街ブラ番組『ウルトラ怪獣散歩』が起こす、怪獣×東京03という化学反応

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『ウルトラ怪獣散歩』(アプレックス)
「今回は北川町じゃなくて、鎌倉ですけど」  メフィラス星人、メトロン星人、ケムール人という3体の怪獣たちが、鎌倉の街をブラブラしている。しかし、このロケでメインとなるはずの重要文化財「鶴岡八幡宮」には入れない。  撮影交渉をしたスタッフによると、撮影NGの理由は「神社という神聖な場所に怪獣はそぐわない」というもの。  それを聞いたメトロン星人は「ぐうの音も出ない」と嘆き、ケムール人は「怪獣はしょせん、人間世界に入れてもらえない悲しい存在なんですから……」とつぶやいた。これは「空想特撮散歩シリーズ」と銘打たれた異色街ブラ番組『ウルトラ怪獣散歩』(CSフジテレビONE)である。もともと、2014年8月に特別番組として放送され、その後DVD化。今年5月22日からレギュラー化された。それに先立ち、5月20日深夜には地上波版が放送された。  昨年の特番では、メフィラス星人とザラブ星人、ダダが東京の下町、柴又を街ブラ。「頭が黒いから、直射日光大変なんですよ」グチるダダ。そのため、柴又の商店街で帽子を買うことに。そこで見つけたのは、白黒縞模様の帽子。体の模様とほとんど一緒で、ダダのために作られたんじゃないかという帽子だ。まるで帽子と一体化したかのようなダダの姿がなんともシュールで、おかしみがあった。  肝心の食レポでは、口元を隠す怪獣たち。地上波版ではその食レポ中、メトロン星人が言う。 「なんならアンヌ隊員も呼んだらどうだい?」 「いただきました!」 と興奮するメフィラス星人。もちろん『ウルトラセブン』第8話に登場するメトロン星人の名ゼリフだからだ。そこに、ケムール人は「アンヌ隊員のこと好きなんですか?」と茶々を入れる。否定するメトロン星人に、「顔赤くなってますよ」と指摘するケムール人。 「もともと赤いんだよ!」  怪獣たちの「声」を担当するのは東京03だ。高い演技力で、リアリティのある会話劇からなるコントを得意とする3人組。メフィラス星人は角田晃広、ザラブ星人やメトロン星人は飯塚悟志、ダダやケムール人は豊本明長が演じている。彼らが声を当てることで、怪獣たちは命を吹き込まれたようにイキイキと動き出す。東京03のコント同様、その会話にリアリティがあるからだ。もはや、それぞれの怪獣たちが、彼らが演じるキャラクターそのものの性格だったかのように見えてきてしまうのだ。  番組では、食レポで訪れたお店にちゃぶ台を用意して、メトロン星人に名場面を再現させたり、鎌倉の街のBGMに合うのは「サザン」か「TUBE」かで怪獣たちの間で論争が起こり、海岸で取っ組み合いのケンカ。夕暮れの「ウルトラファイト」状態になったりと、やりたい放題の遊びっぷり。  オープニング曲も「来たぞ われらの ウルトラマン♪」と歌う「ウルトラマンのテーマ」だし、サブタイトルも「メフィラス星人 メトロン星人 ケムール人登場」とおなじみの書体で書かれている。本家・円谷プロが関わっているだけあって、パロディもいちいち“本気”だ。『ウルトラ怪獣散歩』は、『ウルトラマン』のパロディと街ブラ番組のパロディが高次元で融合した番組なのだ。  街を楽しそうに歩く怪獣たちの姿は、一見シュールだ。だが、そこに東京03が演じる声が加わると、奇妙なリアリティが生み出される。一方、東京03は今でこそ徐々に活躍の場を広げているものの、ほんの少し前まで「テレビ向きでない」という烙印を押されていた。いまだに、テレビではその高い実力に見合うような活躍をしているとは言いがたい。その境遇は、「怪獣」だからという理由で撮影NGを食らい、「人間世界に入れてもらえない悲しい存在なんですから」と嘆く怪獣たちとどこか重なる。しかし、怪獣という、いわばポップなアイコンを通すと、その会話のやりとりの可笑しさが一気にテレビ的に映えていく。  怪獣×東京03という『ウルトラ怪獣散歩』の実験は、怪獣たちに新たなリアリティを、そして東京03にテレビ的なポップさを与える化学反応を起こしたのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

「恋愛は変態への第一歩」――“静かな変人”堺雅人『Dr.倫太郎』に流れるタモリイズム

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『Dr.倫太郎』日本テレビ
「僕は、理想の俳優がウォーズマンなんですよ」  主演する『Dr.倫太郎』の番宣を兼ねて出演した『おしゃれイズム』(ともに日本テレビ系)の中で、堺雅人は突拍子もないことを言いだした。「魚津万蔵(うおずまんぞう)」に改名したいとまで言うのだ。ウォーズマンは漫画『キン肉マン』に登場する、全身真っ黒なロボット超人。それを理想の俳優として挙げるのだから、変わった男である。  この番組ではほかにも、バイトを無断“出勤”してクビになったことがあるだとか、空間認識が苦手で「右・左」がとっさに分からないだとか、美術のヌードモデルをやったことがあるだとか、“変人”エピソードを連発。極めつきは「腹に一物ある男」を演じるための役作りで、「ホントに一物入れてみたらどうだろう」と考え、目黒寄生虫館を訪れ、サナダムシの卵を食べようとしたというのだ。もはや“変態的”だ。それを微笑みながら言うから怖い。  今でこそ、『リーガルハイ』(フジテレビ系)や『半沢直樹』(TBS系)などで、過剰でエキセントリックな演技をするイメージがついた堺だが、本来は真逆。「喜怒哀楽をすべて微笑みで表現する男」などとも評されるように、“静かな変人”を演じさせたら右に出る者はいない。そんな堺の本来の魅力を、最大限引き出そうとしているのが『Dr.倫太郎』だ。  ここで堺は、精神科医・日野倫太郎を演じている。このドラマに「協力」としてクレジットされている精神科医の和田秀樹氏が、「堺さんは声のトーン、しゃべり方、雰囲気ともに患者を落ち着かせる要素を兼ね備えている。精神科の名医像といっても過言ではありません」(日刊ゲンダイ)と絶賛するように、常に微笑みを浮かべ相手の話を聞き、静かなトーンで語りかけるその佇まいは、精神科医そのものだ。  第5話では、倫太郎の過去が明かされている。中学の時、母が自殺したというのだ。母はうつ病を患っていた。それに気付かなかった倫太郎は、お茶をいれて何かを話そうとした母を遮って、「頑張れ」と言って出かけてしまう。その日、母は走る電車に飛び込んでしまった。 「もしもあの時、僕が、母のいれたお茶を飲んでいたら」 「もしもあの時、僕が、母の話にちゃんと耳を傾けていたら」  今でも、それがいつも頭をよぎるという。だから、倫太郎はやってくる患者たちに「一緒にお茶を飲みませんか」と問いかけるのだ。  母の死で、自分は一生泣いたり笑ったりすることはないだろうと思っていた倫太郎を救ったのは、あるコメディアンだった。テレビから聞こえてくる彼の話があんまりおかしくて、笑ってしまったというのだ。  このドラマではほぼ毎回、「僕の大好きなコメディアンはこう言っています」と言って、そのコメディアンの名言が紹介される。 「嫉妬はいつも正義の服を着てやってくる」 「あまり聞いてはダメだ。聞くと人はしゃべらない」 「人生とは後悔するために過ごすものである」  これらはいずれも、堺の事務所の先輩でもあるタモリが言った(とされる)言葉だ。ちなみに、倫太郎が飼っている犬の名前は「ヤスケ」。これも、タモリが飼っていた犬の「横山弥助」から取ったものだろう。頑張りすぎてしまう人が陥りがちな精神疾患に対して、「やる気のある者は去れ」などに代表されるタモリの頑張りすぎないスタンスは、確かに有効かもしれない。  ドラマはゲストである患者の治療が軸に進むが、もう一つの軸となっているのが、新橋の売れっ子芸者・夢乃(蒼井優)だ。彼女は、ギャンブル好きのいわゆる「毒親」である母親(高畑淳子)につきまとわれ、金を無心され続けている。その母親からのなんらかの虐待が原因なのか、彼女は本名の「明良(あきら)」と芸者の「夢乃」の解離性同一障害、いわゆる多重人格に陥っている。明良は倫太郎に治療を望んでいるが、夢乃は拒否している。  そんな彼女に、倫太郎は惹かれていく。いや、恋愛感情ではないと倫太郎は強調する。「共感」しているのだと。彼に言わせると、相手がどう感じているかは二の次で、自分の感情が先行しているのが「恋愛」。顔と顔を合わせ、心を通い合わせるのが「共感」だという。「僕は彼女に心から共感し、診察したいんです。恋なんかしたら彼女を救えないじゃないですか」と。  第2話で引用されたタモリの名言は、「恋愛は変態への第一歩」だった。くしくも先日(5月17日)の『ヨルタモリ』(フジテレビ系)で、再びタモリ(扮する近藤さん)は「俺は、変態の第一歩は恋愛だと思ってますから」と語った。 「恋愛というのは、生殖行為に精神性が入ってくるわけでしょ。精神が入ってくると、変態の第一歩」  また別の回では、愛情は「執着」だとも語っている。 「キレイなものじゃないんだよ。いい時だけがキレイなの。悪くなったら、ものすごい汚いものになる」  これは「恋なんかしたら彼女を救えない」という倫太郎の言葉に重なる。『Dr.倫太郎』はいわば、タモリイズムそのものをドラマ化しようとした作品なのではないだろうか。その主人公を演じるのに、静かな変態である堺雅人ほどふさわしい俳優はいないのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

“元祖ゆるキャラ”『はに丸ジャーナル』の、ゆるくない問いかけ

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『はに丸ジャーナル』NHK
「有名になりたいから、NHKを利用するってことかな?」  はに丸が、埴輪をモチーフにした高槻市のゆるキャラ「はにたん」に対して容赦なく突っ込んだ。  これは『はに丸ジャーナル』(NHK総合)での一幕。25年ぶりに蘇った「はに丸」が、“ジャーナリスト”を務める番組だ。「はに丸」とはもちろん、NHK教育テレビ(現・Eテレ)で放送していた人気子ども番組『おーい!はに丸』のキャラクター。馬の埴輪をモチーフにした従者「ひんべえ」がパートナーである。  彼らが時を経て復活したのは、2013年に放送された『日テレ×NHK 60番勝負』(日本テレビ・NHK)が最初だった。この活躍が反響を呼び、14年にパイロット版『はに丸ジャーナル』を放送。Googleに潜入し、無邪気に「どうしてなまけてるの?」などと開発者に聞いたかと思えば、「本当の喜びは、苦労の中にあるものじゃないかな?」などと本質的なことを言ったりしていた。そして、今年5月5日から、“祝日限定”という変則的な形ではあるが、レギュラー番組となったのだ。番組は、はに丸が時事問題の現場を訪れレポートする「はにスクープ」と、はに丸が時の人にインタビューする「はにトーク」を軸に構成されている。  レギュラー化初回の「はにスクープ」のテーマは、“ゆるキャラ”。 「僕、ゆるくないですよ。なんですか、ゆるキャラって、失礼しちゃうなぁ」 「僕はゆるキャラじゃないよ!」 と頑なに自分は“ゆるキャラ”とは違うと主張するはに丸が、増えすぎたゆるキャラ問題に切り込んでいく。ある自治体では、告知活動をひとつのキャラに集中させるため、ほかのゆるキャラを「リストラ」したという。 「僕はさ、長いこと倉庫にいたので、そうやってリストラされちゃったりする、作る時だけ作っちゃって、『もういらない』って言われちゃうキャラクターの気持ちがよくわかるんだ」 と、その現状を憂うはに丸。 「NHKの偉い人たちに言いたいの。『視聴率が悪くても、僕とひんべえをリストラしないで下さい!』」と。  また、はに丸“ゆるキャラ”の名付け親である、みうらじゅんを直撃。はに丸とみうらの2ショットは、なんだか時空が歪んだような不思議な感じだ。  「はに丸くんは、しゃべっている時にバコバコ音がしていいですよね。そこが好きだった」とみうらが言うと、はに丸は「僕たち硬いの。だから、いろんなことができない」と返す。すると、みうらは「そこがやっぱり、ゆるキャラなんですよね」と言うのだ。これには「僕はゆるキャラじゃない」と頑なだったはに丸も絶句。そんなはに丸を見て、みうらは“ゆるキャラ”という名称の元は、はに丸を見たから生まれたという事実を明かすのだ。 「僕が三十何年前に初めてはに丸を見たときに、“ゆるいな”とすごく思ったんですよね。“単なるキャラクターとは呼べないな”とは、当時から意識はしていたんですけども、そこが元にあって、自分の中に“ゆるキャラ”という言葉が浮かんだ」と。  実ははに丸こそ、みうらにとって「元祖ゆるキャラ」というべき存在だったのだ。それでも「僕はゆるキャラじゃないからね!」と反論するはに丸に、みうらは言う。 「ゆるキャラかゆるキャラじゃないかは、僕が決めること」  そう、ゆるキャラとは本来、見る側が決めること。多くのゆるキャラたちが自発的に“ゆるキャラ”と名乗った時点で、本質からズレているのだ。さらに、ゲストの伊集院光の「ブームになっちゃったから、ゆるキャラがいっぱいできても、実はすごい税金が使われてたりする」という一言を契機に、問題の本質に迫っていく。実は、ゆるキャラの着ぐるみを作るだけで、1体平均59万円もの税金が投入されているという。もちろん、それが人気になり、経済効果を生めばいいが、そんなゆるキャラはほんの一握り。年に数日しか活動していないゆるキャラも少なくない。そんな話題に、はに丸は同じ着ぐるみキャラクターならではの視点で付け加える。 「維持管理っていうのも、結構かかるんだよ。使わなくなっても、維持費ってのがかかってるの」  はに丸はゆるい。そのゆるさが相手を無防備にさせる。そして毒を吐いても、無邪気に「はにゃ!」と言えば許される。その隙に、阿川佐和子には「(本が売れて)儲かった? ねえ儲かった?」と迫り、田原総一朗には「討論番組とかでさ、なんかさ、人の意見をすごい遮っちゃってるように見えるけど、あれはどうしてなの?」と切り込む。そんな答えにくい質問に対しても、はに丸のような子どもキャラが相手だと、彼らは一生懸命わかりやすいように答えようとしてくれる。そこで表れる戸惑いや苦心にこそ、真実が透けて見えるのだ。  はに丸は自分のゆるさを認めないという点において、極めて本質的で正統な“ゆるキャラ”である。そして『はに丸ジャーナル』はそんなゆるさを装うことで、さまざまな問題の核心に鋭く迫っていく。だとするなら、はに丸は決してゆるくない「ジャーナリスト」にほかならないのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

こんなピエール瀧、見たことない! NHK骨太ドラマ『64』を支える“顔力”

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NHK土曜ドラマ『64(ロクヨン)』番組HPより
 これが、本当にあのピエール瀧だろうか、と一瞬目を疑ってしまった。いつも薄ら笑いを浮かべ、飄々としている。電気グルーヴとしてもテレビタレントとしても、あるいは俳優としても常に人を食ったような佇まい。それが、瀧のイメージではないだろうか。しかし、ドラマ『64(ロクヨン)』(NHK総合)の瀧は、それとはまったく違う顔を見せている。  まず驚くのは、そんな瀧が「主演」だということだ。これまで『おじいさん先生』(日本テレビ系)でドラマの主演を務めたことはあったが、これはタイトル通り、瀧がおじいさんに扮した半ばコントのようなコメディ。瀧の「人を食った」ようなキャラクターをそのまま生かしたものだった。  今回は、“笑い”の一切ない重厚なサスペンスドラマ。しかもNHKである。ドラマの大半で、瀧が苦悶の表情を浮かべた顔が画面を占めているのだ。そして、その鬼気迫る顔が驚くほどカッコよく、思わず見とれてしまう。  『64』の演出を務めるのは井上剛。音楽は大友良英。『あまちゃん』をはじめ、『その街のこども』『クライマーズ・ハイ』『Live!Love!Sings! 生きて愛して歌うこと』など数多くの作品でタッグを組む名コンビだ。今回も、静かだが強い大友の音楽と、それを効果的に使った井上の演出がドラマの重厚さを際立たせている。そう、『64』は、「重厚」と呼ぶに相応しいドラマである。  物語の主軸となっているのは、タイトルにもなっている通称「ロクヨン」と呼ばれる誘拐事件である。わずか1週間しかなかった「昭和64年」に起きた、少女誘拐事件。身代金も少女の命も奪われ、未解決のまま14年が過ぎ、時効を迎えようとしている。  瀧扮する三上は事件当時、刑事としてこの事件の解決に奔走したが、現在は広報室の広報官という立場になっており、「ロクヨン」の時効を目前に控え行われる警察庁長官の視察の準備を任されている。「ロクヨン」事件を捜査する刑事部と、三上が所属する警務部は、この事件の秘密を握る「幸田メモ」の存在などで対立し、三上はそれぞれの思惑の全貌がつかめないでいた。警察への不信感を抱く遺族との交渉もままならない。そんな中、警察幹部の娘が起こした交通死亡事故の匿名発表をめぐって記者クラブと対立し、視察の取材協力まで拒否されてしまう。さらに私生活では、高校生の娘が口論の末、失踪。次々に振りかかる難題に三上は眉間にしわを寄せ、静かに悩み続けるのだ。  さらに、三上の苦悩は終わらない。時効直前、「ロクヨン」そっくりの新たな誘拐事件が起こるというのだ。「という」と伝聞で書くのは、まだ起こっていないからだ。このドラマは「ロクヨン」事件と、14年後に起こるこの新たな誘拐事件という2つの誘拐事件が“本筋”である。しかし、全5話中、2話が終わった時点で、まだこの事件は起こっていない。昨今のドラマでは、できるだけ早めに本筋を提示するのが主流となっている。そのほうが分かりやすく、視聴者を逃しにくいからだ。だが、本作では丁寧に、丁寧すぎるほどに、その周辺を時間をかけて描いている。その丁寧さの分だけ、今どき珍しい「骨太」なドラマになっている。昭和の最後を舞台にしていることが象徴するように、どこか昭和のドラマを見ているような感覚に陥ってしまう。  それを強調するのが、瀧の「顔」である。プロデューサーも、彼を主演に起用した理由を「昭和の顔にこだわったから」だと語っている。昭和の俳優は、みんな顔が大きかった。その顔力で画面を重厚なものにし、その迫力で視聴者を釘付けにしていた。瀧にも、間違いなくそんな“顔力”がある。骨太で重厚なドラマには、瀧のような強い顔が必要不可欠なのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから 

バカとハサミは使いよう?『キスマイGAME』流「ドローン」の使い方

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テレビ朝日『キスマイGAME』番組公式サイトより
 首相官邸にドローンが墜落したことが、大きな問題になっている。ドローンとは主に空撮用に使われる無人飛行型ロボット。災害現場や人が立ち入れない場所でも空撮が可能であることから、特にメディアにとって大きな技術革新をもたらした撮影機材である。一方、その高度なテクノロジーゆえ、当初から悪用の危険性は指摘されており、それが現実になってしまった。  どんなテクノロジーでも、それが優れた技術であればあるほど、悪用する者が出てくるもの。当然、それに対する対策は必要だが、だからといって、ドローン自体を悪者にするのはナンセンスだ。悪用の可能性が高いのと同じように、有用な使い方の可能性も広がっている。そして、そのどちらでもない「遊び道具」としても、無限の可能性を秘めているのではないだろうか。  いち早くドローンをテレビで「遊び道具」として使ったのが、『あの遊びをバージョンアップ!キスマイGAME』(テレビ朝日系)だ。4月から始まったKis-My-Ft2の冠番組で、その名の通り、子どもの頃に遊んだ鬼ごっこ、かくれんぼ、缶蹴りなどを、2015年現在の最新テクノロジーを使って“バージョンアップ”するというものだ。  初回は「だるまさんがころんだ」を、高性能防犯カメラを使ってバージョンアップ。わずかな動きも検知する防犯カメラを相手に「だるまさんがころんだ」をするという、単純明快なゲームだった。しかし、この「わずかな動き」が現在のテクノロジーでは尋常ではない。膝のちょっとした動きはもちろん、表情の変化、まばたきさえも検知されてしまうのだ。この攻略のため、ひとりが壁になって協力しながら前に進んだり、ほふく前進で動きを最小限にとどめたりと、キスマイたちが知恵を絞って挑戦していき、成功に少しずつ近づいていく。だから、見ている側も手に汗握り、画面に釘付けになり、失敗すると「あー!」と思わず声に出してしまう。  そしてドローンを「遊び道具」にしたのは、第3回放送(4月14日深夜)だった。その特性を最大限生かし、ドローンが“鬼”となった「かくれんぼ」が行われたのだ。ルールはとてもシンプル。一定時間内に、ドローンから挑戦者が一人も見つからず逃げ切れれば勝利だ。「見つかった」という判定は、ドローンのカメラに3秒間継続して映ったらアウトという基準。これがゲームバランスとして絶妙だった。  キスマイは、「助っ人」であるゲストの前園真聖と共に、この「ドローンかくれんぼ」に挑戦していく。前園は、言わずと知れたサッカー元日本代表のアスリート。だからといって、このゲームに向いているか疑問だったが、彼は想像以上に大活躍を見せた。安定した飛行でブレずに相手を捉えることができ、視野も180度と広いドローンに「体幹がしっかりしている、長友(佑都)みたい」「相当視野が広い。遠藤(保仁)ぐらい」などと真面目な顔でたとえて笑わせる、バラエティ的活躍だけではない。挑戦のリーダーとして自分も走り回りながら、的確に指示を出し、まさに司令塔の役割を担っていた。  第1ステージの舞台は「教室」。机など、ドローンの視界を妨げるものはあるが、いわゆる「かくれんぼ」のように、同じ場所に隠れているだけではすぐに見つかってしまう。いかにドローンに対し、的確なポジショニングを取れるかがこのゲームの攻略のポイントだ。サッカーもある意味、ポジショニングのスポーツ。だから、前園はすぐにこのゲーム攻略のコツをつかんでいき、ドローンの死角となる“ウラを取る”ことに成功するのだ。しかし、その後もドローンが驚異的な性能を発揮し、挑戦者たちを苦しめていく。  最新テクノロジー vs 人間の知能合戦は、とても見応えのあるものだ。特に、技術の穴を見つけ、そこを突き、絶対に無理だと思われていた攻略の糸口をつかむカタルシスは大きい。しかも、その糸口を導き出したとしても、その戦略を正確に実行する運動能力がなければならないから、ハラハラ・ドキドキ感は倍増する。  まさに、バカとハサミは使いよう。『キスマイGAME』は、テレビならではの方法でドローンのような最新テクノロジーを「遊び道具」に仕立て上げた。  子どもの遊びを大人たちが、お金と技術と知性をかけて真剣にやっている。まったく意味のない、最新テクノロジーのムダ使いである。だが、その意味のなさやムダにこそ、テレビの可能性は広がっている。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから 

山口智子の演技は、なぜ“古い”のか?『心がポキッとね』の壮大な実験

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『心がポキッとね』フジテレビ
「すっごくたのしみにぃ、しててくれる人いるみたいでぇ、2,469人~、昨日一人増えちゃったぁ!」 と、意気揚々とSNS用の料理写真を撮る、山口智子演じる空間コーディネーター・静。  言葉尻のアクセントが妙に上がるような、クセの強い抑揚のセリフ回しは古臭い。もちろん彼女は、あえてやっているのだろう。いわば、山口智子は、90年代の自分の演技の自己パロディをしているかのようだ。静が、40歳半ばにして、いまだに90年代的な自分探しをしているような自意識まみれの“病んだ”女性という設定だからだ。  『心がポキッとね』(フジテレビ系)は、岡田惠和脚本、宮本理江子演出のドラマである。2人は、同局の『最後から二番目の恋』を手がけたコンビだ。主人公は、静の元夫の春太(阿部サダヲ)。現在は、アンティーク家具の修理を担当する仕事に就いている。もともとはサラリーマンで営業をしていたが、「なんで周りの奴らはできないんだろう」と思ってしまうほど、営業成績優秀。それゆえ、周りから疎まれ、上司から嫌われた結果、ありえないくらいのノルマを与えられ、精神的に壊れてしまう。  そんなストレスを、彼は妻にぶつけ、暴力を振るった。いわゆるドメスティック・バイオレンスである。 「彼女を深く傷つけ、人生を狂わせてしまった。でも、愛してた。不幸にしようなんて、思ってもなかった。でも、してしまった。だからね、怖いんですよ、人と関わるの。だから、人と関わるの、やめようと思いまして」  家庭と仕事を失い、公園でホームレスまがいの生活をしていた春太は、アンティーク家具店の社長、心(藤木直人)に拾われ、彼の自宅の1階を間借りして生活している。  自分の世界に閉じこもる春太と、桜の下で偶然出会ったのが、みやこ(水原希子)である。  彼女はかつての恋敵(山下リオ)に言いがかりをつけられて、ストーキングされている。彼女から逃げる手助けをしたのが、春太だった。 「あたしね、誰かのこと好きになるとおかしくなっちゃう。壊れちゃうんだよね」 と、みやこは言う。そう、現在ストーキングされているみやこもまた、ストーカーだったのだ。彼女は好きになった男を追い回し、警察に逮捕された経歴があるという。「全然そんなつもりじゃなかったんだけど、好きすぎて周りが見えなくなって空回りしてた」と。  そんな彼女には現在、「神」と崇める存在がいる。彼女が絶望の淵に立ち、泣きじゃくっているところを、「何してるの?」と声をかけてくれた男だ。  一方、静は現在、心と付き合っており、「お試し同棲」を始めるという。  「静」というのは、春太にDVを受け深く傷ついたため、変えた名前だ。こんな不幸な自分は自分ではない、別の“本当の”自分を見つけなければ不幸である自分が本当になってしまうと、“自分探し”に奔走しているのであろう。周りに「センスのいい」ものをそろえ、「幸せなブログ、書きたい!」と偏執してしまうという“病”だ。  そして心も、別の病を抱えている。  彼は困っている人や捨てられた物を見ると放っておけず、誰かれ構わず声をかけ、拾ってきてしまうのだ。相手がどう思っているかなどと思い悩むことは皆無。自分がよかれと思うことに一直線。「壊れたら、直せばいい」と。  悪気もないが、配慮もない。だから、彼の善意のせいで迷惑を被っても、周りは何も言えないのだ。たちの悪い病である。  そしてみやこは、「神」と偶然再会する。もちろん、彼女の「神」は心である。心はみやこを自宅に連れて帰り、1階で住むように提案するのだ。こうして、2階では心と静の同棲生活。下では静の元夫・春太と、心に片思いをする女・みやこという三角、いや四角関係の生活が始まるのだ。  いびつな形の人間関係の中で、かろうじて保っているバランス。ひとたびちょっとした衝撃が加えられると、一気に崩れてしまうような危ういバランス。それはこのドラマそのものであり、今のテレビや社会の状況でもあるのではないか。  DV男とストーカー女をはじめ、このドラマに出てくる登場人物のほとんどは、通常のドラマであれば「加害者」側、主人公たちの「障害」になるような人物として描かれるキャラクターだ。しかし、『心がポキッとね』では、それを主人公側として描いている。決して悪い人間ではない彼らが、「そんなつもりではない」のに加害者側に立ってしまった。けれど、それは現代においてありふれた光景だ。  偶然、桜の下で出会い、偶然、因縁浅からぬ人や好きな人と一緒に生活するようになる――。実に90年代ドラマ的な設定である。  もちろん、山口智子があえて“古い”演技をしているのと同じように、こうした“古い”設定もあえて作られたものだろう。古い設定に新しい現代的な病理を抱えた人物を置いたらどうなるか。これは過去の恋愛ドラマを現在の人間ドラマに更新するための壮大な実験なのではないか。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから 

どこまでエンタテインメントにするか? 『中居正広のISORO』が映す、アイドルの「本当のところ」

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「僕、お風呂を一緒に入れるのってヒロくんしかいないです、世の中に」  稲垣吾郎は堂々とそう告白した。同じベッドで寝たこともあるという。 「ヒロくん」とは、いったい何者なのだろうか?  2009年の『さんま&SMAP!美女と野獣のクリスマススペシャル』(日本テレビ系)で初めてその存在が公にされ、14年の同番組でさらに詳しく語られた。そして、15年1月10日放送の『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)で話したことで、SMAPファン以外にも広く知られることとなった。  しかし、「50歳くらいの既婚のサラリーマン」「週2回くらいのペースで稲垣の自宅にやって来る」「稲垣の自宅にはヒロくん専用の部屋がある」などと断片的に語られるエピソードでは、ヒロくんがいったい何者なのか、そもそも2人はどんな関係なのか、謎は深まるばかりだった。男同士が半同棲生活を続けている、ということもあり、「同性愛疑惑」もささやかれていた。  そんな中で3月23日に『SMAP×SMAP』(同)の枠で放送された特別番組が『中居正広のISORO』だ。冒頭の稲垣の告白はこの番組で飛び出したものだ。番組は、稲垣が、ヒロくんの自宅を訪れ、“居候”する様子を追いかけたものだ。  ヒロくんと稲垣が出会ったのは99年。共通の知人の紹介だったという。だが、3人で会っても、ヒロくんはその知人と会話するばかり。何度か会っていくうちに、耐えられず稲垣がヒロくんに尋ねた。 「もしかして僕のこと嫌いですか?」 「ジャニーズとか苦手なんだよね」  その会話が、仲良くなったきっかけだったという。2人は急速に信頼し合うようになり、稲垣が新居を選ぶ際にはヒロくんも同行。「これだけ広ければ、ここで遊べるよね」というヒロくんの一言で新居を決めた。以降、週の半分をお互いの家を行き来し、「ヒロくん」「ごろち」と呼び合う関係になったという。 「テレビ、これでいいのか?」  普段通りの会話ゆえ、妙な間が入ったりするし、特に何かが起こるわけでもない。ヒロくんの自宅で過ごす2人のVTRを見た中居が、思わずそう言った。  そんな中居を尻目に、「仲良さそう。見てて安心する」「不思議な感じ」などと無邪気に語る稲垣は新鮮だ。  「見たことないもん、こんな吾郎」と、中居も言う。確かにVTR中の稲垣は、これまでのイメージとは異なる新たな一面を見せていた。デビューから25年以上経って、常に第一線で活躍し続けてもなお、こうした新たな一面をのぞかせることができる。そして、このなんでもないVTRで視聴者を惹きつけることができるSMAPの強さを、あらためて感じた。  「結婚しないのか?」と問われた稲垣は「『大切な存在』(=ヒロくん)がいるから、それを認めてくれる女性じゃないとできない」と、サラッと言った。それに対し、中居は「『大切な存在』なんて、歌詞やドラマの世界だけの言葉だと思ってた」と驚きを隠さない。 「でも、言葉で伝えたらすごく気持ちよくなってくると思いますよ。僕もこういうふうに認め合うことを前はしてなかったんですけど、いま普通に言えるようになって気持ちいいですもん、やっぱり。楽だもん。そういうもんなんだなって。絆というか愛というか。やってみなよ、みんなも。大切な存在、いるはずだよ!」 と語っているうちに興奮した稲垣は、カメラに向かって呼びかけるのだ。 「伝えてみなよ! 声に出してみなよ! すごく楽になるよ!」 「どこまでエンタテインメントにするかということについては、非常識を常識にするということに関して、僕らは腹をくくる準備と覚悟はあった」(『AERA(13年5/6・13)』)  と中居は語っている。かつて、アイドルは文字通り偶像だった。“お人形”であることを求められた。だが、80年代に入り、アイドルは“自我”を持ち始め、80年代後半には、同じ“人間”であり、手に届く存在であることが強調されるようになった。いわば、アイドルの“人間宣言”である。その流れの中で、SMAPはさらにそれを一歩進めた。アイドルではタブーとされてきた下ネタや恋愛話を語り、失敗話や自らのダメな部分を晒すようになったのだ。言ってみれば“ダメ人間宣言”である。  そうしてSMAPは新たなアイドル像を提示することで、アイドル界のトップに立った。一方で中居には「エンタテインメントにする」ことへの明確な線引きがある。たとえば、この番組でも、稲垣とヒロくんがイチゴ狩りに行って、あーんとイチゴを食べさせ合うVTRを受けて、稲垣があーんとイチゴを中居の口に運ぶと、頑なに拒否。  また、次回の“居候”先に稲垣が「SMAPのヒロくん」、すなわち中居正広を提案すると、「そこに僕の中のエンタテインメントは入ってませんから」と真顔で退けた。  あるいは、昨年の『27時間テレビ』(同)では、「解散」について赤裸々に話す香取に対して、中居が「そのチャックは開けたくなかった」と言ったこともある。中居にとってその部分は、アイドルという“着ぐるみ”を維持するためのギリギリのライン、すなわち“チャック”だったのだ。それに対し、稲垣は言う。 「チャックは開けてなくても透けて見えたりするもの」と。  VTR中、「2人はチューくらいできるの? 本当のところどうなってるの?」と問われた稲垣は、静かにほほえんで言った。 「本当のところなんて、言うわけないよね」  そうしてヒロくんの素顔まで晒した番組でも、肝心な核心部分は煙に巻いたまま終わった。半同棲するほど親密な2人の関係だからといって、必ずしもそこに恋愛感情があるわけではない。それがあってもいいし、なくてもいい。何でつながっているかなんて、当人以外は「本当のところ」分からない。その「分からなさ」は、そのままエンタテインメントであり、アイドル性だ。「分からない」からこそ、無限に可能性を広げてくれる。  最後に以前、歌人の枡野浩一が『ゴロウ・デラックス』(TBS、15年1月22日放送)で稲垣に捧げた短歌を紹介したい。 「『両方って人もいるよね』両方に夢を与える稲垣吾郎」 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから 

本田望結の活躍に見る、『逃走中』が子どもたちを夢中にさせるワケ

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『逃走中』フジテレビ
 また『逃走中』(フジテレビ系)が原因で“炎上”したという。  炎上したのは、3月15日放送の回で「自首」を選んだE-girlsのAmiだ。『逃走中』は、テーマパークやショッピングセンター等の施設を舞台にした大規模な“鬼ごっこ”番組。十数人の出演者=逃走者が、ハンターと呼ばれる“鬼”から決められた時間を逃げ切れば賞金を獲得できる。途中、捕まるリスクはあるが、協力して成功させるとハンターが減るなどの「ミッション」が用意されている一方で、逃走者にはルール上、「自首」が許されており、その時間に応じた賞金が支払われる。  Amiはこの「自首」により、目標であった賞金100万を超える約120万円を手にした。もちろんルール上認められた行為であるが、それまでの言動、自首後の振る舞いで人間性が浮き彫りになり、批判に晒されてしまうのだ。  『逃走中』の炎上といえば、今回は出演しなかったが、ドランクドラゴン鈴木拓が有名だ。自身の「代表作」とうそぶき、「この番組がキッカケでヒールキャラを確立した」と胸を張る。普段の仕事では見送りになど来ない息子が、『逃走中』の仕事の日だけは、鈴木を見送りに来るのだという。「父ちゃん、今日はちゃんとミッションやってね」と。  なぜなら『逃走中』は、子どもたちの間で絶大な人気を誇る番組だからだ。そんな番組で父親が悪者になってほしくないと思うのは、無理もない。なぜ、それほどまでに子どもたちを夢中にさせるのだろうか?  そのひとつの答えが、「誘惑の扉」と題された今回の放送にあった。今回の出演者は前述のAmiのほか、プロ野球・広島カープのエース前田健太、芸人の小籔千豊、よゐこ濱口優、元宝塚の大和悠河など多彩なメンバーに混じって、“天才子役”と名を馳せ、フィギュアスケーターとしても将来メダルを期待される本田望結がいた。10歳の本田は間違いなく、今回の主役のひとりだった。 「ヤバい、ドキドキしてる!」 と、最初から興奮気味の本田。小学校では「『逃走中』ごっこ」などもしているという。だから「みんなに『ミッションできたよ!』って言いたい」と無邪気に決意を語るのだ。だが、いざ始まると、本田は身を潜めたまま動けなくなってしまう。 「無理だ、怖い。こんなに怖いと思ってなかった……」  ハンターの影におびえ、動きたいという気持ちより恐怖心が上回ってしまう。「ミッション」が通知されても、気持ちばかりがはやって、足は止まったまま。動きたくても動けない悔しさがにじみ出る。 「ヤバい全然動けない……。何も動けてないや、テレビ見てると楽しそうだな、絶対行きたいなって思ってたけど、こんなにドキドキするとは思わなかった」  本田が動けないままでいるうちに、エリアには「誘惑の扉」が出現する。この扉の中に入ると、5分間ハンターの追撃を受けずに済む。その代わり、その時間、新たにハンターが10体放出されるというのだ。 「扉に入るのやめる」 と、いち早く出演者全員にチャットで意思表示する本田。しかし、ハンターに追われる中で、Ami、濱口、小林麻耶の3人が「誘惑の扉」に入ってしまう。10体増加したハンターたちに追い詰められ、その5分間で6人もの逃走者が確保されてしまった。 「もう自分が恥ずかしいよ」  1時間以上、動けなかった本田はついに動き始める。そして、確保された逃走者を復活させる「ミッション」発動が通知される。 「絶対やります! 絶対やります!」  「ミッション」は危険と隣り合わせだ。ハンターに捕まるリスクは高まる。事実、ミッション中に確保されてしまうことも少なくない。だから、ミッションに参加しないという選択肢も当然ある。だが、本田は、自分がその選択をすることは許せなかったのだ。そしてほかのメンバーと協力して「ミッション」を成功させると、それに貢献できた彼女はウキウキ気分で得意げ。その興奮を隠せない。  一方、出演者のアレクサンダーから「自首」を相談されると、あからさまに軽蔑の眼差しを向け、こう言う。 「自首どうぞ。望結はしない。最後まで生き残る。あとミッションも絶対やる! さようなら。望結は捕まるかもしれないけど、みんなのために頑張ります!」  残り時間わずかになると、「誘惑の扉」が再び現れる。 「そんなことはしない! 誰も入らなかったらハンターは来ないわけでしょ。入ったら大変なことになる! みんなを裏切ることになるから。絶対に入らない!」 と語気を強めた本田だが、ハンターに追われ、恐怖に駆られると、泣きそうになりながら、その扉を開けようとしてしまうのだ。  『逃走中』での本田望結は、子どもらしさが全開だった。恐怖で思い通りに体が動かない葛藤、一転して「ミッション」に成功した後の得意げな言動、自分にも他人にも厳しくあろうとする正義感、逆にピンチに陥ったら逃げてしまう弱さ、何より目の前のことに前のめりで夢中になる姿。そのすべてが子どもっぽくて、愛らしかった。いや、彼女だけではない。出演者それぞれが、子どもっぽい本性を晒してしまうのだ。  『逃走中』は子ども心を呼び覚ます。子どもだましでは、子どもはだませない。巧妙なミッションの設定と、「自首」を誘発するような人間心理をついた絶妙なゲームバランスが、いつだって本気で遊ぶ子どもたちを刺激する。夢中になるのは、子どもたちだけではない。なぜなら、大人にだって子ども心は残っているからだ。『逃走中』は、そんな子ども心をターゲットにした番組なのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから 

