『孤独のグルメ Season6』第4話 深夜の飯テロ界の地球破壊爆弾! 焼肉が早くも投下

孤独のグルメ Season6』第4話 深夜の飯テロ界の地球破壊爆弾! 焼肉が早くも投下の画像1
テレビ東京系『孤独のグルメ Season6』番組サイトより
 さて、今回も朝まで空腹に耐える準備をしながらチャンネルを合わせる『孤独のグルメ Season6』(テレビ東京系)。もう、飯テロの絨毯爆撃に朝まで耐えるのは止めました。最初から、番組を観ると腹が減るという前提で準備をしておくことにします。  とりわけ、深夜にもかかわらず油ギトギトの料理はオススメ。皆さんも、豚バラ肉なんかをフライパンで焼く準備とか、しておきましょう……。  さて、今回、ゴローちゃんこと井之頭五郎(松重豊)がやってきたのは、東京都は東大和市。東京都の水源地として重要な多摩湖を有する街。戦前は、日立航空機の工場があり、戦争遺跡もあることで、その手のファンには知られた街ではありますが、都民でも用がなければ立ち寄ることはない街でしょう。  そんな街の駅に降り立ったゴローちゃん。花束を手に向かったは、手塚理美の営むカーテン店さん。手塚が足を骨折したので、お見舞いでの訪問だそう。 「仕事で国分寺まで来たから電話したら~」  というゴローちゃんですが、国分寺から東大和に行こうとしたら、西武国分寺線か多摩湖線か、どちらにしても、ちょい面倒くさいルート。それでも、顔を出そうとするマメさが、商売の秘訣といったところでしょうか。  しかし、2人の関係。かなり気安い友人といった雰囲気。過去にどのようなことがあったのでしょうか……。  手塚に結婚しないのかと聞かれたりするゴローちゃん。出かけようとした中3になる手塚の息子の成長ぶりに驚き、手塚に「あのとき、ゴローさんに告白しておけばな」とか言われて、自分の人生をいろいろと考えてしまいます。  でも、ガラにもないことを考えれば腹が減るもの。そして、迷い込むのは住宅地。 「方向を誤ったか……店がない」  今回も住宅地へと迷い込むゴローちゃん。ええ、東大和市って街道沿い以外はガチで住宅ばかりの街なんですよね……。  もはや店を見つけるのを断念し、青梅街道を駅へと戻ろうとするゴローちゃん。 「焼肉でも食いたい気分になってるぞ……」  そんなゴローちゃんの目の前に現れたのは……。 「うそ、焼肉。食いたいという気分になった矢先に出会えるとは、おまけにいい暖簾を垂らしているじゃあないか」  さあ、今回の焼肉店は、まさにこの番組にお似合いの店構え。炭火がどーのとか、ナンタラカンタラの熟成肉とか、オシャレはキーワードとは無縁。昔ながらの、ガスで焼く街場の焼肉店なのであります。 「一人なんですけど……」 「こちらのお席にどうぞ」  案内された4人掛けのテーブルを一人で使って。さあ来るか。「溶鉱炉」か「うぉおおん」か!  さて、そんな店に貼られているのは、こんな一文。 「看板娘『みゆ』がいましたらぜひ! なんでも聞いてください」 「タン塩看板娘の大好物です。命をかけるほどおいしいです」  今回、看板娘を演じるのは白石聖ですが、リアルのほうもかわいいと、ネットでは現在進行形で評判になっております。  さて、ホルモンかカルビかと悩むゴローちゃん。いきなり「イベリコ豚って手もあるか……」。  いきなりイベリコ豚とか、今回のゴローちゃんは、空腹で相当混乱している様子。  それでもメニューだけでなく、貼られたオススメの張り紙にも目を通すゴローちゃん。 「命をかけるほどおいしいです……日本語おかしいだろ」  とはいうものの、タン塩推しに乗っかってしまうゴローちゃん。さらに、別のお客の様子を見ながら選択肢は増えていきます。 「よし、第一弾いくか……」  さあ、何からいくかと思ったゴローちゃん。 「あの、カイノミってなんですか?」  これも張り紙でのオススメ品。白石演じる店員は「油がサッパリしていて……」など、丁寧に教えてくれるのです。  まずは、上タン塩とカイノミのタレ。そして、アゴ=豚のアゴをタレ。ついでにサニーレタスとサンチュセットも投入です。飲み物は当然、ウーロン茶から。  さあ、運ばれてきた肉をゴローちゃんは、どう並べていくのか。 「タン塩はタレで焼き網が汚れる前に焼くのが鉄則だ」 「少し焼きすぎかなくらいがおいしい……ホント」 「ここは、おつまみキャベツで飢えをしのごう」  なるほど、原作で神回といえる焼肉。ゴローちゃんの名ゼリフも止まりません。 「んん、ほんとだ。少し焼きすぎかなくらい、正解。肉は焼くほどに固くなるもんだと思い込んでいた」  タン塩への感動で早くも、食のリミッターは振り切れてしまったか。まだ残りのタン塩があるというのに、豚のアゴも焼き始めてしまいます。 「さて、アゴだ。おお、こういう感じ。いや、いいよ、しょっぱうまい。ちょっカリカリとして、こちらのアゴも使わせる……」  続いて野菜を巻き始めれば、もう止まりません。  青唐辛子とにんにくを乗せて……。 「おお、これは青唐にんにく、ズルイ」  キムチも一緒に巻けば……。 「おお、これもナイス。薬味がいろいろあるから自由自在だ」 「ここで、よく焼きタン塩。ウエルダンならぬウエルタン」  至福の焼肉に、ついにこんな言葉も。 「命は賭けられんが、仕事の1つや2つ、すっぽかして来てもいいほどうまいよ、みゆちゃん」  感動はしても、まだグルメは始まったばかり。カイノミを焼き網に置き、ゴローちゃんは腕まくりして、本気の食モードへ。 「くぅ~、何このフワフワ。このタレいい。つけ込み方も絶にして妙。これは早くライスも頼まなきゃ肉に対して申し訳ない」  ライスは中に抑えて、韓国のりを追加したゴローちゃん。まだ、理性は働いているということか。 「ううむ、うまい。史上最強のタッグが、オレの口の中で大暴れしている。これはカルビとかロースとは別次元のうまさだ」  誰もが知っている焼肉に白いご飯という最強の組み合わせ。この飯テロは、ほぼ地球破壊爆弾が落ちたようなものですよ、はい。  さらにカイノミも野菜巻きにして、違う食感で食らい尽くすゴローちゃん。 「ほうら、素晴らしいにんにくパンチ。タレの味に磨きをかけるがごとし!!!!」  そして、さらに広がる無限の胃袋。 「野菜も米も潤沢に残ってる。追加肉いこう……となれば、あれだ」  注文したのはザブトンのタレ。その間も、カイノミを焼き、韓国のりを手で摘まむゴローちゃん。 「ここは最果て、東大和の焼肉店か……」  なぜか黄昏れるゴローちゃん。最果てとか、東大和市民に失礼。今じゃ、モノレールもあるというのにぃ!!  かくて、やってきたのは、巨大で四角いザブトン。 「おお、さすが特選カルビ。食べ応えも超高級ザブトンだ。どんどんガバガバ食べたくなる、ドンガバチョな肉だ……」 「味付け肉はタレをつけるというステップがスキップされていて楽だ。最近の飛行機の搭乗手続きみたいというか……」  さて、やはり焼肉回ということなのでしょうか。今回は、ゴローちゃんのかっこむシーンがけっこう長めな印象。 「今日のオレ、大金星だ。胃袋の国技館では、今、歓喜のザブトンが舞っている」  もはや、歓喜の名言は止まることなく、視聴者を深夜にもかかわらず焼肉店へと誘う破壊力で攻めてくるのでした。  かくて満足したゴローちゃん「今日は、よく眠れそうだぞ……」と、店を後にするのでありました。  さすが焼肉回ならではの、神がかったセリフ回しと食いっぷりで魅せてくれたゴローちゃん。何はともあれ、高そうな背広でも構わず焼肉店に入ってしまう剛胆さを、見習いたいものだと思いました。 (文=昼間たかし)

