病院内で堂々営業活動! 中国で無許可「黒救急車」急増も、中国人は抵抗なし!?

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中国各地に存在する黒救急車。白いバンにペイントされただけ!?
 海外では、白タクと呼ばれる無許可の個人営業タクシーが観光客などをターゲットに、ぼったくり営業をしていることは珍しくない。ところが中国では、「黒救急車」と呼ばれる無許可の救急車が堂々と営業しているというのだ。 「法制晩報」(2月19日付)によると、北京市内の病院では黒救急車の宣伝チラシが勝手に貼られ、病院の所有する救急車だと勘違いして利用してしまう人が後を絶たないのだという。同記事によると、こうした救急車を運営しているのは医師免許など持っていない個人で、病状に関係なく走行距離などで料金を決めているという。黒救急車を実際に利用したことのある男性は、同紙の記者に対して次のよう話している。
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北京市内の病院に勝手に貼られている、黒救急車のチラシ
「子どもが市内の病院で気管の手術をしました。ちょうど春節(旧正月)の直前だったので、すぐに実家の河北省に戻りたかったんですが、病み上がりの子どもを列車に乗せるわけにもいかなかった。その時、病院内に貼ってあった救急車の広告を見たんです。電話して問い合わせたら、『病院と提携している。救急車には専門の医療装置を備え、医師も同乗する』と言われ、信じてしまった。合わせて10万円も取られました」  病院側は黒救急車のチラシを毎日剥がしているというが、気がつくとすぐに新しいチラシが貼られているのだという。チラシには、医師や看護師が救急車に同乗して、車内には人口呼吸器、心電計、酸素ボンベなどの設備が整っていると書かれていた。同紙記者が客を装ってこの業者に電話すると、自家用マイクロバスに赤十字のマークをペイントした黒救急車がやってきた。医師がいるかどうか確認すると、業者はこう答えたという。 「同乗の医師の医師免許? 今はないから見せられません。もし車に積んでいる設備を利用する場合、プラス2万円を請求させてもらう」
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黒救急車内部の写真。積んである医療設備や担架が見えるが……
 同市内では今、こうした黒救急車が急増しており、今年1月に「黒救急車撲滅条例」案が議会に提出されたほど。この条例では、医療部門の許可を得ないまま救急車と偽って営業した場合、車両や設備の没収とともに100~200万円の罰金を科すという。現在、同市では市民に対して、黒救急車を見かけたらすぐに通報するよう呼び掛けている。 「中国では、正規の救急車でも基本的には有料なので、急患でも金銭の工面ができないと救急搬送をしてもらえない。北京市では距離にもよりますが、だいたい4,000~6,000円くらい。もともと有料なので、中国社会では救急車に対してお金を支払うことにあまり抵抗がないのでしょう。ただし、ぼったくりも多いみたいで、正規の救急車の2~3倍の料金を取る黒救急車もある。私も一度、友人が倒れて黒救急車を呼んだら、最初は4,000円と言っていたのが、『深夜料金』だと言って、わずか3キロの距離で1万5,000円も取られました。友人は担架に縛り付けられており、支払わないと解放してくれない雰囲気だったので、言い値を支払いましたよ」(北京市内に住む日本人駐在員)  大病院の整理券ダフ屋に、患者待機専門ホテルの存在など、中国の医療環境はかなり劣悪と言わざるを得ないが、急患を扱う現場も、その例外ではないようだ。 (文=青山大樹)

病院内で堂々営業活動! 中国で無許可「黒救急車」急増も、中国人は抵抗なし!?

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中国各地に存在する黒救急車。白いバンにペイントされただけ!?
