プロレスラーがバラエティで決して負けない3つの理由 日テレ『ダウンタウンDX』(11月12日放送)を徹底検証!

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長州力オフィシャルサイトより
 2015年11月15日、両国国技館にて、ひとりのレジェンド・レスラーがリングを去った。男の名は天龍源一郎。プロレスファンならずとも、一度は名前を聞いたことがあるのではないか。数々の団体を渡り歩き、多くの革命を起こしてきた”ミスター・プロレス”。昭和のプロレス界を駆け抜けていった昇り龍は、超満員の観客の涙と笑顔とともに、リングを後にしたのだった。  そんな天龍が引退試合の相手に選んだのは、新日本プロレスに所属するオカダ・カズチカ。ゴリゴリの昭和気質あふれる天龍とは対照的に、甘いマスクに高い身体能力、数多くの派手な技を駆使するオカダは、まさに平成プロレスの申し子ともいえる。この両者が果たしてかみ合うのかという声もあったが、実際に闘ってみたら、まさにこれこそが天龍の最後の試合にふさわしいと思える名勝負であった。昭和プロレスと平成プロレスのハイブリッドが、確かにこの試合には存在していた。  さて、昨今のバラエティでは数多くのプロレスラーが出演することが多いわけだが、これらの番組でもまた、昭和と平成のハイブリッドが行われていると言っても過言ではない。この1週間だけを振り返ってみても、11月10日放送の『ペケポンプラス 2時間SP』(フジテレビ系)には飯伏幸太(DDTプロレスリング&新日本プロレス)と高木三四郎(DDTプロレスリング)、11日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)にはスーパー・ササダンゴ・マシン(DDTプロレスリング)、12日放送の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)には長州力(リキプロ)と真壁刀義(新日本プロレス)が出演と、ゴールデン&プライムの時間帯にこれほど多くの、かつ世代を越えた多様なプロレスラーが出演しているというのは、ただごとではない。  かつ重要なのが、これらの番組ですべてのレスラーがそれぞれ重要な役割を任され、その上でしっかりと結果を残しているという点にある。バラエティ番組においても、プロレスラーは決して負けない。実際、トークバラエティにおけるプロレスラーの重要性は、ここ数年で確かに増しているといえるだろう。それではなぜ、プロレスラーはバラエティ番組においても強いのか? ここでは、12日に放送された『ダウンタウンDX』に出演した長州力のすごさを検証してみたい。 (1)確実にダメージを与える得意技がある  プロレスは、一発の技でいきなり試合が決まるという種類のものではない。試合を組み立てるためには、ある程度のダメージを相手に何度か与える必要がある。トークバラエティにおいてはつまり、確実にある程度の笑いが起こるエピソードトークがその技に当たる。試合を決める一発の爆笑トークではなく、プロレスラーという非常に特殊な職業ならではのエピソードトーク。この数と質において、プロレスラーの右に出る者はいない。 『ダウンタウンDX』においては、長州の後輩である真壁がその役割を担っている。アントニオ猪木から、氷の入った水槽に入るよう言われたというエピソードは、猪木がそのことを異常だと思っていないからこそ、一般視聴者にとっては確実に笑えるエピソードになる。そんな猪木が、長州の引退興行で突然自分も引退すると言いだし、長州がそれに対して「訳わかんなかったですね」と素朴に語る様子もまさにプロレスラーならではであり、特に昭和時代のプロレス業界においては、こういったすべらない話が山のように存在している。  特に昨今のトークバラエティにおいては、エピソードトークをどれだけ持っているかがゲストとしての強さを示すバロメーターだと言っても過言ではない。そういった意味で、過剰な人間ばかりが集まるプロレス業界は、エピソードトークの宝庫だ。それを視聴者にしっかり説明できる人間がいれば、確実に笑いは起こるわけで、そりゃゲストに呼ばれるだろうという話だったりするのだ。 (2)力強いタッグパートナーがいる  プロレスには1対1のシングルマッチではなく、複数のレスラー同士が戦うタッグマッチという形式もある。