形手術は、その歴史の始まりから社会的に再認知されるという行為でもあったのだ。 ■形成外科を進化させた戦争による倫理観の変貌  一方で、倫理的な側面からは、そのような手術への風当たりは当時より強かった。 「中世ヨーロッパキリスト教社会では、再建手術であっても、"神の業への干渉"とみなされました。また当時、外科的処置は理髪師らによっても行われていて、外科全般の社会的な地位が低かったという面もあります。さらに麻酔や無菌手術が不十分だったので、整形に限らず手術自体が生きるか死ぬかという究極の選択でした」(川添氏)  現在の日本でいわれるところの整形に対する倫理観と同義に思えるが、その後、麻酔術や消毒法などの技術が発達。さらにキリスト社会が世俗化する中で、身体観も変化する。 「近代ヨーロッパ社会では、人の身体は『わたしが持っているもの』であり、『自然は科学によってコントロールできる』『身体は〈個人〉の思い通りになる』という考え方が生まれます。身体への医療的介入も神への冒涜とは考えられなくなり、現代的な美容整形を受け入れる土壌が出来上がったわけです。そして19世紀後半のドイツでは、鼻の美容整形も行われています」(川添氏)  しかし、形成外科の技術を美容へと転用しようとする医師への風当たりは強かった。 「患者をより美しくするため、あるいは老化をなんとかしてごまかすために医学という立派な専門的職業を利用するという考えは、見栄や虚飾を認めないピューリタン的道徳と真っ向から対立した」(『ビューティ・ジャンキー』P97)というのが当時の実情だったようだ。  そんな状況を変化させ、また形成外科の技術を急速に発展させるきっかけになったのは戦争だった。 「第一次大戦、第二次世界大戦などの近代戦では、兵士が被る顔の損傷も凄まじいものになり、その数も膨大になりました。そのような負傷兵たちの治療が求められた戦争は、皮肉にも形成外科医たちの実践トレーニングの場にもなっていたのです。従軍医師がさまざまな症例に当たる中で、外見の治療の技術は大きく発展し、のちの美容整形に役立てられていきました」(川添氏)  この影響もあったのか、第二次大戦後の1950年代中頃、広島で原爆によるやけどを負った被爆者が再建外科治療のためにアメリカに運ばれた際には、それまで欧米諸国で取り沙汰された「整形手術はモラルに反する」という主張が問題にされなかったという。 「訪米したのは全員女性で、『ヒロシマの乙女』と呼ばれた。彼女たちは皆若く(19~24歳)、やけどの痕は見るに無残であったため、全米の注目を浴びた。何度かの手術を経て大衆の前に現れた彼女たちは驚くほど美しくなっており、それをきっかけに美容外科が持つ素晴らしい復元力に関する議論が噴出した」(『ビューティ・ジャンキー』P107)  ここまで駆け足で美容整形の歴史を見てきたが、美容整形の技術は「美貌」を目指して生まれたのではなく、再建手術という「修復」を目的に発展してきたものだった。それが美貌を目指すものとして正当化されたのは、アドラー心理学の影響が大きいと川添氏は話す。 「美容整形に大きな影響を及ぼしたのは、アルフレッド・アドラーの『劣等コンプレックス』の概念です。アドラーは、劣等感は人間なら皆あるとして、『優越に向かう努力を刺激するものとして役立つ』と考えました。歴史学者のエリザベス・ハイケンは『プラスチック・ビューティー』(平凡社)の中で、1920年代から30年代にかけて心理学が流行するようになったアメリカで、アドラーの心理学、特に劣等感が一般の人々の心を掴んだことを指摘しています。そしてコンプレックスは『解消すべきもの』として浸透していきました」(川添氏)  こうした経緯を踏まえ、美容整形は倫理的に正当なものと認識されやすくなり、手術を希望する人も実際に増えていったという。 「それまでは無視されてきた『外見』の要素が医学に取り入れられ、外見の手術は『メスによる精神分析』と語られるようになりました。美容整形を受け、コンプレックスを払拭することで心の状態が回復する、患者の福利に寄与できる……ということです」(川添氏)  このように、身体のみならず心の問題にも関わるのが、医療における美容整形の特異さだ。医療ジャーナリストの大竹奉一氏は、「美容整形が一般医療以上にクレームが多くなる理由のひとつも、そこにある」と話す。 「一般医療は、病気や痛みに苦しむ人を健康な状態にすることが目標。つまり、マイナスからゼロの状態を目指すのが治療のプロセスです。一方で美容整形を希望する人は、身体の状態としては病気ではなく痛みもない。それでも鼻を高くしたり、二重まぶたにしたりと、希望に応じて手術をするわけで、それは『ゼロからプラスへ』のプロセスなわけです。そして、そのプラス度を判断するのは患者の主観のため、手術自体が成功しても患者が満足しない場合があり、クレームへと発展するんです」(大竹氏) つづきはコチラから! 「サイゾーpremium」では他にも芸能人と整形のタブーに踏み込んだ記事満載です!】整形医の年収は業界トップ! 報道から探る整形大国の賛否と韓国が"美容"を推進する道理貸すことはあってもカネは出さない! 芸能マネが語る「タレントの美容整形」マリウス葉は“平井堅”化する!? 整形疑惑も飛び出したジャニタレの“顔面成長”を徹底検証!
