殺された街、牛、心…福島警戒区域内で積み上がり続ける”屍”

【サイゾーpremium】より
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(写真/針谷 勉)
 福島第一原発から半径20キロ圏内は警戒区域に指定され、同区域内への立ち入りは法律で厳しく制限されている。原発事故前、同区域では牛約3500頭、豚約3万頭、鶏約44万羽が飼育されていたが、事故後は、鶏は全羽、牛や豚はその過半数が餓死した。生き残った家畜は、国の指示で殺処分が今も実施されている。  そんな中、自身の被ばくを顧みずに事故後も警戒区域に残り、牛の世話を続けている農家がいる。吉沢正巳(58歳)。吉沢の牧場から福島第一原発までは約14キロ、牧場から排気筒や復旧作業中のクレーン群が見える。 「ド~ン、ド~ンと2回、花火を打ち上げるような音がした」  2011年3月14日の3号機建屋の爆発音と立ち上る噴煙を目の当たりにした吉沢。だが、逃げ出さなかった。 「数日もすると、近所の牛舎では、痩せ細った牛が水や餌を求めて悲鳴を上げ、その隣では牛の死骸を豚が食べている。まさに地獄のような光景だった」  それから約1年8カ月たった今、吉沢の牧場では約400頭の牛が毎時約3マイクロシーベルトの環境下で飼育されている。被ばくした牛は、当然売り物にはならない。 「被ばく牛を原発事故の生き証人として、俺は牛と運命を共にする」  国は警戒区域内での牛の飼養どころか、餌の搬入さえ認めていない。牛は栄養失調に陥り、弱い個体から次々と死んでゆく。これまで約100頭が死んだ。写真は、牧場内にあるその”墓場”だ。昼間はカラスが、夜になると野良化した犬が、その死肉をむさぼりにやってくる。 「深い絶望の先には、きっと希望がある」――牛飼い吉沢の闘いは始まったばかりだ。 (針谷勉) 『警戒区域』 原発事故後、福島第一原発から半径20キロ圏内を警戒区域として設定。市町村長の許可がない立ち入りは禁止され、違反すると10万円以下の罰金又は拘留となる。
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■衝撃写真と物語!緊急出版 『原発一揆 警戒区域で闘い続ける~ベコ屋~の記録』 警戒区域内に取り残された牛たちの命を守るため、被ばく覚悟で牧場の維持を決意した吉沢正巳氏。彼が国や東電と闘いながら、絶望の淵で「希望の牧場」を生み出すまでの記録をまとめたフォトルポルタージュ『原発一揆』が、小社から発行された。本書には「原発事故の真実」が収められているが、ここに掲載した写真もその”一幕”だ。 著者/針谷勉 発行/サイゾー 価格/1365円 【「サイゾーpremium」では他にも『原発』を多角度からぶった斬る記事が満載です。】事故処理の下請けはヤクザだけじゃない!! 原発お膝元のイビツな利権構造新左翼がオルグしている!? 大手マスコミでタブー視される首相官邸前反原発デモの現場アウトローが語る原発労働の実態 久田将義×鈴木智彦「東電はヤクザを黙認している」
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放射線検査をしないコメが市場に流通──不安視される食品業界のタブー構造

【サイゾーpremiumより】
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『食品業界は今日も、やりたい放題』
(三五館)
──福島県産農作物が売れているという。  原発事故の影響で、首都圏ではスーパーなどの小売店で福島県産農作物を見る機会はほとんどない。当然出荷量もガタ落ちのはず……と思いきや、日経新聞などの報道では2011年度のコメの出荷量は、例年の7割程度を確保しているという。店頭では見かけることがないのに、いったいどこに出荷しているのだろうか? 「福島県産米は、主に首都圏の外食店やせんべいなどの加工食品メーカーで使用されているんです」 と話すのは、ジャーナリストの吾妻博勝氏。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)を執筆したコメ流通のエキスパートだ。  いまや日本では、手軽で安価な食品が氾濫している。オペレーションシステムの改善や人件費の削減などの企業努力で、1円でも商品の原価を切り詰め価格競争に立ち向かう食品産業にとって、味自体は問題がなく、値段も割安となった福島県産農作物は、まさに渡りに船。消費者としても、11年にはサンプリング調査だった放射性物質の検査が、全袋検査へと移行し、しっかりとした検査を行っているんだから大丈夫だと安心する向きもあるが、吾妻氏は「あれだけ検査の様子が報道されれば、すべてのコメが検査されていると〝誤解〟する方も多いのではないでしょうか」と話す。 「今年度米で全袋検査をしたのは、8月に収穫した早場米の一部だけ。さらに、9月下旬から収穫が始まる米で全袋検査されるのは、主としてJA経由の流通米のみです。農家が業者に直接販売する米は全体の5割以上にも上り、それらは検査もされずに流通するものが多い。業者が農家にトラックを横付けして直接買い取り、そのまま激安居酒屋や、加工食品業界へ出荷されるんです」(吾妻氏)と、非正規のルートでコメや農作物が流通しているというのだ。中間マージンを削るため、農家と直接契約を謳っている企業も多い。 「食の安全」が叫ばれて久しいが、O-157など頻発する食中毒や発がん性物質の混入など、消費者は食に対して疑心暗鬼にならざるを得ない状況が続いている。特に「デフレ食品」とさえ呼べる一連の激安フードは、その安さと引き換えに、こうした安全性が不透明な製品も使用されている。  例えば、かねてから発がん性物質などの危険性が指摘されている食品添加物は、激安フードにとってなくてはならない存在。ハムやベーコン、そしてハンバーグなどの加工食肉には保存料をふんだんに使用することで、流通経費や廃棄リスクを抑制し、合成着色料で新鮮な見た目を演出、化学調味料で味を調えている。合成甘味料のズルチンや合成保存料のフリルフラマイドなど、即座に健康に被害が及ぶものに対しては、厚生労働省も規制を行なってきたが、”ただちに健康に被害がない”ものには、審査も甘い。