その際、どんなタッグパートナーがいるかが重要になってくるわけだが、『ダウンタウンDX』では、その意味で最強のタッグパートナーがゲストに配置されていた。プロレスファンを代表してプロレスのエピソードを視聴者に対して語れる、勝俣州和がその人である。  勝俣が重要なのは、プロレスマニアではなく、あくまでもプロレスファンとしてそこにいるという点だ。マニアであれば知っていて当たり前の情報を、プロレスファンとして、新鮮に語ることができる稀有な人物である。この日も、かつて長州が放った「テメエが死んだら、墓にクソぶっかけてやる!」という名言を紹介。プロレスマニアなら誰もが知っているこの名言だが、もちろん多くの出演者や視聴者はマニアではない。この発言を新鮮なものとして聞かせることで、長州の無茶苦茶さをしっかりと視聴者に伝えている。  かつ、タッグパートナーは、実は勝俣だけではない。勝俣をこの日のゲストに呼んでいるスタッフもまた、タッグパートナーだといえるだろう。基本的にプロレスファンはどの世界にも潜んでおり、プロレスの素晴らしさを世間に対して届けようと企んでいる。長州をただの面白おじさんとして扱うのではなく、さまざまな意味において、プロレスラーとしての長州の面白さを引き出したいと思うからこそ、スタッフが勝俣をそこに配置しているのだろう。その意味で、スタッフをも巻き込んだ優秀なチームプレイが、ここでは発揮されているのだ。 (3)オリジナルのフィニッシュホールドを持っている  プロレスの試合においては多くの場合、プロレスラーがオリジナルのフィニッシュホールドを繰り出して勝敗が決定する。誰もが使えるような技ではなく、そのプロレスラー独自のオリジナルの技がそこにはある。プロレスラーは、ただプロレスをやればいいというわけではない。自らの人生や個性や生き様を象徴するようなファイトスタイルを自ら選び取り、それに見合ったフィニッシュホールドで相手から勝利を奪うというのが名プロレスラーだといえる。  この日の『ダウンタウンDX』の最後のオチ、いわばフィニッシュホールドを決めたのは、長州その人だった。遠征中の宿泊先で本当にあった怖い話を披露する長州。部屋のカーテンの上のほうを見たら、本来いるはずのない男性と女性が向かい合っている……。そこまで話して、ローラから「見たの?」と問われると、「いやボク(が見たん)じゃないんです」と答え、なんだそれは、という雰囲気で笑いが起こる。そこで決めるのが長州だ。隣にいる真壁に対して「俺、滑舌悪いか?」と一言。まさしく大団円といえるだろう。  プロレスラーは、自らの人生や個性や生きざまがすべてそのまま武器になるという特殊な職業である。昨今、滑舌が悪い人として扱われることの多い長州だが、それを逆手に取っての見事なフィニッシュ。一切満足げな顔を見せることなく、当たり前の仕事をして帰って行く長州の姿は、やはり昭和のレジェンドのそれであった。  結局のところ、バラエティ番組もプロレスも、基本は一緒である。そこには論理的なテクニックとサイコロジーがあり、普段からプロレスという場でその能力を研ぎすませているプロレスラーが、バラエティ番組で面白くないはずはないのだった。天龍をはじめとして、これからも昭和の時代を築いたプロレスラーがリングを後にしていくのだろう。だが、そのイズムは確かに継承されていく。再びプロレスブームを巻き起こすのは、昭和のレジェンドから魂を受け継いだ、これからのプロレスラーに違いない。 【検証結果】  ここでは昭和のレジェンドである長州力を取り上げたが、現在のプロレスラーは多種多様な個性を持っているため、場面場面でしっかりと結果を残している。立命館大学出身の棚橋弘至はクイズ番組に呼ばれることも多く、真壁刀義はその無骨な顔に似合わず、スイーツが好きという個性を生かしている。また、飯伏幸太の天然キャラは視聴者の評価を確かに勝ち取っているし、スーパー・ササダンゴ・マシンに至っては「近年のプロレス、幅広がってる説」を披露し、プロレス自体にプロレスラーが言及するという離れ業を成し遂げている。個性にあふれ、百花繚乱ともいえる現在のプロレス業界。隠し球もまだまだ多数存在しているため、プロレスラーがバラエティ番組のある部分を席巻するという時代は、思いのほか早く到来するのかもしれない。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは @aizawaaa

プロレスラーがバラエティで決して負けない3つの理由 日テレ『ダウンタウンDX』(11月12日放送)を徹底検証!

