千葉県のベトナム国籍の女児殺害事件で、共同通信社の20代の男性記者が、取材を断った住民宅の壁を蹴ったことが騒ぎとなっている。ただ、同社は当初、取材に対し「そんな記者はうちにはいない」と否定していた。 騒動のきっかけは、壁を蹴られた被害者が監視カメラの映像を公開したこと。Twitterで「某社の記者さんよ、インターホン越しの取材依頼に対して、私は『結構です、すいません』と言っているのにそんな態度取るなよ~!」とつぶやいていた。 映像には、ポケットに手を突っ込み、まるでチンピラのような態度の記者がインターホン越しに何やら問いかけをした様子が映っており、取材に応じてもらえないとわかると壁に背を向け、去り際に壁を蹴っていた。被害者は記者の所属会社を明かしていなかったが、これには激怒する同業者もいて、マスコミ内では犯人探しが始まっていた。 「あれは、おそらく共同通信の若い記者だ」 日刊紙の記者から寄せられた情報をもとに共同通信に問い合わせをしたところ、当初、総務部は「そんな記者はうちにはいません。どこの人ですか、それは」と不機嫌そうな返答があった。 共同通信の記者だというのは誤報だったのかと思ったが、複数の記者間で「共同通信の記者で確定」との話が飛び交い、あらためて問い合わせの電話をかけると一転、「うちの記者で間違いありません」と認めたのである。 「記者の名前は?」と聞くと、「それはお答えできません」とのことだったが、この記者は千葉県外の支局から取材に来ていたという。共同通信によると、内部調査で問題の記者が自ら申し出て発覚し、後に記者が被害者宅を訪れて謝罪したというが、ある週刊誌の記者は「こういうことがあるから、マスゴミとか言われちゃうんだ」と憤慨。 「みんなではないけど、大手メディアの記者は何を勘違いしているのか、態度の悪いのがたまにいる。特に記者名があまり表に出ない媒体はひどい。以前に、犯罪者の自宅ポストから手紙類を盗み出していたのを見たこともある。世間の注目を集める殺人事件などでは、被害者や容疑者の周辺聞き込みをすることは珍しくないですけど、大手メディアだと入社して間もない若い記者が、その地道な作業を担当することがあって、新人記者はどこか慣れていないから、話を聞き出すのも下手。上司に情報を取ってこいと命じられても、うまくいかないのか、イライラしている様子もよく見る。重要な取材は、キャリアのある記者に行かせた方がいいですよ」(同) ベテラン事件記者の田村建雄氏も「最近は名前や社名を名乗らない記者も増えていて、記者のモラルは低下している」と話す。 「取材される相手は、記者がある程度のモラルの持ち主だと思って他人のプライバシーなどを話します。取材に応じてくれる相手は、後に御礼をしなくてはいけないくらい大切な存在なはずで、インターホン越しだとしても、住民の生活を時間的に侵害しているわけですから、謙虚に取材しないといけません」(同) 共同通信は「本人を厳しく指導するとともに、記者教育を徹底します」とのコメントを出したが、こんなことは教育されずとも「やってはいけない」とわかる話。前出の日刊紙記者は「昔に比べればマスコミは儲からなくなって、応募が殺到する業種じゃなくなった。そういう中で入ってくる新人の質は低い」とも語っている。 記者は、ときに鋭く追及しなければならない職業ではあるが、事件と直接の関係ない相手にこうした態度を取るのは、まさにチンピラレベル。マスコミ全体をイメージダウンさせた愚挙だった。 (文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)
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殿様商売に"反乱"──読売・朝日が共同通信との契約解除、マスコミ再編へ
記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集 みんな持ってる記者ハンドブック
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「起こるべくして起こった?」無関係の母子写真を……共同通信社が放った大誤報の裏側
共同通信社といえば、全国47都道府県の県庁所在地と主要都市、および海外の主要都市に自社の記者を配置し、国内外のニュース・写真・記事関連データを全国の新聞・NHKを含むテレビ各局・ラジオ局に配信する非営利の通信社としてメディア関係者の間で知られている。
「非営利なだけに、ニュース提供を受ける加盟社が出資して運営され、特に北海道新聞、中日新聞、西日本新聞の出資比率が高い。加盟する目的は自社の記者がカバーできない取材内容を紙面に載せるためで、特に地方紙・スポーツ紙・夕刊紙・地方局には重宝がられ、共同の記事の読者・視聴者は数千万人に及ぶだろう」(全国紙社会部記者)
ただ、その反面、「もし、共同が誤報を配信した場合、必然的にそれが事実として信じられてしまう」(同)という状況だが、その共同通信社が、世間を騒がせている事件でとんでもない大誤報を放ってしまった。
その事件とは、昨年9月に発生した大分県日出(ひじ)町のスーパーに駐められた車から江本琴音ちゃん(当時2歳)が行方不明になった事件。母親の江本優子容疑者が琴音ちゃんの遺体を遺棄したことを供述。供述通り遺体が見つかり、5日夜に死体遺棄容疑で逮捕されたが、なんと、同社が優子容疑者と琴音ちゃんとして配信した写真が、2人とも別人で、加盟社がそのままの本人の写真として配信してしまったのだ。
「逮捕状をとったニュースが5日の午後9時ごろに共同で流れ、午後10時に逮捕のニュースが流れた。最初に送られて来た写真は琴音ちゃんのみの写真で、それを使おうとしたが、同10時ごろに問題の母子の写真が来た。当然、母子の写真を載せたほうが読者の関心を引くので、掲載。ところが、翌日正午過ぎになんと『配信した写真の母親は別人』との訂正記事が送られて来てしまい、社内は騒然。『さすがに、子どものほうは大丈夫だろう』と思っていたら、夕方になって『子どもも別人』との訂正記事が送られて来た。とんでもない大誤報だったが、母子同時に確認できないとはなんとも情けない。訂正記事が流れた時間が時間だっただけに、夕刊各紙も刷り上がった誤った母子の写真が掲載されてしまった」(地方紙デスク)
最近の同社の誤報といえば、10年10月に開催されたサッカー日本代表の国際親善試合「キリンチャレンジカップ」の原稿に社内で原稿を監修する運動部デスク(次長)が、知人女性に聞いたコメントをまるで当日会場で女性サポーターに聞いたように書き加えて配信。地方紙4紙が試合翌日の朝刊に掲載してしまい、その後、社内の「捏造(ねつぞう)があった」との指摘で調査委員会が事実を調査。次長は「締め切りが迫っていたので加筆した」と説明したため、同社は同月付で運動部長と次長の2人を厳重注意処分とし、次長を編集局以外の部署へ異動。運動部員の大幅な人事異動もしていたことが翌年8月に発覚した。
今回の写真誤配信について、同社の近藤順夫ビジュアル報道センター長は「重大なミスを犯し、関係者と読者に多大な迷惑をおかけしたことをおわびします」とのコメントを発表。写真は琴音ちゃんが行方不明になったとされた直後、記者が入手したが、実際その写真に2人は写っておらず、記者が確認作業を怠ったのが原因としているが、同社内外からは「いつかこういうことが起きても仕方ないと思った」との声が聞こえてきている。
「全体的に記者の質が低下している。通信社という性質上、自分が取材したものがダイレクトに紙面に反映されず、ここ数年給料は頭打ち。おまけに、駆け出しのうちは地方をたらい回しにされ、ボツになってしまうことが多いので、優秀で取材意欲にあふれた人材は給料や待遇のいい全国紙・出版社・NHKや民放キー局に転職してしまう。残った人材の中でも、地方の支局はまだ社歴の浅い記者や、一線を退いた記者が多くモチベーションが上がらず。そんな悪循環が社内で繰り返されるうちに、今回のような大誤報を配信してしまった。関係した部署や記者はいくらなんでもクビにはならないだろうが、かつてないほどの厳重処分が下されるだろう」(別の全国紙デスク)
全国に事件の当事者のように顔をさらされた母子はたまったものではないだろうが、世間的に同社の信頼が地に落ちたことは間違いなさそうだ。
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