長谷川博己が主演を務める連続テレビドラマ『小さな巨人』(TBS系)の第2話が23日に放送され、平均視聴率13.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。前回の平均視聴率13.7%から微減する結果となってしまいました。 まずは前回のおさらいを少し。ノンキャリアの中では異例のスピード出世を果たしていた警視庁捜査一課強行班1係長の香坂真一郎(長谷川博己)は、酒に酔った帰り、電子部品会社ナカタエレクトロニクスの社長・中田隆一(加藤晴彦)を飲酒運転の疑いで呼び止めた際、隆一の車を傷つけてしまいます。 それが“行き過ぎた捜査”とみなされてしまい、香坂は芝警察署に左遷させられることに。そして異動早々、隆一の父親で日本を代表するIT企業ゴーンバンク社の社長・中田和正(桂文枝)の誘拐事件が発生。香坂は、ソリの合わない捜査一課長・小野田義信(香川照之)から、事件に首を突っ込まないように釘を刺されるのですが、その命令を無視して、所轄の刑事・渡部久志(安田顕)らと独自の捜査を開始します。 その結果、捜査線上には数日前に自殺した、隆一の恋人・風見京子(富永沙織)の父・康夫(長江英和)の名前が浮上しました。康夫は、京子が開発した監視カメラの画像システムの新規開発データをゴーンバンク社が奪い、自殺に見せかけて京子を殺したのではないかと疑い、和正を誘拐して真相を突き止めようとしたのです。 そのことを小野田に伝え、康夫に自首させるよう申し出た香坂ですが、小野田はゴーンバンク社の不正を隠蔽するために、ただの誘拐事件として処理することに。そして強制逮捕に踏み込み、康夫は逮捕される直前に服毒自殺を試みて意識不明の重体となり、「所轄 VS 捜査一課」という構図ができたところで、第1話は終了しました。 さて、ここから第2話がスタート。風見京子の死の真相が気になる香坂は、渡部を巻き込んで捜査を再開することに。そして、京子が飛び降り自殺をしたナカタエレクトロニクスの防犯管理担当の池沢菜穂(吉田羊)に会い、事件当日の監視カメラの映像を確認したのですが、屋上へと向かうエレベーターに乗るのは京子ただ1人。おまけに出退勤記録にも京子の名前しかなく、自殺説が強まる結果となってしまいます。 それでも諦めきれない香坂は、小野田に命じられてお目付け役として付きまと捜査一課長付運転担当の山田春彦(岡田将生)に頭を下げ、捜査二課に捜査依頼してくれないかと頼みます。内閣官房副長官をしている山田の父親の鶴の一声で捜査二課を動かし、企業犯罪の疑いでナカタエレクトロニクスに捜査のメスを入れようというのです。 その結果、池沢が、海外での心臓移植が必要な一人息子の手術費用と引き換えに、京子から開発データを盗むよう、隆一から依頼されていたことが発覚。また、京子が自殺した日の監視カメラの映像や出退勤記録を改ざんしていたことも明らかになります。しかし、京子の殺害に関しては否定。事件当日、もう1人いたことを示唆するのですが、ここで隆一と会社の顧問弁護士が現われてしまったため、真相究明とはならず。 後日、香坂は池沢を逮捕しようとするものの、第1話と同じく捜査一課に手柄を横取りされてしまうことに。しかも、ナカタエレクトロニクスに息子の手術費用を捻出してもらうのと引き換えに、罪をかぶるかたちで池沢は京子殺しを自供。再びゴーンバンク社の不正問題は暗中に帰することになってしまいました。 これを「所轄の失態」として、香坂を詰った山田は、わざわざ父親に頭を下げ、捜査二課を動かしたのは、出世のためだったと告白。捜査一課長になるため、トップになるためには手段を選ばないと豪語する山田と、そのやり方を軽蔑し、あくまでも正攻法で出世することを誓う香坂がバチバチとライバル心をぶつけ合うところで第2話は終了しました。 前回の放送から少し気になるのは、山田がストーカーのように、常に香坂に付きまとっている点。小野田からお目付け役を任されている体ではありますが、通常業務はないのでしょうか。それとも、捜査一課は人手が余っている部署なのでしょうか。ただ、隆一を演じる加藤晴彦同様、山田を演じる岡田将生の小憎たらしい演技は、ドラマ内でいい感じのスパイスになってきています。 また、今回の放送では、ゴーンバンク社の系列会社に警察幹部OBが天下りしているという情報もチラッと出されていたため、香坂はこれから、想像以上に巨大な闇と対峙していかなければならない予感も。 さて、そんなわけで第2話は視聴率が微減という結果になってしまったのですが、第3話の予告では、山田が香坂に向かって、「敵は味方のフリをする。我々の最大の敵はあの人だったんだ」と意味深な発言をするシーンもあり、新たな展開となるか、視聴率回復となるか、楽しみなところです。 (文=大羽鴨乃)TBS系『小さな巨人』番組サイトより
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岡田将生と加藤晴彦の小憎たらしい演技がいい感じのスパイスに? ドラマ『小さな巨人』第2話レビュー