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長州力オフィシャルサイトより
 2015年11月15日、両国国技館にて、ひとりのレジェンド・レスラーがリングを去った。男の名は天龍源一郎。プロレスファンならずとも、一度は名前を聞いたことがあるのではないか。数々の団体を渡り歩き、多くの革命を起こしてきた”ミスター・プロレス”。昭和のプロレス界を駆け抜けていった昇り龍は、超満員の観客の涙と笑顔とともに、リングを後にしたのだった。  そんな天龍が引退試合の相手に選んだのは、新日本プロレスに所属するオカダ・カズチカ。ゴリゴリの昭和気質あふれる天龍とは対照的に、甘いマスクに高い身体能力、数多くの派手な技を駆使するオカダは、まさに平成プロレスの申し子ともいえる。この両者が果たしてかみ合うのかという声もあったが、実際に闘ってみたら、まさにこれこそが天龍の最後の試合にふさわしいと思える名勝負であった。昭和プロレスと平成プロレスのハイブリッドが、確かにこの試合には存在していた。  さて、昨今のバラエティでは数多くのプロレスラーが出演することが多いわけだが、これらの番組でもまた、昭和と平成のハイブリッドが行われていると言っても過言ではない。この1週間だけを振り返ってみても、11月10日放送の『ペケポンプラス 2時間SP』(フジテレビ系)には飯伏幸太(DDTプロレスリング&新日本プロレス)と高木三四郎(DDTプロレスリング)、11日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)にはスーパー・ササダンゴ・マシン(DDTプロレスリング)、12日放送の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)には長州力(リキプロ)と真壁刀義(新日本プロレス)が出演と、ゴールデン&プライムの時間帯にこれほど多くの、かつ世代を越えた多様なプロレスラーが出演しているというのは、ただごとではない。  かつ重要なのが、これらの番組ですべてのレスラーがそれぞれ重要な役割を任され、その上でしっかりと結果を残しているという点にある。バラエティ番組においても、プロレスラーは決して負けない。実際、トークバラエティにおけるプロレスラーの重要性は、ここ数年で確かに増しているといえるだろう。それではなぜ、プロレスラーはバラエティ番組においても強いのか? ここでは、12日に放送された『ダウンタウンDX』に出演した長州力のすごさを検証してみたい。 (1)確実にダメージを与える得意技がある  プロレスは、一発の技でいきなり試合が決まるという種類のものではない。試合を組み立てるためには、ある程度のダメージを相手に何度か与える必要がある。トークバラエティにおいてはつまり、確実にある程度の笑いが起こるエピソードトークがその技に当たる。試合を決める一発の爆笑トークではなく、プロレスラーという非常に特殊な職業ならではのエピソードトーク。この数と質において、プロレスラーの右に出る者はいない。 『ダウンタウンDX』においては、長州の後輩である真壁がその役割を担っている。アントニオ猪木から、氷の入った水槽に入るよう言われたというエピソードは、猪木がそのことを異常だと思っていないからこそ、一般視聴者にとっては確実に笑えるエピソードになる。そんな猪木が、長州の引退興行で突然自分も引退すると言いだし、長州がそれに対して「訳わかんなかったですね」と素朴に語る様子もまさにプロレスラーならではであり、特に昭和時代のプロレス業界においては、こういったすべらない話が山のように存在している。  特に昨今のトークバラエティにおいては、エピソードトークをどれだけ持っているかがゲストとしての強さを示すバロメーターだと言っても過言ではない。そういった意味で、過剰な人間ばかりが集まるプロレス業界は、エピソードトークの宝庫だ。それを視聴者にしっかり説明できる人間がいれば、確実に笑いは起こるわけで、そりゃゲストに呼ばれるだろうという話だったりするのだ。 (2)力強いタッグパートナーがいる  プロレスには1対1のシングルマッチではなく、複数のレスラー同士が戦うタッグマッチという形式もある。その際、どんなタッグパートナーがいるかが重要になってくるわけだが、『ダウンタウンDX』では、その意味で最強のタッグパートナーがゲストに配置されていた。