『孤独のグルメ Season6』第3話 谷村美月の店員がたまらない! 今回は「スープカレー」1食で満足でした

『孤独のグルメ Season6』第3話 谷村美月の店員がたまらない! 今回は「スープカレー」1食で満足でしたの画像1
テレビ東京系『孤独のグルメ Season6』番組サイトより
 いよいよ第3話となりました、深夜の飯テロ最終兵器『孤独のグルメ Season6』(テレビ東京系)。たとえ食欲を呼び覚まされて我慢ができずに、夜食を食べた後に後悔をすることになったとしても……見ないで後悔するよりはマシ。食に対するゴローちゃんこと井之頭五郎(松重豊)の情熱に共鳴することができるのならば、体重の1キロや2キロはどうってことないではありませんか。  かくて、今回ゴローちゃんがやってきたのは、目黒区。権之助坂を歩き、到着したのはプリンセスガーデンホテル。ロケに借りたお礼も込めてか、画面いっぱいにホテル名が。  昔の番組では、タイアップということで、登場人物がやってきた施設名を連呼したりするものも多かったのですが、今どきこんな番組も珍しい。あと、国際情勢の裏舞台に詳しい人は「ゴローちゃんも、いろいろと手広いなあ……」と、さまざまな想像力が膨らみます。いやいや、きっと制作者にそんな意図はありません。  新たなクライアントなのか、気合を入れてやってきたゴローちゃん。今回の取引相手であるホテルの担当者は、山崎樹範。吉井怜と結婚してシアワセなはずですが、画面の中の山崎は、けっこう厳しい顔。それものはず、ゴローちゃんの提案が期待外れだったそうで、リテイクを要求してくるのです。  相当、ゴローちゃんに期待していたのでしょうか。えらく熱いダメ出しの一幕。無難な提案をしてしまった自分に、ゴローちゃんも反省することしきり。  いやいや、ホテル全館をリニューアルするための提案。うまくいけば、相当な利益になるのは、想像に難くありません。ゴローちゃんが苦渋の表情になるのも当たり前……。それにしても、仕事に疲れた週末の夜に、こんな仕事の苦悩を思い出させるシーンを挿入するのはいったい? いや、きっと、これは爆発に向けての「溜め」のシーン。『ドラゴンヘッド』なら、トンネルの中。『進撃の巨人』なら、訓練兵団のあたりです。  あまりの悔しさにボーッと歩いていたゴローちゃんですが、やはり空腹には気づきます。そして、今日も始まる、忘れることのできない言葉の応酬。 「空きっ腹でいい仕事ができるはずない。よし、店を探そう」  どういうことか、目黒の住宅街に迷い込んでしまったゴローちゃん。そこで見つけるのは「薬膳スープカレー Shania(シャナイア)」。目黒というには随分と離れた、恵比寿ガーデンプレイス近くの住宅街にひっそりとたたずむお店。ゴローちゃんのみならず、視聴者もびっくりするような立地。しかも、番組公式サイトによれば、4月30日から1カ月ほどリニューアルのため休業予定。番組で放映されるということは、当然行列ができて儲けが待っているというのに、休業。何か信頼が置ける店ではありませんか!  裏路地の一軒家を改造したと思しき、店の外観。ひさしの上には赤い猫のぬいぐるみ。  ありますよね。このタイプの、店主が奇人で料理以外にもエンタテインメントを提供している系のワクワクさせてくれる店。店の人がキャラ立ちしている店というのは「料理の値段だけで、こんなに楽しませてもらっていいのかな」と素敵な気分になること請け合いです。 「スープカレーか……最後に食べたのいつだっけ。ま、今の俺には薬が必要だ」  そう「薬膳」の文字を見つめて入店するゴローちゃん。店内は若いカップルや女性客で、そこそこ。  さあ、とメニューを開いたゴローちゃんは、まず驚き。優しい手書きのメニューは手順がいっぱい。スープのベースや具材、辛さにライスの種類などを順番に選ぶようになっています。 「全部生薬入り、生薬ってなんだっけ」  ひとつひとつ吟味していくゴローちゃん。 「辛さね。辛いのは好きだが、初めての店では辛さの基準がわからない。かといって中辛というのも弱腰、臆病者、事なかれ主義だ」 「……最後はライス、見えた!」  パンッとメニューを閉じつつ、早口で注文をするゴローちゃん。しかし、そこに予想外の出来事が。 「スープカレーは、20分ほどお時間をいただきますが」  そう答える店員は、谷村美月。谷村美月が店員だったら、一日中だって待っちゃうよ! と、筆者は思うのですが、ゴローちゃんの空腹は店員が誰であろうと関係ありません。 「えっ、20分っ!」  ほとんど素の驚きを見せるゴローちゃん。 「この空きっ腹に20分のお預けはキツイ」  メニュー変更かと思いきや、来た。サイドメニューで小腹を満たしながら待つ作戦です。  ここで、店員・谷村「辛さはどうしますか」と、返すのですが、店はさほど混んでないのに「いっぱいいっぱい」感のある雰囲気を醸し出してます。なんというか、少々精神不安定そうな演技。どういうキャラ作りの結果なんでしょう。もしや「俺はカレーの神だーーーっ!」系のカレーじゃないよね? 「あ、チキンカレーとザンギ。鶏がダブってしまった。焦って取り乱してしまった」  一人でボケて、一人で鼻で笑うゴローちゃん。ようやく見渡す店の中は、あちらもこちらも猫の絵や雑貨でいっぱい。 「店主はかなりの猫モノとみた」  心を落ち着かせて待とうとするゴローちゃんですが、後ろでは食事を楽しむカップルや、別の客に運ばれてくる料理。どんな料理が運ばれてくるのかと待ち構えてくると、やってきたのは、ザンギ。 「空腹がマイナスまで落ち込んだ腹を、このザンギでとりあえずゼロ地点にまで戻す」  今回はひたすらに空腹だったゴローちゃん。とにかく、腹を慰めようと食べ続けます。 「おかずにもおやつにもなりそうな、マルチなザンギだ。こういう男に俺はなりたい」  そうしてついに、やってきましたスープカレー。  なんとも具材が多くて……。しかも食欲を刺激しまくる彩り。そんなものを深夜の画面に映すなんて……(今回は放送直後に録画で観たのですが、筆者はここでコンビニに走りました)。  まず一口目はスープから。 「あーーーーーーーー、これは、うまいっ!」  空腹+うまさのなせる技か、今回のゴローちゃんは、いつにも増して徹底的に演技で表現をしようとしているのです。 「このライスひたし食い、たまんない」 「ピーマンがまたいい、合う」 「いろいろ入ってるから、カレーと名乗りつつも、ちゃんこというかブイヤベースというか鍋的な楽しさもある。しかも、お薬でもあるという」  止まるところなく、ひたすらに口に運び続けるゴローちゃん。ザンギで空腹を慰めたからでしょうか。今日は、まだ落ち着いて食べているような気がします。 「カレーっちゃカレーだが、いわゆるカレーとは別物だ。でもうまい」  そして、後半。ついに上着を脱いで本格的な態勢に入ったゴローちゃん。底に沈んでいる大根に驚きます。カレーに大根。カレー味のおでん。これは、ぜひ自宅でも試してみたいものです。しかも、エリンギとかカブとか、けっこう面白い具材も入っているとは。うまいのは間違いありません。  しかし、この一食で止まらないのがゴローちゃん。 「よし、後半戦はちょっと攻めてみるか」 「あの、トッピングって途中で追加できますか」 「大丈夫ですよ」 「じゃ、温玉をお願いします」  うん、ゴローちゃんもスゴいけど、谷村のなんか精神的に不安定そうな演技もたまりません。いったい、なんなんだ……。  かくて残り三分の一ほどのカレーに投入される温泉卵。徹底的かき混ぜて、まろやかな味をさらに楽しみます。 「おっと、スープの旨さにライスが遅れを取っている」  そう、やはりグッチャグチャにかき混ぜてこそ、カレーは美味いのです。 「よぉし……」  かくて、来ましたあの音楽。 「まさに、今日の俺が出会うべき料理を、俺は食べることができた……」  止まることなく食べ続けるゴローちゃん。 「ああ、うまかった大満足」  と、今日は、このいっぱいでお終い……にはならない。 「あのすみません、メニュー見せてもらえますか?」  目をつけたのはバニラアイスでした。 「こういう店にはおいしいスイーツがあると思ったんだよな」  八角の入った独特のバニラアイスに感動するゴローちゃん。食べすぎることもなく、満足して食を終えたのであります。  今回は、抑えめの演技を繰り出してきたゴローちゃん。谷村演じる店員が、絶妙な奇人感を出していたのが、店にうまくマッチしていたと思います。メシそのものだけでなく、なんだかわからないけど、ただならぬゲストの存在感で、おなかがいっぱいになった第3話でした。 (文=昼間たかし)

『孤独のグルメ Season6』第2話 「ご飯の劣勢は必至」豚バラ生姜焼き定食の恐るべき破壊力!

