金曜深夜に放送されている『デッドストック~未知への挑戦~』(テレビ東京系)は、テレ東の深夜ドラマならではのカルトな作品だ。 物語の舞台はテレビ東京。新人ADの常田大陸(村上虹郎)は、2016年の社内移転の際に発掘された大量の番組素材を整理する部署・未確認素材センターに配属される。 VTRを整理する日々の中で、常田は心霊現象の映った映像を発見する。常田の同僚で、同センターに配属された女性ディレクター・二階堂早織(早見あかり)は、心霊映像を素材にして新しい番組を制作しようと思い、常田と共に取材を開始する。 過去の映像を元に怪事件を調査する常田たちは、どんどんひどい事件に巻き込まれていく。物語はもちろんだが、昔のVTRを多用した映像が不気味で、唐突に終わることも多いためか、後味がめちゃくちゃ悪い。 それも含めて、深夜に見るにはもってこいのホラードラマなのだが、違う意味で大きな見どころとなっているのが、二階堂を演じる早見あかりの存在だ。 二階堂は常田を振り回す“困ったお姉ちゃん”という感じ。色白で目鼻立ちがくっきりしているため、海外のホラー映画で悲鳴を上げる美女のようで、本作のようなホラーテイストの作品とは相性がいい。 身長は165cmと、今の女優としては決して高くはないのだが、肩幅が広いためか、どのアングルから見ても普通の女優より大きく見える。そのたくましい感じが、それこそ二階堂のような大人の女を演じると見事にハマる。 二階堂が「あんた、しっかりしなさいよね」と上から目線で常田に言う場面は、見ていて気持ちがよく、ついつい自分も叱られたいと思ってしまう。 早見の声には迫力があり、いつも怒っているように聞こえるのだが、それが身内に心配されているようで、妙な親近感を抱いてしまう。 筆者は現在40歳で、2倍近く年が離れているのに、早見を見ていると「お姉ちゃん、ごめんなさい」と、年下の弟のような気分になってしまうのだ。 これは、彼女がアイドルだった頃から感じていたことだ。 今ではAKB48と並ぶメジャーアイドルとなったももいろクローバーZが、まだ“ももいろクローバー”だった時代、早見はサブリーダーとしてグループを支えていた。 リーダーの百田夏菜子を筆頭に、ももクロは子どもっぽさが前面に出ていたアイドルグループだったのだが、そんな中、一人だけ大人っぽい雰囲気を漂わせていたのが早見だった。 今、当時のライブ映像を見返すと、子どもの中に一人だけ思春期の少女がいるみたいで、そのアンバランスな立ち位置が彼女の魅力だった。 アイドルというのは不思議なもので、元AKB48の前田敦子や島崎遥香のように、アイドルの世界になじめずに違和感を抱えて苦悩している女の子のほうが、魅力的に見えることがある。そこに思春期の葛藤が交わるとなおさらで、つまり最もアイドルに向いていない人がアイドルとして輝いてしまうのだ。それは早見も同様で、本人はアイドルに向いていないと思っていたが、ももクロ時代の早見は誰よりも、アイドルとして輝いていた。 だからこそ、女優として成功して、(できれば朝ドラで主演を務めて)ももクロとNHK『紅白』で共演してほしいと多くのファンは思っていた。 だが、ももクロ卒業後、早見は女優としてすぐに成功したわけではなかった。 アイドルグループに所属していた時は、女優やファッションモデルのほうが似合っていると思われたが、いざ、女優として活動するようになると、何をやっても同じ口調で独自のぎこちなさが残る。普通に話していても芝居がかって見えたので、現代を舞台にしたリアルな作品だと、どうしても、その存在が浮き上がってしまうのだ。 逆に相性がよかったのは、朝ドラ『マッサン』(NHK)や『ちかえもん』(同)といった時代劇だった。着物を着てかしこまった言葉で話している時のほうが、物語にうまくハマっていた。 おそらく早見は、自然な演技よりも、極端にキャラクターを作り込んだ時のほうが、女優としての魅力が際立つのだろう。その意味で、極めてアイドル的な女優だったといえる。 映画『百瀬、こっちを向いて。』や連続ドラマ『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)などで演じた、クールなキャラクターが多かったが、こういった役柄はももクロ時代の“あかりん”の立ち位置の延長線上にあるものだった。 10代後半は、大人と子どもの間で揺れ動く思春期の不器用な少女を演じることがあった早見だが、最近は『デッドストック』の二階堂のような、大人の女性を演じる機会が増えてきている。早見自身も22歳となり、大人っぽくなった外見に、ようやく内面が追いついてきたのだろう。 相変わらずぎこちなさはあるが、それはもはや、彼女の個性といっていいだろう。 『デッドストック』がきっかけで、「早見あかりに叱られたい」という新規ファンが増えるのではないかと、ひそかに期待している。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆スターダストプロモーション公式サイトより
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“王道女優路線”の元ももクロ・早見あかり、いまだに電車・バス移動だった!