プロレスファンを代表してプロレスのエピソードを視聴者に対して語れる、勝俣州和がその人である。  勝俣が重要なのは、プロレスマニアではなく、あくまでもプロレスファンとしてそこにいるという点だ。マニアであれば知っていて当たり前の情報を、プロレスファンとして、新鮮に語ることができる稀有な人物である。この日も、かつて長州が放った「テメエが死んだら、墓にクソぶっかけてやる!」という名言を紹介。プロレスマニアなら誰もが知っているこの名言だが、もちろん多くの出演者や視聴者はマニアではない。この発言を新鮮なものとして聞かせることで、長州の無茶苦茶さをしっかりと視聴者に伝えている。  かつ、タッグパートナーは、実は勝俣だけではない。勝俣をこの日のゲストに呼んでいるスタッフもまた、タッグパートナーだといえるだろう。基本的にプロレスファンはどの世界にも潜んでおり、プロレスの素晴らしさを世間に対して届けようと企んでいる。長州をただの面白おじさんとして扱うのではなく、さまざまな意味において、プロレスラーとしての長州の面白さを引き出したいと思うからこそ、スタッフが勝俣をそこに配置しているのだろう。その意味で、スタッフをも巻き込んだ優秀なチームプレイが、ここでは発揮されているのだ。 (3)オリジナルのフィニッシュホールドを持っている  プロレスの試合においては多くの場合、プロレスラーがオリジナルのフィニッシュホールドを繰り出して勝敗が決定する。誰もが使えるような技ではなく、そのプロレスラー独自のオリジナルの技がそこにはある。プロレスラーは、ただプロレスをやればいいというわけではない。自らの人生や個性や生き様を象徴するようなファイトスタイルを自ら選び取り、それに見合ったフィニッシュホールドで相手から勝利を奪うというのが名プロレスラーだといえる。  この日の『ダウンタウンDX』の最後のオチ、いわばフィニッシュホールドを決めたのは、長州その人だった。遠征中の宿泊先で本当にあった怖い話を披露する長州。部屋のカーテンの上のほうを見たら、本来いるはずのない男性と女性が向かい合っている……。そこまで話して、ローラから「見たの?」と問われると、「いやボク(が見たん)じゃないんです」と答え、なんだそれは、という雰囲気で笑いが起こる。そこで決めるのが長州だ。隣にいる真壁に対して「俺、滑舌悪いか?」と一言。まさしく大団円といえるだろう。  プロレスラーは、自らの人生や個性や生きざまがすべてそのまま武器になるという特殊な職業である。昨今、滑舌が悪い人として扱われることの多い長州だが、それを逆手に取っての見事なフィニッシュ。一切満足げな顔を見せることなく、当たり前の仕事をして帰って行く長州の姿は、やはり昭和のレジェンドのそれであった。  結局のところ、バラエティ番組もプロレスも、基本は一緒である。そこには論理的なテクニックとサイコロジーがあり、普段からプロレスという場でその能力を研ぎすませているプロレスラーが、バラエティ番組で面白くないはずはないのだった。天龍をはじめとして、これからも昭和の時代を築いたプロレスラーがリングを後にしていくのだろう。だが、そのイズムは確かに継承されていく。再びプロレスブームを巻き起こすのは、昭和のレジェンドから魂を受け継いだ、これからのプロレスラーに違いない。 【検証結果】  ここでは昭和のレジェンドである長州力を取り上げたが、現在のプロレスラーは多種多様な個性を持っているため、場面場面でしっかりと結果を残している。立命館大学出身の棚橋弘至はクイズ番組に呼ばれることも多く、真壁刀義はその無骨な顔に似合わず、スイーツが好きという個性を生かしている。また、飯伏幸太の天然キャラは視聴者の評価を確かに勝ち取っているし、スーパー・ササダンゴ・マシンに至っては「近年のプロレス、幅広がってる説」を披露し、プロレス自体にプロレスラーが言及するという離れ業を成し遂げている。個性にあふれ、百花繚乱ともいえる現在のプロレス業界。隠し球もまだまだ多数存在しているため、プロレスラーがバラエティ番組のある部分を席巻するという時代は、思いのほか早く到来するのかもしれない。 (文=相沢直) ●あいざわ・すなお 1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。 Twitterアカウントは @aizawaaa