危険な安倍政権の正体? 原発推進、米国の軍事費削減のために自衛隊を利用…

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。 ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) AKB篠田激白、卒業直前の心境と「潰すつもり」スピーチの真相、卒業に福岡選んだ理由 電車の冷房、車両や日により違うのはなぜ?どうやって調整?東急電鉄さんに聞いてみた “非”国営NHKの受信料は完全に合憲でも、なぜ強制徴収は国民の理解を得られない? ■特にオススメ記事はこちら! 危険な安倍政権の正体? 原発推進、米国の軍事費削減のために自衛隊を利用… - Business Journal(7月18日)
宇都宮健児氏
 参議院選挙戦たけなわだが、「現在の憲法ができて今年で66年、今や最大の危機を迎えています」と語るのは、前日本弁護士連合会(日弁連)会長で、昨年暮れの東京都知事選に立候補して敗れた宇都宮健児弁護士だ。右派・保守派が国会の内外を席巻する中で、リベラル勢力が直面している厳しい状況と、普通の市民が立候補できない公職選挙法のカラクリについて聞いた。 ●宇都宮氏の掲げた「脱原発・反貧困・教育基本方針の改定・憲法擁護」  ご承知の通り、昨年末に石原慎太郎前知事がいきなり都政を投げ出したため、市民のみなさんの要請で都知事選挙に立候補しました。  「人にやさしい東京をつくる会」という団体を立ち上げて選挙戦を戦ったのですが、基本政策は4つでした。(1)脱原発、(2)反貧困、(3)石原都政の教育政策の根本的転換、(4)憲法擁護です。  そして極めて短期間の選挙戦ではありましたが、96万8960票と、100万票近くも獲得することができました。ちなみに、約4割が投票に行かず、投票数は664万7744でした。  多くの人が献身的に運動を支えてくれたものの、我々の主張は都民の1割の人には届きましたが、投票に行かなかった人も含めて、約9割の人には届かなかった。それをどうしようかという問題は、国政レベルの選挙でも同じではないかと思います。  安倍政権が誕生してから、政治は我々が掲げた政策と真逆の方向に進んでいます。原発は再稼働、場合により新設も考える。貧困問題に関しては、生活保護費を大幅に削減する計画で、3年間で過去最大の670億円を削減しようとしています。その一方で、この11年間増えなかった防衛費を400億円増やし、軍事力の強化に踏み出しています。  TPPにも参加表明をする。それから教育行政に関しては、教育再生実行会議をつくって、東京や大阪における教員の統制を全国化させようとしています。さらに、首長の権限を強化する一方で、教育委員会を実質的に解体する方向を打ち出しています。  そして、憲法問題。衆議院で改憲勢力が3分の2の議席を占めるようになりました。もし今回の参議院選挙で、改憲勢力が3分の2を占めれば、憲法改正の発議ができるようになります。  発議がなされても、その後は国民投票になりますから、ここで反対を国民の過半数にする闘いをできれば、改憲を阻止できます。このように2段、3段の闘いが必要だと思っています。 ●米国防費削減の穴埋めのために自衛隊を使う  安倍政権は、直ちに憲法改正を全面的に着手するわけでなく、まず、集団的自衛権の行使を解釈改憲でやろうとしています。そのために安倍首相は、安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会=総理の私的諮問機関)を復活させ、この安保法制懇の提言を受けて、国家安全基本法を制定しようとしているのです。  集団的自衛権というのは、アメリカ軍が攻撃されたときに、日米同盟を結んでいる日本の軍事組織・自衛隊がアメリカの防衛に加担するという考えです。  従来の政府見解は、集団的自衛権は違憲であり、専守防衛しか認めていません。「米軍が攻撃されたときに日本の自衛隊が参加するのは、日本の防衛とは言えない」という考え方をずっと通してきました。  集団的自衛権を行使しようとする背景には、アメリカからの要請もあると私は見ています。アフガニスタン戦争、イラク戦争で巨額の戦費がかかったアメリカは、これから先10年間で40兆円の国防費削減を目指しており、その穴埋めをするため、日本に集団的自衛権の行使を求めているわけです。  それから、憲法改正するために96条改定を先行させようとしています。96条というのは、憲法改正手続きです。現在は、衆参両院の3分の2以上の議員による発議で国民投票にかけられますが、これを衆参の2分の1にしようという考えが96条改憲です。  