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小さくてもいいじゃん!豊胸手術で乳がん検診が受けられない?

 サイゾー新ニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けしちゃいます! ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) ヤフー・ツタヤ提携が狙うネット&リアルの覇権と楽天潰し!? 原発で大儲け、出版社に脅し…電通と博報堂のふしだらなリアル 「配属テストは麻雀だった !?」ファンドマネージャー座談会 ■特にオススメ記事はこちら! 小さくてもいいじゃん!豊胸手術で乳がん検診が受けられない? - Business Journal(7月25日)
『がんのひみつ』(朝日出版社/中川恵一)
 人口動態統計によると、平成21年、乳がんによる死亡者数は約1万2000人。昭和40年には約2000人にすぎなかったことから見ると、ここ40年ほどで大激増したといえよう。  これを受けて、平成17年度より、全国の9割以上の市区町村で、触診・エコー・マンモグラフィーの3本立てによる乳がん検診が行われるようになった。厚生労働省が乳がん撲滅のため、全国に40億円の機器購入補助金を出した成果である。  しかし、検診を受ける女性の数は、現在でも4人に1人程度と決して多くはない。その理由は、「検診を受けられる場所が遠い」「異常がないから大丈夫」「数千円の検診料を払えない」などさまざまである。  しかし、少数ながら「豊胸手術のせいで検診が受けられない」という女性たちがいることは、ほとんど知られていない。そのため、魅力的なバストに憧れて豊胸手術を受けてみたものの、乳がん検診を受けられず不安な思いをする女性たちが後を絶たないのだ。 豊胸手術のせいでマンモグラフィーが使えない  豊胸手術経験者の亜由美さん(仮名、40代)に、自治体から乳がん検診の通知が来た。しかし検診案内の注意書きには、「豊胸手術をしている方は、マンモグラフィーにより豊胸バッグ破損の怖れがあるため、検診をお断りさせていただいております」と書かれていたのだ。  亜由美さんはかつて豊胸手術を受ける前、いくつもの美容クリニックを訪れて、手術方法や術後の健康への影響について医師のカウンセリングを受けている。 「授乳に影響はない、とか、触っても違和感がない、などと言われました。かなり低い確率でバストが変形することがあるとの説明も受けていました。でも、乳がん検診を断られるなんて、どのクリニックでも一言も言われませんでした」(亜由美さん)  亜由美さんは手術をしたクリニックの医師に、 「どうして乳がん検診への影響について教えてくれなかったのか」 と、質問を投げてみたところ、医師は次のように答えたそうだ。 「マンモグラフィーの検診を断る医療機関はあるかもしれませんね。でも、ちゃんと探せば、検診してくれる病院はあるんじゃないですか?」 医者も知らん顔  しかし、実際に自治体の検診は受けられなかったと返答すると、その医師から次のように言われたという。 「受けられる自治体もあるはずですよ? 患者さんが将来、どの街に住むかまでは予想できませんからねえ。なんでしたら紹介料はかかりますけど、検診をしてくれる病院を紹介しましょうか?」  水掛け論めいたやりとりに嫌気が差した亜由美さんは、乳がん検診をしてくれる医療機関を自力で探し始めた。  しかし、近隣の病院ではどこも「バッグを破損させるからマンモグラフィーは使えない」というところばかり。中には「豊胸手術をした胸の触診はできない」と断る病院も。  この件について、美容クリニック経営者のA氏は次のように語った。 「豊胸バッグが入っているとマンモグラフィーを使えなくなることは、医師なら誰でも知ってますよ。でも、手術を勧める立場としては、あえて言わないんです。手術件数を増やさないと経営が成り立ちませんから」 医療機関の冷たい対応  20代の頃、豊胸手術を受けた元モデルの由紀恵さん(仮名、50代)は、乳がん検診を受けたことがない。 「マンモグラフィーが使えなくても、触診とエコーで検診はできるんですよね。それだけでも受けようかなと思うけど、医師に豊胸手術のことを言うと、態度が変わるっていうか、冷たくされるっていうか……。