なぜミッチーは“許される”のか? 『嵐にしやがれ』で語った、及川光博「イイ男」の原点

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「ダンディ・ダンディ/SAVE THE FUTURE!!」(ビクターエンタテインメント)
 ミッチーこと及川光博が、いつになく精力的だ。歌手デビュー20周年を記念して、約5年ぶりにシングルCD「ダンディ・ダンディ/SAVE THE FUTURE!!」(ビクターエンタテインメント)を発売、さらに映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』(3月21日公開)に仮面ライダー3号・黒井響一郎役で出演という、ミュージシャン・俳優、2つの大きな仕事が重なった。そのプロモーションに音楽番組はもちろん、その強烈なキャラクターゆえバラエティ番組にも引っ張りだこだ。  『ミュージックドラゴン』(日本テレビ系)では「レッドカーペット歴20年」とレッドカーペットで登場し、「川柳は宇宙だ!」と川柳を詠み、仮面ライダー寸劇を演じていたし、『ユミパン』(フジテレビ系)では照れまくる永島優美アナウンサーを相手に「壁ドン」や「あごクイ」を完璧に決め、『しゃべくり007』(日本テレビ系)では40歳代のおっさんトークを、『さんまのまんま』(関西テレビ)ではさんまと恋愛・結婚トーク。変幻自在でありながら、一貫して「ミッチー」であり続ける姿は驚異的だ。  思えば、及川光博は不思議で稀有な存在だ。『相棒』(テレビ朝日系)の神戸尊役に出会うまで、長らく代表作といえる役柄もなかったし、代表曲といえるようなヒット曲もない。それでも20年にわたり、及川光博はずっと「2.5次元」的な「ミッチー」というキャラで芸能界を生き抜いてきた。いわば、代表作は自ら「透明な着ぐるみ」(『しゃべくり007』)と称す、「ミッチー」そのものなのだ。  「本日諸君らの担当教官となった、見ての通りのガルマ・ザビです」  観客がキョトンとする中、『機動戦士ガンダム』に登場するガルマ・ザビの衣装に扮した及川光博が登場したのが、『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)だ。「私物」というジオン公国の軍服に身を包んだミッチーは、どう見てもガルマそのものである。そのコスプレのクオリティは、テレビ用に昨日今日始めたレベルではないことは明らか。事実、ライブなどでは、『サイボーグ009』『宇宙戦艦ヤマト』『ルパン三世』(緑ジャケット)、『ガッチャマン』『ベルサイユのばら』『セーラームーン』(タキシード仮面)などのコスプレを披露。『ガンダム』関連では、シャアを模した「赤い彗星のニャア」というキャラにまでなりきっている。  コアなアニメファンは、テレビタレントがこうした言動をすると、親近感が湧くというよりも逆に反感を抱くことが珍しくない。だが、なぜか「ミッチーなら許せる」という声が多い。それもまた、ミッチーの稀有さのひとつだ。  『嵐にしやがれ』はもともと、ゲストである「アニキ」が嵐メンバーにさまざまなことを教えていくという番組。現在はゲストも「アニキ」に限らず、ロケ企画も多くなったが、この日の及川光博出演のコーナーは原点に帰ったように、「ザビ家が変身するとザクになるの?」などと『ガンダム』をまったく知らない嵐を相手に、ミッチーが「人生の参考書」だという「ガンダムに学ぶイイ男授業」をするというものだった。 「みなさん、引かないでくださいよ。いや、引いてもいい!」 と言いながら、スラスラと、「0079」「80」「83」「87」「88~93」と数字をホワイトボードに書いていくミッチー。『ガンダム』に関連する年号である。もうこれだけでも、生粋の『ガンダム』ファンであることが分かるが、次々と浴びさられる嵐からの質問にも間髪を入れず答えていくさまは、まさに『ガンダム』マニア。そして「イイ男」としてシャア・アズナブルとランバ・ラルを挙げ、シャアは「カリスマ性はあるけど弱点は自己中」と分析。ランバ・ラルには「背負い、許し、包む」「部下思い」な理想の上司と紹介。「若手に対して堂々と説教ができる。なぜか? 自信があるからです、経験値があるから、実績があるから。その説得力が大人」と熱く語り、最大限評価した上で、最後にミッチー目線らしい欠点を挙げる。 「ラルは人間の器はでかいけど、メタボ!」  後半は、なぜか『ガンダム』を離れ『快傑ズバット』の話に急展開。「初めて自分のお小遣いで買ったレコードが『快傑ズバット』の主題歌でした」というミッチーは、ズバットを演じた宮内洋が「俳優の原点」だという。確かに、ズバットのキメキメでキザな仕草はミッチーのそれを思い起こさせる。「クール&セクシーというのが、男としてカッコいい」と。  前述の通り、及川光博は仮面ライダー3号を演じる。これは、ミッチーにとって長年の夢だった。デビュー当時、彼は「戦隊ヒーロー」もののオーディションを受けたことがある。ミッチーが希望したのは「青」役。そう、『ゴレンジャー』では宮内洋が演じた「青」だ。だが、それはかなわなかった。そして時を経て、及川光博は仮面ライダー3号に選ばれたのだ。  「3号」はもともと、原作漫画には1号、2号に続いて登場していた“幻”のライダー。しかし特撮シリーズでは、3号は“封印”され、デザインを一新した『仮面ライダーV3』が事実上の「3号」として制作された。その「V3」を演じたのもまた宮内洋なのだ。そして映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』では、その「V3」と「3号」が対決するという。ものすごい運命のつながりを感じさせてくれる話だ。それは、決して偶然ではないはずだ。及川光博はいつだって“本気”でやりきり、それをやり続けてきた。その結果、まさにシャアのような「カリスマ性」に加え、ランバ・ラル同様の「自信」「経験値」「実績」を手にし、ミッチーの「説得力」になっている。だからこそ、コアなファンも納得させ、作り手から請われるという最高の形で、夢がかなったのだ。  『嵐にしやがれ』は、そんなミッチーだからこそできる、「イイ男授業」だった。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから 