『孤独のグルメ Season6』第2話 「ご飯の劣勢は必至」豚バラ生姜焼き定食の恐るべき破壊力!の画像1
テレビ東京系『孤独のグルメ Season6』番組サイトより
 金曜深夜にやってくる究極の飯テロ番組『孤独のグルメ Season6』(テレビ東京系)。朝まで空腹を耐えることできるのか、視聴者の胃袋を攻撃しまくる番組は早くも第2話。今回は、どんな夜明けと共に出かけたくなる店を投入してくるのか……。  では、第2話「東京新宿区 淀橋市場の豚バラ生姜焼定食」の世界をレビューしていきましょう。  さて、ゴローちゃんこと井之頭五郎(松重豊)がやってきたのは、新宿区大久保。前回は大阪の下町まで営業に出かけてたけど、今回もシブい街。個人で営む輸入雑貨商のゴローちゃん。今回は、カフェで始まる洋食器の展示会の什器一切を取り扱っている様子。けっこうな儲けなのではないでしょうか。  そんな将来性もある大口顧客が相手だからということでしょうか。朝も早くから、搬入だけでなく、あれこれとお手伝い。喫茶店主が、真中瞳……じゃなかった東風万智子ですから。まあ、美人は得ということか。  ひとまず仕事はやり終えて、時間はまさかの午前8時30分。「4時起きだったからな」と、やり遂げた感を語るゴローちゃん。え、喫茶店での会話で東風が「今日のイベントに間に合いそうです」と語っていたけど、ホント、ギリギリでの開店なのか……。大丈夫かな、この喫茶店。  ともあれ、そんな早朝から働いていれば、腹が減るのは当たり前。それも、ガッツリと減るに決まってます。 「モーニングのトーストじゃ物足りない。米、ごはん食べたい……」  一瞬「牛丼の店か……」と、簡単に済ませようと思ったゴローちゃん。でも、そんなゴローちゃんの目の前に現れたのは、新宿は淀橋市場。総武線の窓からも、ちょっと見えるアレです。  素直に「食堂はどこですか?」と聞けばよいのに、なぜか市場をウロウロと店を探して歩くゴローちゃん。見つけたのは市場内の食堂「伊勢屋」です。 「いかにも、市場の食堂……。この人たちも、今がまさに昼飯時」  ワクワクとはしながらも、パリっとスーツ姿で、少し座り心地の悪そうな感じもしているゴローちゃん。未知の世界といえる市場食堂は、すべてが珍しい様子。ちょっとしたことにも感動です。メニュー表のライスの増減の値段を見ただけで、こんなセリフ。 「50円引き……増しと引きがあるのか」  そして、この食堂はメニューの数もたくさん。定番メニューに日替わりメニュー。固定のものとは別に黒板にもズラりとメニューが。定食だけでなく副菜もいっぱい。  そんな「溜め」のシーンの連続によって、ゴローちゃんの胃袋は一気に拡大しているのでしょう。 「アジフライにも惹かれるけど、今は労働後の肉。プラス小鉢の連打だな」  かくて、最初の注文は、豚バラ生姜焼き定食、納豆と竹の子の土佐煮、明太子、トマトの酢漬け……。  でも、ここで、ご飯は丼に普通盛りで注文してしまうゴローちゃん。ダメだよ、ゴローちゃんが普通盛りで耐えきれるわけがないではありませんか!  それに、豚バラ生姜焼き定食は『孤独のグルメ』においては、忘れ得ぬメニュー。記念すべき原作第1話で、ゴローちゃんが豚汁とかぶったことを、ちょっと後悔しつつもモリモリ食べた、アレです。  こうなると視聴者視点では「さあ、くるぞ、くるぞ……」しかないではありませんか。  ここでまた、生姜焼きの出来上がっていくシーンを挿入するという、とんでもない飯テロ。制作陣は悪魔ですか……。  そうして、定食+小鉢の群れがやってきました。 「あららら……朝からすごいことになっちゃったな」  その一言と共に始まる、ゴローちゃんの名言劇場。 「おお、質実剛健。空腹にズバっと応えるパンチと香り」 「やっぱり、豚バラ生姜焼定食は定食界でも別格だな」 「この時期、タケノコの文字を見ると条件反射的に頼んじまう。四季のあるニッポン、旬のあるシアワセ……」 「味噌汁もいいじゃないか、ここ、ホントに誠実な店だ」 「この店の小鉢は、ちゃんと小鉢然とした量でうれしい」 「このサイズで、この破壊力。ご飯の劣勢は必至」  ここで、ゴローちゃん。豚バラの利点を生かして、メシの巻き食いを始めます。こんなことしたら、もうご飯が足りるはずもありません。 「付け合わせのキャベツも、この店では立派なごちそうだ」  そして、いよいよ手をつけたトマトの酢漬け。ああ、ここで酢の物を入れたら食欲がさらに増大するのは必至。 「最高だ……9時3分の食堂で生姜焼定食の充実」 「ううむ、うまい。生姜焼きのタレをつけたキャベツ。これは名も無きひとつの料理だ」  そして感動と共にやってくるのは、満腹ではなくコンティニュー。 「食べながら考えていたんだ。納豆を食うタイミング。大丈夫、この店にはあの手がある」  そして来た! ご飯のおかわり、茶碗の八分目。  ついに上着を脱いで、まくり食いに突入するゴローちゃん。納豆は、とにかくよくかき混ぜる派のようで、執拗に混ぜ続けるのです。 「白飯と相思相愛、地味だがしっかりと仕事する納豆は朝ご飯に欠かせない名脇役だ」  かくて、最後に1枚だけ残した豚バラを口に運ぶときに飛び出す一言……。 「街の食堂がなくなっている今どきに、こんな定食が食べられるシアワセ」  ああ、まさにその通り。筆者の近所も相次いで食堂が消滅。牛丼屋とオシャレカフェになってしまい、食生活は悪化の一途。きっと、多くのみなさんが同じ思いを抱いているでしょう。  誰か、志ある人が昔ながらの食堂を始めてくれないかなあ。そんな働く者に優しい世界の実現を夢想してしまう、第2話でした。 (文=昼間たかし)