長期的に摂取し続けた場合や、ほかの添加物と混ぜ合わせた場合のリスクに関しては、安全性が疑問視されるデータが民間の機関から出ていても、そのままにされているものが多い。  また、いまだに安全性が疑問視される遺伝子組み換え農作物も、激安価格を実現するためには欠かせない。通常の作物よりも生命力が強靭で、収穫量も高いことから価格が安いのだが、その不信感は根強く、一部からはアレルギー、臓器異常、不妊、発がん性などの可能性も指摘されている。  遺伝子組み換え作物については、アメリカの農薬会社モンサントの日本進出が話題となっている。同社はすでに茨城県に実験農場を建設している。内部で見たことを口外しないという誓約書を書かされた上で、この農場を見学した人物は、その内部の様子を振り返った。 「周囲から完全に隔離された施設の内部には遺伝子組み換えの作物と、普通の作物が並んでいました。除草剤の効果で、普通の作物はほとんど枯れているのに対し、遺伝子組み換えのほうはピンピンしていた。『どうですか?』と自信満々に聞かれましたが、正直気持ちが悪かった」  作物が枯れてしまうほど強力な農薬が残っているかもしれないのに、本当に人体にとっても安全なのか、十分に議論・検証する必要があるだろう。また、現段階ではその多くに使用表示の義務があるので、日本人が直接口にすることは少ないように思えるが、実は、牛や豚などの家畜飼料として、大量に輸入されており、これらは表示義務がない。結果、我々も間接的にそれらを摂取しているのだ。 ■デフレ食品批判映画が圧力で潰された!?  こうした「安さのヒミツ」は、一部の書籍や雑誌などで報道される程度にとどまっている。自らも製薬会社・食品メーカーで添加物の研究や食品の開発にかかわりながら、『食品業界は今日も、やりたい放題』(三五館)などの著書もある小薮浩二郎氏は、業界からの圧力を指摘する。 「味の素などの大手食品メーカーが加盟する『日本食品添加物協会』は、食品企業幹部や国立大教授などの退職後の受け皿として機能しています。食品添加物に否定的な書籍や記述に対しては強固に反論を行うんです。かつて、食品に関するある書籍が爆発的にヒットした際、同協会から相当強いクレームが飛んだことがあります」  大企業や食品会社を後ろ盾に持つ同協会は、厚生労働省や消費者庁にさえ抗議を行い、その力は「消費者庁が潰れても、添加物協会は潰れないと言われている」(同)ほど。そして、同協会に対して尻尾を振っているのが、添加物を監視・監督する立場にある厚労省だという。特に食品業界に対しては、国は消費者よりもメーカー保護の立場。森永ヒ素ミルク中毒事件やカネミ油症事件くらい重大なトラブルが起きない限り、国の機関でも添加物に対してネガティブな研究は行っていないのだという。  では、自由に研究ができそうな大学機関などでの研究は進んでいるのだろうか? 「現在、大学には『産学協同』の風潮があり、企業の論理にのっとった研究が奨励される傾向にあります。一方、製品の欠陥について研究すると、学生の就職に如実に影響があるので、理系大学生の就職先の多くを占める食品メーカーにとって不利益となる研究は、積極的には行いません」(同)  このように産学官に守られ、食品会社は今日も我々に添加物満載の食品を提供しているのだ。  また、「食の安全」を脅かす彼らを無視し、自主規制を行うメディア側の弱腰姿勢も浮かび上がってくる。 『ありあまるごちそう』など、食の安全をテーマにしたドキュメンタリーを配給するアンプラグド代表取締役の加藤武史氏が『フード・インク』のキャンペーンの際に直面した事件は、この態度を端的に象徴したものだったという。 「普段エコやナチュラルフードを推進している、あるラジオ局に『フード・インク』のキャンペーンを手伝ってほしいという話を持っていったところ、DJの方々は非常に興味を持ってくれたのですが、局側は『一方的であり、応援をすることはもちろん、扱うこともできない』と激怒され、即却下されました。後日知ったところによると、この放送局の一番のスポンサーはコンビニとハンバーガーチェーンだった(笑)」  映画『スーパーサイズ・ミー』などでも描かれたように、マクドナルドやコカ・コーラには、人体に影響する物質が入っているなどとし、その安全性が疑問視されている。それらの企業が、安全でも割高になるナチュラルフードを推奨する映画に協力できないのは、なるほどと思うところがあるだろう。11年に食品業界がマスコミにばらまいた宣伝広告費は2660億円と、日本の広告費用における1割を占めている(電通「日本の広告費」)。大手食品メーカーの広告宣伝費にがんじがらめとなっている大手メディアもまた、食品業界の闇を告発することなどするはずもないだろう。  このような状況に「食品を取り巻く組織が硬直化している」と憤る加藤氏は、農林水産省から受けたある「圧力」も明かした。 「08年から農水省が主導した食料自給率アップを目指した『フード・アクション・ニッポン』というキャンペーンがあり、そのHP上に『フード・インク』の公開情報を掲載してもらうよう掛け合いました。運営を受託する電通とやりとりをし、情報を掲載してもらったのですが、その途端、農水省から『一方的で好ましくない』という圧力がかかり、ホームページから映画の情報を削除されそうになりました」  結局、この件は電通によって削除されずに済んだが、食に対して真摯に向き合ったドキュメンタリーを「好ましくない」の一言で排除する農水省の姿勢は、この国にはびこる食品事情を象徴している。 「食品の裏側を知ると、モノが売れなくなるという恐怖が、メーカー、小売店、外食チェーンにはあるのでしょう。冷静に考えたら、値段が安すぎる食品は多いし、お寿司やサラダが3日も日持ちするのもおかしい。そのような疑問の芽を、食品を取り巻く組織は必死で摘んでいくんです。『食品について何も考えるな』『黙って買え』というのが、彼らの本音ではないでしょうか」(加藤氏)  我々にとって身近な存在だからこそ、触れづらい食品業界。自主規制を撤廃し、不当な圧力を打ち消すといった努力がなされなければ、「食の安全」など、空虚なスローガンにすぎないのだろう。 (取材・文/萩原雄太) 【明日から食事をするのが怖くなる!? 「サイゾーpremium」では食品業界の闇に迫った記事が満載!】観たら外食ができなくなる? 食の安全を追求する海外傑作ドキュメンタリー味の素や牛角に直撃!! “激安食品”にまつわる怪しい噂は本当か?郡司和夫氏が食品添加物から分析──ラーメンの"うま味"調味料が怖い
