【世界選手権開幕直前!】フィギュアオタが見る、羽生結弦と「メディアを変えるアイドルパワー」の関係性

――女性向けメディアを中心に活躍するエッセイスト・高山真が、芸能報道を斬る。男とは、女とは、そしてメディアとは? 超刺激的カルチャー論。
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『羽生結弦 王者のメソッド 2008-2016』(文藝春秋)
 フィギュアスケートシーズンを締めくくる、もっとも重要な大会である世界選手権が、3月28日から開催されます。私は1980年のレークプラシッドオリンピックからのフィギュアファン。自分で言うのもなんですが、相当に年季が入っています。選手ごとにお気に入りのプログラムがあり、それを全部語ろうとしたら3日4日はかかってしまうほど。  例えば、「伊藤みどりのショートプログラムなら、88年はオリンピックよりも世界選手権、90年の世界選手権と91年のNHK杯がベスト」みたいな感じです。もちろん、それぞれの演技の何がどう素晴らしかったか、までもガッツリ語りますので、心おきなく語ろうとしたら半日はかかります。で、「伊藤みどりのフリー」を語りだしたら、そこでまた半日。やっかいにもほどがあります。  Youtubeが一般的でなかった2005年以前にそんな細かいことを言っても、周りでその感覚を共有してくれる人はマツコ・デラックスくらいのもので、寂しい思いを感じていました。そんな私にとって、昨今のフィギュアスケートブームは本当にありがたい。選手たちに対するリスペクトが大きくなったのも喜ばしいことです。ちなみに私は、個人的に推す選手はもちろんいますが、「ほかの選手をディスる」タイプのファンではなく、アスリート全般をリスペクトしている観客です。  私がフィギュアスケートにハマった1980年から本田武史が出てくるまで、日本のフィギュアスケートは女子選手を中心に回っていましたが、ここ10年ほどの男子の隆盛っぷりにも目を見張ります。もともと天才的なミュージカリティを持つ高橋大輔が、階段を3つ4つ一気に駆け上がる勢いで「化けた」最初の演技である2005年のスケートアメリカのフリー。「この演技がバンクーバーで出来ていたら…」と思わずにはいられない織田信成の2009年エリック・ボンパール杯のフリー。小塚崇彦の端正なスケーティングの魅力が、ジャンプノーミスによって「芸術」にまで高まった2011年の世界選手権フリー…。スペースの都合上ひとつずつしか挙げませんでしたが、それぞれの選手がそれぞれに素晴らしいパフォーマンスをいくつも披露してくれたのも、現在の隆盛の大きな原因であると思います。  私はこの連載で「アイドル」を中心に語ってきましたが、もともと「フィギュアスケーター」と「アイドル」は非常になじみやすい、というか、ありようが似ている存在です。相当若いうちから、衣装を着て、音楽をバックに人前でパフォーマンスを披露すること。熱心なファンであればあるほど、その成長を段階的に感じ取ることができること。その「成長」に付随する「物語」も、ファンの求める大きな要素のひとつであること。加えて、強力な裏方の存在が、彼らの成長に不可欠であったこと…(私にとっての最初のアイドル・松田聖子を例に挙げるなら、「強力な裏方」は作詞家の松本隆になります。羽生結弦にとっての強力な裏方を挙げるなら…、本当は歴代のコーチにこちら側から順位をつけてはいけないのでしょうが、私は阿部奈々美氏とブライアン・オーサー氏を挙げたいと思います)。  現在、男子フィギュアで真っ先に名前が挙がるのが羽生結弦であることに異論をはさむ人は少ないと思います。羽生結弦は超一級のアスリートであり、なんかもう「アイドル」と言うよりは「スター」と言ったほうがいいような気もしますが、それでも、2010年の世界ジュニア選手権のフリーで披露したラフマニノフの『パガニーニ』、2012年のシニアの世界選手権のフリーでの『ロミオとジュリエット』、そこから1年経たずに披露した2012年のスケートアメリカのショートプログラム『パリの散歩道』…と、節目節目で驚異的に成長する様子を目撃してきたわけです。