『孤独のグルメ Season6』第1話 スカした東京人どもの胃袋の常識を変えてやる!? お好み焼きは、ごはんのおかず

『孤独のグルメ』第1話 スカした東京人どもの胃袋の常識を変えてやる!? お好み焼きは、ごはんのおかずの画像1
テレビ東京系『孤独のグルメ season6』番組サイトより
 今シーズンの放送を前に、作画の谷口ジロー先生が亡くなられました。いまや、谷口先生の代表作のひとつとなった『孤独のグルメ』。  でも、最初に依頼が来たときには「なぜ、私に……」と思ったそうです。実際、掲載誌の「月刊PANjA」(扶桑社)は、まったく売れずに休刊。その後、同社から単行本は出たものの、まさか21世紀になって、こんな人気を得るとは誰が予想できたでしょうか。  かくて、空前の飯テロによって、世間にさらなる「孤独のグルメ実践者」を増殖させているテレビ東京のドラマも、いよいよ第6シーズン。いったい、どんな哀愁とうまいメシが待っているのか。  お待ちかね、第1話のタイトルは…… 「大阪府 美章園のお好み焼き定食と平野の串かつ」 です。  今回の冒頭、ゴローちゃん(松重豊)がやってきたのは大阪。それも、梅田ではなく、ディープな通天閣のたもとです。原作において、大阪は鬼門。大阪の独特のノリについていくことができず、ひたすら孤独を感じながら、タコ焼きをモグモグと食べるしかないゴローちゃんを、皆さんもよく覚えていることでしょう。  しかし、それはすでに過去の出来事なのか。松重ゴローちゃんは、食い倒れの街に大いに期待を寄せています。  ですが、簡単にモグモグ満足させてくれないのが、このドラマ。声をかけてきた客引きのお兄さんの案内で、首尾よくメシにありつけるかと思いきや、携帯電話が。  メシを食べたいときに邪魔されてしまう。フラストレーションは募ります。とはいえ、そのへんでささっと立ち食いうどんでもすすったりしないのがゴローちゃん。もはや遺伝子レベルで、空腹こそが最高の調味料と理解しているのか?  突然、電話でアポの時間を変更してきたお客は、旧知の不動産屋。モデルルームに置く調度品のために、わざわざ、東京からゴローちゃんを招いたのです。 「大事な仕事やから、ゴローさんに頼んでるんやないんですか~」 という不動産屋の「こっちは、お好み焼きをおかずにメシを食いますわ~」の一言に、ゴローちゃんは「ムリムリ」と渋い顔。これ、なんてフラグなんでしょうか?  ともあれ、北海道生まれの彼を大阪人にしてしまう地域のパワーに感慨を覚えながら歩いていると、突然思い出すのは空腹。かくて、ゴローちゃんの店探しがスタートです。  そして、入るのはお好み焼き屋。決め手は、枯れたのれんに「風流美味」と書かれているところ……。  客が勝手に取るおしぼりが紅白なのも新鮮に見えるゴローちゃんは、さっそくの名言。 「初めて来たのに懐かしい。これは……本物の店だぞ」  王道の豚玉にしようかと考えたゴローちゃん。隣の席に運ばれてくるのは、豚玉の定食。いまだ、驚きは隠せませんが「こんな店に入れたんだから……」と、大阪人の味覚に果敢に挑戦します。それにしても「こんな店」と言ってしまうゴローちゃんの洗練された東京人らしさが面白いです。  そんなお好み焼き屋で、昼間っから飲んでいるのは、池乃めだか師匠ではありませんか!  ゴローちゃん、めだか師匠に「兄ちゃん、背え高いな~」と突っ込まれますが、「どっかから声がするけど、どこや~」とは返せません。  さて、運ばれてきた定食。「関東人には理解不能」と覚悟を決めながらも、なおも違和感を隠せないゴローちゃん。恐る恐る小手でマヨネーズを広げます。ここで今日2度目の名言。 「小手づかいで大事なのは、思い切りだ」  口に運べば、お好み焼きは美味。「これだけでいいじゃないか」と言いつつも、大阪スタイルを試すゴローちゃん。「意外にいいかも!」と、一口で気に入ります。「もしかすると、俺の身体の中には大阪人のDNAがある」んじゃないかと、うまいモノの前には一瞬で世界が変わるゴローちゃんです。  いよいよスイッチが入ったゴローちゃん。こうなると貪欲な胃袋は止まりません。続いては焼きそばに挑戦。まずはミックスとデラックスの違いを聞くところから。ミックスは、豚にイカとエビ。デラックスはそこに貝柱も入っているというわけです。そして怒濤の名言。 「このソースのにおい、なんと暴力的な。お好み焼きを食ってなかったら即死だ!」 「大阪ソースの催眠術か、また腹が減ってきたぞ」 「デラックスだ、遠慮なくデラックスにいこう」  半熟目玉焼きを麺に絡め取って狂喜するゴローちゃん。さんざん語っているのに「この店の焼きそばのおいしさは、俺のような一見の客に語れるものではない……」と。いくら語っても、食の前には謙虚なのが、ゴローちゃんと山岡士郎の大きな違いです。そして、まだ止まらない名言。 「きっと、東京に戻ってから、強烈に食べたくなるに違いない」  お好み焼き定食に焼きそばを食べながらも、まだ、終われないゴローちゃん。続いては、「たこねぎ」の小をしょうゆ味で挑みます。ソースとは違うしょうゆのおいしさに流れる音楽もノリノリ。半分は一味をぶっかけ「なるほど、こうなるか」と、さらにモグモグは続きます。 「ハマる人はハマるなあ、俺も今日から、この一味」  かくて、お好み焼きに始まる「炭水化物トライアスロン」を食い倒れずに完走した達成感を得るゴローちゃん。すっかり、大阪の食文化に胃袋を支配され尽くしたのであります。  さんざん食べて今日も終了かと思いきや「さて、もうひと仕事」と言いだすゴローちゃん。満腹かつ、ソースのにおいをコートに染みこませて商談に向かうのも平気なのが素敵です。  で、2軒目の商談は町場のパーマ屋さん。個人経営なのに、なんとクライアントの幅の広いことか。小商いでも、わざわざ出張してきてくれるフットワークの軽さが信用なのでしょうか。  商談を終えて「さあ東京に戻るか」とつぶやくゴローちゃん(日帰り?)。だが、その目に飛び込んで来たのは「串カツ、どて焼き」と書かれた屋台。「やり残していることがあった」と、当たり前のように足は動き出すのです。  そしてCM明けは、油のはじける音から。 「串カツのウスターソースは、大阪人の血液だ」  屋台なのに具材が多いという大阪ならではの光景に、もはやゴローちゃんの胃袋はブラックホールとなります。  ヒレ肉ならぬヘレ肉、ニラ巻き。紅生姜。紅生姜の揚げたのが、ソースに合うという新発見に、さらにゴローちゃんが加速するのは当然です。  そして、ここで挿入されるのが飲み物のセレクト。 「ここはウーロン茶じゃないな、油ものには炭酸だ」  飲み物は店ではなく傍の自販機で買ってくれという、屋台ならではのスタイル。サイダーを流し込めば、さらに新たなステージへ。どて焼きは、2本注文。入ってきた親子連れ……じゃなくて、元阪神の下柳剛に引きずられるように、コンニャクも。 「なんだか、初めて大阪の懐に潜り込めた気がする」 と、感動は無限の食欲へと続くのでありました……。  初回から炭水化物でトライアスロンと思いきや、まさかの延長戦まで完走した第1話。  ますます盛んな松重ゴローの胃袋は、深夜の飯テロどころか、核弾頭のごとく視聴者に攻め込んできます。21世紀になり、少しは知れ渡った感もありますが、まだまだ東京では、お好み焼きをおかずにご飯というのは、奇人扱いされているフシがありました。でも、このトライアスロンによって、「お好み焼きには、ご飯と味噌汁」は、もはや常識になるのではないでしょうか。  お好み焼きは、間違いなくご飯のおかずです。  毎朝毎晩、お経のように唱えて実践し、この常識を普及させてほしいものです。 (文=昼間たかし)