『大事な身体を傷つけて』みたいに言われたこともあったんです。ただでさえ整形をカミングアウトするのは辛いんです。医師の態度には本当に傷つきました。乳がんは怖いです。でも、あんな不愉快な思いをしてまで検診を受ける勇気が、出ないんです」  豊胸手術に対する、医療機関の“偏見”とも言える冷たさを指摘する女性は少なくない。 出産後、バストアップのため手術を受けた雅子さん(仮名、30代)もそのひとりだ。 「病院で『豊胸手術をしてますが、乳がん検診を受けられますか?』と聞いたんです。そうしたら『おっぱいの整形? ええっ?』と聞き返され『そんなの診たことないですよ』とバカにしたように言われたんです。田舎のせいか、そんな病院ばかり。なんだかすごく惨めになって、検診は受けていないんです」  前出の亜由美さんは、ACジャパンのテレビCMで乳がん検診の必要性を熱く訴える某財団法人に電話をかけ、検診を行ってくれる医療機関について聞いてみたが、 「豊胸手術した人の乳がん検診? どこで受けたらいいんでしょうねぇ。もしかしたら、ここならやってるかも」 と、4~5カ所の医療機関を教えられたものの、いざ問い合わせをしてみると1カ所を除いて乳がん検診自体を断られた。そしてその1カ所に行ってはみたものの、やはりマンモグラフィーは使えず、エコーと触診のみだったというのだ。 検診のために豊胸バッグを抜去  かつて「豊胸手術をすると乳がんになりやすい」と報道された時期もあったが、現在、豊胸手術と乳がん発症の因果関係については今ひとつ不明とされている。豊胸手術大国と言われるアメリカの医療機関には、後追い調査の結果、豊胸手術をしても乳がん発生率は変わらないと発表している機関もある。  しかし、日本では、豊胸バッグがあるため検診が受けられず、乳がんの早期発見ができないケースは決して少なくないのではないだろうか?  一体、彼女たちがマンモグラフィーによる乳がん検診を受けるには、どうすれば良いのだろう。  前出のクリニック経営者・A氏は続けて語る。 「健康のために再手術をして、豊胸バッグを抜去する女性も少なくありません。抜去や乳がん検診のできる豊胸への再手術の費用が、クリニックの収入源のひとつであることも否定しません」 信頼できる病院を探すのも大変  ちなみに抜去費用はクリニックそれぞれ。十数万円のところもあれば、百万円以上を請求するところもある。手術経験者たちによると、手術料金が高ければ技術が高い、大病院だから信頼できるとは決していえないようだ。  かなりの低価格で優良な施術をする医師もおり、彼らの名前はインターネットのクチコミサイトである程度、確認することができる。  ちなみに、抜去手術をした後、胸が小さくしぼんでしまうだけではない。豊胸手術で膨らまされていた胸の皮膚は、バッグを失うと同時に張りを失い、実年齢以上に垂れてしまうケースがほとんどだ。手術をしてまで「美しさ」を追求した女性たちが受ける精神的ダメージは、決して少なくはない。  胸に豊胸バッグを入れたまま、マンモグラフィーのかわりにMRIによる乳がん検診を受けることも可能だ。アメリカの医療機関では、豊胸手術をした人に対して2年に1度の割合で、MRIによる乳がん検診を勧めるところが多い。しかし、日本ではMRI検診をした場合、検査費用3万円程度を自費で支払うケースが多く、通常の乳がん検診に比べて、かなりの出費になることを覚悟しなければいけない。 「豊胸手術をしてもマンモグラフィー検診を受けられる」とされる、脂肪注入(自分の皮下脂肪を胸に移植する)、ヒアルロン酸注入(ヒアルロンで胸を膨らませる)など、いくつかの方法もないわけではない。  しかしいずれも、胸がすぐにしぼむ、豊胸バッグに比べてかなり費用がかかる、数十万から百万以上のお金をかけて定期的に注入を繰り返さなければいけない、などの問題点が挙げられる。  日本国内で現在、どれくらいの数の豊胸手術が行われているか、正確な数字は出ていない。豊胸手術の善し悪しを問うつもりもないし、魅力的な胸を求めて手術する女性たちを愚かと決めつけるつもりもない。  ただ、こういった理由で乳がん検診から遠のいている女性たちがいるのは、事実なのだ。 (文=玉置美螢/ライター) <おすすめ記事> ヤフー・ツタヤ提携が狙うネット&リアルの覇権と楽天潰し!? 原発で大儲け、出版社に脅し…電通と博報堂のふしだらなリアル 「配属テストは麻雀だった !?」ファンドマネージャー座談会 アマゾンなんて怖くない? 楽天、凸版、電子書籍リーダーの未来 駅のゴミ箱が復活しないのは、経費削減のため? GREE、DeNAは新しい“卓越した”コンプガチャを生む 敵はジャパネット? ヤマダ電機会長、ジリ貧の焦り