「スケーター・羽生結弦のファン」として以上に「フィギュアスケート好き」として、血をたぎらせてきた、というか。  今の羽生結弦は、なんかもう「進みすぎちゃってる」というか、一介の素人である私が「ここがいい!」とポイントポイントで指摘するのが野暮でさえあります。オリンピックや世界選手権の金メダリストたち、エフゲニー・プルシェンコやスコット・ハミルトン、タラ・リピンスキー、カート・ブラウニングなどによる絶賛のコメントや解説を参考した方が、はるかに有益でしょう(私としてはこのメンツの中に、金メダリストではないのですが、「ジョニ江」ことジョニー・ウィアーも入れたい)。それでもあえて、「私のツボ」を箇条書きにしてみると…。 ◆ショートプログラム ●インサイドのイーグルを含むステップから直ちに4回転サルコウを跳び、すぐにアウトサイドのイーグル、そのまま滑らかにチェンジエッジしてインサイドのイーグルへとつなげる ●「トリプルアクセルの前にステップ必須」というルールはないのに、イナバウアーを含めた複雑なエッジワークを入れて跳び、バックアウトのエッジで着氷した後、着氷の流れのままにバックインのエッジを入れていく ●助走のための「漕ぎ」がプログラム全編にわたってほとんどない。ステップシークエンスの「1歩」の距離が異常 ◆フリープログラム ●ショートプログラム同様、ほぼすべてのジャンプの前にコネクティングステップが入っている。で、助走にあたる「漕ぎ」も本当に少ない ●特に、「自分にとってのナチュラルな回転方向ではない」、時計回りのツイズルを入れてから(これ、地上で1回転しただけでバランスを崩します)、即、本来の回転方向である反時計回りのトリプルアクセルを跳び、そのままトリプルサルコウまでのコンビネーションにつなげるシークエンスは、何度見ても意味がわからないくらい驚く ●「アイドル」の文脈で扱ってはいけないくらいの高貴さというか、アンタッチャブルな存在感が出てきた 「好きなところを挙げるのに半日かかる」傾向をグッと抑えて、ポイントを挙げるとこんな感じでしょうか。  今までの日本において、長期間にわたって「アイドル」「スター」であり続けるスポーツ選手は、野球選手とサッカー選手に限られていたようなところがあります。あと、年配の人にとってのゴルフ選手も、そこに加えていいと思います。  そういった状況は、「スポーツメディアを仕切っているのが、ほとんどオヤジ」という部分とも大いに関係があると思っているのですが、体操の内村航平とか、テニスの錦織圭とか、そしてフィギュアスケートの選手たちの長期間にわたる活躍によって、メディア内の「野球・サッカー・ゴルフ」の独占市場が変わってきていることも、その3つのスポーツに非常にうとい私にとってはありがたい。  スポーツの世界だけに限ったことではありませんが、メディアを変えるのは、活躍するアイドルたち、スターたちであり、彼ら・彼女たちを支えることで「数字」を残すファンたちなのです。  3月28日からの世界選手権。羽生結弦はもちろんですが、宇野昌磨の、実年齢よりはるかに先に進んだ成熟した演技も楽しみですし、宮原知子の非常に精緻で洗練された演技も、本郷理華の「スポーツを観戦する」というワクワク感をいっぱいに味わわせてくれる、躍動感いっぱいの演技も待ちきれません。そして忘れてはいけない、ファンである私にとっては「第一線で競技を続けていること自体がありがたい」浅田真央も。ここでは挙げきれませんが、数々の海外選手にも大きな期待をしています。  来週は仕事が遅れに遅れてしまうことでしょう。各社の担当編集者さんたち、ごめんなさい…。 高山真(たかやままこと) 男女に対する鋭い観察眼と考察を、愛情あふれる筆致で表現するエッセイスト。女性ファッション誌『Oggi』で10年以上にわたって読者からのお悩みに答える長寿連載が、『恋愛がらみ。 ~不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館)という題名で書籍化。人気コラムニスト、ジェーン・スー氏の「知的ゲイは悩める女の共有財産」との絶賛どおり、恋や人生に悩む多くの女性から熱烈な支持を集める。

