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「Apple Store HP」より
ゴールドマン・サックス証券、ベイン&カンパニーなどの複数の外資系金融機関やコンサルティング会社を経て、ライブドアに入社。あのニッポン放送買収を担当し、ライブドア証券副社長に就任。現在は、経営共創基盤(IGPI)で多くのITベンチャー企業のスタートアップ、事業開発、M&Aアドバイザリーに従事するのが、塩野誠氏である。
そんな塩野氏へのインタビューの模様を掲載した前回記事に引き続き、今回はその後編として、「アップルが強い理由」「日本企業苦戦の理由」「ベンチャー、ITサービス成功の秘訣」などについてお届けする。
――ITサービス/ビジネスは、今後どのような方向に向かうのでしょうか?
塩野誠氏(以下、塩野) スマホとスマートデバイスの連携が進むと考えています。例えば、腕にリング状のデバイスを着けて、Bluetoothでスマホに飛ばす。そうすると自分の脈等のログを24時間ずっと取ることができます。このようなライフログ、医療系でのデータを手間暇かけないで取ることができて、そのデータに医療機関等がアクセスできれば、検査時間が短縮化され、かつ確実な医療が受けられるようになると思います。しかもデバイスがオシャレであれば、言うことなしですね。この「オシャレである」というのは、重要なファクターです。iPodの基本技術はどのメーカーでも持っていた一般的なものなのに、「iPodを持っているのがかっこいい」というマーケティングをして、アップルは大成功を収めたのですから、ハードのデザイン性は重要な要素なのです。ここに、実はベンチャー企業が成功するヒントがあるのです。
――日本企業も、もっとオシャレさを追求すべきということでしょうか?
塩野 これまでのITや電機業界は、あえて単純化した言い方をすると、「独裁者・ジョブズ的なもの」対「合議制・日本メーカー的なもの」の戦いなのです。ジョブズという思想家が独裁してつくった製品は、デザインも機能もエッジが立っています。一方、合議制でモノづくりをしてきた日本メーカーは、マーケティング部があり、営業販売部があり、デザイン部があり、技術部があり、合議制の中でエッジーなアイディアをネガティブチェックしていくうちに、普通なものにしてしまうということの繰り返しをしてきました。「先輩が言ったから」とか、「上司が言ったから」とかいってエッジを削ぎ落としていった結果、極めて普通の製品になってしまったんですね。
iPhoneは粗利益率70%
――日本のモノづくりが苦戦しているのは、デザインや設計思想ですか?
塩野 そうです。今はベーシックな機能は、どのメーカーでも同じコモディティになってしまいました。すると、製品やサービスの根底にある思想やデザインにかけるリソースの違いが、「消費者が感じる価値」に変換されるようになりました。iPhoneは、電子機器製品として見ると、粗利益率が70%くらい取れているんです。でも、世界中で売れている。これは、デザインや設計思想の部分が、商品価値として評価されているということなんです。そういう意味においては、日本の合議制というモノづくりでは、機能で劣らないのに非常に負けが濃いんですね。
――日本的企業経営が、時代にフィットしなくなってきたのでしょうか?
塩野 少なくともIT・インターネットを介したサービスや製品では、「合議制」で、「完全な製品」を、「いくつものバリエーション」で販売していこうとする日本企業のやり方は、時代にフィットしないようになりつつあると思います。アップルが成功したのは、ジョブズという独裁者が、「自分が欲しいと思う製品・サービスをつくったら、実はみんな欲しかった」というスーパーユーザーの発想です。製品数も少ないため粗利益率も高いわけです。でもこれは、ベンチャー企業そのものですよね。ベンチャーは思想家は経営トップひとりですから、「先輩に言われたから」とか、「社長の案件だから」とかはない。「そのサービスは、誰の何を解決しているサービスなのか」それをひたすら追求していけばいいわけです。
ベータ版でもリリースして、チューニングし続ける
――追求していく上で重要なポイントは?
塩野 現在のSNSでのサービスは、「Facebookログイン」「Twitterログイン」など、プラットフォームの上に乗っかったアプリとしてのサービスが中心です。しかし、プラットフォームに依拠してサービスを展開するというのは、DJみたいなものです。センスのある人間がミックスしているにすぎない。従って、そこのユーザーの属性の
・インタレストグラフ
・ソーシャルグラフ
のデータを借りてきて、サービスを洗練させていくということになる。しかし、プラットフォームという「誰かのつくった思想」に依拠してしまうので、限界があるし、誰でもできてしまうから、すぐにキャッチアップする競合相手が生まれてくるのです。そこで求められるのが、
「コンセプトをよりエッジーにするために、チューニングをし続けていくこと」
です。インターネットの世界においては、完成度60〜80%程度のベータ版でサービス開始した後に、適時チューニングし続けるということができてしまうので、「ユーザの反応を見ながら、いかに早くチューニングをしていくのか?」が重要です。でもこれは、日本人が得意な「おもてなしの心」なんですよ。「ユーザがこう言ってきたら、どんどん変えていこう」という、ユーザフレンドリーな「おもてなしの心」なのです。
グーグルのジレンマ
――海外の成功しているIT企業は、その「ベータ版」というポイントを意識してサービス提供を行っているのでしょうか?
塩野 ええ。しかし、グーグル本社で聞いたのですが、グーグルが大企業になって社会的責任が出てきた時に、ベータ版で出すのがすごく難しくなってきたそうです。今までなら無料ということで、ベータ版を出していたのが、それがすごく難しくなってきた。これも、企業が大きくなったがゆえに失ったモノなんですよ。そうするとIT業界においては、スピードを失っていくんです。そこでどうするかというと、ベータ版でチューニングして完成した製品やサービスを買収するのです。これには、
「テクノロジーやエンジニアを買う」
「自分の将来の敵を消す」
という2つの意味があります。そしてスピード感のある人間をチームに入れることで、組織内の活性化を図っているんですね。
「個人の支払い能力」を制する者が、ビジネスを制す?
――グーグルの競合であるヤフーが、先日カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とポイント事業を統合することを発表しましたが、この動きについてはどのように見ていますか?
塩野 こうした動きのベースにあるのは、1つのIDですべてにアクセスしたいという、ユーザの要望を反映したものです。わかりやすくいえば、クレジットカードを1つにまとめてしまうみたいなことです。しかも、1IDにお金とパーソナルデータが入っていて、「誰がそれを握るのか?」だけではなく、同時に「ネットワークの外部性とか利便性が効いているか?」という視点も必要です。企業から見れば、
「どの企業がメインIDを管理する権限を持って、そのメインIDの中に入っているパーソナルデータにアクセスするか?」
「どの企業がデータの利用許諾ゲート(入り口)に成り得るか?」
の勝負なのです。データへのアクセス許諾権は、ユーザ個人とそこの管理者が持っているので、管理者はビジネス上の強い権限を持つことができるのです。そうした中で、リアルの実店舗とヤフーという大きなメディア、ECが融合されるというのは、ビッグニュースですね。
――このような動きは、これまでもあったのでしょうか?
塩野 楽天が、電子マネー「Edy」を発行するビットワレットを買収しました。すると、「Edy」を利用できる各店舗には、楽天のマークがつくようになりましたね。このような動きは今後も広がっていくでしょうね。ユーザ側でも、どのブランドに対してシンパシーを持って、メインIDとしてパーソナルデータを提供するかという選択が、加速するように思います。この先グーグルが「グーグルクレジットカード」を発行して、リアル店舗での買い物ができるようになったら、面白いことになるかもしれないですね。でも、日本において一番個人データを持っているのは、やはりビザやマスターといったクレジットカード会社です。重要なのは個人の支払い能力です。この情報も保有したメインIDは、本当の意味で脅威です。最終ビジネスでの重要な一角を占める、「個人の支払い能力」に関する情報にアクセスできるメインIDとなるわけですから。そのアクセス許諾権を誰が握るのかが、今後の勝負になってくるはずです。
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