『24時間テレビ』の偽善に埋もれさせるのはもったいない!?  渾身の問題作『車イスで僕は空を飛ぶ』

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『車イスで僕は空を飛ぶ』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。  日本テレビの『24時間テレビ「愛は地球を救う」』は今年で35回を数え、良くも悪くも日本の夏のテレビの風物詩となったといっても過言ではないだろう。日本のテレビ番組では数少ない、障害者にスポットを当てている番組という意味では貴重な存在ではあるが、その扱い方に対して賛否両論あるのは事実だ。  この番組における障害者は、たいてい「特別な存在」である。庇護すべきか弱き善良な人間である障害者が、健常者よりもはるかに純粋に頑張っている。「偉いでしょ?」と上から目線で投げかける。もはや逆差別である。とても障害者の方には見せられない障害者番組。それが『24時間テレビ「愛は地球を救う」』の一面(もちろん、この番組は障害者だけを扱ってはいない)である。  しかし、今年、番組内で放送されたドラマ『車イスで僕は空を飛ぶ』はひと味もふた味も違っていた。とかくこの番組のドラマ枠は、前述のような番組のカラーに沿った“頑張っている”障害者とその家族の安い美談とお涙ちょうだい的な話になってしまっていることが多かったが、本作はそういったチャリティー番組の枠に収まらない傑作だった。  『車イスで僕は空を飛ぶ』は、車イスの心理カウンセラー長谷川泰三の著書『命のカウンセリング』(あさ出版)を基に、長谷川の半生をドラマ化したものである。プロデューサーは河野英裕。演出は佐久間紀佳。この二人といえば同局の『すいか』『Q10』『妖怪人間ベム』などを手がけたチーム。そこに脚本として寺田敏雄が加わって制作された。主演を務めたのは、ふてくされた感じの若者を自然に演じさせたら右に出る者がいない、嵐の二宮和也だ。  中学時代から荒れて堕落した人生を送っていた主人公の泰之(二宮)はある日、ケンカの最中にビルから転落し、脊髄を損傷し車イス生活になってしまう。医者から「一生治らない」と告げられ、自暴自棄になっていた泰之だったが、入院中に小児がん患者の大輔(鈴木福)や同じ車イス生活を送りながらも社会復帰を果たすタケヒロ(池松壮亮)、そして売店の店員・久実(上戸彩)などに出会い、次第に心を開き始めていた。  しかし、そんな矢先、大輔は最期の時を迎えるために転院し、タケヒロも自殺を選び、久実も病院から姿を消した。さらに母(薬師丸ひろ子)は泰之の世話と掛け持ちの仕事からくる過労で倒れ、失踪してしまう。  「いらねえのは俺だ。生きてる価値もねえやつ。存在自体が迷惑なやつ。それが俺だ」と絶望した泰之は、「どうせなら、みんなに迷惑がられて死んでやる」と決意し、山奥の自殺の名所の崖に向かう。階段で車イスを抱えてもらったり、山道を押してもらったりしながら「迷惑をかけた相手、一人、二人、三人……」と数えながら、その断崖にたどり着く。  そんな彼の不穏な雰囲気を察知した登山客が、彼の後を追う。崖の先端から海を見つめる泰之。そしてそれを取り囲んで見守る大勢の登山客。どんな説得をすればいいのか分からず、全然説得にならないような素っ頓狂な言葉を投げかける登山客たち。なぜかそのうちの一人は「兎追いしかの山~」と歌い始める。そんな彼らの姿が、あたかもみんなお揃いの黄色いTシャツを着ているように見えたのは僕だけだろうか。  その光景はある意味、シュールで現実感のないものだったが、妙な力を持ったシーンだった。それこそがフィクションの力(事実に基づいたドラマではあるが、当然この場面はドラマのオリジナルだろう)だ。そんな登山客を尻目に自問自答の果てに「助けてください!」と叫んだ泰之は生き残ったのだ―――。  これは障害者の物語ではない。「自分が生きること」に悩み苦しむ一人の青年の物語である。それがたまたま半身不随の障害を持っていた、というだけだ。彼の悩みは決して特別なものではない。事実、明るく振る舞っていた久実は「生きてちゃいけないのは私なのに」と自らの壮絶な過去を告白し、泰之の母は電車に飛び込もうとしていたところを保護される。  ドラマの終盤、泰之は人生に傷つき疲れ果て、死を覚悟した母子に出会う。「これからどうすればいいですかね?」と問われ、泰之は言う。 「『助けて』って言えばいいんじゃないですかね? そういうのって、死ぬほど恥ずかしくて、情けないことなんですけど、結果、死なないから。大丈夫なんですって」  庇護されるべきなのは障害者ではない。健常者も障害者もない。守られる側と、守る側に分かれているわけではない。誰もが傷つき、お互いが助け助けられながら生きている。『車イスで僕は空を飛ぶ』は、そんな厳しくも温かい現実を、厳しく温かく切り取って描いた、志の高いドラマだった。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ●【テレビ裏ガイド】INDEX 【第6回】親子で一緒に見てはいけない!? トラウマ必至の昼ドラ『ぼくの夏休み』 【第5回】人見知り芸人の処世術が爆発!? 『日曜×芸人』が生み出す「ポジティブ」の正体 【第4回】大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り 【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』 【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義 【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意