 海外では、白タクと呼ばれる無許可の個人営業タクシーが観光客などをターゲットに、ぼったくり営業をしていることは珍しくない。ところが中国では、「黒救急車」と呼ばれる無許可の救急車が堂々と営業しているというのだ。 「法制晩報」(2月19日付)によると、北京市内の病院では黒救急車の宣伝チラシが勝手に貼られ、病院の所有する救急車だと勘違いして利用してしまう人が後を絶たないのだという。同記事によると、こうした救急車を運営しているのは医師免許など持っていない個人で、病状に関係なく走行距離などで料金を決めているという。黒救急車を実際に利用したことのある男性は、同紙の記者に対して次のよう話している。
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北京市内の病院に勝手に貼られている、黒救急車のチラシ
「子どもが市内の病院で気管の手術をしました。ちょうど春節(旧正月)の直前だったので、すぐに実家の河北省に戻りたかったんですが、病み上がりの子どもを列車に乗せるわけにもいかなかった。その時、病院内に貼ってあった救急車の広告を見たんです。電話して問い合わせたら、『病院と提携している。救急車には専門の医療装置を備え、医師も同乗する』と言われ、信じてしまった。合わせて10万円も取られました」  病院側は黒救急車のチラシを毎日剥がしているというが、気がつくとすぐに新しいチラシが貼られているのだという。チラシには、医師や看護師が救急車に同乗して、車内には人口呼吸器、心電計、酸素ボンベなどの設備が整っていると書かれていた。同紙記者が客を装ってこの業者に電話すると、自家用マイクロバスに赤十字のマークをペイントした黒救急車がやってきた。医師がいるかどうか確認すると、業者はこう答えたという。 「同乗の医師の医師免許? 今はないから見せられません。もし車に積んでいる設備を利用する場合、プラス2万円を請求させてもらう」
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黒救急車内部の写真。積んである医療設備や担架が見えるが……
 同市内では今、こうした黒救急車が急増しており、今年1月に「黒救急車撲滅条例」案が議会に提出されたほど。この条例では、医療部門の許可を得ないまま救急車と偽って営業した場合、車両や設備の没収とともに100~200万円の罰金を科すという。現在、同市では市民に対して、黒救急車を見かけたらすぐに通報するよう呼び掛けている。 「中国では、正規の救急車でも基本的には有料なので、急患でも金銭の工面ができないと救急搬送をしてもらえない。北京市では距離にもよりますが、だいたい4,000~6,000円くらい。もともと有料なので、中国社会では救急車に対してお金を支払うことにあまり抵抗がないのでしょう。ただし、ぼったくりも多いみたいで、正規の救急車の2~3倍の料金を取る黒救急車もある。私も一度、友人が倒れて黒救急車を呼んだら、最初は4,000円と言っていたのが、『深夜料金』だと言って、わずか3キロの距離で1万5,000円も取られました。友人は担架に縛り付けられており、支払わないと解放してくれない雰囲気だったので、言い値を支払いましたよ」(北京市内に住む日本人駐在員)  大病院の整理券ダフ屋に、患者待機専門ホテルの存在など、中国の医療環境はかなり劣悪と言わざるを得ないが、急患を扱う現場も、その例外ではないようだ。 (文=青山大樹)

死亡した新生児が火葬寸前で“奇跡の蘇生”も、再び死亡! 中国「火葬場よみがえり」は日常茶飯事!?

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中国の新生児科(イメージ画像)
 春節(旧正月)を迎える直前の中国で、赤ちゃんにまつわるショッキングすぎる事件が起こった。「金羊網」(2月6日付)などによると、事の発端は2月5日、妊娠7カ月の早産で生まれた新生児の容体が1カ月後に急変し、死亡したことにさかのぼる。  この新生児は1月8日、体重わずか1.4kgで誕生した男の子だった。同31日、春節を前に退院し、家族で新年を迎えようとした。だが、退院2日後に容体が急変。病院に運ばれたが助からず、2月4日に亡くなった。病院から死亡証明書が出され、遺体は葬儀場の霊安室にある保冷庫に移送。火葬を待つ状態だった。  ところが火葬する日の朝、なんと保冷庫から赤ちゃんの泣き声が聞こえるではないか! 両親は慌てて赤ちゃんを取り出し、再度病院に運ばれて治療が再開された。