『孤独のグルメ Season6』第1話 スカした東京人どもの胃袋の常識を変えてやる!? お好み焼きは、ごはんのおかず

『孤独のグルメ』第1話 スカした東京人どもの胃袋の常識を変えてやる!? お好み焼きは、ごはんのおかずの画像1
テレビ東京系『孤独のグルメ season6』番組サイトより
 今シーズンの放送を前に、作画の谷口ジロー先生が亡くなられました。いまや、谷口先生の代表作のひとつとなった『孤独のグルメ』。  でも、最初に依頼が来たときには「なぜ、私に……」と思ったそうです。実際、掲載誌の「月刊PANjA」(扶桑社)は、まったく売れずに休刊。その後、同社から単行本は出たものの、まさか21世紀になって、こんな人気を得るとは誰が予想できたでしょうか。  かくて、空前の飯テロによって、世間にさらなる「孤独のグルメ実践者」を増殖させているテレビ東京のドラマも、いよいよ第6シーズン。いったい、どんな哀愁とうまいメシが待っているのか。  お待ちかね、第1話のタイトルは…… 「大阪府 美章園のお好み焼き定食と平野の串かつ」 です。  今回の冒頭、ゴローちゃん(松重豊)がやってきたのは大阪。それも、梅田ではなく、ディープな通天閣のたもとです。原作において、大阪は鬼門。大阪の独特のノリについていくことができず、ひたすら孤独を感じながら、タコ焼きをモグモグと食べるしかないゴローちゃんを、皆さんもよく覚えていることでしょう。  しかし、それはすでに過去の出来事なのか。松重ゴローちゃんは、食い倒れの街に大いに期待を寄せています。  ですが、簡単にモグモグ満足させてくれないのが、このドラマ。声をかけてきた客引きのお兄さんの案内で、首尾よくメシにありつけるかと思いきや、携帯電話が。  メシを食べたいときに邪魔されてしまう。フラストレーションは募ります。とはいえ、そのへんでささっと立ち食いうどんでもすすったりしないのがゴローちゃん。もはや遺伝子レベルで、空腹こそが最高の調味料と理解しているのか?  突然、電話でアポの時間を変更してきたお客は、旧知の不動産屋。モデルルームに置く調度品のために、わざわざ、東京からゴローちゃんを招いたのです。 「大事な仕事やから、ゴローさんに頼んでるんやないんですか~」 という不動産屋の「こっちは、お好み焼きをおかずにメシを食いますわ~」の一言に、ゴローちゃんは「ムリムリ」と渋い顔。これ、なんてフラグなんでしょうか?  ともあれ、北海道生まれの彼を大阪人にしてしまう地域のパワーに感慨を覚えながら歩いていると、突然思い出すのは空腹。かくて、ゴローちゃんの店探しがスタートです。  そして、入るのはお好み焼き屋。決め手は、枯れたのれんに「風流美味」と書かれているところ……。  客が勝手に取るおしぼりが紅白なのも新鮮に見えるゴローちゃんは、さっそくの名言。 「初めて来たのに懐かしい。これは……本物の店だぞ」  王道の豚玉にしようかと考えたゴローちゃん。隣の席に運ばれてくるのは、豚玉の定食。いまだ、驚きは隠せませんが「こんな店に入れたんだから……」と、大阪人の味覚に果敢に挑戦します。それにしても「こんな店」と言ってしまうゴローちゃんの洗練された東京人らしさが面白いです。  そんなお好み焼き屋で、昼間っから飲んでいるのは、池乃めだか師匠ではありませんか!  ゴローちゃん、めだか師匠に「兄ちゃん、背え高いな~」と突っ込まれますが、「どっかから声がするけど、どこや~」とは返せません。  さて、運ばれてきた定食。「関東人には理解不能」と覚悟を決めながらも、なおも違和感を隠せないゴローちゃん。恐る恐る小手でマヨネーズを広げます。ここで今日2度目の名言。 「小手づかいで大事なのは、思い切りだ」  口に運べば、お好み焼きは美味。「これだけでいいじゃないか」と言いつつも、大阪スタイルを試すゴローちゃん。「意外にいいかも!」と、一口で気に入ります。「もしかすると、俺の身体の中には大阪人のDNAがある」んじゃないかと、うまいモノの前には一瞬で世界が変わるゴローちゃんです。  いよいよスイッチが入ったゴローちゃん。こうなると貪欲な胃袋は止まりません。続いては焼きそばに挑戦。まずはミックスとデラックスの違いを聞くところから。ミックスは、豚にイカとエビ。デラックスはそこに貝柱も入っているというわけです。そして怒濤の名言。 「このソースのにおい、なんと暴力的な。お好み焼きを食ってなかったら即死だ!」 「大阪ソースの催眠術か、また腹が減ってきたぞ」 「デラックスだ、遠慮なくデラックスにいこう」  半熟目玉焼きを麺に絡め取って狂喜するゴローちゃん。さんざん語っているのに「この店の焼きそばのおいしさは、俺のような一見の客に語れるものではない……」と。いくら語っても、食の前には謙虚なのが、ゴローちゃんと山岡士郎の大きな違いです。そして、まだ止まらない名言。 「きっと、東京に戻ってから、強烈に食べたくなるに違いない」  お好み焼き定食に焼きそばを食べながらも、まだ、終われないゴローちゃん。続いては、「たこねぎ」の小をしょうゆ味で挑みます。ソースとは違うしょうゆのおいしさに流れる音楽もノリノリ。半分は一味をぶっかけ「なるほど、こうなるか」と、さらにモグモグは続きます。 「ハマる人はハマるなあ、俺も今日から、この一味」  かくて、お好み焼きに始まる「炭水化物トライアスロン」を食い倒れずに完走した達成感を得るゴローちゃん。すっかり、大阪の食文化に胃袋を支配され尽くしたのであります。  さんざん食べて今日も終了かと思いきや「さて、もうひと仕事」と言いだすゴローちゃん。満腹かつ、ソースのにおいをコートに染みこませて商談に向かうのも平気なのが素敵です。  で、2軒目の商談は町場のパーマ屋さん。個人経営なのに、なんとクライアントの幅の広いことか。小商いでも、わざわざ出張してきてくれるフットワークの軽さが信用なのでしょうか。  商談を終えて「さあ東京に戻るか」とつぶやくゴローちゃん(日帰り?)。だが、その目に飛び込んで来たのは「串カツ、どて焼き」と書かれた屋台。「やり残していることがあった」と、当たり前のように足は動き出すのです。  そしてCM明けは、油のはじける音から。 「串カツのウスターソースは、大阪人の血液だ」  屋台なのに具材が多いという大阪ならではの光景に、もはやゴローちゃんの胃袋はブラックホールとなります。  ヒレ肉ならぬヘレ肉、ニラ巻き。紅生姜。紅生姜の揚げたのが、ソースに合うという新発見に、さらにゴローちゃんが加速するのは当然です。  そして、ここで挿入されるのが飲み物のセレクト。 「ここはウーロン茶じゃないな、油ものには炭酸だ」  飲み物は店ではなく傍の自販機で買ってくれという、屋台ならではのスタイル。サイダーを流し込めば、さらに新たなステージへ。どて焼きは、2本注文。入ってきた親子連れ……じゃなくて、元阪神の下柳剛に引きずられるように、コンニャクも。 「なんだか、初めて大阪の懐に潜り込めた気がする」 と、感動は無限の食欲へと続くのでありました……。  初回から炭水化物でトライアスロンと思いきや、まさかの延長戦まで完走した第1話。  ますます盛んな松重ゴローの胃袋は、深夜の飯テロどころか、核弾頭のごとく視聴者に攻め込んできます。21世紀になり、少しは知れ渡った感もありますが、まだまだ東京では、お好み焼きをおかずにご飯というのは、奇人扱いされているフシがありました。でも、このトライアスロンによって、「お好み焼きには、ご飯と味噌汁」は、もはや常識になるのではないでしょうか。  お好み焼きは、間違いなくご飯のおかずです。  毎朝毎晩、お経のように唱えて実践し、この常識を普及させてほしいものです。 (文=昼間たかし)

『孤独のグルメ』台湾編放送に現地ファン歓喜も、台湾版・井之頭五郎には「コレジャナイ!」の大ブーイング

taiwan102201
台湾版で主役を演じるウィンストン・チャオ。確かに、原作漫画の井之頭五郎に似ている。
 シーズン5に突入した深夜ドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)の第4・5話(10月23・30日放送)で、主人公の井之頭五郎が台湾へ海外出張に赴く。  シリーズ初の海外編に、期待を膨らませているのは日本のファンだけではない。  台湾ネットメディア「東森新聞雲」が予告動画付きで報じた「台湾編放送」の記事は、Facebook上で11万もの「いいね!」を獲得するなど、現地台湾のファンも熱視線を送っている。
taiwan102202
台湾版の第1話に登場する台北の「大隠酒食」。日本統治時代に建てられたビール会社の建物を利用した飲食店だという
 台湾では、日本で放映された『孤独のグルメ』が動画サイトで話題となり、人気に火がついた。ちなみに現在放送中のシーズン5も、日本の放送後まもなく中国語字幕付きの動画がネット上にアップされるという状況が続いている。    こうした人気を受け、台湾では中国語版の原作漫画が出版されているほか、今年5月からは8月には、台湾版リメイクの『孤独的美食家』も放送された。    ただ、この台湾版『孤独のグルメ』は、日本版を知るファンにとっては、評判が芳しくなかったようだ。
taiwan102203
日本版『孤独のグルメ』の台湾編で共演する、日台井之頭五郎
 台湾版で五郎を演じたのは、台湾の有名俳優ウィンストン・チャオ(55)。原作漫画の五郎の容姿に似ていることからドラマ放送前には大きな期待が寄せられていたが、第1話放送後は一転、酷評が相次いだ。いわく「少し太りすぎで、日本版の五郎のように食べ方にストイックさが感じられない」というものや、チャオが映画やドラマで孫文の役をたびたび演じたことから「孫文が飯を食っているようにしか見えない」というものまで。また、「グルメドラマのはずなのに、ヒューマンドラマに重きを置いているような気がする。もう少し食べ物に集中すべき」というドラマの脚本に対する不満の声も上がっている。  日本版では本編の終了後、原作者の久住昌之が舞台となった店を訪れる「ふらっとQUSUMI」というコーナーが設けられているが、台湾版では、台湾出身のSNH48人気メンバーの邱欣怡と李芸彫の2名が台湾各地の観光地やグルメを現地リポートするコーナー「萌妹玩転遊台湾」に替わっている。  台湾ファンが待ちわびる、本家『孤独のグルメ』の台湾編では、主役の松重豊(52)がチャオと共演することが予告されており、“日台井之頭五郎”の共演にも話題が集まっている。

『孤独のグルメ』原作者・久住昌之インタビュー「店選びは失敗があるから面白いんでしょ」(後編)

IMG_0523.jpg
前編はこちらから ──いわゆる美食にはあんまり関心がないんですか? 久住 ないです、全然。結局、育ちなんじゃないですかね。うちは貧しかったし、でも家で何でも作ってたからね。「おふくろの味」ってわけでもないけど、たとえば漬物は絶対漬けてたから。朝ごはんに茄子の漬物が出てくると「夏休み近いな」とか、食べ物で季節の変化を感じたり。わりとそういうのを丁寧に作ってたのかもしれないですね。  おばあちゃんが面白い人で、「おいしいものは知ってなきゃだめだ」って言ってたんですよ。田舎に行った時にたまたまウニが出てきたんだけど、子どもなんてウニが好きなわけないじゃない? 「うわ、まっずい!気持ち悪い!」って言ったら、「ウニってのはすごくおいしいものだ」って。それの味がわかると他のこういうものも食べれるって言ってたの。だから「ぜいたくはいけないけど、おいしいものの味は知ってたほうがいい」っていう、昔にしては変わった考えの人で。けっこう影響受けてる気がしますね。  小学校の時、魚が嫌いで。それで給食で嫌いだったのがアジフライだったんだけど、おかずは残しちゃいけなかったから、もう本当に泣きそうな思いで食べ切ったのね。それが大人になっておいしいアジフライ食べたら「なんだよ、俺だまされてた!」って思って。そっち(おいしいほう)を最初に食べてれば、あっち(まずいほう)だって食べれてたんじゃないかと思うよね。おいしいほうを先に食べてれば、「おいしくないなあ」って思いながらも頭の中ではおいしい味のベースができてるから、まあ許せちゃうっていうか。   ──子どもの頃、嫌いだったものを大人になって好きになるということはよくあることですよね。しかも「だんだん」じゃなくて、「急に」だったりして。 久住 好き嫌いがあるというのは、(嫌いなものを)好きになる余地があって将来に楽しみがあるってことだからね。子どもの頃なんて"ひかりもの"が全然食べられなかったの。コハダとかしめ鯖とか怖いの、メタルで(笑)。それが酒飲むようになって食べてみると、「なんだ、おいしいじゃないか」と思って。そうするとオセロで駒がいっぱいひっくり返されるように、自分の駒がいっぱい増えるっていうかね。だから好き嫌いが多い人を見るとうらやましいよね。俺はもうかなり少なくなっちゃったから。 ──逆に、子どもの頃は好んで食べてたけど、大人になって冷静に考えると「実はおいしくなかったのでは?」と思うものもあるんじゃないですか? 久住 そういうのあるよね。駄菓子とか、あんなものよく好きで食べてたよね。あとは......グミとか食べてたからね。 ──えっ、グミ? 久住 庭に生えてるほうのグミね。桑の実も食ってたよ。 ──桑の実ってうまいんですか? 久住 まずいんじゃない(笑)? ──はははははは! 久住 ちょっとは甘いけどね。そういえば、水木しげるさんが軍隊でラバウルに行った時、現地の人が焼いてくれたタロ芋を食べて、「軍隊の食い物よりうまい!」って言ってたんだけど、20年経って現地に行ったら「ほら、お前の好きなタロ芋だ」っていっぱい出してくれたけど、まずくて食えなかったって(笑)。 ──ははははは! でもそういうのはありますよね。それでいくと、今の時代って普通に生活してたら「劇的にまずいもの」ってほとんど出合ないですよね。 久住 今の給食なんておいしいからね。やんなっちゃうよ。今の小学生の給食で人気一位って何だと思います? ──えっ、カレーじゃないんですか? 久住 俺たちはそうだったよね。度肝を抜かれましたよ.........バイキングだって。 ──ええええええええええ! 久住 一年に一回あるんだって。違うじゃん、ジャンルが。あまりの感覚の違いにびっくりしましたね。俺、『中学生日記』(扶桑社)ってマンガ書いてて、子どもが中学の時、親と先生が給食を食べながら話す会があったから、「取材だ!」と思って出かけたんですよ。そこでやっぱり人気のメニューを出してくれたんだけど、それが「こぎつねごはん」っていうやつで。ごはんに油揚げを煮たのとニンジンとかを混ぜた、要はまぜご飯なんだけど、それがすごいおいしいんだ! でもおいしすぎるとマンガにできないんだよね。おいしいけど面白くないんだよ。「おいしいね、今の子っていいよね」で終わっちゃうじゃない。それよりは昔のまずかった話のほうが面白いからね。 ──で、放送中のドラマ『孤独のグルメ』についてですが。実際にご覧になってみて、マンガ版とは違う発見みたいなものはありましたか? 久住 マンガは自分のペースで読めるじゃないですか。だけど映像は向こうのペースに合わせて見ることになる。そこが一番違うところで。マンガはパパっと読んでても、いっぱい情報は得てるんだよね。だけどテレビの場合は見てるとじれったいって感じはあると思うんだよね。「何やってんだ、早く食え」とか。第一話の放送後、制作者に言ったんだけど、「僕は食べ物のマンガを描いてきたからよくわかるんだけど、なかなか食べないとみんなイライラするんですよ」と。 ──たしかに最初、食べるまでずいぶん時間かかるなと思いました。 久住 食欲と性欲を置き換えてみればわかる。エロビデオを借りてきて、前置きが長かったら「早くヤれよ!」ってなるよね(笑)。だからそれまでに、なんでもいいから食べるシーンを入れようと。メインの食べものじゃなくてもいいから。 ──エロビデオでいうと、ペッティング的な。 久住 イメージシーンだけでは飽きちゃうのと同じだよね。イメージシーンは早送りで飛ばせるけど、テレビは(リアルタイムで見てると)飛ばすことができないからね。 ──じゃあ、これからもっとよくなっていくと。 久住 制作者が原作をとても大事にしてくれているドラマですからね。期待していいと思いますよ。 (取材・文=前田隆弘/撮影=オカザキタカオ) ● くすみ•まさゆき 1958年東京生まれ。美学校・絵文字工房で赤瀬川原平に師事する。1981年に美学校の同期生である泉晴紀と組んだ「泉昌之」として、ガロ「夜行」でデビュー。1990年には実弟の久住卓也とのユニット「QBB」で発表した「中学生日記」で第45回文藝春秋漫画賞を受賞。原作者としても活動しており、代表作に谷口ジローとの共著『孤独のグルメ』、水沢悦子との共著『花のズボラ飯』などがある。 ●ドラマ『孤独のグルメ』 個人で輸入雑貨商を営む男・井之頭五郎は商用で日々いろいろな街を訪れる。そして一人、ふと立ち寄った店で食事をする。そこで、まさに言葉で表現できないようなグルメたちに出会うのだった――。 原作:『孤独のグルメ』作・久住昌之、画・谷口ゴロー/脚本:田口佳宏、板坂尚/音楽:久住昌之、Pick & Lips(フクムラサトシ 河野文彦)ほか/主演:松重豊 毎週水曜深夜0時43分~放送中 <http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/> ※次回放送は2月15日放送
孤独のグルメ 【新装版】 「ほほう、いいじゃないか」 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・「取材できなくなる!」グルメ雑誌ライターを悩ます存在とはフードライターは店側とズブズブの関係? 「飲食業界ムラ」の闇を辛口評論家が暴く!気鋭の旅情推理作家が迫る"食"のノンフィクション『「食」の匠を追う』

『孤独のグルメ』原作者・久住昌之インタビュー「店選びは失敗があるから面白いんでしょ」(後編)

null

IMG_0523.jpg
前編はこちらから ──いわゆる美食にはあんまり関心がないんですか? 久住 ないです、全然。結局、育ちなんじゃないですかね。うちは貧しかったし、でも家で何でも作ってたからね。「おふくろの味」ってわけでもないけど、たとえば漬物は絶対漬けてたから。朝ごはんに茄子の漬物が出てくると「夏休み近いな」とか、食べ物で季節の変化を感じたり。わりとそういうのを丁寧に作ってたのかもしれないですね。  おばあちゃんが面白い人で、「おいしいものは知ってなきゃだめだ」って言ってたんですよ。田舎に行った時にたまたまウニが出てきたんだけど、子どもなんてウニが好きなわけないじゃない? 「うわ、まっずい!気持ち悪い!」って言ったら、「ウニってのはすごくおいしいものだ」って。それの味がわかると他のこういうものも食べれるって言ってたの。だから「ぜいたくはいけないけど、おいしいものの味は知ってたほうがいい」っていう、昔にしては変わった考えの人で。けっこう影響受けてる気がしますね。  小学校の時、魚が嫌いで。それで給食で嫌いだったのがアジフライだったんだけど、おかずは残しちゃいけなかったから、もう本当に泣きそうな思いで食べ切ったのね。それが大人になっておいしいアジフライ食べたら「なんだよ、俺だまされてた!」って思って。そっち(おいしいほう)を最初に食べてれば、あっち(まずいほう)だって食べれてたんじゃないかと思うよね。おいしいほうを先に食べてれば、「おいしくないなあ」って思いながらも頭の中ではおいしい味のベースができてるから、まあ許せちゃうっていうか。   ──子どもの頃、嫌いだったものを大人になって好きになるということはよくあることですよね。しかも「だんだん」じゃなくて、「急に」だったりして。 久住 好き嫌いがあるというのは、(嫌いなものを)好きになる余地があって将来に楽しみがあるってことだからね。子どもの頃なんて"ひかりもの"が全然食べられなかったの。コハダとかしめ鯖とか怖いの、メタルで(笑)。それが酒飲むようになって食べてみると、「なんだ、おいしいじゃないか」と思って。そうするとオセロで駒がいっぱいひっくり返されるように、自分の駒がいっぱい増えるっていうかね。だから好き嫌いが多い人を見るとうらやましいよね。俺はもうかなり少なくなっちゃったから。 ──逆に、子どもの頃は好んで食べてたけど、大人になって冷静に考えると「実はおいしくなかったのでは?」と思うものもあるんじゃないですか? 久住 そういうのあるよね。駄菓子とか、あんなものよく好きで食べてたよね。あとは......グミとか食べてたからね。 ──えっ、グミ? 久住 庭に生えてるほうのグミね。桑の実も食ってたよ。 ──桑の実ってうまいんですか? 久住 まずいんじゃない(笑)? ──はははははは! 久住 ちょっとは甘いけどね。そういえば、水木しげるさんが軍隊でラバウルに行った時、現地の人が焼いてくれたタロ芋を食べて、「軍隊の食い物よりうまい!」って言ってたんだけど、20年経って現地に行ったら「ほら、お前の好きなタロ芋だ」っていっぱい出してくれたけど、まずくて食えなかったって(笑)。 ──ははははは! でもそういうのはありますよね。それでいくと、今の時代って普通に生活してたら「劇的にまずいもの」ってほとんど出合ないですよね。 久住 今の給食なんておいしいからね。やんなっちゃうよ。今の小学生の給食で人気一位って何だと思います? ──えっ、カレーじゃないんですか? 久住 俺たちはそうだったよね。度肝を抜かれましたよ.........バイキングだって。 ──ええええええええええ! 久住 一年に一回あるんだって。違うじゃん、ジャンルが。あまりの感覚の違いにびっくりしましたね。俺、『中学生日記』(扶桑社)ってマンガ書いてて、子どもが中学の時、親と先生が給食を食べながら話す会があったから、「取材だ!」と思って出かけたんですよ。そこでやっぱり人気のメニューを出してくれたんだけど、それが「こぎつねごはん」っていうやつで。ごはんに油揚げを煮たのとニンジンとかを混ぜた、要はまぜご飯なんだけど、それがすごいおいしいんだ! でもおいしすぎるとマンガにできないんだよね。おいしいけど面白くないんだよ。「おいしいね、今の子っていいよね」で終わっちゃうじゃない。それよりは昔のまずかった話のほうが面白いからね。 ──で、放送中のドラマ『孤独のグルメ』についてですが。実際にご覧になってみて、マンガ版とは違う発見みたいなものはありましたか? 久住 マンガは自分のペースで読めるじゃないですか。だけど映像は向こうのペースに合わせて見ることになる。そこが一番違うところで。マンガはパパっと読んでても、いっぱい情報は得てるんだよね。だけどテレビの場合は見てるとじれったいって感じはあると思うんだよね。「何やってんだ、早く食え」とか。第一話の放送後、制作者に言ったんだけど、「僕は食べ物のマンガを描いてきたからよくわかるんだけど、なかなか食べないとみんなイライラするんですよ」と。 ──たしかに最初、食べるまでずいぶん時間かかるなと思いました。 久住 食欲と性欲を置き換えてみればわかる。エロビデオを借りてきて、前置きが長かったら「早くヤれよ!」ってなるよね(笑)。だからそれまでに、なんでもいいから食べるシーンを入れようと。メインの食べものじゃなくてもいいから。 ──エロビデオでいうと、ペッティング的な。 久住 イメージシーンだけでは飽きちゃうのと同じだよね。イメージシーンは早送りで飛ばせるけど、テレビは(リアルタイムで見てると)飛ばすことができないからね。 ──じゃあ、これからもっとよくなっていくと。 久住 制作者が原作をとても大事にしてくれているドラマですからね。期待していいと思いますよ。 (取材・文=前田隆弘/撮影=オカザキタカオ) ● くすみ•まさゆき 1958年東京生まれ。美学校・絵文字工房で赤瀬川原平に師事する。1981年に美学校の同期生である泉晴紀と組んだ「泉昌之」として、ガロ「夜行」でデビュー。1990年には実弟の久住卓也とのユニット「QBB」で発表した「中学生日記」で第45回文藝春秋漫画賞を受賞。原作者としても活動しており、代表作に谷口ジローとの共著『孤独のグルメ』、水沢悦子との共著『花のズボラ飯』などがある。 ●ドラマ『孤独のグルメ』 個人で輸入雑貨商を営む男・井之頭五郎は商用で日々いろいろな街を訪れる。そして一人、ふと立ち寄った店で食事をする。そこで、まさに言葉で表現できないようなグルメたちに出会うのだった――。 原作:『孤独のグルメ』作・久住昌之、画・谷口ゴロー/脚本:田口佳宏、板坂尚/音楽:久住昌之、Pick & Lips(フクムラサトシ 河野文彦)ほか/主演:松重豊 毎週水曜深夜0時43分~放送中 <http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/> ※次回放送は2月15日放送
孤独のグルメ 【新装版】 「ほほう、いいじゃないか」 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・「取材できなくなる!」グルメ雑誌ライターを悩ます存在とはフードライターは店側とズブズブの関係? 「飲食業界ムラ」の闇を辛口評論家が暴く!気鋭の旅情推理作家が迫る"食"のノンフィクション『「食」の匠を追う』

『孤独のグルメ』原作者・久住昌之インタビュー「店選びは失敗があるから面白いんでしょ」(前編)


IMG_0490.jpg
 知らない土地でメシを食う時、ついつい「食べログ」を見て、少しでも点数の高い店に行こうとする......。現代人なら誰しも日常的にやっている店選びである。だが、『孤独のグルメ』の主人公・井之頭五郎はそんな店選びはしない。なんとなくふらりと立ち寄った店で、小さな失敗と成功を繰り返し、でも最後はなんとなく満足して店を後にする......。情報過多になった今の時代こそ、『孤独のグルメ』の持つ価値が高まってきているのではないか。そこで、1月よりテレビ東京系でドラマ化されたこの作品について、原作者の久住昌之氏に話を聞いた。店選びのポリシー、食体験のルーツ、そしてドラマ版の見どころとは? ──『孤独のグルメ』って、題材がすごく幅広いですよね。店の料理だけじゃなくて、駅弁やコンビニ飯まで取り上げたりして。「なんでも題材にしようと思えばできちゃう」みたいなところはあるんですか? 久住昌之氏(以下、久住) いや、いつも苦労してますよ。何をやろうか、どこにしようかというのは、いっぱい失敗しながらやってますね。 ──そこでいう「失敗」というのは? 久住 要は「マンガにならないな」と。 ──実際にどの店を取り上げるかどうかはともかく、まず「この店を取材しよう」というのはどうやって決めるんですか? 何かで調べて? 久住 調べないです。だいたい「調べる」って、「インターネットを見る」ってことでしょ? そんなことをしてたら面白くないですよね。やっぱり(店の面構えを見て)「ここがよさそうだな」とまず思って、でもすぐに「いいかもしれない......悪いかもしれない......」とか迷ったりして。中に入ってもいいのか悪いのかわかんなかったり。「おいしい......ような気がする」とか。そういうのがいいんですよ。 ──ドラマではマンガと違う店を取り上げてますけど、これはどういう意図で? 久住 ドラマ化にあたって僕が出した条件はただ一つ、「マンガに出た店ではやらないでくれ」ということで。店に迷惑がかかるし、同じ店に行くとマンガと同じものを期待しちゃうから読者がガッカリしたりもする。だから「原作で出た店には行かないでくれ」と。それで店選びにすごい苦労してるんですよ(笑)。 ──ドラマの店選びも久住さんが? 久住 僕はやってないです。ドラマのスタッフが「すごい苦労してます」って言ってたんで、僕は「そういうマンガなんですよ」って。そこに苦労してるのが原作だから。作っている人たちがすごく誠実だなと思うのは、ネットで見た店に行っていないこと。一生懸命歩いているわけです。それで失敗したり成功したりしながら店選びをやっているってことは、そういうマンガなんだとわかってくれている。今そういうことをするとみんな驚きますよね。 ──「食べログ」とか「ぐるなび」に頼るってことですよね。 久住 それもそうだし、「面白いものはネットで拾うものだ」みたいな感覚ね。僕は自分のライブやトークショーで、散歩してる時に見つけた面白いものをスライドで見せたりするんですけど、終わってから観客の若者が「こういう映像ってネットで拾うんですか?」って。本当にびっくりしましたね。 ──ネットの店選びに慣れてしまうと、「街を歩く」という行為が「調べた目的地にたどりつくための手段」でしかなくなってしまうんじゃないですかね。 久住 ただの確認ですよね、それは。誰かが行ったところをなぞって、失敗しないようにする。でもマンガなんてやっぱり失敗するから面白いんでしょ。だから失敗しなきゃどうしようもないわけだよね。僕はマンガ家だからそうなのであって、他の人は別にネット使ったっていいんだけど、そのほうがドキドキして面白いよね。経済効率と面白いってことは全然違うってことだからね。効率よくおいしいものを食べることはできるかもしれないけど、効率よく面白い体験をすることはできないからね。 ──店に入って注文すると「思っていたのと違った」というのは割とあることですよね。でも、主人公の五郎はそれを受け入れる。ちょっと違うのが出てきても、とりあえず食べてみる。食べてみて初めて、「予想とは違うけど、うまいぞ」って流れになるじゃないですか。普通といえば普通のことなんですけど、事前に調べれば調べるほど「自分の予想と違ったものが来ると不機嫌になりやすい」ってタイプの人も多いんじゃないかなと思いました。 久住 一つには自分で選んでしまった責任があるから、自分でなんとかしようとするじゃないですか。おいしかったらうれしいし、ハズレたら悔しいし。悔しいけど文句を言うところはない。自分の感想って、そういうところが純粋なんですよね。そういうのが自分で調べないで行く面白さだし、大きく言えば人生なんてそんなもんじゃないですか。自分で選んで、その成功なり失敗を受け入れるっていうね。 ──久住さん自身は、店のルールとか雰囲気みたいなものに積極的に合わせるほうですか? 久住 それはもう、一軒の店は一つの国だと思ってるからね。外国に入ったんだから合わせないといけないと思いますよね。そこの法律があるんだろうから。自分に合わなければもう来ないだろうし、合えばまた行く。本当に外国に行くみたいな気がしますね。「この王様いいぞ、まるでブータンだな......」とか「ここは北朝鮮だなあ......」とか。 ──作画の谷口ジローさんは取材に同行するんですか? 久住 いや、しませんね。 ──でも作画にかなり臨場感がありますよね。背景自体にシズル感があるというか。 久住 谷口さんの描く背景ってのはすごいですよ。「背景で語る」っていうところがある。僕は「こんなに描かなくても」って言うんだけど、谷口さんいわく「きちんと描くのは、そうしないと主人公の気持ちがわかんないから」って言うの。(五郎は)感情的にいろいろ言わない人で、「いい店だな」くらいしか言わないけど、その「いい店だな」と感じたリアリティまで描き込まないと読者にわからないって言うの。写真をトレースして描きこんだものを何倍も超えてる。もちろん写真を使ってトレースしたりするんだけど、元の写真を見ると実はつまんなかったりするんですよ(笑)。谷口さんが描くことによってよくなる。 ──あのマンガの中での「おいしい」の表現というのは、純粋に食べ物の描写だけじゃなくて、描きこまれた雰囲気も込みで、ってことですよね。 久住 込みっていうか、7割くらいそう(笑)。いま『孤独のグルメ』がいま世界5カ国で訳されてるんだけど、その話をするとみんな「外国の人にわかるんですか?」って言うんですよね。「高崎の焼きまんじゅうの味をイタリアの人はわかるのか?」みたいな。イタリアの人はもちろん味はわかんないんだけど、「辛いと思ったら甘かった」とか、「つい頼みすぎた」とか、そういうことはあるから彼の気持ちはわかる。それで非常に食べてみたくなるって言うんですよ。  自分自身のことを考えてみたら、子どもの時に白黒テレビでマカロニウエスタンの映画を見てたんだけど、メキシコとの国境あたりで主人公が酒場に入って、「腹が減ったから何か食わせろ」って言ったら自分の見たことない料理が出てくる。スチールの皿に入ってて、主人公はそれをスプーンですくって食ってるんだよね。「これ食いたいなあ」って思ったんだけど、なんだかわかんない。母親に聞いても「モツでも煮たものかねえ」って(笑)。それ、今考えたらチリコンカーンなんだよね。ビーンズを煮たもの。当時はそんな料理知らないし、画面も白黒だったし。でも「食べたい!」って思ったんだよね。外国の人が見てもわかるっていうのは、そういう気持ちなんじゃないですかね。食べるってのは共通のことだからね。 (後編に続く/取材・文=前田隆弘/撮影=オカザキタカオ) ● くすみ•まさゆき 1958年東京生まれ。美学校・絵文字工房で赤瀬川原平に師事する。1981年に美学校の同期生である泉晴紀と組んだ「泉昌之」として、ガロ「夜行」でデビュー。1990年には実弟の久住卓也とのユニット「QBB」で発表した「中学生日記」で第45回文藝春秋漫画賞を受賞。原作者としても活動しており、代表作に谷口ジローとの共著『孤独のグルメ』、水沢悦子との共著『花のズボラ飯』などがある。 ●ドラマ『孤独のグルメ』 個人で輸入雑貨商を営む男・井之頭五郎は商用で日々いろいろな街を訪れる。そして一人、ふと立ち寄った店で食事をする。そこで、まさに言葉で表現できないようなグルメたちに出会うのだった――。 原作:『孤独のグルメ』作・久住昌之、画・谷口ゴロー/脚本:田口佳宏、板坂尚/音楽:久住昌之、Pick & Lips(フクムラサトシ 河野文彦)ほか/主演:松重豊 毎週水曜深夜0時43分~テレビ東京にて放送中 <http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/> ※第6話は2月8日放送
孤独のグルメ 【新装版】 「こういうのでいいんだよ、こういうので」 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・「取材できなくなる!」グルメ雑誌ライターを悩ます存在とはフードライターは店側とズブズブの関係? 「飲食業界ムラ」の闇を辛口評論家が暴く!気鋭の旅情推理作家が迫る"食"のノンフィクション『「食」の匠を追う』