9月29日から放送が始まるNHK朝の連続テレビ小説『マッサン』に出演する早見あかり。主人公の玉山鉄二演じるマッサンの妹役として“朝ドラ”初出演となる。 「もともと、秋クールの連ドラでもっと大きな役の話もあったようですが、女優修尭として朝ドラに出演するよう事務所が決めたそうです」(芸能事務所関係者) 2011年4月に人気アイドルグループ「ももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)」を脱退し、以降は女優、モデルとして活躍の場を広げ、今年5月に公開された初の主演映画『百瀬、こっちを向いて。』ではスマッシュヒットを飛ばした。 「初の主演でしたが、演技の評判も良く、すぐに次回作も決まったほどです。先日まで来年公開の堀江慶監督の映画『忘れないと誓ったぼくがいた』を撮影していましたし、今後も映画をメインに女優活動を続けていくんでしょうね。スターダストとしても、竹内結子、柴咲コウ、北川景子の後釜として育てていくそうです。実際、CMに関しては彼女たちの後を引き継ぐように、すでに交渉しているそうですよ。そのために、“朝ドラ”で一般層に知名度を浸透させたいようです。何しろ、彼女はまだ電車やバスを使って移動しているくらいですから」(広告代理店関係者) “顔バレ”して初めて、一人前ということか――。早見あかり公式サイトより
大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り

『ウレロ未完成少女』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。
「大人は信用できないと思ってた」
『ウレロ☆未完成少女』(テレビ東京系)開始前の出演者座談会の冒頭で、早見あかりは言った。17歳の少女にそんなことを言わせてしまうような、どんな過去があったのかはひとまず置いておいて、彼女にとって『ウレロ』の大人たちは「信用」に値する大人だったようだ。
この番組は、『ウレロ☆未確認少女』に続く『ウレロ』シリーズのシーズン2である。コント番組すら成立させることが難しい昨今のテレビ業界の中で、さらに日本で成功例の少ないシチュエーションコメディを毎回丸一日かけて作り上げ、客前一発本番というスタイルで実現したのが『ウレロ』である。
それを演じるために、『オモバカ』絶対王者の劇団ひとり、『IPPONグランプリ』絶対王者のバカリズム、『キング・オブ・コント』王者の東京03、そして大ブレイク前夜のももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)を脱退した直後だった早見あかり。さらに劇中には登場しない陰の主役として、ももいろクローバーZまで集結した奇跡のような番組だ。
劇団ひとり演じる川島が社長を務める弱小芸能事務所「@川島プロダクション」を舞台に、バカリズムと東京03、早見あかりが演じる事務所の面々がアイドルグループ「未確認少女隊UFI」(ユーフィ)を売り出し、同事務所の再建を目指すという設定で、毎回伏線だらけのドタバタ騒動が繰り広げられる。
ゲスト出演した大竹まことは「次の時代は、こういう奴らが担ってほしい」と賛辞を送り、マキタスポーツは「あの連中が“たった一日”であのレベルの芝居をするなら、三谷幸喜いらないじゃんと思うほどのレベル」と絶賛していた。
「奇跡はあるって信じたい!」と、シーズン1の途中からファンはもちろん、出演者からもシーズン2が熱望されていた。しかし、多忙を極めるこのメンバーを再び集結させることも、シチュエーションコメディの企画(実際、シーズン1の視聴率は高いとはいえなかった)を通すのも、今のテレビ界では難しい。それが冒頭の早見あかりの言葉にもつながる。
しかし、一部で「実現の神」とまで呼ばれる、この番組の演出兼プロデューサーの佐久間宣行は、そのハードルを次々突破。ファン、スタッフ、出演者全員が望む最高の形のまま、まさかの1年を待たずしてのシーズン2開始。それはまさに奇跡だった。