親子で一緒に見てはいけない!? トラウマ必至の昼ドラ『ぼくの夏休み』

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『ぼくの夏休み』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。  現在放送中の昼ドラ『ぼくの夏休み』(フジテレビ系)は「太平洋戦争真っ只中の日本にタイムスリップしてしまった現代の幼い兄妹が、戦火の中、時に大人たちの厳しさに苦しみ、時にその温かさに触れて成長していく物語」というのが、放送開始前に伝えられた概要だった。公式ホームページには愛くるしい兄妹の笑顔が全面に映し出され、エンディングのスポットで使用する親子写真を視聴者から募集するなど、ほのぼのとした雰囲気に包まれていた。放送が子どもたちの夏休みに重なることもあって、親子で一緒に見る、戦争モノの道徳ドラマだと思われていた。  しかし、そんな予想は早々に裏切られる。オープニングから、手足を縛られた少年と少女が中年男性に激しく折檻されるシーンが映し出される。その中年男性は、別の場面では妻や使用人に対し粗暴に体を求める、鬼畜男だ。さらに、逃げまどう子どもたちをたいまつ片手に狂気じみた表情で追い詰める大勢の村人たち……。子どもと一緒に見るには、思わず目を背けたくなるシーンの連続だ。  ショッキングな場面はなおも続く。舞台が現代に移ると、主人公の兄妹は両親の離婚問題により、茨城にある母の実家に預けられることになる(その境遇だけでも、物語の容赦のなさの片鱗がうかがえる)。子どもたちだけで茨城に向かう道中、電車内で「死ね、死ね」とつぶやきながら携帯ゲームに興じていた兄の前に、突然見知らぬ老婆が立ちはだかる。老婆は「そんな言葉使うんじゃない!」と繰り返しながら、自らの胸をはだけ、戦争で負ったグロテスクな大やけどの傷痕を見せつけるのだ。思わず言葉を失う兄妹だったが、電車を降りた彼らを待っていたのは戦中の世界だった。  せめてもの救いは、このドラマの放送開始が、子どもたちの夏休みの開始よりも早かったことだろう。親子で見るのには少々ヘビーなシーンは、大人一人ならそのまま目が離せないくぎ付けのシーンへと変わる。  確かに、物語としてツッコミどころは多々ある。しかし、それを補って余りあるほど、登場人物たちの心理描写が丁寧に描かれ、演者たちの熱演に惹きつけられる。  主人公である兄・和也の少年時代(第1部)を演じたのは、ドラマ初主演で昼ドラ最年少主演となった綾部守人。眉毛をハの字にし、口角だけをわずかに上げる独特の困惑顔で視聴者の不安を煽り続けた。妹・はる菜の少女時代を演じたのは、NHKの朝ドラ『カーネーション』で主人公・糸子の少女時代を演じた二宮星。誰からも愛される(それゆえ、傷つけられる)少女を、その百面相ともいえる豊かな表情で演じ、物語の強力な推進力として機能していた。  脇を固めるのも、キャラ立ちした面々だ。和也が身を寄せる上条旅館の主人には升毅。カネと保身のため、鬼畜的な所業で和也たちを苦しめる。その二男・勇作役の森永悠希は爬虫類のような目つきで視聴者の怒りを呼び起こす、完璧なヒールっぷりだった。彼らの謀略により、はる菜は女郎部屋に売られ、兄妹は離れ離れになってしまう。それでも、若き日の樹木希林を思わせるような強烈な個性を画面から漂わせた伊藤麻実子演じる菊ちゃんの助けで、はる菜は体を売ることなく女郎部屋を逃げ出し、ついに2人は再会を果たす。が、その刹那、米軍の空襲が2人を襲うのだった。  容赦ない展開は第2部「青春編」になっても続く。第1部から7年後、空爆の混乱で再び生き別れになってしまった兄妹を演じる役者は、井上正大と有村架純にバトンタッチ。運命的な再会を果たすが、お互いの素性は分からぬまま。心配する和也が止めるのを振りきって、はる菜は生活のためにパンパンになり、米兵に処女を売ってしまうのだった―――。  毒にも薬にもならない“良性”のエンタテインメント主流の昨今のテレビ界の中にあって、このドラマのように、ある種のトラウマを植えつけるような“悪性”のエンタテインメントは貴重だ。今、テレビで放送される野心的な作品は大抵の場合、それと分かるような姿で放送される。だから、見るときはそれなりの覚悟を持って臨むことができる。けれど、本当の意味で刺激的なのは、それが不意打ちで訪れた時だ。『ぼくの夏休み』という楽しげなタイトルと、ほのぼのとしたパッケージに隠された猛毒に打ちのめされるように。その時受けたトラウマは、子ども心の奥深くにくさびを打つように、ずっと脳裏に残るだろう。そのくさびが精神世界にどんな変化をもたらすかは、分からない。