
撮影=後藤秀二
誰がセンターマイクを挟んで立つ二人を予測しただろうか。「THE MANZAI」決勝進出で漫才師としての姿を強く印象づけたレイザーラモン。コンビとして誰よりも激しい紆余曲折を味わった二人はなぜ漫才にたどり着き、そしてどんな未来を見据えているのか。ルミネ終わりの二人を直撃し、新生レイザーラモンの決意表明を聞いた。
――2年連続認定漫才師、そして2013年は決勝進出。「THE MANZAI」の前と後では、環境もだいぶ変わりましたか?
RG まず、ネタをまったくやってなかったですね、2年前は。
HG あるある言う、ハードゲイやる、みたいな。コンビながら、ピンが二人おるという感じでやってましたね。
RG 認定漫才師になってから、ネタで笑いを取るというのが少しずつできてきまして。
HG 関西の漫才番組に呼ばれるようになったんです。17年やってきて初めてですよ。
RG やっと普通の芸人活動ができているという感じですかね。
――「THE MANZAI」の時は、レイザーラモンさんの愛され感が視聴者にも伝わってきました。
RG それは、レイザーラモンが特殊な生い立ちをしていることにほかなりません。まずHGがバーンといって、俺が完全に置いていかれて、その後、HGがプロレスで大けがして……コンビとして「かわいそう」が、一つのキーワードになっていますから。
HG だから諸先輩方が助けたがるというか、なんとかコイツらを面白くしてやろうと。いつも助け舟を出してくれるんです。
RG 前に出ることをやめなかったっていうのは、あるのかもしれないですね。
HG コンビで一人がドーンてなったら、たいがい仲悪くなるか、そのまま解散してしまうかなんですね。しかしRGさんは、ブレイクしたHGをパクるというとんでもないことをしだした。それから「あるある」ですよ。お笑いのセオリーとはまったく別なやり方で、ここまできました。
――それも、すべてお二人の頭にあったストーリーなのかなって思うくらい、自然です。
HG プロレス的ではありますね。
RG たとえば猪木さんは「スキャンダルを飯にしろ」ってことをよくおっしゃてまして、猪木VSモハメド・アリ戦ですごい借金を背負っても、逆にそれを売りにしてましたから。転んでも、ただでは起きない。プロレス好きが、HGをパクってる僕を見て「敵が出てきた!」みたいな感じで受け入れてくれたんですね。
HG ベビー(善玉)とヒール(悪役)。
RG 常にそれは僕らの中にある。だから漫才をやろうってなった時も、「解散するかも」と打ち出しておいて、自分たちを追い込んで、お客さんには乗っかってもらった。プロレス的な運びを意識しました。
――二人の立場や関係性がどんどん変わって目が離せなくて、最終的には応援している。
RG その辺が、僕らが“ハッスルイズム”を継いでいるところだと思うんですけど、記者会見でも旬な人の話題を出して紙面を獲りにいくみたいなことを毎回やってて。話題になりたい。紙面を飾りたい。それが、ハッスルイズムです。
――プロレスだったらリング、漫才だったら舞台、どちらも「神聖な場」というイメージがありますが、それぞれのガチなファンから中傷されることはなかったですか?
HG 正直、プロレスファンの中には、当初「なんやお前ら」っていう空気がありましたけど、僕らとにかくプロレスが好きで真剣に練習して試合して、RGもやられキャラで頑張って、そうやってるうちに少しずつ認められていった感じがしますね。天龍さんも、ある時を境に「頑張ってるな」って話しかけてくれるようになりましたし。
RG どの世界でも、真面目にやってるのが分かれば、受け入れてもらえると思います。僕らも、これは漫才じゃないとか言われたり、HGが素顔で出てザワザワしたままネタに入れないこともあったんですけど、2年かけて、メディアも巻き込んで「俺たちは漫才に真剣です」って訴えて。一時は「ザ・漫才うけ太わろ太」に改名しようとまでしました。だから「THE MANZAI」の決勝後に「やっぱりあれ漫才じゃない」って言われたの、悔しかったですもん。
HG 今年は、漫才協会の門を叩こうかという話も。
――本当ですか!?
RG 今はまだ吉本というホームでしかやってないので、ふらっと遊びに来た浅草のお客さんを笑わせることができるか挑戦したいですね。
――では、ナイツがライバル?
