一日の最後に見るならこれ! 癒やしの日常アニメ『ゆゆ式』

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テレビアニメ「ゆゆ式」公式サイトより
 かっこいいロボットがガンガン戦う『翠星のガルガンティア』『革命機ヴァルヴレイヴ』『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』(個人的には『マジェスティックプリンス』が好きです!)。ロトスコープとアクの強い物語がなんだか心地悪い『惡の華』。ダイナミックなアクションと危機的な制作状況が作品に妙な緊迫感をもたらす『進撃の巨人』などなど、この連載でも紹介してきたように、今クールは制作側の気合がビシバシ感じられるアニメが数多く放送されています。  ここ数年続いた「日常系アニメ」ブームの反動ともいえる物語回帰を果たした上記の作品群はいずれも見応え十分な半面、立て続けに見ていると少しおなかいっぱいになってしまうのも事実。ヘヴィな作品の合間にライトな作品を見て、箸休めをしたいのも人の性。そんな欲しがり屋さんな我々アニメファンの心を癒やしてくれるのが、現在TOKYO MX、AT-Xなどで放送中のアニメ『ゆゆ式』です。  野々原ゆずこ、櫟井唯、日向縁の女子高校生3人が繰り広げる、まったりした学園生活を描く本作。ここから何か物語が動き出すのかというとそんなことは一切なく、終始のんびりした雰囲気の中でとりとめのないガールズトークが展開するのです。正直「ここが斬新だ!」とか「この演出がすごい!」みたいな要素は皆無なのですが、何気ない日常を本当に楽しそうに過ごすヒロインたちの姿は、仕事や学業に疲れた現代人の心を癒やしてくれるような気がします。  ちなみに本作のメインキャラクター3人を演じるのは、同年代の若手女性声優たち。まず、ゆずこ役に大久保瑠美、唯役に津田美波が登板していますが、彼女らは日常系百合アニメとしてヒットした『ゆるゆり』でもメインキャラを演じていたというのは、声優ファンならもはや常識。本作でもノリノリのボケ&ツッコミを披露してくれるのも、声ヲタ的には高ポイントです。  そしてもう1人のメインキャラ・縁を演じるのは、昨年『新世界より』でヒロイン・早季を演じた種田梨沙。ほかの2人と一緒に、愉快なガールズトークを繰り広げます。その脇を固めるのが、茅野愛衣、潘めぐみに堀江由衣。爽やかで耳触りのいい女性声優の声が作品に彩りを添えます。  環境映像のようにぼんやりと映像を眺めるもよし。環境音楽のようになんとなく流しているだけでもよし。まさに一日の最後に楽しむのにぴったりなアニメが『ゆゆ式』なのです。  それにしても、世界の命運をかけて戦う大作アニメから、とりとめのない日常を描くアニメまで網羅する今クールのテレビアニメは、言うなれば日本のアニメの持つ懐の深さを象徴するようなラインナップといったところでしょうか。テレビ番組表をチェックするのが妙に楽しい今日この頃です。 (文=龍崎珠樹)

異例のアニメーター募集に、未完成バージョンの放映……アニメ版『進撃の巨人』は大丈夫か

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アニメ『進撃の巨人』公式サイトより
 もはや撤退不可能。されど進めば地獄。そんな進退極まる状況にあるのが、現在放送中のアニメ『進撃の巨人』だ。2009年10月より「別冊少年マガジン」(講談社)で連載をスタートした本作は、謎の巨大生物・巨人に蹂躙(じゅうりん)される人類の絶望的な戦いを描く、ファンタジーアクション作品。単行本が発売されるやいなや、「このマンガがすごい!」2011年版オトコ編1位。「全国書店員が選んだおすすめコミック2011」1位。第4回マンガ大賞第7位。第35回講談社漫画賞少年部門受賞といった具合に次々と高評価を獲得。最新巻10巻までに累計発行部数1200万部を突破している大ヒット作である。  そんな本作のテレビアニメが4月よりMBSほかで放送を開始。いろいろな意味で話題を呼んでいる。原作者・諫山創の荒削りながら緊迫感あふれる描線を残しつつも、アニメらしい洗練されたキャラデザインや、CGを駆使することでワイヤーアクションとガス噴出を組み合わせた本作ならではの「立体機動アクション」が乱舞する第1話は、Linked Horizonの壮大な主題歌「紅蓮の弓矢」の迫力も相まって、アニメファンの間で高い評価を獲得。すぐさま主題歌のMADムービーがニコニコ動画に投稿されるなど、ちょっとしたフィーバーとなった。  しかし、第1話放送後に総作画監督・浅野恭司がTwitter上でアニメーターの募集を訴えるツイートを投稿。放送開始早々、本作のアニメ制作体制に対する不安がアニメファンの間でささやかれていた。ついで、先日放送された第4話から不穏な空気が作品に漂い始める。福岡放送で番組をチェックした視聴者の間から、妙に静止画や使い回しのカットが多いという声がネット上で上がり始めたのだ。その後、ファンの手によって福岡放送版と全国放送版の比較動画が制作され、アクションシーンを中心に福岡放送版は画像が差し替えられていることが発覚。そして先週放送された第5話で、事態はより深刻さを増してくる。先述の福岡放送に加え、北海道テレビ、テレビ大分でも静止画像、風景カットなどを多用した未完成バージョンが放送されてしまったのだ。  局によって異なる内容が放送されてしまったという事態に対して、公式サイト上には「制作上及び放送局納品期限の都合」と謝罪文が掲載されたが、果たしてこのまま無事に2クールを乗り切ることができるのか、ファンとしては戦々恐々といったところだろう(『進撃の巨人』の制作元請を担当するのは、『ギルティクラウン』などを制作したProduction I.G 6課のスタッフが2012年に独立し、設立したばかりの制作会社・WIT STUDIOである)。  これまでも、制作スケジュールの遅延や、制作体制の破たんでオンエアに影響を及ぼした作品がなかったわけではない。制作スケジュールの破たんによる動画枚数の削減、ストップモーションの多用。さらに線画の使用まで演出に昇華してしまった『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)や、韓国スタジオに丸投げした結果、壮絶な紙芝居を放送する羽目になった『ロスト・ユニバース』(98年)は有名なところだろう。それ以外にも、ここ数年に限るなら、第7話の納品が間に合わず第6話を2週連続で放送せざるを得なくなってしまった『ガドガード』(03年)(本作は全26話のうち、20話で打ち切りとなってしまった)。主にシナリオ面、設定面での作り込みに時間をかけ過ぎたために、あまり作画に時間を割くことができなくなりお粗末な作画でオンエア。その後、ファンからのブーイングを受けてDVDの単品発売が中止。全面的に作画リテイクを施し、放送開始から1年後にBOX形態でようやくソフト化を実現した『咎狗の血』(10年)(BLゲームを原作とする本作において、キャラクターの作画崩壊はもっともクリティカルな問題だったようである)。はたまた超絶低クオリティー映像でアニメファンを震撼させた『MUSASHI -GUN道-』(06年)。「制作会社の都合」により、第6話で放送が中断してしまった『RGBアドベンチャー』(06年)など一連のACCプロダクション作品など、華やかなアニメブームの裏側では惜しくも討ち死にしてしまったアニメたちが死屍累々である。  この中に『進撃の巨人』が新たにリストアップされるのか。それとも、ここで見事踏みとどまり、アクションアニメ大作として歴史に名を残すのか。図らずも本編に負けず劣らずの危機的状況となってしまった(と思われる)『進撃の巨人』の制作状況だが、スタッフの奮戦に期待したいところである。 (文=龍崎珠樹)