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──福島県産農作物が売れているという。  原発事故の影響で、首都圏ではスーパーなどの小売店で福島県産農作物を見る機会はほとんどない。当然出荷量もガタ落ちのはず……と思いきや、日経新聞などの報道では2011年度のコメの出荷量は、例年の7割程度を確保しているという。店頭では見かけることがないのに、いったいどこに出荷しているのだろうか? 「福島県産米は、主に首都圏の外食店やせんべいなどの加工食品メーカーで使用されているんです」 と話すのは、ジャーナリストの吾妻博勝氏。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)を執筆したコメ流通のエキスパートだ。  いまや日本では、手軽で安価な食品が氾濫している。オペレーションシステムの改善や人件費の削減などの企業努力で、1円でも商品の原価を切り詰め価格競争に立ち向かう食品産業にとって、味自体は問題がなく、値段も割安となった福島県産農作物は、まさに渡りに船。消費者としても、11年にはサンプリング調査だった放射性物質の検査が、全袋検査へと移行し、しっかりとした検査を行っているんだから大丈夫だと安心する向きもあるが、吾妻氏は「あれだけ検査の様子が報道されれば、すべてのコメが検査されていると〝誤解〟する方も多いのではないでしょうか」と話す。 「今年度米で全袋検査をしたのは、8月に収穫した早場米の一部だけ。さらに、9月下旬から収穫が始まる米で全袋検査されるのは、主としてJA経由の流通米のみです。農家が業者に直接販売する米は全体の5割以上にも上り、それらは検査もされずに流通するものが多い。業者が農家にトラックを横付けして直接買い取り、そのまま激安居酒屋や、加工食品業界へ出荷されるんです」(吾妻氏)と、非正規のルートでコメや農作物が流通しているというのだ。中間マージンを削るため、農家と直接契約を謳っている企業も多い。 「食の安全」が叫ばれて久しいが、O-157など頻発する食中毒や発がん性物質の混入など、消費者は食に対して疑心暗鬼にならざるを得ない状況が続いている。特に「デフレ食品」とさえ呼べる一連の激安フードは、その安さと引き換えに、こうした安全性が不透明な製品も使用されている。  例えば、かねてから発がん性物質などの危険性が指摘されている食品添加物は、激安フードにとってなくてはならない存在。ハムやベーコン、そしてハンバーグなどの加工食肉には保存料をふんだんに使用することで、流通経費や廃棄リスクを抑制し、合成着色料で新鮮な見た目を演出、化学調味料で味を調えている。合成甘味料のズルチンや合成保存料のフリルフラマイドなど、即座に健康に被害が及ぶものに対しては、厚生労働省も規制を行なってきたが、”ただちに健康に被害がない”ものには、審査も甘い。長期的に摂取し続けた場合や、ほかの添加物と混ぜ合わせた場合のリスクに関しては、安全性が疑問視されるデータが民間の機関から出ていても、そのままにされているものが多い。  また、いまだに安全性が疑問視される遺伝子組み換え農作物も、激安価格を実現するためには欠かせない。通常の作物よりも生命力が強靭で、収穫量も高いことから価格が安いのだが、その不信感は根強く、一部からはアレルギー、臓器異常、不妊、発がん性などの可能性も指摘されている。  遺伝子組み換え作物については、アメリカの農薬会社モンサントの日本進出が話題となっている。同社はすでに茨城県に実験農場を建設している。内部で見たことを口外しないという誓約書を書かされた上で、この農場を見学した人物は、その内部の様子を振り返った。 「周囲から完全に隔離された施設の内部には遺伝子組み換えの作物と、普通の作物が並んでいました。除草剤の効果で、普通の作物はほとんど枯れているのに対し、遺伝子組み換えのほうはピンピンしていた。『どうですか?』と自信満々に聞かれましたが、正直気持ちが悪かった」  作物が枯れてしまうほど強力な農薬が残っているかもしれないのに、本当に人体にとっても安全なのか、十分に議論・検証する必要があるだろう。また、現段階ではその多くに使用表示の義務があるので、日本人が直接口にすることは少ないように思えるが、実は、牛や豚などの家畜飼料として、大量に輸入されており、これらは表示義務がない。結果、我々も間接的にそれらを摂取しているのだ。 ■デフレ食品批判映画が圧力で潰された!?  こうした「安さのヒミツ」は、一部の書籍や雑誌などで報道される程度にとどまっている。自らも製薬会社・食品メーカーで添加物の研究や食品の開発にかかわりながら、『食品業界は今日も、やりたい放題』(三五館)などの著書もある小薮浩二郎氏は、業界からの圧力を指摘する。 「味の素などの大手食品メーカーが加盟する『日本食品添加物協会』は、食品企業幹部や国立大教授などの退職後の受け皿として機能しています。食品添加物に否定的な書籍や記述に対しては強固に反論を行うんです。かつて、食品に関するある書籍が爆発的にヒットした際、同協会から相当強いクレームが飛んだことがあります」  大企業や食品会社を後ろ盾に持つ同協会は、厚生労働省や消費者庁にさえ抗議を行い、その力は「消費者庁が潰れても、添加物協会は潰れないと言われている」(同)ほど。そして、同協会に対して尻尾を振っているのが、添加物を監視・監督する立場にある厚労省だという。特に食品業界に対しては、国は消費者よりもメーカー保護の立場。森永ヒ素ミルク中毒事件やカネミ油症事件くらい重大なトラブルが起きない限り、国の機関でも添加物に対してネガティブな研究は行っていないのだという。  では、自由に研究ができそうな大学機関などでの研究は進んでいるのだろうか? 「現在、大学には『産学協同』の風潮があり、企業の論理にのっとった研究が奨励される傾向にあります。