キングオブコメディ高橋健一“不朽の野球アニメ”『キャプテン』を語り尽くす!

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キングオブコメディ高橋健一、44歳。
 1972年2月号から「月刊少年ジャンプ」(集英社)で連載されていた、ちばあきお作の不朽の名作『キャプテン』。  当時流行していた熱血スポ根漫画や、魔球&秘打が登場しまくる超人漫画とは一線を画した、現実的で等身大の中学生たちが野球に打ち込む姿を描いた『キャプテン』は大人気作品となり、イチローや新庄剛志、田中将大など、後にプロ野球選手となった人たちも愛読していたことで知られている。  その人気を受け、1980年にはスペシャルアニメがテレビ放送。1981年に劇場アニメが公開。83年からはテレビシリーズが放送。さらに2007年には実写映画化と、たびたび映像化されているのだが、今回、劇場アニメ版とテレビシリーズ全話を収録したコンプリートBlu-rayBOXが発売さる。  谷口が、丸井が、イガラシが、近藤が……HDリマスターでメッチャきれいになった画質で蘇ったのだ!  ……というわけで、コンプリートBlu-rayBOXの発売を記念して『キャプテン』大好き芸人であるキングオブコメディの高橋健一に熱い思いを語ってもらった。 ■「漫画・イラストクラブ」だけど感動していた ――若手芸人のわりに年をくっていることでお馴染みの高橋さんですが、さすがに『キャプテン』ってリアルタイムではないですよね? 高橋 漫画はリアルタイムではないですね。アニメの方はリアルタイムで見ていたんじゃないかとは思いますけど、ちゃんと通して見たのは何回目かの再放送……中学生の頃だと思います。『巨人の星』なんかは目が燃えてたり、大リーグボール養成ギブスがカッコよかったり、魔球が出てきたりと子どもにもわかりやすかったんで見ていましたけど、『キャプテン』って、そういうのとはまったく違う野球漫画じゃないですか。 ――まあ、比較的地味ですからね。 高橋 スポ根的な要素もあるものの、基本的には青春群像劇なんで、子どもの頃はわからなかったんですよね。でも思春期を超えたくらいから面白くなってきました。 ――野球は好きだったんですか? 高橋 いや、全然。当時はみんなリトルリーグや軟式野球をやってたんですけど、俺はあんまり上手くなかったんで、リトルリーグに入ってるようなヤツらがしごいてくるんですよ。自分が先輩にしごかれてるからって! 近藤に対する丸井のようにね。それがすげーイヤで『絶対にこんなスポーツやりたくねー!』って思ってました。でも『キャプテン』は普通に感動しましたね。野球もしてないくせに『わかるわかる』って(笑)。今でもそうですけど、オープニングの曲を聴くと涙が出てくるんですよ。 ――ちなみに中学生の頃、部活動は? 高橋 何にもやってないです。強いていえば漫画・イラストクラブですね……。そもそも野球部がなかったんですよ。都内の学校なんで校庭も狭かったし、地面もウレタン舗装だったので、野球部もサッカー部もなかったですから。だから、いわゆる放課後残ってやる部活はやってなくて、水曜日の5時間目にクラブ活動として「漫画・イラストクラブ」に入っていたくらい。ただ、ウチの学校に『それゆけ!レッドビッキーズ』(少年野球ドラマ)のミルクがいたんですよ。その弟さんが僕の2~3歳上くらいなんですが、なかなかの不良でした。そういう意味では、野球とも関わりがあったんですけど……。
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等身大の中学野球が描かれた。(C) ちばあきお・エイケン
――全然関係ないですよ! 部活動もやっていないから『キャプテン』のような努力をすることもなく? 高橋 そうですねぇ~。クラスの人気者でもヤンキーでもない、端っこの方のポジションでしたし……。ヤンキーから『ボタンよこせよ』とか言われてましたからね。 ――えっ、それは好きだから第2ボタンが欲しいっていうことではなく? 高橋 違います! 学生服のボタンをストーブで黒く焼くのがヤンキーの間で流行ってたんですよ、威厳がつくから。でもヤンキーたちも自分のボタンは焼きたくないから、クラスの下層にいるヤツらからボタンを奪ってたんですね。みんな泣き寝入りしてたんですけど、俺だけは「返せよ~返せよ~」って泣きながら1時間つきまとって返してもらって、「なんかあいつヤベエぞ!」