効果のほどはいかに? ヒットアニメとヒット祈願の関連性

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『未確認で進行形』TVアニメ公式サイト
 皆さん、あけましておめでとうございます! 今年もアニメ業界の重箱の隅をつついていくのでよろしくね! というわけで、新年一発目の「アニメ時評」は、アニメ作品と神社の関係についてフォーカスしちゃうぞ!  1月7日、放送開始を翌日に控えた新アニメ『未確認で進行形』スタッフ・キャストが、アニメヒット祈願のために日枝神社に参拝したというニュースがアニメ関連媒体にアップされ、ネット上を賑わせた。この「ヒット祈願で神社参り」という一連のプロモーションは本作に限ったものではなく、アニメ以外にもゲン担ぎとしてさまざまなジャンルで行われている、ある種「エンタメ界定番のPR」といえる。  そこで今回は、過去にヒット祈願したアニメを探して、「ヒット祈願とアニメヒットの関係性」についてざっくりと振り返ってみよう! まずはテレビアニメから。 『パパのいうことを聞きなさい!』……神田明神(東京都) 『カンピオーネ!』……新田神社(東京都) 『メガネブ!』……都内某神社 『夏目友人帳』……今戸神社(東京都) 『ゲゲゲの鬼太郎』×『墓場鬼太郎』……赤城神社(東京都) 『有頂天家族』……下鴨神社(京都府) 『魔法少女まどか☆マギカ』……不明 『青の祓魔師』……不明  実際にヒット祈願のために参拝した作品ははるかに多いのだがとりあえず、代表的なものをピックアップ。どことなく和風な世界観の作品、オカルトめいた作品が多い気がするが、やはり厄払い的な意味合いもあるのだろう。『まどマギ』みたいな空前のヒット作もあれば、「あったねえ、そんなアニメも」的な作品もあったりと、あんまりお参りとヒットの間に関係性はなさそうな印象……?  さてさて、お次は劇場用アニメ。 『ドットハック セカイの向こうに』……赤城神社(東京都) 『おおかみこどもの雨と雪』……真田神社(長野県) 『長ぐつをはいたネコ』……今戸神社(東京都) 『劇場版 文学少女』……氷川神社(東京都) 『プレーンズ』……成田神社(千葉県)  こちらもいくつかピックアップ。細田守監督もヒット祈願していたなんて、ちょっと意外! また『長ぐつをはいたネコ』の時は、当時、ロンドン五輪を目指してカンボジア国籍を取得したばかりの猫ひろしも同席。『夏目友人帳』スタッフもお参りした今戸神社は、招き猫発祥の地らしい。そのほか、ピクサー最新作『プレーンズ』が成田神社というのは大変わかりやすい構図である。そんな感じで、よりイベント色が強いのが劇場用アニメの傾向といえる。  といった具合に、かなり乱暴に神社へのヒット祈願とヒットアニメの関係を検証してみると……。よくわからん! というのが正直なところ。ともあれ。アニメがヒットするかどうかなんて、視聴者が見てくれるまでは神のみぞ知ることである。  ただ人事を尽くして天命を待つ、という言葉があるように、ヒット祈願をする作品というのは、スタッフが全力で作品を作り上げて、あとは視聴者が思い切り楽しんでくれるのを期待するばかり、という制作側のアニメにかける本気度の表れともいえる。我々視聴者も、そんな制作者たちの熱い思いをかみしめつつ、アニメを楽しもうじゃないか! (文=龍崎珠樹)

『黒子のバスケ』脅迫事件、『進撃の巨人』大ヒット……2013年アニメ業界を総決算!