一方、製品の欠陥について研究すると、学生の就職に如実に影響があるので、理系大学生の就職先の多くを占める食品メーカーにとって不利益となる研究は、積極的には行いません」(同)  このように産学官に守られ、食品会社は今日も我々に添加物満載の食品を提供しているのだ。  また、「食の安全」を脅かす彼らを無視し、自主規制を行うメディア側の弱腰姿勢も浮かび上がってくる。 『ありあまるごちそう』など、食の安全をテーマにしたドキュメンタリーを配給するアンプラグド代表取締役の加藤武史氏が『フード・インク』のキャンペーンの際に直面した事件は、この態度を端的に象徴したものだったという。 「普段エコやナチュラルフードを推進している、あるラジオ局に『フード・インク』のキャンペーンを手伝ってほしいという話を持っていったところ、DJの方々は非常に興味を持ってくれたのですが、局側は『一方的であり、応援をすることはもちろん、扱うこともできない』と激怒され、即却下されました。後日知ったところによると、この放送局の一番のスポンサーはコンビニとハンバーガーチェーンだった(笑)」  映画『スーパーサイズ・ミー』などでも描かれたように、マクドナルドやコカ・コーラには、人体に影響する物質が入っているなどとし、その安全性が疑問視されている。それらの企業が、安全でも割高になるナチュラルフードを推奨する映画に協力できないのは、なるほどと思うところがあるだろう。11年に食品業界がマスコミにばらまいた宣伝広告費は2660億円と、日本の広告費用における1割を占めている(電通「日本の広告費」)。大手食品メーカーの広告宣伝費にがんじがらめとなっている大手メディアもまた、食品業界の闇を告発することなどするはずもないだろう。  このような状況に「食品を取り巻く組織が硬直化している」と憤る加藤氏は、農林水産省から受けたある「圧力」も明かした。 「08年から農水省が主導した食料自給率アップを目指した『フード・アクション・ニッポン』というキャンペーンがあり、そのHP上に『フード・インク』の公開情報を掲載してもらうよう掛け合いました。運営を受託する電通とやりとりをし、情報を掲載してもらったのですが、その途端、農水省から『一方的で好ましくない』という圧力がかかり、ホームページから映画の情報を削除されそうになりました」  結局、この件は電通によって削除されずに済んだが、食に対して真摯に向き合ったドキュメンタリーを「好ましくない」の一言で排除する農水省の姿勢は、この国にはびこる食品事情を象徴している。 「食品の裏側を知ると、モノが売れなくなるという恐怖が、メーカー、小売店、外食チェーンにはあるのでしょう。冷静に考えたら、値段が安すぎる食品は多いし、お寿司やサラダが3日も日持ちするのもおかしい。そのような疑問の芽を、食品を取り巻く組織は必死で摘んでいくんです。『食品について何も考えるな』『黙って買え』というのが、彼らの本音ではないでしょうか」(加藤氏)  我々にとって身近な存在だからこそ、触れづらい食品業界。自主規制を撤廃し、不当な圧力を打ち消すといった努力がなされなければ、「食の安全」など、空虚なスローガンにすぎないのだろう。 (取材・文/萩原雄太) 【明日から食事をするのが怖くなる!? 「サイゾーpremium」では食品業界の闇に迫った記事が満載!】観たら外食ができなくなる? 食の安全を追求する海外傑作ドキュメンタリー味の素や牛角に直撃!! “激安食品”にまつわる怪しい噂は本当か?郡司和夫氏が食品添加物から分析──ラーメンの"うま味"調味料が怖い
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──福島県産農作物が売れているという。  原発事故の影響で、首都圏ではスーパーなどの小売店で福島県産農作物を見る機会はほとんどない。当然出荷量もガタ落ちのはず……と思いきや、日経新聞などの報道では2011年度のコメの出荷量は、例年の7割程度を確保しているという。店頭では見かけることがないのに、いったいどこに出荷しているのだろうか? 「福島県産米は、主に首都圏の外食店やせんべいなどの加工食品メーカーで使用されているんです」 と話すのは、ジャーナリストの吾妻博勝氏。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)を執筆したコメ流通のエキスパートだ。  いまや日本では、手軽で安価な食品が氾濫している。オペレーションシステムの改善や人件費の削減などの企業努力で、1円でも商品の原価を切り詰め価格競争に立ち向かう食品産業にとって、味自体は問題がなく、値段も割安となった福島県産農作物は、まさに渡りに船。消費者としても、11年にはサンプリング調査だった放射性物質の検査が、全袋検査へと移行し、しっかりとした検査を行っているんだから大丈夫だと安心する向きもあるが、吾妻氏は「あれだけ検査の様子が報道されれば、すべてのコメが検査されていると〝誤解〟する方も多いのではないでしょうか」と話す。 「今年度米で全袋検査をしたのは、8月に収穫した早場米の一部だけ。さらに、9月下旬から収穫が始まる米で全袋検査されるのは、主としてJA経由の流通米のみです。農家が業者に直接販売する米は全体の5割以上にも上り、それらは検査もされずに流通するものが多い。業者が農家にトラックを横付けして直接買い取り、そのまま激安居酒屋や、加工食品業界へ出荷されるんです」(吾妻氏)と、非正規のルートでコメや農作物が流通しているというのだ。中間マージンを削るため、農家と直接契約を謳っている企業も多い。 「食の安全」が叫ばれて久しいが、O-157など頻発する食中毒や発がん性物質の混入など、消費者は食に対して疑心暗鬼にならざるを得ない状況が続いている。特に「デフレ食品」とさえ呼べる一連の激安フードは、その安さと引き換えに、こうした安全性が不透明な製品も使用されている。  例えば、かねてから発がん性物質などの危険性が指摘されている食品添加物は、激安フードにとってなくてはならない存在。ハムやベーコン、そしてハンバーグなどの加工食肉には保存料をふんだんに使用することで、流通経費や廃棄リスクを抑制し、合成着色料で新鮮な見た目を演出、化学調味料で味を調えている。合成甘味料のズルチンや合成保存料のフリルフラマイドなど、即座に健康に被害が及ぶものに対しては、厚生労働省も規制を行なってきたが、”ただちに健康に被害がない”ものには、審査も甘い。