賛否両論巻き起こす、アニメ版『惡の華』ロトスコープの功罪

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アニメ『惡の華』公式サイトより
 「ハ・ナ・ガ・ハナガ・サイタヨー」のエンディングテーマがいやでも耳に残るアニメ『惡の華』。皆さん、見てます? 「別冊少年マガジン」(講談社)連載中のコミックを原作とした本作は、全編にわたって実写映像をトレースする「ロトスコープ」という技法で制作された日本初のテレビアニメとして、TOKYO MXなどU系局やネットで4月より放送開始。記号的表現の真逆をいくような写実的な映像は、現在主流のアニメ表現に慣れ切ったアニメファンのみならず業界人にも大きな衝撃を与え、「すごい表現だ!」「いやいや、気持ち悪い!」「仲村さんがかわいくないブヒー!」と賛否両論を巻き起こしています。  本作を語る上で、ロトスコープという手法について触れないわけにはいけません。冒頭で触れたように、ロトスコープはモデルの動きをトレースした作画をアニメーションさせる手法で、その制作の手間は通常のアニメの比ではありません。全編ロトスコープで制作されたアニメはディズニー映画『白雪姫』(1937年)や『ガリバー旅行記』(39年)、キアヌ・リーブス主演の『スキャナー・ダークリー』(06年)などが挙げられますが、その多くは特撮映画のVFX表現やアニメ『坂道のアポロン』の楽器演奏シーンなどのように、一部で使用されるのみにとどまっています。ただその分、キャラクターを演じる役者の微妙な表情や何気ない仕種、息遣いまでもが生々しくアニメーションに再現されるのです。  そんな『惡の華』がいかにして作られているのか。この疑問に応えるかのように、4月30日よりニコニコ動画にて第3話の実写パートが公開されています(http://live.nicovideo.jp/watch/lv136003444)。この動画を見ると、本物の映画同様にセットが作られて、その中で役者が迫真の演技を繰り広げていることに、まず誰もが驚くことだと思います。  アニメの素材として使用される、というレベルではないあまりのガチっぷりに「もうこのまま実写ドラマにしちゃえばいいじゃない」というコメントが流れていました。確かに自分もそう感じたのですが、しかし、何かが物足りない。すでにアニメ『惡の華』の世界を覗いてしまった自分としては、この実写映像は『惡の華』の映像化作品としては安定しすぎている、と感じてしまったのです。  シリアスなドラマでは等身が高めキャラデザになるし、ほのぼのした作風なら柔らかそうで丸いタッチのキャラデザになる……といった具合に、作画やキャラクターデザインが演出に直結しがちなのがアニメというジャンルです(これは相当乱暴な解釈ですが)。  その中で『惡の華』はロトスコープという手法を用い、秒間24コマの実写映像を秒間8コマのリミテッドアニメに変換することで、「三次元」と「二次元」、「現実」と「非現実」の狭間で揺らぐ不安定なビジュアルを描き出しています。この独特の揺らぐビジュアルが、本作の持つ「正気」と「狂気」の狭間で揺らぐ主人公たちの不安定な心象風景を、非常にうまく演出しているのです。『惡の華』の世界観は、従来の記号的なアニメ表現でも、滑らかに動き回る実写映像だけでも描き出すことはできなかったと言えます。  おそらく本作は、Blu-ray&DVDのパッケージ販売という数字の上では成功するとは言い難いでしょう。しかし、アニメ表現における「想像力」という点で、莫大な遺産を残すことになるはずです。これから中学生たちの歪んだ青春は、どんな暴走をみせるのか。ASA-CHANG&巡礼による不穏なエンディングテーマを聴きながら楽しませてもらいましょう!  ドゥクシ! (文=龍崎珠樹)