RG ライバルというより、憧れです。ナイツは今年のお正月の漫才番組で、もう紅白のネタをやっていたんですよ! なんてカッコいいんだ!
HG 芸風からは、まったく想像できない発言ですね(笑)。最近のRGさんは漫才にアツすぎて、完全にキャラを見失ってます。
RG 去年「頑張れば、もしかしたら『THE MANZAI』の決勝行けるかも」って思った出来事があったんです。営業で中川家さんと一緒になりまして、その時に「あの雅楽のネタおもろいな」って言ってくれたんですよ。決勝まで頑張ってみようと思ったのは、その一言があったからかもしれません。
――漫才への真剣な気持ちが、どんどん周囲を巻き込んでいったんですね。
RG これもまたプロレス的なんですけど、“新日本プロレスと東スポ”ならぬ“レイザーラモンと「お笑いナタリー」”という形でご協力いただきまして。僕らなんかに力を入れてもらって、申し訳ない限りですが。パンサーを特集したほうが、リツイート数は上がるというのに。
HG だから、僕の裸の写真(※ゲイ雑誌「バディ」2014年2月号表紙)入りの記事をナタリーさんで配信して、過去最高のリツイート数を記録したと。そこで恩返しをさせていただいて。
RG 周りを巻き込むというのは、怒られない空間を広げていくっていうことなんですね。楽屋でウケている感じを、ずっと広げていければと思っています。究極的には、日本全国が僕らの楽屋になればいい。楽屋だったら怒られないから。
――すごい。そのままタイトルになりそうです(笑)。
RG 「日本を楽屋に」ですよ。
HG ンフフ。
RG プロ意識の欠如と言われれば、それまでですが(笑)。
――でも間違いなく、2013年の「THE MANZAI」はレイザーラモンさんが持っていってしまったと思います。
HG いやいやいや……相方がトップバッターなんか取るから。
RG どうせあそこは空きますし。みんなが嫌がることを僕らがやることによって、大会自体が盛り上がればいいんですよ。結果、ゼロ票ということになりましたが。
HG 自分らの試合よりも興行を盛り上げたいという、プロレス的な考え方はあるかもしれませんね。
――でも、ゼロ票だったことは悔しかったと?
RG その時、初めて思いました。それまでは盛り上がれとか騒がしくしてやれとか考えていたのに、あそこで0点になって「あぁ負けたんや」と。
HG 意外でしたね。普段何やっても落ち込まない、反省しない男でおなじみのRGが。
RG ほかの人とはまったく違う漫才をしたと思っていたのに、「漫才じゃない」って言われて。でも、帰って番組の録画見たら「そりゃそやろな」って(笑)。
HG 愛のあるイジり方をしてくださったんですよ。

――レイザーラモンさんにとって、お笑いのゴールはどこですか?
RG それはいっぱいありますね。「THE MANZAI」のゴールがあって、そこをゴールしたらまた別のゴールがあって。武藤(敬司)さんが言っていたのは「プロレスはゴールのないマラソンだ」と。
HG 毎回、こうすればよかった、ああすればよかったが見つかる。年を取ったら取ったなりの漫才ができますし。
――正解がないと。
RG オール巨人師匠に「漫才という大変な道にきてくれて、ありがとな」って言われた時、すごいところに足を踏み入れたんやなと思いました。
――漫才という大変な挑戦を支えたのは、お二人のコンビとしての絆の深さだと思うのですが、特にレイザーラモンさんはピンとして片方がブレイクしたり、複雑な関係を強いられてきたと思います。でも「レイザーラモン」で居続けた、その理由はなんですか?