長期的に摂取し続けた場合や、ほかの添加物と混ぜ合わせた場合のリスクに関しては、安全性が疑問視されるデータが民間の機関から出ていても、そのままにされているものが多い。  また、いまだに安全性が疑問視される遺伝子組み換え農作物も、激安価格を実現するためには欠かせない。通常の作物よりも生命力が強靭で、収穫量も高いことから価格が安いのだが、その不信感は根強く、一部からはアレルギー、臓器異常、不妊、発がん性などの可能性も指摘されている。  遺伝子組み換え作物については、アメリカの農薬会社モンサントの日本進出が話題となっている。同社はすでに茨城県に実験農場を建設している。内部で見たことを口外しないという誓約書を書かされた上で、この農場を見学した人物は、その内部の様子を振り返った。 「周囲から完全に隔離された施設の内部には遺伝子組み換えの作物と、普通の作物が並んでいました。除草剤の効果で、普通の作物はほとんど枯れているのに対し、遺伝子組み換えのほうはピンピンしていた。『どうですか?』と自信満々に聞かれましたが、正直気持ちが悪かった」  作物が枯れてしまうほど強力な農薬が残っているかもしれないのに、本当に人体にとっても安全なのか、十分に議論・検証する必要があるだろう。また、現段階ではその多くに使用表示の義務があるので、日本人が直接口にすることは少ないように思えるが、実は、牛や豚などの家畜飼料として、大量に輸入されており、これらは表示義務がない。結果、我々も間接的にそれらを摂取しているのだ。 ■デフレ食品批判映画が圧力で潰された!?  こうした「安さのヒミツ」は、一部の書籍や雑誌などで報道される程度にとどまっている。自らも製薬会社・食品メーカーで添加物の研究や食品の開発にかかわりながら、『食品業界は今日も、やりたい放題』(三五館)などの著書もある小薮浩二郎氏は、業界からの圧力を指摘する。 「味の素などの大手食品メーカーが加盟する『日本食品添加物協会』は、食品企業幹部や国立大教授などの退職後の受け皿として機能しています。食品添加物に否定的な書籍や記述に対しては強固に反論を行うんです。かつて、食品に関するある書籍が爆発的にヒットした際、同協会から相当強いクレームが飛んだことがあります」  大企業や食品会社を後ろ盾に持つ同協会は、厚生労働省や消費者庁にさえ抗議を行い、その力は「消費者庁が潰れても、添加物協会は潰れないと言われている」(同)ほど。そして、同協会に対して尻尾を振っているのが、添加物を監視・監督する立場にある厚労省だという。特に食品業界に対しては、国は消費者よりもメーカー保護の立場。森永ヒ素ミルク中毒事件やカネミ油症事件くらい重大なトラブルが起きない限り、国の機関でも添加物に対してネガティブな研究は行っていないのだという。  では、自由に研究ができそうな大学機関などでの研究は進んでいるのだろうか? 「現在、大学には『産学協同』の風潮があり、企業の論理にのっとった研究が奨励される傾向にあります。一方、製品の欠陥について研究すると、学生の就職に如実に影響があるので、理系大学生の就職先の多くを占める食品メーカーにとって不利益となる研究は、積極的には行いません」(同)  このように産学官に守られ、食品会社は今日も我々に添加物満載の食品を提供しているのだ。  また、「食の安全」を脅かす彼らを無視し、自主規制を行うメディア側の弱腰姿勢も浮かび上がってくる。 『ありあまるごちそう』など、食の安全をテーマにしたドキュメンタリーを配給するアンプラグド代表取締役の加藤武史氏が『フード・インク』のキャンペーンの際に直面した事件は、この態度を端的に象徴したものだったという。 「普段エコやナチュラルフードを推進している、あるラジオ局に『フード・インク』のキャンペーンを手伝ってほしいという話を持っていったところ、DJの方々は非常に興味を持ってくれたのですが、局側は『一方的であり、応援をすることはもちろん、扱うこともできない』と激怒され、即却下されました。後日知ったところによると、この放送局の一番のスポンサーはコンビニとハンバーガーチェーンだった(笑)」  映画『スーパーサイズ・ミー』などでも描かれたように、マクドナルドやコカ・コーラには、人体に影響する物質が入っているなどとし、その安全性が疑問視されている。それらの企業が、安全でも割高になるナチュラルフードを推奨する映画に協力できないのは、なるほどと思うところがあるだろう。11年に食品業界がマスコミにばらまいた宣伝広告費は2660億円と、日本の広告費用における1割を占めている(電通「日本の広告費」)。大手食品メーカーの広告宣伝費にがんじがらめとなっている大手メディアもまた、食品業界の闇を告発することなどするはずもないだろう。  このような状況に「食品を取り巻く組織が硬直化している」と憤る加藤氏は、農林水産省から受けたある「圧力」も明かした。 「08年から農水省が主導した食料自給率アップを目指した『フード・アクション・ニッポン』というキャンペーンがあり、そのHP上に『フード・インク』の公開情報を掲載してもらうよう掛け合いました。運営を受託する電通とやりとりをし、情報を掲載してもらったのですが、その途端、農水省から『一方的で好ましくない』という圧力がかかり、ホームページから映画の情報を削除されそうになりました」  結局、この件は電通によって削除されずに済んだが、食に対して真摯に向き合ったドキュメンタリーを「好ましくない」の一言で排除する農水省の姿勢は、この国にはびこる食品事情を象徴している。 「食品の裏側を知ると、モノが売れなくなるという恐怖が、メーカー、小売店、外食チェーンにはあるのでしょう。冷静に考えたら、値段が安すぎる食品は多いし、お寿司やサラダが3日も日持ちするのもおかしい。そのような疑問の芽を、食品を取り巻く組織は必死で摘んでいくんです。『食品について何も考えるな』『黙って買え』というのが、彼らの本音ではないでしょうか」(加藤氏)  我々にとって身近な存在だからこそ、触れづらい食品業界。自主規制を撤廃し、不当な圧力を打ち消すといった努力がなされなければ、「食の安全」など、空虚なスローガンにすぎないのだろう。 (取材・文/萩原雄太) 【明日から食事をするのが怖くなる!? 「サイゾーpremium」では食品業界の闇に迫った記事が満載!】観たら外食ができなくなる? 食の安全を追求する海外傑作ドキュメンタリー味の素や牛角に直撃!! “激安食品”にまつわる怪しい噂は本当か?郡司和夫氏が食品添加物から分析──ラーメンの"うま味"調味料が怖い