オッサン世代も大興奮! 今期の本命ロボットアニメ『革命機ヴァルヴレイヴ』

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『革命機ヴァルヴレイヴ』
 例年になく豊作といわれている2013年春クールアニメ。個人的には、その中でもロボットアニメの充実ぶりに感激しまくりなんですが、皆さんはどのロボットアニメがお気に入りでしょうか。  近年のロボットアニメというと、『ガンダム』『マクロス』『ヱヴァンゲリヲン』のような定番シリーズもの以外は、『アクエリオンEVOL』のようなネタ方面に振り切れた変化球タイプや、社会問題への意識が高すぎた『エウレカセブンAO』のような作品。はたまた美少女アニメとロボットアニメのいいとこどりをしようとした『輪廻のラグランジェ』『トータル・イクリプス』など、「ロボットがガッツンガッツン活躍するアニメ」を期待していた自分としては、ちょいとばかり物足りない作品が多かったような印象がなきにしもあらず。 それはそれで面白かったりするんですが、やっぱり少年が戦闘状況にいきなり巻き込まれて、最新型ロボットに乗り込んで悪戦苦闘しながらもエースパイロットへと成長していく王道ロボットアニメっていうのも見てみたいじゃないですか! そんなオールドタイプなロートルアニメファンな自分としては、今期の新作ロボットアニメには、まるで80年代前半から中盤にかけてのロボットアニメブームを思い出させてくれるような懐かしさと、現代ならではの新しさをビシバシと感じられてうれしい限りです。  というわけで、今回はオッサン視点で今期のおすすめロボットアニメを紹介します。 ■『革命機ヴァルヴレイヴ』 『ガンダム』『ボトムズ』『バイファム』など、数多くのロボットアニメを生み出したサンライズが送る最新ロボットアニメが『革命機ヴァルヴレイヴ』です。あらすじは以下の通り。 人類が宇宙に進出し70年。人口の大半が宇宙都市に移住した時代、小国・ジオールに住む高校生・時縞ハルトはドルシア軍事盟約連邦と環大西洋合衆国の戦争に巻き込まれてしまい、謎の新型ロボットであるヴァルヴレイヴに乗り込んでドルシア軍との戦いに身を投じるようになります。(ちなみにヴァルヴレイヴ登場シーンは、プールが割れてその下から出現!というもの)  この最初の戦闘に先駆けて登場するのが、ドルシア軍の特務機関に所属する美少年5人組。彼らはジオールに潜入し、ヴァルヴレイヴ確保をもくろみます。結果的にその作戦は失敗。美少年5人組の一人・エルエルフは、ヴァルヴレイヴに乗り込むことで噛みついた相手の体内に人格を移植することができるという能力を手に入れてしまったハルトに体を支配されてしまい、ドルシア軍に戻れなくなってしまう。  そんな感じで、過去の名作ロボットアニメをオマージュしたシーンが続出! それらのシーンを気まずそうにこっそり盛り込むのではなく、堂々と、かつ超ハイクオリティな作画で描くのが本作のすごいところ。「だって、面白い要素を全部ぶち込んだら面白くなるに決まってんじゃん!」とでもいうような、突き抜けた割り切りが実に心地いい限りです。   肝心のメカアクションもバッチリです。CGで描かれながらも手描きのようなニュアンスのロボットが、バリバリグリグリとアニメーションする様は圧巻。さらにリアルロボット的なドルシア軍メカと、スーパーロボット的なデザイン&アクションを見せるヴァルヴレイヴの絶妙な対比のおかげで、『レイズナー』や『ガリアン』を思わせる一対多数のバトルが展開。毎回、手に汗握るバトルを繰り広げます。  あからさまなオマージュネタや、SFマニアの神経を逆なでするSF設定にツッコミを入れるもよし! ガチなロボットアニメとして、真剣に楽しむもよし! 美形男子&女子にブヒるもよし! な『革命機ヴァルヴレイヴ』は、今期の本命ロボットアニメといえるでしょう。 ■『銀河機攻隊マジェスティックプリンス』  もう一つの注目ロボットアニメが『マジェスティックプリンス』です。キャラクターデザインは『無限のリヴァイアス』『スクライド』『ガンダムSEED』『蒼穹のファフナー』でおなじみの平井久司。個人的に「平井キャラデザのアニメに外れなし!」と思っているのですが(異論は認める!)、今回もその期待を裏切りません。  宇宙に進出した人類が、謎の勢力・ウルガルの襲撃で絶滅の危機に瀕する中、落ちこぼれチーム「ザンネン5」の少年少女パイロットたちが次々と戦果を上げていく、という本作。ザンネン5の5人は、戦闘に勝つために遺伝子操作された子どもたち、というけっこう悲劇的な出自にもかかわらず、揃いもそろって天然というか緊張感ゼロで微笑ましい限り。そんな彼らが、ゆる~いチームワークを発揮して成果を上げていく姿は実に痛快。  割とヘビーな世界観の中、マイペースになんとなく状況を打破していく主人公たちの物語は、どことなく90年代ロボットアニメ的で、ライトに楽しむにはちょうどいい感じだといえます。  ちなみに『ヴァルヴレイヴ』は分割2クール。『マジェスティックプリンス』も2クール制作することが、すでに明らかになっています。じっくりと描かれるドラマにも期待が高まります。 ■『翠星のガルガンティア』  最後におススメするのが『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCO-PASS』などで話題を呼んだヒットメーカー・虚淵玄がシリーズ構成を手掛ける『翠星のガルガンティア』です。はるか未来、主人公・レドは宇宙生命体との激しい戦闘のさなかにAIで会話をすることができる人型マシーン・チェインバーと共に、かつて人類が住めなくなってしまったといわれていた地球に転移してしまう。そこでレドは、言葉の通じない現地の人々との共生の道を探っていくというストーリーの本作。映画『ウォーターワールド』を思わせるスチームパンク×世紀末な世界に生きる地球人と、高度な科学技術を誇る時代から転移してきたレドの交流は、時にシリアスでシビアなシーンも。それゆえに少しずつ歩み寄る両者の姿は、感動的でもあり微笑ましくもあります。  メカ描写も見どころ満載。単騎で無双できる性能を誇るチェインバーと、質より量で押し寄せる地球の作業用ロボット・ユンボロイドのバトルは、まるで懐かしの『ザブングル』。オーバーテクノロジーのチェインバーが最強の名をほしいままにするのか。はたまた数で勝るローテクロボットが押し勝つのか。一筋縄ではいかない物語と合わせて、そこにも注目したいところです。  それぞれ独自のストーリーとキャラが登場しながらも、しっかりとメカが物語の中心となって活躍する今期のロボットアニメ。その内容も前評判にたがわぬ見ごたえあるものばかりです。これまでロボットアニメを見たことのない皆さんも、この機会にその魅力を味わってみてはいかがでしょうか! (文=龍崎珠樹)

