※前回記事はこちら 『トヨタ、パナも嫌々? ルネサスの官民共同救済案に黄色信号』 デジタル家電の販売不振が、さらに不透明さを助長 経営再建中のルネサスエレクトロニクスに対して、官民投資ファンドの産業革新機構(INCJ。以下、機構)が、トヨタ自動車やパナソニックなどの国内企業と共同出資案を検討していることが明らかになった。 関係者の話によると、経産省は今回共同出資を検討中と報じられた企業以外にも、複数の企業へルネサス再建のための出資を打診したが、難色を示されたといわれる。 元凶は、マイコンと並ぶルネサスの主力製品であるシステムLSIだ。複数の機能をワンパッケージ化してデジタル家電の心臓部になる重要な半導体だが、日本メーカーのデジタル家電の販売不振で、市況回復の見込みが見えてこないのである。LSI事業は赤字が続いており、この事業の切り離しを模索するが、現時点ではメドが経っていない。「マイコンは重要だが、とてもではないが深入りしたくない」――それが各社の本音だ。 急場しのぎに過ぎず、年末には資金ショートの懸念も 結果、当初トヨタにも断られた経産省は、大株主3社の日立、三菱電機、NECにルネサス支援を再要請。資金が塩漬けになる可能性の高い出資は断られたが、計500億円の融資同等の支援をとりつけた。ただ、ルネサス社員の表情は暗い。「急場しのぎにすぎない。年末には資金がショートするのではとの噂が、社内では広がっている」と語る。 新たなスポンサー探しが急務の中、支援に手を挙げたのが、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)。これまでも米フリースケールセミコンダクターの再建にかかわるなど、半導体関連では広く知られる。KKRは1000億円出資の条件として、工場再編などのリストラや役員の総退陣を突きつけた。 米KKR登場で息を吹き返したルネサス再建 経産省と機構にしてみれば、KKRの動きはうれしい誤算だったに違いない。KKRが名乗りを上げたことで、ルネサス救済の「大義名分」ができたからだ。KKRはこれまでも再生後に株を手放してきた。ルネサス再生も同様のスキームが見込まれるが、国内を見渡しても、その引き受け手は見当たらない。つまり、外資への技術流出は必至だ。KKRの登場で「技術を守る」という旗を掲げられるようになったことで、「官民ファンドの機構を軸に、複数の企業からも出資を募る」という枠組みに至ったわけだ。 今後の焦点は、この枠組みが成立するかどうかだろう。まず、総退陣を突きつけられているルネサス首脳陣にしてみれば、まさに渡りに船であろう。「全員のクビをいきなり切るような真似は絶対にしない」(機構関係者)からだ。経産省や顧客が気にする「技術を国内にとどめる」という点でも意味があるだろう。 一方、今回の枠組みは、本来重視されるべき「ルネサスの再生」という点では、時計の針を戻す動きになりかねない。「既存のルネサスを取り巻くプレイヤーに、ルネサス再生の意思はあまり感じられない」(電機業界のアナリスト)のが現実だからだ。 大株主は、持て余していた株放出でひと段落? トヨタなど出資を打診されている企業は、競争力の肝となるマイコン技術の国外流出は避けたいところだが、「可能な限り、ルネサスとかかわり合いを持ちたくないのが本音」(金融機関)。以前、トヨタが出資を断ったことからも、それは明らかだ。KKRの出現で技術流出が現実味を帯びたので、出資を検討するだけ。少数出資にとどまる可能性が高く、経営に影響力を持つことは考えにくい。 また、現在の大株主である3社は、持て余していた株式を放出することに前向きという。「ようやく関係を切れる。あとはどれだけ手放せるか」と冗談めかす関係者もいるほどだ。 出資の軸となる機構も「ルネサス再生を、どの程度真剣に考えているかは不透明」(関係者)と語る。機構には金融機関やファンドの出身者が多く、「日本の産業の向上というよりは、自身のステップアップを考えている人間が多い」(同)。政府借り入れ枠1兆8000億円を使って「どれだけ目立った企業再編や買収を手がけられるかのみを考えているといっても過言ではない」(同)という。 そうした体質もあり、機構内でも、いくつものルネサス再生プランが錯綜しているという。ルネサス再建にはお荷物のシステムLSI事業を、パナソニックや富士通の同事業と統合する案も浮上している。一部では頓挫したとも報じられたが、現時点でも有力案であることは変わらない。製品の視点に立つか顧客の視点に立つかなどにより、いくつもの再生案が浮上しては消えているという。 いくつもの再生案が浮上しては消える~真剣に再建を考えている企業は皆無? 結局、出資候補企業、機構、現在の大株主3社のいずれもが、ルネサスの真の再生への関心は薄いといわざるを得ない。外部からの圧力は加わらず、ルネサスの行き詰まりを見せる経営体制が温存される可能性は極めて高いというわけだ。 ルネサスは、前述のように資金繰りが楽観視できる状態ではない。8月に全従業員の約3分の1の1万人超を削減するリストラ案を打ち出したが、具体的な工場閉鎖や売却の発表はなく、実効性を問う声も出ている。 「現体制の維持」が透けて見える機構案が実現すれば、ただでさえ停滞している改革が混沌に陥る可能性が高い。そうなれば、ルネサスの再生はさらに遠のいていくであろう。 (文=江田晃一/経済ジャーナリスト) ■おすすめ記事 「軽トラ一台分も」台風の後、路上に捨てられビニ傘は誰が片付ける? 絶対にしないはずだった!? ユニクロが世襲人事 B'z、CD売上たったの693枚! が証明した音楽業界の強さ? 「社長出身地の住人限定!?」 再生エネルギー関連詐欺の実態 フジテレビ・福原伸治氏に聞く「自己批評番組」の可能性ルネサスの官民共同買収案について報じる
9月22日付日経新聞。
急場しのぎ、関係各社は無関心…ルネサス官民共同救済案の内実
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急場しのぎ、関係各社は無関心…ルネサス官民共同救済案の内実 - Business Journal(10月1日)