日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか? 日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に前編(http://www.cyzo.com/2017/10/post_34943.html)から話を聞いている。こちらの後編では、「海外のオタクイベントの様子」や「世界のR-18の尺度の違い」について伺っていく。 ■海外のオタクイベントは来場者の半数近くがコスプレをしている? ――前編ではフィギュアが一番人気、と伺いましたが、Tokyo Otaku Modeでは書籍も扱っているんですか? 高橋裕氏(以下、高橋) はい。マンガではなく画集ですと、日本語のままで販売もできますので。日本のイラストレーターの画集の場合、むしろ海外のコレクターにとっては、オリジナル版である日本語の方が「コレクションとして価値がある」というのはあると思いますね。 ――「オリジナルを所有したい」というオタク、マニア心は万国共通なんですね。欧米でもオタクイベントは行われていますよね。例えば日本の『コミックマーケット』などと比べ、どのような雰囲気なのでしょうか? 高橋 海外のイベントは日本のイベントより来場者の方がコスプレをしていることが多いな、と思いますね。日本だとコスプレをする人はコスプレをしに、買い物をする人は買い物に、と目的が分かれている感じがしますが、欧米だとそこがいっしょくたになっている印象はあります。なによりコスプレをしている人数が多いですね。来場者の半数くらいがコスプレをしているようにも見えます。 ――会場は東京ビッグサイトぐらいの広さなのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 大型イベントはそのくらいの会場で行っていますね。有名どころとして、ロサンゼルスで開催される『アニメエキスポ』は、4日間で30~35万人が来場するといわれています。フランスの『ジャパンエキスポ』も規模は同じくらいです。そういった大型イベントではコミケ同様、大きな企業ブースがあったりもします。日本のメーカーさん、版元さんも見かけますよ。 ――コミケが3日間で50万人強(杉並区の全人口くらい)ですから、コミケほどではないにしろ、大した動員力ですね。イベント参加者の半数近くがコスプレをしている、というのは日本だとない感覚ですよね。コスプレがここまで広がっているのはなぜだと思いますか? 高橋 米国は日本よりずっとハロウィンの文化が根付いていますから、仮装への敷居が低いというのはあると思います。オタク系イベントに限らず、スターウオーズやマーベルの新作映画が公開されると、ダースベーダーなどのコスプレをした人が映画館でずらりと並んでいたりしますから。 ――「コスプレ」というと日本が先進国のように思えますが、考えてみれば「仮装」は、ここ数年でハロウィンが一部で定着しだした日本より、米国の方がはるかに先輩ですよね。米国のオタクイベントでは、どういった日本のアニメやマンガのキャラクターがコスプレされていますか? 秋山 ほんとうに時期、トレンドによりますね。何年か前の『ニューヨークコミコン』では『進撃の巨人』が多かったです。 ■「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、R-18か? ――Tokyo Otaku Modeでは扱わない商材はあるのでしょうか? 秋山 R-18は今のところ扱っていないですね。 ――なぜなのでしょうか? 秋山 性描写の規制は国によってルールが違いますし、国や地域によって宗教、文化的な背景や価値観に違いがあります。そのあたりを把握しないまま、相手国の文化的タブーに触れてしまえば国際問題にもなりかねません。そこまできめ細やかにみていくヒューマンリソースが今は社内にないので、そういったものに触れない範疇で扱っていますね。 ――日本の性表現はかなり過激とは言われていますよね。少女マンガでも掲載誌によってはセックスシーンがありますし。それに慣れてしまうと他国の「常識」が見えにくくなりますが、例えば他国のR-18事情はどんな感じなのでしょう? 秋山 例えば、シンガポールはヌードがNGです。 ――「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、小学生が読むような週刊少年マンガ誌にも掲載される、古典的表現の一つですが、これもNGなんでしょうか。 秋山 NGですね。 ――「セックスシーンじゃないからいい」とか、そういう“文脈”の話ではないんですね。おっぱいポロリはアウトだと。 秋山 はい。ですので、ある一国を対象にするというのでなく、グローバルに展開するという場合「性的な表現」はとても難しい問題なんです。他にも、例えばゲームでは、結構露出度の高いコスチュームを着ている女性キャラクターがよくいますよね。 ――ビキニの水着に少し装飾がついたようなコスチュームの女性キャラクターは、「あるある」ですよね。 秋山 はい。そういったキャラクターのフィギュアを販売する際に写真つきでメルマガで告知したところ、読者である米国の子供のお母さんから「こういう情報が来ると、親としては戸惑ってしまう」というご意見をいただいたこともありました。 ――米国のAmazonを見ると『進撃の巨人』『東京喰種』が人気です。人を食うのがOKなら、ビキニみたいな衣装のひとつやふたつ……、と思ってしまいそうになりますね。 