ranking2013.jpg  早いもので2013年もあと数日。残るイベントは毎年恒例の祭典・コミックマーケットのみ、というオタク諸兄も多いことでしょう。そこで今回は、この1年間のアニメ業界に起こった事件をランキング形式で振り返ってみます! 「あ~、あんなことあったな~」とか「えっ、あの事件って今年だったの?」とか振り返っていただければ幸いです! 10位「キルミーベイベーは蘇ったんだ!」  2012年に放送され、一部に「キルミスト」と呼ばれる中毒患者を生み出したものの、Blu-ray/DVD第1巻の売り上げ初動枚数は686枚と振るわず、半ばネタアニメ化していた『キルミーベイベー』(ちなみにアニメオタク界隈では1キルミー=686枚という単位にもなってしまった)。しかし、ファンや公式Twitterの地道な活動により徐々に評価を好転させていき、10月16日発売のOVA付きベストアルバム『キルミーベイベー・スーパー』は約7000枚。12月4日に発売されたBlu-ray BOXセットは約4000セットを初動で売り上げるという快挙を達成。  みにくいアヒルの子を地で行くようなサクセスストーリーに、多くのアニメファンは涙し、惜しみない喝采を送った。 9位「日常系アニメのニューウェーブが続々話題に!」  『ゆゆ式』『きんいろモザイク』『のんのんびより』と、いわゆる日常系アニメといわれるジャンルの作品が数多く注目を浴びたのも2013年の特徴だ。「何も起こらない日常を描く」のが日常系アニメだといわれているが、これまでの作品はそれでも何かしらの事件が毎回描かれて、それなりに起承転結がついていたといえる。が、今年放送された日常系アニメは、輪をかけて何も起こらない作品が存在感を放っていた印象だ。とにかくキャラクターの魅力を掘り下げて、登場人物たちの情緒を丁寧に描くことでなんともいえない感動をもたらすこれらの作品は、言うなれば「ネオ日常系」。  個人的には、限られた青春時代を思い切り謳歌するヒロインたちの天真爛漫な姿に、言いようのない切なさをオーバーラップさせた『ゆゆ式』最終話は、2013年アニメのベストエピソードだと思います! 8位「ラムズ消失」  さあ、だんだんきな臭くなってきます。社内にイベントスペース、スタジオなどを併設したり、アイドル声優ユニットを結成したりと、いわゆる「2000年代声優アイドルブーム」の一角を担った声優事務所・制作会社のラムズが倒産したのも今年。3月31日に宮崎羽衣、野川さくらなど所属声優が一斉退社した後、突如公式サイトがメンテナンス中になり声優ファンの間で話題となった。その後、6月7日に東京地方裁判所より破産手続き開始を受けたことから、ラムズは消失してしまった。  この事件は、アイドル声優業界に大きな一石を投じることになる……かと思いきや、そんなこともなかったようだ。しかし、一時代を築いた事務所の閉鎖は、声優ファンの間で大きな話題となった。 7位「ファンの暴行、炎上に巻き込まれる声優たち」  ブログ、Twitterの普及やイベントの増加により、ファンと声優の距離が急接近した昨今、その弊害ともいえる事件が多く発生した。6月22日、『超次元ゲイム ネプテューヌ』先行上映イベント中、ステージ上に凶器を持った男が乱入。イベントは中止。また、出演声優の一人、田中理恵を名指ししながら暴れたことから、田中はショックのあまりTwitterを一時休止することになった。  また、ファンの臆測がネット上で広がり、炎上してしまった事件も発生した。江口拓也がファッションブランド「perusona」を開設した際、ブランド運営関係者や住所などから「暴力団関係者と共同でブランド運営か?」と、根拠不明なウワサが声優ファンの間で拡散。江口自身がブログで釈明するという事態に発展した。その真偽は定かではないが、いずれにせよ芸能人としてメディアに出る機会が増えた声優たちもまた、自身の立ち回りについて再検討するべき時期なのかもしれない。 6位「東京オリンピック開催で思わぬ余波が!」  2020年の東京オリンピック開催が決定したのも今年。それ自体は喜ばしいことなのだが、その余波が、アニメをはじめとするオタク業界にも意外な影響を及ぼし始めている。  まず、毎年夏冬に開催されている日本最大の同人誌即売イベント「コミックマーケット」の会場となっている有明ビッグサイトが、2019年夏から2020年夏にかけて使用できなくなるかもしれないのだ。現在の招致プランによるとレスリング・フェンシング・テコンドーの競技のほか、プレスセンターが設置される予定となっており、準備期間を含めると、都合3回のコミックマーケット期間と被ってしまうのだ。  また海外から多くのメディア関係者、観光者が日本を訪れるということで、過剰なお色気描写のあるアニメや美少女コミック(いわゆるエロ漫画)、同人誌に規制がかかるのではないか、ともいわれている。確かにポルノ表現に敏感な昨今だが、そういった表現など清濁併せ持った作品のハイブリッド性が「クールジャパン」の魅力でもある。今後、アニメ・オタク業界がどういう動きを見せるか注目である。 5位「劇場アニメ大盛況!」  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』『ドラゴンボールZ 神と神』『劇場版銀魂完結篇 万事屋よ永遠なれ』『劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などなど、話題のアニメ映画が大量に公開されたのも今年の特徴。ここ数年はOVAクラスの作品を短期間イベント上映するという形での劇場用アニメが増加傾向だったが、今年は正統派(というのが正しいかどうかはわからない)劇場用アニメが大豊作。極めつきとして、『風立ちぬ』(宮崎駿監督)、『かぐや姫の物語』(高畑勲監督)というスタジオジブリの二大巨頭による新作が連続公開という、非常に話題性の高い一年となった。 4位「声優の結婚ラッシュは続く」  驚異の結婚ラッシュだった2013年の声優業界。今年も置鮎龍太郎&前田愛の声優カップルに始まり、千葉千恵巳、三瓶由布子、門脇以、斎藤千和、遠藤綾、真田アサミ、そして声優界の珍獣として愛されてきた金朋こと金田朋子が、俳優の森渉と入籍を発表。昨年に負けず劣らずの結婚ラッシュで、僕らのライフはもうゼロよ! いやいや、みなさんおめでとうございます。個人的には、舞太の入籍・出産発表に、とりわけ力強いおめでとうコールをしたいと思います! 3位「Linked Horizon、水樹×TMが紅白に!」  日本の大みそかの風物詩・NHK紅白歌合戦に、Linked Horizonが初出場! 同人音楽出身のミュージシャン初のエントリーということで、日本のオタクシーンの躍進ぶりを象徴する事件だといえよう。また、水樹奈々とT.M.Revolutionも『革命機ヴァルヴレイヴ』主題歌で出場がほぼ確定。  その他、いきものがかりは『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ 神速のゲノセクト ミュウツー覚醒』主題歌「笑顔」。徳永英明は91年のアニメ『ドラゴンクエスト ~勇者アベル伝説~』主題歌「夢を信じて」で出場予定。  今年の紅白はアニソンファン的にも要注目だ。 2位「『進撃の巨人』大ヒット!」  もはや何も言う必要がないくらいの大ヒットを記録した『進撃の巨人』。アニメ放送当初は作品のテンションの高さもさることながら、すさまじい枚数の動画とハイクオリティな作画を維持すべく、異例のアニメーター募集がTwitter上で行われたり、納期の都合で地方によって演出が異なるなど、ライブ感満点の制作体制に話題が集中。アニメファンから「大丈夫か?」「最終話まで持つのか?」と、不安視する声も上がっていたが、見事2クールを完走。終わってみれば、内容、クオリティ、盛り上がりのいずれの点でも2013年を代表するにふさわしい作品となった。  なお、主題歌シングル「自由への進撃」も大ヒット。主題歌を歌ったLinked Horizonが紅白歌合戦に出場することは先述の通りだ。 1位「黒子のバスケ事件は解決?」  2012年から続く『黒子のバスケ』を標的とした脅迫事件。昨年はイベント中止、コミケでの同人誌頒布中止といった形で被害が多数発生していたが、今年に入って250通を超える脅迫状の発送。お菓子、コミック、DVD、CDの店頭からの回収。また原作者の出身校である上智大学に、気化すれば致死量を超えるという硫化水素が持ち込まれるなど、より悪質に。このまま2014年を迎えるのかと誰もが思っていたところ、12月15日、警視庁は渡辺博史容疑者(36)を威力業務妨害の疑いで逮捕。容疑者は「ごめんなさい。負けました」と供述し、一連の事件についても容疑を認めている。  これで一連の「黒子のバスケ事件」は解決したといえるが、中には模倣犯もいたのでは? とみる向きもあり、事件の完全な解決には今しばらく時間がかかりそうだ。 ***  というわけで、駆け足で2013年のアニメ・オタク業界を振り返ってみましたが、今年はアニメ作品自体には明るいニュースが多かった一方、業界の今後を占う重要な出来事も発生した一年だったといえます。これらのニュースを受けて、来年はどんなエンタテインメントを僕らに見せてくれるのか、非常に楽しみですね。気がつけば、この連載も来年で3年目に突入! 業界内外からどんなにウザがられても、これからもマイペースにアニメ・オタク業界をウォッチしていきますので、そこんとこヨロシク! (文=龍崎珠樹)