RG やっぱりバッファロー吾郎軍団にいたことが大きかったですね。バッファロー吾郎さんにケンコバさんに小薮(千豊)さん……軍団の皆さんが僕らをかわいがってくれて、新キャラができたら先輩方のイベントに出してもらって。全然完成してないのに(笑)。僕らコンビだけでいて、どちらかが売れたら「なんやアイツ」となっていたかもしれません。だけど、僕らの周りにはいつも兄さんたちがいて、そんな兄さんたちに「なんだ、アイツ器ちっちぇえな」と思われたくなかった(笑)。
――それで、今度はRGさんが、あるあるでブレイクして。
RG よく言われるのは、僕のあるあるネタを一番笑ってるのはHGやって。年末にHGが(EXILE弟分のGENERATIONS)関口メンディーさんのモノマネをした時も、やっぱり僕が一番笑ってた。お互いが一番笑うから自信を持っちゃう。日本全国楽屋なんですけど、その核というか、始まりは相方を笑わすことなんですよ。
HG めっちゃかっこいいこと言ってる(笑)。
RG コントでも、お互いが知らない設定を持ち込むことはない。お互いの共通体験、お互いが知ってる変な人……それを必ず題材にしてますから。
HG あるあるの選曲もバツグンなんですよ。渡辺美里とか佐野元春とかチューブとか、ほんまちょうどいい。
――こんなにお互い目を合わせて話す芸人さんも、珍しいと思います。
HG 漫才師あるあるなんですけど、コンビで目も合わさへん、楽屋も別々っていう時期を経て、めっちゃ仲が良くなるっていう。僕らは、それをぎゅっとした感じだと思います。もちろん目合わさん時期もありましたけど、今は誰よりも相方を笑わせたい。
――今年は、テレビにはどのようにアプローチされますか? 今バラエティはネタよりトーク力が優先されていますよね。
RG トーク力って、実は誰でも持ってるんですよ。だけど、緊張感が先に立ってしまうと発揮できなくなってしまう。僕らも相方と普通にしゃべる感じでテレビに出られたら、トークも面白くなると思うのですが(笑)。昔、吉本新喜劇座長の川畑(泰史)さんに「テレビはご褒美や」って言われたことがありまして。
HG 大阪時代なんて、テレビ出られるて言ったら、みんなに触れ回ったもんな。
RG DonDokoDonの山口(智充)さんなんか毎月ライブやって新ネタおろして、そのほんの一部がテレビで出てる。千原兄弟さんもそうです。だからテレビがどうのというより、「漫才でお客さんを笑わす」「楽屋で皆さんを笑わす」をちゃんとやっていれば、そのご褒美でテレビに出られると僕は思ってます。
HG 僕はまだまだ緊張してるし、肩に力が入っちゃう。それまでキャラに乗っかってやってきましたからね。銀行強盗が目出し帽を脱いだ状態なので、今は。

――RGさんのハートの強さを見習いたいと?
HG RGはハートが強いってよく言われますけど、僕はそんなに簡単な言葉じゃないような気がします。よく凹んだりもしますしね。
RG 僕は過保護に育てられてるだけ。前に出ないと先輩方に怒られると思ってるから、新キャラをとにかくやる、隙があったらあるあるを歌う。逆に言うと、ガラスのハートなんです。皆さんと、ちょっと意識が違うだけです。
HG 普通、ネタを思いついたら、自分の中で一旦消化しようとするじゃないですか。このキャラやったらどうなんねん、こっからどうオトしていくねんとか。それを考えずに思い付いたことをやるの、スゴイですよ。
――今まで誰も通ったことのない道を進んできたお二人ですが、これからお笑い界で成し遂げたいことはなんでしょうか?
RG お笑い芸人って、ミュージシャンや俳優から比べると、世間から若干下に見られてるじゃないですか。僕らのほうが偉いんだっていうことではないんですけど、僕は芸人さんが一番すごいと思ってるので、もっと正当に見てもらえないかなとは思っていますね。
HG 昔よりは、だいぶ評価されているとは思いますけど。
RG 一回テレビでやったネタが次からウケなくなるとか、すごい儚いモノなんですよ、漫才って。ノンスタイルだって、M-1取った時のネタをまだ一回もやってない。巨人師匠が言ってた「大変な世界」っていうのは、そういうこともあると思います。
――何年もかけて磨いてきたものが、一瞬で消費されてしまう。
RG これが歌なら、その後もずっと残るじゃないですか。漫才やコントに関しても、そういう文化になれば。庶民の余興から始まって、徐々に伝統芸能になった歌舞伎のように、漫才にも革命が起きればいいと思うんです。芸術になっちゃいけないけど、格は上げたいと思います。
HG それを、市川AB蔵が言うという(笑)。
(取材・文=西澤千央)