『ウレロ』の魅力は数多くあるが、その最大の“発見”は早見あかりだろう。日本屈指のコント師を向こうに回して、堂々たる立ち居振る舞い。コメディ女優としての高い能力を見せつけた。大女優と呼ばれる人には必ず、圧倒的な輝きを見せる旬な時期があるといわれるが、キラキラして瑞々しい、そしてどこか危うい魅力を放っている今の彼女は、まさにその直前なのではないだろうか(すなわち、一番見ておくべき時期だ)。ももクロを辞めて、いつもそばにいた仲間を失った早見あかり。その隙間に『ウレロ』というチームがぴったりとハマった。だからシーズン2が実現した時のうれしそうな表情ったらなかったし、彼らに鍛えられて、いつの間にか大ボケまでこなすコメディエンヌになっていた。
シーズン2開始にあたり、その舞台設定は徹底して隠されていた。シーズン1と同じアイドル芸能事務所のまま続けるのか、あるいはメンバーだけそのままで違う設定にするのか――。シーズン1の最終回に合わせて行われたニコニコ生放送の『ウレロ』実況では、出演者たちはシーズン2が実現したらどのような設定にするのかという話で盛り上がったが、その場で実施された視聴者アンケートでは、「探偵事務所」という設定案が僅差でトップだった。
いよいよ番組が開始されるも、その設定がなかなか判明しない。何やら「事件」のにおいを漂わせつつ、やがてハードボイルドな衣装をまとった豊本(東京03)が「@豊本探偵事務所」という看板を持ち込むと「今度はやっぱり探偵か!」と僕らが思った刹那、川島(劇団ひとり)の「豊本は元スパイ」という前シーズンの設定とつながるセリフに、頭の中が一瞬で「?」に。そして、この番組で「武闘派」として新境地を切り開いているバカリズムが「ここは芸能事務所だろ!」と看板を叩き割ると、ついに正真正銘、前作の「続き」だということが分かるのだ。見事に騙された。うれしい裏切り。しかも第1話では物語の進行とともに、ちゃんと探偵設定まで生かして「事件」も解決する巧妙な構成。続編ということでキャラクターの輪郭が最初から鮮明なため、全員が躍動していた。あの楽しかった前作のまま、いや間違いなくパワーアップして『ウレロ』が帰ってきた! そう思わせてくれる第1話だった。
このシーズン2を熱望するあまり、劇団ひとりは「実現できなかったら丸坊主ね!」とプロデューサーに迫り、バカリズムは「まだ撮ってない(『ウレロ』用の)コントがあれば終わらないと思って」と必要以上のコントを書いてきたという。
なんという大人げなさ。けれど、そんな大人げなさは本気になった大人だけの特権である。
「みんなといると超楽しいんだけどー!」と、みんなが「青春バカ」状態に陥る『ウレロ』。シーズン1がプロが作った学園祭なら、シーズン2はさながらプロフェッショナルたちの夏祭りだ。祭りへの参加資格はただひとつ。大人げなく全力で楽しむ。それだけだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
●【テレビ裏ガイド】INDEX
【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』
【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義
【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意
大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り

『ウレロ未完成少女』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。
「大人は信用できないと思ってた」
『ウレロ☆未完成少女』(テレビ東京系)開始前の出演者座談会の冒頭で、早見あかりは言った。17歳の少女にそんなことを言わせてしまうような、どんな過去があったのかはひとまず置いておいて、彼女にとって『ウレロ』の大人たちは「信用」に値する大人だったようだ。
この番組は、『ウレロ☆未確認少女』に続く『ウレロ』シリーズのシーズン2である。コント番組すら成立させることが難しい昨今のテレビ業界の中で、さらに日本で成功例の少ないシチュエーションコメディを毎回丸一日かけて作り上げ、客前一発本番というスタイルで実現したのが『ウレロ』である。