野川さくら、宮崎羽衣らが一斉退所 “消えた”声優プロダクション・ラムズの謎を追う!

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『HAPPY HARMONICS』
(エイベックス・エンタテインメント)
   サヨナラだけが人生だ。  というわけで、年度切り替わりのタイミングで有名・無名を問わず多くの声優がプロダクションから独立、移籍した。茅原実里がエイベックス・プランニング&デベロップメントを退所し個人プロダクション「株式会社M-Peace」を設立、櫻井孝宏が81プロデュースから独立しフリーとなったというニュースは、ニュースサイトにも記事が掲載され大きな注目を浴びた。  その一方で、野川さくら、宮崎羽衣ら声優プロダクション・制作会社のラムズに所属する声優が3月31日に一斉に退所。その後、ラムズのサイトが「メンテナンス中」となりすべてのページが見られなくなってしまっていることから、声優ファンの間では「一体ラムズに何があったんだ?」とさまざまな臆測が飛び交っている。  もともとラムズは制作会社としてスタートしたものの、2000年頃に野川さくらの所属をきっかけに声優プロダクションとしても活動するようになり、04年に付属養成所「RAMS Professional Education」(通称・RPE)、06年に劇団「RAMS ACTORS THEATER」を設立。ゼロ年代半ばにはRPE出身の若手女性声優たちによるアイドル声優ユニット・クローバーを結成し、一時代を築いた存在だ。  クローバーはかなりの人気を獲得し、現在のアイドル声優ブームに至る地ならし的役割を果たしたが、ゼロ年代後半よりクローバーのメンバーをはじめとする所属声優が続々と離脱。設立当初は事務所を牽引し、養成所の宣伝塔として大きな存在感を放っていたアイドル声優たちも世代交代の波にのまれてしまい、次第に「アイドル売り」することが困難になってきたことから、ラムズは徐々に失速。そこで発生したのが今回の騒動だが……。 「結論から言って、ラムズは3月末で倒産しました。ビルのワンフロアを借りて事務所、制作会社と同時に声優の養成所・イベントスペースを運営していたラムズは、他のテナントたちから騒音・振動について頻繁に苦情を受けていたそうです。そこでビルのオーナーとの協議の結果、退去・移転することになりました。しかし、フロアを大改造していたラムズには原状復帰の義務が発生。その費用は莫大な金額で、それが捻出できずに倒産したそうです」  そう語るのは、ラムズの元関係者。アイドル声優を宣伝塔として自前で養成所を運営。そこで育てた若手をアイドル声優として売り出し、自社のスペースでイベントを打つ、というビジネスモデルで勢力を急拡大させたラムズだが、肝心のアイドル声優がいなくなってしまったことでかつての投資が不良債権化。最終的に移転費用も捻出できずに倒産してしまったというのは、なんとも皮肉な話である。  ラムズの栄枯盛衰、そして消滅というニュースは、現在の声優ビジネスに一石を投じる事件だといえる。 (文=龍崎珠樹)

