危険なのはノーブレーキピストだけじゃない! 自転車事故が相次ぐ東京都の新たな条例案

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『サイクル ライド・オン・ザ・ピスト・
イン・ジャパン』(コロムビア
ミュージックエンタテインメント)
 20日から始まった都議会で、東京都は「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例案」を提出する。全国で初めて、危険なノーブレーキピスト自転車の販売規制を盛り込んだことで、自転車愛好者からも注目を集める条例案。その背景には、増加する自転車事故とマナーの問題があった。  この条例で注目されているノーブレーキピスト自転車とは、競技用のトラックレーサーを、ブレーキやライトなどを装着しないまま公道使用するものを指す。トラックレーサーは、ブレーキがなく、ギアは固定ギア(後輪が回転している限り、ペダルが回転し続ける)が大きな特徴だ。トレーニングを積んでいなければ使用は困難で、特に経験がなければ停止することも難しい。競輪選手などが公道でのトレーニングに使用する場合もあるが、その場合にはブレーキやライトなどの部品が必須だ。また、それらの装備がない自転車は、即、道路交通法違反となる。  ところが、2000年代半ばからストリートカルチャーの世界で「海外のメッセンジャーが使用している」として、ブレーキを備えない状態でトラックレーサーを公道使用することが一種の流行にもなってきた。危険極まりないこの行為は、自転車愛好家たちからも、激しい非難の対象にされてきた。  今回、東京都が提出する条例案では、道路交通法などに違反する自転車の販売、組立、改造などを禁止することを定めている。「走る凶器」を根絶させる画期的な条例案だ。ただ、あくまでも東京都の条例にすぎない。ほかの地域からのネット販売、あるいは個人でブレーキを取り外した場合には、どのようになるのか? 「条例では“販売してはならない”と記載しています。同種の判例に照らして、業者がどこの地域でも、購入者が都内であれば“販売”が成り立つと解釈しています。ただ、条例案にある通り、違反した場合に罰則はなく、勧告・公表のみです。また、都の条例ですから、例えば大阪の業者に立ち入り検査ができるかといえば、疑問です。実際の効果は、やってみないとわからないと考えています。また、個人でブレーキを外すのはそれ自体が道交法違反ですから、入れていません」 とは、東京都青少年・治安対策本部交通安全課の黒川浩一課長の話。さらに、黒川課長は、条例案で重要なのはノーブレーキピスト自転車だけではないと話す。  黒川課長は、この条例案は自転車の安全運転とマナー向上の機運を高めることこそが目的だという。近年、自転車事故は加害者側の高額賠償などで注目を集める事例が多い。警視庁の資料によれば、昨年11月末までに都内で発生した自転車事故の件数は、1万6,671件。負傷者数は1万5,136人、死者は30人となっている。一昨年の数値では、都内で自転車が関与した交通事故の割合は37.3%。全国では同20%で、都内では自転車が交通事故に巻き込まれる確率が極めて高いといえる。しかし、依然として自転車の安全運転とマナーは、利用者個人に委ねられた部分が多い。自動車と違って車検制度はない。また、防犯登録も購入した時のみで、わざわざ住所変更の手続きをする人も少ない。自転車事故が増加していることが漠然と認識されながらも、安全への意識は低いというわけだ。  そこで、今回の条例案では第三条で基本理念として、自転車が極めて重要な役割を果たしながらも、一方で安全な生活の妨げになっているため、安全で適正な利用が促進されなければならないことを記す。その上で、第五条で自転車利用者に対して「都が実施する自転車安全利用促進施策に協力するよう努めなければならない」など、努力義務を盛り込んでいる。 「努力義務を課したことで、整備不良の自転車に、法的に点検整備を促すこともできるようになります」(黒川課長)  自転車の利便性は、今さら記すまでもないが、他方で自転車は怪我させる危険、怪我する危険の絶えないもの。愛好者も増える中で、マナーの向上を願ってやまない。 (取材・文=昼間たかし)