この96条に関しては自民党ばかりでなく、日本維新の会、みんなの党、民主党の一部が加わり、超党派の「憲法96条改正を目指す議員連盟」(96条議連)をつくっています。つまり、民主党の中にも96条を変えようと考える議員がいるために、憲法を擁護しようとする我々は、非常に厳しい対応を迫られています。 ●121改選議席中103人の改憲派当選で96条改正の発議可能  現在の参議院の議員数は242ですから、その3分の2は162人です。162人の議員が賛成すれば、憲法96条改正の発議ができる。ご存じのように、参議院選挙は3年ごとに半数の議席が改選され、今回は非改選で選挙がないのは自民・維新・みんなの党で59議席あります。したがって今回の選挙で103人の改憲派が選ばれれば、参院で96条改正の発議がなされる可能性があります。  前回、昨年暮れの総選挙の得票率をあてはめて計算すると、今回の参院選では自民維新・みんなで91議席獲得することになる。そうなると残りは12議席。民主党の中から12人賛成者が出れば、96条改正発議が可能という状況です。できる限り護憲派候補を当選させる闘いが迫られているのです。 ●自民改憲草案は実質的“治安維持法”  自民党の改憲案は、9条を改正して国防軍を創設し、軍法会議を復活させるというものです。憲法9条については比較的報道されていますが、一番危ないのは、自民党の改憲案が国民の基本的人権を制限しようとし、その制限概念として「公益および公の秩序」を持ち出していること。今は「公共および福祉」を理由に、基本的人権も制限されることがあり得るとしていますが、これは人権と人権がぶつかり合うときの調整概念として使われています。  ところが「公益および公の秩序」ということになれば、国家利益のために人権を制限することになる。その象徴が21条。集会・結社・表現の自由を定めた21条に、公益と公の秩序に反すると制限できる条項を入れています。この条文を基に法律をつくると治安維持法になるんです。 --自民党改憲案21条は、現行の条文に次のような条項を加えてある。  「前項の規定にかかわらず、公益および公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、認められない」  一方、あらゆる社会運動・政治運動・文化活動・労働運動を弾圧して、1945(昭和20)年8月15日の破滅へと向かわせた治安維持法は「国体を変革」「私有財産制度を否認」することを目的とする結社の組織・加入・扇動・財政援助を罰すると規定されている。  つまりカギカッコを「公益および公の秩序を害する」に入れ替えたら本質は同じだ--。 ●市民が政治に直接参加することを阻む巨大な壁  自由な言論や出版、結社の自由もなくなり、集会も自由にできなくなる。戦前に戻っていくのか、それとも民主主義を充実させるのか。そういう瀬戸際に、我々は立っているのです。憲法が制定されて以来66年で最大の危機を迎えているのではないか、と私は思っています。 このような状況ですので、同じような政策を掲げる政党や国会議員が、バラバラに活動するのではなく、団結する必要があると思います。  しかし、政党の連合や国会議員だけの運動では厳しく、こういう政党の議員を取り巻き支える市民運動がカギになると思っています。 --これに加えて宇都宮氏は、「市民が立候補して議会に入ることは有効」「政治にかかわることで市民が鍛えられる」と政治への直接参加の重要性を訴える。確かに、政党や議員を外から支えるのも重要だが、普通の意欲ある人が国会でも地方議会でも、あるいは首長でも立候補すればいい。  ところが、昨年暮れに都知事選で選挙を実際に経験した宇都宮氏によれば、普通の人が立候補できない原因の一つに、選挙区では300万円、比例区では1人当たり600万円という高額の供託金を課す公職選挙法の存在があるという。  次回は都知事選の経験と、公職選挙法のカラクリについて聞く。 (文=林克明/ノンフィクションライター) ■おすすめ記事 AKB篠田激白、卒業直前の心境と「潰すつもり」スピーチの真相、卒業に福岡選んだ理由 電車の冷房、車両や日により違うのはなぜ?どうやって調整?東急電鉄さんに聞いてみた “非”国営NHKの受信料は完全に合憲でも、なぜ強制徴収は国民の理解を得られない? 映画館の強すぎる冷房、言えば下げてくれる?設定基準は?TOHOシネさんに聞いてみた 行列店「俺のフレンチ」シリーズ、銀座へ集中出店する理由と“成功”戦略

TPPの是非は経済効果だけでは決められない 国家に対して農業が果たす役割

【サイゾーpremium】より ──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか......気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。 第33回テーマ「経済効果で図れないTPPの是非」
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[今月の副読本] 『経済学に何ができるか』 猪木武徳/中公新書(12年)/861円 経済学は、人間社会の何を、どこまで説明できるのか? 多くの価値観が混在する現代社会において、「経済学の可能性を考える」という視座を与える一冊。2010年4月より朝日新聞で始まった連載がもとになっている。

 TPPをめぐる議論が激しくなってきました。3月15日に安倍首相がTPPの交渉に参加することを正式に表明したからです。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とは、太平洋をかこむ国々が輸入品にかかる関税などをなくすことで、モノやお金が自由にゆきかう経済圏をつくろう、という取り組みのことです。現在の交渉参加国は、アメリカやオーストラリア、カナダ、メキシコ、シンガポール、ブルネイ、ベトナムなど11カ国です。安倍首相の交渉参加表明は、この11カ国に日本も加わろうということですが、今後このTPPがどのようなかたちで発効することになるのか、そして日本ははたしてTPP加盟国になるのかどうかは、まだまったくわかりません。というのも、まず、現在の交渉参加国のあいだでそもそもどのような議論がなされているのかが、これから交渉に加わろうとする日本には明らかにされていないからです。さらに、TPPに参加すべきか否かをめぐって国内の意見が大きく割れているからです。与党の自民党のなかですら賛否が激しくぶつかりあっているほどです。読者のなかにも、参加したほうがいいのかしないほうがいいのか、考えあぐねている人は少なくないでしょう。  TPPに参加すべきだと考える人たちは、それによって経済が活性化し、日本の経済成長につながると主張しています。たしかに自由貿易圏をめざすTPPに参加すれば、いまより海外への輸出がしやすくなります。また海外から日本への投資も増えるので、それによっても雇用が新たにうみだされるでしょう。さらには、農産物を含めた安い生産品が日本に入ってくるので、消費者は安く商品を買うことができるようになりますし、生産する側も外国製品との競争に負けないために生産性を向上させたり、新しい商品を開発したりするよう努力するでしょう。  とはいえ、こうした経済効果はじつはTPPのひじょうに限定された側面にすぎません。安倍首相の交渉参加表明と同じ日に政府が発表した試算をみてみましょう。それによると、TPPへの参加によって日本のGDP(国内総生産)は10年後に年間3・2兆円増えます(TPP交渉に参加している11カ国のあいだで関税がなくなったと仮定した試算)。現在の日本のGDPは500兆円弱なので、TPPに参加しても10年後に0・66%しかGDPは増えない、ということです。TPP参加によって日本に経済成長がもたらされるといっても、実際にはそれはわずかでしかないんですね。たとえ海外製品との競争が激化することで日本の産業構造の転換やイノベーションがすすむかもしれないとしても、推進派がいうほど実りあるものにはならないのです。  なぜこうなるのかといえば、日本が国際競争力をもっている産業の関税はすでにとても低くなっているからです。たとえばアメリカの乗用車輸入の関税は2・5%です。たとえTPPによってこの関税が撤廃されたとしても、それほど大きな影響はありませんよね。日本を除いた11カ国のなかでアメリカが占めるGDPの割合はだいたい85%ぐらいです(輸入額の割合だと70%ぐらい)。つまり、日本がTPPに参加しても、そこでの輸出の大部分はアメリカへの輸出が占めるということです。ですので、TPPによって乗用車の関税が撤廃されても、それによって日本の自動車輸出が大きく伸びるというわけではないのです。むしろ為替で1ドル80円になったり100円になったりするほうが、輸出にとっては影響が大きいのです。  このことは何を意味するでしょうか。それは、TPPに参加すべきかどうかという問題は数字であらわれる経済効果ではなかなか判断できない、ということです。これはTPPによってもたらされるマイナスの効果についてもいえます。先の政府の試算によると、日本がTPPに参加すると、日本の農業生産額は数年後に3兆円ほど減ります。このマイナス3兆円という数字も、日本のGDPからすれば0・6%程度で大した額ではありません。