
“一発屋芸人”ヒロシがカラオケ喫茶開店へ……芸人たちの「憩いの場」となるか


モテない、金ない、華もない......負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第33回のゲストは、DVD『ドキュメンタリーオブヒロシ~空白の1500日~』が絶賛発売中のヒロシさんです!
[今回のお悩み]
「相談に答えてほしいのですが……」
──わーヒロシさんだ! 本日はよろしくお願いいたします!
ヒ すいません。はい。すいません。
──……なんで謝るんですか?
ヒ いや、謝っとけば間違いないんで……。
──……。えっと、うちは親子そろってヒロシさんのファンで、ヒロシさんと対談させてもらえるって言ったら母親が凄く喜んで、デコメで「よろしく伝えて(はぁと)」って言ってました(笑)。
ヒ お母さんでしょ? よく言われるんですよ、「お母さんがファンです」とか「おばあちゃんがヒロシのネタに反応するんです」とか……。最近、久しぶりに本を出したんですけど、読書カードってのが挟んであるじゃないですか? それを見てたら、全部60オーバーなんですよ。若い人でも40代。若い人で「私がファンなんです」って人、あんまりいないんですよね。タレントさんとかでも、人づてに「この子、ヒロシのファンなんだってよ~」って聞いてたのに、現場で会ったら「あ、どうも」みたいな……なんなんでしょう?
――え? いや、あの、えーと、私、ファンです……よ? 気を取り直して、ヒロシさんの新しいDVD『ドキュメンタリーオブヒロシ~空白の1500日~』(コンテンツリーグ)はすごい内容でしたね~! ただ……発売がたった200枚っていうのは本当なんですか?
ヒ 愕然としましたね……。作ったのはもっと多いんですけど、実際に店頭に並んだのは200枚だって。ぼく、本とか出すときは、「だいたいどれくらい売ればトントンになるんですか?」って聞いて、そこを目指すんですけど、一番最初の打ち合わせで「1,500枚」って言われて、「じゃ、1,500枚売れば元も取って、みなさんにギャラを払えるレベルか~」と思ってたのに、200枚って……。
──どんだけ売れてないアイドルでもその数字はあり得ないですよ! だってヒロシさんの『ヒロシです。』(単行本/扶桑社/2004年)は30万部ですよ!?
ヒ そう。DVDだと『ヒロシ会』(ユニバーサルミュージック/05年)が4万5,000枚くらいかな。それで、これが200枚(笑)。
──笑ってないで、怒ったほうがいいですよ!
ヒ 怒ってもね、しょうがないよね。
──しかも発売イベントはスタッフが会場を取り忘れて、場所が……土浦でしたっけ?
ヒ そう、土浦のイオンモール。よくご存知で。で、「とりあえず場所は押さえたから行ってくれ」って言われて、バタバタでチケット取って行ったんですけど、振り返って考えたら、ぼく、交通費だけで7,000円くらい使ってるんですよ。このDVDは3,000円なんで、そのお金で2枚買っほうがいいですよ。どうせぼくには1円も入ってこないだろうし……。そのイオンモールでも、ぼく、ネタを2回やってね、サイン会もやって、80枚も売ったんですよ? 現物がないのに。
──えっ、現物ないんですか? 発売イベントなのに?
ヒ そうですよ! 「どっかにないんですか?」って聞いたら「静岡の倉庫にしかない」って……おかしいでしょ!?
──DVDないのに、何にサインするんですか?
ヒ えっとね、小さいサイン色紙を買って行ったの。さらにそこで買ってくれたお客さんは、送料の分、500円多く払わなきゃいけないんですよ? ほんと申し訳なくてね……。
──アマゾンで買った方が安いですね……。
ヒ ほんとにそうなの……。ぼく、Twitterとかブログをやってるんですけど、コメントを見たら、やっぱり「売ってねぇんだけど?」っていうのばっかりで、「買いました!」っていうのが全然ないんだもの! 最初はそれに「申し訳ありません」って返事してたけど、だんだん「なんでこんなことやってるんだ」って思ってきちゃって……。
──なぜかヒロシさんがすごい謝ってましたね。
ヒ そう。なんで俺が謝んなきゃいけないんだろう……。
──発売後までネタになる話が満載ですね!
ヒ そんなつもりは全然ないのに……。やっぱりこれはドカンと売って、「ヒロシ、やっぱり作ったら売れるんだな!」とか、そういう風に思われたかった……。
──でも、DVD自体はすごくいいドキュメンタリーでしたよね。お笑いブームの時に密着していたスタッフが、ブームが去っていくとともに密着をやめて、ヒロシさんの立場がどんどん危うくなっていく様子とか、切なすぎてお腹が痛くなりましたもん。こういうドキュメンタリーって、どれくらい台本があるものなんですか?
ヒ 台本っていうのはほとんどなくて、大まかなことしか決めてないですよ。あとの流れは全部アドリブで。
──離れていくドキュメントのスタッフに「前にNG出した九州の実家取材の話ですけど、アレ、やっぱりOKなんで!」って食い下がる様子とか、AVの人がだんだんNG事項を減らしていくのってこういう感じなのかな、と感慨深かったです……。でも一番ズーンときたのは、九州の実家取材のために自分でわざわざレンタカーを借りて、その車内でヒロシさんがスタッフにめちゃめちゃ気を使っておどけて、それでもやっぱり無視されたりして……もう、自分の学生時代を見ているようで……!
ヒ はははっ! ああー伝わってる、ちゃんと伝わってるんだねぇ……。
──沈黙を恐れてはしゃぐ感じとか、学生時代に間違ってレベルの高いグループに入っちゃって、がんばって盛り上げるけど、やっぱり会話に入れてもらえない、みたいな思い出が蘇って、胃がキリキリしました。
ヒ そうそうそう! コンパとか行ってもしゃべれなくて、しゃべらなきゃと思って下ネタ言ってスベる、みたいな。ワンランク上に行こうとしてね……。でも、小明さんってそんな人ですか? 中学高校のときも一軍だった女の人みたいに見えるけど。
──ありがとうございます、中学をひきこもりで過ごさせていただきました。
ヒ あ~、そうですか~(うれしそうに)。
──それで高校からがんばり始めて、調子に乗ってグラビアを始めて、売れなくて、こじらせ続けて、現状です。
ヒ なるほどね~。そっかそっか~(すごくうれしそうに)。
──このドキュメンタリーは、ヒロシさんの自叙伝の『沈黙の轍』(単行本/08年/ジュリアン)を読んでから見ると余計に辛いですよね。炭鉱の町で純粋に生きていた健一少年が、どうしてこんなことに……と。
ヒ えー! 読んだんですか? ありがとうございます!
──文章がお上手でびっくりしました、すごくちゃんとした短編集ですよね。
ヒ おー! おー! おー! だんだん気持ちよくなってきましたよ! でも、そんなこと言って帰りにエレベーター乗った後に舌をぺろっと出すんじゃないでしょうね? 「言ってやった(笑)」みたいに言うんじゃないでしょうね? もう人を信じられないから、俺は。危うく気持ちよくなったけど、もう気持ちよくなりませんから。騙されませんから。
──なんでそんなに人を信じられないんですか! でも、本当にこういう文才も、世間の人にいまいち届いていない感じで残念ですよね。
ヒ そう。だから引き出せないんですよ、事務所が。俺はいろいろ提示するけど、「それはない」とか言われるから、辞めてやろうと思ってんの。ははは。
──ヤケになっている! この『沈黙の轍』もご自分で書かれて、ご自分で持ち込みに行かれたとか。
ヒ そうですよ、全部そうです! 打ち合わせも全部ひとりで行って、編集の人を家まで車で送ったりして……。その『沈黙の轍』の表紙は実家がある炭鉱の町で撮ったんですけど、まずスタッフのみんなで福岡まで飛行機で行って、そこから俺が自分で車を運転してみんなを地元まで連れて行きましたから。
──うわ! リアル『ドキュメンタリーオブヒロシ』! ちなみにこの本はどれくらい売れたんですか?