長谷川博己が主演を務める連続テレビドラマ『小さな巨人』(TBS系)の第2話が23日に放送され、平均視聴率13.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。前回の平均視聴率13.7%から微減する結果となってしまいました。 まずは前回のおさらいを少し。ノンキャリアの中では異例のスピード出世を果たしていた警視庁捜査一課強行班1係長の香坂真一郎(長谷川博己)は、酒に酔った帰り、電子部品会社ナカタエレクトロニクスの社長・中田隆一(加藤晴彦)を飲酒運転の疑いで呼び止めた際、隆一の車を傷つけてしまいます。 それが“行き過ぎた捜査”とみなされてしまい、香坂は芝警察署に左遷させられることに。そして異動早々、隆一の父親で日本を代表するIT企業ゴーンバンク社の社長・中田和正(桂文枝)の誘拐事件が発生。香坂は、ソリの合わない捜査一課長・小野田義信(香川照之)から、事件に首を突っ込まないように釘を刺されるのですが、その命令を無視して、所轄の刑事・渡部久志(安田顕)らと独自の捜査を開始します。 その結果、捜査線上には数日前に自殺した、隆一の恋人・風見京子(富永沙織)の父・康夫(長江英和)の名前が浮上しました。康夫は、京子が開発した監視カメラの画像システムの新規開発データをゴーンバンク社が奪い、自殺に見せかけて京子を殺したのではないかと疑い、和正を誘拐して真相を突き止めようとしたのです。 そのことを小野田に伝え、康夫に自首させるよう申し出た香坂ですが、小野田はゴーンバンク社の不正を隠蔽するために、ただの誘拐事件として処理することに。そして強制逮捕に踏み込み、康夫は逮捕される直前に服毒自殺を試みて意識不明の重体となり、「所轄 VS 捜査一課」という構図ができたところで、第1話は終了しました。 さて、ここから第2話がスタート。風見京子の死の真相が気になる香坂は、渡部を巻き込んで捜査を再開することに。そして、京子が飛び降り自殺をしたナカタエレクトロニクスの防犯管理担当の池沢菜穂(吉田羊)に会い、事件当日の監視カメラの映像を確認したのですが、屋上へと向かうエレベーターに乗るのは京子ただ1人。おまけに出退勤記録にも京子の名前しかなく、自殺説が強まる結果となってしまいます。 それでも諦めきれない香坂は、小野田に命じられてお目付け役として付きまと捜査一課長付運転担当の山田春彦(岡田将生)に頭を下げ、捜査二課に捜査依頼してくれないかと頼みます。内閣官房副長官をしている山田の父親の鶴の一声で捜査二課を動かし、企業犯罪の疑いでナカタエレクトロニクスに捜査のメスを入れようというのです。 その結果、池沢が、海外での心臓移植が必要な一人息子の手術費用と引き換えに、京子から開発データを盗むよう、隆一から依頼されていたことが発覚。また、京子が自殺した日の監視カメラの映像や出退勤記録を改ざんしていたことも明らかになります。しかし、京子の殺害に関しては否定。事件当日、もう1人いたことを示唆するのですが、ここで隆一と会社の顧問弁護士が現われてしまったため、真相究明とはならず。 後日、香坂は池沢を逮捕しようとするものの、第1話と同じく捜査一課に手柄を横取りされてしまうことに。しかも、ナカタエレクトロニクスに息子の手術費用を捻出してもらうのと引き換えに、罪をかぶるかたちで池沢は京子殺しを自供。再びゴーンバンク社の不正問題は暗中に帰することになってしまいました。 これを「所轄の失態」として、香坂を詰った山田は、わざわざ父親に頭を下げ、捜査二課を動かしたのは、出世のためだったと告白。捜査一課長になるため、トップになるためには手段を選ばないと豪語する山田と、そのやり方を軽蔑し、あくまでも正攻法で出世することを誓う香坂がバチバチとライバル心をぶつけ合うところで第2話は終了しました。 前回の放送から少し気になるのは、山田がストーカーのように、常に香坂に付きまとっている点。小野田からお目付け役を任されている体ではありますが、通常業務はないのでしょうか。それとも、捜査一課は人手が余っている部署なのでしょうか。ただ、隆一を演じる加藤晴彦同様、山田を演じる岡田将生の小憎たらしい演技は、ドラマ内でいい感じのスパイスになってきています。 また、今回の放送では、ゴーンバンク社の系列会社に警察幹部OBが天下りしているという情報もチラッと出されていたため、香坂はこれから、想像以上に巨大な闇と対峙していかなければならない予感も。 さて、そんなわけで第2話は視聴率が微減という結果になってしまったのですが、第3話の予告では、山田が香坂に向かって、「敵は味方のフリをする。我々の最大の敵はあの人だったんだ」と意味深な発言をするシーンもあり、新たな展開となるか、視聴率回復となるか、楽しみなところです。 (文=大羽鴨乃)TBS系『小さな巨人』番組サイトより
主役・長谷川博己を差し置いて、香川照之の顔芸祭り開催!『小さな巨人』第1話レビュー
