IBM恐怖のリストラ、メディアや裁判所も黙る華麗な技術

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日本IBM本社
(「Wikipedia」より)
「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『さんまのホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、あらゆる企業の裏の裏まで知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない、「あの企業の裏側」を暴く!  IBMという会社をグローバルな目線で見た場合、日本IBMの位置づけは「落ちこぼれ」といっても過言ではない。2001年に1兆7,075億円という過去最高の売上高を達成して以来、11年連続で売上は減少。この10年で、売上高、営業利益、経常利益はちょうど半分になってしまった計算だ。  一方で、米国IBMの11年度の業績は、売上高1069億ドルに、純利益は159億ドル。日本とは逆に、この10年で売上高は約25%アップ、純利益は約2倍という成長を遂げている。この状況下では、日本IBMの存在感も発言力も着実に低下しているのは明らかである。  同社社長は今年5月に交代し、ドイツ人のマーティン・イェッター氏が就任した。外国人がトップになるのは56年ぶりのことであり、本国ドイツで「コストカッター」と呼ばれる辣腕を振るい、業績を立て直してきた実績を持つ人物だ。当然日本においても同様の役割を期待されているとみられ、社員たちは戦々恐々としている。  同社は米国IBMの手法に倣い、業績下位15%の社員を対象にリストラを実行している。ちなみにこのシステムは日本IBMに限らず、外資系企業なら比較的広範にみられる光景、という印象があるかもしれない。同時に、思慮深い方ならこんな疑問をもたれることだろう。 「日系企業も外資系企業も、日本で活動している以上、同じ労働基準法が適用されているはずだ。なのに、なぜ外資系だけ社員を簡単にクビにできるのか?」  それには、こんなウラがあったのである。  そもそも「リストラ」=「クビ」というイメージがあるが、具体的にはいろんな手法がある。  まず「解雇」というやり方が思い浮かぶ。労働契約の終了を、会社側からの一方的な意思によって通告することだが、これは日本の強力な法規制のもと、なかなか簡単に実行できないのが現状だ。ご存じの通り、解雇を行うためには「4要件」という慣例が存在し、そのいずれが欠けても「解雇権の濫用」となり、無効となってしまうためだ。具体的には次のような条件である。 (1)人員整理の必要性    整理解雇を行うには、相当の経営上の必要性が認められなければならない。つまり、経営危機下でなければ認められないということだ。 (2)解雇回避努力義務の履行    正社員の解雇は「最後の手段」であり、その前に役員報酬の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集、配置転換、出向等によって、整理解雇を回避するための相当の経営努力がなされ、「もう解雇以外に手立てがない」と判断される必要があるのだ。 (3)被解雇者選定の合理性  人選基準が合理的で、具体的人選も公平でなければならない。「辞めさせたいヤツ」を名指しすることはできないというわけだ。 (4)手続の妥当性    事前の説明・協議があり、納得を得るための手順を踏んでいなくてはいけない。  すなわち、たとえ社員がヘマをやらかしたとしても、ドラマやマンガのように「お前はクビだ!」なんてとても言えないわけだ。でも、実際にリストラは実行できている。そのカラクリは、「解雇」ではなく「退職勧奨」をしている、という点にあるのだ。 ●「辞めたほうがキミのためだ」と諭す  退職勧奨とは社員に「辞めろ!」と迫るのではなく、「今辞めると、これだけのメリットがあるよ」といって、文字通り「退職を促す」ことをいう。会社からの一方的な処分ではなく、本人の合意があって成立するものであるから、違法性はない。しかも解雇の場合は「被解雇者選定の合理性」をとやかく言われてしまうが、退職勧奨の場合は「適正に下された低評価」をもとに行われるので合法なのだ。  