【TAF2012】『巨人の星』だけじゃない!? インド市場が秘めるポテンシャルに大注目!


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 3月22日、東京国際アニメフェア2012(TAF)のシンポジウム会場で「クール・ジャパン・フェスティバル -インドにおけるコンテンツビジネスの可能性-」が開催された。このシンポジウムは、インド向けにローカライズされた『巨人の星』のテレビ放映が予定されるなど、活況を見せているインドの市場を紹介するとともに、新たなコンテンツビジネスの可能性を探るというものだ。  シンポジウムではまず、登壇者から株式会社LA DITTA代表取締役の小里博栄氏が、市場としてのインドの魅力と、直近のビジネス的なアプローチについて解説した。小里氏によれば、現在のインドは人口の50%が25歳以下という若い国であること、さらに地理的にヨーロッパにもアフリカにも近いという魅力があることを紹介した。  そんなインドの中で、金融センターとして商業の中心となるとともに、映画産業を軸に文化レベルが高い都市がムンバイである。TAFに先立ち、3月15日~18日にはムンバイ市内のショッピングモールで「クール・ジャパン・フェスティバル」が開催されたが、1万人程度の動員を見込んでいたところ、なんと6万人を超える人々が会場を訪れたのだという(初のコスプレイベントも行われて多数の観客が訪れたとのこと)。  非常に多くの人々がコンテンツに限らず、日本の製品に興味を持っていることは確かだ。そこで、現在調査が進んでいるのは「インドでは、日本のどういった製品が売れ筋になるのか」ということだ。小里氏によれば、ムンバイ市内のモールで、醤油や味噌にアニメキャラクターのカードをオマケでつけて販売する。あるいは、玩具店に日本製の玩具を陳列する棚を設ける。さらに、日本では当たり前のように存在する「アイデア雑貨」などをテスト販売してみるといった形で、「売れ筋」の調査はかなり熱心な様子だ。 「今回のフェスティバルには30社あまりが参加しましたが、大半の会社は可能性があると見込んでいます。インドにはポテンシャルがあることは間違いありません。元気がある国ですから、ぜひお越しいただきたい」  と話す小里氏自身も、既に月の半分をインドで過ごしているという。日本に比べて、いまだ経済は発展途上といえるインドだが、やはり経済成長の進展と人口の大きさは魅力だ。 「冷蔵庫の普及率は人口の8%ですが、インドの人口は約11億人。つまり、既に日本の人口に匹敵しています。もっとも需要の高いテレビはソニー製ですし、コンテンツから耐久消費財までビジネスの可能性は高いと思われます。また、物価は安いのですが、中間層は価値を認めれば高くてもお金を払う人々ですし、購買力も高いのが特徴です。今後の10年、15年は非常に面白いと思います」(小里氏) ■インドには海賊版がほとんどない  そんな期待の大きなインド市場に、コンテンツ産業の中からいち早く進出を決めたのが講談社だ。インドにおける『巨人の星』のローカライズとテレビ放映事業を進めてきた講談社の国際事業局担当部長の古賀義章氏は、この作品の可能性を次のように話す。 「インドではまだ日本の漫画は進出しておらず、アニメーションが先行しています。今回のローカライズにおいて扱うクリケットは、現地では大変人気の高いスポーツで、インド対パキスタンの試合では視聴率が85%に達したこともあります。さらに、この作品はインド国内のみならず、パキスタン、スリランカなどをはじめクリケットの人気が高い国へ進出していくことができると考えています」  日本では、ほとんど知られていないクリケットだが、イギリス発祥のこのスポーツは、イギリスの植民地だった国々では人気が高い。そして何より、野球に似たスポーツなので『巨人の星』をもとにしてローカライズしやすいといった点も挙げられる。シンポジウムでは初めて作品のPVが公開されたが、物語はムンバイの少年を主人公にしたストーリー。当然、大リーグボールのクリケット版も登場するし花形や左門にあたるライバルも、主人公の前に立ちはだかる予定だ。ただ、食べ物に関しては冗談の通じない国なので、『巨人の星』で誰もが思い浮かべるちゃぶ台返しは「一回だけ、食事用のプレートをひっくり返す」という形で落ち着いているそうだ。  さらに、単にアニメの放映だけにとどまらず、作品中に登場する商品やスタジアムの看板などに企業のロゴを入れるタイアップなども行う予定だという。  日本製コンテンツの海外進出にあたっては、海賊版と、性・暴力表現に関する表現の意識の違いは大きな問題だ。ところが、登壇者の七丈直弘早稲田大学高等研究所准教授は、この点でもインドは問題の少ない国だという。 「ムンバイ市内を見た限り、海賊版を扱っているのは路上販売の店舗程度しかありません。それもキャラをTシャツに使っている程度でソフト販売は見当たりません。これは、ほかのアジア諸国には見られない風景です。また、宗教的な規制が厳しく『クレヨンしんちゃん』もお尻を丸出しにするシーンはカットされたような国ですが、近年ではバラエティ番組でお色気シーンも登場するなど、伝統的価値観が急速に変わってきている印象です」  海賊版があまり見られないのは、まだ日本のアニメが普及していないことと、モラルの高さと2つの理由があるようだ。  今年、日本とインドは国交樹立60周年を迎えるが、今後はアニメの分野においてもビジネスパートナーとしてよりよい関係が築いていけそうだ。  (取材・文=昼間たかし)
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ビジネス志向へと大きく変化? 【東京国際アニメフェア2012】

taf2012001.jpg  昨年は東日本大震災の余波で開幕直前に中止となった東京国際アニメフェア(以下、TAF)が22日より4日間の日程で開催された。22日と23日は商談を目的としたビジネスデー、24日と25日の2日間は、一般客向けのパブリックデーとしてスケジュールされた。  東京都が主催するイベントであるTAFは、昨年、東京都の“表現弾圧条例”こと「東京都青少年健全育成条例改正案」に反発した出版社10社が加盟する「コミック10社会」がボイコットを宣言。TAFの実行委員会事務局を務める日本動画協会が「実質的に実行不能な事態」と声明を出す中、角川書店らがTAFと同じ日程で幕張メッセにて「アニメコンテンツエキスポ」(以下、ACE)の開催を表明し“分裂”による混乱が取り沙汰されたが、震災が原因で両イベントとも開催を中止する結果となった。  以来、2012年はどのような形で開催されるのか注目を集めていたが、昨年10月にACE側はTAFの開催日から一週間後の開催を発表。この発表の直後に筆者が取材したフジテレビのアニメ深夜枠「ノイタミナ」の山本幸治プロデューサーは以下のように語った。 「今年の同日開催は正直“やめてよ”と思いましたよ。現場ではどちらにつけばよいのか混乱しましたし、お客さんが右往左往する事態になっていたと思います。今回は日程がずれたことで、最悪の事態は回避されたのではないかと思っています」
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ビジネス目的の来場者で、ところどころ混雑しているところも。
 そもそもTAF側もACE側も昨年の騒動を“分裂”とは口が裂けてもいわない。むしろ、ファミリー向けのコンテンツが多いTAFとオタク向けコンテンツの多いACEとに“棲み分け”をするいい機会となったと捉える向きもある。 「2010年のTAFは13万人の来場者がありました。ですので、今回は両方のイベントで16万人来場すれば成功だと考えています」  とは、昨年取材した際のTAF事務局のチーフプロデューサー・鈴木仁氏の言葉だ。  一年の空白期間を経て再開されたTAFの会場で目立ったのは、海外からの出展者であった。とくに広い面積を占めていたのは、中国のアニメ企業による「チャイナアニメーションズ」と名付けられたスペースだ。ここには、40を超える中国のアニメ産業に関わる企業や大学などが出展し、中国におけるアニメ産業の巨大さを示していた。ただ、中国が巨大なアニメの生産国であり市場でもあることが広く知られるようになった現在では、目新しさを感じるものはない。
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ぜひ本編を見てみたくなるチュニジアのアニメーション。
 海外の出展者の中でも目を引いたのは「オーバーシーズパビリオン」と名付けられた一角である。ここには、フランス・スペイン・ハンガリー・ブルガリア・チュニジアなどのアニメ企業や大使館などが出展している。そこで展示されているのは各、々の国で制作されているアニメーションやキャラクターである。各国とも、自国で生産しているアニメーションやキャラクターの日本への売り込みを図るという、これまであまり見られなかった形が見られるようになってきている。中でも異色だったのは、チュニジアのブース。ここでは、チュニジアで今もっとも人気のあるアニメとして、「キャプテン・ゴブザ」というキャラクターが活躍する作品が紹介されていた。これは、ヒーローや民衆がバゲット(長いフランスパン)を武器に武装警官と戦う作品だというが、そんなキャラクターを大使館自らが売り込むことに「本当に革命が起こったのだな」と実感させられる。これら海外ブースは日本語が話せるスタッフがおらず、共通言語が英語だったことも、TAFがビジネス寄りの路線を志向していることを感じさせた。 ■ビジネスイベントへ舵を切ったTAF
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「石ノ森萬画館」の復興は全国のファンからも注目を集める。
 海外からの出展とともに目立ったのは、東北の被災地関係の出展だ。津波で被災した宮城県石巻市の「石ノ森萬画館」の復興活動に関する展示のほか、「宮城・仙台アニメーショングランプリ」のブースでも復興と絡めた企画が紹介されていた。被災地に限らず、地方で開催されている各種イベント関連の展示も目立っており、漫画・アニメを使った地域振興が、全国の津々浦々で行われていることを如実に示していた。  このように、今回のTAFで目立ったのは、新たなビジネスパートナーを求めたり、ライセンスの売り込みを図ったりするBtoBの出展が多いことだ。対して、既に発表されているACEの出展概要を見ると、一般の来場者に主眼を置いた出展者が多い。このことからも、(意図しているか否かは別として)TAFはACEとの棲み分けを模索していると見ることができる。単に目当ての作品やキャラクター関連のブースに行列し、グッズを買い求めるのではなく、アニメ産業の全体を俯瞰できるイベントとなったといってよいだろう。一年の空白を経て、多くのバイヤーが集うアニメの市場としてTAFは、大きく舵を切ったと見てよいだろう。今後、ACEとの再統合が行われるか否かはわからないが、一般客が集うイベントとしての価値以上に、市場としての価値が高まっていくと、予測することができる。  ビジネスデーに開催されたイベントに関しては、別に報告していきたい。 (取材・文=昼間 たかし)
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