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『がんのひみつ』(朝日出版社/中川恵一)
 人口動態統計によると、平成21年、乳がんによる死亡者数は約1万2000人。昭和40年には約2000人にすぎなかったことから見ると、ここ40年ほどで大激増したといえよう。  これを受けて、平成17年度より、全国の9割以上の市区町村で、触診・エコー・マンモグラフィーの3本立てによる乳がん検診が行われるようになった。厚生労働省が乳がん撲滅のため、全国に40億円の機器購入補助金を出した成果である。  しかし、検診を受ける女性の数は、現在でも4人に1人程度と決して多くはない。その理由は、「検診を受けられる場所が遠い」「異常がないから大丈夫」「数千円の検診料を払えない」などさまざまである。  しかし、少数ながら「豊胸手術のせいで検診が受けられない」という女性たちがいることは、ほとんど知られていない。そのため、魅力的なバストに憧れて豊胸手術を受けてみたものの、乳がん検診を受けられず不安な思いをする女性たちが後を絶たないのだ。 豊胸手術のせいでマンモグラフィーが使えない  豊胸手術経験者の亜由美さん(仮名、40代)に、自治体から乳がん検診の通知が来た。しかし検診案内の注意書きには、「豊胸手術をしている方は、マンモグラフィーにより豊胸バッグ破損の怖れがあるため、検診をお断りさせていただいております」と書かれていたのだ。  亜由美さんはかつて豊胸手術を受ける前、いくつもの美容クリニックを訪れて、手術方法や術後の健康への影響について医師のカウンセリングを受けている。 「授乳に影響はない、とか、触っても違和感がない、などと言われました。かなり低い確率でバストが変形することがあるとの説明も受けていました。でも、乳がん検診を断られるなんて、どのクリニックでも一言も言われませんでした」(亜由美さん)  亜由美さんは手術をしたクリニックの医師に、 「どうして乳がん検診への影響について教えてくれなかったのか」 と、質問を投げてみたところ、医師は次のように答えたそうだ。 「マンモグラフィーの検診を断る医療機関はあるかもしれませんね。でも、ちゃんと探せば、検診してくれる病院はあるんじゃないですか?」 医者も知らん顔  しかし、実際に自治体の検診は受けられなかったと返答すると、その医師から次のように言われたという。 「受けられる自治体もあるはずですよ? 患者さんが将来、どの街に住むかまでは予想できませんからねえ。なんでしたら紹介料はかかりますけど、検診をしてくれる病院を紹介しましょうか?」  水掛け論めいたやりとりに嫌気が差した亜由美さんは、乳がん検診をしてくれる医療機関を自力で探し始めた。  しかし、近隣の病院ではどこも「バッグを破損させるからマンモグラフィーは使えない」というところばかり。中には「豊胸手術をした胸の触診はできない」と断る病院も。  この件について、美容クリニック経営者のA氏は次のように語った。 「豊胸バッグが入っているとマンモグラフィーを使えなくなることは、医師なら誰でも知ってますよ。でも、手術を勧める立場としては、あえて言わないんです。手術件数を増やさないと経営が成り立ちませんから」 医療機関の冷たい対応  20代の頃、豊胸手術を受けた元モデルの由紀恵さん(仮名、50代)は、乳がん検診を受けたことがない。 「マンモグラフィーが使えなくても、触診とエコーで検診はできるんですよね。それだけでも受けようかなと思うけど、医師に豊胸手術のことを言うと、態度が変わるっていうか、冷たくされるっていうか……。『大事な身体を傷つけて』みたいに言われたこともあったんです。ただでさえ整形をカミングアウトするのは辛いんです。医師の態度には本当に傷つきました。乳がんは怖いです。でも、あんな不愉快な思いをしてまで検診を受ける勇気が、出ないんです」  豊胸手術に対する、医療機関の“偏見”とも言える冷たさを指摘する女性は少なくない。 