したがって、もともとしかるべき評価制度が設けられていて、その結果として「キミは業績が悪いから、勧奨の対象になっているんだよ」と告げるのは違法ではない、ということなのである。  外資系がよくやる「クビ」というのは、言葉を換えれば「非常に強力な退職勧奨を行う」ということであり、解雇という形式ではなく、社員との交渉によって「なんとしてでも退職の合意を取り付ける」という「合意退職」に持っていくというやり方なのである。  そこには綿密に練られた仕組みと布石があり、仮に裁判に持ち込まれたとしても負けない形になっているのだ。事実、08年のリストラで「退職を執拗に迫られた」として社員が同社を訴えた裁判があったが、先ごろ東京地裁の判断で「違法性はない」と判断された。 ●裁判官も納得?  では、何が裁判官を納得させたのか? 具体的には以下の通りである。 (1)「職種別採用」を行い、「職務給」で運用する  これは、日本式の「総合職採用」を行い、「職能給」で運用するのとは真逆のやり方だ。すなわち、採用時に業務内容を明示し、「この仕事ができる能力を持っている人を採用する」として、業績に応じた待遇と、諸条件なども細かく書面化して説明し、合意を取っておくのだ。その上で「能力が足りなかった」という判断となれば、問題になりにくい。 (2)十分な「退職パッケージ」と「支援プログラム」を準備する  対象者に対してなんのサポートもない状態での退職勧奨は「強要」と判断される可能性があるが、「業績が芳しくないこの状況のままでは問題がある」と説明責任を果たし、「改善するための再教育プログラム」等が存在し、それを受ける機会があれば、企業側として「回避努力」をしたことになるのだ。これは、「割増退職金」や「再就職支援」といった退職支援プログラムを会社側が用意することでも同様の判断となる。 (3)説明責任を果たす  上記(1)(2)といった諸制度、諸条件が揃った上で、対象社員に対して説明がなされれば問題ない。具体的には、 「会社の経営環境」 「当該社員の業績」 「当該業績が、所属部署や他メンバーに与える影響」 「在籍し続ける場合のデメリット」(引き続きプレッシャーが与えられるぞ、など) 「退職する場合のメリット」(今なら充実した退職者支援を受けられるぞ、など) といった情報を伝え、一定の検討期間を設け、意思確認をする、という手続きを踏むことである。  結局は、会社として上記(1)~(3)のような仕組みがあれば、いくら執拗な退職勧奨を行ったとしても、違法とはなりにくいのだ。退職勧奨の場に同席していなかった裁判官にとって、会社からどんな説得が行われたかは知る由がないし、それによって対象社員がどれほどの精神的苦痛を得たかは判断が難しい。  判断材料となるのは「どこまで会社が退職回避策を講じていたか?」という事実次第なのである。それさえあれば、会社側がかなり執拗に退職を迫ったとしても、「がんばって解雇を回避した」し、「正当な退職勧奨の一環」であり、「解雇は根拠のある正当なものだ」と主張できてしまうのである。 ●退職勧奨に臨む社員側の心得とは?  このような退職勧奨を受ける社員側にとって、取れる態度は次の2つだ。 (1)いずれ辞めるのなら、条件が良いうちにサッサと合意して退職願にサインしてしまう (2)「会社のやり方は違法だ!」と徹底的に争う  多くは「外資系など、このようなもの」と割り切って前者の道を選ぶ。しかし残念ながら後者の場合、裁判に金も時間もエネルギーも費やすし、勝ったとしても賠償金は弁護士報酬に消え、会社にいられるのも次のリストラまでのハナシだ。結局、会社の方針に沿った結果になってしまうことになる可能性が高い。「それでもやる!」という場合は、勧奨までの経緯を子細にわたってメモし、その様子をICレコーダーなどで録音して違法性の記録としておくことだ。  裁判では原告が証拠を集めなければならない決まりだから、証拠がなくてはどうにもならない。 ●操作される人事制度、スルーするメディア  限りなくブラックに近いグレーゾーンで人事制度を運用している同社であるが、実際に勤務する社員からは「実際にはかなり恣意的に運用され、『フェアな職務給』という宣伝とはほど遠い」という声も聞こえてくる。 「平均年収は高いイメージがあるが、発表値と実際の数字では2~3割くらいの差がある」 「少数の高待遇の人が平均値を上げている。