「蟹蟹蟹蟹……」なんてどうかしてるぜ! SAN値がみるみる減少『あいうら』

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テレビ東京・あにてれ『あいうら』
 春アニメも一通り出そろった今日この頃、アニメフリークの皆さんもお気に入りの作品が多数見つかったはず。しかし、乗り遅れてしまった! このビッグウェーブに! というあなたのために、ボチボチとオススメアニメを紹介しよう。というわけで、今回はギャグアニメ編だ! ●『ジュエルペット ハッピネス』  サンリオとセガトイズによるファンシーキャラ・ジュエルペットを題材としたシリーズ第5弾の本作。その監督を務めるのは桜井弘明。古くは『こどものおもちゃ』(絵コンテ・演出)、『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』(助監督・絵コンテ)、『機動戦艦ナデシコ』(助監督・絵コンテ・演出)、『デ・ジ・キャラット』シリーズ(監督)を手掛け、近作は『探偵オペラ ミルキィホームズ』『這いよれ!ニャル子さん』(絵コンテ)『猫神やおよろず』(監督)を手掛けたベテランである。  このラインナップを見ただけで「ピン!」ときた方もいるかもしれないが、桜井監督作品といえばシュールなギャグと畳みかけるようなセリフの波状攻撃が持ち味。『ジュエルペット ハッピネス』でもその作風は健在だ。ゴム人間なモブキャラや、突如出現する謎のオブジェ。間断なく流れ続けるキャラクターたちのセリフ。連続する超展開ならぬ超絶展開。第1話から、朝9時枠のアニメとは思えないほどハイテンションでハードコアなコメディが展開し、桜井弘明ファンを歓喜させてくれた(そういえば、桜井監督が手掛けた『デ・ジ・キャラットにょ』も同じ枠でしたね)。  ちなみにキャストも豪華絢爛。従来のシリーズから継続して出演する豊崎愛生、平野綾、沢城みゆきに加え、新キャラクター・ローサ役の茅野愛衣をはじめ、イケメン先輩キャラ役として細谷佳正、福山潤、木村良平ら人気男性声優がラインナップ。彼らが繰り広げる、ドライブ感満点の演技にも注目だ! ●『波打際のむろみさん』 「週刊少年マガジン」(講談社)連載のコミックをアニメ化した本作。なぜか博多弁をしゃべる人魚のむろみさん(演じるのは、福岡県出身の田村ゆかりだ!)と、彼女を釣り上げてしまいがちな少年・向島拓朗が繰り広げるドツキ漫才チックなコメディだ。15分枠ながら他のアニメに比べて倍以上のテンポで展開する本作。おかげで見終えた後の疲労感と満足感はかなりのものだ。また、『もってけ!セーラーふく』や『化物語』主題歌などでおなじみのヒットメーカー・神前暁が作曲を手掛け、サブカル声優・上坂すみれが歌う主題歌もインパクト大だ。往年の戸川純を思わせるエキセントリックでプログレッシブなサウンドは中毒性抜群。暴走特急のような一本である。 ●『あいうら』  今期最大の問題作というか、見ているこちらがどうリアクションを取ればいいのかまったく分からなくて、じわじわとSAN値が下がっていくのが『あいうら』だ。スライドショー形式で画像を連続表示するサービス「ニコニコ静画」や「4コマnanoエース」(角川書店)で連載中の本作は、女子高校生たちの日常を描く4コマ漫画であり、アニメ版も原作のテイストを生かしたほんわか日常系アニメに仕上がっている。ここまで聞いて、「普通の日常系アニメか」と思うなかれ。  アニメ版『あいうら』の本当のヤバさは、メインヒロインを演じる中島唯、飯田友子、田村奈央が歌うオープニングテーマ&エンディングテーマにあるのだ! オープニングテーマ「カニ☆Do-Luck!」は、ハイテンションなサウンドに乗せて「蟹蟹蟹蟹!」と、蟹の味わいについて歌ういわゆる電波ソング。それに乗せて、実写映像の「蟹」やアンディー・ウォーホル調にデザインされた「蟹」、画面を覆う無数の「蟹」の文字などが速いテンポで次々と切り替わるのだ。「蟹」がゲシュタルト崩壊しそうである。もちろん本編に蟹は一切絡んでこない。  一方、エンディングテーマ「いちごいちえ」は、パンク調のバンドサウンドをバックにパラパラ漫画の棒人間が猛ダッシュする動画に、飛行機やイカ、セミ、フンコロガシなどの映像がオーバーラップするというまったく持って意味不明なもの。オープニングとエンディングのどちらも、音声を消して映像だけ見ていると、そこはかとない不安感にかられるのは僕だけですか? 強烈なインパクトの主題歌とまったりムードの本編のギャップは、一見の価値ありだ。  という感じで、今期もいい感じに「どうかしちゃってるアニメ」が放送されてうれしい限り。突き抜けたマイ・ワールドを持つアニメを見て、ぜひ読者諸兄も煙に巻かれてはいかがだろうか!? (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