出産後、バストアップのため手術を受けた雅子さん(仮名、30代)もそのひとりだ。 「病院で『豊胸手術をしてますが、乳がん検診を受けられますか?』と聞いたんです。そうしたら『おっぱいの整形? ええっ?』と聞き返され『そんなの診たことないですよ』とバカにしたように言われたんです。田舎のせいか、そんな病院ばかり。なんだかすごく惨めになって、検診は受けていないんです」  前出の亜由美さんは、ACジャパンのテレビCMで乳がん検診の必要性を熱く訴える某財団法人に電話をかけ、検診を行ってくれる医療機関について聞いてみたが、 「豊胸手術した人の乳がん検診? どこで受けたらいいんでしょうねぇ。もしかしたら、ここならやってるかも」 と、4~5カ所の医療機関を教えられたものの、いざ問い合わせをしてみると1カ所を除いて乳がん検診自体を断られた。そしてその1カ所に行ってはみたものの、やはりマンモグラフィーは使えず、エコーと触診のみだったというのだ。 検診のために豊胸バッグを抜去  かつて「豊胸手術をすると乳がんになりやすい」と報道された時期もあったが、現在、豊胸手術と乳がん発症の因果関係については今ひとつ不明とされている。豊胸手術大国と言われるアメリカの医療機関には、後追い調査の結果、豊胸手術をしても乳がん発生率は変わらないと発表している機関もある。  しかし、日本では、豊胸バッグがあるため検診が受けられず、乳がんの早期発見ができないケースは決して少なくないのではないだろうか?  一体、彼女たちがマンモグラフィーによる乳がん検診を受けるには、どうすれば良いのだろう。  前出のクリニック経営者・A氏は続けて語る。 「健康のために再手術をして、豊胸バッグを抜去する女性も少なくありません。抜去や乳がん検診のできる豊胸への再手術の費用が、クリニックの収入源のひとつであることも否定しません」 信頼できる病院を探すのも大変  ちなみに抜去費用はクリニックそれぞれ。十数万円のところもあれば、百万円以上を請求するところもある。手術経験者たちによると、手術料金が高ければ技術が高い、大病院だから信頼できるとは決していえないようだ。  かなりの低価格で優良な施術をする医師もおり、彼らの名前はインターネットのクチコミサイトである程度、確認することができる。  ちなみに、抜去手術をした後、胸が小さくしぼんでしまうだけではない。豊胸手術で膨らまされていた胸の皮膚は、バッグを失うと同時に張りを失い、実年齢以上に垂れてしまうケースがほとんどだ。手術をしてまで「美しさ」を追求した女性たちが受ける精神的ダメージは、決して少なくはない。  胸に豊胸バッグを入れたまま、マンモグラフィーのかわりにMRIによる乳がん検診を受けることも可能だ。アメリカの医療機関では、豊胸手術をした人に対して2年に1度の割合で、MRIによる乳がん検診を勧めるところが多い。しかし、日本ではMRI検診をした場合、検査費用3万円程度を自費で支払うケースが多く、通常の乳がん検診に比べて、かなりの出費になることを覚悟しなければいけない。 「豊胸手術をしてもマンモグラフィー検診を受けられる」とされる、脂肪注入(自分の皮下脂肪を胸に移植する)、ヒアルロン酸注入(ヒアルロンで胸を膨らませる)など、いくつかの方法もないわけではない。  しかしいずれも、胸がすぐにしぼむ、豊胸バッグに比べてかなり費用がかかる、数十万から百万以上のお金をかけて定期的に注入を繰り返さなければいけない、などの問題点が挙げられる。  日本国内で現在、どれくらいの数の豊胸手術が行われているか、正確な数字は出ていない。豊胸手術の善し悪しを問うつもりもないし、魅力的な胸を求めて手術する女性たちを愚かと決めつけるつもりもない。  ただ、こういった理由で乳がん検診から遠のいている女性たちがいるのは、事実なのだ。 (文=玉置美螢/ライター) <おすすめ記事> ヤフー・ツタヤ提携が狙うネット&リアルの覇権と楽天潰し!? 原発で大儲け、出版社に脅し…電通と博報堂のふしだらなリアル 「配属テストは麻雀だった !?」ファンドマネージャー座談会 アマゾンなんて怖くない? 楽天、凸版、電子書籍リーダーの未来 駅のゴミ箱が復活しないのは、経費削減のため? GREE、DeNAは新しい“卓越した”コンプガチャを生む 敵はジャパネット? ヤマダ電機会長、ジリ貧の焦り