労働組合調査ではもっと低い」 「昇格させる代わりに評価は低いままで据え置き、給与は変わらず。結局低い評価だけが人事記録に残って、リストラの対象にもなってしまう」 「低評価の人でも、異動や転出をさせるためにあえて高評価をつけることもある」  かなり「操作」をしていることが見て取れるはずだ。  さて、このような実態が内部から漏れ聞こえ、実際に不祥事も頻発している日本IBMであるが、不思議と大手メディアから叩かれることはない。それは、日本の大手メディアにはびこる「スポンサータブー」と無縁ではないのだ。  日本IBMは定期的に広告キャンペーンを展開しており、マスメディアから駅のポスターまで、かなり大がかりに露出する。そして、毎年のように「○○広告賞」などを受賞してさえいるのだ。直近では「Smarter Planet ITシリーズ」の広告が、第16回日経BP広告賞の「最優秀IT広告賞」を受賞。その他の受賞履歴は同社ホームページで確認できる。 「我々は大口スポンサーだ」といえば、ある程度の報道統制は可能なのだ。  同社の真の問題点は、単に「グレーゾーンのリストラをしている」というレベルではない。それによって会社が被る、中長期的な影響こそが問題なのである。言い換えれば、「良い成績を上げている社員ばかりを残すと、環境変化に適応できる人材を切り捨ててしまっている可能性」があるかもしれないのだ。  リストラは米国本社の方針だから仕方ないとしても、それが結果的に同社の成長に寄与しているかどうかは疑問である。実際、長期的には減収減益でもある。それよりも、より顧客に価値を感じさせる提案を行い、相応の対価を得る方向を強化していければよいのではなかろうか。  同社が日本市場におけるシェアを明らかに失いつつある根本理由について、同社自身が社内報においてこのように分析している。私もまったく異論はない。 (1)激しく変化するお客様の購買パターンと競争環境についていけていない (2)営業カバレッジ(影響を及ぼせる範囲。エリアや顧客層など:筆者注)が固定化している (3)サービスの価格競争力が低い  話が少し横道にそれるが、働き者のイメージがある「働きアリ」を巣ごと調べてみたところ、「あまり働かないアリ」が全体の7割もいたという。しかしこの「鈍いアリ」も、食物が底を突き始めたり、巣が危機に陥ったり、「極限状況」になったときに働き始めるらしい。すなわち、反応の度合が異なるアリが共存していることで、「働かないアリ」という形で力を温存することができ、いざというときに対処できるリソースを確保できるというわけなのだ。  効率を追求してギリギリまで現状に適応してしまうと、変化のリスクに対処できないことを自然は知っている。では、日本IBMという会社はどうだろうか? 結果は時の流れが教えてくれることだろう。 (文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト) ■おすすめ記事 セブン最高益、サークルK減益…コンビニ明暗を分けたものは? 人気放送作家・野呂エイシロウ氏秘伝「やめる技術」とは? EV敗戦 日産のカルロス・ゴーンCEOが戦略を大転換 「OSって何?」のトラック運転手からIT社長に転身する技術 富士ゼロックス「障がい者は用済み」解雇の実態

IBM大量解雇、ついに訴訟へ「明日から出社不要」(上司)

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日本IBM本社
(「Wikipedia」より)
「ルーマー(噂)は真実だった」  あるIBM社員は、不安を隠さない。  ドイツでコストカッターの異名を取ったマーティン・イェッター氏が日本IBMの社長に就いたとき、大規模なリストラが始まるとの見方が流れた。報道陣に真偽を問われたイェッター社長は、「それはプレスが言っているルーマー(噂)だ」と一蹴したが、その舌の根も乾かぬうちに常軌を逸したクビ切りが始まった。  複数の社員によれば、それは決まって夕方、退社時間の少し前に起こる。上司から突然呼び出され、別室で解雇が通知される。併せて「退社時間までに荷物をまとめて会社を出るように。明日からは出社に及ばず」と告げられる。業務の引き継ぎもなければ、同僚へのあいさつもない。