アダルト業界が‟呉越同舟” 知的財産保護という困難な航路に光明は?

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約260名の業界関係者が集った業界懇親会。思惑はさまざまだろうが、
知的財産の保護という点で一致団結しようという機運は感じ取れた。
 6月20日、違法ダウンロードを罰則化する著作権法改正案が可決・成立したわけだが、奇しくも同日、椿山荘(東京都・文京区)で知的財産の保護活動推進を目的とした「第一回 業界団体懇親会」が開催された。  この”業界”とはアダルト業界である。アダルトコンテンツメーカー(AV、アダルトゲームなど)、レンタル店、販売店などで構成される業界団体(コンテンツ・ソフト協同組合、ビジュアルソフト・コンテンツ産業協同組合、日本映像ソフト制作・販売倫理機構、一般社団法人東日本コンテンツ・ソフト、全日本ビデオ倫理審査会)が知的財産の保護を目的に昨年5月、特定非営利活動法人「知的財産振興協会」(IPPA)を設立した。その第一回目の懇親会が開かれたという次第なのだが、そもそもメーカーの対立によって業界団体が乱立してきたという経緯がある。IPPAはまさに、“呉越同舟”。どのような会になるのか、期待と不安を抱きつつ、参加してきた。
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ネット上には違法にアップロードされた
アダルト動画が無数にある。
 各企業・団体の挨拶では、販売店からメーカーへの苦言、あるいはレンタル店と販売店の微妙な関係、メーカー同士の皮肉が呈されるなど、ドキッとさせられる発言もあったのだが、いずれも冗談交じりで会場からは笑い声も。和やかなムードで会は進む。そんな中、本題の知的財産に関して、ある関係者はこんなことを語ってくれた。 「海賊版の売買、ネットでの動画の違法なアップロード、ダウンロードは本当に大きな痛手。だけど、いつまでたってもイタチごっこだし、対策しようにも費用対効果が薄い。立場上、あきらめているとは言えないけれど、正直、難しいだろうなというのが本音です」(メーカー)  当たり前のことだが、アダルト作品にも著作権はある。そして、ファイル共有ソフトの利用者や海賊版の販売者などを監視し、違法者を告訴してきた実績もある。しかし、今回の違法コンテンツのダウンロード罰則化に際しても、その是非はさておき、聞こえてくるのは音楽業界の威勢のいい声ばかり。音楽業界と同様、大きな被害を被っているアダルト業界の反応はあまり見えてこない。 「どうせアダルトは大丈夫でしょ」 「音楽、映画は危ないけど、AVはほどほどなら捕まることはない」  ネット上には、このようなタカをくくったユーザーの発言が目につく。これまで、著作権法違反行為に対する姿勢をうまくアピールできなかったという証左だろう。また、著作権違反行為への対応が鈍く感じられるのには、このような理由もあるようだ。 「違法ダウンロードの罰則化に向け、激しいロビー活動を繰り広げていたのは音楽業界。アダルト業界の多くの人は冷ややかな目で見ていたと思いますよ。そもそも、アダルト業界は長年ずっと、規制される側でしたからね。そんな目に遭ったことのない音楽業界とは、根本的に考え方が違う。『どうせアダルトでは動いてくれない』といった捜査機関に対する不信感も大きいんです」(制作会社)  ただ一方で、この懇親会を契機に、業界は変わっていくと期待を寄せる声も少なくはない。
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懇親会なので、微に入り際に入りというわけ
でもなかったが、具体的な提案として紹介
されたのがこのような啓蒙活動。その効果
云々よりも、まずは共通の旗印を掲げまとま
ろうという業界の思いが伝わって来る。
「確かに足並みを揃えるのは難しいかもしれません。それでもとにかく、相まみえることのなかった各団体・メーカーが、一堂に会したことにこそ意義があるんだと思います。何ができるかはわからない。だけど、何かやらなきゃいけないという思いは、どの団体だろうと、どのメーカーだろうと同じです」(販売業者) 「せっかく汗水垂らして作った作品が、いとも簡単にコピー販売され、違法にアップロードされるのは悔しい。業界としては今後、アダルトだけでなく一般の動画・コンテンツに関わる企業・団体とも連携を取っていく予定です。違法行為に手を染めている人たちには、こうした会が開かれているということ、業界としてより一層厳しく対処していく決意を強めているということを、ぜひ知ってもらいたいですね」(メーカー)  違法コピーにより、年間数百億円の損失を被っていると目されているアダルト業界。知的財産の保護という水平線に乗り出す立派な“舟”は準備ができた。確実に最初のひと漕ぎは放たれた。あとは呉越がリズムよく舵を切り、櫂(かい)を操作できるかどうかがポイントだろう。  この航路にはきっと困難も待ち受けているはず。しかし「とにかく始めよう」「まとまろう」という今回の決意表明は、航路を明るく照らし出している。

アダルト業界が‟呉越同舟” 知的財産保護という困難な航路に光明は?