不可解な“原作改変”繰り返し、視聴者を挑発し続けた『さくら荘のペットな彼女』いよいよ最終話

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『さくら荘のペットな彼女』アニメ公式サイト
 人気ライトノベル原作のアニメ『さくら荘のペットな彼女』が、最終話を目前にして炎上的な意味で熱く燃えている。  先日放送されたばかりの第23話「卒業式」において、原作では描写されていた国歌斉唱シーンおよび式次第から「国歌斉唱」の項目が削除され、日本の学校なら本来掲げられて然るべきである日本国旗が描かれていなかったせいだ。  この事実に、ネット上では大炎上。その一方で「過剰反応じゃね?」と疑問を呈する声もあり、賛否両論が渦巻いている。  問題児の巣窟として悪妙高い学生寮「さくら荘」に集う高校生たちの、夢に向かって悪戦苦闘する姿や淡い恋愛模様が多くの視聴者の心を捉えた『さくら荘~』だが、本作の炎上事件は今回が初ではない。  昨年放送された第6話「雨あがりの青」において、風邪でダウンしたヒロインの一人・青山七海に三鷹仁が韓国の煮込みスープ・サムゲタンを作ってあげたシーンが登場。原作では「シンプルなお粥」と表現されていたはずだが、なぜか韓国料理が不自然な形で出現したことでネットは炎上。  時を同じくして、続々と芸能人がアメブロでサムゲタンについてのエントリーを投下したことから、「これはステマでは?」との疑惑が噴出した。  こういったアニメファンの声に対して、第6話を手がけた脚本家・伊藤美智子はツイッター上で彼らを挑発するような言動を繰り返しアカウントを削除。また、自称アニメ制作会社・サンライズの社員だという人物がツイッター上で「かつお出汁香るシンプルなお粥を美味そうに描くのは至難の業です」とアニメにおけるお粥表現の難しさを訴えるなど、アニメ業界を巻き込んで炎上は拡大した。  さらに6話の演出・絵コンテを手掛けた監督・シリーズ構成のいしづかあつこの名前が放送後に公式サイトから削除されるという事態に至り、制作側からは「作品の制作、演出に対する背景や意図については通常、お応えしておりません」(メディアファクトリー)、「韓国推しの意図は一切ございません」(アニマックス)といった公式コメントが発表された。  このような「前科」があるだけに、他のアニメ以上に厳しい視線にさらされ続けていた『さくら荘~』だが、最後の最後でまたも「やらかしてしまった」わけである(ちなみに今回の絵コンテも、やはりいしづかである)。  今回はまだ関係各所のコメントなどは発表されてはいないが、これら一連の騒動のそもそもの原因は、いわゆる原作改変そのものではないだろう。  多くのアニメファンが憤り、そして制作側への不満を露わにしているのは、「筋の通らない」原作改変が行われているためだ。  映像化する際に原作の設定やストーリーをアレンジする原作改変はこれまでもしばしば見られていた現象であり、例えば反社会的なシーン(未成年の喫煙や飲酒、性行為など)やNHKなどの公共放送で特定の商標を取り扱うシーン(最近の例ではアニメ『バクマン。』の出版社名や雑誌名の改変など)、原作が未完結の作品であるためキャラクターの設定を変更する(2003年版のアニメ『鋼の錬金術師』など)といった例がある。  確かに今までも原作ファンを中心に、こういった原作改変に対する不満が制作側に寄せられることはあったが、メディアの違いや放送時間の都合など、視聴者側も事情を察すれば納得できるものが大半である。  だが『さくら荘~』の場合は、「サムゲタン」にせよ「卒業式」にせよ改変することのメリットや意味合いが不明瞭であり、なおかつツイッターでの発言などから制作側がアニメファン、視聴者を馬鹿にしている感が透けて見える点が問題なのだ。  原作改変はどこまでなら許されるのか。また、制作者は視聴者に対してどう向き合うべきなのか。作品そのものの評価とはまったく異なる次元で、アニメ業界に多くの課題と問題を提示した『さくら荘~』も残すところあと1話。最後まで(いろいろな意味で)見逃すことはできない。  願わくば少しでもななみんが幸せになってくれますように! (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

KARAに気を使いすぎ!? ウワサの有料KARAアニメをレビューしてみた

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『KARA THE ANIMATION』
 『ラブライブ!』『AKB0048』『アイカツ!』『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』などなど、リアルワールド同様にアイドル戦国時代真っ最中のアニメ業界。各作品とも独自のキャラとストーリーでファンを魅了している中、3月1日より腰振りダンスで一世を風靡したK-POPアイドルグループ・KARAを題材にしたアニメ『KARA THE ANIMATION』がひっそりとスタートしたのをご存じでしょうか?    クイクイ腰を振りまくるダンスで日本中を席巻し、今年は1月6日にK-POPガールズグループとしては初の単独東京ドーム公演を成功させたとかさせないとか。そんなノリノリでイケイケでゴーゴーなKARAがアニメになったっつーわけで、当然のごとく多くのKARAファンはチェックしているはずの本作。「乗るしかない! このビッグウェーブに!」ということで、早速プレミアム放送中のスマホ向け放送局「NOTTV」にアクセス! 視聴料が500円かかるということですが、マ、この原稿を書けば全然元は取れるかってことでポチってみました。  「アニメーションだからできる、普段と違ったKARAが5つの物語で大活躍!」(公式サイトより)という本作は、KARAメンバー5人をそれぞれ主人公に据えた5本のオムニバス作品で、なんとメンバーがそれぞれ本人キャラクターを演じているそうです。これはKARAファンならうれしい配役と思われますが、本編は終始韓国語で展開するので今一つ演技の上手下手が分からないのが残念。とはいえ、韓国語もペラッペラなK-POPファンの皆様なら、これは無問題でしょう。  で、その中身なんですが、どうやら各メンバーが爆発物処理チームに所属する特殊警察官やら宇宙飛行士やらセクシー消防隊員になって大活躍するアクションものの様子。とりあえず誰が誰なのか、見分けがつかないので「理想的なボディーラインと美しいロングヘアを誇る」(公式サイトのキャッチより)ハラさんをご指名!(こう書くと、なんかいかがわしいお店みたいですね)  モナコ公国第2王子の身辺警護の任についたSPのハラさんは、彼と共に王立銀行に向かいますが、突然テロリストが乱入し、ハラさんや王子たちは追い詰められてしまいます。そこで明らかになる衝撃の事実! そして後半は『逮捕しちゃうぞ』顔負けのパトカーチェイス! と、20分強の短編ながら、なかなかエキサイティングな内容で見応えはあります。  ポイントはセクシーシーンでの「鼻血ブー」描写や、シリアスな展開の中で突然コメディタッチな掛け合い。男顔負けのアクションに惚れた他の王子たちから求婚されて、「もう王子はこりごりよー!」とか叫びながら駆けだすシーンで止め絵! というラストシーンなど、昔懐かしのアニメ演出が頻出する点でしょうか。全体的に「よく日本のアニメを研究しているなあ」といったところで、びっくりしちゃいました。  ただ気になったのは、KARAメンバー以外のキャラがいわゆるモブ顔デザインなのに対して、KARAメンバーはCGバリバリのハンコ絵モデリングという点です。パッと見て髪型以外に見分けがつかないお人形さんみたいなKARAメンバーは、確かに地味な顔つきの他のキャラよりもかわいいし派手に見えるんだけど、なんか違和感があるというか作りものくさいというか……。ある意味、リアルっちゃあリアルなんでしょうけど、もう少しなんとかならんかったんでしょうか?  それでも潤沢な予算で実現した安定のアクション作画のおかげで、20分見ていて飽きないのはプラスポイントでしょう。ただ、これも“割と見られるじゃん”というレベルなんですけど。  全体的に元ネタのKARAに気を使っている感がバリバリの無難な作りになっていて、ツッコミ待ちアニメにしてはちょっとばかりインパクトが弱く、一本のアニメ作品として見るには面白みがない、という芸能人ものアニメにありがちな「誰得アニメ」になってしまった感がありますが、百聞は一見にしかず。今後は劇場公開される計画があるそうなので、いざ全国で公開された日には、日本各地の映画館にKARAファンが大集結するかもしれませんね。いやー、楽しみですねー。 (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