ソチ五輪金の経済効果は5700億円! 韓国国民が熱望する第2のキム・ヨナ

――「サイゾーpremium」今注目の記事をご紹介!!  冬季五輪の花形ともいえるフィギュアスケート。現在、女子フィギュアのトップに君臨するのが韓国のキム・ヨナだ。常に完璧な演技を見せる彼女のテクニックは、もはやここで紹介するまでもないが、日本同様、彼女の周りにも"金"をめぐる話は少なくないようで……。
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『ワールド・フィギュアスケート 35』(新書館)
 本号が発売される頃にはソチ五輪が開幕し、連日の報道が盛り上がりを見せているだろうが、お隣の国、韓国でもそれは同様だ。前回大会のバンクーバー五輪で金6、銀6、銅2(全出場国中5位)を獲得した韓国冬季五輪選手団だが、今回もメダルラッシュが期待されている。  2月に入ったあたりから、韓国のスポーツ関連媒体はウェブ上でソチ五輪の特集を組んでいるが、内容を精査してみると、メダルの期待がかかる種目は2つある。ひとつは得意種目のスピードスケートで、もうひとつが、いわずもがなキム・ヨナ擁するフィギュアスケートだ。  日程的にも前半に行われるスピードスケートでメダルを獲得し、その流れで最後はキム・ヨナが登場するフィギュアを金で締めくくりたい──というのが、韓国国民の期待であろう。  振り返れば2010年、キムがバンクーバー五輪で金メダルを獲得してから、もはや韓国国民で彼女の名前を知らない人はいなくなった。テレビや雑誌、百貨店、地下鉄、バスなどの広告塔として起用されるのは当然、今でもキムには多くのスポンサーやCM出演などの依頼が舞い込んでいるが、4年前の韓国メディアの見出しを見れば、その影響力がよく見える。  各媒体には、莫大な経済効果を例えて『ヨナノミクス』という単語が飛び交い、「キム・ヨナが韓国を養う!」という表現も散見できた。4年前の金メダル獲得による全体の経済効果は5兆2350億ウォン(約5000億円)、ソチ五輪に至っては6兆ウォン(約5700億円)と発表されたが、これはキム・ヨナの個人収入、CM出演による広告商品の売り上げ、国家イメージの宣伝効果などの合計金額。ひとりのスポーツ選手がこれだけの経済効果を上げるのは異例のこととして、韓国国内では衝撃を与えた格好だ。  また、12年6月時点で韓国の広告代理店イノーション・ワールドワイドが調査したところ、現代自動車、KB国民銀行、サムスン電子、毎日乳業などを中心に、136ものCMに出演したと報告。ちなみに国内最大手のKB国民銀行はキムを長らくスポンサードしているほか、サムスン電子やエコLPガス専門企業のE1の広告モデルに起用する見返りとして、トレーニングにかかる費用を別途支援している。  韓国の有力スポーツ紙「イルガンスポーツ」の元フィギュア担当記者で、現在はフリーライターのソン・エソン氏は、「韓国国内におけるキム・ヨナの存在は、すでにスポーツ選手の枠を超えています」と語る。 「キム選手がスポンサーから絶大な人気があるのは既知として、国民的に愛されるスター選手でもあり、実際に広告塔として起用すると製品の売り上げは伸びるといわれており、その効果は韓国トップクラス。現在はソチ五輪の準備もあってメディア露出が減ってきた印象ですが、大会終了後はまた回復すると予測されます。2月初旬、韓国のテレビ局SBSがキム選手の広告収入を分析していましたが、そこではソチ五輪後100億ウォン(約9億5000万円)の広告収入があると見込んでいました。広告収入だけでこの金額なので、もはや"歩く中小企業"などの呼称で呼ばれることもあります」(ソン氏)  一方で、いちスポーツ選手に対して莫大な金額が動くことに、韓国国内では「あまりにも広告に出すぎてはいないか」という批判的な声もあるという。 