っていう感じになってました。そういう面では谷口に通じてるのかもしれませんね。 ――決してあきらめないという点では! 高橋 そうです。「がんばる、がんばる」です。ボタン取り返すために「がんばらなくっちゃ!」って思いましたもん。でも真面目な話、谷口みたいな地味で日の当たらなかった人が全国大会で優勝しちゃう……みたいなところには憧れましたね。「こういうこともあり得るんだ!」って。最初はなんの才能もないし、真面目なだけで筋肉がすごいとかもない。親もただの建設業の方ですし。……自分の家もただの運送業でしたから、ちょっとシンクロしてしまいました。 ――とはいえ、谷口はものすごく努力してますよ。 高橋 僕はなんにもしてませんでしたけどね。 ■丸井はダメだけど印象に残っている ――『キャプテン』の特徴として、年ごとにキャプテンの座を引き継いでいって、主人公も変わっていくというのがありますが、高橋さんの好きなキャプテンは誰ですか? 高橋 その質問は来ると思ったんだよなー。でもそれは難しいですよ。牛肉と豚肉と鶏肉どれがいいか、みたいな話なんで。性格が全員違うからなぁ~……。憧れるのはイガラシですね、天才タイプですから。野球技術的な才能は一番あるじゃないですか。しかも、最初は憎まれっ子みたいな感じで入ってきたのに、ツボとなるところで谷口のことを悪く言っている先輩に刃向かったり、丸井のことを一番理解していたり。一番チームのことを思っているキャプテンですからね。逆に一番ダメなのは丸井。谷口は「がんばる」っていう才能が開花するし、近藤も剛力だし。最初から最後までダメなのが目立っているのが、丸井。 ――墨谷二中野球部への情熱だけって感じですからね。 高橋 もちろん練習して技術も身につけるんですけど、同じくらい欠点が目につくんですよね。後輩のイガラシから「ダメですよ丸井さん」「丸井さん何やってるんですか」とか言われたりして。……ただ、一番印象に残っているのも丸井なんですよ。卒業してからもずっと部活に顔を出して、監督みたいになってますから。ちばあきおさんも、丸井みたいなキャラが必要で卒業後も出し続けてたんじゃないかな。こういう、感情を思いっきり出すキャラっていないじゃないですか。
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丸井のキャラがパーケンにも影響を?(C) ちばあきお・エイケン
――一方、谷口は卒業後全然出てこないですもんね。アニメでは最終回にチョロッと出てきましたけど。 高橋 漫画はキャプテンの引き継ぎもあっさりしてますからね。「えっ、もう出てこないの?」って感じで。アニメだと次のキャプテンを誰にするか悩むところなんかも描かれてて、またいいんですよ。丸井が全然自分じゃないと思っていたら、谷口に神社へ連れて行かれて「野球部を頼むぞ、次期キャプテンとしてな」って。そこにイガラシもやってきて「お願いしますよ丸井さん」なんていって、3人のキャプテンが集結するシーンとかすごい好きですね。そこでも肝となっているのは丸井だし、ストーリーも丸井の目を通して見ちゃう部分ってありますよね。結局自分に一番近いのが丸井だし、我々はなんだかんだ丸井と共に成長したんだと思います。 ――ちなみに、他の野球漫画って読んだりするんですか? 高橋 まあ『巨人の星』は読んでましたし、後に『名門!第三野球部』や『県立海空高校野球部員山下たろーくん』とかも。 ――あ、やっぱり努力する系の野球漫画が好きなんですね。 高橋 『第三野球部』『山下たろーくん』あたりは、おそらく『キャプテン』ありきじゃないですか。ああいう等身大の野球漫画のパイオニアですからね。実際に、いろんな野球選手が『キャプテン』を読んでいたっていうのも納得できますよ。『巨人の星』だけ読んでたら、大リーグボールが投げられないって分かった時点で野球やめちゃいますもん。『必殺仕事人』を見て、三味線の糸を投げる練習をしていた俺としては。 ――『キャプテン』を読んでいれば、神社で練習さえすれば結果を出せると思えると。 高橋 『キャプテン』を読むと野球をやりたくなるっていうのはすごく分かりますね。……俺はやってなかったですけど。 ■これなんだなあ……社長がみんなをひっぱる力は…… ――アニメの話に戻しますけど、『キャプテン』って声優さんがすごく特徴的じゃないですか? 高橋 みんな超・棒読みですからね。イガラシが「なんにもわかってないんだなぁ、キャプテンが……(棒読み)」とか。声質も真っ直ぐで抑揚のない感じで、当時はヘタとか思わなかったけど、今見るとものすごい棒読み! 丸井の声優さんも今聞くと、……俺がいうのもなんですけど、滑舌が悪いんですよ。わざと純朴な感じで過剰に抑揚をつけたりしないようにしてるのかな? と思ったら、全員児童劇団の人が演じてたらしいですね。