しかもこの新生児の状態は、4日前の退院時よりも良かったというのだ。  保冷庫の温度はマイナス12度で、15時間近くたってから息を吹き返したことになり、葬儀場関係者や医師は中国メディアの取材に対し「奇跡としか言いようがない」と述べている。  しかし、その後、新生児の容体は再び悪化。結果、新生児は息を引き取ることとなった。当初、“奇跡の蘇生”は話題を呼んだが、新生児の死亡を受けて、各方面から批判の声が相次いでいる。中国SNSでは、両親に対しては「早産だった新生児を、なぜ1カ月もしないうちに家へ連れて帰ったのか」「医療費が高すぎて入院させられなかったからだろう」という声が出ている。さらに病院側にも「まだ生きる可能性があっても治療費が続かないようなら退院させるし、死亡証明書も書くのだ」との批判が続いた。
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中国の火葬場(イメージ画像)。「微博」によると、中国では類似の事例は多いという
 一方で、中国版Twitter「微博」には、真偽は定かではないが、似た事例を報告する者も現れた。 「このケース、俺の知ってるだけで2件ある。ひとつは、死んだはずの子どもが火葬炉に入れられ、点火された後に泣き始めたけど、母親が『いらないから、そのまま燃やして』と殺した話。もうひとは、子どもが高所から落ちて頭を強打して呼吸停止になって遺体袋に入れられていたんだけど、しばらくして子どもの足が動いて助けられた話だ」  中国では医療費が高く、治療を途中でやめてしまう患者も少なくない。病院側もさっさと“退院”させたいため、死亡証明書を安易に出してしまうケースが多いという。火葬場で生き返る例は、中国では意外と少なくないのだ。今もどこかで、生きたまま火葬場へ送られる不運な人がいるのかもしれないと思うと、ゾッとする……。 (文=五月花子)

大切な患者様は死なせない! 世界の医療業界が安楽死に大反対するワケ

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イメージ画像(「Thinkstock」より)
 11月1日、ひとりの女性が29年の命に終止符を打つ予定だ。末期の脳腫瘍と診断された米オレゴン州のブリタニー・メイナードさんが、州法で認められている安楽死を選択したのだ。当日、彼女は自宅の寝室で医師に処方された薬を服用し、人生の幕を閉じる。  現在、安楽死が法的に認められているのは、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクに加え、オレゴンを含む米4州のみと、世界でも少数派だ。  安楽死や尊厳死(延命治療を行わない消極的安楽死)の法制化に関する議論は、日本でもかねてから存在する。  昨年、読売新聞が行った全国世論調査では、終末期における延命医療を「望まない」と答えた人が81%に上った。治療の担い手である医師たち自身も、本音は同様だ。医療従事者向け情報サイト「ケアネット」が2012年に医師を対象に行った調査では、「延命治療は控えてほしい」という回答が70.8%に達している。  同年、超党派の議員連盟により「終末期の医療における患者の意思尊重に関する法律案」(尊厳死法案)が作成された。しかし、今年予定されていた通常国会での審議入りは、来年以降の通常国会に持ち越されることとなった。  日本をはじめ世界の多くの国で安楽死・尊厳死の合法化を阻んでいるのは、「死ぬ権利」の主張以上に根強い反対の声だ。反対派の根拠としては、倫理や宗教的理由が挙げられることが多いが、外資系製薬メーカーの男性社員A氏(43歳)によるとそれだけではない。 「皮肉な話ですが、病人が多いほど儲かるのが医療業界。大切な患者様が命を自ら絶ってしまうということは、業界にとって損失につながる。特にICUでの延命治療は、病院にとって一番の儲けどころと言っても過言ではない。世界の医療業界は、安楽死が合法化されないよう、各国で反対派のロビイストを密かに支援している。日本で尊厳死法案が審議入りしても、廃案に持ち込もうとする国際的な圧力がかかるでしょう」  医療業界の利益のため、意思に反して苦痛の中で生き永らえなければならないとしたら、これほど皮肉なことはない。一方で、「医療費や年金支出を削減したい日本にとっては、尊厳死の合法化は希望の光でしょう」(A氏)とも。国民の命は、結局、国や医療業界の損得勘定によって決められるということか……。 (文=奥窪優木)

ベストセラー作家・海堂尊に聞く「“チーム・バチスタ”シリーズ、そして日本エンタメ界の未来」