「韓国社会や韓国人は、選手の副業に対して少なからず保守的なところがあります。例えば12年、キム選手がビールのCMに出演したことで、韓国国内では批判的な声が上がりました。というのも、男子選手がアルコール飲料のCMに出演することはありますが、キム選手のファンは未成年が圧倒的に多く、悪影響を及ぼすことが懸念されたんです。とはいえ、それでもフィギュアスケートはほかのスポーツに比べて莫大な練習費用がかかるので、広告収入は必要だったといえます。今では練習費用が足りないとか、そういうことはありませんが」(同)  さらに、「キム・ヨナ人気に便乗する形でスポンサー数は比例して増えていくも、ソチ五輪期間は露出が少ない」とソン氏は繰り返す。その理由は国際オリンピック委員会が、五輪会場で選手を使った商業的な活動を制限しているからにほかならない。現にキムを支援するスポンサー企業のひとつLSネットワークスは一時的に宣伝を中止した。ただ、五輪の公式スポンサーの活動には制限がないため、そこに名を連ねるサムスン電子は、キムをモデルにした広告活動を展開しているという。 ■18年冬季五輪にキム・ヨナの後継者は現れるのか?  このように圧倒的な人気を誇るキムだが、既報の通り、ソチ五輪で引退を示唆している。無論、韓国メディアは後継者に注目しているが、「"第2、第3のキム・ヨナ"が現れるのには時間がかかります。日本のフィギュアスケートでは次々と若手選手が台頭するのに比べて、韓国にはその土壌が弱い」とソン氏は語る。 つづきはコチラから。 「サイゾーpremium」ほかにもフィギュアスケートのカネと欲望に迫る記事が満載です!】氷上に舞うのは美の競演かそれとも……フィギュアスケートの"金"をめぐる残酷物語中京大学とトヨタ自動車に支えられる最強・名古屋のフィギュアスケート事情小川彌生の愛と苦悩が入り乱れるスケートマンガ『キス&ネバークライ』
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マスコミ恐怖症も……? “お子様扱い”され続けたフィギュア浅田真央が電撃引退を決めたワケ

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『浅田真央公式写真集 MAO』
(徳間書店)
 フィギュアスケートの浅田真央が13日、ソチ五輪が開かれる来季限りで現役を引退することを電撃発表した。  14日、報道陣の取材に応じ、引退を考えた経緯について「今年に入って徐々に思い始めた。自分の気持ちがふと来た時があった」などと説明。続けて「体力面ではない。いろんなことがあり、ちょっとずつ『そうなのかな、そうなのかな?』という感じ」と述べた。  事前に相談したのは姉とマネジャーで、コーチ陣やスケート連盟は寝耳に水。浅田は「五輪の舞台を集大成にして、スケート人生で最高の演技をしたい。あと1年もない短い中で、そこへ向けて全力を尽くせるんじゃないかと思う」と語り、引退後については「今までスケート一本でずっとやってきたので、今後はどうするか考えていかなきゃいけないと思う」と話した。  日本のフィギュア界を牽引してきたスター選手の突然の引退発表に、今もなお衝撃が走っているが、ある人物は浅田の胸中を次のように代弁する。 「10代の頃からフィギュアだけに打ち込み、青春を捧げてきた。その間に最愛の母親が亡くなり、彼女は『もう少し、一緒にいてあげればよかった』と、こぼしたといいます。マスコミにも追いかけ回され、毎日が『怖い……』と訴え、連盟側がマスコミ各社に取材の自粛を求めることもあった。プレッシャーもあり、心身ともに限界だったのだと思う」  別の関係者は、浅田の女性的な部分にも言及する。 「彼女は今年で23歳になるが、浮いた話は皆無。マスコミのインタビュー取材では『どんな恋愛がしたいですか?』など、“お子様扱い”した質問しかされない(笑)。『普通の女の子に戻りたい』と彼女が思っても、仕方がないところ」  最後の五輪で、表彰台の頂点に立つ浅田の姿を期待したい。