『アイカツ!』のステルスしないマーケティングに感服! クリスマス商戦の堂々たるグッズプロモーション!

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『アイカツ!』公式サイトより
 いよいよ迎えたクリスマス! 世間は浮かれモード一色に染まり、非リア充な僕たちはなんとも肩身が狭い今日この頃。いかがお過ごしでしょうか? 二次元なら僕らの心を癒やしてくれるはず……。と思ってテレビをつけてみても、大きなお友達が好んで見るような深夜アニメの大半は、続々と最終話ラッシュに突入! なんとも切ない気持ちになること、この上ありません。もはや我々の心の最後の砦は、1年以上の長いサイクルで放送されることの多い、朝方、夕方に放送される児童向けアニメだけだ!  そんな割とどうでもいい気分で夕飯前にアニメを見ていて、とある作品で衝撃を受けてしまったので、今回はそのお話です。そのアニメとは『アイカツ!』。本作は、バンダイが発売するトレーディングカードを使用した、女児向けアーケードゲームを原作とするアニメです。  プレイヤーはトップアイドルを目指してオーディションに挑戦する、というストーリーの原作ゲームは、リズムに合わせてボタンを押すリズムゲーム要素のほかに、さまざまな衣装が描かれたカードをゲーム機に読み込ませて、自分の作ったキャラに実際に着せることができるという、着せ替え人形遊び的な要素。また、自分のキャラクターがどんどん成長していくという育成ゲーム的要素が組み込まれた、なかなかに奥の深い内容。ちなみにそのカードは、ゲームプレーでゲットする以外に、お菓子やヘアバンド、シュシュといった小物からゲームに登場する衣装と同じデザインのアパレルなどにも封入されており、よりレアなカードを入手しようと思うならば、そういった関連グッズも購入しないといけないというシステムになっています。イオングループのようなショッピングモールに行けば、『アイカツ!』グッズに身を包んだ大勢の女児が何枚ものカードを握りしめながらゲームをプレーしている姿を目にしたこともあるのではないのでしょうか?  その人気は、いわゆる大きなお友達(主に男性)にも波及しており、ネット上では彼らは「アイカツおじさん」と呼ばれており、その経済規模は70億円とも80億円ともいわれています。  そんな大人気ゲームを原作とするアニメ版『アイカツ!』ですが、先週放送された第62話「アイドルはサンタクロース!」では、通年放送アニメでは恒例のクリスマスエピソードが描かれました。クリスマス、とは言っても、ほとんど男性キャラの登場しない本作。30分、ひたすらアイドルたちの微笑ましい姿が描かれるだろう……と思っていました!  今回のエピソードは、アイドルたちがファンを招いてのクリスマスイベントを開催するという内容。特大ケーキを作ろうということになったのですが、そこで出てきたケーキのデザインが主人公・星宮いちごがケーキの真ん中に立つというもの。これだけ聞くと、「まあ、あるわな」という程度の感想なのですが、そのデザインがコンビニエンストア「セブン-イレブン」で予約受付中のクリスマスケーキとまったく同じデザインだったのです。これはすごい!  言ってみれば、『アイカツ!』は今回のエピソードにおいて30分丸ごと使って「クリスマスケーキ」のプロモーションをやってのけたわけです。そこを一切隠すつもりを感じさせない一方、ちゃんとお話としても面白いっていうんだから、スタッフのプロフェッショナルな仕事ぶりに脱帽です。  いや~、これを見たら全国の女児先輩(アイカツおじさんに対して、『アイカツ!』をたしなむ女児の皆さんのことをこう呼ぶそうです)も、「お母さん、買って!」コールを言わざるをえないでしょう! 正直、僕も一瞬「予約しなくちゃ! いちごたん!」と思っちゃいました。もちろん『アイカツ!』カードもついてくるそうです。  実は、このエピソードを最初に見た時は、「また一部のアニメファンが、ステマうんぬんと騒ぐんじゃないか?」と気になってしまったのですが、ネットの反応を見てみると、多くの視聴者が全然ステルスしていないマーケティングぶりを逆に楽しんでいる様子。「ほら、楽しいでしょう!」「これ、欲しいでしょう!」という、非常にあっけらかんとした作品での扱われ方が功を奏したといえるでしょう。そういえば、現在放送中の『ガンダムビルドファイターズ』も延々とガンプラの宣伝をしているようなもんですが、視聴者の反応はかなり好意的です。  どちらの作品にも共通しているのが、売りたいグッズを「買え!」と押し売りするのではなく、作品を楽しんだ延長上にグッズ購入をさせる、というよく考えてみたら当たり前の要素なのではないでしょうか。僕たちはグッズを買うためにアニメを見ているのではなく、アニメを見て、その世界をもっと楽しみたいからグッズを買うのです。  そんなわけで、『アイカツ!』第62話は、なぜここまで多くの人々に作品が受け入れられているのか、好意を持って受け取られるタイアップとはどういうものなのか、を少しだけ感じることのできた、色々な意味でインパクトの強いエピソードだったといえるのではないでしょうか? (文=龍崎珠樹)