問答無用で社員を叩き出すこうした解雇は、ロックアウトと呼ばれる。  解雇理由は「個人の勤務成績不良」というが、どの解雇通知にも同じ定型文が印刷されているだけ。その内容は 「貴殿は、業績が低い状態が続いており、その間、会社は様々な改善機会の提供やその支援を試みたにもかかわらず業績の改善がなされず、会社は、もはやこの状態を放っておくことができないと判断しました。以上が貴殿を解雇する理由となります」 というもので、一言一句変わらず、個人ごとに業績や努力を検討した形跡はうかがえない。  IBM関係者が語る。 「しかもその際、自ら退職する意思を示せば解雇を退職に切り替え、退職加算金と再就職支援をする、と付け加えるのです。それを選べば、解雇撤回を争う道はほぼ閉ざされますが、切羽詰まったなか、加算金を選ぶ被解雇者が多いようです」 ●解雇撤回を求めた裁判始まる  そうしたなか、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)日本アイビーエム支部に所属する3人が、解雇撤回(従業員としての地位確認)を求め会社を訴えた裁判の第1回口頭弁論が、12月21日、東京地裁で開かれた。傍聴席の定員98人の大法廷(103号法廷)が同僚や友人らで埋まるなか、解雇された原告男性が意見陳述に立った。26年間尽くしてきた会社から9月20日にクビを告げられた彼には、小学1年生の息子がいる。  妻が彼に言った。 「小1の息子にとって、働いていないお父さんはありえない」  彼も「ありえないな」と考え、妻子と別居し、実家に越した。息子には「実家のほうが会社に近いから、実家から通うね」と言い含めて。  弁論が終わった後、彼は「解雇されてから、私は悲しい気持ちを封印することで、なんとか生きてきました。それが裁判の準備のなかで封印を解き、気持ちを公にすることにしました。陳述を原稿に起こしている最中も涙がこぼれましたが、満員の傍聴席を見て勇気が湧きました」と振り返り、こう付け加えた。 「解雇を撤回させ、この社会が幸せに満ちていることを息子に伝えたいんです」  彼が意見陳述で明かした「Uの話」には、どよめきも起きた。  上司が親指と人差し指で「U」のかたちをつくって見せ、「これだろ?」と質問。「Uですか。ユニオン、組合のことですね?」と答えると、「活動やっているのか」「これ(U)は良くない」と言葉を重ねた、という。別の上司は「組合に入っていると不利な査定がなされるという事実を知っていますか」と迫った、と彼は述べた。  こうした言動の詳細、さらに今回の解雇との関連は現時点では不明だが、「この解雇は労働契約法第16条(合理性と相当性を欠いた解雇の禁止)に違反するが、組合差別が理由なら、労働組合法に違反する不当労働行為になる」とベテラン労働弁護士は解説する。日本IBMは組合員も対象に含むロックアウト型解雇について組合との団体交渉を誠実に行わなかったとして、東京都労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てられている。 「9月の1カ月だけで200人が切られた」(中堅社員)とも言われるIBMリストラだが、「現在、職場は不気味なほど静かです。予断は許しませんが、裁判に立った3人の勇気が、ひとまず新たな解雇を止めているのだと思います」とJMIUの三木陵一書記長は言う。  IBM解雇は国会でも取り上げられ、2012年11月13日の衆議院予算委員会で野田佳彦首相(当時)は、「もしそういうことがあるならば、それはあってはならないやり方であります」と答弁した。  折しも、電機業界では13万人リストラの真っただ中だが、「ほとんどは希望退職」(業界関係者)。先の弁護士のコメントにもあるように、正社員を簡単には解雇できないからだが、万が一にもIBMの「あってはならないやり方」(野田氏)がまかり通ってしまえば、今年は「派遣切り」ならぬ「正社員切り」の嵐が吹き荒れかねない。 (文=北健一/ジャーナリスト) ■おすすめ記事 “問題児”せんとくん大出世?出生の秘密と多額の経済効果 理不尽なクレーマーを黙らせる3つの方法 30周年の好調TDL、米国本家からの独立路線戦略の舞台裏 スマホ、自由にアプリいじれるガジェット…生誕の地は日本? マンガ賞乱立のカラクリ、主催者のメリットなしでもなぜ盛り上がる?