でも、それこそが本来テレビが持つ醍醐味の一つではないだろうか。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ●【テレビ裏ガイド】INDEX 【第5回】人見知り芸人の処世術が爆発!? 『日曜×芸人』が生み出す「ポジティブ」の正体 【第4回】大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り 【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』 【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義 【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意

人見知り芸人の処世術が爆発!? 『日曜×芸人』が生み出す「ポジティブ」の正体

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テレビ朝日『日曜×芸人』
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。  『日曜×芸人』(テレビ朝日系)は、日曜の夜の憂鬱な気分を吹き飛ばすべく、ゲストおすすめの「ポジティブになれるもの」を体験するというコンセプトの番組である。が、そんなことより、バカリズム、オードリーの若林正恭、ザキヤマこと山崎弘也のひたすらムダなやり取りを眺めるのが何よりこの番組の魅力であり、日曜の夜っぽい。ゲストだってないがしろだ。その理由は「単にそのほうが面白いから」「3人が自分たちのムダなやり取りの応酬に夢中」というのもあるが、3人のレギュラー陣が全員「人見知り」である、ということも大きな理由のひとつではないだろうか。  バカリズムや若林が「人見知り」であることは『アメトーーク!』(同)の「人見知り芸人」の回などでよく知られているが、ザキヤマは一般的にその対極にいると思われている。事実、「人見知り芸人」では、エンディングの「人見知り克服講座」の講師として登場している。ザキヤマは人見知り芸人たちを前にして「人見知りの皆さんは、嫌われちゃうって思ってるんでしょ? 嫌われちゃうってことは、嫌われてないと思ってるんですよ。もうすでに、嫌われてるんですよ?(人見知りの人はまだ)嫌われてないと思ってるという傲慢さがあるんです」と言い放った。そして「深い話をしようとするから面倒くさい。ただ単にホメときゃいい」「自分がしゃべろうと思うからしんどい。どれだけ相手にしゃべらせるかが問題。あとはただ聞くだけ」などと具体的に指南。この講座でよく分かるのは人見知りの克服方法というよりも、ザキヤマが実は極度の人見知りであり、それをかなりの荒療治で克服したであろうことだ。何かをあきらめることによって得た、ガサツというキャラの鎧で守られた先天的な人見知りだ。実は3人の中で最も根深い人見知りは、彼なのではないだろうか。  若林は「面倒くさい」タイプの人見知りだ。彼は自分が「誤解」されてしまうのが許せない。格好つけていたり、気取っていたりするような「ぶってる」奴に見られるのも嫌だし、何も考えていないような薄っぺらい奴に見られるのも嫌だ。強い自我が許さない。だけど、自分のそういう複雑な心理が分かりづらいのも分っている。だから、心を閉ざしてしまう。面倒くさい。いわば若林は(自分のことを)「分かってちゃん」なのだ。だから、自分のことを分かってくれている人たちの中では、彼は人見知りなど感じさせない傍若無人っぷりを発揮する。昔からよく知る仲間たちを集めた『おどおどオードリー』(CSフジテレビONE)やラジオ『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)などでの彼は、地上波のテレビで見る若林とは別人のようだ。つまり、彼の人見知りは限定的なものなのだ。  バカリズムの場合は、結果的に人見知りのポジションに収まってしまったのではないだろうか。実際に気にし過ぎでやや内向きな性格ではあるが、もともとはみんなでワイワイやるのが好きなタイプであることは本人も語っている。しかし、その飛び抜けた想像力と発想力がそれを邪魔する。コンビを解消してピン芸人となると、「孤高の天才」というイメージが定着。バカリズムはそのイメージを引き受ける形で、自ら内向的で「気難しい」「とっつきにくい」「何を考えているか分からない」人見知りなキャラに収まった。いわば、ポジショニングとしての後天的な人見知りだ。事実、「コメ旬(Vol.4)」(キネマ旬報社)のインタビューで「僕はいまだに誰からも正解の扱い方が提示されてない芸人」だと語っている。  しかし、その突破口となる兆しはある。それが『ウレロ』シリーズ(テレビ東京系)によるバカリズムの「かわいさの発見」である。本人にとって意外だったようだが、『ウレロ』シーズン1では、バカリズムが「かわいい」という視聴者の反響が大きかった。バカリズムはこのイメージも引き受けた。「やっぱ、愛されることはすごい大事だなって思ったんです。あざといと思われようがどうしようが……むしろあざといと思われたうえで、さらにそれでもかわいいと思われてやろうと」(「ピクトアップ」[2012年8月号/ピクトアップ]より)。