重厚な鎧に身を包んだ美少女騎士たちの青春ドラマが熱い! 秋クールアニメのダークホース『ワルキューレロマンツェ』

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テレビアニメ『ワルキューレロマンツェ』公式サイトより
 『弱虫ペダル』に『黒子のバスケ』と、イケメン男子たちによる熱い青春部活ものアニメが話題を集める2013年秋クールアニメですが、女子も負けじとセクシーな青春模様を描く作品が存在しています。それが『ワルキューレロマンツェ』です。  本作は馬に乗った騎士同士が、すれ違いざまに槍などの武器で相手を倒すという、実在の競技「ジョスト」を題材にした作品で、『ワルキューレロマンツェ 少女騎士物語』というパソコン用アダルトゲームを原作に持つ、いわゆる美少女アニメの一種です。  ヨーロッパに存在するという架空のジョスト名門校・ウィンフォード学園を舞台に、ジョストの騎士を目指す美少女たちと、騎士を補佐するセコンド的ポジション・ベグライターとして生きることを決意した元騎士・水野貴弘による学園生活を描く、というあらすじの本作。もちろん主人公である貴弘と美少女たちによるハーレムライフが物語の主軸となるわけですが、今回のテレビアニメ化に際し、ジョストについて非常に丁寧な解説が盛り込まれたり、競技シーンをじっくりと描きつつ、彼女たちをベグライターとしてフォローする貴弘のキャラも丁寧に描写することで、一種の青春群像劇として非常に見応えのある作品に仕上がっています。  特に、もともと普通科の生徒であったメインヒロイン・希咲美桜が、優れた動体視力と貴弘の優れたハンドリングを武器に騎士としての才能を開花させていくという序盤の展開は、部活もの、バディものとしては王道でありつつ、やはり痛快。  彼女は初試合の後、ジョストの魅力に目覚めて大会出場を目指すようになると同時に、貴弘を異性として意識するようになっていきます(この辺、ちょびっと『エースをねらえ!』と『あしたのジョー』を足して2で割った的なにおいを感じますね)。美少女ゲーム原作アニメだけあっkて、貴弘のことが気になる女子は美桜だけではありません。物語が展開するにつれ、言わば「ハーレムもの」的な様相を呈してくることはこの手の作品としては必然なのですが、なんといっても貴弘は「デキる男」です。毎回、嫌味なく的確なアドバイスとサポートで女子の悩みを解決すると同時に、美少女騎士たちのハートをゲットしていきます。「気が付くとなぜかモテモテ」という不自然な展開が多めなこの手の作品にしては珍しく、そのモテっぷりに納得できる稀有なキャラクターとなっています。  時折、過剰なセクシー描写も飛び出してくるので、さすがに小さなお友達に見せることはためらわれますが(ヒロインたちが全裸で「しゃせい」をやたらと連呼する第7話は爆笑モノでした)、どちらかというとコメディ要素として扱われているので、そこまでいやらしく感じられない点も、スタッフの絶妙なバランス感覚がうかがえて好印象です。ノリは80年代の「月刊少年ジャンプ」(集英社)に載ってたような、お色気成分強めのスポ根漫画的な感じでしょうか。  現在、物語はジョスト大会に突入。騎士の頂点を目指して、美少女騎士たちの熱い一騎討ちが描かれています。これから物語はクライマックスに向けて、ますます熱を帯びていくこと必至です。  CGとセルを組み合わせた迫力のジョストシーンに熱くなるも良し。重厚な鎧の隙間から見え隠れする女子の柔肌にハァハァするも良し。清水愛、田口宏子、中村檜里子、今井麻美、生天目仁美、水橋かおりなど、原作ゲーム出演者とそっくりな声を持つ豪華な女性声優陣の競演に萌えるも良しな本作は、まさしく今クールアニメのダークホース! ぜひともスピンアウト作『More&More』のエピソードを補完する続編も期待したいところです! (文=龍崎珠樹)