“不祥事量産”IBMリストラ面談の恐怖「君の妻に電話する」

 サイゾー新ニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けしちゃいます! ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) 「トクホコーラ」後発サントリーの苦悩 「コカ・コーラ」の動向は? なぜkindle評判高くkobo低い?電子書籍業界を占う 大手新聞社幹部、取材しない、記事は書けないが不倫はお盛ん ■特にオススメ記事はこちら! “不祥事量産”IBMリストラ面談の恐怖「君の妻に電話する」 - Business Journal(12月21日)
日本IBM本社
(「Wikipedia」より)
「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『さんまのホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、あらゆる企業の裏の裏まで知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない、「あの企業の裏側」を暴く!  皆さんは日本IBMという会社に、どのようなイメージをお持ちだろうか? 「就職人気ランキング上位企業」 「業界大手で、外資系ながら日本的な安定感を持った会社」 「堅実な業績」 「人材輩出企業」 「高収入でスキルも得られる」  私自身が就活生だった14年前、同社は光り輝くブランドであった。そして現在。同社にはイメージ通りの面と、そうではない面がある。まずはその乖離からみていきたい。  最初に、「就職人気ランキング上位企業」からだ。手元に1976年度入社以降の「就職人気企業ランキング」があるが、データが残っている限り、ほぼ毎年のようにトップ10位以内にランクインしている。しかし直近では、2002年度入社組の「理系5位」にランクインしたのを最後に、今までトップ10圏内に返り咲いていない。  総合ランキングからは姿を消したものの、「IT系企業人気ランキング」とか「女性が働きやすい会社ランキング」といった個別の指標を基にしたランキングでは、依然根強い人気を誇っている。  具体的には、「日経ウーマン」(日経BP社)が実施した「女性が活躍する会社ランキング」において、日本IBM は1位(11年)。そして、「2013年度 日経コンピュータ×楽天みんなの就職活動日記共同調査 IT業界就職人気ランキング」では、「男性就職人気企業ランキング」において4位となっている。  次に「人材輩出企業」については、もう実績だけをご覧いただければ一目瞭然だ。この評価については間違いないといえるだろう。 ・江崎玲於奈:ノーベル物理学賞受賞、横浜薬科大学学長、元芝浦工業大学学長、元筑波大学学長 ・佐野力:元日本オラクル社長 ・倉重英樹:RHJインターナショナル・ジャパン会長、元日本テレコム社長、元IBMビジネスコンサルティングサービス会長、元プライスウォーターハウスコンサルタント会長兼社長 ・北城恪太郎:前経済同友会代表幹事、元IBM AP President、元会長 ・新宅正明:日本オラクル会長 ・玉塚元一:リヴァンプ代表パートナー、ロッテリア会長 (以上、敬称略) 上記以外にも、東証一部上場企業の社長クラスがゴロゴロ存在しているのだ。 ●実際は10年連続減収、トラブル続出の問題企業  こうしたデータをもって、日本IBMは、「大手安定企業」で「業績好調な優良企業」といえるだろうか? 答えは「否」である。  同社の11年の売上高は8,681億円、経常利益で940億円、当期純利益は272億円だ。これだけを見れば明らかに「黒字大企業」なのだが、経年変化を見なければいけない。  10年度は、売上高が9,377億円、経常利益は1,242億円、当期純利益は773億円であったから、売上高では前年比7.4%減、最終利益では前年比64.8%減の「減収減益」だ。  しかも、01年に過去最高の売上高1兆7,075億円を記録して以来、10年連続で売上高は下降しており、この10年で売上はちょうど半分になっているのだ。同様に営業利益や経常利益も半分。最終利益については約5分の1となってしまっている。とても、業績好調といえないことは明白であろう。  さらに、あまり大きく報道されていないが、日本IBM関連の事件は結構多く存在しているのである。06年以降で、日本IBMが訴えられたり、事件の主体となったりした代表的な事例をみていこう。 