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放射線検査をしないコメが市場に流通──不安視される食品業界のタブー構造

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『食品業界は今日も、やりたい放題』
(三五館)
──福島県産農作物が売れているという。  原発事故の影響で、首都圏ではスーパーなどの小売店で福島県産農作物を見る機会はほとんどない。当然出荷量もガタ落ちのはず……と思いきや、日経新聞などの報道では2011年度のコメの出荷量は、例年の7割程度を確保しているという。店頭では見かけることがないのに、いったいどこに出荷しているのだろうか? 「福島県産米は、主に首都圏の外食店やせんべいなどの加工食品メーカーで使用されているんです」 と話すのは、ジャーナリストの吾妻博勝氏。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)を執筆したコメ流通のエキスパートだ。  いまや日本では、手軽で安価な食品が氾濫している。オペレーションシステムの改善や人件費の削減などの企業努力で、1円でも商品の原価を切り詰め価格競争に立ち向かう食品産業にとって、味自体は問題がなく、値段も割安となった福島県産農作物は、まさに渡りに船。消費者としても、11年にはサンプリング調査だった放射性物質の検査が、全袋検査へと移行し、しっかりとした検査を行っているんだから大丈夫だと安心する向きもあるが、吾妻氏は「あれだけ検査の様子が報道されれば、すべてのコメが検査されていると〝誤解〟する方も多いのではないでしょうか」と話す。 「今年度米で全袋検査をしたのは、8月に収穫した早場米の一部だけ。さらに、9月下旬から収穫が始まる米で全袋検査されるのは、主としてJA経由の流通米のみです。農家が業者に直接販売する米は全体の5割以上にも上り、それらは検査もされずに流通するものが多い。業者が農家にトラックを横付けして直接買い取り、そのまま激安居酒屋や、加工食品業界へ出荷されるんです」(吾妻氏)と、非正規のルートでコメや農作物が流通しているというのだ。中間マージンを削るため、農家と直接契約を謳っている企業も多い。 「食の安全」が叫ばれて久しいが、O-157など頻発する食中毒や発がん性物質の混入など、消費者は食に対して疑心暗鬼にならざるを得ない状況が続いている。特に「デフレ食品」とさえ呼べる一連の激安フードは、その安さと引き換えに、こうした安全性が不透明な製品も使用されている。  例えば、かねてから発がん性物質などの危険性が指摘されている食品添加物は、激安フードにとってなくてはならない存在。ハムやベーコン、そしてハンバーグなどの加工食肉には保存料をふんだんに使用することで、流通経費や廃棄リスクを抑制し、合成着色料で新鮮な見た目を演出、化学調味料で味を調えている。合成甘味料のズルチンや合成保存料のフリルフラマイドなど、即座に健康に被害が及ぶものに対しては、厚生労働省も規制を行なってきたが、”ただちに健康に被害がない”ものには、審査も甘い。長期的に摂取し続けた場合や、ほかの添加物と混ぜ合わせた場合のリスクに関しては、安全性が疑問視されるデータが民間の機関から出ていても、そのままにされているものが多い。  また、いまだに安全性が疑問視される遺伝子組み換え農作物も、激安価格を実現するためには欠かせない。通常の作物よりも生命力が強靭で、収穫量も高いことから価格が安いのだが、その不信感は根強く、一部からはアレルギー、臓器異常、不妊、発がん性などの可能性も指摘されている。  遺伝子組み換え作物については、アメリカの農薬会社モンサントの日本進出が話題となっている。同社はすでに茨城県に実験農場を建設している。内部で見たことを口外しないという誓約書を書かされた上で、この農場を見学した人物は、その内部の様子を振り返った。 「周囲から完全に隔離された施設の内部には遺伝子組み換えの作物と、普通の作物が並んでいました。除草剤の効果で、普通の作物はほとんど枯れているのに対し、遺伝子組み換えのほうはピンピンしていた。『どうですか?』と自信満々に聞かれましたが、正直気持ちが悪かった」  作物が枯れてしまうほど強力な農薬が残っているかもしれないのに、本当に人体にとっても安全なのか、十分に議論・検証する必要があるだろう。また、現段階ではその多くに使用表示の義務があるので、日本人が直接口にすることは少ないように思えるが、実は、牛や豚などの家畜飼料として、大量に輸入されており、これらは表示義務がない。結果、我々も間接的にそれらを摂取しているのだ。 ■デフレ食品批判映画が圧力で潰された!?  こうした「安さのヒミツ」は、一部の書籍や雑誌などで報道される程度にとどまっている。自らも製薬会社・食品メーカーで添加物の研究や食品の開発にかかわりながら、『食品業界は今日も、やりたい放題』(三五館)などの著書もある小薮浩二郎氏は、業界からの圧力を指摘する。 「味の素などの大手食品メーカーが加盟する『日本食品添加物協会』は、食品企業幹部や国立大教授などの退職後の受け皿として機能しています。食品添加物に否定的な書籍や記述に対しては強固に反論を行うんです。かつて、食品に関するある書籍が爆発的にヒットした際、同協会から相当強いクレームが飛んだことがあります」  大企業や食品会社を後ろ盾に持つ同協会は、厚生労働省や消費者庁にさえ抗議を行い、その力は「消費者庁が潰れても、添加物協会は潰れないと言われている」(同)ほど。そして、同協会に対して尻尾を振っているのが、添加物を監視・監督する立場にある厚労省だという。特に食品業界に対しては、国は消費者よりもメーカー保護の立場。森永ヒ素ミルク中毒事件やカネミ油症事件くらい重大なトラブルが起きない限り、国の機関でも添加物に対してネガティブな研究は行っていないのだという。  