ヒ これはね、2万5,000部て聞いてたんですけど、おとといくらいに、「実は1万5,000部しかはけてなくて、1万部在庫が残ってる」っていうのを聞いて……。
──でも、出版不況の中、それだけいったらかなり立派ですよ! 前の『ヒロシです。』とその続編もあわせたら、全部でどれくらい売れたんですかね?
ヒ えっとね、あわせて50万部くらいかな。
──家が建つくらいの額じゃないですか!!
ヒ そうですね、普通に考えて、小さい家なら建ちますね。けどね、持って行くから。事務所が。税金も持って行くから。
──ああ……。なんか、言葉を失います。えっと、ヒロシさんは、昔39万円の家賃の部屋に住んでいたと聞きますが、今もやっぱりそれなりに良いところにお住まいなんですよね?
ヒ 今は4万3,000円。
──嘘でしょ!?
ヒ いとこの家に住んでます。もう、ぼくね、贅沢いらないんですよ。ほんとは千葉に家を買おうと思ったけど、実際に見てみたらすごい山の中でね~。これはひとりじゃ鬱がひどくなると思って。
──鬱は悪化しますよね。私、今都心を離れて窓からの景色が畑っていう戸建てに住んでるんですけど、都心で感じる孤独と、人がいないところで感じる孤独は桁違いです。
ヒ でた! マジですか!? 思い切ったことやりますね~!
──とりあえず、寝酒が進みます。あは……。
ヒ え~? そんなところ行こうと思わないですもん~! ちょっとした旅行になりますもんねぇ(やっぱりうれしそうに)。
──ええ……。
ヒ ぼくもねぇ、そういう場所に家を借りてやっていこうかと思いましたけど、そこまでの勇気がなくて、結局川崎の一軒家を借りたんです。二階建てで屋上があって、ぼくはそこで家庭菜園なんか楽しめると思って借りたんですけどね、そのー、ひとりで一軒家って、すごい苦痛だなって思いましたね。「屋上がいいな~」と思って借りたんですけど、階段で行くからキツイんですよ。だから、結局は二階の一部屋を半分に仕切って、わざわざ狭いスペースを作ってそこだけで生活してました。
──私も見事に一部屋の隅しか使ってないです。
ヒ そうでしょー? ただぼくの場合、ずっと狭い場所に住んでたから、一回は良いところに住みたいと思って、家賃39万の東京タワーが見える部屋を不動産屋に乗せられて借りちゃったんですけど、実際住んだら、「いらねえな……」って。
──でも、そんな部屋だったら女性も連れ込み放題ですね!
ヒ そのときは超忙しくて、39万払ってもほとんど家に帰れてないんですよ。意味ないんです。
──ホスト時代、冴神剣さんだった頃に住めればもろもろうまくいきそうなのに、都合良くいなかいものですね~。ホスト時代は公園で暮らしてたんですよね?
ヒ 公園には3週間くらい住みましたね。完全歩合で、ぜんぜん指名がなかったので、基本的に給料がないんですよ。月曜から土曜までホストやって、えー……だいたい月に3万円くらいだったかな、給料。それでお金が足りないから日曜はコンビニでバイトしてましたもん。そんなんじゃ、どんな安いところでも借してもらえないから、2年間くらい家がなかったですね。
──その当時はもう芸人さんだったんですよね、どんなお仕事をされてたんですか?
ヒ 当時は別の事務所に所属していて、コンビで売れようと思っていたから、相方がいたんです。で、相方が辞めるって言いだして……。それから滅多に受からないオーディションに受かったんです。内容は教えてもらえなかったんですけど、「とりあえず2~3日分の着替えだけ持ってこい」って言われて、変なワゴン車に乗せられて、埼玉のえらい奥の方に連れて行かれて、「あそこの家を訪ねなさい」って言われて行ったら土建屋の親父が「遅い! 着替えろ!」って怒ってて、そのままとび職の現場に連れて行かれて、そこで住み込みで働いて……。
──……え? すみません、それ芸人さんの仕事ですよね?
ヒ そういう企画だったみたい……。一応テレビの特番なんですけど、2カ月間しっかり土木作業をやって働いて、給料振り込まれてるの見たら、2万5,000円。もう携帯も止められてるし……。
──テレビの企画にかこつけて、タコ部屋で働かされたような……。でもやっぱりテレビですし、放送後の反響は?
ヒ なーんもない。
──……。
ヒ (失笑)。
──……えっと! 音楽活動の話とかも聞かせてもらっていいですか!? ヒロシさんは学生時代にコピーバンドをやられてたんですよね、何のコピーバンドをされてたんですか?
ヒ なんだろ、結局、流行ってるのをやったんで、最初はXがまだメジャーにいく前のCDをコピーしたりとか、BOφWYとか、ZIGGYとか、そういうのをやってました。
──バンドブーム世代ですし、バンドってモテますよね。
ヒ そうなんです。だからそれ目当てでやったんです。
──でしょ? モテるはずなんです。なので、いまいち、そのヒロシさんのひねくれた根っこが見えなくて。あの、青春時代を謳歌できた人って……。
ヒ ひねくれない、でしょ? 学生時代にバンドやってるって、一見、謳歌してるように見えるでしょ? でも実は何も謳歌してないんですよ。バンドブームって言ったって、モテない人が作った童貞バンドなんか何も潤わないよ。みんな童貞なんだもん。やっぱ、人気あるバンドはみんな彼女がいてチヤホヤされるし、バンドでもそこにもう確実な格差があるもん。
──あわわ、でも今でもかなりまじめに続けられてますし、人気なんじゃないですか?
ヒ 結局ぼくのファンしか来ないから、何人か残存している、コアな8人くらいが来てくれるくらいです。
──お笑いとバンドって、モテるツートップですけれども。
ヒ そうですよね、うふふ。……あれ? なんで? おかしいですよ。なんでモテないんですか?
──なんででしょう……。あの、試しにご自分からガツガツいかれてみては?
ヒ 自分からいっても気に入られないから、どうしようもないよね。だって、ネタにもしてるけど、みんなカゼ引くんですよ、約束してる日に。
──私もカゼひいたことあります(笑)。
ヒ カゼひくでしょ? ひいていないのに。
──前日の夜になると急にひくんですよ、なぜなんでしょうね。
ヒ そうでしょ? それですよ。女の人と一生会えないんじゃないかと思うもん。あと、「犬に餌あげなきゃいけない」とか、「友達が泣いてるから慰めなきゃいけない」とかさー、よくわかんないこと言ってさー。
──そこから生まれたのか分からないですけど、「コンドームが減りません」って言うネタが好きです。
ヒ コンドームが減らないんですよ……! ドンキホーテでダース買いしたのに、下手したらまだ封もあけてないっていう……。
──私も4~5年前に海外に行くとき、友達から「海外は危ないから!」って持たされたコンドームが、先日そのままの姿で出てきましたよ。海外も国内もぜんぜん危なくなかったです。ネタってかなり実話が多いんですね……。
ヒ だいたいそうですよ、分かりやすくはしてますけど。
──売れた後も、なおひねくれて続けているのはすごいですね、どこかで満足してしまいそうなのに!
ヒ モテないからですよ、単純に。
──『ヒロシ会』のDVDでは観客の女の人が「ヒロシさんかわいかったですー」って頬赤らめてましたよぅ。
ヒ 女性ってブームに弱いじゃないですか。現にもういなくなってるじゃないですか。今、だーれもいないじゃないですか。この『ヒロシ会』は一日だけやった単独ライブを収録したものなんですけど、恵比寿エコー劇場で、もう満員で入れないのに「入れろ! 入れろ!」って外でケンカが起きて、救急車で女性がひとり運ばれてるんですよ?
──ギャー! すっごい!
ヒ いま来りゃあ普通に入れるのにね? いまぼくがやってるバンドなんか、普通に来て普通にしゃべってるんですから、全然救急車呼ばなくてもいいのに、来ないでしょ? だから、「いまブームだから」っていう理由で来てるんですよ。そのときからそう思ってたから、もう一切信用できないですよね。
──ヒロシさんの「一生応援します」ってファンレターに書いてた人が一切いなくなったけど、みんな死んだんでしょうか……ってネタ、ゲラゲラ笑いましたけど、実話と思うと悲しいですね。
ヒ そうですよ!「一生」「死ぬまで」って言ってたの来ないんだから、死んだんだなって。死んでるんですよ、みんな。
──なんか……大変な人生ですね。
ヒ ほんとですよ。普通の人がぼくと同じ経験してきてたらね、どっかで自殺してますよ。
──父親が炭鉱で働いてる時点で、ちょっとこう、背負うものがありますもんね。
ヒ あるでしょ? 炭鉱ってきいて絵が浮かぶでしょ? なんかその風情が。
──うちの父親は炭鉱じゃないんですけど、地下鉄作業員の下請けの下請けで……。
ヒ ああっ、似たようなもんだよねぇ(うれしそう)。
──しかもリアルにそこをリストラされてるところとかを見てしまって、子供心に複雑でしたよ。ヒロシさんは、ご家族とは仲いい方ですか?
ヒ えっと、ぼく弟がいるんですけど、20数年話してないですね。会ってないです。
──あはは! 上京から一切連絡とってない感じ!
ヒ そうそう。こないだ実家に帰ったら知らない女の子がいて、「誰?」って聞いたら弟の子どもで、もう小学校4年生だって。それでぼくは弟の娘に人見知りして……しばらく無言でいたら「おじちゃん、しゃべんないんですね」ってボソって言われて……。
──子どもに敬語を使われるってのもまた妙に辛いですよね、いっそバカな子どもだったらよかったのに……。
ヒ そうなんですよね、ワーッ! って来てくれればまだ対応できたかもしれないけど、「しゃべんないんですね」って言われたら、もうたまらなくなって家を出ようとしたら、「おじちゃん、また遊びに行くんですか?」って言われて……会話はその二言だけでしたね。はぁ。
――あ、あはは……。あの、なんていうか、ヒロシさんは、テレビとインタビューではしゃべりが微妙にちがうんですね。
ヒ そうなんですよ……! ぼく、テレビ出ると緊張するんですよ、華やかでおしゃべり達者な人たちが並んる中になんて入って行けないじゃないですか? 打ち合わせだったらしゃべれるんです。けど、本番になったら黙って座ってるだけ。たまに振られて「ヒロシです……」って言うだけなんですよ。
──なんかこう、えーと、残念ですね……。
ヒ 残念なんですよ……。小学校のとき、クラスで「はい! はい!」って手を挙げるタイプじゃなかったでしょ?
──はい。できるだけ先生と目を合わせないようにしてました。
ヒ ね? でも、そこで「はい! はい!」って言わなきゃいけないんですよ、テレビに出たら。前へ前へ行かないと……!
──もう、ヒロシさんがひな壇に座ってるのが奇跡のように思えてきました。確かに、みんなと一緒に立ち上がって「ちょっとちょっとー!」って言ってるヒロシさんは想像がつきません。
ヒ そう、言えないんですよ。でも言わなきゃっていう、もやもやっとした感じ。もう、「ああああああああああ!」って言いそうになるもん。画面上では、だまーってるだけに見えるけど、ぼくは発狂しそうになっている。「あああああああああああ!」って言いたくなるのを我慢して、じーっとしてるんです。
──思ってたよりずっとギリギリな精神状態でテレビに出られてたんですね……。でも、ヒロシさんの著書には、よく後書きの部分にモテない人や報われない人生を歩んでいる人への暖かいメッセージが書かれているじゃないですか。あれ、泣けるんですよ。ヒロシさんのネガティブなネタに、そんな熱い想いが込められていたと気づいて、ハッとします。
ヒ そうなんです。そういうのはなかなか伝わりづらいけどね。ぼく、いちばん悔しいのは、中学生とかで自殺しちゃう人いるでしょ? そういうの、いたたまれなくてねぇ。いじめてるやつなんて、絶対たいしたことないのに、そのときは大きな存在じゃないですか? 学校の先生もたいしたことないのに偉そうに言うから、「俺が悪いのかな?」って思うかもしれない。けど、絶対そんなことはないんだよっていうのを伝えていきたいなって。でも、ぼく自身がバカにされてる存在だから、それはなかなか伝わんない。だから、本にちょっとだけそういうのを入れたりとかね。
──今まで何の気なしに笑ってた自分が恥ずかしいですよ。『ヒロシです。華も嵐も乗り越えて』(東邦出版)に書いてあった、「九九が覚えられなくて教室に残されて、人よりも劣ってる欠陥人間なんだっていう気持ちをずっと引きずってる」っていうの、すごくわかります。私もずっと給食が食べ終わらなくておもらししそうになったり、いくら残って練習しても、ひとりだけ逆上がりができなかったり……。
ヒ ねー。でもねー、逆上がりなんかできなくたってね、金儲けはいくらでもできるんですよ。でも、そのときの子どもには、それがすべてじゃないですか。逆上がりができたほうがモテるわけじゃないですか。足が速いほうがモテるわけじゃないですか。でも、いろんな才能があるわけじゃないですか。例えば写真を撮る才能があっても、小学校でそんな授業なんかないし、それだけじゃない、いろんな商売があるってことを知ってもらいたいですよね。だってこうやって愚痴言って金もらう仕事も、作ったわけですから、ぼくが。ずっと愚痴言い続けて。
──本当ですね。なんだか思いもよらず良い言葉をいただきました。ありがとうございます!
ヒ そうでしょ。あと、メッセージとか発信してると、なんか、ちょっとかっこいいじゃない。モテそうじゃない。ちょっと尾崎豊っぽくて、ふふふ! 「こういう一面もあるのね、ヒロシちゃん」って思われたらいいな、と思って(笑)。
──あっぶな! まんまと手中にハマるところでした! でも、この『ヒロシです。』に書いてある「マイナス要素を抱えながらも、絶対にモテてやろうと思ってます。だから、あなたも諦めないで」っていうくだりは、すごく希望になりますよ。ヒロシさん、絶対モテてくださいね!!
ヒ そんなん言いながら、やっぱりモテてはないんですけども、ただ、あのー……実家に帰ってね、同級生とかと会うとね、当時イケメンって言われてた人たちが、どんどん劣化してるんですよ(笑)。ぼくは学生の時に超くやしい思いしてるから、そういう一軍の男子たちがハゲてたりしてると、もう、たまらない幸福感に包まれて……(満面の笑み)!
──また、地元にいる人たちって、ちゃんと働いたり子どもを育てたりで忙しいから、外見的に年をとるのが早い感じがしますよね。
ヒ そう! ふはははは! 早いんですよー! そうそう、こないだね、たまたまテレビでぼくの地元までロケに行ったんです。そしたらそこの観光協会かなんかで働いてる作業服の人が、「斉藤くん」って、ぼくの本名を呼んできてね、話聞いたら高校んときにヤリまくってた男で、「チッ」と思って終始覚えてないふりをしてやりましたね、ふははは! たまんなかったなアレは! 他にも「俺だよ、なんとかだよ」って言われて、「あ~あいつか」って分かっても気づかないふりをしますよ。一瞬「誰だっけ?」って間を空けてから、「あ~!」ってね。
──「当時の自分だって、お前なんて別に眼中になかったから」っていう強がり!
ヒ そうそう、それがぼくの復讐です。たまんないです。今すごい幸せです。
──幸せが、暗い……! ヒロシさんは普通に職につこうと思ったことはないんですか?
ヒ こういう仕事する人って、たぶん、普通の生活できない人たちでしょ? ぼくも一回だけサラリーマンになったんですけど、1カ月目で「辞めさせてくれ」って言いに行ったくらいだから、耐えられなかったんです。サラリーマンに。
──ちなみに、どういう仕事内容だったんですか?
ヒ 保険を売る仕事です。
──またずいぶん社交性の求められるものを!
ヒ そう、知らないところにいっぱい電話しなきゃいけない。1カ月で心が折れて、出勤しないで家で寝てたんですけど、家に偉い人がきて、「おめえ何やってんだ!」って起こされて、「ああっ」って……。「せめて半年はやりなさい」って言われて、半年やって辞めました。
──さっきから他人とは思えないエピソードばかりです。性別と時空を超えて、すごく共感をしています。
ヒ やっぱりねぇ、そういう人って話があいますよねぇ。だから、ダメなスパイラルがずーっと続くわけですよ。ぼくも、暗くてB型の人とよく話が合うからね。
──うわ、私、暗くてB型です……!
ヒ そうでしょ(笑)? で、そういう人とばっか接してると、「こっちの思考が王道だ」って勘違いするようになるから、よくないんですよ。
──そうなんですよね。たまに明るい人たちと話すと、「うわ、自分ってゴミ」と実感して落ち込んだりします。
ヒ そうそう。でもこっち側にいると、「やっぱおかしいよねー?」「あんなところであんなカラオケ歌うのおかしいよねー?」って。全然おかしくないんだけど、「わかるわかるー!」ってなるわけですよ、だから良くないんですよ。
――わああ、私だ、私がここにいる! 私はもう本当にますますヒロシさん大好きですよ!
ヒ ほんとですか? なんだかうれしいなぁ。
──そんなところで、ちょっと私の相談に答えてほしいんですけどもー。
ヒ 無理ですよー。こっちが答えてもらいたいくらいですー。
──(無視して)私もけっこうネガティブなんですけど、やっぱり、こう、「ネガティブは良くない」って言われがちじゃないですか? ぼやいたり愚痴を言ったり卑屈になったりとか、そういうことをずっとしてると、そのうちそれに飲み込まれて、もう戻れなくなる、と。
ヒ 言われますよねぇ。
──でも、なかなか直るものではないし……。
ヒ 直らないです。でも、こうやって、取材して書くっていう立場にいらっしゃるわけじゃないですか。ぼくも本気でネガティブなんですけど、たぶん、大まかにはポジティブなんですよね。
──私はポジティブというか、根が図々しいような気がしてます。
ヒ そう。一個一個は図々しくないんだけど、なんか大胆なところで多分そうなんです。だって、普通ネガティブな人がグラビアアイドルなんかならないでしょ? どっかで「私はあいつらよりモテるんだ」「イケるはずだ」って考えられたくらいのポジティブさがあったわけでしょう? ぼくもそうなんです。一個一個は全部ネガティブだけど、すごく、大きな流れではポジティブなんですよ。だってモテない人が「お笑いやってモテてやろう」と思ったんですから。自分で言うのもなんだけど、そういう人はまだ良いんじゃないですか? こういう風に仕事として、お金もらうわけじゃないですか。
──確かにそうですよね……。今はまだネガティブな部分に対して、憤ったり、妬んだり、僻んだり嫉んだりする体力がありますけど、年をとったらどうなってしまうんだろう。
ヒ そう、危険なのが、こうやって注目されてるうちは愚痴がお金になるからいいけど、飽きられるでしょ?
──そうなったら、大ピンチですよ!
ヒ ピンチとネガティブさだけが残っていくから、やっぱりキツイですよね……! ぼくだってテレビに出なくなってからもネガティブな思考はそのまま残ってるわけだから、キツかったですよ。今は仕事してるから笑って話せるけど、これがなくなったら、ほんとキツイもんな、人と話す機会もないし。これは……ちょっとどうにか解決しなきゃいけないですよね……。
──積極的に幸せになりにいくのが一番いいと思うんですけど、ヒロシさんは幸せになったら、もうネタが増えないじゃないですか? そうして無意識に幸せから遠ざかろうとしているのでは?
ヒ いやいや、幸せになったほうがいいですよ! 絶対!
──たとえば、所帯をもってみたりとか。
ヒ いやーそれは危険だなー。浮気されたらどうしよう、とか。
──え~そこですか? 大丈夫でしょう、それは~。
ヒ だって結婚したら離婚するときにお金半分あげなきゃいけないんでしょ? 冗談じゃないよ! 実際、浮気されて離婚して金とられたって人が何人もいるんすよ、ぼくの周りに! でも法律ではそうしなきゃいけないらしくて、最悪じゃないですかー。
──「浮気はしないと言っていた彼女の家に行ったら、便座があがっていたとです」ってネタもありましたけど、あれも実話だったんですねぇ。
ヒ そうそう、毎回あがってるんですもん! 便座あげるときって掃除するときくらいでしょ? 別に綺麗になってないのにあがってるんですよ! もっと言っちゃえば、ゴミ箱から精子のにおいがするんですよ? ぼく、なんにもしてないのになんでにおいがするんだろうって……。
──だんだん、本当に付き合っていたのかどうかも心配になってきますね……。
ヒ そうなんですよ。もう「人間のお付き合いってなんだ?」ってことですよ。もっと言えば、「結婚ってなんだ?」ってことになってくるですよね。「病めるときも~」って神様の前で約束するのに……お前らは簡単に破るじゃないか!!
──女性不信すぎますよ!! でも、ほら、えーと、最近またテレビにも出るようになられて、また波が来てるじゃないですか!
ヒ 来てますか? そんな感じは一切しないですけど……。
──ヒロシさんの場合は、「最近見ないよね」「消えたよね」って言われてても、本を出したりラジオをやったり、普通に活動はされてるんですよね。でも地上波に出てないだけで消えたような扱いになっちゃう。私はグラドルでデビューして、最初だけほんの少しだけ出て、すぐ売れなくなったんですけど、今でも希に「あー昔グラビアで見たよね、今いないね」って言われることがあります。でも、ページがカラーグラビアから白黒の文字ページに移動しただけで、微妙に消えてはいないんですよ。でも可愛いグラドルが好きな人たちなんて、誰もこっちまで見てくれない。
ヒ うんうん。でもね、「サイゾー」でページを持ってるなんて立派ですよ。俺なんてアレくらいのブレイクを見せて、何も残ってないじゃないですか。
――そんなことないじゃないですか、なんか、確執みたいなものが残ってると思いますよ。
ヒ 確執だけ残ってもしょうがないじゃないですか! ほんと、いつまた落とされるかわかりませんし、「サイゾー」なんて良いですよ、しかも連載でしょ? ……サイゾーさん、このページで、ぼくでひとつ、なんかやってくださいよ……。
──え! ちょっと、普通に私の連載枠を狙わないでください!
ヒ いや、あの、ノーギャラとかでも全然いいんで、あ、この、こことかでもぜんぜん大丈夫なので!(編集雑記を指さしながら)
――ちょ、やめてください! きょ、今日はどうもありがとうございました!
(取材・構成=小明)
●ヒロシ
1972年、熊本県生まれ。コンビ芸人、ホストなどを経て、2003年ころからピン芸人としてブレイク。「ヒロシです……」で始まる自虐ネタで一世を風靡した。DVD『ドキュメンタリー オブ ヒロシ~空白の1500日~』発売中。
●あかり
1985年栃木県生まれ。2002年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。
ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/>
サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
ニューシングル「君が笑う、それが僕のしあわせ」発売中<http://cyzo.shop-pro.jp/>
月刊サイゾーにて「卑屈の国の格言録」連載中。
●小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー
【第32回】 ジャルジャルさんの至言「僕らのネタに深い意味なんかないんです」
【第31回】 オリエンタルラジオさんの至言「"変わってるって思われたい自分"も見透かされてる」
【第30回】 大槻ケンヂさんの至言「ネガティブを売りにすると自家中毒に陥るんです」
【第29回】 辛酸なめ子さんの至言「なんか、つい交尾の話とかしちゃうんです」
【第28回】 みうらじゅんさんの至言「アイドルライターってなんなの?」
【第27回】 山路徹さんの至言「バラエティーが怖いようでは戦場に行けないですよ」
【第26回】 浅草キッド・玉袋筋太郎さんの至言「相手がクンニしてる顔を思い浮かべなさい」
【第25回】 前田健さんの至言「自分は赤毛のアンの生まれ変わりだと思ってる」
【第24回】 叶井俊太郎さんの至言「結婚したければ高2で100人斬りの男を探しなさい!」
【第23回】 須藤元気さんの至言「僕の本なんて、ギャグみたいなものですよ」
【第22回】 オアシズ大久保佳代子さんの至言「本当はOLを辞めたくなかったんだよなぁ......」
【第21回】 Kダブシャインさんの至言「宇多丸は、Kダブをシャインさせない」
【第20回】 楳図かずおさんの至言「世界を相手にやっている人は、友達作っちゃうと危ない!」
【第19回】 キングオブコメディさんの至言「いつ辞めてもいいから、続けられるんです」
【第18回】 バカリズムさんの至言「モヤモヤは、そのまま持ち帰って立ち向かいます」
【第17回】 島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」
【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」
【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」
【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」
【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」
【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」
【第11回】 鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」
【第10回】 宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」
【第9回】 桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」
【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」
【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」
【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」
【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」
【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」
【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」
【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」
【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」
モテない、金ない、華もない......負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第33回のゲストは、DVD『ドキュメンタリーオブヒロシ~空白の1500日~』が絶賛発売中のヒロシさんです!
[今回のお悩み]
「相談に答えてほしいのですが……」
──わーヒロシさんだ! 本日はよろしくお願いいたします!
ヒ すいません。はい。すいません。
──……なんで謝るんですか?
ヒ いや、謝っとけば間違いないんで……。
──……。えっと、うちは親子そろってヒロシさんのファンで、ヒロシさんと対談させてもらえるって言ったら母親が凄く喜んで、デコメで「よろしく伝えて(はぁと)」って言ってました(笑)。
ヒ お母さんでしょ? よく言われるんですよ、「お母さんがファンです」とか「おばあちゃんがヒロシのネタに反応するんです」とか……。最近、久しぶりに本を出したんですけど、読書カードってのが挟んであるじゃないですか? それを見てたら、全部60オーバーなんですよ。若い人でも40代。若い人で「私がファンなんです」って人、あんまりいないんですよね。タレントさんとかでも、人づてに「この子、ヒロシのファンなんだってよ~」って聞いてたのに、現場で会ったら「あ、どうも」みたいな……なんなんでしょう?
――え? いや、あの、えーと、私、ファンです……よ? 気を取り直して、ヒロシさんの新しいDVD『ドキュメンタリーオブヒロシ~空白の1500日~』(コンテンツリーグ)はすごい内容でしたね~! ただ……発売がたった200枚っていうのは本当なんですか?
ヒ 愕然としましたね……。作ったのはもっと多いんですけど、実際に店頭に並んだのは200枚だって。ぼく、本とか出すときは、「だいたいどれくらい売ればトントンになるんですか?」って聞いて、そこを目指すんですけど、一番最初の打ち合わせで「1,500枚」って言われて、「じゃ、1,500枚売れば元も取って、みなさんにギャラを払えるレベルか~」と思ってたのに、200枚って……。
──どんだけ売れてないアイドルでもその数字はあり得ないですよ! だってヒロシさんの『ヒロシです。』(単行本/扶桑社/2004年)は30万部ですよ!?
ヒ そう。DVDだと『ヒロシ会』(ユニバーサルミュージック/05年)が4万5,000枚くらいかな。それで、これが200枚(笑)。
──笑ってないで、怒ったほうがいいですよ!
ヒ 怒ってもね、しょうがないよね。
──しかも発売イベントはスタッフが会場を取り忘れて、場所が……土浦でしたっけ?
ヒ そう、土浦のイオンモール。よくご存知で。で、「とりあえず場所は押さえたから行ってくれ」って言われて、バタバタでチケット取って行ったんですけど、振り返って考えたら、ぼく、交通費だけで7,000円くらい使ってるんですよ。このDVDは3,000円なんで、そのお金で2枚買っほうがいいですよ。どうせぼくには1円も入ってこないだろうし……。そのイオンモールでも、ぼく、ネタを2回やってね、サイン会もやって、80枚も売ったんですよ? 現物がないのに。
──えっ、現物ないんですか? 発売イベントなのに?
ヒ そうですよ! 「どっかにないんですか?」って聞いたら「静岡の倉庫にしかない」って……おかしいでしょ!?
──DVDないのに、何にサインするんですか?
ヒ えっとね、小さいサイン色紙を買って行ったの。さらにそこで買ってくれたお客さんは、送料の分、500円多く払わなきゃいけないんですよ? ほんと申し訳なくてね……。
──アマゾンで買った方が安いですね……。
ヒ ほんとにそうなの……。ぼく、Twitterとかブログをやってるんですけど、コメントを見たら、やっぱり「売ってねぇんだけど?」っていうのばっかりで、「買いました!」っていうのが全然ないんだもの! 最初はそれに「申し訳ありません」って返事してたけど、だんだん「なんでこんなことやってるんだ」って思ってきちゃって……。
──なぜかヒロシさんがすごい謝ってましたね。
ヒ そう。なんで俺が謝んなきゃいけないんだろう……。
──発売後までネタになる話が満載ですね!
ヒ そんなつもりは全然ないのに……。やっぱりこれはドカンと売って、「ヒロシ、やっぱり作ったら売れるんだな!」とか、そういう風に思われたかった……。
──でも、DVD自体はすごくいいドキュメンタリーでしたよね。お笑いブームの時に密着していたスタッフが、ブームが去っていくとともに密着をやめて、ヒロシさんの立場がどんどん危うくなっていく様子とか、切なすぎてお腹が痛くなりましたもん。こういうドキュメンタリーって、どれくらい台本があるものなんですか?
ヒ 台本っていうのはほとんどなくて、大まかなことしか決めてないですよ。あとの流れは全部アドリブで。
──離れていくドキュメントのスタッフに「前にNG出した九州の実家取材の話ですけど、アレ、やっぱりOKなんで!」って食い下がる様子とか、AVの人がだんだんNG事項を減らしていくのってこういう感じなのかな、と感慨深かったです……。でも一番ズーンときたのは、九州の実家取材のために自分でわざわざレンタカーを借りて、その車内でヒロシさんがスタッフにめちゃめちゃ気を使っておどけて、それでもやっぱり無視されたりして……もう、自分の学生時代を見ているようで……!
ヒ はははっ! ああー伝わってる、ちゃんと伝わってるんだねぇ……。
──沈黙を恐れてはしゃぐ感じとか、学生時代に間違ってレベルの高いグループに入っちゃって、がんばって盛り上げるけど、やっぱり会話に入れてもらえない、みたいな思い出が蘇って、胃がキリキリしました。
ヒ そうそうそう! コンパとか行ってもしゃべれなくて、しゃべらなきゃと思って下ネタ言ってスベる、みたいな。ワンランク上に行こうとしてね……。でも、小明さんってそんな人ですか? 中学高校のときも一軍だった女の人みたいに見えるけど。
──ありがとうございます、中学をひきこもりで過ごさせていただきました。
ヒ あ~、そうですか~(うれしそうに)。
──それで高校からがんばり始めて、調子に乗ってグラビアを始めて、売れなくて、こじらせ続けて、現状です。
ヒ なるほどね~。そっかそっか~(すごくうれしそうに)。
──このドキュメンタリーは、ヒロシさんの自叙伝の『沈黙の轍』(単行本/08年/ジュリアン)を読んでから見ると余計に辛いですよね。炭鉱の町で純粋に生きていた健一少年が、どうしてこんなことに……と。
ヒ えー! 読んだんですか? ありがとうございます!
──文章がお上手でびっくりしました、すごくちゃんとした短編集ですよね。
ヒ おー! おー! おー! だんだん気持ちよくなってきましたよ! でも、そんなこと言って帰りにエレベーター乗った後に舌をぺろっと出すんじゃないでしょうね? 「言ってやった(笑)」みたいに言うんじゃないでしょうね? もう人を信じられないから、俺は。危うく気持ちよくなったけど、もう気持ちよくなりませんから。騙されませんから。
──なんでそんなに人を信じられないんですか! でも、本当にこういう文才も、世間の人にいまいち届いていない感じで残念ですよね。
ヒ そう。だから引き出せないんですよ、事務所が。俺はいろいろ提示するけど、「それはない」とか言われるから、辞めてやろうと思ってんの。ははは。
──ヤケになっている! この『沈黙の轍』もご自分で書かれて、ご自分で持ち込みに行かれたとか。
ヒ そうですよ、全部そうです! 打ち合わせも全部ひとりで行って、編集の人を家まで車で送ったりして……。その『沈黙の轍』の表紙は実家がある炭鉱の町で撮ったんですけど、まずスタッフのみんなで福岡まで飛行機で行って、そこから俺が自分で車を運転してみんなを地元まで連れて行きましたから。
──うわ! リアル『ドキュメンタリーオブヒロシ』! ちなみにこの本はどれくらい売れたんですか?
ヒ これはね、2万5,000部て聞いてたんですけど、おとといくらいに、「実は1万5,000部しかはけてなくて、1万部在庫が残ってる」っていうのを聞いて……。
──でも、出版不況の中、それだけいったらかなり立派ですよ! 前の『ヒロシです。』とその続編もあわせたら、全部でどれくらい売れたんですかね?
ヒ えっとね、あわせて50万部くらいかな。
──家が建つくらいの額じゃないですか!!
ヒ そうですね、普通に考えて、小さい家なら建ちますね。けどね、持って行くから。事務所が。税金も持って行くから。
──ああ……。なんか、言葉を失います。えっと、ヒロシさんは、昔39万円の家賃の部屋に住んでいたと聞きますが、今もやっぱりそれなりに良いところにお住まいなんですよね?
ヒ 今は4万3,000円。
──嘘でしょ!?
ヒ いとこの家に住んでます。もう、ぼくね、贅沢いらないんですよ。ほんとは千葉に家を買おうと思ったけど、実際に見てみたらすごい山の中でね~。これはひとりじゃ鬱がひどくなると思って。
──鬱は悪化しますよね。私、今都心を離れて窓からの景色が畑っていう戸建てに住んでるんですけど、都心で感じる孤独と、人がいないところで感じる孤独は桁違いです。
ヒ でた! マジですか!? 思い切ったことやりますね~!
──とりあえず、寝酒が進みます。あは……。
ヒ え~? そんなところ行こうと思わないですもん~! ちょっとした旅行になりますもんねぇ(やっぱりうれしそうに)。
──ええ……。
ヒ ぼくもねぇ、そういう場所に家を借りてやっていこうかと思いましたけど、そこまでの勇気がなくて、結局川崎の一軒家を借りたんです。二階建てで屋上があって、ぼくはそこで家庭菜園なんか楽しめると思って借りたんですけどね、そのー、ひとりで一軒家って、すごい苦痛だなって思いましたね。「屋上がいいな~」と思って借りたんですけど、階段で行くからキツイんですよ。だから、結局は二階の一部屋を半分に仕切って、わざわざ狭いスペースを作ってそこだけで生活してました。
──私も見事に一部屋の隅しか使ってないです。
ヒ そうでしょー? ただぼくの場合、ずっと狭い場所に住んでたから、一回は良いところに住みたいと思って、家賃39万の東京タワーが見える部屋を不動産屋に乗せられて借りちゃったんですけど、実際住んだら、「いらねえな……」って。
──でも、そんな部屋だったら女性も連れ込み放題ですね!
ヒ そのときは超忙しくて、39万払ってもほとんど家に帰れてないんですよ。意味ないんです。
──ホスト時代、冴神剣さんだった頃に住めればもろもろうまくいきそうなのに、都合良くいなかいものですね~。ホスト時代は公園で暮らしてたんですよね?
ヒ 公園には3週間くらい住みましたね。完全歩合で、ぜんぜん指名がなかったので、基本的に給料がないんですよ。月曜から土曜までホストやって、えー……だいたい月に3万円くらいだったかな、給料。それでお金が足りないから日曜はコンビニでバイトしてましたもん。そんなんじゃ、どんな安いところでも借してもらえないから、2年間くらい家がなかったですね。
──その当時はもう芸人さんだったんですよね、どんなお仕事をされてたんですか?
ヒ 当時は別の事務所に所属していて、コンビで売れようと思っていたから、相方がいたんです。で、相方が辞めるって言いだして……。それから滅多に受からないオーディションに受かったんです。内容は教えてもらえなかったんですけど、「とりあえず2~3日分の着替えだけ持ってこい」って言われて、変なワゴン車に乗せられて、埼玉のえらい奥の方に連れて行かれて、「あそこの家を訪ねなさい」って言われて行ったら土建屋の親父が「遅い! 着替えろ!」って怒ってて、そのままとび職の現場に連れて行かれて、そこで住み込みで働いて……。
──……え? すみません、それ芸人さんの仕事ですよね?
ヒ そういう企画だったみたい……。一応テレビの特番なんですけど、2カ月間しっかり土木作業をやって働いて、給料振り込まれてるの見たら、2万5,000円。もう携帯も止められてるし……。
──テレビの企画にかこつけて、タコ部屋で働かされたような……。でもやっぱりテレビですし、放送後の反響は?
ヒ なーんもない。
──……。
ヒ (失笑)。
──……えっと! 音楽活動の話とかも聞かせてもらっていいですか!? ヒロシさんは学生時代にコピーバンドをやられてたんですよね、何のコピーバンドをされてたんですか?
ヒ なんだろ、結局、流行ってるのをやったんで、最初はXがまだメジャーにいく前のCDをコピーしたりとか、BOφWYとか、ZIGGYとか、そういうのをやってました。
──バンドブーム世代ですし、バンドってモテますよね。
ヒ そうなんです。だからそれ目当てでやったんです。
──でしょ? モテるはずなんです。なので、いまいち、そのヒロシさんのひねくれた根っこが見えなくて。あの、青春時代を謳歌できた人って……。
ヒ ひねくれない、でしょ? 学生時代にバンドやってるって、一見、謳歌してるように見えるでしょ? でも実は何も謳歌してないんですよ。バンドブームって言ったって、モテない人が作った童貞バンドなんか何も潤わないよ。みんな童貞なんだもん。やっぱ、人気あるバンドはみんな彼女がいてチヤホヤされるし、バンドでもそこにもう確実な格差があるもん。
──あわわ、でも今でもかなりまじめに続けられてますし、人気なんじゃないですか?
ヒ 結局ぼくのファンしか来ないから、何人か残存している、コアな8人くらいが来てくれるくらいです。
──お笑いとバンドって、モテるツートップですけれども。
ヒ そうですよね、うふふ。……あれ? なんで? おかしいですよ。なんでモテないんですか?
──なんででしょう……。あの、試しにご自分からガツガツいかれてみては?
ヒ 自分からいっても気に入られないから、どうしようもないよね。だって、ネタにもしてるけど、みんなカゼ引くんですよ、約束してる日に。
──私もカゼひいたことあります(笑)。
ヒ カゼひくでしょ? ひいていないのに。
──前日の夜になると急にひくんですよ、なぜなんでしょうね。
ヒ そうでしょ? それですよ。女の人と一生会えないんじゃないかと思うもん。あと、「犬に餌あげなきゃいけない」とか、「友達が泣いてるから慰めなきゃいけない」とかさー、よくわかんないこと言ってさー。
──そこから生まれたのか分からないですけど、「コンドームが減りません」って言うネタが好きです。
ヒ コンドームが減らないんですよ……! ドンキホーテでダース買いしたのに、下手したらまだ封もあけてないっていう……。
──私も4~5年前に海外に行くとき、友達から「海外は危ないから!」って持たされたコンドームが、先日そのままの姿で出てきましたよ。海外も国内もぜんぜん危なくなかったです。ネタってかなり実話が多いんですね……。
ヒ だいたいそうですよ、分かりやすくはしてますけど。
──売れた後も、なおひねくれて続けているのはすごいですね、どこかで満足してしまいそうなのに!
ヒ モテないからですよ、単純に。
──『ヒロシ会』のDVDでは観客の女の人が「ヒロシさんかわいかったですー」って頬赤らめてましたよぅ。
ヒ 女性ってブームに弱いじゃないですか。現にもういなくなってるじゃないですか。今、だーれもいないじゃないですか。この『ヒロシ会』は一日だけやった単独ライブを収録したものなんですけど、恵比寿エコー劇場で、もう満員で入れないのに「入れろ! 入れろ!」って外でケンカが起きて、救急車で女性がひとり運ばれてるんですよ?
──ギャー! すっごい!
ヒ いま来りゃあ普通に入れるのにね? いまぼくがやってるバンドなんか、普通に来て普通にしゃべってるんですから、全然救急車呼ばなくてもいいのに、来ないでしょ? だから、「いまブームだから」っていう理由で来てるんですよ。そのときからそう思ってたから、もう一切信用できないですよね。
──ヒロシさんの「一生応援します」ってファンレターに書いてた人が一切いなくなったけど、みんな死んだんでしょうか……ってネタ、ゲラゲラ笑いましたけど、実話と思うと悲しいですね。
ヒ そうですよ!「一生」「死ぬまで」って言ってたの来ないんだから、死んだんだなって。死んでるんですよ、みんな。
──なんか……大変な人生ですね。
ヒ ほんとですよ。普通の人がぼくと同じ経験してきてたらね、どっかで自殺してますよ。
──父親が炭鉱で働いてる時点で、ちょっとこう、背負うものがありますもんね。
ヒ あるでしょ? 炭鉱ってきいて絵が浮かぶでしょ? なんかその風情が。
──うちの父親は炭鉱じゃないんですけど、地下鉄作業員の下請けの下請けで……。
ヒ ああっ、似たようなもんだよねぇ(うれしそう)。
──しかもリアルにそこをリストラされてるところとかを見てしまって、子供心に複雑でしたよ。ヒロシさんは、ご家族とは仲いい方ですか?
ヒ えっと、ぼく弟がいるんですけど、20数年話してないですね。会ってないです。
──あはは! 上京から一切連絡とってない感じ!
ヒ そうそう。こないだ実家に帰ったら知らない女の子がいて、「誰?」って聞いたら弟の子どもで、もう小学校4年生だって。それでぼくは弟の娘に人見知りして……しばらく無言でいたら「おじちゃん、しゃべんないんですね」ってボソって言われて……。
──子どもに敬語を使われるってのもまた妙に辛いですよね、いっそバカな子どもだったらよかったのに……。
ヒ そうなんですよね、ワーッ! って来てくれればまだ対応できたかもしれないけど、「しゃべんないんですね」って言われたら、もうたまらなくなって家を出ようとしたら、「おじちゃん、また遊びに行くんですか?」って言われて……会話はその二言だけでしたね。はぁ。
――あ、あはは……。あの、なんていうか、ヒロシさんは、テレビとインタビューではしゃべりが微妙にちがうんですね。
ヒ そうなんですよ……! ぼく、テレビ出ると緊張するんですよ、華やかでおしゃべり達者な人たちが並んる中になんて入って行けないじゃないですか? 打ち合わせだったらしゃべれるんです。けど、本番になったら黙って座ってるだけ。たまに振られて「ヒロシです……」って言うだけなんですよ。
──なんかこう、えーと、残念ですね……。
ヒ 残念なんですよ……。小学校のとき、クラスで「はい! はい!」って手を挙げるタイプじゃなかったでしょ?
──はい。できるだけ先生と目を合わせないようにしてました。
ヒ ね? でも、そこで「はい! はい!」って言わなきゃいけないんですよ、テレビに出たら。前へ前へ行かないと……!
──もう、ヒロシさんがひな壇に座ってるのが奇跡のように思えてきました。確かに、みんなと一緒に立ち上がって「ちょっとちょっとー!」って言ってるヒロシさんは想像がつきません。
ヒ そう、言えないんですよ。でも言わなきゃっていう、もやもやっとした感じ。もう、「ああああああああああ!」って言いそうになるもん。画面上では、だまーってるだけに見えるけど、ぼくは発狂しそうになっている。「あああああああああああ!」って言いたくなるのを我慢して、じーっとしてるんです。
──思ってたよりずっとギリギリな精神状態でテレビに出られてたんですね……。でも、ヒロシさんの著書には、よく後書きの部分にモテない人や報われない人生を歩んでいる人への暖かいメッセージが書かれているじゃないですか。あれ、泣けるんですよ。ヒロシさんのネガティブなネタに、そんな熱い想いが込められていたと気づいて、ハッとします。
ヒ そうなんです。そういうのはなかなか伝わりづらいけどね。ぼく、いちばん悔しいのは、中学生とかで自殺しちゃう人いるでしょ? そういうの、いたたまれなくてねぇ。いじめてるやつなんて、絶対たいしたことないのに、そのときは大きな存在じゃないですか? 学校の先生もたいしたことないのに偉そうに言うから、「俺が悪いのかな?」って思うかもしれない。けど、絶対そんなことはないんだよっていうのを伝えていきたいなって。でも、ぼく自身がバカにされてる存在だから、それはなかなか伝わんない。だから、本にちょっとだけそういうのを入れたりとかね。
──今まで何の気なしに笑ってた自分が恥ずかしいですよ。『ヒロシです。華も嵐も乗り越えて』(東邦出版)に書いてあった、「九九が覚えられなくて教室に残されて、人よりも劣ってる欠陥人間なんだっていう気持ちをずっと引きずってる」っていうの、すごくわかります。私もずっと給食が食べ終わらなくておもらししそうになったり、いくら残って練習しても、ひとりだけ逆上がりができなかったり……。
ヒ ねー。でもねー、逆上がりなんかできなくたってね、金儲けはいくらでもできるんですよ。でも、そのときの子どもには、それがすべてじゃないですか。逆上がりができたほうがモテるわけじゃないですか。足が速いほうがモテるわけじゃないですか。でも、いろんな才能があるわけじゃないですか。例えば写真を撮る才能があっても、小学校でそんな授業なんかないし、それだけじゃない、いろんな商売があるってことを知ってもらいたいですよね。だってこうやって愚痴言って金もらう仕事も、作ったわけですから、ぼくが。ずっと愚痴言い続けて。
──本当ですね。なんだか思いもよらず良い言葉をいただきました。ありがとうございます!
ヒ そうでしょ。あと、メッセージとか発信してると、なんか、ちょっとかっこいいじゃない。モテそうじゃない。ちょっと尾崎豊っぽくて、ふふふ! 「こういう一面もあるのね、ヒロシちゃん」って思われたらいいな、と思って(笑)。
──あっぶな! まんまと手中にハマるところでした! でも、この『ヒロシです。』に書いてある「マイナス要素を抱えながらも、絶対にモテてやろうと思ってます。だから、あなたも諦めないで」っていうくだりは、すごく希望になりますよ。ヒロシさん、絶対モテてくださいね!!
ヒ そんなん言いながら、やっぱりモテてはないんですけども、ただ、あのー……実家に帰ってね、同級生とかと会うとね、当時イケメンって言われてた人たちが、どんどん劣化してるんですよ(笑)。ぼくは学生の時に超くやしい思いしてるから、そういう一軍の男子たちがハゲてたりしてると、もう、たまらない幸福感に包まれて……(満面の笑み)!
──また、地元にいる人たちって、ちゃんと働いたり子どもを育てたりで忙しいから、外見的に年をとるのが早い感じがしますよね。
ヒ そう! ふはははは! 早いんですよー! そうそう、こないだね、たまたまテレビでぼくの地元までロケに行ったんです。そしたらそこの観光協会かなんかで働いてる作業服の人が、「斉藤くん」って、ぼくの本名を呼んできてね、話聞いたら高校んときにヤリまくってた男で、「チッ」と思って終始覚えてないふりをしてやりましたね、ふははは! たまんなかったなアレは! 他にも「俺だよ、なんとかだよ」って言われて、「あ~あいつか」って分かっても気づかないふりをしますよ。一瞬「誰だっけ?」って間を空けてから、「あ~!」ってね。
──「当時の自分だって、お前なんて別に眼中になかったから」っていう強がり!
ヒ そうそう、それがぼくの復讐です。たまんないです。今すごい幸せです。
──幸せが、暗い……! ヒロシさんは普通に職につこうと思ったことはないんですか?
ヒ こういう仕事する人って、たぶん、普通の生活できない人たちでしょ? ぼくも一回だけサラリーマンになったんですけど、1カ月目で「辞めさせてくれ」って言いに行ったくらいだから、耐えられなかったんです。サラリーマンに。
──ちなみに、どういう仕事内容だったんですか?
ヒ 保険を売る仕事です。
──またずいぶん社交性の求められるものを!
ヒ そう、知らないところにいっぱい電話しなきゃいけない。1カ月で心が折れて、出勤しないで家で寝てたんですけど、家に偉い人がきて、「おめえ何やってんだ!」って起こされて、「ああっ」って……。「せめて半年はやりなさい」って言われて、半年やって辞めました。
──さっきから他人とは思えないエピソードばかりです。性別と時空を超えて、すごく共感をしています。
ヒ やっぱりねぇ、そういう人って話があいますよねぇ。だから、ダメなスパイラルがずーっと続くわけですよ。ぼくも、暗くてB型の人とよく話が合うからね。
──うわ、私、暗くてB型です……!
ヒ そうでしょ(笑)? で、そういう人とばっか接してると、「こっちの思考が王道だ」って勘違いするようになるから、よくないんですよ。
──そうなんですよね。たまに明るい人たちと話すと、「うわ、自分ってゴミ」と実感して落ち込んだりします。
ヒ そうそう。でもこっち側にいると、「やっぱおかしいよねー?」「あんなところであんなカラオケ歌うのおかしいよねー?」って。全然おかしくないんだけど、「わかるわかるー!」ってなるわけですよ、だから良くないんですよ。
――わああ、私だ、私がここにいる! 私はもう本当にますますヒロシさん大好きですよ!
ヒ ほんとですか? なんだかうれしいなぁ。
──そんなところで、ちょっと私の相談に答えてほしいんですけどもー。
ヒ 無理ですよー。こっちが答えてもらいたいくらいですー。
──(無視して)私もけっこうネガティブなんですけど、やっぱり、こう、「ネガティブは良くない」って言われがちじゃないですか? ぼやいたり愚痴を言ったり卑屈になったりとか、そういうことをずっとしてると、そのうちそれに飲み込まれて、もう戻れなくなる、と。
ヒ 言われますよねぇ。
──でも、なかなか直るものではないし……。
ヒ 直らないです。でも、こうやって、取材して書くっていう立場にいらっしゃるわけじゃないですか。ぼくも本気でネガティブなんですけど、たぶん、大まかにはポジティブなんですよね。
──私はポジティブというか、根が図々しいような気がしてます。
ヒ そう。一個一個は図々しくないんだけど、なんか大胆なところで多分そうなんです。だって、普通ネガティブな人がグラビアアイドルなんかならないでしょ? どっかで「私はあいつらよりモテるんだ」「イケるはずだ」って考えられたくらいのポジティブさがあったわけでしょう? ぼくもそうなんです。一個一個は全部ネガティブだけど、すごく、大きな流れではポジティブなんですよ。だってモテない人が「お笑いやってモテてやろう」と思ったんですから。自分で言うのもなんだけど、そういう人はまだ良いんじゃないですか? こういう風に仕事として、お金もらうわけじゃないですか。
──確かにそうですよね……。今はまだネガティブな部分に対して、憤ったり、妬んだり、僻んだり嫉んだりする体力がありますけど、年をとったらどうなってしまうんだろう。
ヒ そう、危険なのが、こうやって注目されてるうちは愚痴がお金になるからいいけど、飽きられるでしょ?
──そうなったら、大ピンチですよ!
ヒ ピンチとネガティブさだけが残っていくから、やっぱりキツイですよね……! ぼくだってテレビに出なくなってからもネガティブな思考はそのまま残ってるわけだから、キツかったですよ。今は仕事してるから笑って話せるけど、これがなくなったら、ほんとキツイもんな、人と話す機会もないし。これは……ちょっとどうにか解決しなきゃいけないですよね……。
──積極的に幸せになりにいくのが一番いいと思うんですけど、ヒロシさんは幸せになったら、もうネタが増えないじゃないですか? そうして無意識に幸せから遠ざかろうとしているのでは?
ヒ いやいや、幸せになったほうがいいですよ! 絶対!
──たとえば、所帯をもってみたりとか。
ヒ いやーそれは危険だなー。浮気されたらどうしよう、とか。
──え~そこですか? 大丈夫でしょう、それは~。
ヒ だって結婚したら離婚するときにお金半分あげなきゃいけないんでしょ? 冗談じゃないよ! 実際、浮気されて離婚して金とられたって人が何人もいるんすよ、ぼくの周りに! でも法律ではそうしなきゃいけないらしくて、最悪じゃないですかー。
──「浮気はしないと言っていた彼女の家に行ったら、便座があがっていたとです」ってネタもありましたけど、あれも実話だったんですねぇ。
ヒ そうそう、毎回あがってるんですもん! 便座あげるときって掃除するときくらいでしょ? 別に綺麗になってないのにあがってるんですよ! もっと言っちゃえば、ゴミ箱から精子のにおいがするんですよ? ぼく、なんにもしてないのになんでにおいがするんだろうって……。
──だんだん、本当に付き合っていたのかどうかも心配になってきますね……。
ヒ そうなんですよ。もう「人間のお付き合いってなんだ?」ってことですよ。もっと言えば、「結婚ってなんだ?」ってことになってくるですよね。「病めるときも~」って神様の前で約束するのに……お前らは簡単に破るじゃないか!!
──女性不信すぎますよ!! でも、ほら、えーと、最近またテレビにも出るようになられて、また波が来てるじゃないですか!
ヒ 来てますか? そんな感じは一切しないですけど……。
──ヒロシさんの場合は、「最近見ないよね」「消えたよね」って言われてても、本を出したりラジオをやったり、普通に活動はされてるんですよね。でも地上波に出てないだけで消えたような扱いになっちゃう。私はグラドルでデビューして、最初だけほんの少しだけ出て、すぐ売れなくなったんですけど、今でも希に「あー昔グラビアで見たよね、今いないね」って言われることがあります。でも、ページがカラーグラビアから白黒の文字ページに移動しただけで、微妙に消えてはいないんですよ。でも可愛いグラドルが好きな人たちなんて、誰もこっちまで見てくれない。
ヒ うんうん。でもね、「サイゾー」でページを持ってるなんて立派ですよ。俺なんてアレくらいのブレイクを見せて、何も残ってないじゃないですか。
――そんなことないじゃないですか、なんか、確執みたいなものが残ってると思いますよ。
ヒ 確執だけ残ってもしょうがないじゃないですか! ほんと、いつまた落とされるかわかりませんし、「サイゾー」なんて良いですよ、しかも連載でしょ? ……サイゾーさん、このページで、ぼくでひとつ、なんかやってくださいよ……。
──え! ちょっと、普通に私の連載枠を狙わないでください!
ヒ いや、あの、ノーギャラとかでも全然いいんで、あ、この、こことかでもぜんぜん大丈夫なので!(編集雑記を指さしながら)
――ちょ、やめてください! きょ、今日はどうもありがとうございました!
(取材・構成=小明)
●ヒロシ
1972年、熊本県生まれ。コンビ芸人、ホストなどを経て、2003年ころからピン芸人としてブレイク。「ヒロシです……」で始まる自虐ネタで一世を風靡した。DVD『ドキュメンタリー オブ ヒロシ~空白の1500日~』発売中。
●あかり
1985年栃木県生まれ。2002年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。
ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/>
サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
ニューシングル「君が笑う、それが僕のしあわせ」発売中<http://cyzo.shop-pro.jp/>
月刊サイゾーにて「卑屈の国の格言録」連載中。
●小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー
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【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」
【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」
【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」
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