【06年】 ・会計検査院による検査で、日本IBMが独立行政法人情報通信研究機構から受託していた研究2件に関し、実際には従事していない研究員の労働時間を含め人件費を請求していたと指摘を受ける 【07年】 ・東京リース株式会社が、販売代金153億4,100万円の債務履行と遅延利息の支払いを求め、日本IBMなど4社を東京地裁に提訴 ・ソースネクスト社が、ホームページ・ビルダーのライセンス供与に関して契約違反として提訴。08年7月に一部和解が成立 【08年】 ・スルガ銀行が「日本IBMの債務不履行によりシステムが完成せず、開発を中止せざるを得なくなった」として111億700万円の損害賠償訴訟を起こす。12年3月、東京地裁はスルガ銀行の訴えを認め、日本IBMに約74億1,000万円の支払いを命じる 【09年】 ・福岡銀行で前年に発生したIBM製基本ソフトウェアのバグによるシステム障害に続いて、今度は日本IBM保守要員の作業ミスが原因でシステム障害が発生。福岡銀行が日本IBMに対して損害賠償を検討中と報道される ・08年に行われた、「3カ月で1,500名の社員を退職させる」大規模な退職勧奨プログラムの中で、上司による人格否定、威嚇行為、誹謗中傷などの人権侵害を伴う組織的な退職強要があったとして、社員4名が「人権侵害を伴う退職強要の差し止め」と損害賠償を求めて提訴 【10年】 ・雑誌「プレジデント」(プレジデント社/5月3日号)の特集「働きがい」で、「IT業界部門の働きがいワースト企業」と報道される ・ゆうちょ銀行で発生した「民営化後最大」といわれるシステム障害は、IBM製磁気ディスク装置の制御プログラムのバグによるものとして、ゆうちょ銀がIBMへの損害賠償請求を検討中と報道される 【12年】 ・最高顧問の大歳卓麻氏が、一身上の都合による退職直前に、東京都迷惑防止条例違反(盗撮)容疑で警視庁により取り調べを受けていたことが報道される  いずれも不名誉な事件ばかりだ。しかも、これらは微妙に相互関連している。それは「大歳体制によるひずみの表面化」といってもいいかもしれない。  大歳氏が日本IBM社長に就任したのが99年。08年に会長兼務となり、09年から会長。そして今年、12年5月に最高顧問に就任している。この大歳氏こそ、「日本IBMをブラックにした張本人」と言われているのだ。実際、報道されている不祥事は、この時期と合致している。 ●リーダーには「首切りノルマを達成せよ」との通達  日本IBMは大歳体制下の04年、人事業績評価制度として、従業員個人の目標管理型業務評価制度「PBC」を導入した。これは、業績評価上位から  「1」(最大貢献、10~20%)  「2+」(平均を上回る貢献)  「2」(着実な貢献、2+と合わせて65~85%)  「3」(低い貢献)  「4」(極めて低い貢献、3と合わせて5~15%) の5段階を設定し、ボーナス額や昇給額決定にあたって考慮する指標となるものであった。  そして08年、この指標に基づき、問題となった大規模リストラが行われることになる。 つまり、PBCで「3」「4」と下位評価された社員、1,500人を対象にしたものだ。同社ではそれまでにもリストラを必要に応じて行っていたが、08年のケースでは「前年同様に高収益を確保している中での、正社員への大規模リストラ」であったため、世間の注目を集めた。  結局、会社として業績を「回復」させることはできなかったが、リストラは断行でき、かろうじて「利益を死守」することはできたのである。  では、同社のリストラというのはどのようなものなのか?  ここに実態を詳説しよう。08年のリストラ時、同社の各部門長宛に配布された内部資料「Resource Action Program」(下位15%、「3」「4」という低評価となった社員を退職に追い込むための指示文書)の冒頭には、このように書かれている。 「予定数の達成が、我々リーダー一人ひとりのAccountability(結果責任)となります」  つまり、「売上ノルマ」ならぬ「首切りノルマ」を達成せよ、というお達しなのだ。そして、このマニュアルに記された「社員を退職に追い込む方法」とは次のとおりである。 (1)まず会社がターゲット(対象者)を選定する (2)退職強要面談にあたる面接者をトレーニングする (3)ターゲットと「初回面談」を行う (4)必要に応じて面談を重ねる (5)社長臨席会議で、進捗状況を確認 (6)「退職意思確認」を経て「退職」へと追い込む  指示文書には、「あくまで本人の“自由意思”に基づいて決断するように、コミュニケーションしてください」と書かれているが、手順書を見る限り、自由意思で選べるゴールは「退職」しか存在しない。  従業員に退職を促すことを「退職勧奨」というが、法的には「人事評価が低かった」という理由で退職勧奨すること自体に問題はない。そして従業員側でも、退職勧奨を受けたからといって、それに従わなければならないという義務もない。