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神社で練習する谷口。(C) ちばあきお・エイケン
――しかも、イガラシは小学生だったらしいですよ。近藤だけはイメージに合わなかったから大人の声優を連れてきたみたいですけど。 高橋 そう『ドラゴンボールZ』のフリーザ(中尾隆聖)なんですよ。『あしたのジョー2』のカーロス・リベラもやってて、「どこかで聞いたことがあるな~」と思ってたら「カーロス・リベラだ!」って! ――ジブリアニメでは声優以外の人が声を当てているケースが多いですけど、ある意味その先駆けともいえますよね。 高橋 『耳をすませば』のお父さん(立花隆)とかね。「わが図書館もついにバーコード化するんだよ(棒読み)」。あと『風立ちぬ』の庵野(秀明)さんとか(笑)。『キャプテン』の場合、子どもが演じているから、段々と上手くなってくるんですよ。イガラシなんかは特に、技術的にもつたなくて声も出てなかったのが、途中で声変わりしたのか、声ができてくるのがわかるんですよ。それがイガラシの成長ともシンクロしているんですよね。ただ、イガラシの声優さんはWikipediaを見てもその後の活動が一切わからなくて……。おそらく、これ以降目立った活動はしていないんでしょうね。普通に会社員とかになってて「これなんだなあ……社長がみんなをひっぱる力は……(棒読み)」とか言っててほしいな! ■人力舎のイガラシは相方・今野!? ――お笑いの世界も先輩後輩の上下関係が厳しい世界ですけど、先輩になって欲しいキャラクターって誰ですか? 高橋 そこはやっぱり谷口でしょうね。男って背中を見せられるのが一番グッとくるじゃないですか。つべこべいわずに自分でやる。厳しい練習で他の部員たちが「キャプテンがうらやましいぜ……ただノックさえしてりゃあいいんだからな」とか言って抗議しに行こうとすると、上手い具合に谷口が神社で特訓してるんですよね。それでイガラシが「これなんだなあ……キャプテンがみんなをひっぱる力は……(棒読み)」みたいな(笑)。アニメだから都合良く秘密の特訓を見られちゃうんですけど、そうやって背中で語るのが一番伝わるから、憧れの先輩としてはやっぱり谷口ですね。キャプテンとしては別格ですもん。丸井もイガラシも、自分がキャプテンになってからも谷口のことは意識していたと思います。 ――それに比べて谷口の前のキャプテンの影の薄さときたら……。 高橋 ホントですよ! でも、ちょっと練習を見ただけでヘタクソだった谷口をいきなりキャプテンに抜擢した選球眼は卓越してる! まさに「ナイスセン!」。あの名もなきキャプテンが谷口に任せなかったら、墨谷二中の快進撃もなかったわけですから。あのキャプテンが最高のキャプテンですよ。 ――それじゃあ、プロダクション人力舎における谷口といえば誰ですか? 高橋 こんないい人いるわけないじゃないじゃないですか! こんな人は芸人になんてならないですよ。 ――じゃあ丸井は? 高橋 ダメキャラなんだけど熱い部分もあり、実はがんばっているということで……ドランクドラゴンの鈴木さんとか。一番後輩に近いというか、昔からよく一緒に遊んでくれたんです。まあ、ただ単に釣り行く後輩がいなかったってだけかもですけども。
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イガラシ=キンコメ今野? そういえば『ニコニコキングオブコメディ』で、こんなシーンを見たことがあるような……。(C) ちばあきお・エイケン