その「かわいい」イメージは、『日曜×芸人』でも随所に引き継がれている。  『日曜×芸人』で彼らが作り出す「ポジティブ」とは、まさに3人の芸人としての処世術そのものだ。若林がザキヤマにイジられまくるという構図を軸に、バカリズムがそれに追随したり、スカしたり、自らもイジられ役に回ったりしてその都度バランスを保ち、3人の関係性はポジティブな多幸感にあふれている。  しかし、徐々にではあるが、そのバランスが微妙に変わりつつある。若林が本性を時折見せ始めているのだ。いつか若林のお山の大将的な毒と暴力性が、バカリズムの「正解の扱い方」を導き出し、ポジティブという分厚い壁に隠されたザキヤマの素の部分を暴くかもしれない。そんな不意のカタルシスを、ほのかに期待してしまう。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ●【テレビ裏ガイド】INDEX 【第4回】大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り 【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』 【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義 【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意

大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り

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『ウレロ未完成少女』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「大人は信用できないと思ってた」  『ウレロ☆未完成少女』(テレビ東京系)開始前の出演者座談会の冒頭で、早見あかりは言った。17歳の少女にそんなことを言わせてしまうような、どんな過去があったのかはひとまず置いておいて、彼女にとって『ウレロ』の大人たちは「信用」に値する大人だったようだ。  この番組は、『ウレロ☆未確認少女』に続く『ウレロ』シリーズのシーズン2である。コント番組すら成立させることが難しい昨今のテレビ業界の中で、さらに日本で成功例の少ないシチュエーションコメディを毎回丸一日かけて作り上げ、客前一発本番というスタイルで実現したのが『ウレロ』である。  それを演じるために、『オモバカ』絶対王者の劇団ひとり、『IPPONグランプリ』絶対王者のバカリズム、『キング・オブ・コント』王者の東京03、そして大ブレイク前夜のももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)を脱退した直後だった早見あかり。さらに劇中には登場しない陰の主役として、ももいろクローバーZまで集結した奇跡のような番組だ。  劇団ひとり演じる川島が社長を務める弱小芸能事務所「@川島プロダクション」を舞台に、バカリズムと東京03、早見あかりが演じる事務所の面々がアイドルグループ「未確認少女隊UFI」(ユーフィ)を売り出し、同事務所の再建を目指すという設定で、毎回伏線だらけのドタバタ騒動が繰り広げられる。  ゲスト出演した大竹まことは「次の時代は、こういう奴らが担ってほしい」と賛辞を送り、マキタスポーツは「あの連中が“たった一日”であのレベルの芝居をするなら、三谷幸喜いらないじゃんと思うほどのレベル」と絶賛していた。  「奇跡はあるって信じたい!」と、シーズン1の途中からファンはもちろん、出演者からもシーズン2が熱望されていた。しかし、多忙を極めるこのメンバーを再び集結させることも、シチュエーションコメディの企画(実際、シーズン1の視聴率は高いとはいえなかった)を通すのも、今のテレビ界では難しい。それが冒頭の早見あかりの言葉にもつながる。  しかし、一部で「実現の神」とまで呼ばれる、この番組の演出兼プロデューサーの佐久間宣行は、そのハードルを次々突破。ファン、スタッフ、出演者全員が望む最高の形のまま、まさかの1年を待たずしてのシーズン2開始。それはまさに奇跡だった。  『ウレロ』の魅力は数多くあるが、その最大の“発見”は早見あかりだろう。日本屈指のコント師を向こうに回して、堂々たる立ち居振る舞い。コメディ女優としての高い能力を見せつけた。大女優と呼ばれる人には必ず、圧倒的な輝きを見せる旬な時期があるといわれるが、キラキラして瑞々しい、そしてどこか危うい魅力を放っている今の彼女は、まさにその直前なのではないだろうか(すなわち、一番見ておくべき時期だ)。ももクロを辞めて、いつもそばにいた仲間を失った早見あかり。その隙間に『ウレロ』というチームがぴったりとハマった。だからシーズン2が実現した時のうれしそうな表情ったらなかったし、彼らに鍛えられて、いつの間にか大ボケまでこなすコメディエンヌになっていた。    シーズン2開始にあたり、その舞台設定は徹底して隠されていた。シーズン1と同じアイドル芸能事務所のまま続けるのか、あるいはメンバーだけそのままで違う設定にするのか――。シーズン1の最終回に合わせて行われたニコニコ生放送の『ウレロ』実況では、出演者たちはシーズン2が実現したらどのような設定にするのかという話で盛り上がったが、その場で実施された視聴者アンケートでは、「探偵事務所」という設定案が僅差でトップだった。  いよいよ番組が開始されるも、その設定がなかなか判明しない。何やら「事件」のにおいを漂わせつつ、やがてハードボイルドな衣装をまとった豊本(東京03)が「@豊本探偵事務所」という看板を持ち込むと「今度はやっぱり探偵か!」と僕らが思った刹那、川島(劇団ひとり)の「豊本は元スパイ」という前シーズンの設定とつながるセリフに、頭の中が一瞬で「?」に。そして、この番組で「武闘派」として新境地を切り開いているバカリズムが「ここは芸能事務所だろ!」と看板を叩き割ると、ついに正真正銘、前作の「続き」だということが分かるのだ。見事に騙された。うれしい裏切り。しかも第1話では物語の進行とともに、ちゃんと探偵設定まで生かして「事件」も解決する巧妙な構成。続編ということでキャラクターの輪郭が最初から鮮明なため、全員が躍動していた。あの楽しかった前作のまま、いや間違いなくパワーアップして『ウレロ』が帰ってきた! そう思わせてくれる第1話だった。  このシーズン2を熱望するあまり、劇団ひとりは「実現できなかったら丸坊主ね!」とプロデューサーに迫り、バカリズムは「まだ撮ってない(『ウレロ』用の)コントがあれば終わらないと思って」と必要以上のコントを書いてきたという。  なんという大人げなさ。けれど、そんな大人げなさは本気になった大人だけの特権である。  「みんなといると超楽しいんだけどー!」と、みんなが「青春バカ」状態に陥る『ウレロ』。シーズン1がプロが作った学園祭なら、シーズン2はさながらプロフェッショナルたちの夏祭りだ。祭りへの参加資格はただひとつ。大人げなく全力で楽しむ。それだけだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ●【テレビ裏ガイド】INDEX 【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』 【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義 【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意

大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り

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『ウレロ未完成少女』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「大人は信用できないと思ってた」  『ウレロ☆未完成少女』(テレビ東京系)開始前の出演者座談会の冒頭で、早見あかりは言った。17歳の少女にそんなことを言わせてしまうような、どんな過去があったのかはひとまず置いておいて、彼女にとって『ウレロ』の大人たちは「信用」に値する大人だったようだ。  この番組は、『ウレロ☆未確認少女』に続く『ウレロ』シリーズのシーズン2である。コント番組すら成立させることが難しい昨今のテレビ業界の中で、さらに日本で成功例の少ないシチュエーションコメディを毎回丸一日かけて作り上げ、客前一発本番というスタイルで実現したのが『ウレロ』である。  それを演じるために、『オモバカ』絶対王者の劇団ひとり、『IPPONグランプリ』絶対王者のバカリズム、『キング・オブ・コント』王者の東京03、そして大ブレイク前夜のももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)を脱退した直後だった早見あかり。さらに劇中には登場しない陰の主役として、ももいろクローバーZまで集結した奇跡のような番組だ。  劇団ひとり演じる川島が社長を務める弱小芸能事務所「@川島プロダクション」を舞台に、バカリズムと東京03、早見あかりが演じる事務所の面々がアイドルグループ「未確認少女隊UFI」(ユーフィ)を売り出し、同事務所の再建を目指すという設定で、毎回伏線だらけのドタバタ騒動が繰り広げられる。  ゲスト出演した大竹まことは「次の時代は、こういう奴らが担ってほしい」と賛辞を送り、マキタスポーツは「あの連中が“たった一日”であのレベルの芝居をするなら、三谷幸喜いらないじゃんと思うほどのレベル」と絶賛していた。  「奇跡はあるって信じたい!」と、シーズン1の途中からファンはもちろん、出演者からもシーズン2が熱望されていた。しかし、多忙を極めるこのメンバーを再び集結させることも、シチュエーションコメディの企画(実際、シーズン1の視聴率は高いとはいえなかった)を通すのも、今のテレビ界では難しい。それが冒頭の早見あかりの言葉にもつながる。  しかし、一部で「実現の神」とまで呼ばれる、この番組の演出兼プロデューサーの佐久間宣行は、そのハードルを次々突破。ファン、スタッフ、出演者全員が望む最高の形のまま、まさかの1年を待たずしてのシーズン2開始。それはまさに奇跡だった。  『ウレロ』の魅力は数多くあるが、その最大の“発見”は早見あかりだろう。日本屈指のコント師を向こうに回して、堂々たる立ち居振る舞い。コメディ女優としての高い能力を見せつけた。大女優と呼ばれる人には必ず、圧倒的な輝きを見せる旬な時期があるといわれるが、キラキラして瑞々しい、そしてどこか危うい魅力を放っている今の彼女は、まさにその直前なのではないだろうか(すなわち、一番見ておくべき時期だ)。ももクロを辞めて、いつもそばにいた仲間を失った早見あかり。その隙間に『ウレロ』というチームがぴったりとハマった。だからシーズン2が実現した時のうれしそうな表情ったらなかったし、彼らに鍛えられて、いつの間にか大ボケまでこなすコメディエンヌになっていた。    シーズン2開始にあたり、その舞台設定は徹底して隠されていた。シーズン1と同じアイドル芸能事務所のまま続けるのか、あるいはメンバーだけそのままで違う設定にするのか――。シーズン1の最終回に合わせて行われたニコニコ生放送の『ウレロ』実況では、出演者たちはシーズン2が実現したらどのような設定にするのかという話で盛り上がったが、その場で実施された視聴者アンケートでは、「探偵事務所」という設定案が僅差でトップだった。  いよいよ番組が開始されるも、その設定がなかなか判明しない。何やら「事件」のにおいを漂わせつつ、やがてハードボイルドな衣装をまとった豊本(東京03)が「@豊本探偵事務所」という看板を持ち込むと「今度はやっぱり探偵か!」と僕らが思った刹那、川島(劇団ひとり)の「豊本は元スパイ」という前シーズンの設定とつながるセリフに、頭の中が一瞬で「?」に。そして、この番組で「武闘派」として新境地を切り開いているバカリズムが「ここは芸能事務所だろ!」と看板を叩き割ると、ついに正真正銘、前作の「続き」だということが分かるのだ。見事に騙された。うれしい裏切り。しかも第1話では物語の進行とともに、ちゃんと探偵設定まで生かして「事件」も解決する巧妙な構成。続編ということでキャラクターの輪郭が最初から鮮明なため、全員が躍動していた。あの楽しかった前作のまま、いや間違いなくパワーアップして『ウレロ』が帰ってきた! そう思わせてくれる第1話だった。  このシーズン2を熱望するあまり、劇団ひとりは「実現できなかったら丸坊主ね!」とプロデューサーに迫り、バカリズムは「まだ撮ってない(『ウレロ』用の)コントがあれば終わらないと思って」と必要以上のコントを書いてきたという。  なんという大人げなさ。けれど、そんな大人げなさは本気になった大人だけの特権である。  「みんなといると超楽しいんだけどー!」と、みんなが「青春バカ」状態に陥る『ウレロ』。シーズン1がプロが作った学園祭なら、シーズン2はさながらプロフェッショナルたちの夏祭りだ。祭りへの参加資格はただひとつ。大人げなく全力で楽しむ。それだけだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ●【テレビ裏ガイド】INDEX 【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』 【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義 【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意

大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り

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『ウレロ未完成少女』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「大人は信用できないと思ってた」  『ウレロ☆未完成少女』(テレビ東京系)開始前の出演者座談会の冒頭で、早見あかりは言った。17歳の少女にそんなことを言わせてしまうような、どんな過去があったのかはひとまず置いておいて、彼女にとって『ウレロ』の大人たちは「信用」に値する大人だったようだ。  この番組は、『ウレロ☆未確認少女』に続く『ウレロ』シリーズのシーズン2である。コント番組すら成立させることが難しい昨今のテレビ業界の中で、さらに日本で成功例の少ないシチュエーションコメディを毎回丸一日かけて作り上げ、客前一発本番というスタイルで実現したのが『ウレロ』である。  それを演じるために、『オモバカ』絶対王者の劇団ひとり、『IPPONグランプリ』絶対王者のバカリズム、『キング・オブ・コント』王者の東京03、そして大ブレイク前夜のももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)を脱退した直後だった早見あかり。さらに劇中には登場しない陰の主役として、ももいろクローバーZまで集結した奇跡のような番組だ。  劇団ひとり演じる川島が社長を務める弱小芸能事務所「@川島プロダクション」を舞台に、バカリズムと東京03、早見あかりが演じる事務所の面々がアイドルグループ「未確認少女隊UFI」(ユーフィ)を売り出し、同事務所の再建を目指すという設定で、毎回伏線だらけのドタバタ騒動が繰り広げられる。  ゲスト出演した大竹まことは「次の時代は、こういう奴らが担ってほしい」と賛辞を送り、マキタスポーツは「あの連中が“たった一日”であのレベルの芝居をするなら、三谷幸喜いらないじゃんと思うほどのレベル」と絶賛していた。  「奇跡はあるって信じたい!」と、シーズン1の途中からファンはもちろん、出演者からもシーズン2が熱望されていた。しかし、多忙を極めるこのメンバーを再び集結させることも、シチュエーションコメディの企画(実際、シーズン1の視聴率は高いとはいえなかった)を通すのも、今のテレビ界では難しい。それが冒頭の早見あかりの言葉にもつながる。  しかし、一部で「実現の神」とまで呼ばれる、この番組の演出兼プロデューサーの佐久間宣行は、そのハードルを次々突破。ファン、スタッフ、出演者全員が望む最高の形のまま、まさかの1年を待たずしてのシーズン2開始。それはまさに奇跡だった。  『ウレロ』の魅力は数多くあるが、その最大の“発見”は早見あかりだろう。日本屈指のコント師を向こうに回して、堂々たる立ち居振る舞い。コメディ女優としての高い能力を見せつけた。大女優と呼ばれる人には必ず、圧倒的な輝きを見せる旬な時期があるといわれるが、キラキラして瑞々しい、そしてどこか危うい魅力を放っている今の彼女は、まさにその直前なのではないだろうか(すなわち、一番見ておくべき時期だ)。ももクロを辞めて、いつもそばにいた仲間を失った早見あかり。その隙間に『ウレロ』というチームがぴったりとハマった。だからシーズン2が実現した時のうれしそうな表情ったらなかったし、彼らに鍛えられて、いつの間にか大ボケまでこなすコメディエンヌになっていた。    シーズン2開始にあたり、その舞台設定は徹底して隠されていた。シーズン1と同じアイドル芸能事務所のまま続けるのか、あるいはメンバーだけそのままで違う設定にするのか――。シーズン1の最終回に合わせて行われたニコニコ生放送の『ウレロ』実況では、出演者たちはシーズン2が実現したらどのような設定にするのかという話で盛り上がったが、その場で実施された視聴者アンケートでは、「探偵事務所」という設定案が僅差でトップだった。  いよいよ番組が開始されるも、その設定がなかなか判明しない。何やら「事件」のにおいを漂わせつつ、やがてハードボイルドな衣装をまとった豊本(東京03)が「@豊本探偵事務所」という看板を持ち込むと「今度はやっぱり探偵か!」と僕らが思った刹那、川島(劇団ひとり)の「豊本は元スパイ」という前シーズンの設定とつながるセリフに、頭の中が一瞬で「?」に。そして、この番組で「武闘派」として新境地を切り開いているバカリズムが「ここは芸能事務所だろ!」と看板を叩き割ると、ついに正真正銘、前作の「続き」だということが分かるのだ。見事に騙された。うれしい裏切り。しかも第1話では物語の進行とともに、ちゃんと探偵設定まで生かして「事件」も解決する巧妙な構成。続編ということでキャラクターの輪郭が最初から鮮明なため、全員が躍動していた。あの楽しかった前作のまま、いや間違いなくパワーアップして『ウレロ』が帰ってきた! そう思わせてくれる第1話だった。  このシーズン2を熱望するあまり、劇団ひとりは「実現できなかったら丸坊主ね!」とプロデューサーに迫り、バカリズムは「まだ撮ってない(『ウレロ』用の)コントがあれば終わらないと思って」と必要以上のコントを書いてきたという。  なんという大人げなさ。けれど、そんな大人げなさは本気になった大人だけの特権である。  「みんなといると超楽しいんだけどー!」と、みんなが「青春バカ」状態に陥る『ウレロ』。シーズン1がプロが作った学園祭なら、シーズン2はさながらプロフェッショナルたちの夏祭りだ。祭りへの参加資格はただひとつ。大人げなく全力で楽しむ。それだけだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ●【テレビ裏ガイド】INDEX 【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』 【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義 【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意

大人げない大人たちの『ウレロ☆未完成少女』という夏祭り

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『ウレロ未完成少女』公式サイトより
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「大人は信用できないと思ってた」  『ウレロ☆未完成少女』(テレビ東京系)開始前の出演者座談会の冒頭で、早見あかりは言った。17歳の少女にそんなことを言わせてしまうような、どんな過去があったのかはひとまず置いておいて、彼女にとって『ウレロ』の大人たちは「信用」に値する大人だったようだ。  この番組は、『ウレロ☆未確認少女』に続く『ウレロ』シリーズのシーズン2である。コント番組すら成立させることが難しい昨今のテレビ業界の中で、さらに日本で成功例の少ないシチュエーションコメディを毎回丸一日かけて作り上げ、客前一発本番というスタイルで実現したのが『ウレロ』である。  それを演じるために、『オモバカ』絶対王者の劇団ひとり、『IPPONグランプリ』絶対王者のバカリズム、『キング・オブ・コント』王者の東京03、そして大ブレイク前夜のももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)を脱退した直後だった早見あかり。さらに劇中には登場しない陰の主役として、ももいろクローバーZまで集結した奇跡のような番組だ。  劇団ひとり演じる川島が社長を務める弱小芸能事務所「@川島プロダクション」を舞台に、バカリズムと東京03、早見あかりが演じる事務所の面々がアイドルグループ「未確認少女隊UFI」(ユーフィ)を売り出し、同事務所の再建を目指すという設定で、毎回伏線だらけのドタバタ騒動が繰り広げられる。  ゲスト出演した大竹まことは「次の時代は、こういう奴らが担ってほしい」と賛辞を送り、マキタスポーツは「あの連中が“たった一日”であのレベルの芝居をするなら、三谷幸喜いらないじゃんと思うほどのレベル」と絶賛していた。  「奇跡はあるって信じたい!」と、シーズン1の途中からファンはもちろん、出演者からもシーズン2が熱望されていた。しかし、多忙を極めるこのメンバーを再び集結させることも、シチュエーションコメディの企画(実際、シーズン1の視聴率は高いとはいえなかった)を通すのも、今のテレビ界では難しい。それが冒頭の早見あかりの言葉にもつながる。  しかし、一部で「実現の神」とまで呼ばれる、この番組の演出兼プロデューサーの佐久間宣行は、そのハードルを次々突破。ファン、スタッフ、出演者全員が望む最高の形のまま、まさかの1年を待たずしてのシーズン2開始。それはまさに奇跡だった。  『ウレロ』の魅力は数多くあるが、その最大の“発見”は早見あかりだろう。日本屈指のコント師を向こうに回して、堂々たる立ち居振る舞い。コメディ女優としての高い能力を見せつけた。大女優と呼ばれる人には必ず、圧倒的な輝きを見せる旬な時期があるといわれるが、キラキラして瑞々しい、そしてどこか危うい魅力を放っている今の彼女は、まさにその直前なのではないだろうか(すなわち、一番見ておくべき時期だ)。ももクロを辞めて、いつもそばにいた仲間を失った早見あかり。その隙間に『ウレロ』というチームがぴったりとハマった。だからシーズン2が実現した時のうれしそうな表情ったらなかったし、彼らに鍛えられて、いつの間にか大ボケまでこなすコメディエンヌになっていた。    シーズン2開始にあたり、その舞台設定は徹底して隠されていた。シーズン1と同じアイドル芸能事務所のまま続けるのか、あるいはメンバーだけそのままで違う設定にするのか――。シーズン1の最終回に合わせて行われたニコニコ生放送の『ウレロ』実況では、出演者たちはシーズン2が実現したらどのような設定にするのかという話で盛り上がったが、その場で実施された視聴者アンケートでは、「探偵事務所」という設定案が僅差でトップだった。  いよいよ番組が開始されるも、その設定がなかなか判明しない。何やら「事件」のにおいを漂わせつつ、やがてハードボイルドな衣装をまとった豊本(東京03)が「@豊本探偵事務所」という看板を持ち込むと「今度はやっぱり探偵か!」と僕らが思った刹那、川島(劇団ひとり)の「豊本は元スパイ」という前シーズンの設定とつながるセリフに、頭の中が一瞬で「?」に。そして、この番組で「武闘派」として新境地を切り開いているバカリズムが「ここは芸能事務所だろ!」と看板を叩き割ると、ついに正真正銘、前作の「続き」だということが分かるのだ。見事に騙された。うれしい裏切り。しかも第1話では物語の進行とともに、ちゃんと探偵設定まで生かして「事件」も解決する巧妙な構成。続編ということでキャラクターの輪郭が最初から鮮明なため、全員が躍動していた。あの楽しかった前作のまま、いや間違いなくパワーアップして『ウレロ』が帰ってきた! そう思わせてくれる第1話だった。  このシーズン2を熱望するあまり、劇団ひとりは「実現できなかったら丸坊主ね!」とプロデューサーに迫り、バカリズムは「まだ撮ってない(『ウレロ』用の)コントがあれば終わらないと思って」と必要以上のコントを書いてきたという。  なんという大人げなさ。けれど、そんな大人げなさは本気になった大人だけの特権である。  「みんなといると超楽しいんだけどー!」と、みんなが「青春バカ」状態に陥る『ウレロ』。シーズン1がプロが作った学園祭なら、シーズン2はさながらプロフェッショナルたちの夏祭りだ。祭りへの参加資格はただひとつ。大人げなく全力で楽しむ。それだけだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ●【テレビ裏ガイド】INDEX 【第3回】有吉イジリの“陰の帝王”は夏目三久? 本当は怖い『怒り新党』 【第2回】「正義は少年ジャンプの中にしかない!?」“絆”を裁く『リーガル・ハイ』の正義 【第1回】怖さと面白さが同居した新たな笑い?『テベ・コンヒーロ』の悪意