つまり、退職勧奨は「やるのも自由」だし、「断るのも自由」なのである。問題になるのは、「本人が勧奨を断った後も、執拗に退職を迫る」といった行為があった場合だ。これは違法である。 「執拗」というのがどんなレベルなのか、裁判でも判断が分かれるところである。ちなみに同社で08年に行われたリストラで、従業員が「執拗に迫られた」として提訴していた件については、先ごろ東京地裁の判断で「違法性はない」となった。 ●リストラ強要面談の実態  面談を受けた経験者によると、面談で次のような話を繰り返しされることでプレッシャーが与えられていたようだ。果たして読者の皆さんは、これを「執拗ではなく、違法性がない」と捉えられるだろうか? 「あなたが今やっている仕事は、来月からもうないよ」 「去年からのあなたの業績が、まるで見えない。毎日何しに出勤しているんだ?」 「あなたの低い業績について、他のメンバーがなんて噂しているか知ってるのか?」 「今後何年居残っても、ずっと永久にPBCは3以下しかつかない。この先、毎年減給の繰り返しになるぞ」 「いくら探しても、あなたを引き取るマネジャーがいない。長い間、お疲れ様でした」 「あなた自身の今後のためにも、社外でのキャリアを探したほうが絶対いいよ」 「明日、あなたの両親/妻にPBCの現況と今後のキャリアについて電話するけど、言いたいことは?」 「残っても降格・減給にもなるし、格段に厳しいノルマや処遇になるのがもう見えている」 「いまどき、これほどの割増金が出るのは当社くらいだ。しかも、今回きり最後のチャンス」 「明日、○○という会社に面接にいってきなさい。これは業務命令です」 「社外でのキャリアを探すほうが、あなたの場合、圧倒的に最善の決断だ」  ちなみに、このような「成績下位者への退職勧告」というシステムは、外資系企業なら比較的広範にみられる光景、という印象があるかもしれない。同時に、思慮深い方ならこんな疑問を持たれることだろう。 「日系企業も外資系企業も同じ労働基準法が適用されてるのに、なぜ外資系だけ社員を簡単にクビにできるのか?」  次回、その疑問について探っていく。 (文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト) ■おすすめ記事 「トクホコーラ」後発サントリーの苦悩 「コカ・コーラ」の動向は? なぜkindle評判高くkobo低い?電子書籍業界を占う 大手新聞社幹部、取材しない、記事は書けないが不倫はお盛ん ローソン社長「敵はアマゾン」…ヤフーと組み通販へ殴り込み 挙式までの5日間、抗いがたい性欲に身を任せるふたり

盗撮で書類送検のIBM元社長はブラック企業化の張本人

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(「IBM」HPより)
 おやマアーである。日本IBMの大歳卓麻・元社長(最高顧問、63)が女性のスカートの中の下着を携帯型音楽プレーヤーiPodの動画機能を使って盗撮し、四谷署で事情聴取された。警視庁は東京都迷惑防止条例違反で書類送検した。  手回しのいいことだ。大歳氏は日本IBMに最高顧問の辞表を提出し、既に受理されている。総務相の諮問機関である情報通信審議会の会長と、花王、TOTO、カルビー、三菱UFJフィナンシャル・グループ、明治安田生命保険の5社の社外取締役を8月30日付で辞任した。辞職した理由は「一身上の都合」。盗撮がバレたので辞めますとは、さすがに書けなかった。  大歳氏は1948年広島県生まれの団塊の世代。71年東京大学工学部を卒業し日本IBMに入社。専務補佐、社長補佐といったエリート街道を一直線、99年12月に51歳で社長に就任。08年4月に会長を兼務、09年から会長。今年5月に最高顧問になったばかりだ。 「盗撮には興味があった」と供述した。社長時代には女性の幹部登用に積極的で、幹部選出の際には、必ず「女性の候補者はいるのか」と繰り返して質問していたという。まだ、バリバリの現役といっていい大歳氏は、“出来心”で墓穴を掘ったのだろうか。大歳氏のiPodからは盗撮動画が発見されており、他にも盗撮がなかったかどうか、調べが進められている。  ここでは真っ当な批判をする。「大歳さんは、日本IBMをブラック企業にした張本人。ご本人は、さぞかしストレスが溜まっていたのでしょう」。エレクトロニクス業界の有力者の感想は皮肉っぽい。  ブラック企業とは、「人を使い捨てる」ビシネスモデルをもっているところのことだ。入社を勧められない企業の意味で使われる。労働界から大歳氏は“ブラック企業経営者のメダリスト”との声が上がるほどだ。  日本IBMでは毎年恒例のように、クビ切りが行われる。