それを演じるために、『オモバカ』絶対王者の劇団ひとり、『IPPONグランプリ』絶対王者のバカリズム、『キング・オブ・コント』王者の東京03、そして大ブレイク前夜のももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)を脱退した直後だった早見あかり。さらに劇中には登場しない陰の主役として、ももいろクローバーZまで集結した奇跡のような番組だ。
劇団ひとり演じる川島が社長を務める弱小芸能事務所「@川島プロダクション」を舞台に、バカリズムと東京03、早見あかりが演じる事務所の面々がアイドルグループ「未確認少女隊UFI」(ユーフィ)を売り出し、同事務所の再建を目指すという設定で、毎回伏線だらけのドタバタ騒動が繰り広げられる。
ゲスト出演した大竹まことは「次の時代は、こういう奴らが担ってほしい」と賛辞を送り、マキタスポーツは「あの連中が“たった一日”であのレベルの芝居をするなら、三谷幸喜いらないじゃんと思うほどのレベル」と絶賛していた。
「奇跡はあるって信じたい!」と、シーズン1の途中からファンはもちろん、出演者からもシーズン2が熱望されていた。しかし、多忙を極めるこのメンバーを再び集結させることも、シチュエーションコメディの企画(実際、シーズン1の視聴率は高いとはいえなかった)を通すのも、今のテレビ界では難しい。それが冒頭の早見あかりの言葉にもつながる。
しかし、一部で「実現の神」とまで呼ばれる、この番組の演出兼プロデューサーの佐久間宣行は、そのハードルを次々突破。ファン、スタッフ、出演者全員が望む最高の形のまま、まさかの1年を待たずしてのシーズン2開始。それはまさに奇跡だった。
『ウレロ』の魅力は数多くあるが、その最大の“発見”は早見あかりだろう。日本屈指のコント師を向こうに回して、堂々たる立ち居振る舞い。コメディ女優としての高い能力を見せつけた。大女優と呼ばれる人には必ず、圧倒的な輝きを見せる旬な時期があるといわれるが、キラキラして瑞々しい、そしてどこか危うい魅力を放っている今の彼女は、まさにその直前なのではないだろうか(すなわち、一番見ておくべき時期だ)。ももクロを辞めて、いつもそばにいた仲間を失った早見あかり。その隙間に『ウレロ』というチームがぴったりとハマった。だからシーズン2が実現した時のうれしそうな表情ったらなかったし、彼らに鍛えられて、いつの間にか大ボケまでこなすコメディエンヌになっていた。
シーズン2開始にあたり、その舞台設定は徹底して隠されていた。シーズン1と同じアイドル芸能事務所のまま続けるのか、あるいはメンバーだけそのままで違う設定にするのか――。シーズン1の最終回に合わせて行われたニコニコ生放送の『ウレロ』実況では、出演者たちはシーズン2が実現したらどのような設定にするのかという話で盛り上がったが、その場で実施された視聴者アンケートでは、「探偵事務所」という設定案が僅差でトップだった。
いよいよ番組が開始されるも、その設定がなかなか判明しない。何やら「事件」のにおいを漂わせつつ、やがてハードボイルドな衣装をまとった豊本(東京03)が「@豊本探偵事務所」という看板を持ち込むと「今度はやっぱり探偵か!」と僕らが思った刹那、川島(劇団ひとり)の「豊本は元スパイ」という前シーズンの設定とつながるセリフに、頭の中が一瞬で「?」に。そして、この番組で「武闘派」として新境地を切り開いているバカリズムが「ここは芸能事務所だろ!」と看板を叩き割ると、ついに正真正銘、前作の「続き」だということが分かるのだ。見事に騙された。うれしい裏切り。しかも第1話では物語の進行とともに、ちゃんと探偵設定まで生かして「事件」も解決する巧妙な構成。続編ということでキャラクターの輪郭が最初から鮮明なため、全員が躍動していた。あの楽しかった前作のまま、いや間違いなくパワーアップして『ウレロ』が帰ってきた! そう思わせてくれる第1話だった。
このシーズン2を熱望するあまり、劇団ひとりは「実現できなかったら丸坊主ね!」とプロデューサーに迫り、バカリズムは「まだ撮ってない(『ウレロ』用の)コントがあれば終わらないと思って」と必要以上のコントを書いてきたという。
なんという大人げなさ。けれど、そんな大人げなさは本気になった大人だけの特権である。