要するに、経済成長するかしないか、数字のうえで経済効果がどれぐらいあるか、という問題はTPP参加の是非を考えるうえでそれほど本質的な問題ではないのです。  ただし、農業生産額3兆円減という数字は日本の農業にとっては決して取るに足らない数字ではありません。というのも、日本の農業生産額は全体でも11兆円ほどしかないからです。農業はもともと日本のGDPの2%強しか占めていないんですね。11兆円ほどしかないところに3兆円も減ってしまえば、日本の農業は壊滅的な打撃を受けることになるでしょう。たとえばTPP加盟によって砂糖はすべて外国産に置き換わってしまうと考えられています。  したがって問題は、10年後の3・2兆円の経済効果とひきかえに農業が壊滅してしまうことをどのように評価するか、ということになります。この場合、生産性がもともと低かった農業分野は淘汰されても仕方ないだろう、と考えることはもちろん可能です。しかし、農業は農産物を生産するだけでなく、それをつうじて環境保全や国土整備という役割をも担ってきました。ちょうど林業が衰退すれば、山が荒廃し、山の保水力が落ちて、土砂が流出したり洪水が起こりやすくなったりするように、です。そうした農業の役割は数字上の生産性や国際競争力ということだけでは決して評価できません。  次のような意見もあります。日本の農業は国際競争力が低いのだから、日本は工業製品などの生産に特化して、食料は輸入したほうが効率がいい、という意見です。これもしばしばTPP参加の是非をめぐってだされる意見です。とはいえ、この意見もまた重要な点を見逃してしまっています。農産物の国際市場がどのようになりたっているのか、という点です。  農産物のなかでもとくに基本となるのは、コメや麦、トウモロコシや大豆といった穀物ですが、それら穀物の国際市場には、各国で国内需要が満たされたあとの残りしか供給されません。どの国も自国民への食料供給を最優先するからです。だから各国は、不作などで穀物の生産量が落ちると、輸出税を課したり輸出を禁止したりして、穀物が国外市場に流出しないようにするのです。逆に、豊作などで穀物が国内需要よりも多く生産されて余ってしまうと、輸出補助金などをだしてその価格を下げて、余った穀物を国際市場で安く処分できるようにするわけです。  したがって、もし日本が食料の供給を輸入に頼ってしまうなら、世界的な不作などがあったとき、そもそも他国に農産物を売ってもらえないということだってありえるのです。食料の貿易においては輸出国が圧倒的に有利なんですね。事実、GATT(関税および貿易に関する一般協定)のウルグアイ・ラウンド(1986~94)では、農産物の輸入数量制限は撤廃されましたが、日本が主張した輸出数量制限の廃止は認められませんでした。それぞれの国は、輸入量は制限できないが、輸出量は制限できる、というふうになったんですね。農産物の国際市場では、あらかじめ不作のさいの供給保証をしてもらえばすむ、なんて能天気なことは通用しないのです。  この非対称性をどこまで解消できるかがTPP交渉における鍵となります。TPP交渉でおそらく日本は農産物輸入の関税の撤廃か大幅引き下げをせまられるでしょう。そのときに輸出制限の廃止や輸出補助金の廃止をルール化できなければ、日本はたいしたことのないGDPの増加とひきかえに食糧安全保障を大きく損ねることにならざるをえません。先に、TPP参加の是非は数字上の経済効果ではわからない、といったのはまさにこのためです。TPPに参加するということは、多国間のあいだで経済上のルールをつくるということです。しかしそのルールは、数字上の経済効果ではあらわしきれない水準のものなのです。 かやの・としひと 1970年、愛知県生まれ。03年、パリ第十大学大学院哲学科博士課程修了。哲学博士。津田塾大学准教授。主な著書に『国家とはなにか』(以文社)、『カネと暴力の系譜学』(河出書房新社)、『権力の読みかた』(青土社)など。近著に『最新日本言論知図』(東京書籍)、『新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか』(NHK出版新書)など。 「サイゾーpremium」では他にもタブー知らずの識者陣による連載が満載です!】佐々木俊尚のITインサイド・レポート「支配企業になったグーグルの現在」町山智浩の映画がわかる アメリカがわかる「エイズが「死の病」でなくなるまでの知られざる戦い」町田康の続・関東戎夷焼煮袋「肉欲に取り憑かれたSMの老人たちをかき分け、お好み焼きミックスで魂の回復を図る」
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TPPでもくろまれるアメリカ文化による世界支配の野望

 いまや国民的議論となりつつあるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。著作権法の非親告罪化などの要求によって「同人文化の危機」だと捉える向きもある。そもそも、こんな要求を突き付けるアメリカの著作権法はどんな論理で成り立っているのか? 今月25日、「表現の自由」をテーマに講演活動などを行う「うぐいすリボン」主催で、児童ポルノ法改定問題での「ぜひ、私を逮捕しに来て」といった発言で注目される法政大学社会学部准教授の白田秀彰氏が「表現の自由と知的財産権の衝突 ~違法DL処罰化と著作権侵害非親告罪化を考える~」を行った。  「今日は、みなさん講演タイトルを見てACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約)やTPPのことを話されると想定したかと思いますが、そうではありません」と始まった講演は、「著作権が権利ではない」と、いきなり結論を述べるところからスタートした。白田氏は、まず法学の2つの流れである英米法と大陸法の概念を語りアメリカが今や世界でも数少ない英米法に基づく著作権制度を持つ国であることを解説していった。  平易に述べるならば、大陸法は権利を「人間が生まれながらに持っているもの」と考える。対して英米法では「個人が実力で勝ち取るもの」と考える。  そもそも、大陸法は古代ローマで生まれ発展してきたもので、人間は生まれながらにしてさまざまな権利を持っているということを前提にして考える。この場合、著作権とは個人が頭脳の労働によって生産する、最も本質的な所有権の対象であると解釈される。対して、英米法はゲルマン法の流れから発展してきたもの。ここでは、個人の権利は暴力によって確保されるものであるという前提がある。いわば相互に「おまえのものはオレのもの、オレのものもオレのもの」を主張し合うわけだ。もちろん、それでは暴力の応酬が収まらないので、それを解決する手段として、話し合いで協定を結ぶ。あるいは、最大の暴力装置であるところの王様や国家に頼んでルールを決めてもらうことが、歴史的に行われてきた。著作権も歴史をたどると、イギリスにおいて出版業者のギルドが、ギルド外の業者が勝手に本を印刷されて出版されては自分たちの儲けが減ってしまうので、自分たちの利益を確保できるルールを作ってくれと王様に請願したのが始まりだ。こうした歴史的経緯の結果として、英米法を採用する国では「これは、オレの権利だ!」と主張しなければ権利はないものとみなすのが前提となる。著作権においても、権利を主張するか否かが、重要な点となるわけだ。  その結果、日本とアメリカでは著作権の概念がかなり異なる。日本では、企業が商業目的で製作したものでも、個人が趣味で作ったものでも、なんでも著作権が発生することになる。対してアメリカでは、著作権はかなり限定的な権利だ。まず、著作権侵害があり訴訟を行おうとすれば、前提として著作権を連邦著作権局に登録していなければ、認められない。つまり、日本のように同人漫画家がpixivのような画像投稿サイトにアップロードしているだけだとしたら、それを勝手に利用してもすぐに著作権侵害となるとは限らないというわけだ。また、同一性の保持に関しても「名誉声望を損なう」場合に限定しているので、ネットに上がっている写真をイラストを描くときにトレースしたとしても、日本のように「著作権を侵害している」と騒がれることもないわけだ。加えて、他人の著作物を利用するときのフェアユース規定もしっかりと定められている。ほかにも、非営利の教育機関や宗教上の慈善目的で実演や演奏も認められているので、こうした場で映画を流したり、他人の楽曲を歌っても構わない。つまり、ディズニーを筆頭にアメリカは著作権の管理に厳しいと思われがちだが、実はかなり自由利用できる範囲も広いというわけだ。「この著作物の権利はウチのものだ」「いや、私には自由に利用する権利がある」といった権利の対立を繰り返しながらルールを定めてきた結果といえるだろう。 ■結局はアメリカ一人勝ちの要求に過ぎない  さて、TPPにおいて、アメリカがダウンロード違法化の拡大、非親告罪化、法定損害賠償といった要求を突き付けているのは既に知られている通りだ。実は、アメリカのような著作権の法制度であれば、これらの要求を実施しても痛くもかゆくもない。アメリカにおいて違法なダウンロードやアップロードの取締り対象となり、高額な賠償金が課されている事例は、連邦著作権局に登録済みの商業作品くらい。非親告罪化についても、そもそも著作権が連邦著作権局に登録済みの作品に限定されるので、過剰規制にはなりにくい。アメリカは著作権によって萎縮効果や過剰保護の発生しにくい制度設計を行っているわけだ。ところが、非親告罪化などを要求する一方で「我が国の制度に変えれば問題ないですよ」とアナウンスしているとは聞かない。 「アメリカは著作権法の強化から生じる国内への萎縮効果は少ない。にもかかわらず、他国には萎縮効果を発揮しうる要求を行っている。その背景には何があるか、皆さんはおわかりのはず」  という白田氏の指摘は的確だ。この日の講演は、表題の通り著作権と表現の自由の関係性を中心に3時間にわたって行われた。内容の全貌は、主催者からの発表を待ちたい。
TPP亡国論 お先真っ暗? amazon_associate_logo.jpg
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「取次や再販制度はどうなる……!?」TPP参加は日本出版界壊滅への序曲か


 少し前まで経済ネタとして盛んにマスコミで報じられていたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルーの9カ国が参加している経済協定で、当初は農業関係と誤解されていたが、後にすべての品目が対象になることが広く知られるようになり、国内経済に多大な影響を及ぼすとして激しい賛否両論を巻き起こした。特に反対派は、さらなる規制緩和とグローバル化によって、国民生活が深刻な状況になると猛反発している。  そうした意見が飛び交う中、一部で取り沙汰されているのがTPP参加による出版に対する影響である。複数の出版関係者は、「TPPで日本の出版界が、まったくの手つかずということは考えられないのではないか」と話す。 「日本の出版業界は、再販制度にしろ取次にしろ、流通の点だけとっても特殊な形態になっています。これに対して、アメリカが規制緩和や市場解放を求めてくることは十分に考えられます」(中堅出版社の編集者)  日本の出版社は再販制度や取次業者による流通などによって、ある部分では保護されている。だが、それらも日本がTPP参加ということになれば、劇的に変化する可能性が否定できないわけだ。  かつて、1990年代後半に始まった規制緩和によって、各地の商店街などの商業関係は大打撃を受け、ほかにも雇用や労働環境も劣悪な状況になってしまった。そうした経験を我々は知っているからこそ、さらに大きな規制緩和であるTPPが現実のものとなれば、かつての悲劇がまた繰り返されるのではないのか危惧する声が出てきてもおかしくはない。  また、気になる情報もある。外資系の某大手ネット書店では、出版社に対してある契約を提示しているという。 「電子書籍についての契約なんですが、販売に関してはネット書店側が版元の決めた価格に対して一定のマージンを版元に支払うとしている。ところが、販売価格はネット書店側が決めるというのです」(前出・編集者)  ここには2つの要素が読み取れる。まず、販売側が自由に価格を設定できることは再販制度の事実上の無効化である。さらに、販売価格にかかわらずマージンを払うということは、場合によってはネット書店側が赤字になる可能性もある。赤字覚悟ということは、それなりの意図があるということ、例えばシェアの獲得ということが考えられる。  このように、わずかな一端ではあるが変革の兆しは少しずつ現れてきている。  ところが、出版関係者の中には、この話題に興味を示す向きはむしろ少ない。TPPに関しても、「出版には関係ない」などと無関心というケースも多い。しかし、その根拠を尋ねても明確な答えはほとんど返ってこない。  少し前、インターネットが出版に対して脅威になるのではという問いに、「やっぱり情報は紙でしょう。ネットは出版に勝てない」などと根拠もなく豪語していた出版関係者は少なくなかった。だが、今やインターネットの普及と充実に、出版は危機に立たされている。  TPPが長らく続いてきた出版業界の慣習について息の根を止めるのか、それともたいした影響もないのか、それはまだわからない。だが、日本の出版が大きな曲がり角に来ていることは事実だ。その変革のきっかけが、TPPなのか、それとも何か別の要因になるのか。いずれにせよ、現在の不況を見る限りではさらに厳しい状況が来ることは避けられないだろう。 (文=橋本玉泉)

TPP亡国論 どうなるの? amazon_associate_logo.jpg
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