「紅白出場は歴史的事件」3分でわかる、Linked Horizonの歴史

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Linked Horizon 公式サイトより
 11月25日、毎年恒例の『NHK紅白歌合戦』の出場歌手が発表された。64回目となる今年は、紅組、白組合わせて計51組が出場。T.M.Revolution、水樹奈々の出場も決定し、アニメファンとしては2人が歌う『革命機ヴァルヴレイヴ』主題歌のコラボに大きな期待が寄せられるが、それ以上に誰もが驚きを隠せなかったのがLinked Horizon(以下、リンホラ)の出場だろう。  リンホラといえば、今年4月から放送された大ヒット作『進撃の巨人』のオープニングテーマを担当したアーティストであり、前後期オープニングテーマを収録したマキシシングル『自由への進撃』(ポニーキャニオン)も20万枚以上の売り上げ枚数を記録。今年一年どころか、『けいおん!』『らき☆すた』『涼宮ハルヒ』『Angel Beats!』など並み居る強豪を押しのけ、2000年代以降最大のヒットアニソンの座を手に入れてしまった。  しかし、ほとんど音楽番組やメディアへの露出がなく、「リンホラって何者?」という人も少なくはないだろう。そこで、今回は謎だらけの紅白歌手・リンホラの歴史を、簡単に振り返ってみよう。 ■同人音楽黎明期から活動していたSound Horizon  公式サイトによると、リンホラとは「作詞・作曲・編曲の全てを手がけるサウンドクリエーターRevoが、他作品とのコラボレーションで音楽活動をする際のプロジェクト名」と紹介されている。つまり、Revoこそがリンホラ唯一の中心メンバーであり、普段は自身が主催するプロジェクト「Sound Horizon(以下、サンホラ)」のメンバーとして活動している。つまり、サンホラこそがリンホラの母体であり、そのルーツである。そして、サンホラの活動をたどると、1990年代後半までさかのぼることになる。  インターネットが普及し始めた90年代後半ごろに個人ウェブサイトを立ち上げたRevoは、オリジナル楽曲をアップ開始。この頃公開されていた楽曲は、MIDI音源によるインストゥルメンタル曲のみであった。その後、2001年末に同人音楽サークル「サンホラ」が発足。オリジナルのインストゥルメンタル曲を集めたCD「Chronicle」を同人誌即売イベント・コミックマーケット61で頒布する(この際に委託を依頼したのが、現在に至るまでサンホラのイラストを手掛けるyokoyan氏のサークルである)。こうして第1期サンホラはスタートする。  CD「Chronicle」は、北欧神話やファンタジーRPGのような世界観の物語を、音楽で表現する「Story CD」と銘打たれており、「物語を音楽で描く」という、サンホラの基本コンセプトはこの時点ですでに確立されていた。  その後、女性ボーカル・Aramaryとの2人体制で同人CDを5枚制作した後、04年にベルウッド・レコードよりアルバム『Elysion ~楽園への前奏曲~』でメジャーデビューする。この時期に、女性ボーカリストと男性ボーカリストによる歌とセリフの掛け合い、語りによるシアトリカルなスタイルが確立した。 ■第2期スタート、そしてリンホラへ  05年には、サンホラの活動と並行して、漫画作品『リヴァイアサン』のイメージアルバム『リヴァイアサン 終末を告げし獣』をRevo名義で発表するなど、オタク業界に非常に近い立ち位置で音楽活動を展開。そして06年に、サンホラは大きな転換を迎える。Aramaryが活動の方向性の違いを理由に脱退すると、サンホラはRevoを中心としたプロジェクトとして、第2期の始動を宣言。楽曲ごとに異なるボーカリストを迎えるという、現在の活動スタイルにシフトするようになる。  そして、満を持してリリースされたアルバム『Roman』では、女性ボーカリスト4名、男性ボーカリスト1名を迎えたほか、Revo自身もメインボーカルに初挑戦。さらに、ミュージシャンも計70名が参加するという超大作となった。もともとハードロック、プログレ志向の強かったサンホラではあるが、本作ではよりその傾向を強め、楽曲、歌詞、ストーリーなどが複雑に絡み合ったハイブリッドなサウンドを構築。この時期、サンホラの楽曲をベースにした漫画も、ウルトラジャンプ(集英社)にてスタートした。  08年にリリースされたアルバム『Moira』(同)では、ゲストボーカルに宇都宮隆や岩崎良美を迎え、ギリシア神話をベースにした物語を描いた。本作は、オリコンアルバムデイリーチャートにて初の1位を記録。サンホラ最初のブレーク作となった。  10年には「初音ミク」のほか、鈴木結女、マーティ・フリードマン、YUKI(ex:Λucifer)、淳士(ex:SHIAM SHADE)らそうそうたるミュージシャンを迎えたアルバム『Märchen』を発表した後、12年にRevoはレコード会社をポニーキャニオンに移籍。同時に、リンホラとしての活動を開始した。メンバーはサンホラ同様Revoを中心に、楽曲に合わせて参加ミュージシャンを構成するという形式をとっている。その活動第1弾として、ニンテンドー3DS用ゲーム『ブレイブリーデフォルト』の楽曲制作と、そのサウンドをベースに歌モノとして再構築した楽曲を収録したシングル、アルバムをリリース。翌13年にはRevo自身がボーカルを担当する『自由への進撃』をリリースし、大ヒットを記録したのは先述の通りである。  10月19日には、サンホラとしては3年ぶりの音源として、シングル「ハロウィンと夜の物語」をリリース。歌詞の中に、新たなアルバムの物語を予感させる文言が含まれており、さらなる活動に期待がかかっている。 ■大みそかは日本全国で「イェーガー!」コールが巻き起こる?  以上が、簡単ながらリンホラおよび、サンホラの歴史である。物語と歌が融合した特異なスタイルや、ハードロック、プログレッシブロック、ポップスなどの音楽ジャンルどころか、常識の枠にとらわれない参加アーティストのラインナップ。オペラを思わせる迫力のライブパフォーマンスなど、掘り下げたいトピックはまだまだある。しかし、ちょっとした紹介記事で彼らを語るには、あまりにも文字数が足らなすぎるのである。それほどにRevoの生み出す作品群は奥深く、さまざまなフックが存在しているのだ。  いずれにせよ、間違いなくいえるのは、リンホラの紅白出場は同人音楽出身のミュージシャンが国民的音楽番組(いまやこの肩書きも有名無実化しつつあるが……)に認められたという歴史的な事件である、ということだ。そんな彼らのパフォーマンスは、日本全国のお茶の間にどう受け入れられるのだろうか? それは12月31日に明らかとなる!

クール・ジャパンは異世界をも制覇する!? 意外にハードでリアルなオタク文化啓蒙アニメ『アウトブレイク・カンパニー』

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『アウトブレイク・カンパニー』公式HPより
 先日、NHKの情報番組にて、ロシアにおける日本のアニメ、コスプレの隆盛ぶりを伝えるレポートを目にした。異国の若者たちがオタク文化を通じて日本に対して強い親近感と憧れを抱いていることを、ひしひしと感じられる非常に興味深い映像だったのだが、いまやロシアのみならずフランス、アメリカ、アジア各国など世界各地で日本のオタク文化が広く受け入れられていることは、さまざまなメディアで報道されている通り。  そんな国境、人種、言語の壁を超えて世界中を熱狂させるオタク文化は、果たして時空の壁すら飛び越えて異世界の人々も魅了できるのだろうか? そんな思考実験を作品化したアニメが、現在放送中の『アウトブレイク・カンパニー』(TBSほか)だ。  とある事情から自宅警備委員を1年間続けた主人公・加納慎一は、ついに我慢の限界に達してしまった両親から、復学・就職・離縁の三択を迫られ、仕方なく就職活動を開始。そこで「総合エンターテイメント商社アミュテック社」の総支配人に就職。ほぼ拉致に近い形で、偶然日本と地続きになってしまったファンタジー世界の一国・神聖エルダント帝国に連れて行かれてしまう。  「アミュテック社」は、実は日本政府と神聖エルダント帝国が共同出資した、異世界初の企業であり、文化交流推進が目的の半民半官企業だったのだ! そこで慎一は、自らのオタク知識をフル活用し、オタク文化の輸出と啓蒙活動を開始。神聖エルダント帝国に、帝国初の教育機関であるオタク養成学校を設立し、日本語とオタク文化教育を開始する。その結果、白銀の鎧を身にまとう戦士や、エルフ、ドワーフ、獣人などファンタジー世界の住人たちが、「幼女萌え!」やら「エロゲに重要なのは映像か、シナリオか」という論争やら、美少女ゲームの歴史についての話題で盛り上がるようになってしまうからさあ大変。……というのが、本作のあらすじ。  こう書くと、単なる荒唐無稽なコメディ作品のようにも見えるが、その一方で「身分に関係なく学習できる場である学校という施設は、国体を揺るがしかねない危険な存在」という極めてリアルな言説が作中で飛び出したり、オタク文化を広めることで帝国の文化を破壊しかねない、という理由で慎一たちの命を狙う保守派テロリストが出現したりと、時折ドキッとするようなシーンも出現するのが本作だ。  文化というものは、その国、地域が長い歴史を重ねて培ってきた、身近な存在である。そこに何者かの手によっていきなり異国の文化が流入し、旧来の文化を押し流す勢いで席巻したとしたら、そこに軋轢が生まれるのは必然である。本作で描かれている異文化交流、流入による問題は、近年の我が国における韓流ブームと通じるものがある。そして、現在も世界中に広まりつつある日本のオタク文化もまた、同様に世界のどこかで同様の軋轢を生んでいるかもしれない。そういう想像力を持って本作を見れば、異文化交流の難しさと課題。そして、意義というものが見えてくる。  おバカアニメに見えて、意外に地に足の着いた問題を提起するドラマ。それが『アウトブレイク・カンパニー』の魅力である。  ちなみにもう一点、本作の魅力を挙げるならば、「ここまでやっていいの?」的なアニメ、漫画、ゲームのパロディネタである。いちいちツッコむのすら面倒くさくなるほど飛び出すオタクネタの数々は必見である。そのくせ『ニャル子さん』などのようにこれ見よがしにオタクネタをアピールするのではなく、サラッと自然に物語に織り交ぜてくるところが本作の美学。そこに痺れるし、憧れるのは筆者だけではないはずだ。 (文=龍崎珠樹)

エクストリームな癒やし効果に中毒者続出? 現代日本ならではのファンタジー『のんのんびより』

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テレビアニメ『のんのんびより』公式サイト
 日常なんかクソくらえ! そんじょそこらのヌルい日常系アニメじゃ、俺のすさんだ心は癒やせねえんだよ!  そんなハードな現代を生き抜く日常系アニメジャンキーの間で、現在放送中のアニメ『のんのんびより』(テレビ東京系ほか)の評価が上々だ。  本作はエクストリーム日常系。いや脱力系。いやいや、環境系アニメとでもいうべきか。両親の都合で田舎に引っ越してきた小学5年生の一条蛍と、越谷姉妹、宮内姉妹らとの日常を描く、という本作。あらすじだけを見て「いつもの萌え系アニメね」と思ったそこのあなた! ちょっと待って。一度本作を見てほしい。すぐに『のんのんびより』が持つ謎の魅力に気づくことだろう。    舞台となる田舎は「牛横断注意」の看板があったり、バスが2時間おきにしか来なかったり、買い物をするには自動車で1時間半ほどの距離にある市街地まで足を運ばないといけなかったりと、例えるならば井上陽水の「少年時代」がよく似合う田舎である。そこで小~中学生女子たちがなんてことのない日常を送るわけだが、本作の本質は彼女たちの日常ではなく、彼女たちが生活している風景なのだと筆者は訴えたい!  蛍らヒロインは、確かにかわいい。特にれんちょんこと宮内れんげタンは、小岩井ことりによる味わい深い演技もあいまって非常に魅力的だ。にゃんぱす~。  だが、彼女たちを魅力的たらしめているのはなんなのかと問われれば、それは彼女たちが生活する「ファンタジーとしての田舎」という舞台そのものなのだ。キャラクターが歩くあぜ道。夏休みにだけやってくる近所のおばあちゃんの孫。どこまでも続く田園風景。うっそうと茂る山林。ゆっくりと回る水車……。  それらすべては、我々日本人なら誰もが「美しい」と思い、「懐かしい」と感じることのできる」いわば日本人の心の故郷であり、現代人からすると、もしかするとファンタジーRPGの世界以上にファンタジックな風景かもしれない。そんな桃源郷のような世界を楽しげに生きる主人公たちは、かつての我々であり、二度と手に入らない日々を思い起こさせてくれる装置なのだ。  思い起こせば、本作は第1話の冒頭から数分間ひたすら田舎の風景を流し続けていたではないか。まるでNHK深夜の環境映像のような開幕ではあったが、そのシーンこそ「『のんのんびより』の主役は風景なのだ」という制作側からのメッセージだったのだ。  確かに、田舎暮らしはいいことばかりではない。虫は多いし、生活する上で何かと不便も多い。ご近所様とのお付き合いも、都会からすると信じられないほどわずらわしく、いわゆるムラ社会的な閉鎖性もある。  だが。それでも。だからこそ。『のんのんびより』は、我々が望んでやまない「理想の田舎」の風景を描き続ける。都市部で生活する人々には「憧れの田舎暮らし」を提示し、実際に田舎に住む人には「こうあってほしい田舎の風景」という日本ならではのファンタジーを描き続けるのだ。そう、『のんのんびより』は疲れた現代人の希望そのものといっても過言ではないのだ!  さあ、ともに『のんのんびより』を見よう! そしてともに生きる活力を得ようではないか!  にゃんぱす~! (文=龍崎珠樹)

熱い? 寒い? 賛否両論の話題作『キルラキル』を斬る!