秋山 あと、日本のアニメやマンガの女性キャラクターは、特に欧米の方には幼く見えるというのもありますね。 ――小児性愛に関するさまざまな規制については、日本がゆるいのか、米国が厳しいのかというのはありますが、歴然な「差」がありますよね。 秋山 はい。グローバルに展開するサービスでは、法律の違いもそうですが、宗教観や文化の違いなどにも敏感でないといけないと思います。 ■2020年は、日本が世界に注目してもらうラストチャンス? ――Tokyo Otaku Modeさんが今後広げていきたい事業はありますか? 秋山 イベントへの出展に加え、店舗など、直接、リアルにお客様と接点を持てる場を増やしていきたいですね。 ――2020年のオリンピックに向け、日本への注目は上がっていますね。 秋山 今後数十年を見ても、2020年ほど日本が世界から注目される機会はおそらくないでしょう。2020年に向けいかに世界中の人に日本は楽しいか、また、行ってみたいと思ってもらえるかが、2020年以降においてもとても大切だと思います。このチャンスを逃さないようにしたいですね。 当社が今まで培ってきたノウハウなどを活かし、新しく海外に向けて日本のオタクグッズを製造、販売したい、という会社の支援も行っています。 ――それは「競合他社の育成」になってしまうように思えますが……? 秋山 いえ、オタクグッズは本当に商材が多彩ですから。一緒に2020年に向けて盛り上げられればと思います。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国のフィギュア週間ランキング(2017年10月)
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「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞く
日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか? 日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に前編(http://www.cyzo.com/2017/10/post_34943.html)から話を聞いている。こちらの後編では、「海外のオタクイベントの様子」や「世界のR-18の尺度の違い」について伺っていく。 ■海外のオタクイベントは来場者の半数近くがコスプレをしている? ――前編ではフィギュアが一番人気、と伺いましたが、Tokyo Otaku Modeでは書籍も扱っているんですか? 高橋裕氏(以下、高橋) はい。マンガではなく画集ですと、日本語のままで販売もできますので。日本のイラストレーターの画集の場合、むしろ海外のコレクターにとっては、オリジナル版である日本語の方が「コレクションとして価値がある」というのはあると思いますね。 ――「オリジナルを所有したい」というオタク、マニア心は万国共通なんですね。欧米でもオタクイベントは行われていますよね。例えば日本の『コミックマーケット』などと比べ、どのような雰囲気なのでしょうか? 高橋 海外のイベントは日本のイベントより来場者の方がコスプレをしていることが多いな、と思いますね。日本だとコスプレをする人はコスプレをしに、買い物をする人は買い物に、と目的が分かれている感じがしますが、欧米だとそこがいっしょくたになっている印象はあります。なによりコスプレをしている人数が多いですね。来場者の半数くらいがコスプレをしているようにも見えます。 ――会場は東京ビッグサイトぐらいの広さなのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 大型イベントはそのくらいの会場で行っていますね。有名どころとして、ロサンゼルスで開催される『アニメエキスポ』は、4日間で30~35万人が来場するといわれています。フランスの『ジャパンエキスポ』も規模は同じくらいです。そういった大型イベントではコミケ同様、大きな企業ブースがあったりもします。日本のメーカーさん、版元さんも見かけますよ。 ――コミケが3日間で50万人強(杉並区の全人口くらい)ですから、コミケほどではないにしろ、大した動員力ですね。イベント参加者の半数近くがコスプレをしている、というのは日本だとない感覚ですよね。コスプレがここまで広がっているのはなぜだと思いますか? 高橋 米国は日本よりずっとハロウィンの文化が根付いていますから、仮装への敷居が低いというのはあると思います。オタク系イベントに限らず、スターウオーズやマーベルの新作映画が公開されると、ダースベーダーなどのコスプレをした人が映画館でずらりと並んでいたりしますから。 ――「コスプレ」というと日本が先進国のように思えますが、考えてみれば「仮装」は、ここ数年でハロウィンが一部で定着しだした日本より、米国の方がはるかに先輩ですよね。米国のオタクイベントでは、どういった日本のアニメやマンガのキャラクターがコスプレされていますか? 秋山 ほんとうに時期、トレンドによりますね。何年か前の『ニューヨークコミコン』では『進撃の巨人』が多かったです。 ■「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、R-18か? ――Tokyo Otaku Modeでは扱わない商材はあるのでしょうか? 