では、自由に研究ができそうな大学機関などでの研究は進んでいるのだろうか? 「現在、大学には『産学協同』の風潮があり、企業の論理にのっとった研究が奨励される傾向にあります。一方、製品の欠陥について研究すると、学生の就職に如実に影響があるので、理系大学生の就職先の多くを占める食品メーカーにとって不利益となる研究は、積極的には行いません」(同)  このように産学官に守られ、食品会社は今日も我々に添加物満載の食品を提供しているのだ。  また、「食の安全」を脅かす彼らを無視し、自主規制を行うメディア側の弱腰姿勢も浮かび上がってくる。 『ありあまるごちそう』など、食の安全をテーマにしたドキュメンタリーを配給するアンプラグド代表取締役の加藤武史氏が『フード・インク』のキャンペーンの際に直面した事件は、この態度を端的に象徴したものだったという。 「普段エコやナチュラルフードを推進している、あるラジオ局に『フード・インク』のキャンペーンを手伝ってほしいという話を持っていったところ、DJの方々は非常に興味を持ってくれたのですが、局側は『一方的であり、応援をすることはもちろん、扱うこともできない』と激怒され、即却下されました。後日知ったところによると、この放送局の一番のスポンサーはコンビニとハンバーガーチェーンだった(笑)」  映画『スーパーサイズ・ミー』などでも描かれたように、マクドナルドやコカ・コーラには、人体に影響する物質が入っているなどとし、その安全性が疑問視されている。それらの企業が、安全でも割高になるナチュラルフードを推奨する映画に協力できないのは、なるほどと思うところがあるだろう。11年に食品業界がマスコミにばらまいた宣伝広告費は2660億円と、日本の広告費用における1割を占めている(電通「日本の広告費」)。大手食品メーカーの広告宣伝費にがんじがらめとなっている大手メディアもまた、食品業界の闇を告発することなどするはずもないだろう。  このような状況に「食品を取り巻く組織が硬直化している」と憤る加藤氏は、農林水産省から受けたある「圧力」も明かした。 「08年から農水省が主導した食料自給率アップを目指した『フード・アクション・ニッポン』というキャンペーンがあり、そのHP上に『フード・インク』の公開情報を掲載してもらうよう掛け合いました。運営を受託する電通とやりとりをし、情報を掲載してもらったのですが、その途端、農水省から『一方的で好ましくない』という圧力がかかり、ホームページから映画の情報を削除されそうになりました」  結局、この件は電通によって削除されずに済んだが、食に対して真摯に向き合ったドキュメンタリーを「好ましくない」の一言で排除する農水省の姿勢は、この国にはびこる食品事情を象徴している。 「食品の裏側を知ると、モノが売れなくなるという恐怖が、メーカー、小売店、外食チェーンにはあるのでしょう。冷静に考えたら、値段が安すぎる食品は多いし、お寿司やサラダが3日も日持ちするのもおかしい。そのような疑問の芽を、食品を取り巻く組織は必死で摘んでいくんです。『食品について何も考えるな』『黙って買え』というのが、彼らの本音ではないでしょうか」(加藤氏)  我々にとって身近な存在だからこそ、触れづらい食品業界。自主規制を撤廃し、不当な圧力を打ち消すといった努力がなされなければ、「食の安全」など、空虚なスローガンにすぎないのだろう。 (取材・文/萩原雄太) 【明日から食事をするのが怖くなる!? 「サイゾーpremium」では食品業界の闇に迫った記事が満載!】観たら外食ができなくなる? 食の安全を追求する海外傑作ドキュメンタリー味の素や牛角に直撃!! “激安食品”にまつわる怪しい噂は本当か?郡司和夫氏が食品添加物から分析──ラーメンの"うま味"調味料が怖い
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震災から1年半……「傷ついた心の復興は進んでいない」福島のいま

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 マグニチュード9.0の揺れが東北地方を襲った3月11日から1年半。一見すると、日本社会はかつての落ち着きを取り戻しているかのように見える。「震災から1年半『も』たった」という言葉も聞かれるほど、震災の記憶は遠いものとなっている。東京に限っていえば、まるで震災などなかったことのように、いつもの日常が繰り広げられている。しかし、被災地に流れている時間は、東京のそれとはまったく異なっていた。今年8月後半に、福島県いわき市から楢葉町までを訪れた様子をレポートする。  常磐道を使えば、わずか2時間あまりで福島県内に入る。現在も至るところで「東日本大震災復興工事」の標識を立てた修復工事が行われていた。いつもと変わらない交通量の常磐道。しかし、いわき中央ICを通り過ぎると、通行する車の数は激減する。いわき中央ICの次にある広野ICから先は、原子力災害対策特別措置法に基づいて、いまだに通行止めとされているからだ。その広野ICを降りて、国道6号線方面に向かう。 ■手付かずのままの楢葉町  高速道路を降りて3分も走れば、福島第一原発事故の対応拠点となっているJヴィレッジにたどり着く。かつてはこの場所に検問が敷かれており、ここから先は立入禁止区域に指定されていたものの、この8月から避難区域が再編。原発から20km以内となる楢葉町も立入禁止となる「警戒区域」から、日中の出入りが自由となる「避難指示解除準備区域」に変わった。それに伴って、検問はJヴィレッジ前から数キロ先にある楢葉町と富岡町の境界付近まで後退することとなる。
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 旧検問を通り過ぎ、楢葉町に足を踏み入れると、これまで見てきた風景は一変する。  出入りは自由となったものの、いまだに夜間の宿泊は認められておらず、そこで生活を送ったり、店舗の営業を再開することはできない。楢葉町では8月初旬まで立入禁止区域に指定されていたことから、復旧作業も手付かずのままになっている。  かつて田んぼや畑が広がっていたであろう場所には、稲の代わりにセイタカアワダチソウが生い茂り、人の背の高さにまで成長している。国道沿いには民家が点在しているものの、カーテンが閉められ、生活の息遣いは聞こえてこない。さらに車を走らせていくと、地震で崩れたままの家屋や家の塀、看板なども散見された。  国道から外れ、海のほうへと車を走らせると、津波でぐにゃぐにゃにねじ曲げられたガードレールや、雑草の間に横たわるがれき、折れたままの電柱などが目に付く。ちょうど1年前にも僕はいわき市を訪れたのだが、まさにその時に見たままの状態だった。
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 以前、ある避難民が「家に戻るつもりはない」と語る姿をテレビで見たことがある。避難先で、あくまでも“仮の生活”を送る彼らが、いったいどうして故郷に戻る気持ちを失ってしまうのか、その時はまったく理解できなかった。しかし、楢葉町の風景を見るにつれ、なんとなくその気持ちもわかってくる。  1年半の歳月をかけて、彼らは避難先での生活を積み上げた。その生活を捨て去り、ゼロ以下のマイナスから新たな生活をスタートさせるのは、とても難しいことだろう。すでに世間や自分の中にあった非常時の一種の高揚感も静まった。荒れ果てた故郷を元に戻そうというパワーが出ず、避難先での現状維持を望むのは決して特殊なことではないだろう。 ■観光バスが被災地に乗り付ける  続いて訪れたのは、いわき市の北端沿岸部に位置する久之浜地区。地震発生直後、津波、火災が重なり壊滅的な被害を受け、この地域だけでも数十人の人々が亡くなった。  昨年訪れた際は、緊急にがれきを撤去し、やっと車が通れるような状態だった。そこから1年を経て、現在ではがれきやボロボロの建物のほとんどは撤去され、基礎だけしか残されていない更地の状態が広がっている。  地元住民によれば「がれきや壊れた建物が残っていると、暗い気持ちになってしまうから、なるべく早く取り除いたんです」と、スピーディな歩みを進めてきた久之浜。だが、ここに来て、ある問題点が湧き上がっている。「集団移転をするのか、この場所で住み続けるのか、役所のほうで今後の方針が定まらず、建物を建てることもままならない。方針が決まれば着工できるんだけど……」と、対応の遅い行政にいら立っている様子だ。
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 そんな久之浜地区を取材していると、観光バスに乗った集団がやってきた。遠目から見ると、オバチャンたちの集団だろうか。まるで、観光地に降り立ったかのように日傘を差しながら久之浜の状況を写真に収めている。自分のことを棚に上げ、どことなく感じてしまう違和感。だが、その風景を見たある住人が語った言葉が印象深かった。 「久之浜の現状を見てもらうことは、次の防災につながると思うんです。いろいろな意見はあると思うが、個人的にはどんどん来てほしいと思っている」  これは、あくまで一部の意見であり、地元住民の総意ではない。しかし、被災地を“観光”し、その被害の様子を自分の目で確認することで、テレビで見たものとは異なった印象を受けるに間違いない。 ■市民と避難民との軋轢  ひとたび沿岸部を離れ、市街地のほうに足を運ぶと、そこには東京とほとんど変わることのない日常が広がっている。建物や道路の復旧工事の多くは完了し、放射線量はおよそ0.1マイクロシーベルトと、南関東の数値とほとんど変わらなくなってきている。いわき市の中心部に限っていえば、「被災地」としての姿を見つけることのほうが難しい。  しかし、そんないわき市で取材を行うと、聞こえてきたのはいわき市民と原発近くから避難している避難民との軋轢。 「彼ら(避難民)の一部は、東電からの補償金で、昼間から酒を飲みパチンコに行くような生活をしている。いわきの道路を使って、いわきの施設を使用しているのに、いわきに税金を払っていません」 「いわき市内では避難民による交通事故が増えています。聞いた話では、事故を起こしながら、第一声が『私は避難民だ』ということ。避難していることと、事故を起こしたことは関係ないはずなのに、同情を買おうとしているんです」  こういったウワサの真偽は不明だが、避難民の話を始めると、顔をしかめながらこの手のウワサ話を語る人は多い。こんな状況を指して、ある住民はこう嘆く。 「建物や道路などの表面上では、いわき市内の復旧は進んでいます。しかし、市民の心はまだ復興されていないんです。他人に向ける心の余裕がなく、こういったウワサ話が流布してしまうのではないでしょうか……」  今回、被災地を取材して感じたことはやはり、震災から1年半「も」たったのではなく、震災から1年半「しか」たっていないということだった。表面上は取り繕われていても、まだ震災の感覚はリアリティーを持ってわたしたちの記憶の中に刻まれている。いわき滞在中の8月31日深夜、フィリピン沖で発生したM7.6の地震によって、日本全国に津波注意報が発令された。わずか50cmという予報だったが、その時、僕の頭にはありありと1年半前の記憶が蘇り、言いようのない不安に身体が支配された。  では、震災から1年半「しか」たっていない状況で、わたしたちが目指していく「復興」とはなんなのだろうか? 何が達成されたら、「復興した」ということができるのだろうか? 最後に、今回の滞在中に経験したある出来事を記して拙稿を締めくくりたい。  1年前に訪れた時、Jヴィレッジ前の検問付近には、どこか物々しい雰囲気が漂っていた。赤いサイレンが明滅し、数台の護送車と10人ほどの警察官が警備にあたっていた。国道6号線を歩く人もおらず、歩道には伸びきった夏草が刈り取られないまま放置されていた。  だが、今回同じ場所を訪れた時、昨年とは異なった感覚を味わった。検問がないこともそうだが、そこには除染作業や工事を行っている人の姿があり、1年前は国道を走る車の音しかしなかった場所で、重機を動かす音や、何かを話している人の声も聞こえてきた。最前線の物々しい雰囲気はそこにはなく、人間が生活をしている時間が流れていたのだ。1年を経て体験した時間の流れ方の変化は、建物や道路が元に戻る以上に「復興へ近づいた」と感じられた。 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン])