
ベストアクターの風格。
――あのキスシーンは、もともと違う感じだったということですか?
今野 もともとは、桃子の気持ち抜きで、僕がただ無理やりキスするだけだったんです。それがああいう感じのキスシーンに急遽変わりました。僕のアドリブのせいでラストを変えさせちゃって、監督には悪いことしたなって思ってますけど(笑)。
――ほかにもアドリブのシーンは多いんですか?
今野 そうですね。これも台本にはなかったんですが、「これは泣いたほうがいいなあ」と思ったシーンがあって、初めて気持ちを入れて泣くことに挑戦してみたんです。そしたら、カットがかかった後もずっと泣きやまなくて……“泣きやみ待ち”で何十分も現場をストップさせてしまって、エライことになりました。
――撮影でNGは出しましたか?
今野 唯一のNGがキスシーンですね。ディープキスに入る前の普通のキスの時に、田代さんの唇のあまりの柔らかさに「柔らかい!」と思って、セリフが飛んでしまったんです(笑)。田代さんには「本当に申し訳ない」と謝りました。
――キスシーンが思いのほか長くてビックリしました。
今野 一番最初にもらった台本では、1回強引にキスするだけだったんです。それが最終的には“夜から朝にかけて長いキス”みたいなことになってて、引きましたね(笑)。
――うれしいとかじゃなくて、引いちゃったんですか?
今野 あれだけ長いディープキスだと、後々もう面白話では処理できないなと思って(笑)。ただ、田代さんは飴をめっちゃ舐めていらっしゃったんで、口の中がとにかく甘かったですね。
――マジで舌入れてるってことですか? 本編では、あまり分かりませんでしたが。
今野 入れてますよ。あれ、撮影では13分くらいキスしてたんですよ。本編では相当カットされてますけど。
――今野さんが個人的に好きなシーンはどこですか?
今野 桃子が、鍋で肉じゃがを温めるシーンですね。田代さんがアドリブで「タララッタッタッタッタ♪」って『3分クッキング』の曲を歌うんですけど、DVDにした時の権利関係のこととかを考えて、わざと音を少しズラしてるんですよ。プロだな~って思って(笑)。
――田代さんの演技はいかがでしたか?
今野 ま~うまいですよね。大輔が桃子の家に初めて行くシーンで、僕がアドリブでヘンな場所に座ったんです。そしたら瞬時に「そこですか!?」ってツッコんできたんですよ。これはすごいなって思いました。
――ちなみに、田代さんは“処女ドル”ですが、キスした仲としては、本当に処女だと思いますか?
今野 処女だと思いますよ。彼女って異様に下ネタ言ったりするんですよ。それって逆に処女のなせる業なんじゃないかなって(笑)。やっぱ僕も中学生の頃のほうが、実感がないからこそ下ネタ言ってた気がしますし。
――相方の高橋さんも、レンタルビデオ屋の店員役で出演されていますが、演技はいかがでしたか?
今野 生涯無二のハマり役じゃないですか?(笑) あの役は、高橋じゃないとできないと思いますね。
――8月には舞台『鎌塚氏、すくい上げる』(本多劇場、倉持裕作・演出)の出演も控えてますが、役者として演じるのと、コントで演じるのとでは、違うものなのでしょうか。
今野 演じるということに関しては、まったく同じだと思います。ただ、責任が全然違うんですよね。役者業は、演出家なり監督から言われたままをやっているので、どういうシーンになろうが自分は“責任ゼロ”だと思ってるんです。だけどコントは、作ってるのが自分なので、責任が大き過ぎるんですよね。
――『ニコニコキングオブコメディ』(サイゾーテレビ)でも、この映画のお話をたびたびされてますが、“鈴木太一監督のダメさ”のお話ばかりで、作品の素晴らしさについてあまり語ってないのでは?
今野 確かに(笑)。でも伝えたいことは、やっぱり監督のダメさなんですよ。あの人は、監督というより脚本家なんですよね。撮影の時、僕らが監督に演じ方を聞くじゃないですか。でも、そもそもそういう質問が来ると思ってないから、何も返ってこないんですよ(笑)。そういうところがイラッとするので、この映画の面白さを、あの監督のおかげだと思われたくないんです(笑)。
――現場で演出をしないで、監督は何をされてたんですか?
今野 見てる。見学の人ですよね。
――そんな監督も、現在は自らサンドウィッチマンとなって、各地でビラ配りのプロモーション活動を頑張ってますよね。
今野 あれね~~、僕らが出るお笑いライブの会場前でも、ちょくちょく配ってるんですよ。僕がいるところで、気持ち悪いおっさんが僕の顔のアップのビラを配ってると思うと、もう恥ずかしくてしょうがないですよ。遠くに行ってくれって思います(笑)。
――映画の公式サイトには、ビラを配る監督の勇姿が、ドキュメント風の動画でいくつもアップされてますね。
今野 あれって『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』と、まったく同じ宣伝方法なんですよ。いい加減、怒られてもいいのに(笑)。ただ、『サイタマノラッパー』はボランティアスタッフの人数がすごいから成功してるんです。だから僕は、監督に「この映画は、クチコミでしか広がらない映画なんだから、『Yahoo!』のユーザーレビューとか書きなさい」って前から言ってるんですけどね……。
――そんな鈴木太一監督が初監督を務めた映画『くそガキの告白』について、最後に読者へPRをお願いします!
今野 おそらくテアトル新宿あたりで、監督が割引券とかを配ってると思うので、それを手に入れて、1,000円とかで観ていただければと思います(笑)。とりあえず観れば面白い映画なので、観てください!
(取材・文=林タモツ)
●『くそガキの告白』
監督・脚本/鈴木太一 出演/今野浩喜(キングオブコメディ)、田代さやか、辻岡正人、今井りか、仲川遥香(AKB48)、北川ひろし、高橋健一(キングオブコメディ)、石井トミコ 6月30日よりテアトル新宿ほか全国順次公開 <http://kuso-gaki.com>
●こんの・ひろき
1978年、埼玉県生まれ。高校卒業後、プロダクション人力舎スクールJCAに6期生として入学。2000年より同期生の高橋健一とコンビ・キングオブコメディとして活動。05年、第3回お笑いホープ大賞受賞。2010年、「キングオブコント2010」優勝。俳優として舞台『サボテンとバントライン』(09)、『天才バカボン』(10)、『男子はだまってなさいよ!8 アダルト』(11)、『鎌塚氏、すくい上げる』(12)、連続ドラマ『ティーンコート』(日本テレビ)、映画『ちょんまげぷりん』など出演。12年4月よりNHK Eテレ『テレビスポーツ教室』ナレーション担当。サイゾーテレビ『ニコニコキングオブコメディ』出演中。