秋山 R-18は今のところ扱っていないですね。 ――なぜなのでしょうか? 秋山 性描写の規制は国によってルールが違いますし、国や地域によって宗教、文化的な背景や価値観に違いがあります。そのあたりを把握しないまま、相手国の文化的タブーに触れてしまえば国際問題にもなりかねません。そこまできめ細やかにみていくヒューマンリソースが今は社内にないので、そういったものに触れない範疇で扱っていますね。 ――日本の性表現はかなり過激とは言われていますよね。少女マンガでも掲載誌によってはセックスシーンがありますし。それに慣れてしまうと他国の「常識」が見えにくくなりますが、例えば他国のR-18事情はどんな感じなのでしょう? 秋山 例えば、シンガポールはヌードがNGです。 ――「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、小学生が読むような週刊少年マンガ誌にも掲載される、古典的表現の一つですが、これもNGなんでしょうか。 秋山 NGですね。 ――「セックスシーンじゃないからいい」とか、そういう“文脈”の話ではないんですね。おっぱいポロリはアウトだと。 秋山 はい。ですので、ある一国を対象にするというのでなく、グローバルに展開するという場合「性的な表現」はとても難しい問題なんです。他にも、例えばゲームでは、結構露出度の高いコスチュームを着ている女性キャラクターがよくいますよね。 ――ビキニの水着に少し装飾がついたようなコスチュームの女性キャラクターは、「あるある」ですよね。 秋山 はい。そういったキャラクターのフィギュアを販売する際に写真つきでメルマガで告知したところ、読者である米国の子供のお母さんから「こういう情報が来ると、親としては戸惑ってしまう」というご意見をいただいたこともありました。 ――米国のAmazonを見ると『進撃の巨人』『東京喰種』が人気です。人を食うのがOKなら、ビキニみたいな衣装のひとつやふたつ……、と思ってしまいそうになりますね。 秋山 あと、日本のアニメやマンガの女性キャラクターは、特に欧米の方には幼く見えるというのもありますね。 ――小児性愛に関するさまざまな規制については、日本がゆるいのか、米国が厳しいのかというのはありますが、歴然な「差」がありますよね。 秋山 はい。グローバルに展開するサービスでは、法律の違いもそうですが、宗教観や文化の違いなどにも敏感でないといけないと思います。 ■2020年は、日本が世界に注目してもらうラストチャンス? ――Tokyo Otaku Modeさんが今後広げていきたい事業はありますか? 秋山 イベントへの出展に加え、店舗など、直接、リアルにお客様と接点を持てる場を増やしていきたいですね。 ――2020年のオリンピックに向け、日本への注目は上がっていますね。 秋山 今後数十年を見ても、2020年ほど日本が世界から注目される機会はおそらくないでしょう。2020年に向けいかに世界中の人に日本は楽しいか、また、行ってみたいと思ってもらえるかが、2020年以降においてもとても大切だと思います。このチャンスを逃さないようにしたいですね。 当社が今まで培ってきたノウハウなどを活かし、新しく海外に向けて日本のオタクグッズを製造、販売したい、という会社の支援も行っています。 ――それは「競合他社の育成」になってしまうように思えますが……? 秋山 いえ、オタクグッズは本当に商材が多彩ですから。一緒に2020年に向けて盛り上げられればと思います。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国のフィギュア週間ランキング(2017年10月)
世界130カ国にオタクグッズを配送! 世界のオタク事情をTokyo Otaku Modeに聞く
「日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか? どの国の人が、どんな作品の、どんなグッズを購入しているのか? 日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に話を聞いた。 ■130カ国、5大陸すべてにオタクグッズ販売実績あり ――Tokyo Otaku Modeでは、どの国に対してオタクグッズを販売しているのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 配送はEMS(Express Mail Service:日本郵便が提供する国際郵便サービス)を利用しており、EMSが利用できる地域であればどこでも発送可能です。すでに130カ国、5大陸すべてに配送実績があります。 ――日本が承認している国が196カ国ですから、かなりの割合ですね。アジア圏、北米、フランスなどはオタク文化の人気が高い印象がありましたが、130カ国と聞くと、想像を超えて世界中なんですね。 秋山 「こんな国名初めて見た」という国の方にも配送したことがあります。例えば、カリブ海のマルティニークっていうフランス領の島とか。 ――マルティニーク、初めて聞きました。Tokyo Otaku Modeのホームページは英語ですが、130カ国、というと英語圏でない利用者も多いかと思います。 秋山 ECサイトは、今は基本的には英語だけですね。商品点数が何万件もあるので、全てを多言語対応にするのは社内のリソース的に難しくて。決済の部分など重要な部分から多言語化を進めています。中国向けには、中国のECモールに出店しており、そちらは全て中国語対応です。 ――確かに、お金周りのことについて利用者は母国語で把握したいですよね。商品はどのエリアで特に売れているのでしょうか? 秋山 割合でいくと、北米が圧倒的です。米国が一番ですね。 ――海外の人に販売をしていて、こんなこと日本人はしないな、と思ったことはありますか? 秋山 セールをはじめたときに、セール前に買われた方が「差額を返して」と連絡してきて、驚いたことがありますね。 ■日本のオタクグッズを自由に海外で販売できるというわけではない ――オタクグッズを海外に販売するにあたって、大変なことは何でしょうか? 秋山 販売のための調整ですね。メーカーさんがマンガやアニメのキャラクターをもとにしたグッズを作るときに、版元さんにこういう商品をつくりたい、と申請するのですが、そのときに「販売する地域」も合わせて申請するのが一般的です。 メーカーさんが国内展開しか考えていない場合は、契約を見直すことが必要です。こういった手続きにはとても時間がかかってしまうんですね。 また、「この地域向けにはすでにディストリビューター(販売代理店)がいるので、現地で仕入れてください」というケースも多くあります。単純に「日本で仕入れたものを世界で自由に売れる」というわけではないのです。 ――商品一つ一つにおいて、気が遠くなるような調整が必要になるんですね。そうなると、その「契約」がネックになり扱えない商品というのも多いのでしょうね。 秋山 はい。当社は渋谷の本社のほか、米国のオレゴンにもオフィスがあります。なぜ米国にもオフィスを作ったかというと、米国で販売権を持つ卸の会社さんから仕入れ、米国内で販売するのは問題ないためです。 ――日本のオタクグッズを販売する代理店が米国に存在する、ということは米国内でオタクグッズの普及は進んでいるとも言えます。一方で、それだけでは足りないから、通販を行うTokyo Otaku Modeさんへの注文があるのでしょうね。 秋山 はい。情報はネットにより世界中に瞬時に行き渡るようになりましたが、モノはまだまだ追いついていません。ですので、「ネットで情報は見たものの、購入できる場所がないので、Tokyo Otaku Modeで取り扱って欲しい」という問い合わせはよくいただきますね。それに、オタクグッズは商材の幅がとても広いですから。 ――ネットが普及する前の「情報すら分からずもどかしい」でなく、「分かっているのに手に入れることができない」という別のもどかしさが今はあるのですね。 ■「日常系」「キャラ推し」は米国では今一つ? 世界のオタク事情 ――北米圏が売上の中心と伺いましたが、北米のオタクと日本のオタクの好みに「ずれ」を感じることはありますか? 高橋裕氏(以下、高橋) 北米では日常系や、キャラクター推しの男性向けのタイトルは爆発的にはヒットしない印象ですね。文化的に好きなキャラクターに違いがあるように感じます。一方、中国、韓国などアジア各国はだいたい日本と流行る作品は似ています。 ――そうなると、北米圏で人気の作品はなんでしょうか? 秋山 『進撃の巨人』『東京喰種』『ソードアート・オンライン』は人気が高かったです。最近ですと『僕のヒーローアカデミア』ですね。 高橋 『僕のヒーローアカデミア』は北米人気が高いですね。マーベル(『スパイダーマン』などアメコミ作品を展開する米国の出版社)の話でも、いじめられっ子がヒーローになる、という“成り上がり”は定番のストーリーです。『僕のヒーローアカデミア』は米国の文化的にフィットするものがあったのだと思います。 ――冴えない主人公が成長していく物語は、日米ともに支持される定番なのですね。では、Tokyo Otaku Modeでの人気商品は何でしょうか? 高橋 フィギュアですね。売上個数で見るとぬいぐるみも結構売れているのですが、フィギュアは単価が高いですから。売上額でのランキングの上位はフィギュアが占めています。「フィギュアは世界で人気」というのは各社さんも分かっていますので、正規のルートでフィギュアを購入できる地域は広がっています。 ただ、フィギュアの場合すごくクオリティが低い偽物もあるので、当社を含め「本物を提供している」ことがひとつの価値になると思います。フィギュアは高いものでは2万円くらいするものもあります。そうなると、正規か分からないサイトで購入するのは怖いですよね。 ――買うからには正規品が欲しいですよね。利用者の性年代などはどうなっているでしょうか? 高橋 20代が一番多く、次が10代ですね。この2世代で60%ほどを占めます。男女比は、購入で見ると男性がちょっと多いくらいですね。 ――そう考えると、女性も結構多いのですね。 * * * 後編では引き続き秋山氏と高橋氏に「海外のオタクイベントの様子」や、「日本と海外のR-18の違い」などを伺っていく。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国でも人気な『ソードアート・オンライン』の商品の一部
クールジャパンは成功するのか? 外国人にウケるのは商品の「物語」だった
去る4月6日、秋葉原UDXにて「クールかどうかは外国人に聞け!~英国のクリエイティブ産業とクールブリタニア~」が、クールジャパン・イノベーション研究会主催で開催された。
この研究会の目的はずばり、自分たちで日本の文化や製品がカッコイイと言い合うだけの状況から一歩先に進んで、外国から「カッコイイね」と言われる部分を再発見しようというもの。昨年、経済産業省に設けられたクールジャパン室は、やはり日本の伝統工芸と外国ブランドのコラボ商品の開発の後押しを志向するなど、日本の文化や製品を自画自賛することからの脱却を図っている。官でも民でも立場は変わらず、従来の「クールジャパン」のもう一歩先に、進まなければならないと思っているわけだ。
最初に登壇した三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 芸術・文化政策センター センター長・太下義之氏は「《クール・ブリタニア》再考」と題して講演した。そもそもイギリスが「クール・ブリタニア」として注目されたきっかけは、「ニューズウィーク」が1996年11月号の巻頭特集「ロンドン式」で、「ロンドンが世界で最もCoolな首都である」と掲載したこと。そして、「Varity Fair」が97年3月号の「COOL BRITANIA London Swings! Again!」と題した特集記事で、「60年代半ばと同じように、イギリスの首都ロンドンは文化的な先駆者であり、藝術・ポップス・ファッション・食文化、そして映画等の分野において、新しくて若々しいアイコンに満ちている。政治家さえもがクールだ」と評したことに始まる。これに加えて、97年5月にはトニー・ブレアがイギリス首相に選出されたこともイギリスのイメージ転換を後押しした。就任当時ブレアは43歳、労働党出身にもかかわらず、それまでの労働党の出身者とは一線を画すファッショナブルなスタイルが注目を集めることとなった。
これに時期を併せるように、イギリスの独立系シンクタンク「DEMOS」のマーク・レナード研究員は「複数の政府機関とビジネスが共同して、肯定的なアイデンティティーを発信することができれば、英国の経済に大きな利益をもたらすことになる」と提言する。当時、イギリスは香港の返還や、ダイアナ妃の死去など、国のブランドイメージが低下する事件が相次いでいた時期だ。首相に就任したブレアは、さっそくレナードの考え方を取り入れ、「クール・ブリタニア」をキャッチフレーズとする国家ブランディング戦略を展開していくことになる。
こうして当初は一時的なブームに過ぎなかった「クール・ブリタニア」がクリエイティブ産業振興政策へと発展していったわけである。この政策は、主として外務・英連邦省が所管するパブリック・ディプロマシー政策、文化・メディア・スポーツ省と貿易産業省によるクリエイティブ産業輸出政策、文化・メディア・スポーツ省が所管する、クリエイティブ産業振興政策の三本柱で行われた。
しかし、この政策は思ったほど成果を挙げることができなかった。
その理由は、イギリスを取り巻く内政と外政の両方が大きく変化したことにある。99年にはスコットランドとウェールズで独自の議会が設置される。さらに2001年の911以降、イギリスを含めて欧米諸国は、自らの文化に否定的な勢力が存在していることを痛感する。つまり、先進諸国が総じて世界は多文化主義的であることを認めざるを得ず、多様性を重視する志向へと変化した。これによって「要は、イギリスだけがカッコイイとは言えなくなった」のだと、大下氏は指摘する。
さて、こうした一連の流れを聞いた上で重要なのが、なぜイギリスが(あるいはブレア政権が)、クリエイティブ産業振興策を打ち出すに至ったかである。大下氏は、イギリスが文化産業に注目した理由を、「美しいストーリーではなく、産業構造が劇的に変化したため」だと指摘する。具体的には、製造業が海外に流出したことだ。ひとつの産業セクターが失われれば、当然、その分の雇用を確保しなければならなくなる。その方策として、「仮想フロンティア」としてのクリエイティブ産業が重視されたというわけだ。
この点から見ても、日本の「クールジャパン」に絡む政策は、イギリスの政策を反省点を踏まえながら後追いをしていると見てよいだろう。日本の政策がイギリスと異なる点は、政策で扱う産業の多様性だ。この政策で振興が目指されるのは文化産業だが、日本では、観光・食・住の要素までもが含まれる。つまり、イギリスに比べて幅広い産業に「日本ブランド」の要素をもたらすことができると言える。
その方法を示唆したのが、続いて講演した株式会社ちん里う本店のゾェルゲル・ニコラ氏だ(なんの会社かと思ったら、小田原にある梅干しの老舗だそうで「妻が社長です」と自己紹介)。ニコラ氏は、日本には「老舗」と呼ばれる店舗が山のように存在することを取り上げ、日本の製品の特徴を「物語のあるもの」だと指摘する。具体例として、ニコラ氏は甲州印伝の名刺入れを取り出し、「これは、もともとは鎧の部品だった。“あなたの鎧の一部になります”という物語を作ることもできるし、珍しいものを持っているに至った物語を伝えることもできるんです」と話す。さらに、熊本象眼や、狗張り子なども取り上げて日本の製品の持つ「物語」の豊富さを次々と指摘した。
日常生活において、衣服でも文房具でも、単に見てくれのよいものよりは伝統や開発に至るまでの物語があるもの、あるいは、フェラーリのように所有することに手間も金もかかるもののほうが「買ってよかった」という感覚を抱かせるはず。それは、世界共通なのではないかと考えた。
(取材・文=昼間たかし)
クールジャパンは成功するのか? 外国人にウケるのは商品の「物語」だった
去る4月6日、秋葉原UDXにて「クールかどうかは外国人に聞け!~英国のクリエイティブ産業とクールブリタニア~」が、クールジャパン・イノベーション研究会主催で開催された。
この研究会の目的はずばり、自分たちで日本の文化や製品がカッコイイと言い合うだけの状況から一歩先に進んで、外国から「カッコイイね」と言われる部分を再発見しようというもの。昨年、経済産業省に設けられたクールジャパン室は、やはり日本の伝統工芸と外国ブランドのコラボ商品の開発の後押しを志向するなど、日本の文化や製品を自画自賛することからの脱却を図っている。官でも民でも立場は変わらず、従来の「クールジャパン」のもう一歩先に、進まなければならないと思っているわけだ。
最初に登壇した三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 芸術・文化政策センター センター長・太下義之氏は「《クール・ブリタニア》再考」と題して講演した。そもそもイギリスが「クール・ブリタニア」として注目されたきっかけは、「ニューズウィーク」が1996年11月号の巻頭特集「ロンドン式」で、「ロンドンが世界で最もCoolな首都である」と掲載したこと。そして、「Varity Fair」が97年3月号の「COOL BRITANIA London Swings! Again!」と題した特集記事で、「60年代半ばと同じように、イギリスの首都ロンドンは文化的な先駆者であり、藝術・ポップス・ファッション・食文化、そして映画等の分野において、新しくて若々しいアイコンに満ちている。政治家さえもがクールだ」と評したことに始まる。これに加えて、97年5月にはトニー・ブレアがイギリス首相に選出されたこともイギリスのイメージ転換を後押しした。就任当時ブレアは43歳、労働党出身にもかかわらず、それまでの労働党の出身者とは一線を画すファッショナブルなスタイルが注目を集めることとなった。
これに時期を併せるように、イギリスの独立系シンクタンク「DEMOS」のマーク・レナード研究員は「複数の政府機関とビジネスが共同して、肯定的なアイデンティティーを発信することができれば、英国の経済に大きな利益をもたらすことになる」と提言する。当時、イギリスは香港の返還や、ダイアナ妃の死去など、国のブランドイメージが低下する事件が相次いでいた時期だ。首相に就任したブレアは、さっそくレナードの考え方を取り入れ、「クール・ブリタニア」をキャッチフレーズとする国家ブランディング戦略を展開していくことになる。
こうして当初は一時的なブームに過ぎなかった「クール・ブリタニア」がクリエイティブ産業振興政策へと発展していったわけである。この政策は、主として外務・英連邦省が所管するパブリック・ディプロマシー政策、文化・メディア・スポーツ省と貿易産業省によるクリエイティブ産業輸出政策、文化・メディア・スポーツ省が所管する、クリエイティブ産業振興政策の三本柱で行われた。
しかし、この政策は思ったほど成果を挙げることができなかった。
その理由は、イギリスを取り巻く内政と外政の両方が大きく変化したことにある。99年にはスコットランドとウェールズで独自の議会が設置される。さらに2001年の911以降、イギリスを含めて欧米諸国は、自らの文化に否定的な勢力が存在していることを痛感する。つまり、先進諸国が総じて世界は多文化主義的であることを認めざるを得ず、多様性を重視する志向へと変化した。これによって「要は、イギリスだけがカッコイイとは言えなくなった」のだと、大下氏は指摘する。
さて、こうした一連の流れを聞いた上で重要なのが、なぜイギリスが(あるいはブレア政権が)、クリエイティブ産業振興策を打ち出すに至ったかである。大下氏は、イギリスが文化産業に注目した理由を、「美しいストーリーではなく、産業構造が劇的に変化したため」だと指摘する。具体的には、製造業が海外に流出したことだ。ひとつの産業セクターが失われれば、当然、その分の雇用を確保しなければならなくなる。その方策として、「仮想フロンティア」としてのクリエイティブ産業が重視されたというわけだ。
この点から見ても、日本の「クールジャパン」に絡む政策は、イギリスの政策を反省点を踏まえながら後追いをしていると見てよいだろう。日本の政策がイギリスと異なる点は、政策で扱う産業の多様性だ。この政策で振興が目指されるのは文化産業だが、日本では、観光・食・住の要素までもが含まれる。つまり、イギリスに比べて幅広い産業に「日本ブランド」の要素をもたらすことができると言える。
その方法を示唆したのが、続いて講演した株式会社ちん里う本店のゾェルゲル・ニコラ氏だ(なんの会社かと思ったら、小田原にある梅干しの老舗だそうで「妻が社長です」と自己紹介)。ニコラ氏は、日本には「老舗」と呼ばれる店舗が山のように存在することを取り上げ、日本の製品の特徴を「物語のあるもの」だと指摘する。具体例として、ニコラ氏は甲州印伝の名刺入れを取り出し、「これは、もともとは鎧の部品だった。“あなたの鎧の一部になります”という物語を作ることもできるし、珍しいものを持っているに至った物語を伝えることもできるんです」と話す。さらに、熊本象眼や、狗張り子なども取り上げて日本の製品の持つ「物語」の豊富さを次々と指摘した。
日常生活において、衣服でも文房具でも、単に見てくれのよいものよりは伝統や開発に至るまでの物語があるもの、あるいは、フェラーリのように所有することに手間も金もかかるもののほうが「買ってよかった」という感覚を抱かせるはず。それは、世界共通なのではないかと考えた。
(取材・文=昼間たかし)
経産省「クールジャパン」サイトが妙にオシャレな理由とは?

「Cool Japan Daily」
「クールジャパン」という言葉を聞いた時に、何を思い浮かべるだろうか? やはり、多くの人は漫画・アニメ・ゲームを思い浮かべるだろう。加えて、ファッションや音楽を思い浮かべる人も多いだろう。いずれにしても、日本のポップカルチャーが国際的に好評を得ている現状=クールジャパンというのが、一般的な認識である。
もはや、長い間日本を支えてきた自動車産業をはじめとして、従来の重厚長大産業では、国家の未来が危ういと思っているのか国の省庁でもクールジャパンを軸にした戦略が盛んに検討されている。そうした省庁の、ひとつの柱でもある経済産業省では、今年1月から、クールジャパンに関連するニュースやトレンド、オピニオンなど情報発信のポータルとなるサイト「Cool Japan Daily」をオープンしている。
このサイトは、担当部局である経済産業省のクリエイティブ産業課からだけではなく、大勢の寄稿者によって情報を発信していこうというものだ。ところがこのサイト、「クールジャパン=漫画・アニメ」のイメージがあるとアクセスした人は「えっ!」と驚くに違いない。まだオープンから間もないため、テキスト主体でデザインも単調なのは今後に期待するとして、扱っている内容が少しオシャレな感じなのだ。
寄稿者のラインナップを見ると、「BRUTUS」(マガジンハウス)編集長の西田善太氏、森美術館館長の南條史生氏、建築家の隅研吾氏といった名前が並ぶ。いわゆる「オタク」の側に寄っている人物を挙げるならば、『アニメ文化外交』(筑摩書房)などの著書がある櫻井孝昌氏らの名前があってもおかしくない。どうして国の機関がこのようなサイトをオープンするに至ったのか。経済産業省のクリエイティブ産業課に聞いてみた。
「私たちの扱うクールジャパンとは、いわば、"かっこいい日本"という意味です。自分で言うとちょっとヘンですが、具体的には世界からクールといわれる国内産業のこと。漫画やアニメなどのポップカルチャーは、既に世界からクールだと言われていますが、衣食住エンターテインメント産業の中には、まだまだもっと世界に売っていけるものがあると思っています。それらの産業を応援するのが私達の役割です。サイトもそうした目的のためにオープンしました」
なるほど、世界から「クール=カッコイイ・オシャレ」といわれるものを目指すのであれば、なんとなくサイトの雰囲気も理解できるだろう。
気がつけば、クールジャパンという言葉が広まってから、もう随分と月日が過ぎたように思う。「ニューズウィーク日本版」(阪急コミュニケーションズ)が「萌える世界」という特集を組んで、表紙をメイドのイラストで飾ったのが2007年3月。これが、日本のポップカルチャーが世界でウケていることを知らしめる一つの契機になったが、そこから既に5年も過ぎているのだ。
漫画やアニメは、ある程度は国や行政からの支援を受けずとも、世界で売っていくことのできる産業である(もっとも、売り方や今後の展開などで官民の協力が不可欠なこともあるが)。しかし、国内にはまだまだ世界でウケる可能性があるのに世界的にはあまり知られていないものが山のように眠っている。経済産業省の目指すクールジャパンは、そうしたものを発掘し、世界に広めていくことにあるようだ。
「いま日本にあるままの形で世界でも同じように売れるものは限られていると思います。なんらかの工夫が必要でしょう。ルイ・ヴィトンと輪島塗りのコラボ商品のようなものがもっとあると思います」(前出・担当者)
「Cool Japan Daily」では今後、伝統工芸の当事者を登場させるなど、コンテンツの充実を行っていく方針だという。省庁の中でも誰もやったことのない分野だけに、さまざまな可能性に挑戦していかなければ、ならないということだろうか。
■究極的な目的は日本自体をブランド化していくこと
こうしたクールジャパンの究極的な目標は、日本の特定のジャンルの商品に価値を持たせるのではなく、日本そのものに価値を持たせることにあるだろう。例えるなら、日本で北欧の雑貨や家具が安くてセンスのよいものだという評価を得てきた結果、北欧に対していいイメージを持つ人が多くなってきているという感じだろう。新たな日本のイメージをデザインして発信していくこと自体が、クールジャパン政策の目的といえるだろう。幸いなことに、既に漫画やアニメの力によって日本の良好なイメージは世界に受け入れられつつある。道のりは長いが、可能性は著しく広い。
結局のところ、クールジャパンは直接的には産業政策であるが、将来的には日本という国家が世界の中で、ある程度の地位を獲得するための壮大な戦略の一部といえるだろう。現に、アメリカは文化を世界に発信することで、支配を成し遂げているのだから。
(取材・文=昼間たかし)
経産省「クールジャパン」サイトが妙にオシャレな理由とは?

「Cool Japan Daily」
「クールジャパン」という言葉を聞いた時に、何を思い浮かべるだろうか? やはり、多くの人は漫画・アニメ・ゲームを思い浮かべるだろう。加えて、ファッションや音楽を思い浮かべる人も多いだろう。いずれにしても、日本のポップカルチャーが国際的に好評を得ている現状=クールジャパンというのが、一般的な認識である。
もはや、長い間日本を支えてきた自動車産業をはじめとして、従来の重厚長大産業では、国家の未来が危ういと思っているのか国の省庁でもクールジャパンを軸にした戦略が盛んに検討されている。そうした省庁の、ひとつの柱でもある経済産業省では、今年1月から、クールジャパンに関連するニュースやトレンド、オピニオンなど情報発信のポータルとなるサイト「Cool Japan Daily」をオープンしている。
このサイトは、担当部局である経済産業省のクリエイティブ産業課からだけではなく、大勢の寄稿者によって情報を発信していこうというものだ。ところがこのサイト、「クールジャパン=漫画・アニメ」のイメージがあるとアクセスした人は「えっ!」と驚くに違いない。まだオープンから間もないため、テキスト主体でデザインも単調なのは今後に期待するとして、扱っている内容が少しオシャレな感じなのだ。
寄稿者のラインナップを見ると、「BRUTUS」(マガジンハウス)編集長の西田善太氏、森美術館館長の南條史生氏、建築家の隅研吾氏といった名前が並ぶ。いわゆる「オタク」の側に寄っている人物を挙げるならば、『アニメ文化外交』(筑摩書房)などの著書がある櫻井孝昌氏らの名前があってもおかしくない。どうして国の機関がこのようなサイトをオープンするに至ったのか。経済産業省のクリエイティブ産業課に聞いてみた。
「私たちの扱うクールジャパンとは、いわば、"かっこいい日本"という意味です。自分で言うとちょっとヘンですが、具体的には世界からクールといわれる国内産業のこと。漫画やアニメなどのポップカルチャーは、既に世界からクールだと言われていますが、衣食住エンターテインメント産業の中には、まだまだもっと世界に売っていけるものがあると思っています。それらの産業を応援するのが私達の役割です。サイトもそうした目的のためにオープンしました」
なるほど、世界から「クール=カッコイイ・オシャレ」といわれるものを目指すのであれば、なんとなくサイトの雰囲気も理解できるだろう。
気がつけば、クールジャパンという言葉が広まってから、もう随分と月日が過ぎたように思う。「ニューズウィーク日本版」(阪急コミュニケーションズ)が「萌える世界」という特集を組んで、表紙をメイドのイラストで飾ったのが2007年3月。これが、日本のポップカルチャーが世界でウケていることを知らしめる一つの契機になったが、そこから既に5年も過ぎているのだ。
漫画やアニメは、ある程度は国や行政からの支援を受けずとも、世界で売っていくことのできる産業である(もっとも、売り方や今後の展開などで官民の協力が不可欠なこともあるが)。しかし、国内にはまだまだ世界でウケる可能性があるのに世界的にはあまり知られていないものが山のように眠っている。経済産業省の目指すクールジャパンは、そうしたものを発掘し、世界に広めていくことにあるようだ。
「いま日本にあるままの形で世界でも同じように売れるものは限られていると思います。なんらかの工夫が必要でしょう。ルイ・ヴィトンと輪島塗りのコラボ商品のようなものがもっとあると思います」(前出・担当者)
「Cool Japan Daily」では今後、伝統工芸の当事者を登場させるなど、コンテンツの充実を行っていく方針だという。省庁の中でも誰もやったことのない分野だけに、さまざまな可能性に挑戦していかなければ、ならないということだろうか。
■究極的な目的は日本自体をブランド化していくこと
こうしたクールジャパンの究極的な目標は、日本の特定のジャンルの商品に価値を持たせるのではなく、日本そのものに価値を持たせることにあるだろう。例えるなら、日本で北欧の雑貨や家具が安くてセンスのよいものだという評価を得てきた結果、北欧に対していいイメージを持つ人が多くなってきているという感じだろう。新たな日本のイメージをデザインして発信していくこと自体が、クールジャパン政策の目的といえるだろう。幸いなことに、既に漫画やアニメの力によって日本の良好なイメージは世界に受け入れられつつある。道のりは長いが、可能性は著しく広い。
結局のところ、クールジャパンは直接的には産業政策であるが、将来的には日本という国家が世界の中で、ある程度の地位を獲得するための壮大な戦略の一部といえるだろう。現に、アメリカは文化を世界に発信することで、支配を成し遂げているのだから。
(取材・文=昼間たかし)