2013年に放送され、全話平均視聴率28.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ/以下同)という大ヒットを記録したTBS系連続ドラマ『半沢直樹』。それと同じ『日曜劇場』枠、キャスト・スタッフの顔ぶれが似通っていることから“警察版・半沢直樹”と称されるなど、新ドラマ『小さな巨人』には放送前から注目が集まっていました。 その第1話が16日に放送されたのですが、初回平均視聴率は13.7%と、『半沢直樹』の初回平均視聴率19.4%に遠く及ばなかったどころか、前クールに放送された木村拓哉主演の『A LIFE~愛しき人~』の初回平均視聴率14.2%にも届きませんでした。 ドラマは、警視庁捜査一課強行班1係長の香坂真一郎(長谷川博己)が街中をスーツ姿で疾駆するシーンから始まります。その映像に「われわれ警察官は国民の安全を守る。しかし、その警察官を守る法律は存在しない。警察組織において自分を守るものは自分しかいない」というナレーションがかぶせられ、オープニングシーンが終了。 画面暗転して、「3週間前」というテロップの後、香坂の顔のドアップが映し出されます。『半沢直樹』を彷彿とさせるショット。カメラを睨みつけるようにして今回のドラマのキャッチフレーズ「敵は味方のフリをする」という台詞を吐き、次第にカメラが引いていくと、その視線の先には現捜査一課長・小野田義信(香川照之)の姿があります。捜査進捗を報告しているシーンなのですが、ここでの会話で、理論派の香坂と直感派の小野田の相対関係がうっすらと提示されます。 ノンキャリアの中では異例のスピード出世を果たしている香坂ですが、その陰には前捜査一課長で現・芝警察署署長の三笠洋平(春風亭昇太)の協力があるんですね。小野田に報告していた事件を無事に解決した後、香坂は三笠と料亭で祝勝会を開くのですが、そのウワサを聞きつけた小野田が登場。香坂と同じく理論派の三笠と、捜査一課長としては異色ともいえる高卒、現場からの叩き上げという小野田は水と油の関係で、香坂はその2人の板挟み状態。小野田は香坂と三笠に日本酒をお酌して去って行きます。 会食を終えて1人になった香坂は、中小企業の社長・中田隆一(加藤晴彦)を飲酒運転の疑いで取り調べすることになるのですが、このときに隆一の車を傷つけてしまいます。このことが、翌朝ネットニュースで「宴会帰りの刑事、行き過ぎた捜査で車を破損」と報じられてしまい、監査にかけられることに。そして昨夜、香坂が日本酒を口にしていたという証言を小野田がしたことが決め手となり、香坂は芝警察署に左遷させられることになってしまうのですが、出世コースまっしぐらのエリートがそんなことで左遷になってしまうのでしょうか。なんだか強引な展開に疑問が湧いてしまいます。 とにもかくにも、所轄勤務になった香坂。異動して早々、日本有数のIT企業ゴーンバンク社の社長・中田和正(桂文枝)が誘拐され、身代金5億円を要求されるという事件が起こります。なんとか手柄を立てて出世コースに戻りたい香坂は事件解決に乗り出そうとするのですが、小野田の右腕である捜査一課長付運転担当の山田春彦(岡田将生)に「所轄は後方支援。現場は本庁に任せてください」と釘を刺され、待機を命じられてしまいます。 しかし、所轄管内で起こった事件を見過ごすわけにはいかないと、香坂は芝警察署所属の刑事・渡部久志(安田顕)らの協力を得て、捜査一課とは別行動で独自の捜査を開始します。そして捜査線上に浮かび上がった犯人は、監視カメラの画像システムの新規開発データをゴーンバンク社に奪われ、死に追いやられた風見京子(富永沙織)の父親・康夫(長江英和)でした。康夫は身代金が目的ではなく、娘の死の真相を知るために中田和正を誘拐した、というわけです。 その情報を、香坂の見張り役として同行していた山田が小野田に伝えたために、所轄の手柄は捜査一課に横取りされる形になってしまいます。しかも小野田はゴーンバンク社の不正を隠すために、単なる身代金を目的とした誘拐事件として決着させようとします。それをとがめる香坂に対して小野田は、翌日に行われる管理職昇任試験を受けるように促し、「解答用紙に名前だけ書け。それだけで合格だ」と口約束します。つまり、捜査一課に戻してやるから隠蔽には目をつぶれ、という悪魔のささやきなんですね。 これ、香坂が試験を受けている内に風見康夫を強制逮捕してしまおうという計略で、小野田には自分のポジションを脅かす香坂を本庁に戻す気などありません。しかし、小野田からの提案を真に受けた香坂は、出世を取るか正義を取るかで真剣に悩みます。 翌朝、香坂は、市川実日子が演じる妻の美沙(映画『シンゴジラ』を参考にキャスティングしたのでしょうか?)に相談したり、試験会場に向かう最中には、前日に渡部から吐き捨てられた、「敵が味方のフリをする。やっぱりあんたは向こう(本庁)の人間だったんだ」という言葉を思い出して心苦しくなります。しかしその一方で、所轄の刑事だった父・敦史(木場勝己)が果たせなかった、捜査一課長になるという夢を追いたいという気持ちも捨て難く、板挟みになってしまいます。何しろ今回の試験をパスすれば、香坂は警視に昇進し、その上は警視正、つまり捜査一課長のポジションが待っているのですから。 気持ちが揺れ動く中、香坂は渡部からの電話で捜査一課が風見康夫の潜伏先に強行突入しようとしていることを伝えられ、小野田に騙されたことを知ります。慌てて捜査本部へと駆けつけ、強制逮捕ではなく犯人の自首を促すように談判するのですが、小野田は取り合わず。結局、ゴーンバンク社の不正は隠蔽されることになってしまいました。 捜査を終えて意気揚々と引き上げる小野田に向かって香坂が、「私は所轄刑事として、捜査一課のあなたと戦ってみせる」と宣戦布告したところで第1話は終了となるのですが、このラストシーンも含め全編を通して、「歌舞伎の大見得か!」とツッコミたくなるほど、香川照之の濃い目の顔芸が炸裂しまくっています。 その一方で、長谷川博己の演技は薄味。『半沢直樹』では、主演の堺雅人が「やられたらやり返す、倍返しだ!」という決め台詞で不正を犯す銀行の上司たちをバッタバッタと切りつける姿が世のサラリーマンたちのカタルシスとなり大ヒットとなったのですが、長谷川には堺のような迫力が感じられません。 またベストセラー作家・池井戸潤の原作という骨子が失われたオリジナル脚本による“半沢もどき”には、ストーリー展開に粗が目立ち過ぎて、この先グダグダになってしまうのではないかという不安は拭えません。次回予告のテロップには、「所轄VS捜査一課 さらに戦いがエスカレート」と出ていたのですが、大ヒットシリーズ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)で手垢が付いた流れになっていくのではないかという懸念もあります。 また、安田顕が演じる刑事役は、14年に放送されたドラマ『隠蔽捜査』(TBS系)で安田自身が演じた刑事役と「カブる」という指摘もあるようですね。好評だったドラマをごった煮にして、うまく調理しきれていないといったところでしょうか。 とはいえ、まだドラマはスタートしたばかり。小野田を捜査一課長に引き上げたのは香坂の父・敦史なのですが、その敦史を小野田が裏切ったというような含みがチラホラと出ていただけに、今後この辺りがどう展開していくのか気になるところではあります。 (文=大羽鴨乃)TBS系『小さな巨人』番組サイトより
主役・長谷川博己を差し置いて、香川照之の顔芸祭り開催!『小さな巨人』第1話レビュー
2013年に放送され、全話平均視聴率28.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ/以下同)という大ヒットを記録したTBS系連続ドラマ『半沢直樹』。それと同じ『日曜劇場』枠、キャスト・スタッフの顔ぶれが似通っていることから“警察版・半沢直樹”と称されるなど、新ドラマ『小さな巨人』には放送前から注目が集まっていました。 その第1話が16日に放送されたのですが、初回平均視聴率は13.7%と、『半沢直樹』の初回平均視聴率19.4%に遠く及ばなかったどころか、前クールに放送された木村拓哉主演の『A LIFE~愛しき人~』の初回平均視聴率14.2%にも届きませんでした。 ドラマは、警視庁捜査一課強行班1係長の香坂真一郎(長谷川博己)が街中をスーツ姿で疾駆するシーンから始まります。その映像に「われわれ警察官は国民の安全を守る。しかし、その警察官を守る法律は存在しない。警察組織において自分を守るものは自分しかいない」というナレーションがかぶせられ、オープニングシーンが終了。 画面暗転して、「3週間前」というテロップの後、香坂の顔のドアップが映し出されます。『半沢直樹』を彷彿とさせるショット。カメラを睨みつけるようにして今回のドラマのキャッチフレーズ「敵は味方のフリをする」という台詞を吐き、次第にカメラが引いていくと、その視線の先には現捜査一課長・小野田義信(香川照之)の姿があります。捜査進捗を報告しているシーンなのですが、ここでの会話で、理論派の香坂と直感派の小野田の相対関係がうっすらと提示されます。 ノンキャリアの中では異例のスピード出世を果たしている香坂ですが、その陰には前捜査一課長で現・芝警察署署長の三笠洋平(春風亭昇太)の協力があるんですね。小野田に報告していた事件を無事に解決した後、香坂は三笠と料亭で祝勝会を開くのですが、そのウワサを聞きつけた小野田が登場。香坂と同じく理論派の三笠と、捜査一課長としては異色ともいえる高卒、現場からの叩き上げという小野田は水と油の関係で、香坂はその2人の板挟み状態。小野田は香坂と三笠に日本酒をお酌して去って行きます。 会食を終えて1人になった香坂は、中小企業の社長・中田隆一(加藤晴彦)を飲酒運転の疑いで取り調べすることになるのですが、このときに隆一の車を傷つけてしまいます。このことが、翌朝ネットニュースで「宴会帰りの刑事、行き過ぎた捜査で車を破損」と報じられてしまい、監査にかけられることに。そして昨夜、香坂が日本酒を口にしていたという証言を小野田がしたことが決め手となり、香坂は芝警察署に左遷させられることになってしまうのですが、出世コースまっしぐらのエリートがそんなことで左遷になってしまうのでしょうか。なんだか強引な展開に疑問が湧いてしまいます。 とにもかくにも、所轄勤務になった香坂。異動して早々、日本有数のIT企業ゴーンバンク社の社長・中田和正(桂文枝)が誘拐され、身代金5億円を要求されるという事件が起こります。なんとか手柄を立てて出世コースに戻りたい香坂は事件解決に乗り出そうとするのですが、小野田の右腕である捜査一課長付運転担当の山田春彦(岡田将生)に「所轄は後方支援。現場は本庁に任せてください」と釘を刺され、待機を命じられてしまいます。 しかし、所轄管内で起こった事件を見過ごすわけにはいかないと、香坂は芝警察署所属の刑事・渡部久志(安田顕)らの協力を得て、捜査一課とは別行動で独自の捜査を開始します。そして捜査線上に浮かび上がった犯人は、監視カメラの画像システムの新規開発データをゴーンバンク社に奪われ、死に追いやられた風見京子(富永沙織)の父親・康夫(長江英和)でした。康夫は身代金が目的ではなく、娘の死の真相を知るために中田和正を誘拐した、というわけです。 その情報を、香坂の見張り役として同行していた山田が小野田に伝えたために、所轄の手柄は捜査一課に横取りされる形になってしまいます。しかも小野田はゴーンバンク社の不正を隠すために、単なる身代金を目的とした誘拐事件として決着させようとします。それをとがめる香坂に対して小野田は、翌日に行われる管理職昇任試験を受けるように促し、「解答用紙に名前だけ書け。それだけで合格だ」と口約束します。つまり、捜査一課に戻してやるから隠蔽には目をつぶれ、という悪魔のささやきなんですね。 これ、香坂が試験を受けている内に風見康夫を強制逮捕してしまおうという計略で、小野田には自分のポジションを脅かす香坂を本庁に戻す気などありません。しかし、小野田からの提案を真に受けた香坂は、出世を取るか正義を取るかで真剣に悩みます。 翌朝、香坂は、市川実日子が演じる妻の美沙(映画『シンゴジラ』を参考にキャスティングしたのでしょうか?)に相談したり、試験会場に向かう最中には、前日に渡部から吐き捨てられた、「敵が味方のフリをする。やっぱりあんたは向こう(本庁)の人間だったんだ」という言葉を思い出して心苦しくなります。しかしその一方で、所轄の刑事だった父・敦史(木場勝己)が果たせなかった、捜査一課長になるという夢を追いたいという気持ちも捨て難く、板挟みになってしまいます。何しろ今回の試験をパスすれば、香坂は警視に昇進し、その上は警視正、つまり捜査一課長のポジションが待っているのですから。 気持ちが揺れ動く中、香坂は渡部からの電話で捜査一課が風見康夫の潜伏先に強行突入しようとしていることを伝えられ、小野田に騙されたことを知ります。慌てて捜査本部へと駆けつけ、強制逮捕ではなく犯人の自首を促すように談判するのですが、小野田は取り合わず。結局、ゴーンバンク社の不正は隠蔽されることになってしまいました。 捜査を終えて意気揚々と引き上げる小野田に向かって香坂が、「私は所轄刑事として、捜査一課のあなたと戦ってみせる」と宣戦布告したところで第1話は終了となるのですが、このラストシーンも含め全編を通して、「歌舞伎の大見得か!」とツッコミたくなるほど、香川照之の濃い目の顔芸が炸裂しまくっています。 その一方で、長谷川博己の演技は薄味。『半沢直樹』では、主演の堺雅人が「やられたらやり返す、倍返しだ!」という決め台詞で不正を犯す銀行の上司たちをバッタバッタと切りつける姿が世のサラリーマンたちのカタルシスとなり大ヒットとなったのですが、長谷川には堺のような迫力が感じられません。 またベストセラー作家・池井戸潤の原作という骨子が失われたオリジナル脚本による“半沢もどき”には、ストーリー展開に粗が目立ち過ぎて、この先グダグダになってしまうのではないかという不安は拭えません。次回予告のテロップには、「所轄VS捜査一課 さらに戦いがエスカレート」と出ていたのですが、大ヒットシリーズ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)で手垢が付いた流れになっていくのではないかという懸念もあります。 また、安田顕が演じる刑事役は、14年に放送されたドラマ『隠蔽捜査』(TBS系)で安田自身が演じた刑事役と「カブる」という指摘もあるようですね。好評だったドラマをごった煮にして、うまく調理しきれていないといったところでしょうか。 とはいえ、まだドラマはスタートしたばかり。小野田を捜査一課長に引き上げたのは香坂の父・敦史なのですが、その敦史を小野田が裏切ったというような含みがチラホラと出ていただけに、今後この辺りがどう展開していくのか気になるところではあります。 (文=大羽鴨乃)TBS系『小さな巨人』番組サイトより
キムタク『A LIFE』で制作費がかかりすぎて……次期「TBS日曜劇場枠」は捨てゲーム?
現在放送中のTBS日曜劇場『A LIFE~愛しき人~』の後枠として、長谷川博己主演の刑事ドラマ『小さな巨人』がオンエアされることがわかった。 同ドラマは、ノンキャリアでは警視庁の最高峰となる「捜査一課長」を目指していた主人公・香坂真一郎(長谷川)が、ある取り調べの際にミスを犯して、所轄へ左遷。そこで、小さな事件でも己の正義を信じて挑む同僚たちと出会い、香坂も自分の正義を信じ、“悪”と対峙していくというオリジナルストーリー。 香坂と同じく捜査一課長を目指す刑事・山田春彦役には、岡田将生を起用。そのほか、安田顕、駿河太郎、手塚とおる、木場勝己、春風亭昇太の出演が決定。香坂の刑事人生を大きく変える捜査一課長・小野田義信役には超大物俳優が、ヒロインとなる人事課の新人職員・三島祐里役には注目の若手女優がキャスティングされるという。 長谷川は文学座出身の実力派俳優。『家政婦のミタ』(日本テレビ系)、NHK大河『八重の桜』、『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ系)などで存在感を発揮し、連ドラ主演は、『鈴木先生』(テレビ東京系)、『雲の階段』(日本テレビ系)に続き、4年ぶり3度目となる。 また、昨年7月に公開された主演映画『シン・ゴジラ』は、興行収入80億円を超える大ヒットなり、「第40回日本アカデミー賞」で優秀主演男優賞を受賞するなど、絶好調だ。 ただ、ドラマの主役となると、「数字を持っているかどうか」が重要な要素。『鈴木先生』は1~2%台(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と低迷。『雲の階段』も最終回以外、すべて1ケタで平均9.3%に終わっており、「演技力があっても地味」「主役より脇役で光るタイプ」というのが、視聴者の一般的な長谷川評だ。 それだけに、『小さな巨人』も、長谷川以外のキャストに懸かっているといってもよさそうだが、それも“地味”というしかない。 「早い話、『小さな巨人』は『A LIFE』の割を食った格好です。『A LIFE』は主演の木村拓哉の要望を聞いていたら豪華すぎるキャストとなり、膨大な制作費がかかっています。さすがに毎クール、そんなことはやっていられないので、次クールでは制作費を安く上げるしかない。TBSとしては、『A LIFE』に全精力を注ぎ込んでいるので、ある意味、『小さな巨人』は“捨てゲーム”になってもいいとの判断なのでしょう」(テレビ制作関係者) とはいえ、日曜劇場には固定視聴者がついており、キャストが地味でも内容がよければ、そこそこ数字が取れる枠だ。いい例が、昨年7月期の『仰げば尊し』。主演は寺尾聰で、脇役陣も地味だったが、ストーリーで視聴者を引っ張り、平均10.5%と2ケタを死守した。 裏のフジテレビ「日9」ドラマは、観月ありさ主演『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』で、とても高視聴率は取れそうにないだけに、『小さな巨人』には追い風となっている。『シン・ゴジラ』の大ヒットで波に乗る長谷川にとっては、主演ドラマで初の“好成績”を残したいところだろう。 (文=田中七男)『鈴木先生 完全版 DVD-BOX』(角川書店)
『シン・ゴジラ』損益分岐の80億円突破も近く……それでも続編制作に高いハードル
庵野秀明氏が脚本、総監督を務め、7月29日に公開された映画『シン・ゴジラ』が、9月6日までの40日間で観客動員420万人を突破し、1984年公開『ゴジラ』以降の“平成ゴジラシリーズ”において、最高の観客動員数を記録した。 「公開40日時点で興行収入は61億円を超えるなど文句はないのですが、実は東宝の設定している損益分岐点は80億円だそうです。製作費に20億円以上かかっているみたいで、黒字になるには80億円が最低ラインだとか。ただ、この調子でいけば、そこも突破しそうですけどね」(映画関係者) 内容については賛否両論分かれるものの、リピーターも多いことから製作側もおおむね前向きに捉えているという。 「続編、つまり『シン・ゴジラ2』をやるのかどうか気になるところですが、こういった場合、往々にして『2』はヒットしないんですよね。また、庵野監督が“遅筆”ということもあって、完成がギリギリになったということも、次を考える上での障害になりそうです。東宝の担当者は、完成するまで何度も胃に穴が開きそうになったと聞いています。本当はマスコミ試写も大々的にやりたかったようですが、完成が遅れたためにできませんでしたからね。まあ、今回はそれが功を奏して、観客の飢餓感を煽ることができたので、結果的によかったのかもしれませんが」(芸能事務所関係者) 果たして、続編はあるのか――。『シン・ゴジラ』公式サイトより
『シン・ゴジラ』上映中に虫が……! TOHOシネマズ渋谷“神対応”の裏側を本社に聞いてみた
先月29日の公開後、絶賛の声が止まない『シン・ゴジラ』。人気アニメ『エヴァンゲリオン』シリーズでカルト的な人気の庵野秀明監督が、自身のエヴァンゲリオンの劇場版新作の制作をストップさせてまで挑んだ意欲作だ。 その『シン・ゴジラ』の上映で、不測の事態に際したTOHOシネマズ渋谷の対応が話題になっている。 物語も中盤に差し掛かったところ、スクリーンに小さな黒い点が。言われないと気がつかないほどの小ささだったが、どうやらそれはカナブンが張り付いていたことが判明。上映終了後、パリッとしたスーツを着た支配人と思われる男性が現れるや「多数のお客様から、スクリーンに虫が張り付いているとのご指摘がありましたが、交通機関の時間もありそのまま上映させていただきました。お詫びとして特別御入場券をお持ち帰りください」と“神対応”を披露。 配布されたのは、TOHOシネマズ渋谷でのみ使える「TCチケット 特別御入場券」。任意の映画を無償で一本鑑賞できるというものだ。 ネットでは、その“神対応”に「TOHOシネマズ渋谷はすげぇ」「ファーストデイで1100円だったからゴジラ観てさらに700円もらったも同然」などの称賛の声が多く見られ、ピンチをうまく利用して、来場者の心を掴んだようだ。 TOHOシネマズ本社に問い合わせたところ、担当者は「さまざまな原因で“不完全な状態の鑑賞”が認められた場合、今回のような対応をさせていただいております」とのこと。映写機の不良、音響設備、今回の虫にいたるまで同社では細かくルールと対応が決められているという。過去には、劇場に鳥が突入してきたこともあるとか。流行りのライブビューイングも、同社の苦労が。ライブビューイングは、天候に左右されやすく中継がうまくいかないこともあり、当然こちらも“不完全状態の鑑賞”となる。 2015年には、お盆休みと同社が毎月14日に設けている1,100円で鑑賞できるTOHOシネマズデイが重なり、発券管理システムがダウン。急遽手書きの入場券を作成して対応したほか、トム・クルーズがシリーズ史上一番危険なスタントに挑戦した『ミンション:インポッシブル/ローグ・ネイション』のチケット表記が、なぜか“ミッション:インポ”となり話題になったが、すぐに“ミッション:イン”に修正するなど、神対応っぷりに磨きがかかっている模様。 業界では、こういったトラブルはよくある話なのだそう。普段親しみやすい映画館にも、スタッフの徹底した気配りが行き届いているのだ。『シン・ゴジラ』公式サイトより
ネタバレ避け? まだ完成してない? 『シン・ゴジラ』試写会ナシの異常事態
「29日には初日を迎えるのですが、今のところ一度も試写会が行われていないんです。業界では、この期に及んでまだ完成していないんじゃないかって声まで上がっていますよ」(映画関係者) 29日に公開される怪獣映画『ゴジラ』の最新作『シン・ゴジラ』(庵野秀明総監督・脚本、樋口真嗣監督・特技監督)。日本で12年ぶりに製作され、主演に長谷川博己、ヒロインに石原さとみを配し、竹野内豊や高良健吾など総勢328名もの出演者がいる話題作だけに、試写会がないことが異例中の異例だという。 「実は、公開前の25日には出演者をはじめスタッフも総出でレッドカーペットセレモニーイベントを行うのですが、ここでも正式な作品は上映しないというのです。おそらく、東宝も試写会をすることで得られる宣伝効果よりも、ネタバレを恐れたんじゃないかってもっぱらですよ」(芸能事務所関係者) 実際、『ゴジラシリーズ』はコアなマニア層に支えられている部分があり、試写会を行うことでネタバレを含むレビューがネット上にあふれるなどして、公開時の動員記録に影響を与えるといわれている。事実、過去の『ゴジラシリーズ』は初週の成績はそこそこでも、2週目になると明らかな減少傾向を見せることもあったという。 「そういうこともあるので、東宝としては秘密主義で今回の公開までいこうと決めたんでしょうね。ただ、先日行われた『とやま映画祭』で、ゲストだった樋口監督と尾上克郎准監督が、作品そのものがまだ完成していないという趣旨の発言をしたのも事実ですが(苦笑)」(広告代理店関係者) 果たして、この決断が吉と出るか凶と出るか――。『シン・ゴジラ』オフィシャルサイトより
『セーラー服と機関銃』が“超”大コケも、橋本環奈に罪ナシ!? 制作側が無理くり主演に……
アイドルグループ・Rev. from DVLのメンバーで、「千年に1人の美少女」といわれる橋本環奈の主演映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』が5日に公開された。大人気のアイドルの初主演映画ということもあり、大きな注目を集めていたはずだが……。 公開2日間での興行成績は、なんと12位。トップ10入りすら果たせない“惨状”となってしまった。一部では「千年さんもオワコンなのか」「まあ映画館行くかって言われると行かないかな」など、橋本の人気に関し疑問の声も聞こえるが……。 「薬師丸ひろ子に長澤まさみと、すでに複数回映像化されている『セーラー服と機関銃』ですし、目新しさがないという意見が非常に多いですね。橋本には興味があっても、映画や企画には興味がないということではないでしょうか」(芸能記者) 使い古された企画には誰も見向きもしないということか。キャストは長谷川博己に安藤政信など、けっこう気合が入っていたのだが……。 ネット上にも「環奈ちゃんに責任はない」「映画自体が面白くなさそう」など“橋本擁護”の意見が多い。まったく責任がないわけでもないだろうが、実際のところ、今回のキャスティングもなかなか無理やりだったようで……。 「制作側も本当は別のキャストで、と考えていたそうですが、一部有力者が『なんとしても橋本を』と主演をねじ込んだという話があります。もともと企画に不安があったのかネームバリューにすがったのかは定かではありませんが、どうやらキャストによって“結果”が変わるというわけではなかったようです。映画のポスタービジュアルも、どことなく緊張感がありませんしね」(同) 橋本としてはとんだ「災難」だったという認識ができなくもない。まあ、女優としてのキャリアはこれから本格的にスタートなわけだし、この映画の結果云々で今後の仕事に影響するとも思えないが……。 ただ、今後主演で映画出演するなら、作品を選ぶ必要はあるかもしれない。出る作品出る作品全部がコケてしまうと、さすがに企画のせいにばかりするのも難しくなってくるだろう。とりあえず、橋本の次回出演映画には注目である。橋本環奈 (C)TAKA@P.P.R.S/wikipediaより
空襲で焼け死ぬ前に一度セックスしてみたい……二階堂ふみが演じる戦時下の青春『この国の空』
「私はこのまま結婚もせず、死んでいくのかしら」。19歳になった里子は空襲警報を聞きながら、ふとそんな考えがよぎる。男と愛し合うことも知らず、私は処女のまま死んでしまうのね。そんなことを考えているうちに、里子の頭の中は真っ白になってしまう。二階堂ふみ主演映画『この国の空』は太平洋戦争末期の東京を舞台にした官能系青春ドラマだ。連日のように空襲が続き、本土決戦が叫ばれている。広島には新型爆弾が投下されたらしい。もうすぐ、みんな死んでしまうかもしれない。それなら、死ぬ前に想いを寄せる男性に一度でいいから抱かれたい。戦争に対する恐怖と性への好奇心が心の中で激しく葛藤する主人公・里子に、沖縄出身の人気女優・二階堂ふみがヌードシーンも厭わず成り切ってみせる。 1945年3月の大空襲で東京の大部分は焼け野原になってしまった。里子(二階堂ふみ)が母・蔦枝(工藤夕貴)と暮らす杉並区善福寺一帯は空襲の直撃は免れていたが、若い男たちは徴兵され、子どもたちは田舎に集団疎開してしまい、女性と年輩の男しか残っていない。まるでセミの抜け殻のように、町は活気を失っていた。里子はそろそろ縁談話が持ち上がってもいい年ごろだったが、どこにもその相手がいない。そんな中、里子は隣に住む銀行支店長の市毛(長谷川博己)のことが気になり始める。38歳になる市毛は妻と子どもを田舎に預け、ずっとひとり暮らしを続けていた。時折、敵性音楽であるバイオリンをこっそり演奏したりしている。留守がちな市毛に配給品を届けたり、市毛に頼まれて部屋を片付けているうちに、里子は既婚者である市毛との禁断の恋にどうしようもなく引き寄せられていく。 おしゃれな現代っ子のイメージの強い二階堂ふみだが、昭和初期の「~ですわ」という丁寧な言葉遣いと質素なファッションが逆に新鮮に映る。レトロな開衿シャツに亡くなった父親の遺品を仕立て直したと思われるズボンを組み合わせたシックなコーディネイト。防空頭巾ですら、チャーミングに着こなしてみせる。そんな二階堂ふみが演じる里子の、戦時中という非常時の日常生活が描かれる。娘の嫁ぎ先に疎開することになったご近所の木南さん(石橋蓮司)のところに転出届けを渡しに行き、お礼に貴重なブドウ糖をもらう。甘い物に飢えていた里子は手に付いたブドウ糖の粉を舐め、小さく笑みをこぼす。空襲で焼け出された伯母の瑞江(富田靖子)を居候させることになるが、日に日に少なくなる食事をめぐって母は伯母とすぐケンカになる。その度に里子が間に入って仲裁しなくてはならない。庭に植えたカボチャやトマトに、モンペ姿でかいがいしく柄杓で肥えを掛けるのも里子の役目だ。里子が物心ついたときから日本は戦争をしていたので、もうすっかり戦時下の慎ましい生活が身に付いてしまった。「今すぐ食べて」。体が熱くなって仕方がない里子(二階堂ふみ)は、隣に住む妻子持ちの市毛(長谷川博己)にトマトを差し出しながら懇願する。
ゴーストタウン化してしまった東京を、里子は久しぶりに離れることに。母と一緒に郊外の農家まで闇米の買い出しに出掛ける。夏の陽射しの中をずいぶん歩いて汗を掻いた里子は裸足になり、清流の中でしばし涼む。開放感のあるこのシーンを観て多くの男性は思うだろう。「あぁ、川を流れる水になって、二階堂ふみの足の指のすき間を流れたい」と。またある日、里子は市毛の留守中、片付けを口実に市毛の寝室にまで足を踏み入れる。そして、おもむろに市毛が使っている枕カバーの匂いを嗅ぐ。やはり、多くの男性は思うだろう。「あぁ、二階堂ふみに匂いを嗅がれる枕カバーになりたい」と。そんな不埒な妄想をしてしまうほど、里子と実年齢が重なる二階堂ふみの美しさが匂い立っている。 1983年に発表された原作小説『この国の空』を映画化したのはベテランシナリオライターの荒井晴彦。二階堂ふみのキャスティングよりも先に、脚本だけでなく監督も兼任することを決めていたそうだが、『私の男』(14)でも10代と思えぬ妖艶さを見せた二階堂ふみを演出することが『身も心も』(97)以来となる監督業の大きなモチベーションになったのは間違いない。脚本家・荒井晴彦の初期代表作に『遠雷』(81)がある。ハウストマトを育てる農家に嫁入りすることになったデビュー間もない頃の石田えりの熟れたてのトマトのような、たわわなおっぱいが目に染みる作品だった。本作でもトマトが重要なツールとして使われている。夜更け、悶々として寝付けずにいた里子は庭で実ったばかりのトマトをもいで、市毛宅を訪ねる。真っ赤なトマトを市毛に差し出して、「今すぐ食べて」と迫る。6歳上の親戚の女の子は戦時下でも嫁入りしたのに、もうすぐ20歳になる里子には縁談話がひとつもない。里子の頭の中は市毛のことでいっぱいになる。
「今すぐ食べて」という里子の気迫に押された市毛は、うなずきながらトマトにむしゃぶりつく。市毛の手に握られたトマトは汁を垂らしながら、市毛の口の中へと吸い込まれていく。もう里子も市毛も我慢できない。里子のシャツのボタンは慌ただしく外され、ふんどし一丁になった市毛に押し倒される。里子の頭の中は真っ白になっていく。 『この国の空』は反戦映画ながら、とてもエロチックな作品だ。里子は戦争に負けた日本がこれからどうなっていくのかという社会情勢よりも、年上の市毛には妻子があるという倫理観よりも、処女のまま死んでしまうのは嫌だという自分の衝動に正直に生きる。戦争は嫌。竹槍で戦うよりも、愛する男の肌に触れていたい。わずかな時間でいいから、結婚生活を味わってみたい。二階堂ふみが演じる里子の一途な願望を、誰も否定することはできない。 (文=長野辰次)里子は市毛と闇米の買い出しに出掛ける。先行きの見えない戦争と夏の暑さが、2人の間にある年齢差と倫理観をドロドロに溶かしてしまう。
『この国の空』 原作/高井有一 脚本・監督/荒井晴彦 出演/二階堂ふみ、長谷川博己、富田靖子、利重剛、上田耕一、石橋蓮司、奥田瑛二、工藤夕貴 配給/ファントム・フィルム 8月8日よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国公開中 (c)2015「この国の空」製作委員会 http://kuni-sora.com