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約260名の業界関係者が集った業界懇親会。思惑はさまざまだろうが、
知的財産の保護という点で一致団結しようという機運は感じ取れた。
 6月20日、違法ダウンロードを罰則化する著作権法改正案が可決・成立したわけだが、奇しくも同日、椿山荘(東京都・文京区)で知的財産の保護活動推進を目的とした「第一回 業界団体懇親会」が開催された。  この”業界”とはアダルト業界である。アダルトコンテンツメーカー(AV、アダルトゲームなど)、レンタル店、販売店などで構成される業界団体(コンテンツ・ソフト協同組合、ビジュアルソフト・コンテンツ産業協同組合、日本映像ソフト制作・販売倫理機構、一般社団法人東日本コンテンツ・ソフト、全日本ビデオ倫理審査会)が知的財産の保護を目的に昨年5月、特定非営利活動法人「知的財産振興協会」(IPPA)を設立した。その第一回目の懇親会が開かれたという次第なのだが、そもそもメーカーの対立によって業界団体が乱立してきたという経緯がある。IPPAはまさに、“呉越同舟”。どのような会になるのか、期待と不安を抱きつつ、参加してきた。
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ネット上には違法にアップロードされた
アダルト動画が無数にある。
 各企業・団体の挨拶では、販売店からメーカーへの苦言、あるいはレンタル店と販売店の微妙な関係、メーカー同士の皮肉が呈されるなど、ドキッとさせられる発言もあったのだが、いずれも冗談交じりで会場からは笑い声も。和やかなムードで会は進む。そんな中、本題の知的財産に関して、ある関係者はこんなことを語ってくれた。 「海賊版の売買、ネットでの動画の違法なアップロード、ダウンロードは本当に大きな痛手。だけど、いつまでたってもイタチごっこだし、対策しようにも費用対効果が薄い。立場上、あきらめているとは言えないけれど、正直、難しいだろうなというのが本音です」(メーカー)  当たり前のことだが、アダルト作品にも著作権はある。そして、ファイル共有ソフトの利用者や海賊版の販売者などを監視し、違法者を告訴してきた実績もある。しかし、今回の違法コンテンツのダウンロード罰則化に際しても、その是非はさておき、聞こえてくるのは音楽業界の威勢のいい声ばかり。音楽業界と同様、大きな被害を被っているアダルト業界の反応はあまり見えてこない。 「どうせアダルトは大丈夫でしょ」 「音楽、映画は危ないけど、AVはほどほどなら捕まることはない」  ネット上には、このようなタカをくくったユーザーの発言が目につく。これまで、著作権法違反行為に対する姿勢をうまくアピールできなかったという証左だろう。また、著作権違反行為への対応が鈍く感じられるのには、このような理由もあるようだ。 「違法ダウンロードの罰則化に向け、激しいロビー活動を繰り広げていたのは音楽業界。アダルト業界の多くの人は冷ややかな目で見ていたと思いますよ。そもそも、アダルト業界は長年ずっと、規制される側でしたからね。そんな目に遭ったことのない音楽業界とは、根本的に考え方が違う。『どうせアダルトでは動いてくれない』といった捜査機関に対する不信感も大きいんです」(制作会社)  ただ一方で、この懇親会を契機に、業界は変わっていくと期待を寄せる声も少なくはない。
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懇親会なので、微に入り際に入りというわけ
でもなかったが、具体的な提案として紹介
されたのがこのような啓蒙活動。その効果
云々よりも、まずは共通の旗印を掲げまとま
ろうという業界の思いが伝わって来る。
「確かに足並みを揃えるのは難しいかもしれません。それでもとにかく、相まみえることのなかった各団体・メーカーが、一堂に会したことにこそ意義があるんだと思います。何ができるかはわからない。だけど、何かやらなきゃいけないという思いは、どの団体だろうと、どのメーカーだろうと同じです」(販売業者) 「せっかく汗水垂らして作った作品が、いとも簡単にコピー販売され、違法にアップロードされるのは悔しい。業界としては今後、アダルトだけでなく一般の動画・コンテンツに関わる企業・団体とも連携を取っていく予定です。違法行為に手を染めている人たちには、こうした会が開かれているということ、業界としてより一層厳しく対処していく決意を強めているということを、ぜひ知ってもらいたいですね」(メーカー)  違法コピーにより、年間数百億円の損失を被っていると目されているアダルト業界。知的財産の保護という水平線に乗り出す立派な“舟”は準備ができた。確実に最初のひと漕ぎは放たれた。あとは呉越がリズムよく舵を切り、櫂(かい)を操作できるかどうかがポイントだろう。  この航路にはきっと困難も待ち受けているはず。しかし「とにかく始めよう」「まとまろう」という今回の決意表明は、航路を明るく照らし出している。