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テレビアニメ『キルラキル』
 『天元突破グレンラガン』の監督・今石洋介×脚本・中島かずきコンビが送る、秋クールスタートのアニメ『キルラキル』(MBS・TBS系列)の評価が大きく二分されている。  本作は、『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』などの制作でおなじみのGAINAXスタッフが独立して立ち上げたアニメ制作会社・TRIGGERが、企画から手掛けた初のテレビシリーズ作品だ。  父の殺害現場に残されていた巨大な片太刀バサミを持つ少女・纏流子が、意思を持つ謎のセーラー服「鮮血」を着用し、片太刀バサミの謎を知ると思わせる本能字学園の生徒会長・鬼龍院皐月を倒すべく、次々と襲いかかる生徒会の手先と戦うというあらすじの本作は、例えるならば、初期『男坂』『炎の転校生』などに代表される、80年代少年漫画テイスト全開の非常に熱いノリの作風に仕上がっている。  現在、第4話までが放送されており、これからますますテンションが上昇していくことが、中島かずきへのインタビューなどからうかがえる。  そんな『キルラキル』だが、アニメファンの間での評価は賛否両論大きく分かれている。 ネット上に挙げられている感想をざっくりと分類してみると、およそ以下のようになっている。 ■支持派 ・「絵に勢いがある!」 ・「アナログテイストなタッチが力強くていい!」 ・「ちょっと昔テイストの作画が心地いい」 ・「いろんな意味でひどくていい!」 ・「80年代ドラマなどのオマージュネタが笑える」 ■否定派 ・「作画がおかしい。安定していない」 ・「テンションが高すぎてついていけない」 ・「ギャグなのかシリアスなのか分からない」 ・「ノリだけで内容がない」  ほかにもさまざまな意見があるが、大きく分けると、こんなところだろうか。  支持派は主に、本作の80年代テイストを感じさせる演出(テンションで押し切るテイストも含まれるか)や、アナログタッチの作画が持つ力強さを評価する一方、否定派にはそれらの要素がそのままウィークポイントとなってしまっていることが分かる。  実際にどういう層が本作を支持し、逆に拒否反応を示しているのかを確かめるべく、某アニメ誌の編集者に話を聞いた。 「まだ肌感覚でしかないのですが、視聴者のアニメ体験によって大きく感想が変わっているように思います。アナログ作画が大半を占めており、各作画監督の画風によって毎回絵のタッチが変わっていた90年代後半までにアニメにのめり込む体験をしていた視聴者は、本作の粗い作画を、懐かしさをもって受け入れているように思います。多少の強引さやこじつけをものともしない勢い重視の作風も、当時のアニメのテイストを思わせます。一方、デジタル作画時代に突入した00年代以降にアニメを見始めた世代の視聴者は、単に作画が汚く、ロジカルでない雑なシナリオの作品ととらえられている節もありますね」  そう語る20代の彼もまた、「個人的に『キルラキル』は、ちょっと受け入れにくいところはありますね……」と、本作に対し微妙な評価を下す。  ちなみに30代半ばの筆者の感想は、「『キルラキル』、イエスだね!」である。う~ん、やはり30代以上と以下で、本作の評価は分かれてしまっているのだろうか? 確かにここ数年のアニメはキャラクターデザインに対して忠実に作画することが喜ばれる傾向にあり、90年代までのアニメのように作画監督ごとのタッチの違いがそこまで出ることはなくなったし、シナリオも前後の矛盾がほとんどなくなり、安心して物語を楽しめるようにもなった。  だが、かつてのアニメが持っていた独特の「ユルさ」や「作画スタッフの個性」が生み出す、なんとも言えない味わいが薄まってしまったことも事実である。『キルラキル』はそういう時代の作品が持つ、画面からにじみ出るパッションを再現しようとしているのではないだろうか。こんなことを書くと、若い読者からは老害扱いされそうだけれども。  ともあれ、賛否両論を巻き起こすということは、それだけ多くの視聴者の注目を集めている作品、ということでもある。今後、本作がこの勢いをさらに加速させて天元突破してしまうのか。はたまた時代にマッチできずにスベってしまうのかは、じっくりと2クールの放送を見届けて判断するしかないだろう。 (文=龍崎珠樹)

アニメ業界の新潮流? 「キルミーベイベー」に「ラブライブ!」とOVA付きCDが出現!

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『キルミーベイベー・スーパー』(ポニーキャニオン)
「どしたのワサワサッ?」 「うるさいドーン!!」  このフレーズだけでピンときたアナタ。間違いなく、洗脳されてますネ! そう『キルミーベイベー』に!  2012年の深夜に放送され、当初はそんなに話題にならなかったものの、中毒性のある内容と主題歌のパワーで放送終了後もジワジワとファンというか信者、もしくは患者を現在進行形で増やし続けるギャグアニメ『キルミーベイベー』が今秋復活する。  10月16日に、テレビで使用されたOP、EDテーマやキャラクターソングを収録したベストアルバム『キルミーベイベー・スーパー』(ポニーキャニオン)をリリースする本作だが、今回のアルバムには、ほぼテレビアニメ1話分に相当する約27分のOVAが付属。「まさかの第2期フラグか?」とファンの期待感を煽っている。  それにしても、「CDにOVAが一本丸ごと付いてくる」という展開は、今までにあまり見なかった動きである。従来はOVAに特典CDがついてくるという形が主流だったが、『キルミーベイベー・スーパー』では主従が逆転してしまっている。  そのほぼ1カ月後となる11月27日にリリースされる、アニメ『ラブライブ!』のヒロインたちによるアイドルユニット・μ’s(ミューズ)のニューシングル(タイトル未定/ランティス)でも、CDにOVAを収録したBlu-rayが付属するバージョンが発売される予定だ。  μ’sは、これまでもシングル表題曲のアニメPVを収録したDVDをCDに付属してきたが、今回はPVを収録したDVD付きのバージョンのほかに、PVと短編OVAを収録したBlu-ray付きのバージョン。および前出のBlu-rayに加えて、さまざまな特典を封入した「超豪華盤」の3バージョンの発売が予定されている。お値段もDVD付き通常盤は2000円、BD付き通常盤は4500円、超豪華盤は7500円(すべて税込)と幅広い。  このように、まだまだ数はごく少なくはあるのだが、CDの特典にOVAを付けるという動きが生まれつつあるのは非常に興味深い。 「今後、こういう形態のアイテムが増えるかどうかはまだわかりませんが、どちらのタイトルも楽曲人気が高いアニメだと思います。アニメ本編は知らないけど、アニメソングとして気に入った人がCDを購入し、そこで特典に付いてきたアニメを見ることでアニメ本編にハマるという可能性もあると思います」 と、アニメ雑誌関係者は分析する。また、アニメソング関係のライブイベントによく足を運ぶというアニメ系ライターは、 「最近、アニメ本編は見ないけどアニメソングだけは聴く、というアニソンリスナーが増えています。そういう消費者には、アニメソングだけでなく、アニメ本編に触れるいい機会になるのでは」 と語る。やはり、アニメソングはアニメあってこそ。楽曲と作品を一度に楽しめる今回のようなパッケージングには、アニメ本編とアニメソングの関係性について再考させられる面もあるというのは考えすぎだろうか? CD+特典アニメという組み合わせのパッケージングについて、今後も注目していきたいところだ。  ドーーーーーン!!!!! (文=龍崎珠樹)