『ガンダム』『ヤマト』に『鉄人28号』……往年の名作アニメが続々リメイク

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『宇宙戦艦ヤマト2199』
 アニメブーム黎明期を盛り上げた、往年の名作アニメのリメイクが続いている。  まずは4月からTBS系列の日曜夕方5時枠、通称「日5枠」で『宇宙戦艦ヤマト』初代TVシリーズのリメイク版『宇宙戦艦ヤマト2199』がスタートする。1974年に読売テレビ制作・日本テレビ系列で放送され、社会現象を引き起こした歴史的ヒット作のリメイクとなる本作は、『ヤマト』でアニメに興味を持ったという出渕裕監督や、OP映像の絵コンテを担当をする庵野秀明をはじめとする、ファースト『ヤマト』世代がスタッフとして数多く参加し、大きな話題を呼んでいる。  原典(この場合、ベースとなった初代TVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト』のこと)のエピソードをベースに、現代風に換骨奪胎し再構成。さらに想像力に幅を持たせるというか、わりとテキトーというか、その場の勢いまかせで作られていた原典の設定(青色と肌色が入り乱れるガミラス人とか)にしっかりとした考証を加え、設定上の矛盾点を解消。また、メカ描写や作戦についても限りなくリアルな理由付けが行われたほか、キャラクターも原典のイメージを残しつつ現代風にアップデートされたデザインとなっている。そればかりか、艦橋のマドンナ・森雪以外の女性キャラも追加(おまけにアホ毛、巨乳、ツインテールなどなど強烈なキャラ立ち!)されているのも特徴だ。  ちなみに本作は、TV放送に先駆けて2012年より順次劇場で先行上映されているほか、すでにBlu-ray&DVDも4巻(14話まで収録)リリースされており、TV放映がメディア展開としては最後発となる。TV放映後にソフト化され、その売り上げや話題から劇場版制作が決定するという従来のアニメとは逆の展開をみせる本作は、単純に往年の名作アニメがリメイクされた、という話題性のみならず、新たなビジネスモデルを構築しうる可能性を秘めているといえる。  『ガンダム』のリメイクも控えている。ロボットアニメを「プロレス」から「戦争ドラマ」へと大転換させた1979年の大ヒット作『機動戦士ガンダム』をベースに、大幅なアレンジを加えたリメイク作『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のアニメ制作が決定している。  本作は、『初代ガンダム』のキャラクターデザインを手掛けた安彦良和自身が、『初代ガンダム』を再解釈。設定やストーリーを再構築した漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を原作にしたアニメ化作品という位置付けとなる。そのため、アニメ版は、厳密には『初代ガンダム』のリメイクではないものの、オリジナルスタッフの手によって『初代ガンダム』が復活する、ということで大きな注目を集めるのは必至。ただ、現時点では2014年に公開されるという噂が流れている程度で、どういう形式で全貌が明らかになるかは不明だ。  どんなに素晴らしいシナリオやキャラクターでヒットを飛ばしたかつての名作アニメも、HDクオリティに合わせて制作される現在の映像や緻密な設定を下敷きにした作品を見慣れた今からすると、どうしても見劣りしてしまうものである。そこで、物語の核になるテーマや大筋は変えずに作品全体をアップデートしていくという形で、旧作を蘇らせようというこの試みは、これまでのアニメ業界にはほとんどなかった流れだ(例えば『マジンガーZ』 『ゲッターロボ』『勇者ライディーン』など、70年代初頭のロボットアニメがゼロ年代に多数復活したが、それらは基本的に続編やスピンアウト的な新作だった)。  ちなみに原典をベースに新作を作る、という従来のリメイク路線は今後も続く模様で、4月からはポップな世界観で新たな鉄人の活躍が描かれる『鉄人28号ガオ!』が『鉄人28号』50周年記念作品としてスタートするほか、80年代を盛り上げた人気アニメの続編『聖闘士星矢Ω』第2期の放送が決定。また、90年代に一時代を築き上げた『美少女戦士セーラームーン』の新作アニメが、『ももいろクローバーZ』の主題歌で今夏公開されることも決定している(媒体は未定)。  さらに70年代に一世を風靡し、90年代にもリメイクされたことのある某変身ヒーローアニメが、原典をベースに女性向けにアレンジされて復活する、という噂も業界内でまことしやかにささやかれている。女性ファンに受けた変身ヒーローアニメといえば、『TIGER & BUNNY』のヒットが記憶に新しいが、今回はその路線を踏襲するらしい。  思い出は美化される、とはよく言われるが、その思い出を裏切らない形で幼い頃に見ていたアニメが復活するなら、オールドタイプなアニメファンも喜ばしい限り。そして、生まれ変わった古典アニメを見た若いアニメファンがシリーズに興味を持ち、幅広い世代が作品のファンになればコンテンツの展開も活発になり、今後も新作が作られていくことだろう。このように世代を超えて愛される作品が増えていけば、アニメが本当の意味で「文化」として定着していくのではないだろうか。 (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

今年は茅原実里、田村ゆかりが不参加!? 「アニサマ2013」ラインナップはどうなる?

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「Animelo Summer Live 2012 -INFINITY∞-」公式サイトより
 毎年この時期になると、なんとなくソワソワしてしまうアニメ・声優ファンも少なくないのではないだろうか。毎年3月に入ると、その年の8月末に開催される日本最大規模のアニメソングライブイベント「Animelo Summer Live(以下、アニサマ)」の記者発表が行われるためだ。記者発表会場には通常7~8名程度のライブ出演者が登壇し、その年のアニサマのタイトルとテーマが発表されるのが恒例となっている。それ以降、何回かに分けて出演アーティストが公表されていき、最終的におよそ40組程度のアーティストに落ち着くのがここ数年のパターンである。  昨今のアニソンシーンのトレンドを把握する上で非常に重要なイベントとなっているアニサマだが、昨年の「Animelo Summer Live 2012 -INFINITY∞-」は、初回から出演し続けてきたアニサマの顔ともいえるJAM Projectと水樹奈々というビッグネームが不参加となり、その代わりにアーティストとして活動する声優やアニメから生まれた声優ユニットの出演が増加。さながら声優ライブイベントの様相を呈し、多くのアニメ・声優ファンの間で賛否両論を巻き起こした。  アニサマがスタートした05年といえば、同年7月に開催された「Animelo Summer Live 2005 -THE BRIDGE-」に先駆けて、1月に椎名へきるに続いて水樹奈々が武道館で単独ライブを初開催。声優史上2人目の快挙を成し遂げ、『魔法先生ネギま!』のオープニング主題歌「ハッピーマテリアル」がオリコンチャートを席巻したという、ゼロ年代アニソン史のターニングポイントとなった年である。現在に至るアニソン・声優ソングムーブメントの萌芽が芽生え始めた時期とはいえ、まだまだ一部のコアなファンのもの、という印象が主流。そんな過渡期にスタートし、少しずつ規模を拡大していったアニサマの歴史は、まさしくアニソン・声優ソングの地位向上の歴史そのものだといえる。  そんなアニサマだが、なぜ昨年大転換したのだろうか?  JAM Projectの影山ヒロノブは、イベント会場などで「後進に活躍の場を譲る」という趣旨の発言を発しており、アニサマ出演者の世代交代がその目的だといわれているが、とあるアニメ雑誌編集者はこう語る。 「各レーベル間の足並みが揃わなくなってきたことが、大きいと思います。アニサマが始まった頃は、まだまだ声優やアニソンアーティストが大きな会場で単独ライブを行うことが少なく、一致団結して業界の地位を向上させようという空気があったように思います。そのかいあってアニサマの成功以降、アニソンアーティストや声優がライブを行う機会が増え、ファンもライブの楽しみ方を分かってきた。一般メディアにも露出する機会が増えたことでファンのすそ野が広がり、その結果として武道館、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナなど国内最大規模の会場で単独ライブをできるアニソンシンガー、声優が出現してきました。それ自体は大変いいことなのですが、単独でライブを成功させることができるアーティストが増えたことで、“もうわざわざアニサマに出演しなくてもいいじゃないか”という空気が、各レーベルに生まれてきたように感じます」  つまり、大きな会場で単独ライブを行うほどの人気・知名度を獲得したアーティスト・声優にとって、アニサマへの出演に対するメリットが低下してしまった、ということだろうか。確かに、水樹奈々は11年に声優史上初・女性アーティストとしては8人目の快挙となる東京ドーム単独公演を成功させ、JAM Projectもつい先日横浜アリーナでの単独公演を成功させたことからも、アニソンシーンではトップクラスの人気を誇っていることは間違いないだろう。そんな彼らにとっては、顔見せ程度に数曲歌って退場するアニサマへの出演よりも、ガッツリと自分たちの世界観を表現できる単独ライブのほうが魅力的に感じてしまうのも無理からぬこと。ファンにとっても悪くない話だ。  そう考えると、次に出演を辞退しそうなのが、さいたまスーパーアリーナ単独公演を昨年成功させた茅原実里。そして今年6月に同会場での2daysを控えている田村ゆかりであるが、いまやアニサマでは欠かせない盛り上げ隊長ともいえるこの両名が不参加となると、物足りなさを感じてしまうアニソン・声優ファンも多いことだろう。  しかし一方で、アニサマの出演者の傾向の変化は、アニソンの地位が高まった結果だともいえる。すでに単独で大規模なライブを開催できるクラスの人気があるアーティストは、どんどん外へ飛び出し、今後のアニサマはこれからトップを目指すアーティストや期間限定で活躍せざるをえないアニメ発の声優ユニットが一堂に会するアニソンのお祭りとしての性格を、より強めていくことが予想される。  いずれにせよ、そう遠くないタイミングで、今年のアニサマの記者発表が開催されるはずだ。全アニソン・声優ファンは、全裸待機でラインナップ発表を待っていよう! (文=龍崎珠樹) 「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから