「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「はなはだ簡単ではございますが、うれしい言葉とさせていただきます」 2011年の「日本アカデミー賞」で「話題賞」に輝いたナインティナイン岡村隆史は、その異質な雰囲気にのまれ、そんなワケのわからない受賞スピーチをして失笑を買った。長年、テレビ界の第一線で活躍する岡村でさえ緊張の極致にしてしまう『日本アカデミー賞授賞式』とは、一体何なのだろうか? この授賞式は、1978年の第1回から日本テレビで『日本アカデミー賞授賞式』として放送されている。豪華俳優、映画人が一堂に会すという、テレビ番組としては貴重な映像である。今年の司会は、西田敏行と樹木希林。 「これを頂くと、来年授賞式の司会やらなきゃいけないから……とにかく困りました」 と、昨年の最優秀主演女優賞を獲得した際のスピーチで樹木が語ったように、女性司会者は前年の最優秀主演女優賞受賞者が務めることが通例になっている。今年の番組の冒頭、「“危ない”2人の司会者」と紹介されたが、やはり注目すべきは樹木だろう。というのも彼女は、この『日本アカデミー賞授賞式』で過去、強烈な爆弾発言を連発しているのだ。 それは、07年の『日本アカデミー賞授賞式』。その年は、ほかの映画賞では軒並み『それでもボクはやってない』(周防正行監督)が多くの賞を受賞していた。だが、日本アカデミー賞だけは例外で、最優秀賞を受賞したのは助演女優のもたいまさこのみ。代わりに、日本テレビが出資した『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(松岡錠司監督)が各賞を総ナメにしたのだ。樹木も、同作で最優秀主演女優賞を獲得。だが彼女は、「私なら違う作品を選ぶ」「監督賞は余計ね」「半分くらいしか出演していないのに(最優秀主演女優)賞を頂いてしまって申し訳ない」「帰りたい」「もう酔った」「組織票かと思った」など、奔放な発言を連発した。 実は、樹木は別のインタビューで「監督に殺意が芽生えた」というほど、この映画の演出に納得がいっていなかったのだ。そのため、最後には「この日本アカデミー賞が名実共に素晴らしい賞になっていくことを願っております」と、皮肉たっぷりに締めくくった。 そして、今年の『日本アカデミー賞授賞式』。授賞式が始まる前に「受賞者の方に失礼のないように言葉遣いに気をつけて……」と決意表明する西田を遮って「私に言ってるんじゃないの?」とツッコむ樹木。始まる前から“自由”で不穏な空気を漂わせる。 この『授賞式』で近年、もはや“名物”となっているのがオダギリジョーの“奇抜”なファッション。この日も、言葉では形容しがたい服に身を包むオダギリに、前述の『東京タワー』では親子役で共演した樹木は、お構いなしに切り込んでいく。 「お子さんが生まれたんですけど、こういうファッションを相変わらず守っていくってことは、すごいパワーですよね」 「ダメですよね……」と苦笑いを浮かべるオダギリに、樹木は「いや、ステキなことですよ」と不敵に笑った。 さらに、助演女優賞の蒼井優と助演男優賞の妻夫木聡が福岡出身と知ると「福岡出身は福山(雅治)さんも。いい男いい女ばっかりってことですかね」と突然語りだす。しかし、福山は長崎出身。樹木はリリー・フランキーと勘違いしていたのだ。それを妻夫木に指摘されると、「リリーさんでしたか。あ、じゃあ、違うケースもあるのね」と、どこまでも自由だった。 また、その福山には「世の中には婚期を逃した女性がいっぱいいるのだけれど、何もかもそろっている、白馬に乗った福山さんがいつまでも独り(独身)でいるから、期待を持たせちゃっているからだと思うんだけど」と、独自の理論で女性の晩婚化の“戦犯”に指名。さすがの福山も「これは答えるべきなんですかね……」と言葉に詰まってしまった。 昨今は、秒単位で計算され整備されたバラエティ番組ばかりだ。そこに出演するのは、バラエティを熟知したタレントたち。もちろん、少しでも視聴率を伸ばすための工夫や、視聴者が安心して見られる安定感は大事なことだ。けれど、どこか窮屈で閉塞感を感じてしまうのも事実。『日本アカデミー賞授賞式』には、普段、バラエティ番組に出演するようなタレントはほとんどいない。だから、冒頭に挙げた岡村でさえ、その異質な雰囲気に普段とは違う感じになってしまう。今年「話題賞」に選ばれたオードリー若林も「かつてない場違い感を感じてるんですけれども……」とガチガチに緊張し、司会の2人との会話もかみ合っていなかった。しかし、その厳かで“不自由”な空間の中に、樹木希林のような“自由”な存在が投げ込まれた時の、何が起こるか分からない緊張感やギクシャク感は抜群に面白い。賞の権威だとか正統性だとかはひとまず置いておけば、この『授賞式』の“不安定さ”は、テレビ番組として圧倒的に正しい。そこに、今のテレビの閉塞感から脱するヒントがあるような気がしてならない。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから日本アカデミー賞公式サイトより
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大島渚『忘れられた皇軍』、自衛官いじめ自殺事件……『NNNドキュメント』が突きつける日本の闇
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「日本人たちよ、私たちはこれでいいのだろうか? これでいいのだろうか?」 と、あらためて問いただしたドキュメント「反骨のドキュメンタリスト 大島渚『忘れられた皇軍』という衝撃」が大きな話題となった。 放送されたのは2014年1月12日の『NNNドキュメント'14』(日本テレビ系)。これは1963年に同局で放送された大島渚監督のドキュメンタリー『忘れられた皇軍』全編をノーカットで放送し、関係者が当時の制作秘話などを語ったものだ。『忘れられた皇軍』は日本軍として戦いながらも、戦後、韓国籍となったため十分な補償を受けられなかった傷痍軍人たちを追ったものだが、『NNNドキュメント』版では、その韓国籍の傷痍軍人たちに対する日本人の視線が、現代の私たちが持つ“被害者意識”の問題にも通じることを浮き彫りにした秀作で、1月度のギャラクシー賞にも選出された。 『NNNドキュメント』は民法のドキュメンタリー番組の中にあって、最も骨太な作品をコンスタントに放送している番組のひとつだ。2月23日深夜に放送された「自衛隊の闇 不正を暴いた現役自衛官」もそうだ。 これは、海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」で起きた、先輩自衛官からのいじめを苦に1等海士(当時21歳)が自殺した裁判をめぐるドキュメントである。 「お前だけは絶対呪い殺してやる」と、名指しの遺書が残されていたにもかかわらず、自衛隊側は「自殺の原因は、いじめとは断言できない」として遺族と裁判で争った。自衛隊は「調査報告書」を作成するため、隊員にアンケートを実施。しかし、遺族からの情報開示請求に、自衛隊側は「記入済みのアンケートは、調査報告書の完成と同時に廃棄した」と回答をしていた。そして、第一審の判決が下される。自殺の原因が先輩自衛官の暴行によるものであることは認定されたが、一方で自衛隊側に自殺の責任はない、とするものだった。 判決後、まもなく、弁護士に一通の手紙が届く。 「私はかつて、たちかぜ裁判で国側代理人を務めた3等海佐です」と始まった手紙には「防衛省・海上自衛隊はいくつかの文書を原告側に隠しています」と続けられていた。 3等海佐は、自衛隊では幹部クラスに当たる。彼は、代理人を務める中で、アンケートが廃棄されていない事実を知り、何度も自衛隊内部で不正を是正し、事実を公表するよう働きかけている。最初は「公益通報」という、いわゆる内部告発の形で。2度目は、首席法務官への直談判。そして3度目は、人事異動で替わった新たな主席法務官にあらためて直談判した。しかし、いずれも不正がただされることはなかった。これに至り、組織内で手を尽くした3佐は、ついに相手弁護士に手紙を出したのだ。さらに、東京高等裁判所へ22ページに及ぶ陳述書を実名で提出。しかし、自衛隊側は裁判所に対し、なおも誤った事実認識に基づくと主張。ウソつき同然の扱いだった。 3佐が「自衛隊は文書を隠している」と訴えたことを新聞などが報じた日、当直の報告に行くと、上官はその記事を手に話しかけてきたという。3佐は自分を守るために、この時も録音をしていた。 「これお前だよな? なんでこんなことしたの?」と問い詰める上官に「あの、文書を隠していることがずっと心に引っかかってて、正直に出してくれるとずっと期待していたんですけど、どうも最後まで逃げ切る考えのようだったので。私としても苦渋の決断で、こうせざるを得ませんでした」と3佐は答える。 上官「あのさ、あなたの気持ちはわかるよ。組織として隠蔽していると、そういうことがあると……。僕は、ちょっと事実は知らないんだけど。ただね、あなたは組織の中の一人だよな? 組織が組織を訴えるっていうんだよな。ひとつの構図から見ると。それっておかしくないか、お前? お前はこの組織に属しているんだぞ」 3佐「それはそうです。私自身も身を切るような思いです」 上官「だから、もしやるんだったら、あなた自衛隊を辞めてね、『こういうことがある、そういった組織だ』ってやるべきじゃないのかな? 中にいてこういうことをやるっていうのは、非常にまずいよな、と俺は思うけど。俺だったらね。組織を離れてやるべきだ。組織の中ではやっちゃいかんよ」 自衛隊を辞めろ、という口ぶりである。そして3佐には、内部資料をコピーしたということで「被疑事実通知書」が届き、懲戒処分が検討されているという。それでも3佐は組織にとどまり、現職を貫いている。 裁判での証言を終えた3佐は言う。 「私のことを懲戒処分にしてやろうとか、いきんでる上層部がいる一方で、私の同僚なんかは自然に接してくれるんで、まぁ普通に仕事しているような状態なんですよ。不思議なもんでね。たぶん明日も変わらない一日が来るような気がします」 被害者の母は、3佐に最初にかけられた言葉が忘れられないという。 「お母さん、私に感謝しないでください。私は組織を良くするためにしていることですから」 陳述書を出した2カ月後、事態は急転する。当時の海上幕僚長が異例の臨時会見を開き、アンケートが見つかったと謝罪したのだ。「不適切な文書管理」が原因で、今まで見つからなかった。つまり「隠蔽」ではない、と。 アンケートには、先輩隊員からの暴行などの事実が克明に書かれていた。現役の自衛隊幹部が自らの組織の不正を暴くため、さまざまな葛藤をしながら覚悟して立ち上がり、ようやく明るみに出た真実。 「私は組織のために仕事をしているわけではなくて、国民のために仕事をしているつもりでいますので、私の態度は矛盾したものではないと思っています」 3佐はそう言って、また組織の中に帰っていった。 前述の「反骨のドキュメンタリスト 大島渚『忘れられた皇軍』という衝撃」で是枝裕和は「大島さんが生涯批判し続けたのは、被害者意識というものだった」と評している。「『あの戦争は嫌だったね。つらかったね』という、自分たちが何に加担したのかってことに目をつぶって、被害者意識だけを語るようになってしまった日本人に対して、『君たちが加害者なんだ』ということを、あの番組で突きつけているわけです」と。 “被害者意識”は、言い換えれば“当事者意識の欠如”だ。それは、現在の日本に根深く横たわる問題だ。3等海佐が戦った敵は“組織”だけではない。「自分には関係がない」「悪いのは自分じゃない」そんな一人ひとりの意識だ。それが集まると、それは巨大な壁となり、強い圧力になる。隠蔽やいじめを知りながら、見て見ぬふりをしていた組織の中の人たち。そして、そんな体質を薄々分かりながらも「まあ、組織ってそんなもんでしょ」「いじめなんて、どこにでもあるよ」としたり顔で冷笑し、何もしない組織の外の私たち……。 「日本人たちよ、私たちはこれでいいのだろうか?」 『NNNドキュメント』で我々日本人は、あらためて問われている。 「これでいいのだろうか?」 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから『DVD-BOX 大島渚 3』(紀伊國屋書店)
剛力史上最強の剛力彩芽! パブリックイメージを逆手に取った『私の嫌いな探偵』
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 なぜ、剛力彩芽はネット上でこんなにも批判を浴び続けているのだろうか? 確かに『ビブリア古書堂の事件手帖』(フジテレビ系)での篠川栞子役のように、原作のイメージとかけ離れた役に抜擢されるなど、事務所からの“ゴリ押し”感が強いのは否めない。CM、ドラマ、映画なども、人気や認知度に比べ、重用されすぎなきらいもある。そんな中でも、ひたすら元気で前向きな言動を繰り返す彼女の姿が、逆に鼻についてしまうかもしれない。また、明石家さんまをはじめとする芸人たちが過剰に持ち上げるのも、アンチの癪に障る要因のひとつかもしれない。 それでも、2013年秋クールに放送された『クロコーチ』(TBS系)では、作家でドラマフリークの柚木麻子が「これまでたった一人で最前線に送られ攻撃の矢面に立たされてきた剛力彩芽が、今回初めて楽に呼吸をしているように見える」(「週刊朝日」11月1日号/朝日新聞出版)と評したように、男臭い武骨な物語の中で貴重なアクセントとして活躍。間違いなく、剛力彩芽のベストアクトのひとつと言っても過言ではなかった。 そして、今年1月から始まった『私の嫌いな探偵』(テレビ朝日系)では、剛力史上最高の剛力を更新している。お金にならない殺人事件の調査は拒否し、浮気調査やセレブの迷い犬猫探しを専門にする探偵・鵜飼(玉木宏)の元に届けられた一枚のチラシ。 「事務所、月一万円で貸します」 その言葉につられて引っ越したビルの大家は、ミステリーが大好きな女子大生・二宮朱美(剛力)だった、という探偵ドラマ。朱美は鵜飼の元に舞い込む依頼に首を突っ込み、面倒で金にならない事件に巻き込まれそうになるのを回避しようとする鵜飼を「家賃を上げる」と脅し、半ば強引に殺人事件などに関わらせていく。そして朱美は、とんちんかんな推理を展開していくのだ。 しかし、このドラマの真骨頂は、物語や謎解きではない。脚本が『33分探偵』(フジテレビ系)、『コドモ警察』(TBS系)、『勇者ヨシヒコと魔王の城』(テレビ東京系)などのパロディドラマを得意とする福田雄一が担当しているだけあって、小ネタの連続である。『古畑任三郎』『ガリレオ』『謎解きはディナーのあとで』『金田一少年の事件簿』『犬神家の一族』、そして『土曜ワイド劇場』……。古今東西あらゆる探偵モノ、ミステリーのパロディを繰り広げる。 「これ、『古畑』で唐沢寿明が使ってたトリック!」 「じっちゃんの名にかけて」 「大家さんのおじいちゃん(の職業)は?」 「地主」 「謎解きしますか? ディナーの後ですか?」 「いや、ディナーの後では遅い」 果ては「せぇーか~い」と、『クロコーチ』の決めゼリフを剛力自身に言わせる。さらに剛力には『がきデカ』の「死刑」やら、ゆーとぴあの懐かしいギャグなどもやらせ、剛力が出演している『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ系)をも「アンビリーバボーとかでやってそうじゃない?」なんてセリフでイジって遊んでいる。また、「ここでCM行っちゃう?」「序盤だからたぶん(推理は)間違ってるけど」などと、メタドラマ的なセリフも多い。 小ネタを使いすぎると、よっぽどうまくやらないとスベってしまうことが多い。しかし、このドラマでは玉木と剛力、2人の間が絶妙で思わず笑ってしまう。そして極めつきは、“剛力ダンス”だ。AKB48の峯岸みなみなどにイジられた、あの剛力ダンスを自らパロディして楽しげに踊るのだ。 メタでパロディな要素が強ければ強いほど、逆に剛力のベタなかわいらしさが強調される。元気で明るく、無駄にポジティブ、ちょっとおバカでウザい朱美は、批判を浴び続ける剛力のパブリックイメージ、つまり虚像としての“剛力彩芽”そのものだ。『私の嫌いな探偵』は探偵ドラマのパロディであるのと同時に、“剛力彩芽”をパロディにしたドラマでもある。そのパロディを軽やかに楽しげに演じている。だから、これまで演じてきたどの役よりも、彼女の魅力が浮き彫りになる。 剛力彩芽のハマリ役は、“剛力彩芽”だったのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから私の嫌いな探偵|テレビ朝日
「お笑い界のルールをぶっ壊せ!」嫌われ西野に贈る『ゴッドタン』流のエール
<嫌われ界のパンドラの箱。いろいろ問題あるけれど、理由はともかくマジ嫌い。そこのけそこのけアイツが通る。絡めばお前も嫌われる。呪いの嫌われパンデミック> と紹介されたのは、キングコング西野亮廣だ。今月1日深夜に放送された『ゴッドタン』(テレビ東京系)の名物企画「マジギライ1/5」、記念すべき15回目に満を持して登場したのだ。「マジギライ1/5」は、自分を嫌っているという5人の女性の中から本当に嫌っている一人を見抜けるのか? という企画である。 しかし、この日は何やら様相が違った。「僕自身もなんで嫌われてるか、分かってないんですよ」と西野がMC陣にこぼすと、すかさず劇団ひとりが「調子乗ってっからだよ!」と断罪。劇団ひとり、おぎやはぎはおろか、アナウンサーの松丸友紀までもが、西野が嫌いだと公言するのだ。 「MCのほうが僕を嫌いって、話が違ってくる……」 とつぶやく西野を尻目に、モデルや女優、アイドル、キャバ嬢といった5人の女性たちが登場する。普段であれば5人のうち、本当に嫌っているのは一人だけだから、何人かは「嫌いな理由」を問われると、「顔が嫌い」だとか「生理的に嫌」とか、薄い理由になりがちだ。しかし、さすが『アメトーーク!』(テレビ朝日系)でも「好感度低い芸人」でダントツの強さを見せた「嫌われ界の大物」だ。彼女たち5人から浴びせられる悪口の数々は、どれも芯を食ったものだった。 「自分は『嫌われ界のサラブレッド』じゃないけど、嫌われ界で売れてるって思ってるけど、お前言うほど嫌われ界背負ってねぇからな。嫌われ界で存在感ないから」 「カメラ回ってない時、超普通じゃん。たぶん、『オン・オフはっきりしてる俺、カッコいい』って思ってる」 「応援してるファン無視して、ネットの悪口ばっか意識してんじゃねえよ。ネットとかに書かなくても、応援してくれてる人間はいるんだよ!」 「テクニックがあったとしても、感情がないと思うんだよね」 そんな身をエグられるような悪口にも、西野は怯まない。いや、一見、動揺し傷つき叩きのめされているようにも見える。だが、一方でまったく揺るがない自信もうかがわせる。その危ういアンバランスさが、西野が嫌われる理由であり、魅力でもあるだろう。 続いて「逆に好きな部分」を女性たちから聞き出し、「キングコングで漫才やってる時は西野のこと大好き」「やっぱりMCはうまい」「男の人としてほっとけない。まっすぐだけど不器用」などと褒められた時のリアクションが、そんな西野のアンバランスさを強調し、過剰な自信とは裏腹な、自己承認欲求の満たされなさを浮き彫りにしていく。テクニックだけではない、感情をあぶり出していくのだ。 そしてこの日も決定的な役割を果たしたのが、「マジギライ」のレギュラーである、キャバ嬢のあいなだ。そもそも「マジで嫌い」な人を見抜くという企画に、レギュラーがいるというのはおかしな話だが、その矛盾を抱えてもなお起用したくなるほど、彼女の言語感覚とお笑い脳は抜群だ(第1回に出演した際、あまりの面白さに、この企画のレギュラーに抜擢された)。ある意味で、あいなは『ゴッドタン』を象徴する人物と言っても過言ではない。 「今テレビに出てる芸人さんって、頭いいと思うんですよ。だから、空気読みすぎちゃってるなって。だけど西野は、芸人だからこういうことやらなきゃとか、こういうことを芸人でやったら寒い、みたいなのを“壊したい人”なんだと思う。そういう考え方を」 「ライターばりの分析力」と、思わず西野が唸るような的確な批評を、あいなはいつものように繰り広げる。 「だから絵描いたり、芸人さんがやらないところをやってみたりとか。でも、そういう時って(周囲と)ちょっと揉めたりもすると思うんですよ。だけど、それはルールに立ち向かおうとした結果だから別にいいと思うの、私はね。今、タモリさんとか鶴瓶さんとかにもかわいがられてるらしいじゃん。あの二人って、お笑い界のルールを破ってきた人たち。ぶち壊してきた人たち。本人は言わないと思うんだけど、たぶん西野に、同じにおいを感じてるんだと思うよ。だから、かわいがってるんだと思う。タモリさんや鶴瓶さんに認められてるなら(辞めずに)維持すべき。自信持って。そうやってれば、絶対いつかパーンってくると思うから」 それは『ゴッドタン』から西野へ贈るエールであるのはもちろんだが、同時に、ずっと今のテレビのお笑い界のルールの限界に挑戦し続けてきた『ゴッドタン』という番組へのエールのようにも聞こえてくる。 同番組の作家を務めるオークラは言う。 「今まで舞台などでは、いかに成立させるかを考えてネタを作ってきたんですが、『ゴッドタン』では成立してないものをやろうという気持ちがあるんです。ちょっと破壊的なことをやろうって。セオリーとしてやらなきゃいけないをやらないことで、新しいものが生まれる瞬間があるんです」(『お笑いパーフェクトBOOK』/キネマ旬報社) 『ゴッドタン』はいつだってフルスイングだ。だから空振りだってある。悪ふざけが過剰すぎて、面白くなくなってしまう時すらある。そんなことを続けていたら、いつの間にか『ゴッドタン』としか呼びようのない世界観ができ上がっていた。あいなのような番組内スターが次々と生まれるのは、その証明だ。番組の平均視聴率はわずか1%台。それでも、その1%の人たちが絶対に離れず、熱烈に応援し続けている。『ゴッドタン』は周囲の雑音など気にせず、そんなファンに向けて作られている番組なのだ。 頭が悪くてもいい。空気を読まなくてもいい。閉塞感をぶち壊すためには、自信を持ってフルスイングを維持し続けることしかないのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから『ゴッドタン』テレビ東京
ダサくて古い、けどクセになる『天誅』のこってり味
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 金曜の午後8時がこってりしている。 テレビ東京では 北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎という濃厚なおじさん俳優たちが主演する『三匹のおっさん』が放送中。そしてフジテレビでは『天誅~闇の仕置人~』というドラマが始まった。 「戦国時代から現代にタイムスリップした女忍者とその用心棒たちが、現代にはびこる悪に敢然と立ち向かい活躍する姿を描くアクションドラマ」という設定もスゴいが、何より目を引くのが、その胃もたれしそうなキャスティングだ。 古武術師範の竜次に京本政樹、元空き巣でどんな鍵でも8秒で開ける弁当屋の辰に柳沢慎吾、七色の声を持つスナックのママ・ミツ子に三ツ矢雄二と、なんとも漫画チックでコントみたい。主演の女忍者・サナには、連続ドラマ初主演の小野ゆり子を抜擢。大森南朋の妻で、前クールの『刑事のまなざし』(TBS系)での好演が記憶に新しい実力派女優だが、主演が一番地味だ。極めつきは、サナを世話することになる正子役に泉ピン子。かなりのこってり具合である。 1月24日に放送された第一話は、冒頭から選挙演説に通りかかったピン子の「何が庶民を助ける党だよ」という悪態から始まる。「アンタ、あたしたち党立ち上げない?」などと友人と軽口を叩いていると、突如、通り魔が住民を襲い始める。「キャー」という悲鳴に反応したピン子は「キムタクでも来てるんじゃないのぉ? ロケで!」と間の抜けた勘違いで現場に駆け寄り、「ええっ?」と過剰に驚くのだ。なんともダサい。古い。そこにフードを目深にかぶった女が、建物の上からムダに回転しながら降りてくる。「殺すなら、私を殺せ……」とつぶやきながら。女は華麗なアクションで通り魔から子どもを助け、去っていくのだ。 その後、道端で空腹で倒れていたその女を家に連れて帰ってきたピン子。「アンタさ、水戸黄門の由美かおるみたいね。忍者みたい。私、村田正子。アンタ、名前は?」と尋ねると、女は「サナダ……サナだ」と答える。すると、「裏切り、欺瞞、嘘。この世に人がいる限り悪ははびこる。なぜなら人の欲望こそが悪の正体だから。彼女の名はサナ。雇い主の命令によってしか生きられぬ悲しい運命(さだめ)を背負った女。だが、彼女がどこから来てなぜここにいるのか、その答えは誰も知らない」という余貴美子によるナレーションが入りオープニングクレジットが流れるという、どこか懐かしい80年代の大映ドラマを彷彿とさせる演出。 サナは言う。 「(今まで)契約をしてきた。飯をもらう代わりに。なんでも言うことに従う。命じられたことはなんでも。人を殺せと言われればそれも。そうやって生きてきた」 物語は、夫の暴力に悩む妻が逃げこんできたDVシェルターでボヤ騒ぎが起きたところから始まる。夫のDVや嫌がらせはエスカレートしていくが、警察は逮捕に消極的で頼りにならない。そうこうしているうちに、ついに夫が妻を襲いにやってくる。彼女の悲鳴を聞きつけたサナは、またしても街をムダに回転しながら救出に走る。そしてピン子は叫ぶのだった。「サナ、契約!」と。「承知!」と返事をしたサナは「どけよ、正義の味方のつもりか?」と声を荒げるDV夫に向かってこう言い返す。「正義など私にはない。握り飯、1つ分の仕事をする。それだけ」。激しいアクションの攻防の末、DV夫に“天誅”を下したサナ。しかし、助けられた妻はなぜかその後、自殺してしまう―――。 痛快な人情モノだと思っていたら、まさかの後味の悪いエンディング。その意外性を含め、すべてが過剰だ。NHK朝ドラ『あまちゃん』では、アキ(能年玲奈)が「ダサいくらいなんだよ、我慢しろよ」と言ったが、その言葉がピン子の声で脳内に再生されてしまう。能年ちゃんに言われる分には構わないが、ピン子に言われるとすると、なかなか受け入れがたいものがあるのだけど……。 ダサくて古くてTOO MUCH。人は新しくてカッコいいものばかりに惹かれるわけではない。この『天誅』のアクの強いこってり味には、どうしようもなく引き寄せられてしまう魔力がある。クセになってしまいそうだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから『天誅 闇の仕置人』フジテレビ
『明日、ママがいない』に見る、子役たちの生きる道
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「あのババア、過保護すぎて頭おかしいんだよ。知ってる? 娘の名前。“月の姫”って書いて『かぐや』って言うらしいよ。DQNだよ、DQN!」 そう言って、グループホーム「コガモの家」で暮らす子どもたちは笑った。 『明日、ママがいない』(日本テレビ系)は、さまざまな事情で親と離れて暮らすことになった「ワケありの子が連れてこられる」グループホーム「コガモの家」を舞台にした物語だ。ここでは、それぞれをあだ名で呼び合う。このドラマでは「名前」あるいは「呼び名」が重要な意味を持つモチーフとして使われている。 ピアノが得意な「ピア美」(桜田ひより)、貧乏だからこの施設に預けられた「ボンビ」(渡邉このみ)、そして赤ちゃんポストに預けられていた「ポスト」(芦田愛菜)。彼女たちがあだ名で呼び合うのには、ちゃんと理由がある。親からほぼ唯一もらったものである名前を自らの意思で捨て、自分で選んだ名前を名乗っているのだ。 主人公のひとりである真希(鈴木梨央)は、母親が恋人を鈍器で殴り、傷害事件を起こしたことがきっかけで入所。入所後、ポストたちに「ドンキ」とあだ名を付けられたが、それを受け入れられないのはもちろん、裕福な里親に引き取られ、幸せになりたいと願う彼女たちの言動にも反発していた。 このドラマの最大の魅力は、なんといっても当代の天才子役、芦田愛菜と鈴木梨央の共演だろう。鈴木はNHK大河ドラマ『八重の桜』で八重の幼少期を演じ注目を浴び、『Woman』(日本テレビ系)でメインキャストとして活躍した。そんな彼女が芸能活動を始めたのは『Mother』(同)で芦田の演技を見て「愛菜ちゃんみたいになりたい」と思ったのがきっかけだ。その芦田については、もはや説明不要だろう。彼女の子役としての完成度は、子どもらしからぬ完璧な演技や振る舞いからネット上などでは「芦田先輩」「芦田プロ」などと呼ばれ、有吉弘行からも「子どもの皮をかぶった子ども」とあだ名を付けられているほどだ。ポストは、芦田が演技がうますぎるゆえ、とても子どもには見えないという子役特有の矛盾を逆手に取ったような、大人びたキャラクターだ。 「よし、泣け!」 グループホームの施設長で「魔王」と呼ばれる佐々木(三上博史)は、朝食を前に子どもたちにそう言い放つ。 「どうした、芸のひとつもできないのか? そんなことじゃ、もらい手はつかんぞ。ここにいるお前たちは、ペットショップの犬と同じだ。ペットの幸せは飼い主で決まる。飼い主はペットをどうやって決める? “かわいげ”で決める。時に心を癒やすようにかわいらしく笑い、時に庇護欲をそそるように泣く。初対面の大人を睨みつけるようなペットなんて、誰ももらってはくれない。犬だって『お手』ぐらいの芸はできる。分かったら泣け。泣いたやつから食っていい」 もちろん、現実にそんな暴言を吐く施設長がいれば、それは虐待だ。だが、フィクションである以上、デフォルメし象徴的に描くのは珍しいことではないし、それが効果的であれば非現実的なものこそが現実をえぐることだってある。 うまく泣くことができない子どもたちを前に、魔王はポストに「見本を見せてやれ」と命じると、芦田演じるポストは「いくら?」と問いながらも、すぐにかわいらしく涙を流すのだ。魔王の言葉は里親と子どもとの関係性にとどまらず、子役と視聴者との関係にも通じるものだ。 第1話では里親を子どもたちが候補から選び、数日間の「お試し」を経て養子縁組を決めるというドラマ独自のシステムが、裕福な里親候補と「お試し」をするポストと、小さなラーメン屋を営む夫婦が里親になるダイフク(田中奏生)との対比を通して描かれている。 ラーメン屋の手伝いを強いられるダイフクは、やがて施設に逃げ帰る。しかし、その理由は、手伝いが嫌だったからではない。「お母さん」「お父さん」と呼ぶのが、まだどうしてもできなかったからだ。他人を「お母さん」と呼ぶのは「お母さんを裏切ること」であり、そんなことできないと安易にダイフクに共感する真希。その姿に舌打ちして魔王は言う。 「忘れるな、先に裏切られたのはお前らだ」 実際に、真希は母に裏切られることになる。施設にやってきた母は娘を前に、殴った恋人との復縁を宣言する。戸惑いながらも「みんなで楽しく暮らそう」と言う娘に、母は「それはダメ」と断言するのだ。 「真希は、ここで暮らすほうが幸せになれる」と。 「今日って生ごみの日だっけ? 1月18日、今日アンタがママに捨てられた日だ」 と言うポストに、真希は「違う」と反論する。そこでポストは、こう返すのだ。 「そう、違う。今日、アンタが親を捨てた日にするんだ」 自分たちは捨てられたのではない。自分たちが捨てたのだ。そう考えなければ前を向くことができない。母は女であることを選んだ。それを理解した時、ついに真希は自ら名前を捨てる。 「ドンキだよ、私の名前は今日からドンキ」 普通は親も名前も選べない。だけど、自分たちは(里)親も名前だって選ぶことができる。自らの帰る場所、すなわち生きる道を自分で選ぶことができるのだ。いや、自分で選ぶしかない。そんな子どもたちは痛々しくもたくましい。しかし一方で、ポストは泣きながら本音を吐露するのだ。 「本当のママが自分を愛してくれる――。それ以上の幸せって、なんなんだよ!」 これは、捨てられた子どもたちに限られた物語ではない。いかに厳しい現実を受け入れ、立ち向かっていくか。そして自分の生きる道をどのように選択していくかを問う物語だ。彼女たちの叫びや振る舞いに、子役たちの悲哀をも同時に感じてしまうのはうがった見方だろうか? (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから『明日、ママがいない』(日本テレビ)
コンプライアンスをオモチャにする『クイズ☆正解は一年後』の企画力
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「矢口真里夫妻!」 離婚する芸能人夫婦を予想するクイズに答えたサバンナ高橋に、スタジオの共演者たちは一斉に「えーー!?」と声を上げた。 「あそこ、なんか安泰っぽいけど……」と、司会のロンドンブーツ1号2号の淳もいぶかしむ。それもそのはず、このやりとりが収録されたのは2013年1月。そして、それが放送されたのが2013年12月30日だったのだ。収録された当時はまだ、あの不倫騒動が起こる前。離婚危機どころか、おしどり夫婦として名を馳せていた。しかし高橋は、番組収録で中村昌也と番組で一緒になった時、「しんどそう」と感じ取っていたという。それが、1年越しの奇跡的な正解を導いたのだ。 「だから僕、ニュースで出だした頃、『当たる! 当たる! 当たる!』って思ってましたもん」 と高橋は興奮して振り返った。 『クイズ☆正解は一年後』(TBS系)はその名の通り、1年前にその後に起こることをクイズとして出題し、予想した答え合わせを約1年後の生放送で行うという、1年がかりのクイズ番組だ。 よく年始めの番組などで、「今年の大予想」などの企画が放送される。「ああ、なるほど、いい予想だなぁ」「当たってたら面白いのに」なんてことを思っても、いつの間にかそんなことは忘れてしまうのが常だが、この番組はそうならないために予想部分を1年間放送せずに寝かす、という選択をしたのだ。収録したまま1年間寝かすということは、なんらかの理由でお蔵入りしてしまう危険性もあり、これまでのテレビのルールからは逸脱している。だから前代未聞だ。番組で「今年、結婚する芸能人は?」という問題も出題されるが、その時はまさか、司会の淳が結婚するとは本人以外、誰も予想だにしていなかったのだ。 演出・プロデューサーは藤井健太郎。司会の淳とのコンビといえば、あの『クイズ☆タレント名鑑』(同)や『テベ・コンヒーロ』(同)でやりたい放題の限りを尽くした組み合わせ。回答者も、おぎやはぎ、オードリー、FUJIWARAら、『タレント名鑑』などでもお馴染みのメンバー。だから、番組の雰囲気そのままに、ちゃんと予想するだけではなく、チームワーク抜群で言いたい放題、悪ノリを繰り返す。そこにアクセントとして「今が旬チーム」が参加している。「今が旬」といっても、その「今」は2013年1月。流行の移り変わりが早い昨今、1年後の放送日には「旬」でない可能性のほうが高い。幸い今回は、スギちゃん、鈴木奈々、武井壮、レイザーラモンRGはテレビから消えずに残り、中にはさらに旬になった者もいるが、すでに消えてしまっていることさえ考えられる、下世話な興味をかき立てられるキャスティングである。 出題されたクイズは「今年、結婚する芸能人は?」「今年、離婚する芸能人は?」「今年の24時間テレビのマラソンランナーは?」「今年、芸能界で起こる出来事は?」など。冒頭に挙げた通り、「離婚する芸能人」では高橋が見事、矢口真里の離婚を的中させカタルシスを存分に味わったが、もし不正解だったら失礼なだけ。そんな失礼で猥雑な発言が、次々と飛び出すのだ。 「今年、芸能界で起こる出来事は?」のような漠然とした問題では、ボケ合戦に。「LiLiCoが心の健康を崩す」「岸谷五朗が酔って誰かを殴る」「西川史子先生がぼやさわぎ」など、その場のノリで発した1年前の失礼発言を番組は丁寧に蒸し返す。そのさじ加減が絶妙だ。一方で「24時間テレビのマラソンランナー」を「AKBのメンバーでリレー」などという、実際の“正解”よりもいいアイデアではないかというような回答もあって面白い。 そして『クイズ☆タレント名鑑』『テベ・コンヒーロ』イズムを色濃く感じる悪ふざけが極まったのが、「プロ野球日本一になるのはセ・リーグのチームか、パ・リーグのチームか」という2択問題だ。突如、挟み込まれたこのクイズ。チームごとに回答し、外れると「ちょっとした罰」が下されるという。この制作チームの「ちょっとした罰」といえば『テベ・コンヒーロ』で恒例となり出演者に恐れられた、獣神サンダー・ライガーのビンタだ。日本一が楽天に決まった直後、淳とマスパン(枡田アナウンサー)、そしてライガーが集まった。「ちょっとした罰」を執行するためだ。2択問題に不正解だった出川チーム(出川哲朗、いとうあさこ、オードリー)と大久保チーム(大久保佳代子、おぎやはぎ、児嶋一哉)全員に罰を執行するのは「ライガーの負担が大きい」ということで各チーム一人、罰を受ける代表を決めることに。 「何かとコンプライアンスが叫ばれる昨今ですので、ヤラセとか捏造を疑われない公正な方法で決めたいと思います」 と、マスパンが宣言して取り出したのが「こっくりさん」。彼らは大真面目に「こっくりさん」を呼び出すと、3人の指が静かに動き始める。そして指は「か」の方向に向かう。さらに「す」、続いて「が」を指すのだった。「コンプライアンス」を逆手に取った、ヤラセだとか捏造なんてことを言わせない、バカバカしい着地点。 思えばこの番組やこのチームは「コンプライアンス」や「自主規制」、そして「テレビのルール」をいつだってオモチャのようにして遊んで笑い飛ばしてきた。この日も1年後の状況が分からぬままキャスティングしたパネラーゆえ、裏番組出演NGというテレビのルール、すなわち「大人の事情」などで欠席者が出た。すると、そんな状況を逆手に取り、生放送で飛び入り出演してくれるタレントを呼びかけたのだ。その欠席者のひとりが、大久保チームの児嶋。実は、大久保チームでライガーからの「ちょっとした罰」を受けたのが児嶋だった。それを「大人の事情」を盾に放送しないどころか、「無効」として、児嶋の代わりに飛び入りでスタジオを訪れたあかつに改めてライガーの罰執行を命じるのだった。まったく関係がないのに罰を受けることになり、ライガーから「マジで嫌だって!」とあかつが逃げ惑うバカバカしさ―――。 おそらく『クイズ☆正解は一年後』のような企画は、これまでも挙がったことはあっただろう。しかし、テレビ界の常識やルールをそのまま受け入れていたら実現するのは難しい。いかにルールを守りながら、常識を破っていくか。企画力とは面白いアイデアを出すことではない。それをいかに実現するか、だ。規制やルールは決して面白い番組を作る障害になるばかりではない。使い方によっては武器にもオモチャにもなるのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらからTBS『クイズ☆正解は一年後』
がさつな善意は鋭利な凶器に変わる――ついに本性を現した『ごちそうさん』の毒
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 NHK朝ドラ『ごちそうさん』が、ついに本性を現し始めた。 大きな話題となった『あまちゃん』の後ということで、苦戦が予想された『ごちそうさん』だが、フタを開けてみれば、『あまちゃん』を上回る好視聴率。その大きな要因のひとつが「わかりやすさ」だろう。「東京編」では、西洋料理店「開明軒」を営む卯野家を舞台にめ以子(杏)と西門悠太郎(東出昌大)の恋愛模様が軸に物語が進んでいく。恋愛に奥手でおっちょこちょいのヒロインと、女心に鈍感な青年の恋愛劇という、いい意味で“昔の少女漫画”風のドタバタラブコメディーだった。王道だ。 め以子と悠太郎が結婚し、舞台が大阪に移ると、継母の静(宮崎美子)と姉の和枝(キムラ緑子)の仲がこじれ、その間に挟まれた妹の希子(高畑充希)が心を閉ざしている西門家で、め以子がその家族仲を改善させようと奮闘する物語に一変する。そこでめ以子を最も苦しめるのは、和枝の“いけず”(意地悪)の数々だ。祝言をあげるのを認めなかったり、め以子を女中扱いしたり、め以子が作った料理を食べなかったり、と枚挙にいとまがない嫁いびり。め以子は、和枝のいけずというわかりやすいヒール(悪玉)を相手に、持ち前の明るさや前向きさで立ち向かっていく、『小公女セーラ』のような『世界名作劇場』的なホームドラマに変貌したのだ。だが、これもど真ん中の王道だ。 献身的な努力で、奔放な継母の静や妹の希子と次第に打ち解けていくめ以子。それでも、和枝との壁はまだまだ乗り越えられなかった。だが、転機がやってくる。和枝が資産を増やすために通っていた株場で出会った安西(古舘寛治)と恋に落ち、再婚を決意したのだ。もともと嫁ぎ先の姑から嫌悪され、一人息子の事故死を機に離縁し出戻った過去を持っていた和枝。ようやく訪れたロマンスに、和枝の意固地な心も徐々に氷解していく。だが、安西は、和枝が当てた株の配当金目当ての詐欺師だったのだ。まさに王道展開。傷心の和枝はガス自殺を企てるが、寸前で救出され「20年、ええことなんてひとつもないんや」と泣き崩れる。そんな和枝に、これまで自己主張をしなかった妹の希子が激昂する。 「お姉ちゃんがええことないんは、お姉ちゃんの心がいびつやからと思う。今までいろいろ不幸せやったと思う。けど、それを人にやり返していい理由にはならへんし、そんなんしてたら、どんどん周りの人離れていくよ。せやからいつまでたっても寂しいんや。寂しいからつけ込まれたんや! ホンマに20年間、ひとつもええことなかったん? 今日かて倉田さん血相変えて捜してくれたし、市役所の人らも、うちらやって、みんな、お姉ちゃんのこと心配して……そういうのはええことちゃうん? お姉ちゃんのええことには入れてもらえへんの? そうやって悪いことばっかり振り返って……そやからいびつやって言うんや!」 希子の心を開かせたのは、め以子だ。その希子が、和枝のいびつになってしまった心を解きほぐそうとしたのだ。翌朝、和枝は静かに台所に立つ。和枝は改心し、再生する。誰もがそう思っていた。なぜなら、それが王道だから。しかし、いよいよ『ごちそうさん』は王道から巧妙にズレ始める。 「どないしても……あんたを好きになんか、なれへんわ」 和枝はめ以子を拒否した。「許されたほうが、どんだけ惨めかなんて思いもつかんやろう?」と。 なおも食い下がる、妊娠しため以子を和枝は突き飛ばす。 「それでも好きやなんて言えるんか!? 一緒に暮らそうなんて思うんか?」 おなかの子を守るため、ついにめ以子は決断する。 「……出てって。もう、出てって下さい!」 和枝は、め以子の口から自分を追い出させることで清算したのだ。和枝をよく知る、株場の倉田は言う。 「自分がされたんと同じことをあんさんにして、それでも全然めげへんあんさんがおって。しかも自分のこと、好きやとまで言う。何やもう自分のくだらなさ突きつけられて、やりきれんようになったんと違うかな」 かつて『カーネーション』(2011年度下半期朝ドラ)で、何事にも前向きなヒロインの悪性を一言で批評したセリフがあった。「あんたの図太さは毒や!」と。まさに、め以子の前向きさも同じだ。和枝にとって、毒そのものだった。彼女の明るさは深い影を生んでいたのだ。 「いけずは私のほうだったんですね……知らないうちに、ずっと」 『ごちそうさん』は、そんな朝ドラのヒロインの毒性を容赦なく突きつける。直後に起きた関東大震災。東京から避難してきた女性にもめ以子は前向きな言葉を投げかけ、結果的に彼女を追い詰めてしまう。人が弱っている時、ネガティブになって現実から逃げようとしている時に、め以子は「けど!」「でも!」と言って前向きになったほうがいいと諭す。もちろんそれは正論だ。しかし、弱った人間にとって、正論は栄養ではなく毒でしかない。がさつな善意は鋭利な凶器に変わる。それは料理も一緒だ。料理は、相手に対するおもてなしだ。万人が“おいしい”と言う料理なんてない。相手の立場や好みを考えてこそ、いい「料理」なのだ。 今思えば、『ごちそうさん』は王道な展開を隠れ蓑に、最初からそのことを描いてきた。たとえば第1週でも、形式にこだわり技巧を凝らすばかりの若き日の父・大五(原田泰造)の料理に、母・イク(財前直見)は言う。 「押し付けがましいんだよ、あんたの料理は! 『どうだ、おいしいだろう? 俺の料理は本格的だろう』って。お客さんはね、あんたの腕前を拝みに来てるわけじゃないんだよ。ちょいとおいしいものを、いい気分で食べたいんだよ!」 また、悠太郎の苦手な納豆を「おいしいですよ。人生を損してますよ!」と無理やり食べさせようとするめ以子に、大五は「しつけえんだよ!」と激怒した。「人にはそれぞれ、好みがあるんだよ。押しつけるんじゃないよ」と。 絶望の淵に立っても人は腹が減る。そんな時、高級な食事を食べたいわけではない。善意の押し売りは、毒にしかならない。相手のことを考えて工夫した食べやすい料理こそ、必要なのだ。め以子は納豆を細かく刻んで山芋を加え、それを油揚げで巾着にして甘辛く仕立て、悠太郎が気づかぬうちに納豆嫌いを克服させた。 『ごちそうさん』はそんな口当たりの良い料理のように、きめ細かい工夫が張り巡らされているドラマだ。程よい苦味を隠し味にして。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらからNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』
「トゥース」は世界の共通語 「春日の部族滞在記」に見る、オードリー春日の生きる才能
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。 「サムライの国から来た男だから負けるわけにはいかないですよ、チャンバラで」 『ネプ&イモトの世界番付』(日本テレビ系)の「オードリー春日の部族滞在記」で春日俊彰は、エチオピアのスルマ族に伝わる「ドンガ」という戦いを前に、自信満々にそう言い放った。 「部族滞在記」は、得意分野を「海外と水中」と言い切る春日の真骨頂が見られる企画だ。春日が世界各地に住む部族の村を訪れ、その生活を体験するという、いわばありふれた企画。しかし、春日がそれをやると、ただの過酷な海外ロケとは明らかに違うものになるから不思議だ。なんというか、その苛酷さに似合わず、春日がただただ楽しそうなのだ。企画開始当初こそ、スタジオの芸人たちに「大丈夫なのか?」などとイジられていたが、ひとたびVTRが流れると称賛せざるを得ないスゴさを見せつけ、いまや番組屈指の人気コーナーとなった。 これまでも、「陸には悪魔がいる」と信じる海の部族・パジャウ族とサメの生息する海で潜水対決をしたり、トーライ族と共に上半身裸になってムチで打たれたり、ハマル族の成人の儀式である牛の上を走る「牛跳び」に挑戦したり、素っ裸になって蜂の巣のまっただ中にハチミツを取りに行ったり、バイリン族と火の中を歩いたり、“戦いの部族”ズールー族の絶対王者と木の棒と盾だけを使ったイズンドゥクという伝統武術で戦ったりと、体を張ったさまざまな過酷な挑戦を繰り返している。そのたびに「ここで行かなかったらね、なんのために『春日』やってるかわからないからね!」などと言って立ち向かうのだ。 12月6日に放送された第8弾で訪れたのは、“乱闘の部族”スルマ族。日本から飛行機で約22時間、およそ1万キロ離れたエチオピアの山奥に住む部族。現地のエチオピア人さえも、「危険な部族」と口を揃えるほどだ。 事実、数時間かけてようやく到着すると、スルマ族の若者がカメラを武器と勘違いしてか、レンズに向けて棒で攻撃してくる始末。スルマ族は男女別々で暮らしているという。女性はデヴィニャと呼ばれる土の皿を口にはめている。下唇の下に穴を開けてつけているのだ。日本人から見ると、ギョッとしてしまう見た目だが、スルマ族にとってはこの皿の大きさや形が美しさの基準だという。実は19世紀、アフリカ大陸で若い女性が奴隷として売買された時に自らを醜く見せ自衛したことが始まりという悲しい由来を持つ風習なのだ。 そしてもうひとつ、スルマ族に伝わる伝統がある。それが「ドンガ」だ。ドンガとは敵・味方入り乱れて棒で打ち合い、相手が降参するまで殴り続け、勝者だけが真の男と認められる戦いである。これこそスルマ族が、“乱闘の部族”と呼ばれるゆえんである。 翌日に隣村との対戦があると聞いた春日は不敵に笑い、「出たいね!」と無鉄砲に言うのだった。 最初は一撃で激痛に耐え切れずうずくまっていた春日だったが、何本ものミミズ腫れを作りながら練習を繰り返し、いざ本番へ。 「とにかく勝ちます、ただそれだけ」 と全裸になってドンガに挑む春日は、どこか神々しい雰囲気すら漂わせていた。 一度は敗れたものの、再び立ち上がった春日は相手の膝に棒をクリーンヒットさせ、降伏させた。そして勝利の雄叫びを上げる。「怖かったぁ~!」と言いながら。 抜群の身体能力でその部族の得意分野を会得し、地元部族に勝るとも劣らない姿を見せる春日は確かにスゴい。しかし、何よりスゴいのは、実はそこではない。それは部族の子どもたちを見ればよく分かる。春日はほんの短い期間で、子どもたちを虜にしてしまう。異物感丸出しなのに、妙に馴染んでしまう。子どもたちは春日と一緒になって「トゥース!」と指を天に指し、「アパー!」とおどけ、「カスカスダンス」を踊る。気づけば春日を見て、自然とみんな笑っている。周りすべてを笑顔に変えてしまうのだ。 相方の若林は、春日を「生きるセンス」「生きる才能」がスゴいと称する。多くの人は、自分の不幸や不満に目が行きがちだ。しかし、春日は違う。春日は売れる前からずっと幸せだった。風呂なしアパートで貧乏暮らしをしていても、春日はずっと楽しそうだったという。それは大きな不安や不幸よりも、目の前の「アイスがおいしい」「オムライスのおにぎりが50円になっててうれしかった」などという小さな幸せをつなげて、そちらのほうばかりを感じているからだ。 「春日が子どもに人気があるのは、見た目にインパクトがあるからだと漠然と思っていた。でも、見た目は関係なかった」と若林は分析する。 「春日という男は自分に自信があり余裕がある。子どもたちはそれを感じとって春日に集まっているのではないか」(『社会人大学人見知り学部 卒業見込』/メディアファクトリー) どんな過酷な状況でも小さな幸せをつなげ、自信満々に日々を楽しむ春日。その幸福感が周りに伝染していき、みんなを笑顔にする。それこそが“春日力”だ。 村から旅立つ春日は帰り際、一度振り返り「トゥース!」と声を上げた。すると、村人たちは一斉に「トゥース!」と返すのだった。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから
「らしく、ぶらず」『THE Q』が検証する、大人が「ももクロ」にハマる理由
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。
「『らしく、ぶらず』ですよ」
笑福亭鶴瓶は「一流」について、そう語る。たとえば、アイドルならば「アイドルらしく、アイドルぶらず」だ。
11月10日、日曜お昼の『サンバリュ』枠で放送された『THE Q』(日本テレビ系)は、鶴瓶と桝太一アナをMCに、徹底した取材で現代を描く新型番組というコンセプト。その最初の取材対象は「ももいろクローバーZ」で、「なぜ、ももクロにハマる大人が増えたんですか?」がテーマだった。
鶴瓶は自身のラジオにももクロがゲスト出演した際、「会ったらみんな好きになる」とその魅力を感じ、主催するイベント「無学の会」にも彼女たちを呼んだ。そんな経緯もあり、彼女たちをほとんど知らない桝に教え諭すように「こんないい娘たちが出てきたのかって思う」「スレてない」と絶賛していた。
番組では「10の扉」に分けて、ももクロの魅力の秘密を探っていく。「徹底取材」を掲げるだけあって、非常に丁寧で、さまざまな角度から証言を集めて立体的に検証。まず、路上ライブからNHK『紅白歌合戦』出場までの軌跡を紹介、ファンに「なぜハマったのか」をインタビューする。そのキーワードになるのは、やはり「一生懸命」だ。
「全力で一生懸命」なところが魅力だと、ファンは口を揃える。「そんな姿に、自然と涙が出てくる」と。それについて本人たちに直撃すると、有安杏果は「一生懸命な人、いっぱいほかにもいるもんね」と言う。それにうなずき、玉井詩織は「とくに全力でやろうって意識してやってるわけじゃないし、“全力でやれ”って言われてるわけでもないし」と補足した。そう、彼女たちが言う通り、「一生懸命」なアイドルはほかにもいる。というより、むしろ「一生懸命」ではないアイドルを探すほうが難しい。ではなぜ、ももクロは「一生懸命」という部分が強調されて支持を集めるのだろうか?
結成3年目、若手アーティストの登竜門ともいわれる、日本青年館大ホールでのライブを成功させたももクロ。それがブレークの兆しだった。そのきっかけは、HMVの店頭に飾られたパネルだったと、番組は検証する。飾ったのは当時、店員だった佐藤守道(現ももクロスタッフ)。彼は「すごいものを見た」「メーターが振り切れていた」と、早くからももクロに衝撃を受けていた。いまや、ももクロの代名詞となった百田夏菜子のエビ反りジャンプを写した写真に添えた「このジャンプがアイドル史を更新する。」というコピーが躍ったのだ。
当時、ももクロの所属事務所はアイドルがいなかった。だから、誰もやり方がわからなかった。だが、それが逆に奏功した。
「アイドルだからこうしなくちゃいけないとか、アイドルだからこれをやっちゃいけないというのが一切なかったんですよね。(エビ反り)ジャンプも『ダイナミックだからいいじゃん』くらいの感じで(始めた)」
と百田は証言する。アイドルらしからぬその過剰なライブパフォーマンスは、いつしか「ももクロらしい」としか言いようのない、新たなアイドル像を作り上げた。そして過剰な彼女たちを、ファンが過剰に後押ししていったのだ。
この番組のつくりはとても丁寧だったが、ももクロの大きなトピックスの中で、“あえて”なのかわからないが、なぜか触れられなかったのが「早見あかりの脱退」だ。それが、偶然にも同じ日に放送された『夏目と右腕』(テレビ朝日系)で取り上げられていた。ももクロの“右腕”である、振付師の石川ゆみがゲストだった。
そこで、早見が女優を目指すことを決断し、会議室でメンバーに直接脱退することを伝える映像が放送された。ももクロがブレークの兆しを見せ、いよいよ大きく飛躍しようという矢先だった。
「ずっとずっと考えてたんだけど…やっぱり私は…ももいろクローバーを4月10日に脱退します……」
涙ながらにそう宣言する早見に、メンバーは「わけわかんない」「なんで?」と号泣した。早見はももクロのサブリーダーで、精神的支柱だった。そんな彼女の脱退は、早見に頼りがちだったももクロの一人ひとりを強くした。
そして2012年――。ももクロは早見を含めた「6人」の夢だった『紅白歌合戦』に出場。そこで早見のカラーである青い光を胸に輝かせながら「アカリ」と名前が歌詞に入った「6人」バージョンの「行くぜっ!怪盗少女」を歌い上げるのだった。
「ももクロやってから、行動すれば絶対かなうって思うようになった」(高城れに)、「とりあえずやってみようと思うよね、できなかったら、その時また考えようって」(佐々木彩夏)、「不可能は存在しないって、たまに思うよね」(有安)、「やる前にあきらめることはあんまりない」(玉井)、「だって、ムリと思ったら目指せないですもん」(百田)と5人は見事なまでに同じことをそれぞれの言葉で語る。それは、観客がわずか数人の路上ライブからはい上がり、『紅白』という「夢」にたどり着いた彼女たちだからこその説得力を帯びている。
そして夢は更新される。百田は「今」の夢を語る。
「オリンピックが東京で開催されることが決まって、(新しい)国立競技場に初めて立つ時がオリンピックの開会式だったらいいなぁとか……。その時の、ももいろクローバーZの集大成のものを見せたい」
“そんなの絶対ムリだよ”と笑えるだろうか? 彼女たちは、「絶対ムリ」を何度も覆してきたのだ。
佐々木は「一生懸命やるのってカッコいいよね」と言う。
「学校とかで『ちょ、ダリィ』とか言う人いるじゃないですか。絶対一生懸命やってると楽しいのにって、ももクロやってるとすごい思う」と。
これこそが、ももいろクローバーZだ。「一生懸命」だからいいわけじゃない。「楽しむこと」に一生懸命だからいいのだ。多くの場合、「一生懸命」にはある種の悲壮感が漂う。けれど彼女たちには、それをほとんど感じることはない。なぜなら「一生懸命」を心底楽しんでいるからだ。だから見てるほうも、その楽しさに溺れることができるのだ。
ライブ前、メンバーやスタッフたちと円陣を組んで、百田が叫ぶ。
「楽しむ準備はできてるか!」
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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