続編ものも意外としょっぱい!? パッケージ商品の売り上げ本数で見る、続編ものアニメの明暗

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『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE2000% 4』(キングレコード)
 人気アニメの続編。それは勝利を約束された鉄板コンテンツです。さまざまなタイトルが乱立し、限られたパイの奪い合いといった様相を呈している昨今のアニメ業界。折からの不況も相まって、アニメファンの財布のヒモも固くなってきたことから、まったくゼロから新規企画を立ち上げることは、なかなかリスキーな行為だといえます。それに比べて、かつてヒットした作品の続編なら、ある程度の売り上げは予測可能。大ヒットとはいわずとも、少なくとも大コケすることはないはず!  そんなビジネスライクな思惑と打算、そしてファンからのラブコールで作られる続編ものアニメですが、単純にBlu-ray&DVDといったパッケージの売り上げの動向を見ると、必ずしもそうではないようです。そこで今回は、2013年に入って放送された続編、リメイクもののDVD&Blu-ray第1巻の売り上げを前作と比較し、果たして続編ものは本当に勝利を約束されたコンテンツなのかどうかを検証してみます! 【パターン1・大躍進型】  続編が前作以上に大ヒット。パッケージ商品も、前作を上回る売り上げを達成するという、メーカーとしては一番うれしいのがこのパターンです。実はこのタイプは万に一つの特殊パターンで、2013年放送作品に限れば、約2万5,000枚から約6万5,000枚とダブルスコア以上の大躍進を達成した『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE2000%』(うたプリ)。そして『ちはやふる2』の2作品のみ。  なお、『ちはやふる2』に関しては、前作が全9巻を別売りする通常のパッケージ販売の形態でしたが、『2』では上下巻のBOX仕様で販売となっています。その結果、約2,100枚から約3,400枚と一商品あたりの売り上げ本数は増加しています。また、『うたプリ』第1巻にはライブイベントの先行抽選コードが封入されていたということもあり、複数買いしたファンも少ないと思われます。それを踏まえても、驚異的な数であることは変わりがないわけですが。 【パターン2・横ばい型】  前作とほぼ変わらない、もしくは7~8割程度の売り上げ枚数を維持するパターンです。 とりあえず、多くの作品がこのラインを目指すのではないでしょうか。このパターンも意外と少なく、ここに分類できるのは、『僕は友達が少ない NEXT』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』『とある科学の超電磁砲S』の3タイトル。  こうしてみると、いずれも根強い固定ファンを持つ漫画、ライトノベル原作ものばかりですね。実際には各作品とも売り上げ枚数自体に差はあるものの、前作ファンを満足させられるクオリティを維持できれば、パッケージ商品の売り上げも維持できる、といったところでしょうか。 【パターン3・激減型】  実は、このパターンが一番多かったりします。前作の40%程度の売り上げとなってしまった『百花繚乱 サムライブライド』。ストーリーを仕切り直して再スタートした『ローゼンメイデン』は、約1万1,000枚から約2,000枚へと急降下。人気漫画の続編をアニメ化した『げんしけん二代目』は、前作の約2,600枚から約800枚に減少。『gdgd妖精s』は、約3,900枚から約1,900枚に半減。  昨年、日本全国に「(」・ω・)うー!(/・ω・)/にゃー!」旋風を巻き起こした『這いよれ!ニャル子さんW』は、約9,200枚から約5,100枚と6割弱に減少。はやり廃りのサイクルの速さを痛感せざるを得ません。  最も驚きなのが、『よんでますよ、アザゼルさん。Z』です。前作同様、今回も小野坂昌也、浪川大輔、神谷浩史といった人気男性声優が出演するイベントへの参加券を全巻購入者特典として封入しましたが、Blu-ray&DVDの売り上げ枚数は約9,600枚から約4,300枚へと半分以下に激減。人気声優の力をもってしても、作品の売り上げを維持することは難しいということなのでしょうか。 【パターン4・複合型】  これはパターン2とパターン3のハイブリッドともいえる分類で、シリーズ当初から大きく売り上げ枚数を減少させながらも続編が制作される長期シリーズもの特有のパターンです。シリーズ第4期となる『みなみけ ただいま』は、第2期で大きく売り上げを落としつつも、その後もシリーズ続行。シリーズ第1期では約9,000枚を初動で売り上げた『ハヤテのごとく!』は、第2期に約6,000枚の売り上げを記録。パターン2の動きを見せながらも、第3期は約1,000枚に急落。現在放送中の第4期『ハヤテのごとく! Cuties』は約700枚とさらに売り上げを落としており、パターン3的な動きも見せています。 ***  こうして見ると、続編アニメは思ったよりもヒットが約束されているわけではないことがわかりますね。もちろんパッケージ商品の売り上げが、アニメの面白さに比例するわけではありません。いちアニメファンとしては、今後も新作、続編問わず、面白いアニメが見られることを願うばかりです! (文=龍崎珠樹)