森三中・黒沢大号泣! 『みなさんのおかげでした』が見せた、石橋貴明の意外な一面

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「いつ終わりが来るんですかね、恋愛って」 と真顔で石橋貴明に問いかけるミラクルひかるに、森三中・黒沢が激高する。 「安っい質問してんじゃねえよ!」  さらに黒沢は続ける。 「こんな機会ないのに、なんでそんな安い質問するかな? めったに聞けないんだよ、タカさんに!」  これは、2月19日放送の『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の新企画、「石橋温泉」での一場面だ。貴明が温泉旅館で、後輩たちの悩みを聞くという企画である。  破天荒で傍若無人なイメージのある貴明だが、実は若手芸人から「意外に親身になって相談に乗ってくれる男」だと慕われている。お笑いファンには、TBSラジオ『バナナマンのバナナムーンGOLD』や『おぎやはぎのメガネびいき』に“乱入”し、自らの芸歴を振り返りながら、後輩たちと真摯に語り合った“伝説”の放送が思い浮かぶだろう。  そんな貴明のもとに今回集まったのが、オアシズ・大久保佳代子、椿鬼奴、森三中・黒沢かずこ、フォーリンラブ・バービー、ミラクルひかるという5人の女芸人だった。  最初に悩みを打ち明けたのは鬼奴だった。 「彼が芸人として売れるにはどうしたらいいのか?」  鬼奴が同棲中の恋人、グランジ・佐藤大は、実は『みなさんのおかげでした』と縁のある芸人だ。人気コーナーのひとつ「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」に出場し、「朝5時の富士そば恵比寿西口店の店員」のモノマネで見事、第3回のチャンピオンに輝いているのだ。 「奴さんの言う『売れる』っていうのは、どういう状態なの?」 と貴明が尋ねると、「もう少し収入があると……。収入格差があります。今のところ、家賃も私が払っていて」と現状を告白する鬼奴。佐藤は酒とギャンブル好きの、昔気質の芸人なのだ 「お給料のうち、7割ぐらいは借金返して、残りの1万とか2万を競艇に。(25日にもらった給料が)だいたい26日に終わってる」  そのため、鬼奴だけでなく、ほかの芸人たちにも借金を繰り返しているという。それでも「私も42歳なので、そろそろ結婚しようかな」という鬼奴に、同期で親友の黒沢は複雑な思いを抱えていた。もちろん、鬼奴が恋愛を成就して結婚できればうれしい。だが、今の状況のまま結婚して、果たして本当に幸せになれるのか、と。  そのことについて男性芸人に相談しても「いいじゃん、鬼奴に合ってるよ」「鬼奴が稼げばいい」などと芸人ノリで返される。だが、目の前の貴明は茶化さずに「鬼奴さん、(佐藤の借金を)全部把握してるの?」「結婚なんかしちゃったら、自分のほうに(借金が)来ちゃうよ」「本当に怖いのは突然売れた時」などと真剣に相談を聞いてくれる。 「タカさんが真剣に聞いてくださって、すごいうれしいです」 と、自分のことのように感謝する黒沢。そして貴明が「(佐藤は)バイト辞めたほうがいいんじゃないかな。借金を返すためのバイトなんでしょ? 彼がやらなきゃいけないのはネタを作って売れなきゃダメでしょ」と諭すように語ると、鬼奴が「バイト辞めろって言ってくださる方はいなかった」と涙ぐむ中、なぜか黒沢は鬼奴以上に大号泣するのだ。 「なん……、何……、あの……、あの……うれしいっす!」  口ごもりながら懸命に自分の思いを伝える黒沢の姿はおかしくも美しく、そして感動的だった。感極まった黒沢は、自分の番でないにもかかわらず、自分の悩みを吐露し始めてしまう。 「自分たちは中途半端な年齢になってきて、先輩も後輩もいっぱいいるし、この先どうなっていくのかな? って。クソッていう気持ちもなくなってきちゃって、ダラダラ流されるようにこの世界で生きてて、自分がなんの目的でこの世界に入ってきたのかが分からなくなっちゃって。その時にカラオケで歌うのが(とんねるずの)『一番偉い人へ』です、っていうのが一番言いたかったことです!」  ほかの4人とタイプが違う、恋愛経験豊富なミラクルひかるが入っているバランスも絶妙だった。  貴明が「突然売れた時に『じゃあな、鬼奴』って言われる可能性がある」と危惧した時、ミラクルはしたり顔で言うのだ。 「でもその時は、女として1ランク上がった時ですよ」 「黙れ、ババア! どのポジションで言ってるんだよ!」  そんな言葉に大久保が激高しても、構わず平然とミラクルは続ける。 「だけど、いま彼を愛せるのは鬼奴さんだけなんで、マジ、頑張ってください」  「石橋温泉」は悩みを吐露する女芸人たちはもちろん、貴明の意外な一面を垣間見ることのできる。この企画をはじめ、『とんねるずのみなさんのおかげでした』はコンスタントに新機軸の企画を打ち出し、とんねるずの新たな顔をのぞかせ続けている。彼らは大御所となった今でも、とても精力的で、どの若手芸人よりも挑戦的に見える。まさに「一番偉い人へ」で歌ったように、「俺たちは今何をするべきか?」とテレビの中で問い続けているようだ。  次週も続くという「石橋温泉」。その予告で黒沢は、多くの芸人たちの思いを代弁するように訴えていた。 「タカさんが生きてるうちに、聞かなきゃいけないことがいっぱいある! まだ死なないでください!」 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから