「みんな、ちょっと大げさじゃない?」志茂田景樹が説く、悩み多き時代を生きるヒント

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 フォロワー数約23万人(2012年10月現在)を誇るTwitterアカウント「@kagekineko」に、日々、寄せられる仕事・学校・恋愛・人間関係の悩み。それに答える志茂田景樹氏のリプライは、読んでいるだけで人生が楽になり、小さな希望の火が心にポッと灯る。  有名人が発する言葉は、それだけで大勢が聞く耳を持つ。しかしこの人の場合、それはただのきっかけにすぎず、大勢の人が素直に彼の言葉を求めているように思う。なぜなら今の彼を支持する多くの人が、直木賞作家であることも、お茶の間タレントとしてバラエティ番組でもてはやされていた姿もよく知らない若者たちだからだ。  72歳にして再ブレイク中の本人を直撃した。 ――悩みが寄せられるようになったきっかけはなんですか? 志茂田景樹(以下、志茂田) 最初は「失敗したってそんなに気にすることはないんだよ」というような、僕がいつも漠然と考えていることをつぶやいてたんだけど、それに共感する人が多くて、フォロワーがどんどん増えていったんです。それからだんだん相談みたいなリプライが来るようになって、答えているうちに相談が殺到したという流れですね。全部には答えられませんので、「上から8つ答えようかな」って感じで、Twitterを開いた時にたまたま見たところから順に答えています。 ――悩みを送っている人は、どんな心境だと思いますか? 志茂田 Twitterには140字という制約があるから、別に長い答えは期待してないわけですよ。短い中から「何かヒントがつかめればいいな」「自分の考えと合っているかな」って感じじゃないかな。僕もなんとなく「この人は、もう自分で結論を出していて、背中をちょっと押してもらいたいんだろうな」とかって、その人の意図を読み取って答えてるつもりです。 ――特にどんな悩みが多いですか? 志茂田 今は就活中の大学生から「なかなか内定がもらえない」っていうのがよく来ます。焦るのは仕方ないとしても、「もうダメだ」って考える人が多くて。そういう時は、「あなたを必要としてる人はいるんだよ」って返すようにしてます。それで「もう少し頑張ってみようかな」って思ってくれれば回答は成功ですよね。5~7月あたりは、新入社員の人からの「この会社、自分に向いてないから辞めたい」という悩みが多かったですね。 378A9331.jpg ――「死にたい」と送ってくる人も多いようですが。 志茂田 そういう人に「親にもらった命を粗末にして、死にたいとは何事だ」なんて、昔のお説教みたいなことを返しちゃいけないんです。それより死から少し離れたところから答えると、素直に聞いてくれますよ。まあ、本当に死にたい人間はあまりTwitterに「死にたい」なんて書きませんから、気持ちが柔らかくなる言葉が欲しいんだと思います。 ――ちなみに志茂田さん自身は、死について考えることはありますか? 志茂田 よく考えます。なぜなら、僕はあと200年くらい生きたいと思ってるから(笑)、死に対する覚悟がまだできてないんです。死なんて本当はその日が来るまで、全然考えなくていいことなのに、それでも考えたり怖がったりするってことは、自分がいかに煩悩が多いかってことですよね。 ――Twitter以外に「FRIDAY」(講談社)の連載でもお悩み相談をされてますが、悩みを聞きすぎて、負のパワーに疲れてしまうことはありませんか? 志茂田 それはないですね。僕は人間に対する好奇心が強いほうなので、いろんな人と接することで、作家として創造意欲を駆り立てられますし、人間って一人ひとり違って面白い生き物だなあって感じられますしね。僕、Twitterを開いた瞬間にときめくんです。Twitterの“長方形の小窓”を通して世界を見たり、今まで接したことのないタイプの人が、僕に何か言ってきたりする。そういう意味では、板塀に囲まれた家の節穴から外を覗くような感覚に似てるかもしれませんね。 ――ところで書き下ろしの著書『失敗したって、いいんだよ ~希望をつくる40の言葉~』(青志社)が発売になりましたが、この本で伝えたいメッセージは何ですか? 志茂田 思い通りにいかないと、すぐにへこんでしまう人が多くて、「ちょっと大げさじゃない?」って気がしてるんです。みんな、目に見えない“転ばぬ先の杖”を持ってるんだから、少々のつまずきは、別に転んだことじゃないんだよと。 ――どんな人に読んでもらいたいですか? 志茂田 中学生から社会に出て2~3年あたりまでの人に読んでもらいたいなあって思います。特に中学生くらいは、失敗を恐れてすぐに心が揺れ始めるので。 378A9270.jpg ――あの、私も悩みがあるので聞いていただきたいのですが……。 志茂田 はい、どうぞ。 ――私、32歳なんですけど、今まで付き合ってきた男性がダメ男ばかりなんです。今、付き合ってる29歳の男性も労働意欲がなくて。生活できるギリギリの額しかバイトで稼がず、貯金もなくて……。 志茂田 その人は一人暮らしなの? ――いえ。同じような感じの友人と数人で暮らしてます。 志茂田 じゃあ結構、知恵のある人なんじゃない? 最低の稼ぎでちゃんと食っていけるように、それなりに知恵を働かせてる。 ――そう言われればそうですね。 志茂田 僕がこれまで見てきた感じだと、一生、ダメ男でいる割合って、結構少ないですよ。“ダメなヤツ”って言われてる人でも、大部分の人は、数年後や数十年後にはちゃんと働いてる。もしその人が、会うたびにデカいことを言ったり、「こういう理由で雌伏してるんだ」とか言い訳めいたことばかり言っているようなタイプのダメ男じゃなければ、将来性は悪くないですよ。意外と時と所を得れば変わっていくタイプだと思いますね。 ――なんだか心が軽くなりました! ところで、志茂田さん自身に悩みはないんですか? 志茂田 もちろん悩むこともありますよ。でもほとんどの悩みって、絞っていくと一本の線みたいになるんです。だから大きな悩みのように見えても、実はすごく細いちょっとした悩みだったりするんですよ。 (取材・文=林タモツ/撮影=尾藤能暢) ●しもだ・かげき 1940年、静岡県生まれ。大学卒業後は、20種類以上の職を転々とする。1976年『やっとこ探偵』で小説現代新人賞を、1980年『黄色い牙』で直木賞を受賞。執筆活動のほか奇抜なファッションセンスが注目され、テレビなどでも活躍。1999年より「よい子に読み聞かせ隊」を結成。最近はTwitterでの人生相談が話題となり、フォロワー数が23万人を超える人気となる。 Twitterアカウント「@kagekineko

創価学会をモデルにしたあの問題作が28年ぶりに電子書籍で復刊!

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最近では、Twitterでも人気を集める
志茂田氏。
 高度経済成長時代に躍進を続けるマンモス教団と、その教団に君臨するトップへの不信感で苦悩する青年信者――。1980年代に創価学会をモデルにして描かれた志茂田景樹の小説『折伏鬼(しゃくぶくき)』が、このほどiPhoneの電子ストアアプリ(グリフォン書店)から電子書籍として復刊される。自身もかつて創価学会員として活動した経験を持つ志茂田氏が、一人の架空の青年部員の視点を通して教団内部の矛盾を描いた問題作だ。初版から30年近くが経つ今も古書店では高値がつき、Amazonでもプレミア値がつくなど(2月16日現在の中古価格は約3,000円)注目度は依然として高い。復刊に向けた今の気持ちを志茂田氏に聞いた。 ――文春文庫で出たのが1984年ですから28年ぶりの復刊です。 志茂田景樹氏(以下、志茂田) 今も若い方が古書などで読んでくれているようですね。創価学会の歴史を全然知らなくて、これを読んで驚いたという声も聞きます。ネットで最初に評判になったのは10年くらい前なんですが、最近のネット上の書き込みを見ると「古書店で見つけたけど高すぎてムリ」とか「図書館でやっと見つけたので読みます」とか。そういう方々にも今回の電子書籍化で手軽に読んでいただけると思います。 ――志茂田さんご自身が、かつて熱心な学会員だったそうですが。 志茂田 入信が昭和38年で、40年には退転(脱会)したので、活動期間は3年弱でしょうか。当時の創価学会は、若者たちを吸引する一種の熱気のようなものがあって、僕自身も教団の中に埋没しながら、自分の夢をいっとき託したという時期があったわけです。辞めてからもしばらくそれを引きずっていたところがあり、区切りをつける意味もあってこの本を書いたというのもありますね。 ――今回電子化される『折伏鬼』は、二代会長の戸田城聖氏のいわゆる「折伏大行進」で大躍進した時代をモデルに描かれています。また、『新折伏鬼の野望』のほうは、三代会長の池田大作現名誉会長の若かりし頃の、いわば教団の成熟期が描かれています。今の世代は「学会イコール池田氏」というイメージが強いですので、『新――』のほうが読んでピンとくるかもしれません。 志茂田 そうかもしれませんね。二代戸田会長の時代は75万世帯の信者を獲得し、教団に一番熱気が渦巻いていた時期。当時の入信者は病気と貧乏人が多かった(笑)。つまり、現世利益を説いていたわけで、会員もある意味で純朴な動機で、正しいかどうかは別にして、一生懸命に家族や友人を折伏していた。三代の時代(池田大作氏の時代)になってからは政治に進出し、いろんな意味で教団が拡大していった。僕はちょうどその時期に青春期を迎えて、教団の青年部でかなりアクティブにやっていました。僕らの頃は親の代からの学会員という二世会員がずいぶんいたので、家族を折伏する必要もなかったんです。僕自身の親は信者ではなかったですけどね。 ――志茂田さんは友人をかたっぱしから折伏していたのですか。 志茂田 学会の王道とすればそうすべきところなんでしょうが、実は個人単位でもあまりしなかったです。個々でどうこうではなく、組織単位で自分の力を試してみたいという野心といいますか、純粋な信心とは別の次元でエネルギーを吐き出していた気がします。当時の青年部は軍隊的な組織で、そういう体制の中で、たとえば大学の文化祭とか体育祭の中で学生をマスで集めて教団に強引に導いていく。だから、選挙の時なんかはすごかった。今では考えられないことをしていましたよ。 ――たとえばどんなことをされていたのですか。 志茂田 対立候補の選挙ポスターが貼ってあると、僕ら行動隊が行って、針金を切って外して燃やしてしまうとかね。そんなのは日常茶飯事。完全な公職選挙法違反。あと、選挙に限らずだけど、街中で寺を見つけるとお坊さんに法論をふっかけたり。法論といっても今思うと勝手な理屈で(笑)。でも大勢の学会員で押しかけていくから、向こうも閉口してしまうんですよ。 ――『新折伏鬼の野望』には、まさにその時代が描かれています。主人公がそうした教団の空気に同化できず、冷静に自分を見つめ直し、同時に会長の人間性や教団の様々な矛盾に疑問を持ち始めていく。 志茂田 あの時代(編注:池田会長の時代)は国内で会員数が膨張しきってしまい、教団の拡大を海外へ求めた時代ですね。三代会長がやたら外国を訪問して、いろんな名誉賞をかきあつめていた頃でもある。「ナントカ名誉学長」とかいうのを何百と持っていますからね。そういう実績でノーベル平和賞をもらえると思っていたのかもしれませんが、ノーベル賞の選考委員の目もふし穴ではないですからね。 ――創価学会が大教団になってから数十年が経過してオウム真理教が出現しました。志茂田さんは『新折伏鬼の野望』のあとがきに「オウム裁判の決着により、オウムの再生が始まった」と書かれていますが、オウムの今後をどうご覧になりますか。 志茂田 結論から言うと、オウムはなくならないと思います。むしろ、これからさらに膨張するでしょうね。地下鉄サリン事件以降、オウムは「アレフ」と「ひかりの輪」に分かれますが、それでも消滅しないというのが宗教の強さであり、怖さなんです。過去の例を見ると、大正時代に神道系の「大本(おおもと)教」という新宗教があり、亀山城を買収したり大正日日新聞を傘下に収めたりと派手な動きをしていたんですが、大正10年に不敬罪と新聞紙法違反で摘発され、教団トップ以下幹部が逮捕され、神殿も破壊されました。一種の弾圧なんですが、そこから分派したのが「生長の家」と「世界救世教」。弾圧を経てさらに大きな教団が生まれているんです。 ――「大本教」はその後、昭和10年にも治安維持法で大弾圧をされています。 志茂田 それでも教団は三分裂して、今どれも活発に活動しています。創価学会も草創期に摘発されていて、初代会長や幹部が獄中に入っています。弾圧された教団ほどなぜか生き残り、潜伏期間を経た後に、ある時期がくると大きく復活しているんです。むしろそういうファナティックな力がないと教団は生き残っていけない。弾圧されて枝分かれして、時代の中で変質を続けながら、エネルギーを失わずにしぶとく生き残る。打たれ強いんです。だから10年、20年後は「ひかりの輪」も「アレフ」も、両方とも今より大きくなっていると思いますよ。今は数百人規模ですが、このまま消えることだけはないでしょうね。 (文=浮島さとし) ●グリフォン書店 <http://itunes.apple.com/jp/app/id429342467?mt=8&ls=1>
折伏鬼 (1980年) 紙派のあなたに。 amazon_associate_logo.jpg
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