「みんなといると超楽しいんだけどー!」と、みんなが「青春バカ」状態に陥る『ウレロ』。シーズン1がプロが作った学園祭なら、シーズン2はさながらプロフェッショナルたちの夏祭りだ。祭りへの参加資格はただひとつ。大人げなく全力で楽しむ。それだけだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
●【テレビ裏ガイド】INDEX
【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』
【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義
【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意
大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り

『ウレロ未完成少女』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。
「大人は信用できないと思ってた」
『ウレロ☆未完成少女』(テレビ東京系)開始前の出演者座談会の冒頭で、早見あかりは言った。17歳の少女にそんなことを言わせてしまうような、どんな過去があったのかはひとまず置いておいて、彼女にとって『ウレロ』の大人たちは「信用」に値する大人だったようだ。
この番組は、『ウレロ☆未確認少女』に続く『ウレロ』シリーズのシーズン2である。コント番組すら成立させることが難しい昨今のテレビ業界の中で、さらに日本で成功例の少ないシチュエーションコメディを毎回丸一日かけて作り上げ、客前一発本番というスタイルで実現したのが『ウレロ』である。
それを演じるために、『オモバカ』絶対王者の劇団ひとり、『IPPONグランプリ』絶対王者のバカリズム、『キング・オブ・コント』王者の東京03、そして大ブレイク前夜のももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)を脱退した直後だった早見あかり。さらに劇中には登場しない陰の主役として、ももいろクローバーZまで集結した奇跡のような番組だ。
劇団ひとり演じる川島が社長を務める弱小芸能事務所「@川島プロダクション」を舞台に、バカリズムと東京03、早見あかりが演じる事務所の面々がアイドルグループ「未確認少女隊UFI」(ユーフィ)を売り出し、同事務所の再建を目指すという設定で、毎回伏線だらけのドタバタ騒動が繰り広げられる。
ゲスト出演した大竹まことは「次の時代は、こういう奴らが担ってほしい」と賛辞を送り、マキタスポーツは「あの連中が“たった一日”であのレベルの芝居をするなら、三谷幸喜いらないじゃんと思うほどのレベル」と絶賛していた。
「奇跡はあるって信じたい!」と、シーズン1の途中からファンはもちろん、出演者からもシーズン2が熱望されていた。しかし、多忙を極めるこのメンバーを再び集結させることも、シチュエーションコメディの企画(実際、シーズン1の視聴率は高いとはいえなかった)を通すのも、今のテレビ界では難しい。それが冒頭の早見あかりの言葉にもつながる。
しかし、一部で「実現の神」とまで呼ばれる、この番組の演出兼プロデューサーの佐久間宣行は、そのハードルを次々突破。ファン、スタッフ、出演者全員が望む最高の形のまま、まさかの1年を待たずしてのシーズン2開始。それはまさに奇跡だった。
『ウレロ』の魅力は数多くあるが、その最大の“発見”は早見あかりだろう。日本屈指のコント師を向こうに回して、堂々たる立ち居振る舞い。コメディ女優としての高い能力を見せつけた。大女優と呼ばれる人には必ず、圧倒的な輝きを見せる旬な時期があるといわれるが、キラキラして瑞々しい、そしてどこか危うい魅力を放っている今の彼女は、まさにその直前なのではないだろうか(すなわち、一番見ておくべき時期だ)。ももクロを辞めて、いつもそばにいた仲間を失った早見あかり。その隙間に『ウレロ』というチームがぴったりとハマった。だからシーズン2が実現した時のうれしそうな表情ったらなかったし、彼らに鍛えられて、いつの間にか大ボケまでこなすコメディエンヌになっていた。
シーズン2開始にあたり、その舞台設定は徹底して隠されていた。シーズン1と同じアイドル芸能事務所のまま続けるのか、あるいはメンバーだけそのままで違う設定にするのか――。シーズン1の最終回に合わせて行われたニコニコ生放送の『ウレロ』実況では、出演者たちはシーズン2が実現したらどのような設定にするのかという話で盛り上がったが、その場で実施された視聴者アンケートでは、「探偵事務所」という設定案が僅差でトップだった。
いよいよ番組が開始されるも、その設定がなかなか判明しない。何やら「事件」のにおいを漂わせつつ、やがてハードボイルドな衣装をまとった豊本(東京03)が「@豊本探偵事務所」という看板を持ち込むと「今度はやっぱり探偵か!」と僕らが思った刹那、川島(劇団ひとり)の「豊本は元スパイ」という前シーズンの設定とつながるセリフに、頭の中が一瞬で「?」に。そして、この番組で「武闘派」として新境地を切り開いているバカリズムが「ここは芸能事務所だろ!」と看板を叩き割ると、ついに正真正銘、前作の「続き」だということが分かるのだ。見事に騙された。うれしい裏切り。しかも第1話では物語の進行とともに、ちゃんと探偵設定まで生かして「事件」も解決する巧妙な構成。続編ということでキャラクターの輪郭が最初から鮮明なため、全員が躍動していた。あの楽しかった前作のまま、いや間違いなくパワーアップして『ウレロ』が帰ってきた! そう思わせてくれる第1話だった。
このシーズン2を熱望するあまり、劇団ひとりは「実現できなかったら丸坊主ね!」とプロデューサーに迫り、バカリズムは「まだ撮ってない(『ウレロ』用の)コントがあれば終わらないと思って」と必要以上のコントを書いてきたという。
なんという大人げなさ。けれど、そんな大人げなさは本気になった大人だけの特権である。
「みんなといると超楽しいんだけどー!」と、みんなが「青春バカ」状態に陥る『ウレロ』。シーズン1がプロが作った学園祭なら、シーズン2はさながらプロフェッショナルたちの夏祭りだ。祭りへの参加資格はただひとつ。大人げなく全力で楽しむ。それだけだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』
【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義
【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意
大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り

『ウレロ未完成少女』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。
「大人は信用できないと思ってた」
『ウレロ☆未完成少女』(テレビ東京系)開始前の出演者座談会の冒頭で、早見あかりは言った。17歳の少女にそんなことを言わせてしまうような、どんな過去があったのかはひとまず置いておいて、彼女にとって『ウレロ』の大人たちは「信用」に値する大人だったようだ。
この番組は、『ウレロ☆未確認少女』に続く『ウレロ』シリーズのシーズン2である。コント番組すら成立させることが難しい昨今のテレビ業界の中で、さらに日本で成功例の少ないシチュエーションコメディを毎回丸一日かけて作り上げ、客前一発本番というスタイルで実現したのが『ウレロ』である。
それを演じるために、『オモバカ』絶対王者の劇団ひとり、『IPPONグランプリ』絶対王者のバカリズム、『キング・オブ・コント』王者の東京03、そして大ブレイク前夜のももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)を脱退した直後だった早見あかり。さらに劇中には登場しない陰の主役として、ももいろクローバーZまで集結した奇跡のような番組だ。
劇団ひとり演じる川島が社長を務める弱小芸能事務所「@川島プロダクション」を舞台に、バカリズムと東京03、早見あかりが演じる事務所の面々がアイドルグループ「未確認少女隊UFI」(ユーフィ)を売り出し、同事務所の再建を目指すという設定で、毎回伏線だらけのドタバタ騒動が繰り広げられる。
ゲスト出演した大竹まことは「次の時代は、こういう奴らが担ってほしい」と賛辞を送り、マキタスポーツは「あの連中が“たった一日”であのレベルの芝居をするなら、三谷幸喜いらないじゃんと思うほどのレベル」と絶賛していた。
「奇跡はあるって信じたい!」と、シーズン1の途中からファンはもちろん、出演者からもシーズン2が熱望されていた。しかし、多忙を極めるこのメンバーを再び集結させることも、シチュエーションコメディの企画(実際、シーズン1の視聴率は高いとはいえなかった)を通すのも、今のテレビ界では難しい。それが冒頭の早見あかりの言葉にもつながる。
しかし、一部で「実現の神」とまで呼ばれる、この番組の演出兼プロデューサーの佐久間宣行は、そのハードルを次々突破。ファン、スタッフ、出演者全員が望む最高の形のまま、まさかの1年を待たずしてのシーズン2開始。それはまさに奇跡だった。
『ウレロ』の魅力は数多くあるが、その最大の“発見”は早見あかりだろう。日本屈指のコント師を向こうに回して、堂々たる立ち居振る舞い。コメディ女優としての高い能力を見せつけた。大女優と呼ばれる人には必ず、圧倒的な輝きを見せる旬な時期があるといわれるが、キラキラして瑞々しい、そしてどこか危うい魅力を放っている今の彼女は、まさにその直前なのではないだろうか(すなわち、一番見ておくべき時期だ)。ももクロを辞めて、いつもそばにいた仲間を失った早見あかり。その隙間に『ウレロ』というチームがぴったりとハマった。だからシーズン2が実現した時のうれしそうな表情ったらなかったし、彼らに鍛えられて、いつの間にか大ボケまでこなすコメディエンヌになっていた。
シーズン2開始にあたり、その舞台設定は徹底して隠されていた。シーズン1と同じアイドル芸能事務所のまま続けるのか、あるいはメンバーだけそのままで違う設定にするのか――。シーズン1の最終回に合わせて行われたニコニコ生放送の『ウレロ』実況では、出演者たちはシーズン2が実現したらどのような設定にするのかという話で盛り上がったが、その場で実施された視聴者アンケートでは、「探偵事務所」という設定案が僅差でトップだった。
いよいよ番組が開始されるも、その設定がなかなか判明しない。何やら「事件」のにおいを漂わせつつ、やがてハードボイルドな衣装をまとった豊本(東京03)が「@豊本探偵事務所」という看板を持ち込むと「今度はやっぱり探偵か!」と僕らが思った刹那、川島(劇団ひとり)の「豊本は元スパイ」という前シーズンの設定とつながるセリフに、頭の中が一瞬で「?」に。そして、この番組で「武闘派」として新境地を切り開いているバカリズムが「ここは芸能事務所だろ!」と看板を叩き割ると、ついに正真正銘、前作の「続き」だということが分かるのだ。見事に騙された。うれしい裏切り。しかも第1話では物語の進行とともに、ちゃんと探偵設定まで生かして「事件」も解決する巧妙な構成。続編ということでキャラクターの輪郭が最初から鮮明なため、全員が躍動していた。あの楽しかった前作のまま、いや間違いなくパワーアップして『ウレロ』が帰ってきた! そう思わせてくれる第1話だった。
このシーズン2を熱望するあまり、劇団ひとりは「実現できなかったら丸坊主ね!」とプロデューサーに迫り、バカリズムは「まだ撮ってない(『ウレロ』用の)コントがあれば終わらないと思って」と必要以上のコントを書いてきたという。
なんという大人げなさ。けれど、そんな大人げなさは本気になった大人だけの特権である。
「みんなといると超楽しいんだけどー!」と、みんなが「青春バカ」状態に陥る『ウレロ』。シーズン1がプロが作った学園祭なら、シーズン2はさながらプロフェッショナルたちの夏祭りだ。祭りへの参加資格はただひとつ。大人げなく全力で楽しむ。それだけだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
●【テレビ裏ガイド】INDEX
【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』
【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義
【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意