――丸井も、高校に友達いるのかっていう問題がありますからね。 高橋 中学の部活に顔出してばっかりですから。そういう意味でも鈴木さんに似ていますね。なにかと後輩目線で話を聞いてくれたり。それに鈴木さん、鼻は黒くないですけど腹黒いですから。 ――天才肌のイガラシは? 高橋 イガラシは、なぜか後輩っていうイメージがあるんですよ。生意気なんだけど「こいつにはかなわないな」っていう。そう考えると……相方の今野とかじゃないですかね。年下だし、憎たらしいけど、ここ一番で「かなわないな」ってことをいわれちゃう。養成所に入ってきたときの雰囲気とかも似ていたかな。顔もちょっと似ている気もしますし。あの淡泊な顔というか。 ――一番問題児の近藤は? 高橋 うーん、鬼ヶ島のアイアム野田とか……。ものすごいバカキャラなんだけど、その面ではやっぱりかなわない。人なつっこくて、みんなから愛されてる感じも似ていますね。まあ、野田はものすごく打算的に愛されようとしている部分もありますけど。「俺はかわいがられているからこれでいいんだ」とか自分でいっちゃいますから。 ――近藤が「外野を守ってるの見られたら恥ずかしい」とかいっちゃうみたいな。 高橋 そうそう。それも悪気なくいってますからね。そういう自分のことしか考えていない感じも似ています。 ■『キャプテン』は腐女子にもオススメ!? ――『キャプテン』は連載開始が1972年という古い漫画ですけど、それが2007年に実写映画になったり、今年Blu-rayになったり、いまだに愛され続けている理由はなんだと思いますか? 高橋 まあやっぱり……等身大の野球漫画としての完成形だから古びないんでしょうね。昔の漫画やアニメって、やっぱり今見ると変な部分が多くて、つっこんだり、揚げ足取りなが見ちゃうじゃないですか。でも『キャプテン』は本当に素直に見られるんですよ。たぶん、今の野球部の人が見ても「野球部員はこうあるべき」みたいな部分は変わっていないと思います。それは野球の人も、サッカーの人も、僕のような芸人でも通じるものがあるんじゃないかな。僕がやたらとコントの練習をしたがるのは間違いじゃなかったんだ! ――練習は裏切らないと。 高橋 まあ僕はキングオブコントの決勝前に7時間も練習したせいで口が回らなくなって本番で盛大に噛みましたけど……。野球でも、練習し過ぎて肩壊しちゃうとかもあるんで、やたら練習すればいいってわけじゃないですけどね。 ――谷口も無茶しすぎて指をケガしてましたから……。 高橋 あとは、僕の独自の見解ですけど、丸井とイガラシの関係なんかは、今で言う“萌え”的な見方もできるんじゃないかと思います。 ――ああー、分かります。 高橋 反発しながらも、最終的に認め合ったり。憎まれ口を叩きながらも、イガラシのことを一番買っているのは丸井だったり……。今の女の子が読んでも興奮できるんじゃないかと。
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イガラシ×丸井でBLもアリ?(C) ちばあきお・エイケン
――BLになっていてもおかしくないと。 高橋 そういう雰囲気、俺でも感じますもん。近藤のことで丸井が怒って部室に帰っちゃうんですけど、イガラシが迎えに行って『そのうちキャプテンも近藤とウマがあうようになりますよ、きっと!』『ぼくだって最初はキャプテンにきらわれたじゃないですか』っていうんですよ。それに対して丸井は『お前なんか、いまでも好きじゃねえよ』って。要はそんなことを言い合えるまでの関係になっているってことですからね、キュンとしましたよ! しかも部室にふたりっきりなんですよ! 時代が時代だったらよからぬ方向に行ってますよ。 ――腐女子の人たちにも是非見てもらいたいと。 高橋 野球部とか関係なく、いろんな人の心に響くと思います。俺なんて帰宅部なのに泣いてましたからね。あれ、何に対する涙なのかまったくわからないですけど。考えてみれば野球部を真面目にやっていたら夕方のアニメなんて見られないですからね。帰宅部のバイブルですよ。まあ、今回Blu-rayになったので野球部員の方たちも練習が終わった後に見られますから、是非! (取材・文=北村ヂン) ●高橋健一(たかはし・けんいち) 2000年にプロダクション人力舎のお笑い養成所「スクールJCA」同期生の今野浩喜と「キングオブコメディ」結成。2005年「第3回お笑いホープ大賞」受賞、2010年「キングオブコント2010」優勝。 著書に『卑屈の国の格言録』(サイゾー/小明との共著)。 サイゾーテレビ『ニコニコキングオブコメディ』出演中。 ●キャプテン コンプリートBlu-rayBOX http://www.odessa-e.co.jp/cont/captain/index.html