「違法ダウンロードの刑事罰化」問題 15日金曜日にも審議なしで採決・成立か?

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 ネットの将来を破壊すると危惧されている「違法ダウンロードの刑事罰化」問題。その採決が、今週の15日(金)にも行われることが明らかになった。  これは、6月13日に衆議院第1議員会館で開催された「ウェブサービスとその利便性について考える勉強会」(主催:一般社団法人インターネットユーザー協会 MIAU)の席上で、日本共産党の宮本岳志衆院議員が明らかにしたもの。この勉強会は、刑事罰化の反対を前提に、著作権における「保護と利用のバランス」はどうあるべきかを考えることを趣旨としたものだ。  ここに出席した宮本議員は「明後日の文部審議会で、討論を行わず、他の著作権法改定案の審議終了後に、自公が修正案を提出し採決が取られる予定」だと発言した。  すでに自公は、刑事罰化を導入する著作権法の改定案を固めている。民主党では賛否が分かれるものの、刑事罰化導入に賛成する議員が優勢だ。  刑事罰化の導入がインターネットの利用にメリットを与えるものではないこと、またそれが、音楽業界の働きかけのみによって、文化庁の審議会も無視して議員立法の形で強引に導入されようとしていることは明らか。にもかかわらず、なんら審議が行われないまま採決がなされようとしている状況を、宮本議員は批判する。 「質疑終了後に修正案を提出し採決をするのではなく、堂々と委員会で議論すべき。しかし、民主党も自公の方針に流れ始めている」  集会後、宮本議員に話を聞いたところ 「消費税などの問題をめぐって民主党が分裂しようとしている状況。解散総選挙にでもなれば、票を減らすのは確実なのに、この上ネットユーザーの票まで減らすのか」  と指摘した。  同じく出席していた民主党の参議院議員は「民主党の自民党化が進んでいるが、私は刑事罰化には断固反対」と発言していたが、もはや民主党が共産党にまで心配されるほど末期的状況であることが見えてくる。  対して自公側で刑事罰化の導入を呼びかけているのは、池坊保子衆議院議員。そうした議員の意向を受けて、民主党・みんなの党・共産党にまで人脈を持ち、妥協点を探っているのが馳浩衆議院議員という構図である。  刑事罰化の導入は、まさにネットに繋がる端末を持っていれば、誰もが犯罪者扱いされてしまうようなもの。各国でも、法律の文面上は導入しているが運用を被害額が大きいものに限る、あるいは、収益を目的にしたものに限るとしている国がほとんど。あるいは論議の末に、導入をやめた国もある。そうした中で、なんら論議のないままに刑事罰化が成立してしまうのは、国民の利益にならない。  残された時間は少ないが、ネットユーザーが効果的な反対の声を届ける方法はあるのか? 「メールや電話などで声を届けるとよい。ただ“反対だ”というのでは逆効果。むしろ“今まで支持してきたがもう、あなたには投票しない”が政治家には有効」(ある国会議員)  集会は、平日日中にも関わらず30名あまりが参加。国会議員は、前出の宮本、森議員のほか、民主党の宮崎岳志衆議院議員、社民党の福島瑞穂参議院議員、たちあがれ日本の中山恭子参議院議員らが参加した。 (取材・文=昼間たかし)