業績悪化といった一時的な要因によるものではない。業績を良くするために人事評価の下位15%を強制的に退職させて“新陳代謝”を図るシステムを導入している。  退職させるための「クビ切りマニュアル」がある。辞めさせたい社員に「改善目標」と称するノルマを繰り返し課し、未達成の場合は「降格」「解雇」に至るまでのプロセスが明記されている。09年5月に、社員3人が「人格否定や脅迫まがいの退職強要を受けて人権を侵害された」として提訴。記者会見した3人は「退職強要は組織的だった。非人道的な行為だったことを(会社に)認めさせたい」と訴えた。  10年3月、パソコンなどのソフト開発の拠点、大和事業所(神奈川県)で、子会社の社員がノートパソコンにつなぐ盗難防止用ワイヤで首を吊った。「クビ切リマニュアル」の犠牲者と見られている。  大歳氏は社長当時、雑誌のインタビューで、自社の人事制度について「我々が毒見してみて、大丈夫そうだとなれば、日本の会社の皆さんも(クビ切りが)やりやすい」と語った。大歳氏は、03年から6年間、日本経団連で企業倫理を担当する企業行動委員会の共同委員長を務めている。企業行動委で「強制退職のやり方を指導するのか」と労働界から目の敵にされた。  大歳氏が社外取締役として引く手あまただったのは、情報通信の専門家としてではない。大量クビ切りの達人で、その指南を仰ぐのが目的だと陰口を叩かれていた。  日本IBMの不祥事があぶりだされたのは大歳氏が社長時代の05年2月に発覚した不正会計問題だ。これによって米IBMは04年度決算の修正を余儀なくされた。大歳社長は「社内規定の違反があった。詳細は社内のことなので誤解を受けないように説明するのは難しい」と繰り返すのみで、この問題の詳細には、最後まで触れなかった。だが、04年秋に摘発された大証ヘラクレス上場のメディア・リンクスの粉飾決算事件への加担が指摘された。メディア社はその後、上場廃止になっている。  メディア社は「口座貸し」と呼ばれる取引慣行を利用して架空売り上げを計上した。「口座貸し」は顧客企業と直接契約ができる大手企業でなければ難しい。メディア・リンクス事件を機に日本公認会計士協会は「口座貸し」の会計処理を見直す新しいガイドラインを作成した。この基準に照らしても「社内規定の違反」などという、生易しいものではない不適切なものだったといえる。  大歳体制のひずみの実例といえるのがスルガ銀行のシステム開発の失敗だ。スルガ銀行は04年、銀行業務全般をつかさどる基幹システムの開発を日本IBMに委託。08年度中の稼動を目指したが、契約通りに開発できなかったとして07年に契約を解除。スルガ銀行は日本IBMに約115億円の損害賠償を求めて提訴した。今年3月29日、東京地裁は日本IBMに約74億円の支払いを命じている。  この全面敗訴が米IBMに日本IBMの経営陣の刷新を決断させる動機になったといわれている。5月15日付で大歳会長は最高顧問に、橋本孝之社長が代表権のない会長に退き、米IBMから派遣された元・独IBM社長のマーティン・イェッター氏が社長の椅子に就いた。外国人の社長の起用は56年ぶりのことだ。  日本IBMの黄金時代は70~80年代だった。どのIT企業も日本IBMを仰ぎ見ていた。椎名武雄、北城恪太郎といったユニークな日本人のトップが経営に当っており、外資系というより日本企業に近かった。だが、その輝きを失った。ピークの01年に1兆7075億円あった売上高は11年には8681億円まで縮んだ。得意とする大型汎用コンピュータは“レガシー(遺産)”と呼ばれ、すっかり時代遅れになってしまった。 “新陳代謝”と称する大量クビ切りが知れ渡り、「社員を使い捨てにする会社」として技術系の優秀な学生が敬遠するようになったことも地盤沈下に拍車がかかった。だが、米本社の側から見る限り大歳氏は、常に利益を上げる優等生の経営者だった。しかし、この利益は米国からの直輸入のクビ切りをノルマ化することで達成されたものなのだ。  大歳氏は効率優先主義がもたらす負の側面には目を向けなかった。彼が日本IBMをブラック企業にした責任は決して小さくない。 (文=編集部) ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) バブルを煽り、企業の御用メディアに成り下がった日経の醜態 amazon、Tポイント…ポイント数倍になる賢いお買い物術? まるで預言書… 環境NGOが原発“推進”企業・日本生命を弾劾 地方中学校の校歌まで配信 後発「カラオケの鉄人」が拡大中! 3回入院でも半分しか元が取れない!? 損しない医療保険活用術 無償、劣悪な待遇でコキ使われる米国留学生たちの現実 ヤマダ会長「家電量販店は3社に集約」家電業界戦国時代に突入