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 2006年に刊行された、海堂尊さんのメディカル・ミステリー『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)。「東城大学医学部付属病院で相次いで発生している術中死を、心療内科医・田口公平と厚生労働省の役人・白鳥圭輔のコンビが調査してゆく」というこの作品は、スピーディな展開と魅力あふれるキャラクター、医療現場のリアルな描写が話題を呼び、デビュー作ながら大ヒットを記録した。  以降、『ナイチンゲールの沈黙』『ジェネラル・ルージュの凱旋』『イノセント・ゲリラの祝祭』『アリアドネの弾丸』(すべて宝島社)と相次いで続編が刊行され、今日までシリーズ累計1,000万部超という驚異的なセールスを誇っている。08年に竹内結子&阿部寛主演で映画化、同じく08年に伊藤淳史&仲村トオル主演でドラマ化もされているので、ご覧になった方も多いだろう。  そして今年7月に刊行された最新作『ケルベロスの肖像』は、シリーズ第6作にして完結編。田口&白鳥コンビの物語にピリオドを打った理由とは? そして気になる今後の展開は? 著者の海堂尊さんにインタビューした。 ■シリーズ完結にふさわしい盛り上がり 海堂尊(以下、海) シリーズをこういう形で終わらせよう、というのは、実はデビュー前から考えていたことです。『チーム・バチスタの栄光』、『螺鈿迷宮』(角川書店)、そしてこの『ケルベロスの肖像』はさまざまな医療の崩壊を描いた三部作になっている。当初は、この三作を書き上げて、覆面作家のままソッと消えてゆこうと思っていました。でも、いざデビューしてみるとそうは問屋が卸さなくて……(笑)。ほかの作品を書いていたせいで、三部作の完結までこんなに時間がたってしまったんです。  シリーズ完結の経緯について、こう語ってくれた海堂さん。作品の舞台となるのは、今回も東城大学医学部付属病院だ。ある日、病院長のもとに「八の月、東城大とケルベロスの塔を爆破する」という謎めいた脅迫状が届けられる。誰が、何のために? 「ケルベロスの塔」が意味するものとは? これまで数々の事件を解決してきた心療内科医・田口公平は、院長の命を受け、密かに調査を開始することになる。  爆破予告があり、それを田口が調査するというアイデアも、デビュー前に考えていた通り。考えてみると、構想7年の作品ということになりますね。一度「これだ」と思ったアイデアは忘れないんですよ。7年前に思いついた大枠に、デビュー後に書いてきたさまざまな作品の要素が入り込んで、今ある物語が出来上がりました。  同一の世界観のもと、すべての作品が(出版社の壁すら越えて)リンクし合っているのも海堂ミステリーの大きな特徴だ。中でもこの『ケルベロスの肖像』は、『ブラックペアン1988』(講談社)や『螺鈿迷宮』など、他社のシリーズで描かれた事件にもあらためてスポットが当てられ、一大フィナーレを飾るのにふさわしい盛り上がりを見せている。  現実世界では、地球上のあらゆる出来事が同じ時間軸の中に存在していますよね。例えば今ここで僕がインタビューを受けている間も、ほかのどこかではプロ野球選手の秘密特訓が行われているかもしれないし、将棋の重要な対局も指されていたりするわけです。虚構世界も現実世界と同じような構造じゃないかな、と思ったりするんですよ。バラバラに見える物語世界も、どこかではつながり合っているはず。僕はそれを統一したいんです。とはいえ、デビュー以来20作も書いてくると、登場人物だけでも1000人近くと、なんだかものすごい数になっています。執筆前におさらいするだけでも大変ですね(笑)。三部作のゴール地点として、今回の『ケルベロスの肖像』のことはずっと頭にありました。『ブラックペアン1988』や『螺鈿迷宮』を書いていた時も、これは『ケルベロス』に絡めたら面白くなりそうだ、と考えていましたしね。  シリーズ当初はやや頼りないキャラクターとして描かれていた主人公・田口公平も、病院内の濃すぎる面々に揉まれるうち、次第に人間的に成長。今作では病院内の重要ポストを担う人物として、頼りがいのある一面を見せている。  確かに、ずいぶん成長してくれたなと思います。『チーム・バチスタの栄光』には「願いごとは叶う。ただし半分だけ」っていう田口のセリフが出てくるんです。今回の作品にも、まったく同じセリフが出てきますが、さらにもう一行つけ加えられているんですね。ここを書くことができた時は、「ああ、いよいよ終わるんだな」と、ちょっと感慨深いものがありました。ひょっとしたら、この一行をつけ加えるために、シリーズ6作を書き継いできたのかもしれません。 ■とにかく面白い物語を書きたい  本シリーズでは、死体を画像解析することによって死因を特定しようという新技術「Ai」(オートプシー・イメージング)が、非常に大きな役割を果たしている。これまでほとんど一般に知られることのなかったAiも、『チーム・バチスタの栄光』の成功によって、かなりポピュラーなものになった。そして海堂さん自身、医師として長年Aiの普及・推進に努めてきたという経歴を持つ。  よく誤解されるんですが、Aiを普及させようと思って『チーム・バチスタの栄光』を書いたわけではないんですよ。長年Aiの普及に関わってきたのは事実ですし、それがあったからこそ思いついた物語だったんですが、そもそもの動機は「面白い物語を書きたい」ということ。「あまり知られていないAiという技術を使えば、面白いミステリーが書けるんじゃないか」と思ったんです。「これはAiの普及に使えるな」と気づいたのは、本が出てからですね。  今作では、田口が所長を務める「Aiセンター」が建設され、いよいよAiが本格的に医療の現場に導入され始める。一方、現実社会でもAiの実用化をめぐって大きな変化があった。  今年の5月に、死因究明関連法案という法律が国会で可決されました。不備の多い法律ですが、とりあえずAiを軌道に乗せるところまでは来た。これまで作家をしながら、Ai導入のために働いてきましたが、個人でできる範囲は一段落。あとは現場の専門家の方々に任せる段階が来たのかなと思っています。 バチスタ・シリーズが終わり、Aiの仕事が終わり、長年関わってきたものが続けて手を離れた、そんな12年でした。
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勤務風景
 こう聞くと、シリーズの展開と海堂さん自身のプロフィールが重なっているようだが、作品はあくまでフィクション。キャラクターに特定のモデルなどは存在しないそうだ。  特定のモデルを念頭に置くと、逆に動かしにくくなってしまうんですよ。大学病院内でのゴタゴタを描いてはいますが、人が集まる組織ならどこでも起こり得ること。医療関係以外の方に「こういう人っていますよね」と言っていただくと、「普遍的な事件を書いているんだな」とあらためて思います。僕はあまり出世欲がなかったので、大学病院内の生々しい事件って、実際にはそれほど目にしていないんです(笑)。  あくまで主眼は、面白い物語を描くこと。医療をめぐるさまざまな問題を取り上げながら、海堂さんの姿勢は一貫して変わらない。  物語って、現実を忘れさせなければ意味がないと思うんです。本1冊の値段は、ちょうど映画1本と同じくらい。映画の世界にひたるように、小説でも現実を忘れてハラハラドキドキしてもらいたい。そのためにはストーリーはもちろん、文章の細かな部分にもかなり気を使っています。「ミステリー」というジャンルは僕にとって、エンターテインメントの王様。すいすい読めて、とにかく面白い。そんな物語を書きたいと思っています。 ■エンタメ、そして今後の展開  長びく不況のため、本やCDが売れないといわれて久しい。エンターテインメントの第一線で活躍してきた海堂さんには、今日のエンタメ業界はどう映っているのだろうか?  難しい質問ですが、もっと活気があってもいい気はしますね。ミリオンセラーがどんどん出る世の中のほうが、賑やかで面白いに決まっている。特に最近は、コンテンツを無料で楽しもうという風潮が強くなってきていて、正直どうなんだろうなと思います。エンタメにもっとお金を使って、本やCDを思いっきり買って、「ああ、俺ってバカだなあ」と反省する(笑)。そういう世の中であってほしいですね。  ちなみに海堂さんは大の音楽ファン。毎回、作品を書く際に聴く“テーマソング”を決めていることでも知られている。 海 今回のテーマソングは、ポルノグラフィティの「EXIT」。執筆中はエンドレスで流していたので、400~500回は聴いているでしょうね。今でもまだ「EXIT」を聴くと手が動きます。音楽はどんなジャンルも好きですが、うまくても下手くそでも、ピンで勝負しているアーティストが好きですね。ひとりで勝負している姿って、やっぱり心を動かされるものですから。アイドルでいうと、最近はやりのグループアイドルよりも、きゃりーぱみゅぱみゅが好き、という感じかな(笑)。  ユーモラスな掛け合いで人気を博した、田口公平&白鳥圭輔の名コンビ。その活躍は、もう読むことができないのだろうか? 海 そこは堅苦しく考えず、書きたくなったらチャレンジします。こう言うと「完結編詐欺だ」なんて叱られるかもしれませんが(笑)、気長にお待ちください。これから「野性時代」(角川書店)で連載を再開する作品「輝天炎上」は、『ケルベロスの肖像』を別の角度から描いたもの。同じ事件を、もうひとつの当事者の側から描いてゆくつもりです。 クライマックスのシーンなどは『ケルベロスの肖像』と共通しているので、当然田口・白鳥コンビも登場します。そちらも併せて読んでいただけるとうれしいですね。 海堂尊(かいどう・たける) 1961年、千葉県生まれ。千葉大学、同大大学院医学系研究科博士課程修了。その後外科医、病理医を経て、現在、独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センターAi情報研究推進室室長。05年に『チーム・バチスタの崩壊』で、『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。その後、数々のミステリー小説を発表すると共に、『死因不明社会ーAiが拓く新しい医療』(講談社)で08年度科学ジャーナリスト賞を受賞するなど、幅広く活躍中。

「係になっただけです」石巻の英雄が語る“ドラマがない”災害現場の実像

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 東日本大震災の中心被災地であり、3,000人以上が犠牲となった宮城県石巻市。この石巻の災害医療をリーダーとして支えた医師・石井正の活躍は広く報道された。一刻の猶予も許されないが、満足な医療設備も的確な情報も入らない。そんな中、石井医師の肩には石巻地域に住む20万人以上の人々の命がのしかかっていた。そのような過酷な状況をものともせず、石井医師は冷静な判断と迅速な行動によって多くの人々を救う――。  まさに英雄として活躍した彼が、この度『東日本大震災 石巻災害医療の全記録』(ブルーバックス)を上梓した。震災直後からの動きが生々しく記録されており、いつ起こるかわからない次の震災に対する備えともなる本書。はたして被災地の英雄は、どのようにしてこの未曾有の危機を乗り切ったのか? ――石井先生は東日本大震災発生直後から災害救護本部のリーダーとして、石巻を救う大活躍をされていました。いったい、震災の発生後どれくらい働き詰めだったのでしょうか? 石井正医師(以下、石井) 3月11日に震災が起こり、最初に家に帰ったのは4月下旬。1カ月半は泊まり込みの状態が続きました。 ――1カ月半も……。体力的には大丈夫だったんでしょうか? 本書の中には、過労で倒れてしまった医師のエピソードも紹介されていました。 石井 結構サボっていましたからね。 ――? 石井 普段なら外科医としての業務がありますが、震災時は当直や診察などの業務は行っていません。きっちりと災害対応の仕事をする時間を与えてもらえました。 ――いちばん過酷だった時期はいつ頃でしょうか? 石井 特にないですね……。僕自身、「どうにかしてやる!」と息巻くような熱血タイプではないんです。「係になった以上はベストを尽くそう」という感じですか。たまたま自分が立場にあったのでやっただけなんです。 ――“お仕事”として淡々とこなしている印象ですね。一般にイメージされるようなパニックに見舞われた災害医療の現場とは、とても大きな開きがあるように思います。 IMG_0746.jpg 石井 まず、外科医の業務と災害対応に求められることはとても似ているんです。外科医も手術中の不意の出血など予期しない事態に直面しながら、次々と判断を下していかなければいけません。それに、外科の経験から死体を見ても感情を支配されることもないんです。だから、運ばれてくる患者に対してパニックになることもない。僕じゃなくても、外科医ならば誰でもできるんじゃないでしょうか。 ――震災前からかなり周到な準備をされていたことも、冷静に対応できた一因だったのでしょうか? 石井 そうですね。石巻市は1978年の宮城県沖地震(M7.4、死者28人、負傷者1万人あまり)を経験しています。東日本大震災の前から、30年以内に99%の確率で大地震が起こると言われていたんです。また、私の勤務する石巻日赤病院は、石巻医療圏で唯一の災害拠点病院です。もし何かあったら僕らでどうにかしないといけない。だから、震災に対して準備をしなければならない、というメンタルが保てたのではないかと思います。 ――ただ、平時からそういった準備を周到に行うことはとても難しいことだと思います。周囲から反対されたり、「面倒くさい」と言われるようなことはなかったのでしょうか? 石井 誰も文句を言うような人はいませんでした。震災前に行っていたのは、5、6人の有志が集って週1回程度のマニュアル改訂会議です。そもそも、日赤病院は災害救護に対してとても熱心な病院。そういう下地もあって準備に支障はありませんでした。また、これは立川にある国立病院機構 災害医療センターの「全国災害拠点病院災害医療従事者研修会」で学んだことなんですが、担当者の名前を入れることでマニュアルを読む側の本気度が上がり、リアルなイメージが浮かびやすい。災害に備えてマニュアルを読もうという気持ちにもなるんです。 ――それらの結果、冷静に淡々と対応ができたということですね。 石井 東日本大震災発生直後の石巻日赤病院の初動は、実に淡々としていました。怒号を飛ばしたりするような現場ではなく、みんな落ち着いて何かを書いていたり運んでいた。まるで訓練のようでしたね。 ――そのような万全な状況があれば、冷静な対応も頷けます。ただ、未曾有の状況にさらされて、石井先生自身は感情的になったり、絶望することはなかったのでしょうか? 石井 3月17日の夜に見た光景は忘れられません。石巻市内は全域で停電状態。信号も泊まり、瓦礫とへどろで覆われた街並みが広がっていました。他に車や人もいなくて、物音ひとつしないとても静かな夜でした。この暗闇の中で何万人もの人々が、息をひそめながらじっと我慢している。そう考えると涙が出そうになりました。「なんとしてもこの人たちを助けなければ」と強く思ったんです。 ――石井先生の中で最も印象に残っている言葉は何かありますか? 石井 石巻圏合同救護チームとして、医療者をまとめ上げるために県庁と東北大学に直訴に行ったんです。そこでダメと言われたら、石巻医療圏の救護がばらばらになるという危機でした。難航すると思われていたその交渉がOKになったんです。とてもうれしくて、僕は「勝った!」と喜んでいました。その時に、ブレーンとして本部に入っていた浜松医科大学の吉野篤人先生に呼ばれ、こう言われたんです。「災害救護の現場では“勝った”ではなく、“よかった”と言いなさい」。頭から冷水を浴びせられた気持ちになりました。 ――確かに、災害医療に勝ち負けはありません。 石井 正直、その時は調子に乗っていたんですね。常に災害医療は被災者のためであり、勝ち負けや「俺がやった」といった功績の話ではありません。「勝った」という態度、「俺らはすごい」という態度は必ず足元を救われます。それ以降は、どんなにうまくいっても淡々と「ありがとうございます」と言うだけにとどめました。 ――本書には、市や県の対応が、ポジティブに描かれていました。災害医療というと、役所の壁のようなものを想像していたのですが、そういった事態には直面しなかったのでしょうか? 石井 もちろん、行政に対して頭に来ることもありました。セクショナリズム、要望主義、縦割り……“壁”に対してしょっちゅうケンカをしていたんです。ただ、彼らもサボっているわけではない。平時をスムーズに運営するためにそういうシステムの中でやってきただけなんですね。だから妥協点を見いだして連携をすることができました。むしろ、現場を知らない外部の人が「行政がけしからん」と言う方がまずいのではないかと思います。ある地方から来た医師が、行政の担当者の目の前で「行政がダメ」と言ったんです。そうしたら僕らは「そんな事言うならお前がやってみろ」と大ゲンカになった。「この人をバカにするような言い方は許さない」とみんなでかばったんです。 ――震災という大きな問題を目の前にして、行政か救護かということでいがみ合っていても仕方がありません。 石井 僕らも行政も、人々のためにどうにかしたいというマインドは共通なんです。彼らは決して敵ではないし、協働できる存在です。 ――今回の震災で、石井先生が得た最も大きな教訓はなんでしょうか? 石井 1つは大規模な救護活動をするなら本部機能がしっかりしていないとどうしようもないということ。司令部がないと組織的な動きができず、好き勝手に救護班が入って効率的な活動ができない状態になります。また、災害現場の客観性を担保するためにはデータも必須ですし、通信機能も大切。この3つはどのような災害でも重要になると思います。 ――もし次に震災が起こった場合、石井先生がリーダーであれば、被害者の数は減らせますか? 石井 被害者についてはなんとも言えませんが、今回の震災を踏まえて災害対応のバージョンは上がるはず。通信、本部、データを必須のものとし、具体的な対応については、状況によって判断するでしょうね。 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●いしい・ただし 1963年、東京生まれ。89年東北大学医学部卒業。公立気仙沼総合病院研修医を経て、92年東北大学第二外科入局。2002年石巻赤十字病院第一外科部長。07年医療社会事業部長となり、外科勤務の傍ら災害医療の世界に足を踏み入れる。11年2月、宮城県より災害医療コーディネーターを委嘱された直後に東日本大震災を迎えた。
東日本大震災 石巻災害医療の全記録 これが真実。 amazon_associate_logo.jpg
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「小児を向精神薬漬けに……」業界中が結託し肥大し続ける医療ビジネスの闇

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「とりあえず様子を見てみましょう。お薬を出しておきます」  医師からこんな診断をされた経験は誰にでもあるだろう。ハッキリと治療の方向性を見いだせていないのに、薬だけはしっかり買わされるのだ。 「それは当然です。医療業界の仕事は学者に病気を認定させ、医者にそれを診断させる、そして薬を買ってもらう。このサイクルをたくさん増やすことなので」  こう答えるのは、製薬会社の営業マンだったこともある元薬剤師だ。TPPを含めた医療制度の行く末には不安が多いが、現状でも「ずさんな診療による安易な薬の処方で国民は薬漬けにされている」という。 「特にひどいのが小児にまで投与されるようになっている向精神薬です。ちょっと悩みごとがあって落ち込んでいる程度でも病院に行けば1週間分の薬が処方されてしまいます。これは一部の権威ある連中がやたらと早期治療を促した結果」(同)  元薬剤師は、過去に市民団体などが調査した結果として、日本うつ病学会理事の野村総一郎氏や、独立行政法人国立精神・神経医療研究センター理事長の樋口輝彦氏ら、日本の精神科のトップが次々と製薬会社から「謝金」「講演料」などという名目で多額の謝礼を受け取っていたデータを並べた。 「こうした連中は国民のためでなく、製薬会社に飼われて都合のいいデータを出しているだけで、信頼性なんかありません。でも、これを政府は何かと制度改革の根拠とするので事態はどんどん悪化する。過去、高血圧の数値を10引き下げて薬の処方を増やしたり、糖尿病や高血圧の前提となるからと病気でもないメタボリック症候群も"要治療"に捻じ曲げたのがそれ」(同)  メタボについては、基準を作成した医師たちの大半が製薬会社から寄付金を受けとったとされており、元薬剤師は「3年間でその総額は14億円に上る」と指摘する  こうした製薬会社と学者の癒着は海外でも問題になっており、アメリカではすべての製薬会社と医療機器会社が医師らに10ドル以上の支払いをした場合は公表する「サンシャイン法」が来年度から施行される。 「でも、日本では取り締まるどころか昨年も国民医療費が増額されて、まさに医療業界の思うがまま」(同)  過剰に病気診断させて薬代を稼いだ結果に起こるのは、国民の薬漬けである。元医師で現医療カウンセラーの野村高一氏も「何かあると予防ワクチンを打ってもらい、すぐに薬を処方されていますが、実際には患者の半数以上が投薬の必要性は低いケースです。震災時も、薬品が足りないという被災地の声を分析したら、大半が緊急性のない生活習慣病ばかりだった」と過剰投薬の傾向を危惧する。  「国民の健康」を大義名分に不安をあおり、大量投薬で儲ける医療ビジネスの問題は、広告主に気を使ってかテレビなどメディアでも取り上げにくい議題だといわれる。 「それどころかテレビの健康番組でやたら国民の不安をあおっている有様。例えば『たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学』(テレビ朝日系)は新日本製薬や小林製薬が番組スポンサー。視聴者を病院に走らせるための宣伝番組といえます」(野村氏)  過剰な投薬が副作用による深刻な健康被害をもたらす可能性は長く指摘されてきたことだが、よほどの専門家でもなければ、どこまでが必要な治療・投薬かは判断がつかない。国もメディアも製薬会社も医者も信用できないのであれば、我々の健康は一体、誰が監督してくれるのだろう。 (文=和田修二)

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